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特許7435779測距誤差算出装置、測距誤差算出方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】測距誤差算出装置、測距誤差算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240214BHJP
   G01S 17/66 20060101ALI20240214BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/66
G01S17/89
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022533014
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026267
(87)【国際公開番号】W WO2022003976
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】若山 永哉
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057056(WO,A1)
【文献】特開2017-138110(JP,A)
【文献】国際公開第2007/069721(WO,A1)
【文献】特開2011-242199(JP,A)
【文献】特開平09-318732(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109471110(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得する測距情報取得手段と、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成する測距誤差分布情報生成手段と、
を有し、
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記測距誤差分布情報として、前記誤差分布の分布モデルと、当該分布モデルのパラメータである分布パラメータとを示す情報を生成し、
前記測距誤差分布情報生成手段は、指定された複数の分布関数のうち、前記測距情報の統計情報との誤差が最小となる分布関数を前記分布モデルとし、前記誤差が最小となるときの前記分布関数のパラメータを前記分布パラメータとして定める、
測距誤差算出装置。
【請求項2】
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記特徴情報ごとに、前記測距情報の統計情報を算出し、当該統計情報に基づき、前記測距誤差分布情報を生成する、請求項1に記載の測距誤差算出装置。
【請求項3】
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記測距情報の情報量が所定の閾値未満の場合、予め定めた分布関数を前記分布モデルとして定める、請求項1または2に記載の測距誤差算出装置。
【請求項4】
前記特徴情報は、前記測距装置から前記測距対象点までの距離に関する情報を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【請求項5】
前記測距情報は、三次元撮像情報であり、
前記特徴情報は、前記三次元撮像情報における前記測距対象点の平面座標情報を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【請求項6】
前記特徴情報は、前記測距対象点の色情報を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【請求項7】
前記特徴情報は、前記測距装置から前記測距対象点への入射角度を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【請求項8】
特定の前記測距対象点に対応する特定特徴情報を指定する外部入力があった場合、前記特徴情報と、前記測距誤差分布情報とを関連付けて保持する測距誤差分布情報保持手段から、前記特定特徴情報に関連付けられた前記測距誤差分布情報を取得し、当該測距誤差分布情報に基づき前記特定特徴情報に対応する測距誤差を示す測距誤差情報を取得する、測距誤差情報取得手段
をさらに備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【請求項9】
コンピュータにより、
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得し、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成し、
前記測距誤差分布情報として、前記誤差分布の分布モデルと、当該分布モデルのパラメータである分布パラメータとを示す情報を生成し、
指定された複数の分布関数のうち、前記測距情報の統計情報との誤差が最小となる分布関数を前記分布モデルとし、前記誤差が最小となるときの前記分布関数のパラメータを前記分布パラメータとして定める、
測距誤差算出方法。
【請求項10】
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得し、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成し、
前記測距誤差分布情報として、前記誤差分布の分布モデルと、当該分布モデルのパラメータである分布パラメータとを示す情報を生成し、
指定された複数の分布関数のうち、前記測距情報の統計情報との誤差が最小となる分布関数を前記分布モデルとし、前記誤差が最小となるときの前記分布関数のパラメータを前記分布パラメータとして定める処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距誤差算出装置、測距誤差算出方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
AGV(Automated Guided Vehicle)やロボットを環境の変化に応じて柔軟に動作させるためには、LiDAR(Light Detection and Ranging)やレーザー、三次元カメラなどのセンシングデバイスを用いて、外界の環境を適切に把握する必要がある。一方で、これらセンシングデバイスにて計測される環境情報は観測誤差を含むことから、これら観測誤差を良好に除去し、真の値を推定する技術がいくつか知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、処理速度を維持しながら距離画像から対象物体の位置姿勢を算出する精度の低下を防ぐために、対象物体までの概略位置を距離画像から取得し、距離情報のばらつきが小さいほどサンプリング点を少なくするようにサンプリングを調整する手法を備えた、位置姿勢計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-179910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、シミュレーションを用いて、AGVやロボットの導入検証を行うことへの要求が高まっている。シミュレーション上で事前に動作検証を行い、建屋や装置などのレイアウトがAGVやロボット動作に与える影響を把握し、これらを導入計画に反映させることで、AGVやロボットの導入効率および運用効率をより高めることができる。
