(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】巡回ルート作成装置、巡回ルート作成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/047 20230101AFI20240214BHJP
【FI】
G06Q10/047
(21)【出願番号】P 2022512508
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014458
(87)【国際公開番号】W WO2021199111
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】延岡 泰之
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳奈
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08229658(US,B1)
【文献】特開2019-016076(JP,A)
【文献】特開2009-026276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するための装置であって、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測する、巡回ルート推測部と、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成する、巡回ルート作成部と、
を備え
、
前記巡回ルート作成部が、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報の関係を、分岐式と目的関数とで示した、機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯と入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とする巡回ルート作成装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の巡回ルート作成装置であって、
前記機械学習モデルが、更に、過去に放置物体が確認された場所の天候を示す天候情報、その場所における道路の状況を示す道路状況情報、及びその場所で実施されているイベントを特定するイベント情報のうち少なくとも1つを更に含む前記関係を、前記分岐式と前記目的関数とで示しており、
前記巡回ルート作成部が、前記機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯とに加えて、最新の天候情報、最新の道路状況情報、最新のイベント情報のうち少なくとも1つを入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とする巡回ルート作成装置。
【請求項3】
コンピュータが放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するための方法であって、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測し、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成
し、
前記巡回ルートの作成において、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報の関係を、分岐式と目的関数とで示した、機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯と入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とする巡回ルート作成方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の巡回ルート作成方法であって、
前記機械学習モデルが、更に、過去に放置物体が確認された場所の天候を示す天候情報、その場所における道路の状況を示す道路状況情報、及びその場所で実施されているイベントを特定するイベント情報のうち少なくとも1つを更に含む前記関係を、前記分岐式と前記目的関数とで示しており、
巡回ルートの作成において、前記機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯とに加えて、最新の天候情報、最新の道路状況情報、最新のイベント情報のうち少なくとも1つを入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とする巡回ルート作成方法。
【請求項5】
コンピュータによって、放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測させ、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成させ
、
前記巡回ルートの作成において、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報の関係を、分岐式と目的関数とで示した、機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯と入力して、前記巡回ルートを作成する、
プログラム。
【請求項6】
請求項
5に記載のプログラムであって、
前記機械学習モデルが、更に、過去に放置物体が確認された場所の天候を示す天候情報、その場所における道路の状況を示す道路状況情報、及びその場所で実施されているイベントを特定するイベント情報のうち少なくとも1つを更に含む前記関係を、前記分岐式と前記目的関数とで示しており、