【0006】
しかし、シミュレーション上では実環境が完全に再現させるわけではない。特にセンシングに関わる情報は、現実世界では光や電波の伝播、回折、透過といった複雑な物理現象を介して得られたものであり、それゆえに得られた情報には観測誤差が含まれる。今日のほとんどの計算機シミュレーションでは、計算資源および必要入力情報の観点から、これら物理現象を完全に再現することはされず、重力や摩擦、反射などごく単純な物理現象のみに限定して再現される。この結果、シミュレーション上ではセンシングに関わる観測誤差の多くが排除されるなど、必ずしも現実環境を良好に反映できないことから、シミュレーション上での問題点把握が不十分なものとなる。特許文献1には、上記のような課題及び解決手段については開示がない。
【0007】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、測距における誤差に関する情報を好適に算出可能な測距誤差算出装置、測距誤差算出方法及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
測距誤差算出装置の一の態様は、測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得する測距情報取得手段と、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成する測距誤差分布情報生成手段と、
を有し、
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記測距誤差分布情報として、前記誤差分布の分布モデルと、当該分布モデルのパラメータである分布パラメータとを示す情報を生成し、
前記測距誤差分布情報生成手段は、指定された複数の分布関数のうち、前記測距情報の統計情報との誤差が最小となる分布関数を前記分布モデルとし、前記誤差が最小となるときの前記分布関数のパラメータを前記分布パラメータとして定める、
測距誤差算出装置である。
【0009】
測距誤差算出方法の一の態様は、コンピュータにより、
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得し、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成し、
前記測距誤差分布情報として、前記誤差分布の分布モデルと、当該分布モデルのパラメータである分布パラメータとを示す情報を生成し、
指定された複数の分布関数のうち、前記測距情報の統計情報との誤差が最小となる分布関数を前記分布モデルとし、前記誤差が最小となるときの前記分布関数のパラメータを前記分布パラメータとして定める、
測距誤差算出方法である。なお、コンピュータは、複数の装置から構成されてもよい。
【0010】
プログラムの一の態様は、測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得し、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成し、
前記測距誤差分布情報として、前記誤差分布の分布モデルと、当該分布モデルのパラメータである分布パラメータとを示す情報を生成し、
指定された複数の分布関数のうち、前記測距情報の統計情報との誤差が最小となる分布関数を前記分布モデルとし、前記誤差が最小となるときの前記分布関数のパラメータを前記分布パラメータとして定める処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、測距における誤差に関する情報を好適に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における測距誤差算出装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態において測距誤差算出装置が実行するフローチャートの一例である。
図3】第2実施形態における測距システムの全体構成を示す図である。
図4】測距誤差算出装置のハードウェア構成の一例である。
図5】測距誤差算出装置の機能的な構成を示すブロック図の一例である。
図6】測距情報保持手段が保持する情報のデータ構造の一例を示す。
図7】測距誤差分布情報保持手段が保持する情報のデータ構造の一例を示す。
図8】第2実施形態における測距誤差算出装置の測距誤差分布情報の生成に関わる動作を示すフローチャートの一例である。
図9】測距誤差算出装置が実行する測距誤差情報の生成動作を示すフローチャートの一例である。
図10】第3実施形態における測距システムの全体構成を示す図である。
図11】第3実施形態における測距誤差算出装置の機能ブロック図を示す。
図12】第3実施形態における測距誤差分布情報保持手段が保持する情報のデータ構造の一例を示す。
図13】第4実施形態における測距誤差算出装置の構成を示すブロック図である。
図14図15と共に第4実施形態における測距誤差算出装置の誤差モデル生成に関わる動作を示すフローチャートの一例である。
図15図14と共に第4実施形態における測距誤差算出装置1cの誤差モデル生成に関わる動作を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、測距誤差算出装置、測距誤差算出方法及び記憶媒体の実施形態について説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態における測距誤差算出装置1の構成を示すブロック図である。測距誤差算出装置1は、測距情報取得手段11と、測距誤差分布情報生成手段12とを有する。測距誤差算出装置1は、複数の装置により構成されてもよい。この場合、複数の装置は、夫々に割り当てられた処理に必要な情報の授受を、装置間において行う。
【0015】
測距情報取得手段11は、測距対象点の特徴情報ごとに、測距対象点に対する時系列の測距情報を取得する。
【0016】
測距誤差分布情報生成手段12は、測距情報に基づき、測距装置から測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、特徴情報ごとに生成する。
【0017】
図2は、第1実施形態において測距誤差算出装置1が実行するフローチャートの一例である。測距誤差算出装置1の測距情報取得手段11は、測距対象点の特徴情報ごとに、測距対象点に対する時系列の測距情報を取得する(ステップS101)。そして、測距誤差算出装置1の測距誤差分布情報生成手段12は、測距情報に基づき、測距装置から測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、特徴情報ごとに生成する(ステップS102)。