巡回ルートの作成において、前記機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯とに加えて、最新の天候情報、最新の道路状況情報、最新のイベント情報のうち少なくとも1つを入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、違法に放置された物体、例えば、放置車両の確認業務における巡回ルートを作成するための、巡回ルート作成装置、及び巡回ルート作成方法に関し、更には、これらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
違法に駐車された車両は、歩行者、自転車等の通行を妨げ、交通事故及び交通渋滞の原因となる。更には、違法に駐車された車両は、事件、事故、災害等の発生時において、パトカー、救急車等の緊急車両の通行の妨げとなることもある。このため、近年、警察庁は、民間の法人に、違法駐車された放置車両の確認業務を委託し、違法駐車撲滅の推進を図っている。
【0003】
ところで、通常、放置車両の確認業務では、監視員は、警察署で担当するエリアが指示されると、指示されたエリア内を巡回することによって、違法駐車された放置車両を確認する。このとき、巡回が無計画に行われてしまうと、監視員は放置車両を効率的に確認できないため、違法駐車撲滅が困難となる。
【0004】
このため、特許文献1は、監視員の巡回計画を自動的に作成する装置を開示している。具体的には、特許文献1に開示された装置は、まず、各地域において時間帯毎に集計された違法駐車の取り締まり件数の実績値に基づいて、巡回実施日において、各地域における時間毎の取り締まり件数を予測する。次いで、特許文献1に開示された装置は、各地域における時間毎の取り締まり件数の予測値に基づいて、時間帯毎に予測値が最も大きい地域を選択し、選択した地域をその時間帯の巡回対象として、巡回計画を作成する。特許文献1に開示された装置によれば、監視員は、時間帯毎に放置車両が多いと予想される地域を巡回できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された装置は、時間帯毎に巡回対象となる地域を選択する機能しか備えておらず、地域から地域へのルートについて考慮している訳ではない。このため、ある時間帯で選択された地域と、次の時間帯で選択された地域とが離れている場合には、巡回が非効率となると共に、監視員に大きな負担となってしまう。
【0007】
本発明の目的の一例は、上記問題を解消し、放置物体の確認業務における巡回ルートの策定を可能にし得る、巡回ルート作成装置、巡回ルート作成方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における巡回ルート作成装置は、放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するための装置であって、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測する、巡回ルート推測部と、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成する、巡回ルート作成部と、
を備えている、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における巡回ルート作成方法は、放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するための方法であって、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測する、巡回ルート推測ステップと、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成する、巡回ルート作成ステップと、
を有する、ことを特徴とする。
【0010】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、コンピュータによって、放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測する、巡回ルート推測ステップと、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成する、巡回ルート作成ステップと、
実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、放置物体の確認業務における巡回ルートの策定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態における巡回ルート作成装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における巡回ルート作成装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態においてデータ格納部に格納されている情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態において推測された巡回ルートの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態で用いられる機械学習モデルの概念を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態における巡回ルート作成装置の機械学習モデル構築処理時の動作を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、実施の形態における巡回ルート作成装置の巡回ルートの作成処理時の動作を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、実施の形態における巡回ルート作成装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態)
以下、実施の形態における、巡回ルート作成装置、巡回ルート作成方法、及びプログラムについて、
図1~
図7を参照しながら説明する。
【0014】
[装置構成]
最初に、実施の形態における巡回ルート作成装置の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態における巡回ルート作成装置の概略構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す、実施の形態における巡回ルート作成装置10は、放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するための装置である。
図1に示すように、巡回ルート作成装置10は、巡回ルート推測部11と、巡回ルート作成部12とを備えている。
【0016】
この構成において、巡回ルート推測部11は、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測する。
【0017】
巡回ルート作成部12は、推測された過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成する。
【0018】
このように、実施の形態では、巡回ルート作成装置10は、過去に確認した放置物体の情報から、予め設定されたエリア及び時間帯について監視員が巡回すべきルートを作成する。実施の形態によれば、放置物体の確認業務における巡回ルートの策定が可能となる。
【0019】
続いて、
図2~
図5を用いて、実施の形態における巡回ルート作成装置の構成及び機能について具体的に説明する。
図2は、実施の形態における巡回ルート作成装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、実施の形態では、巡回ルート作成装置10は、ネットーワークを介して、端末装置20とデータ通信可能に接続されている。端末装置20は、監視員21が使用する端末装置であり、スマートフォン、タブレット型端末装置等である。
【0021】
また、実施の形態において、放置物体としては、違法駐車された放置車両、違法に遺棄されたゴミ(粗大ゴミ、可燃ゴミ等)、放置された不審物などが挙げられる。以下においては、放置物体が放置車両である例について説明する。
【0022】
監視員21は、放置車両の確認作業を行うと、この端末装置20に、放置車両を確認した場所、放置車両を確認した時刻を入力する。場所の入力は、端末装置の画面上に表示された地図上の点を指定することによって行われても良いし、住所の入力によって行われても良い。また、時刻の入力は、予め用意されたタブを選択することによって行われても良いし、手入力によって行われても良い。
【0023】
入力が終わると、端末装置20は、放置車両が確認された場所を示す位置情報と、放置車両が確認された時刻を示す時刻情報とに、監視員21を特定するための識別子(ID:identification)を付与し、これらの情報を巡回ルート作成装置10に送信する。
【0024】
端末装置20にGPS(Global Positioning System)受信機と時計とが備えられている場合は、端末装置20は、監視員21から確認作業を行ったことを示す入力のみを受け付けても良い。この場合、端末装置20は、入力が行われると、そのときのGPS受信機で測位された位置を示す位置情報と、そのときの時刻を示す時刻情報とを送信する。
【0025】
図2に示すように、実施の形態では、巡回ルート作成装置10は、上述した巡回ルート推測部11及び巡回ルート作成部12に加えて、データ取得部13と、データ格納部14と、機械学習モデル格納部15とを備えている。
【0026】
データ取得部13は、端末装置20から、IDが付与された位置情報及び時刻情報が送信されてくると、これらの情報を取得し、取得した情報をデータ格納部14に格納する。
図3は、実施の形態においてデータ格納部に格納されている情報の一例を示す図である。
図3に示すように、実施の形態では、過去に監視員21が放置車両の確認業務を行った際に得られた情報は、データ格納部14に蓄積される。
【0027】
巡回ルート推測部11は、実施の形態では、監視員21毎に、データ格納部14に格納されている位置情報及び時刻情報を用いて、過去の巡回ルートを推測する。具体的には、巡回ルート推測部11は、まず、同日の同じIDに紐付けられている位置情報及び時刻情報を取得し、予め用意されている電子地図上に、位置情報で特定される場所(座標)をプロットする。
【0028】
そして、
図4に示すように、巡回ルート推測部11は、時刻情報で特定される時刻が早い順に、例えば、駐車禁止エリアとなっている道路を優先して、プロットした場所を全て辿り、巡回ルートを推測する。
図4は、実施の形態において推測された巡回ルートの一例を示す図である。
【0029】
巡回ルート作成部12は、実施の形態では、巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯とを、機械学習モデルに入力することで、巡回ルートを作成する。
【0030】
機械学習モデルは、巡回ルート推測部11で推測された過去における監視員21の巡回ルート、過去に放置車両が確認された場所を示す位置情報、及び過去に放置車両が確認された時刻を示す時刻情報の関係を、分岐式と目的関数とで示すモデルである。
図5は、実施の形態で用いられる機械学習モデルの概念を示す図である。
図5の例では、どのような場合に、何をどれだけ重視するかが分かるように最適化指標が学習されている。
【0031】
実施の形態では、巡回ルート作成部12が、巡回ルート推測部11によって推測された過去における監視員21の巡回ルートと、データ格納部14に格納されている位置情報及び時刻情報とを、学習データとして用いて、上述の機械学習モデルを構築することができる。巡回ルート作成部12は、構築した機械学習モデルを構成する分岐式及び目的関数を、データ格納部14に格納する。