【0018】
以上説明したように、第1実施形態における測距誤差算出装置1は、測距対象点ごとの特徴情報ごとに、時系列での測距情報に基づいて測距情報の統計的な性質を算出し、これに基づいて測距誤差の性質を指し示す測距誤差分布情報を生成する。これにより、シミュレーション上で再現したい対象点の特徴情報に対応する測距誤差分布情報を取得し、これに基づいて測距誤差をシミュレーション上で再現することができる。このように、第1実施形態における測距誤差算出装置1は、現実環境での測距の観測誤差をシミュレーション上で再現するために必要な情報を好適に生成することができる。
【0019】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態における測距誤差算出装置1aの構成および動作について説明する。第2実施形態は、第1実施形態における測距誤差算出装置1の動作の具体例を記載した実施形態である。なお、第1実施形態における測距誤差算出装置1と同様の構成および動作については、説明を適宜省略する。
【0020】
(1)全体構成
図3は、第2実施形態における測距システム100の全体構成を示す図である。測距システム100は、測距誤差算出装置1aと、測距装置2と、シミュレータ3と、測距対象物4とを有する。
【0021】
第2実施形態では、測距誤差算出装置1aは、測距装置2と、シミュレータ3とに有線又は無線により電気的に接続されている。
【0022】
測距装置2は、周囲に存在する測距対象物4の測距対象点4aを含む複数の測距対象点に対する距離を所定の周期により測定する。測距装置2は、LiDARなどのレーザーを用いるもののほか、レーダーを用いるものなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、測距対象物4は、複数存在してもよい。測距装置2は、測距対象点に対する測距の結果を示す測距情報「S1」を、測距誤差算出装置1aに供給する。
【0023】
シミュレータ3は、現実世界をコンピュータ上での仮想的な環境(机上環境)上で再現するためのプログラムを実行する。シミュレータ3は、ユーザ入力等により指定された特定の特徴情報(「特定特徴情報」とも呼ぶ。)を測距誤差算出装置1aに供給することで、測距誤差算出装置1aから、特定特徴情報に対応する測距装置2の測距誤差を示す測距誤差情報「S2」を取得する。特定特徴情報は、例えば、シミュレータ3を操作するユーザにより指定された特徴情報である。これにより、シミュレータ3は、測距装置2の測距誤差特性を、机上環境上に反映させることができる。
【0024】
(2)測距誤差算出装置のハードウェア構成
図4は、測距誤差算出装置1aのハードウェア構成の一例である。ハードウェアとして、プロセッサ5と、メモリ6と、インターフェース7とを含む。プロセッサ5、メモリ6及びインターフェース7は、データバス8を介して接続されている。
【0025】
プロセッサ5は、メモリ6に記憶されているプログラムを実行することにより、測距誤差算出装置1aの全体の制御を行うコントローラとして機能する。プロセッサ5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、量子プロセッサなどのプロセッサである。プロセッサ5は、複数のプロセッサから構成されてもよい。プロセッサ5は、コンピュータの一例である。
【0026】
メモリ6は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。また、メモリ6には、測距誤差算出装置1aが実行する処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、測距誤差算出装置1aが実行するプログラムは、メモリ6以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0027】
インターフェース7は、測距誤差算出装置1aと他の装置とを電気的に接続するためのインターフェースである。例えば、インターフェース7は、測距誤差算出装置1aと測距装置2とを接続するためのインターフェース、及び、測距誤差算出装置1aとシミュレータ3とを接続するためのインターフェースを含む。これらのインターフェースは、他の装置とデータの送受信を無線により行うためのネットワークアダプタなどのワイアレスインタフェースであってもよく、他の装置とケーブル等により接続するためのハードウェアインターフェースであってもよい。
【0028】
なお、測距誤差算出装置1aのハードウェア構成は、図4に示す構成に限定されない。例えば、測距誤差算出装置1aは、入力装置、表示装置、音出力装置の少なくとも一方を含んでもよい。
【0029】
(3)機能ブロック
図5は,測距誤差算出装置1aの機能的な構成を示すブロック図の一例である。図5に示すように、測距誤差算出装置1aのプロセッサ5は、機能的には、測距情報取得手段11aと、測距誤差分布情報生成手段12aと、測距誤差情報取得手段13aとをそれぞれ有する。また、メモリ6は、測距情報保持手段10aと、測距誤差分布情報保持手段14aとを有する。なお、図5では、データ又はタイミング信号の授受が行われるブロック同士を実線により結んでいるが、データ又はタイミング信号の授受が行われるブロックの組合せは図5に限定されない。後述する他の機能ブロックの図においても同様である。
【0030】
測距情報取得手段11aは、インターフェース7を介し、測距対象点の特徴情報ごとに、測距対象点に対する時系列の測距情報S1を、測距装置2から受信する。測距情報取得手段11aは、受信した測距情報S1を、対応する測距対象点の特徴情報と関連付けて、測距情報保持手段10aに供給する。測距情報保持手段10aは、測距対象点の特徴情報ごとに、測距対象点に対する時系列の測距情報S1を一時保存する。測距情報保持手段10aが保持する情報のデータ構造については後述する。
【0031】
測距誤差分布情報生成手段12aは、測距情報保持手段10aが保持する測距対象点の特徴情報ごとの測距情報に基づき、測距誤差分布情報を特徴情報ごとに生成する。ここで、測距誤差分布情報は、測距装置から測距対象点までの測距における誤差分布をモデル化した情報である。測距誤差分布情報生成手段12aによる測距誤差分布情報の具体的な生成方法については、図8を参照して後述する。測距誤差分布情報生成手段12aは、測距対象点の特徴情報ごとの測距誤差分布情報を、対応する測距対象点の特徴情報と関連付けて、測距誤差分布情報保持手段14aに供給する。
【0032】
測距誤差情報取得手段13は、測距誤差分布情報生成手段12aにて生成され、測距誤差分布情報保持手段14aに保持された測距誤差分布情報に基づき、測距誤差情報S2を取得(生成)する。測距誤差情報取得手段13は、例えば、特定特徴情報を含む所定の要求(即ち外部入力)をシミュレータ3から受信した場合に、特定特徴情報に対応する測距装置2の測距誤差を算出し、算出した測距誤差を示す測距誤差情報S2を、インターフェース7を介してシミュレータ3に供給する。
【0033】
測距誤差分布情報保持手段14aは、測距誤差分布情報生成手段12aによって生成された測距誤差分布情報を、測距対象点の特徴情報と関連付けて保持する。なお、測距情報保持手段10aと測距誤差分布情報保持手段14aの少なくともいずれかは、測距誤差算出装置1aの外部装置により実現されてもよい。この場合、測距誤差算出装置1aは、上記の外部装置とインターフェース7を介して有線又は無線により電気的に接続し、必要な情報の授受を上記の外部装置と行う。この場合、外部装置は、複数の装置から構成されたクラウドサーバであってもよい。
【0034】
なお、図5において説明した測距情報取得手段11a、測距誤差分布情報生成手段12a及び測距誤差情報取得手段13aの各構成要素は、例えば、プロセッサ5がプログラムを実行することによって実現できる。また、必要なプログラムを任意の不揮発性記憶媒体に記録しておき、必要に応じてインストールすることで、各構成要素を実現するようにしてもよい。なお、これらの各構成要素の少なくとも一部は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組合せ等により実現してもよい。また、これらの各構成要素の少なくとも一部は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイクロコントローラ等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。また、各構成要素の少なくとも一部は、ASSP(Application Specific Standard Produce)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されてもよい。このように、各構成要素は、プロセッサ以外のハードウェアにより実現されてもよい。以上のことは、後述する他の実施の形態においても同様である。
【0035】
(4)データ構造
図6は、測距情報保持手段10aが保持する情報のデータ構造の一例を示す。図6に示すように、測距情報保持手段10aは、測距対象点の特徴情報と、測距対象点に対する時系列の測距情報S1とを関連付けて記憶する。ここでは、測距情報保持手段10aは、特徴情報として、予め測定済みの測距対象点までの距離を示す情報を記憶し、測距情報S1として、当該測距対象点に対する測距時刻と測距結果との時系列での組み合わせを記憶している。
【0036】
図7は、測距誤差分布情報保持手段14aが保持する情報のデータ構造の一例を示す。図7に示すように、測距誤差分布情報保持手段14aは、特徴情報と、測距誤差分布情報とを関連付けて記憶する。ここでは、測距誤差分布情報保持手段14aは、特徴情報として、予め測定済みの測距対象点までの距離(即ち奥行情報)を記憶している。また、測距誤差分布情報保持手段14aは、測距誤差分布情報として、測距誤差の分布を示す分布モデル及び分布パラメータを記憶する。ここでは、分布モデルは正規分布であり、分布パラメータは、正規分布のパラメータである平均(ここでは測距平均)及び標準偏差である。測距誤差分布情報の生成方法については、後述する図8のフローチャートと共に説明する。
【0037】
(5)処理フロー
図8は、第2実施形態における測距誤差算出装置1aの測距誤差分布情報の生成に関わる動作を示すフローチャートの一例である。
【0038】
測距誤差算出装置1aの測距情報取得手段11aは、測距対象点の特徴情報と測距情報S1とを取得する(ステップS201)。そして、測距情報取得手段11aは、取得した測距対象点の特徴情報と測距情報S1とを関連付けて、時系列により測距情報保持手段10aに一時記憶させる(ステップS202)。測距情報取得手段11aは、特徴情報と測距情報S1とを、ステップS204での統計情報の生成において用いた後に消去してもよい。
【0039】
次に、測距情報取得手段11aは、測距誤差分布情報を算出するために十分な情報量の測距情報S1が測距対象点の特徴情報ごとに得られたか否か判定する(ステップS203)。例えば、測距情報取得手段11aは、測距対象点の特徴情報ごとに測距情報S1のサンプル数が所定の閾値以上となる場合、測距誤差分布情報を算出するために十分な情報量の測距情報S1が測距対象点の特徴情報ごとに得られたと判定する。上述の閾値は、例えば、測距情報S1に関する有意な統計情報を得るために必要なサンプル数となるように予め定められ、メモリ6等に予め記憶されている。
【0040】
そして、測距情報取得手段11aは、測距誤差分布情報を算出するために十分な情報量の測距情報S1が測距対象点の特徴情報ごとに得られていない場合(ステップS203;NO)、ステップS201およびS202の処理を再び実行する。
【0041】
測距誤差分布情報を算出するために十分な情報量の測距情報S1が測距対象点の特徴情報ごとに得られた場合(ステップS203;YES)、測距誤差算出装置1aの測距誤差分布情報生成手段12aは、測距対象点の特徴情報ごとに、以下に述べるステップS204~S206の処理を繰り返す。
【0042】
ステップS204では、測距誤差分布情報生成手段12aは、対象の特徴情報に対応する測距情報S1の統計情報を取得する(ステップS204)。本実施の形態における統計情報の具体的な一例としては、距離ごとの測距結果の分布情報が挙げられる。
【0043】
続いて、測距誤差分布情報生成手段12aは、取得した統計情報に基づき、測距誤差分布情報を生成する(ステップS205)。例えば、測距誤差分布情報は、分布モデルを示す情報と、分布パラメータとを含む。そして、測距誤差分布情報生成手段12aは、生成した測距誤差分布情報を、測距誤差分布情報保持手段14aに記憶させる(ステップS206)。測距誤差分布情報生成手段12aは、ステップS204~S206の処理を、対象となる全ての特徴情報に対して夫々実行する。
【0044】
ここで、ステップS205において算出する測距誤差分布情報に含まれる分布モデル及び分布パラメータについて補足説明する。
【0045】
分布モデルは、測距情報S1の統計情報に基づき、測距情報S1を特定の数式で表現したものである。分布モデルの具体的な一例としては、正規分布や、一様分布、対数正規分布、指数分布、アーラン分布などが挙げられる。ここで、ステップS205での測距誤差分布情報の生成動作における分布モデルの生成手法の一例では、測距誤差分布情報生成手段12aは、複数の分布モデルをあらかじめ用意しておき、各分布モデルと統計情報とのフィッティングの度合い(即ち誤差)を算出する。そして、測距誤差分布情報生成手段12aは、最も誤差の少ない最適な分布モデルを選択する。この場合、複数の分布モデルに関する情報は、予めメモリ6等に記憶されている。
【0046】
分布パラメータは、分布モデルの形状を一意に定めるための数値情報である。分布パラメータの数・種類は分布モデルによって異なり、たとえば正規分布においては、平均と標準偏差(あるいは分散)とが分布パラメータとなる。ステップS205での測距誤差分布情報の生成動作における分布パラメータの生成手法の一例では、測距誤差分布情報生成手段12aは、分布パラメータを変えながら各分布モデルと統計情報とのフィッティングの度合い(即ち誤差)を算出する。そして、測距誤差分布情報生成手段12aは、誤差を最小とする分布パラメータ及び分布モデルの組み合わせを、誤差分布を最も近似するモデルとして認識し、これらの組み合わせを示す測距誤差分布情報を生成する。誤差を最小とする分布パラメータの算出は、任意の最適化手法又は数値解析手法に基づき行われてもよい。