【0032】
また、実施の形態では、機械学習モデルは、上述の関係において、更に、過去に放置車両が確認された場所の天候を示す天候情報、その場所における道路の状況を示す道路状況情報、及びその場所で実施されているイベントを特定するイベント情報のうち少なくとも1つを更に含んでいても良い。これらの情報は、以降においては、「周辺情報」と一括りで表記する。巡回ルート作成部12は、この場合、過去の周辺情報も学習データとして用いる。実施の形態では、過去の周辺情報は、予めデータ格納部14に格納されている。
【0033】
また、この場合、巡回ルート作成部12は、機械学習モデルに、巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯とに加えて、最新の天候情報、最新の道路状況情報、最新のイベント情報のうち少なくとも1つも入力して、巡回ルートを作成する。
【0034】
ここで、
図5に示す機械学習モデルについて具体的に説明する。まず、監視員21が確認すべき主な地点が登録された電子地図が用意され、更に電子地図には、予め、地点毎の確認回数の上限が設定されているとする。また、学習データとしては、過去の監視員21の巡回ルート、過去の位置情報、過去の時刻情報、及び過去の周辺情報が用いられるとする。この場合において、機械学習モデルを構築するための機械学習では、地点毎の確認回数の上限の範囲内で、確認できる地点の数を最大にする地点の組合せが学習される。
【0035】
[装置動作]
次に、実施の形態における巡回ルート作成装置10の動作について
図6及び
図7を用いて説明する。以下の説明においては、適宜
図1~
図5を参照する。また、実施の形態では、巡回ルート作成装置10を動作させることによって、巡回ルート作成方法が実施される。よって、実施の形態における巡回ルート作成方法の説明は、以下の巡回ルート作成装置10の動作説明に代える。
【0036】
最初に、
図6を用いて、機械学習モデルの構築までの処理について説明する。
図6は、実施の形態における巡回ルート作成装置の機械学習モデル構築処理時の動作を示すフロー図である。
【0037】
前提として、監視員21が、端末装置20を用いて放置車両の確認作業を行い、その後、端末装置20から、監視員21のIDが付与された位置情報と時刻情報とが、巡回ルート作成装置10へと送信される。
【0038】
これにより、
図6に示すように、巡回ルート作成装置10において、データ取得部13は、送信されてきた位置情報と時刻情報とを取得し、取得した情報をデータ格納部14に格納する(ステップA1)。
【0039】
次に、巡回ルート推測部11は、監視員21毎に、データ格納部14に格納されている位置情報及び時刻情報を用いて、過去の巡回ルートを推測する(ステップA2)。
【0040】
次に、巡回ルート作成部12は、ステップA2で推測された過去における監視員21の巡回ルートと、データ格納部14に格納されている、位置情報、時刻情報、及び周辺情報とを、学習データとして用いて、機械学習を実行する(ステップA3)。ステップA3の実行により、監視員21の巡回ルート、位置情報、時刻情報、及び周辺情報の関係を、分岐式と目的関数とで示す機械学習モデルが構築される。
【0041】
次に、巡回ルート作成部12は、ステップA3の機械学習で構築された機械学習モデルの分岐式及び目的関数を、機械学習モデル格納部15に格納する(ステップA4)。
【0042】
続いて、
図7を用いて、機械学習モデルを用いた巡回ルートの作成処理について説明する。
図7は、実施の形態における巡回ルート作成装置の巡回ルートの作成処理時の動作を示すフロー図である。
【0043】
前提として、監視員21が端末装置20において、巡回対象となるエリア、時間帯、及び最新の周辺情報を入力する。これにより、端末装置20は、入力された各情報を、巡回ルート作成装置10に送信する。
【0044】
これにより、
図7に示すように、巡回ルート作成装置10において、巡回ルート作成部12は、端末装置20から送信されてきた、巡回対象となるエリア、時間帯、及び最新の周辺情報を取得する(ステップB1)。
【0045】
次に、巡回ルート作成部12は、機械学習モデル格納部15から条件式及び目的関数を取り出して機械学習モデルを構築し、構築した機械学習モデルに、ステップB1で取得した情報を入力し、巡回ルートを作成する(ステップB2)。
【0046】
次に、巡回ルート作成部12は、作成した巡回ルートを、ステップB1で取得した情報の送信元の端末装置20に送信する(ステップB3)これにより、端末装置20の画面には、作成された巡回ルートが表示される。従って、監視員21は、自身が巡回を担当しているエリアにおける最適な巡回ルートを画面上で確認することができる。
【0047】
[実施の形態における効果]
以上のように、実施の形態では、過去の情報から、巡回ルートを作成するための機械学習モデルが構築されるので、監視員21は、巡回予定となるエリアと時間帯とを入力するだけで、巡回ルートの提示を受けられる。また、実施の形態では、機械学習モデルの構築において、巡回エリアにおける天候、道路情報、イベントも学習データとして用いることができるので、これらの周辺情報を考慮した巡回ルートも作成できる。
【0048】
[変形例]
ここで、実施の形態における変形例について説明する。変形例では、巡回ルート作成部12は、まず、地点ごとの重要度を推定し、続いて、回るべき重要な地点と時間的制約とのトレードオフを考慮して、ルートを作成する。このため、変形例では、逆強化学習が行われる。
【0049】
まず、訓練データとして、過去における監視員21の巡回ルートと、地図情報と、周辺情報とが用いられる。そして、過去における監視員21の巡回ルートに基づいて、逆ナップサック問題の解法が行われ、下記の数1に示す目的関数の係数として「地点ごとの重要度」αiが推定される。φiは、監視員21が地点iを通過すると1に設定され、そうでない場合は0に設定される重みである。iは各地点に設定された識別番号を示している。