【0047】
次に、測距誤差分布情報に基づく測距誤差情報S2の生成動作について、図面を用いて説明する。図9は、測距誤差算出装置1aが実行する測距誤差情報S2の生成動作を示すフローチャートの一例である。
【0048】
まず、測距誤差算出装置1aは、シミュレータ3から、測距対象点の特定特徴情報を取得する(ステップS211)。続いて、測距誤差算出装置1aの測距誤差情報取得手段13aは、測距誤差分布情報保持手段14aから、取得した特定特徴情報をキーとして、誤差分布情報を取得する(ステップS212)。
【0049】
そして、測距誤差情報取得手段13aは、ステップS212で取得した誤差分布情報に基づき、測距誤差情報S2を算出する(ステップS213)。例えば、測距誤差情報取得手段13aは、以下のような手続きにて算出する。まず、測距誤差情報取得手段13aは、誤差分布情報に含まれる分布モデルおよび分布パラメータから、測距誤差の累積分布関数を生成する。そして、測距誤差情報取得手段13aは、0以上1未満の間で乱数を発生させ、発生させた乱数を、累積分布関数の逆関数の引数としたときの値を、測距誤差情報S2とする。これにより、測距誤差情報取得手段13aは、測距誤差の分布に応じた値を、測距誤差情報S2として取得することができる。
【0050】
その後、測距誤差情報取得手段13aは、算出した測距誤差情報S2を、シミュレータ3に出力し(ステップS214)、動作を完了する。
【0051】
(6)効果
次に、第2実施形態における効果について説明する。第2実施形態における測距誤差算出装置1aは、現実環境での観測誤差をシミュレーション上で再現することができる。即ち、測距誤差算出装置1aは、測距対象点ごとの特徴情報ごとに、時系列での測距情報に基づいて測距情報の統計的な性質を算出し、これに基づいて測距誤差の性質を指し示す測距誤差分布情報を生成することができる。また、シミュレータ3からの要求(即ち外部入力)に基づき指定された特定特徴情報に対応する測距誤差分布情報を取得し、これに基づいて測距誤差情報S2を算出し、シミュレータ3に返すことができる。よって、第2実施形態における測距誤差算出装置1aは、測距装置2の測距結果を示す測距情報S1の統計的な性質に基づいた、より現実環境に近い測距誤差をシミュレーション上で再現することができる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態における測距誤差算出装置1bの構成および動作について説明する。第3実施形態では、第2実施形態における測距装置2として、三次元撮像装置を用いる。なお、第1実施形態における測距誤差算出装置1又は第2実施形態における測距誤差算出装置1aと同様の構成および動作については、適宜同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図10は、第3実施形態における測距システム100bの全体構成を示す図である。また、図11は、第3実施形態における測距誤差算出装置1bの機能ブロック図を示す。第3実施形態では、測距装置2bは、三次元撮像装置であり、測距誤差算出装置1bは、測距装置2bの特性に応じた処理を行う。なお、測距誤差算出装置1bは、例えば、第2実施形態における測距誤差算出装置1aと同様、図4に示されるハードウェア構成を有する。
【0054】
測距装置2bは、三次元撮像装置であり、設置された周囲の対象までの距離を測定する。三次元撮像装置の具体例としては、ステレオカメラや、TOF(Time of Flight)法を用いたTOFカメラなどが挙げられる。測距装置2bは、測距対象物4において撮像範囲に含まれる測距対象面4bに対する三次元撮像情報「S1b」を、測距誤差算出装置1bに供給する。
【0055】
三次元撮像装置は、カメラ等の撮像装置を応用し奥行情報を取得できるようにしたものである。このため、一度に撮像範囲中の広範な測距情報を取得することができる。反面、撮像装置の光学特性上、撮像範囲内での測距誤差には、ばらつきが発生しやすい。例えば、撮像範囲における中心部と周辺部とを比較すると、一般に周辺部の測距誤差がより大きくなる。これは、周辺部のほうがより、光やレーザーなどのセンサへの入射条件が悪いことに起因する。
【0056】
測距情報取得手段11bは、測距装置2bから三次元撮像情報S1bを受信し、三次元撮像情報S1bに基づく情報を測距情報保持手段10bに記憶させる。この場合、測距情報取得手段11bは、測距対象点の特徴情報として、測定済みの測距対象点までの距離を示す情報に加え、測距対象面4bに含まれる各測距対象点の平面座標情報を取得する。平面座標情報は、測距装置2bの撮像範囲における座標情報である。そして、測距情報取得手段11bは、取得した特徴情報に対応する測距情報(即ち測距対象点までの距離の情報)を三次元撮像情報S1bに基づき認識し、各特徴情報を、対応する測距情報と関連付けて測距情報保持手段10bに記憶させる。
【0057】
測距誤差分布情報生成手段12bは、測距対象面4bに含まれる各測距対象点の特徴情報として、測定済みの測距対象点までの距離を示す情報に加え、測距対象面4bに含まれる各測距対象点の平面座標情報を取得する。そして、測距誤差分布情報生成手段12bは、取得した特徴情報ごとに、測距誤差分布情報を生成する。そして、測距誤差分布情報生成手段12bは、特徴情報毎の測距誤差分布情報を、測距誤差分布情報保持手段14bに記憶させる。従って、測距誤差分布情報保持手段14bは、測距対象点の特徴情報として、測定済みの測距対象点までの距離を示す情報に加え、測距対象点の撮像範囲中の平面座標情報を記憶する。
【0058】
測距誤差情報取得手段13bは、シミュレータ3から取得する特徴情報として、測定済みの測距対象点までの距離を示す情報に加え、測距対象点の撮像範囲中の平面座標情報を取得し、これらに基づき測距誤差を算出する。そして、測距誤差情報取得手段13bは、算出した測距誤差を示す測距誤差情報S2を、シミュレータ3へ供給する。
【0059】
図12は、第3実施形態における測距誤差分布情報保持手段14bが保持する情報のデータ構造の一例を示す。測距誤差分布情報保持手段14bは、測距対象点の特徴情報として、測距対象点までの距離を示す情報に加え、撮像範囲中の平面座標であるX座標およびY座標を、特徴情報として測距誤差分布情報に関連付けて記憶する。そして、測距誤差分布情報保持手段14bは、測距対象点までの距離、X座標、Y座標の組み合わせ毎に測距誤差分布情報生成手段12bが算出した測距誤差分布情報を記憶する。
【0060】
次に、第3実施形態の効果について説明する。第3実施形態における測距誤差算出装置1bは、上述した構成及び動作を行うことにより、より現実環境に近い観測誤差をシミュレーション上で再現することができる。すなわち、測距誤差算出装置1bは、測距対象点ごとの特徴情報として、測距対象点までの距離に加え、測距対象点の撮像範囲中の平面座標情報を用いる。これにより、測距誤差算出装置1bは、測距対象点の撮像範囲中における位置が測距誤差に与える影響を考慮して、測距情報の統計的な性質を算出し、これに基づいて測距誤差分布情報を生成することができる。よって、測距システム100bは、測距装置の測距情報の統計的な性質に加え、測距装置の光学的な性質に基づいた、より現実環境に近い測距誤差をシミュレーション上で再現することができる。
【0061】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態における測距誤差算出装置1cの構成および動作について説明する。なお、第1実施形態~第3実施形態における測距誤差算出装置1、1a、1bと同様の構成および動作については、その説明を適宜省略する。
【0062】
第4実施形態は、第2実施形態において、測距誤差分布情報を生成するための測距情報の情報量が不十分な場合においても測距誤差分布情報を生成可能な、測距誤差算出装置の動作について規定する。なお、本実施形態では、第2実施形態における測距誤差算出装置1aに適用する例について説明するが、第3実施形態における測距誤差算出装置1bに対しても、同様に適用可能である。
【0063】
図13は、第4実施形態における測距誤差算出装置1cの構成を示すブロック図である。第2実施形態における測距誤差算出装置1aと第4実施形態における測距誤差算出装置1cとの違いは、測距誤差算出装置1cの測距誤差分布情報生成手段12cの動作にある。測距誤差分布情報生成手段12cの動作の詳細について、図14及び図15のフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0064】
図14及び図15は、第4実施形態における測距誤差算出装置1cの誤差モデル生成に関わる動作を示すフローチャートの一例である。以降では、測距誤差分布情報生成手段12cの動作について、第2実施形態における動作との違いを中心に説明する。
【0065】
測距誤差算出装置1cは、ステップS401とステップS402において、図8のステップS201及びステップS202と同一の処理を行う。そして、測距誤差算出装置1cは、測距誤差分布情報を算出するために十分な情報量の測距情報S1が測距対象点の特徴情報ごとに得られたか否か判定する(ステップS403)。ステップS403での判定基準は、ステップS203での判定基準と同一である。そして、測距誤差分布情報を算出するために十分な情報量の測距情報S1が測距対象点の特徴情報ごとに得られた場合(ステップS403;YES)、測距誤差算出装置1cは、測距対象点の特徴情報ごとにステップS404~ステップS406を実行する。ステップS404~ステップS406の処理は、図8のステップS204~ステップS206と同一処理である。
【0066】
一方、測距誤差分布情報を算出するために十分な情報量の測距情報S1が得られない場合(ステップS403;NO)、測距誤差算出装置1cは、追加の測距情報S1を取得可能であるか否か判定する(ステップS407)。そして、追加の測距情報S1を取得可能である場合(ステップS407;YES)、測距誤差算出装置1cは、ステップS401へ処理を戻し、追加の測距情報S1の取得及び記憶を行う。一方、追加の測距情報S1を取得不可能である場合(ステップS407;NO)、測距誤差算出装置1cの測距誤差分布情報生成手段12cは、図15に示される処理Aを実行する。
【0067】
処理Aでは、測距誤差分布情報生成手段12cは、以下に説明するステップS408~ステップS413に関する処理を、測距対象点の特徴情報ごとに繰り返して(即ち対象となる測距対象点の全ての特徴情報の各々について)実行する。
【0068】
まず、測距誤差分布情報生成手段12cは、測距情報S1の統計情報を取得する(ステップS408)。この場合、測距誤差分布情報生成手段12cは、図8のステップS204と同一処理を行うことで、測距情報S1の統計情報を取得する。
【0069】
次に、測距誤差分布情報生成手段12cは、取得された統計情報について、測距誤差分布情報の生成において情報量が十分であるか否かを判定する(ステップS409)。なお、特徴情報ごとに取得される情報量に偏りが発生し得ることから、測距誤差分布情報生成手段12cは、対象の特徴情報について、測距誤差分布情報を生成するのに十分な情報量を取得できているか否かをステップS409において判定している。なお、測距誤差分布情報生成手段12cは、例えば、対象の特徴情報についての統計情報の算出に用いたサンプル数が所定の閾値以上である場合に、上述の情報量が十分であると判定し、当該閾値未満である場合に、上述の情報量が不十分であると判定する。
【0070】
そして、測距誤差分布情報生成手段12cは、対象の特徴情報について、測距誤差分布情報を生成するのに十分な情報量を取得できていると判定した場合(ステップS409:YES)、第2実施形態の図8のステップS205と同様、測距誤差分布情報を生成する(ステップS410)。そして、測距誤差分布情報生成手段12cは、生成した測距誤差分布情報を、測距誤差分布情報保持手段14aに記憶させる(ステップS411)。
【0071】
一方、対象の特徴情報について、測距誤差分布情報を生成するのに十分な情報量を取得できていない判定した場合(ステップS409:NO)、測距誤差分布情報生成手段12cは、分布モデルとして、事前に定められた分布関数を選択する(ステップS412)。事前に定められた分布関数の具体的な一例としては、正規分布や、対数正規分布などが挙げられる。次に、測距誤差分布情報生成手段12cは、選択した分布モデルと統計情報のフィッティングが最も高い分布パラメータ及び選択した分布モデルを示す測距誤差分布情報を生成する(ステップS413)。この場合、測距誤差分布情報生成手段12cは、フィッティングする分布モデルをステップS412で選択した分布モデルに固定し、分布パラメータを変化させた場合に最も統計情報と誤差が小さいときの分布パラメータを求める。そして、測距誤差分布情報生成手段12cは、ステップS412で選択した分布モデルと、求めた分布パラメータとを示す測距誤差分布情報を生成する。その後、測距誤差分布情報生成手段12cは、生成した測距誤差分布情報を測距誤差分布情報保持手段14aに記憶させる(ステップS411)。測距誤差分布情報生成手段12cは、対象となる測距対象点の全ての特徴情報についてステップS408~ステップS411に関する処理が終了した場合に、フローチャートの処理を終了する。
【0072】
次に、第4実施形態の効果について説明する。かかる構成および動作をとることにより、第4実施形態における測距誤差算出装置1cは、測距情報S1を十分に取得できていない状況においても、より適切な測距誤差分布情報を取得することができる。測距情報S1の情報量が不十分な状況においては、測距情報S1の統計的な特性を把握しづらいため、実際の誤差分布とはかけ離れた分布モデルが選択される可能性が考えられる。以上を勘案し、第4実施形態に係る測距誤差算出装置1cは、事前情報として分布関数を与えることにより、不適切な分布モデルが選択されることを回避する。これにより、測距情報S1の情報量が不十分な場合においても、より良好な測距誤差分布情報を生成することができ、より現実環境に近い測距誤差をシミュレーション上で再現することができる。
【0073】
[変形例]
以上、図面を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等が可能である。ここで、第1実施形態~第4実施形態に好適な変形例について説明する。以下の変形例は任意に組み合わせて上記の実施形態に適用してもよい。
【0074】
(変形例1)
測距誤差算出装置を構成する機能を、ネットワークなどのデータ交換可能な通信規格で接続された複数の装置で構成および動作するようにしてもよい。即ち、第1実施形態~第4実施形態に係る測距誤差算出装置は、電気的に接続された複数の装置から構成されてもよい。
【0075】
(変形例2)
測距対象点の特徴情報として、測距対象点の色情報をさらに含むようにしてもよい。この場合、測距誤差算出装置は、色情報が示す色の分類ごとの測距情報S1に基づき、色の分類ごとの測距誤差分布情報を算出する。
【0076】
かかる構成および動作をとることにより、測距誤差算出装置は、測距時のレーザーやレーダーの、測距対象点の色の違いに起因する反射特性を考慮した測距誤差分布情報を生成することができる。よって、測距誤差算出装置は、より現実環境に近い測距誤差をシミュレーション上で再現することができる。
【0077】
(変形例3)
測距対象点の特徴情報として、測距装置から測距対象点への入射角度をさらに含むようにしてもよい。この場合、測距誤差算出装置は、入射角度(所定長の入射角度範囲であってもよい)ごとの測距情報S1に基づき、入射角度ごとの測距誤差分布情報を算出する。
【0078】
かかる構成および動作をとることにより、測距誤差算出装置は、測距時のレーザーやレーダーの、測距対象点への入射角度の違いに起因する反射特性を考慮した測距誤差分布情報を生成することができる。よって、測距誤差算出装置は、より現実環境に近い測距誤差をシミュレーション上で再現することができる。
【0079】
(変形例4)
測距誤差情報取得手段13a、13bは、シミュレータ3から取得した特定特徴情報と合致する特徴情報が測距誤差分布情報保持手段14aに格納されていない場合、他の複数の特徴情報に対応する測距誤差分布情報に基づき測距誤差情報S2を生成してもよい。
【0080】
この場合、測距誤差情報取得手段13a、13bは、測距誤差分布情報保持手段14aに格納されている特徴情報のうち、シミュレータ3から取得した特定特徴情報と近似する特徴情報と、当該特徴情報に関連付いた測距誤差分布情報との組を取得する。なお、特定特徴情報と近似する特徴情報とは、例えば、奥行き(及び平面座標)を基準とする特定特徴情報との距離が所定距離以内となる特徴情報であってもよく、奥行き(及び平面座標)を基準とする特定特徴情報との距離が最も短い上位所定個数分の特徴情報であってもよい。なお、測距誤差情報取得手段13a、13bは、測距誤差分布情報保持手段14aから測距誤差分布情報を取得する場合、分布モデルが同一となる測距誤差分布情報を取得する。
【0081】
そして、測距誤差情報取得手段13a、13bは、さらに、取得した各々の特徴情報とシミュレータ3から取得した特定特徴情報との距離に応じて、取得した各々の測距誤差分布情報を重み付けする。この場合、測距誤差情報取得手段13a、13bは、特定特徴情報と特徴情報とが夫々示す奥行き(及び平面座標)の差に応じた分布パラメータの重み付け平均を行う。この場合、測距誤差情報取得手段13a、13bは、上述の差が小さい特徴情報ほど、対応する分布パラメータへの重みが大きくなるように設定する。そして、測距誤差情報取得手段13a、13bは、重み付け平均された測距誤差分布情報に基づいて、測距誤差情報S2を生成する。
【0082】
かかる構成および動作をとることにより、測距誤差算出装置は、測距対象点の特徴情報を網羅的に把握できていない場合においても、その周辺の特徴情報の測距誤差分布情報を用いて測距誤差を算出することができる。よって、より簡易、あるいは短時間での誤差モデル生成動作に基づいても、より現実環境に近い測距誤差をシミュレーション上で再現することが可能となる。
【0083】
また、本開示における測距誤差算出装置の全部又は一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記録して、この記憶媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0084】
また、「コンピュータに実行させるプログラムを格納した記憶媒体」とは、光磁気ディスク、ROM、不揮発性半導体メモリ等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータに実行させるプログラムを格納した記憶媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信回線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0085】
その他、上記の各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが以下には限られない。
【0086】
[付記1]
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得する測距情報取得手段と、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成する測距誤差分布情報生成手段と、
を有する測距誤差算出装置。
【0087】
[付記2]
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記特徴情報ごとに、前記測距情報の統計情報を算出し、当該統計情報に基づき、前記測距誤差分布情報を生成する、付記1に記載の測距誤差算出装置。
【0088】
[付記3]
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記測距誤差分布情報として、前記誤差分布の分布モデルと、当該分布モデルのパラメータである分布パラメータとを示す情報を生成する、付記1または2に記載の測距誤差算出装置。
【0089】
[付記4]
前記測距誤差分布情報生成手段は、指定された複数の分布関数のうち、前記測距情報の統計情報との誤差が最小となる分布関数を前記分布モデルとし、前記誤差が最小となるときの前記分布関数のパラメータを前記分布パラメータとして定める、付記3に記載の測距誤差算出装置。
【0090】
[付記5]
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記測距情報の情報量が所定の閾値未満場合、予め定めた分布関数を前記分布モデルとして定める、付記3に記載の測距誤差算出装置。
【0091】
[付記6]
前記特徴情報は、前記測距装置から前記測距対象点までの距離に関する情報を含む、付記1~5のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【0092】
[付記7]
前記測距情報は、三次元撮像情報であり、
前記特徴情報は、前記三次元撮像情報における前記測距対象点の平面座標情報を含む、付記1~6のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【0093】
[付記8]
前記特徴情報は、前記測距対象点の色情報を含む、付記1~7のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【0094】
[付記9]
前記特徴情報は、前記測距装置から前記測距対象点への入射角度を含む、付記1~8のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【0095】
[付記10]
特定の前記測距対象点に対応する特定特徴情報を指定する外部入力があった場合、前記特徴情報と、前記測距誤差分布情報とを関連付けて保持する測距誤差分布情報保持手段から、前記特定特徴情報に関連付けられた前記測距誤差分布情報を取得し、当該測距誤差分布情報に基づき前記特定特徴情報に対応する測距誤差を示す測距誤差情報を取得する、測距誤差情報取得手段
をさらに備えることを特徴とする、付記1~9のいずれか一項に記載の測距誤差算出装置。
【0096】
[付記11]
前記測距誤差取得手段は、前記特定特徴情報と合致する前記特徴情報が前記測距誤差分布情報保持手段に格納されていない場合、前記測距誤差分布情報保持手段に格納されている特徴情報のうち、前記特定特徴情報に近似する特徴情報に関連付いた前記測距誤差分布情報に基づき、前記測距誤差情報を取得する、付記10に記載の測距誤差算出装置。
【0097】
[付記12]
前記測距誤差情報取得手段は、前記近似する特徴情報と前記特定特徴情報との距離に応じて前記近似する特徴情報に関連付いた測距誤差分布情報の重み付けを行い、重み付けされた測距誤差分布情報に基づき、前記測距誤差情報を取得する、付記11に記載の測距誤差算出装置。
【0098】
[付記13]
コンピュータにより、
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得し、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成する、
測距誤差算出方法。
【0099】
[付記14]
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得し、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成する処理をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記憶媒体。
【0100】
[付記15]
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得する測距情報取得手段と、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成する測距誤差分布情報生成手段と、
を有する測距誤差算出システム。
【0101】
[付記16]
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記特徴情報ごとに、前記測距情報の統計情報を算出し、当該統計情報に基づき、前記測距誤差分布情報を生成する、付記15に記載の測距誤差算出システム。
【0102】
[付記17]
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記測距誤差分布情報として、前記誤差分布の分布モデルと、当該分布モデルのパラメータである分布パラメータとを示す情報を生成する、付記15または16に記載の測距誤差算出システム。
【0103】
[付記18]
前記測距誤差分布情報生成手段は、指定された複数の分布関数のうち、前記測距情報の統計情報との誤差が最小となる分布関数を前記分布モデルとし、前記誤差が最小となるときの前記分布関数のパラメータを前記分布パラメータとして定める、付記17に記載の測距誤差算出システム。
【0104】
[付記19]
前記測距誤差分布情報生成手段は、前記測距情報の情報量が所定の閾値未満場合、予め定めた分布関数を前記分布モデルとして定める、付記17に記載の測距誤差算出システム。
【0105】
[付記20]
前記特徴情報は、前記測距装置から前記測距対象点までの距離に関する情報を含む、付記15~19のいずれか一項に記載の測距誤差算出システム。
【0106】
[付記21]
前記測距情報は、三次元撮像情報であり、
前記特徴情報は、前記三次元撮像情報における前記測距対象点の平面座標情報を含む、付記15~20のいずれか一項に記載の測距誤差算出システム。
【0107】
[付記22]
前記特徴情報は、前記測距対象点の色情報を含む、付記15~21のいずれか一項に記載の測距誤差算出システム。
【0108】
[付記23]
前記特徴情報は、前記測距装置から前記測距対象点への入射角度を含む、付記15~22のいずれか一項に記載の測距誤差算出システム。
【0109】
[付記24]
特定の前記測距対象点に対応する特定特徴情報を指定する外部入力があった場合、前記特徴情報と、前記測距誤差分布情報とを関連付けて保持する測距誤差分布情報保持手段から、前記特定特徴情報に関連付けられた前記測距誤差分布情報を取得し、当該測距誤差分布情報に基づき前記特定特徴情報に対応する測距誤差を示す測距誤差情報を取得する、測距誤差情報取得手段
をさらに備えることを特徴とする、付記15~23のいずれか一項に記載の測距誤差算出システム。
【0110】
[付記25]
前記測距誤差取得手段は、前記特定特徴情報と合致する前記特徴情報が前記測距誤差分布情報保持手段に格納されていない場合、前記測距誤差分布情報保持手段に格納されている特徴情報のうち、前記特定特徴情報に近似する特徴情報に関連付いた前記測距誤差分布情報に基づき、前記測距誤差情報を取得する、付記24に記載の測距誤差算出システム。
【0111】
[付記26]
前記測距誤差情報取得手段は、前記近似する特徴情報と前記特定特徴情報との距離に応じて前記近似する特徴情報に関連付いた測距誤差分布情報の重み付けを行い、重み付けされた測距誤差分布情報に基づき、前記測距誤差情報を取得する、付記25に記載の測距誤差算出システム。
【0112】
[付記27]
測距誤差算出システムにより、
測距対象点の特徴情報ごとに、前記測距対象点に対する時系列の測距情報を取得し、
前記測距情報に基づき、測距装置から前記測距対象点までの測距における誤差分布に関する測距誤差分布情報を、前記特徴情報ごとに生成する、
測距誤差算出方法。
【0113】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0114】
1、1a~1c 測距誤差算出装置
2、2b 測距装置
3 シミュレータ
10a、10b 測距情報保持手段
11、11a、11b 測距情報取得手段
12、12a~12c 測距誤差分布情報生成手段
13a、13b 測距誤差情報取得手段
14a、14b 測距誤差分布情報保持手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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図15