【0050】
【0051】
そして、「地点ごとの重要度」αiと、「時間的な制約を表す」ψjとを考慮して、巡回セールスマン問題を解いた結果が、過去における監視員21の巡回ルートであるので、数2に示す目的関数が、逆巡回セールスマン問題を解くことによる逆強化学習で学習される。
【0052】
【0053】
上記数2において、時間的な制約を表すψjは、選ばれた地点間の移動にかかる時間の逆数を表している。また、地点iと地点i'とに対して、ψii'が設定され、「j」は2つの地点番号の組み合わせ「ii’」を表している。そして、上述の逆巡回セールスマン問題を解くことにより、「地点ごとの重要度」αi及び「時間的な制約を表す」ψjそれぞれに対して、係数βiとγjとが推定される。
【0054】
従って、変形例では、巡回ルート作成部12は、まず、巡回ルート推測部11で推測された過去における監視員21の巡回ルート、地図情報、及び周辺情報を、数1に示す関数(機械学習モデル)に適用して、「地点ごとの重要度」αiを推定する。続いて、巡回ルート推測部11は、推定した「地点ごとの重要度」αiを、数2に示す関数(機械学習モデル)に適用して、係数βiとγjとを推定する。そして、巡回ルート作成部12は、「地点ごとの重要度」αiと、係数βiと、γjとを用いた巡回セールス問題を解くことによって、巡回ルートを作成する。
【0055】
なお、「地点ごとの重要度」αiは、上述の逆ナップサック問題の解法以外の方法で推定されていても良い。例えば、放置物の数を目的変数とし、位置情報、時間帯、及び周辺情報からの特徴量を説明変数とした、予測分析によって得られる、放置物の予測数が、「地点ごとの重要度」αiとして用いられていても良い。
【0056】
[プログラム]
実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図6に示すステップA1~A4,
図7に示すステップB1~B3を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、実施の形態における巡回ルート作成装置10と巡回ルート作成方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、巡回ルート推測部11、巡回ルート作成部12、及びデータ取得部13として機能し、処理を行なう。
【0057】
また、本実施の形態では、データ格納部14及び機械学習モデル格納部15は、コンピュータに備えられたハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現できる。コンピュータとしては、汎用のPCの他に、スマートフォン、タブレット型端末装置も挙げられる。
【0058】
実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、巡回ルート推測部11、巡回ルート作成部12、及びデータ取得部13のいずれかとして機能しても良い。また、データ格納部14及び機械学習モデル格納部15は、実施の形態におけるプログラムを実行するコンピュータとは別のコンピュータの記憶装置によって実現されていても良い。
【0059】
[物理構成]
ここで、実施の形態におけるプログラムを実行することによって、巡回ルート作成装置10を実現するコンピュータについて
図8を用いて説明する。
図8は、実施の形態における巡回ルート作成装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0060】
図8に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0061】
また、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。この態様では、GPU又はFPGAが、実施の形態におけるプログラムを実行することができる。
【0062】
CPU111は、記憶装置113に格納された、コード群で構成された実施の形態におけるプログラムをメインメモリ112に展開し、各コードを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。
【0063】
また、実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0064】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0065】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0066】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0067】
なお、実施の形態における巡回ルート作成装置10は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、巡回ルート作成装置10は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0068】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)~(付記9)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0069】
(付記1)
放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するための装置であって、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測する、巡回ルート推測部と、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成する、巡回ルート作成部と、
を備えている、ことを特徴とする巡回ルート作成装置。
【0070】
(付記2)
付記1に記載の巡回ルート作成装置であって、
前記巡回ルート作成部が、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報の関係を、分岐式と目的関数とで示した、機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯と入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とする巡回ルート作成装置。
【0071】
(付記3)
付記2に記載の巡回ルート作成装置であって、
前記機械学習モデルが、更に、過去に放置物体が確認された場所の天候を示す天候情報、その場所における道路の状況を示す道路状況情報、及びその場所で実施されているイベントを特定するイベント情報のうち少なくとも1つを更に含む前記関係を、前記分岐式と前記目的関数とで示しており、
前記巡回ルート作成部が、前記機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯とに加えて、最新の天候情報、最新の道路状況情報、最新のイベント情報のうち少なくとも1つを入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とする巡回ルート作成装置。
【0072】
(付記4)
放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するための方法であって、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測する、巡回ルート推測ステップと、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成する、巡回ルート作成ステップと、
を有する、ことを特徴とする巡回ルート作成方法。
【0073】
(付記5)
付記4に記載の巡回ルート作成方法であって、
前記巡回ルート作成ステップにおいて、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報の関係を、分岐式と目的関数とで示した、機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯と入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とする巡回ルート作成方法。
【0074】
(付記6)
付記5に記載の巡回ルート作成方法であって、
前記機械学習モデルが、更に、過去に放置物体が確認された場所の天候を示す天候情報、その場所における道路の状況を示す道路状況情報、及びその場所で実施されているイベントを特定するイベント情報のうち少なくとも1つを更に含む前記関係を、前記分岐式と前記目的関数とで示しており、
前記巡回ルート作成ステップにおいて、前記機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯とに加えて、最新の天候情報、最新の道路状況情報、最新のイベント情報のうち少なくとも1つを入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とする巡回ルート作成方法。
【0075】
(付記7)
コンピュータによって、放置物体の確認業務を行う監視員の巡回ルートを作成するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、過去における監視員の巡回ルートを推測する、巡回ルート推測ステップと、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報に基づいて、予め設定されたエリアでの、設定された時間帯における、巡回ルートを作成する、巡回ルート作成ステップと、
実行させる、プログラム。
【0076】
(付記8)
付記7に記載のプログラムであって、
前記巡回ルート作成ステップにおいて、
推測された前記過去における監視員の巡回ルート、過去に放置物体が確認された場所を示す位置情報、及び過去に前記放置物体が確認された時刻を示す時刻情報の関係を、分岐式と目的関数とで示した、機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯と入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とするプログラム。
【0077】
(付記9)
付記8に記載のプログラムであって、
前記機械学習モデルが、更に、過去に放置物体が確認された場所の天候を示す天候情報、その場所における道路の状況を示す道路状況情報、及びその場所で実施されているイベントを特定するイベント情報のうち少なくとも1つを更に含む前記関係を、前記分岐式と前記目的関数とで示しており、
前記巡回ルート作成ステップにおいて、前記機械学習モデルに、前記巡回ルートの作成対象となるエリアと時間帯とに加えて、最新の天候情報、最新の道路状況情報、最新のイベント情報のうち少なくとも1つを入力して、前記巡回ルートを作成する、
ことを特徴とするプログラム。
【0078】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように本発明によれば、放置物体の確認業務における巡回ルートの策定が可能となる。本発明は、放置物体の確認業務の支援に有用である。
【符号の説明】
【0080】
10 巡回ルート作成装置
11 巡回ルート推測部
12 巡回ルート作成部
13 データ取得部
14 データ格納部
15 機械学習モデル格納部
20 端末装置
21 監視員
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス