(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの保護装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20240214BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02M1/00 C
H02M1/08 A
(21)【出願番号】P 2022553199
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2021074971
(87)【国際公開番号】W WO2021179858
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】202010174600.5
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】劉 杰
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106385009(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109599845(CN,A)
【文献】特開2005-006464(JP,A)
【文献】特開平05-308717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00
H02M 1/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの保護装置であって、
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの駆動信号を収集するとともに、前記駆動信号が前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルであり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする第2レベルから前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルに変換した場合に、遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号
をANDゲート処理して第1信号を生成し、当該第1信号を出力する収集回路と、
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのコレクタ・エミッタ間の電圧を検出するとともに、前記電圧と予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力する検出回路と、
前記第1信号も前記第2信号も有効である場合に、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに異常があったと判定して、アラーム信号又は保護信号を出力し、前記第1信号と前記第2信号のうち少なくとも1つの信号が無効である場合、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタが正常であると判定する判定回路と、を含む、
ことを特徴とする保護装置。
【請求項2】
前記収集回路は、前記駆動信号が前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする第2レベルであり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルから前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする第2レベルに変換した場合に、前記遅延処理を行わない、ことを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項3】
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする前記第1レベルはハイレベルであり、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする前記第2レベルはローレベルである、ことを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項4】
前記検出回路は、前記電圧が前記予め設定された閾値を超え且つ前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源が正常である場合に、ハイレベルの前記第2信号を出力し、
前記検出回路は、前記電圧が前記予め設定された閾値以下であり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源がオフにされ、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源がオンにされたが異常があった場合に、ローレベルの前記第2信号を出力し、
前記判定回路は、前記第1信号がハイレベルである場合、前記第1信号が有効であると判定し、前記第2信号がハイレベルである場合、前記第2信号が有効であると判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の保護装置。
【請求項5】
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする前記第1レベルはローレベルであり、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする前記第2レベルはハイレベルである、ことを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項6】
前記検出回路は、前記電圧が前記予め設定された閾値を超え且つ前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源が正常である場合に、ローレベルの前記第2信号を出力し、
前記検出回路は、前記電圧が前記予め設定された閾値以下であり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源がオフにされ、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源がオンにされたが異常があった場合に、ハイレベルの前記第2信号を出力し、
前記判定回路は、前記第1信号がローレベルである場合、前記第1信号が有効であると判定し、前記第2信号がローレベルである場合、前記第2信号が有効であると判定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の保護装置。
【請求項7】
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの駆動電源は、前記保護装置の検出電源とは異なるものであって、安全規則に従って離間している、ことを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項8】
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、インテリジェントパワーモジュールに配置されており、
前記インテリジェントパワーモジュールは、1つ又は複数の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを含み、
前記1つ又は複数の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの各々には前記保護装置が配置されている、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の保護装置。
【請求項9】
前記インテリジェントパワーモジュールは、上ブリッジ回路を含み、前記上ブリッジ回路は、3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを含み、前記3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの各々には前記保護装置が配置されており、
前記3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、それぞれ異なるブートストラップ電源を有し、
前記3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの駆動電源は、前記保護装置の検出電源とは異なるものであって、安全規則に従って離間している、
ことを特徴とする請求項8に記載の保護装置。
【請求項10】
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの保護方法であって、
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの駆動信号を収集するとともに、前記駆動信号が前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルであり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする第2レベルから前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルに変換した場合に、遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号
をANDゲート処理して第1信号を生成し、当該第1信号を出力するステップ、
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのコレクタ・エミッタ間の電圧を検出するとともに、前記電圧と予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力するステップ、および、
前記第1信号も前記第2信号も有効である場合に、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに異常があったと判定して、アラーム信号又は保護信号を出力し、前記第1信号と前記第2信号のうち少なくとも1つの信号が無効である場合、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタが正常であると判定するステップ、を含む、ことを特徴とする保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、半導体の技術分野に関し、特に、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT、Insulated Gate Bipolar Transistor)の保護装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBTは、電力・電子分野において幅広く応用されている。しかし、適切な保護回路が欠けていると、IGBTは、破損されやすい。IGBTの破損を引き起こす原因としてよく見られるのは、過電流や短絡(例えば、インバータ回路における上下アームが直接接続されている場合)などである。
【0003】
現在、幾つかのIGBTに向けた保護回路が既に現れた。例えば、参照文献1では、IGBTの上下アームが直接接続されているのを回避するために、ハードウェア上のインターロックと遅延によるダブルプロテクション仕組みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
ここで注意すべきなのは、以上の背景技術に対する紹介は、本願の技術案を明瞭的かつ完全的に説明するためのものであって、当業者が理解しやすいように供するものに過ぎない。また、それらの方案は、本願の背景技術部分において既に説明されたという理由だけで、当業者によって公知されたものとして認定されるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、発明者は、参照文献1を含む従来技術では、IGBTの駆動信号に対して、干渉除去や整形の処理を行ってから、ハードウェア上のインターロックと遅延の処理を行う必要があるので、駆動信号に影響を及ぼすだけではなく、整形処理回路と遅延処理回路のセットを2つも要するため、IGBTの性能が低下し、かつ保護回路のコストが増加し、さらに、遅延処理にかかる時間が一定で長いものなので、IGBTの制御に対する調節が不便であることを発見した。
【0007】
上述した技術的課題の少なくとも1つを解決するために、本願の実施例は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)の保護装置及び方法を提供し、IGBTの性能の向上及び保護回路のコストの削減が期待されている。また、IGBTの制御に対する調節容易性を向上することも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の実施例の一態様によれば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの保護装置であって、
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの駆動信号を収集するとともに、前記駆動信号が前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルであり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする第2レベルから前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルに変換した場合に、遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号に基づき、第1信号を出力する収集回路と、
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのコレクタ・エミッタ間の電圧(VCE)を検出するとともに、前記電圧と予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力する検出回路と、
前記第1信号も前記第2信号も有効である場合に、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに異常があったと判定して、アラーム信号又は保護信号を出力し、前記第1信号と前記第2信号のうち少なくとも1つの信号が無効である場合、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタが正常であると判定する判定回路と、を含む保護装置を提供する。
【0009】
それにより、IGBTの駆動信号のレベルに基づいて遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号に基づき、第1信号を出力するとともに、IGBTのVCEと予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力し、第1信号も第2信号も有効である場合に、アラーム信号又は保護信号を出力することで、簡単な構成で遅延処理を行うことができ、過電流保護及び/又は短絡保護を図るとともに、駆動信号にも影響を及ぼすことがない。また、IGBTの性能の向上及び保護回路のコストの削減を可能にするとともに、IGBTの制御に対する調節容易性を向上する。
【0010】
幾つかの実施例では、前記収集回路は、前記駆動信号が前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする第2レベルであり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルから前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする第2レベルに変換した場合に、前記遅延処理を行わない。
【0011】
それにより、駆動信号のレベルは、幾つかの場合のみに遅延処理が行われるが、他の幾つかの場合に遅延処理が行われないことで、IGBTの制御上の低遅延を可能にするとともに、IGBTの性能とIGBTの制御に対する調節容易性をさらに向上する。
【0012】
幾つかの実施例では、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする前記第1レベルはハイレベルであり、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする前記第2レベルはローレベルである。
【0013】
それにより、駆動信号のハイ・ローレベルに基づく駆動信号の収集を行い、ハイレベルの場合に遅延処理を行うが、ローレベルの場合に遅延処理を行わないことで、IGBTの性能の更なる向上及び保護回路のコストの削減を可能にするとともに、IGBTの制御に対する調節容易性を向上する。
【0014】
幾つかの実施例では、前記検出回路は、前記電圧が前記予め設定された閾値を超え且つ前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源が正常である場合に、ハイレベルの前記第2信号を出力し、前記検出回路は、前記電圧が前記予め設定された閾値以下であり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源がオフにされ、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源がオンにされたが異常があった場合に、ローレベルの前記第2信号を出力し、
前記判定回路は、前記第1信号がハイレベルである場合、前記第1信号が有効であると判定し、前記第2信号がハイレベルである場合、前記第2信号が有効であると判定する。
【0015】
それにより、簡単な構成でIGBTの状態を示す第2信号を出力することができるとともに、簡単な構成でIGBTに異常があったか否かを判定することもできる。
【0016】
幾つかの実施例では、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする前記第1レベルはローレベルであり、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする前記第2レベルはハイレベルである。
【0017】
それにより、駆動信号のハイ・ローレベルに基づく駆動信号の収集を行い、ローレベルの場合に遅延処理を行うが、ハイレベルの場合に遅延処理を行わないことで、IGBTの性能の更なる向上及び保護回路のコストの削減を可能にするとともに、IGBTの制御に対する調節容易性を向上する。
【0018】
幾つかの実施例では、前記検出回路は、前記電圧が前記予め設定された閾値を超え且つ前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源が正常である場合に、ローレベルの前記第2信号を出力し、前記検出回路は、前記電圧が前記予め設定された閾値以下であり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源がオフにされ、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのブートストラップ電源がオンにされたが異常があった場合に、ハイレベルの前記第2信号を出力し、
前記判定回路は、前記第1信号がローレベルである場合、前記第1信号が有効であると判定し、前記第2信号がローレベルである場合、前記第2信号が有効であると判定する。
【0019】
それにより、簡単な構成でIGBTの状態を示す第2信号を出力することができるとともに、簡単な構成でIGBTに異常があったか否かを判定することもできる。
【0020】
幾つかの実施例では、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの駆動電源は、前記保護装置の検出電源とは異なるものであって、安全規則に従って離間している。
【0021】
それにより、IGBTと保護回路に対して、電源を個別に配置することができ、製品種類の選択上の柔軟性を向上する。
【0022】
幾つかの実施例では、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、インテリジェントパワーモジュールに配置されており、前記インテリジェントパワーモジュールは、1つ以上の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを含み、前記1つ又は複数の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの各々には前記保護装置が配置されている。
【0023】
それにより、1つ又は複数のIGBTに対して、保護回路を個別に配置することができ、製品種類の選択上の柔軟性を向上する。
【0024】
幾つかの実施例では、前記インテリジェントパワーモジュールは、上ブリッジ回路を含み、前記上ブリッジ回路は、3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを含み、前記3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの各々には前記保護装置が配置されており、
前記3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタは、それぞれ異なるブートストラップ電源を有し、前記3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの駆動電源は、前記保護装置の検出電源とは異なるものであって、安全規則に従って離間している。
【0025】
それにより、上ブリッジ回路に対して、保護回路を個別に配置することができ、製品種類の選択上の柔軟性を向上するとともに、保護回路の電源と上ブリッジ回路における3つのIGBTの電源はそれぞれ、安全規則に従って離間しているため、3回路における駆動信号による共通接地の影響を受けることなく、信頼性をより一層向上することができる。
【0026】
本願の実施例の別の態様によれば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの保護方法であって、
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタの駆動信号を収集するとともに、前記駆動信号が前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルであり、又は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする第2レベルから前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンにする第1レベルに変換した場合に、遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号に基づき、第1信号を出力するステップ、
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのコレクタ・エミッタ間の電圧を検出するとともに、前記電圧と予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力するステップ、および、
前記第1信号も前記第2信号も有効である場合に、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに異常があったと判定して、アラーム信号又は保護信号を出力し、前記第1信号と前記第2信号のうち少なくとも1つの信号が無効である場合、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタが正常であると判定するステップ、を含む、保護方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本願の実施例による有益な効果の一つは以下の通りである。IGBTの駆動信号のレベルに基づいて遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号に基づき、第1信号を出力するとともに、IGBTのVCEと予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力し、第1信号も第2信号も有効である場合に、アラーム信号又は保護信号を出力することで、簡単な構成で遅延処理を行うことができ、過電流保護及び/又は短絡保護を図るとともに、駆動信号にも影響を及ぼすことがない。また、IGBTの性能の向上及び保護回路のコストの削減を可能にするとともに、IGBTの制御に対する調節容易性を向上する。
【0028】
後述する説明と図面を参照して、本願の特定な実施の形態は詳しく開示され、本願の原理が使用されることも示された。理解すべきことは、本願の実施の形態は、範囲上にそれで限定されていない。添付される特許請求の範囲の精神及び請求項の範囲内において、本願の実施の形態は多くの変更、修正及び均等物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本明細書に含まれる添付図面は、本願の実施例をさらに理解するために供されるもので、明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を例示するとともに、文字記載と合わせて本発明の原理を説明するものである。自明なことに、後述する添付図面はただ本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わないことを前提として、それらの添付図面に基づいて、他の添付図面を取得することができる。
【0030】
添付図面において、
【
図1】本願の実施例におけるIGBTの保護装置の一模式図である。
【
図2】本願の実施例における保護装置、制御装置、および、IPMの一模式図である。
【
図3】本願の実施例におけるIGBTの保護装置の一例示図である。
【
図4】本願の実施例におけるIGBTの保護装置の別の例示図である。
【
図5】本願の実施例におけるIGBTの保護方法の一模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照して、下記の明細書によれば、本願の上記及びその他の特徴がより明瞭になるであろう。明細書及び図面から、本願の特定実施形態は具体的に開示され、本願の原理を採用可能な実施形態の一部が示されるが、本願は記載される実施形態に限らないということにも注意すべきである。逆に、本願には、添付される請求の範囲内に属するすべての修正、変形及び均等物を含むこととする。
【0032】
本願の実施例では、用語である「第1の」、「第2の」などは、異なる要素を、名称上に区別させるために用いられるが、それらの要素の空間的配列又は時間的順序などを示すものではなく、それらの要素はそれらの用語によって限られていない。用語である「及び/または」は、関連して挙げられた用語のうちの1つまたは複数のいずれか又は全ての組み合わせを含む。用語である「含む」、「備える」、「有する」などは、記述の特徴、要素、素子または部品の存在を指すが、1つまたは複数の他の特徴、要素、素子または部品の存在又は添加が排除されていない。
【0033】
本願の実施例では、単数態様を示す「一」、「当該」などは、複数態様を含み、「1種」又は「1類」として広義的に理解されるべきであるが、「1つ」の意味に限られていない。また、用語である「前記」は、上下文に別途で説明した場合を除き、単数態様も複数態様も含むものとして理解されるべきである。また、用語である「による」は、上下文に別途で説明した場合を除き、「少なくとも一部は……による」と理解されるべきであり、用語である「基づく」は、上下文に別途で説明した場合を除き、「少なくとも一部は……に基づく」と理解されるべきである。
【0034】
1つの実施の形態の記載及び/又は示された特徴に対して、同様又は類似する様態で1つ又は更に多くのその他の実施の形態に使用され、その他の実施の形態の特徴と組み合わせ、或はその他の実施の形態の特徴を切り替えることができる。強調すべきことは、術語である「備える/含む」は本文で特徴、整体部材、ステップ又は部材の存在を示すために使われているが、1つ又は更に多くのその他の特徴、整体部材、ステップ又は部材の存在或は付加が排除されるわけではない。
【0035】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。本願の実施例におけるIGBTの保護装置は、単独の製品又は部材として、IGBTと組み合せられてもよいし、IGBTと集積されて1つの製品または部材とされてもよいし、IGBTを含むインテリジェントパワーモジュール(IPM、IntelligentPowerModule)に集積されてもよいが、本願では、それらに限定されていない。
【0036】
第1の態様による実施例
本願の実施例は、IGBTの保護装置を提供する。
図1は、本願の実施例におけるIGBTの保護装置の一模式図である。
図1に示されるように、IGBTの保護装置100は、
IGBTの駆動信号を収集するとともに、前記駆動信号が前記IGBTをオン(ON)にする第1レベルであり、又は、前記IGBTをオフ(OFF)にする第2レベルから前記IGBTをオン(ON)にする第1レベルに変換した場合に、遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号に基づき、第1信号を出力する収集回路101と、
前記IGBTのコレクタ・エミッタ間の電圧(V
CE)を検出するとともに、前記電圧と予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力する検出回路102と、
前記第1信号も前記第2信号も有効である場合に、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタに異常があったと判定して、アラーム信号又は保護信号を出力し、前記第1信号と前記第2信号のうち少なくとも1つの信号が無効である場合、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタが正常であると判定する判定回路103と、を含む。
【0037】
幾つかの実施例では、IGBTの駆動信号は、例えば、パルス幅変調(PWM、Pulse Width Modulation)信号であってもよい。当該PWM信号は、ハイレベルの場合、当該IGBTをオン(ON)にするが、ローレベルの場合、当該IGBTをオフ(OFF)にする。ただし、本願では、それに限定されておらず、例えば、他の駆動信号であってもよい。
【0038】
幾つかの実施例では、IGBTの駆動信号は、例えば、中央処理器(CPU、Central Process Unit)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA、Field-Programmable Gate Array)のような制御装置から、IGBTを含むインテリジェントパワーモジュール(IPM、Intelligent Power Module)に出力されてもよいが、本願では、それに限定されていない。
【0039】
図2は、本願の実施例における保護装置、制御装置、および、IPMの一模式図である。
図2に示されるように、CPU/FPGA201は、PWM信号を出力することができ、当該PWM信号がIPM202におけるIGBTを制御可能なものである。
図2に示されるように、IGBTの保護装置100は、当該PWM信号を収集してもよい。例えば、当該PWM信号がハイレベルであり、又は、ローレベルからハイレベルに変換した場合に、遅延処理を行うとともに、遅延処理後の信号と当該PWM信号を、ANDゲート処理して、第1信号を生成してもよい。
【0040】
図2に示されるように、IGBTの保護装置100は、IPM202におけるIGBTの電圧V
CEを収集してもよい。例えば、前記V
CEが予め設定された閾値を超え且つIGBTのブートストラップ電源が正常である場合に、ハイレベルを出力し、前記V
CEが前記予め設定された閾値以下であり、又は、IGBTのブートストラップ電源がオフにされ、又は、IGBTのブートストラップ電源がオンにされたが異常があった場合に、ローレベルを出力して、第2信号を生成してもよい。
【0041】
例えば、IGBTの保護装置100は、ハイレベルの第1信号と第2信号を有効なものとして判定してもよい。第1信号も第2信号も有効である場合、IGBTの保護装置100は、IPM202におけるIGBTの運転に異常があったと判定して、CPU/FPGA201に対してアラーム信号または保護信号を出力してもよいし、又は、IPM202に対してアラーム信号又は保護信号を直接に出力してもよい。第1信号及び/又は第2信号が無効である場合、IGBTの保護装置100は、IPM202におけるIGBTの運転が正常であると判定し、アラーム信号又は保護信号を出力しない。
【0042】
本願の実施例では、IGBTの運転に異常があったことは、IGBTに対して破壊又は損害作用を与える可能性があると理解されてもよい。例えば、過電流及び/又は短絡の場合が挙げられる。IGBTのブートストラップ電源がオフにされ、又は、ブートストラップ電源がオンにされたが異常(例えば、低圧など)があった場合について、他の回路または部材に検出や保護を行ってもよい。本願の実施例では、それらの場合に、IGBTが破壊又は損害作用を受けることがないので、正常の場合として見なされる。
【0043】
図2に示されるように、PWM信号に対して、(選択的に)信号処理、信号分離などを行ってもよい。当該構成は、サーボドライバに適用されてもよい。
図2に示す構成は、コンバータ、インバータなどに適用されてもよい。本願は、それに限定されておらず、IGBTが応用された場面であれば、本願の実施例における保護装置の適用が考えられる。
【0044】
本願の実施例では、IGBTの駆動信号のレベルに基づいて遅延処理を行い、遅延処理後の信号と駆動信号に基づき、第1信号を出力するとともに、IGBTのVCEと予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力し、第1信号も第2信号も有効である場合に、アラーム信号又は保護信号を出力することで、簡単な構成で遅延処理を行うことができ、過電流保護及び/又は短絡保護を図るとともに、駆動信号にも影響を及ぼすことがない。また、IGBTの性能の向上及び保護回路のコストの削減を可能にするとともに、IGBTの制御上の調節容易性を向上する。
【0045】
幾つかの実施例では、収集回路101は、前記駆動信号が前記IGBTをオフにする第2レベルであり、又は、前記IGBTをオンにする第1レベルから前記IGBTをオフにする第2レベルに変換した場合に、遅延処理を行わない。
【0046】
それにより、駆動信号のレベルに基づいて、幾つかの場合のみに遅延処理が行われるが、他の幾つかの場合に遅延処理が行われないことで、IGBTの制御の低遅延を可能にするとともに、IGBTの制御に対する調節容易性をさらに向上する。
【0047】
幾つかの実施例では、IGBTをオンにする前記第1レベルはハイレベルであり、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする前記第2レベルはローレベルである。
【0048】
それにより、駆動信号のハイ・ローレベルに基づいて駆動信号の収集を行い、ハイレベルの場合に遅延処理を行うが、ローレベルの場合に遅延処理を行わないことで、IGBTの性能の更なる向上及び保護回路のコストの削減を可能にするとともに、IGBTの制御に対する調節容易性を向上する。
【0049】
幾つかの実施例では、検出回路102は、前記電圧が前記予め設定された閾値を超え且つIGBTのブートストラップ電源が正常である場合に、ハイレベルの前記第2信号を出力し、検出回路102は、前記電圧が前記予め設定された閾値以下であり、又は、IGBTのブートストラップ電源がオフにされ、又は、IGBTのブートストラップ電源がオンにされたが異常があった場合に、ローレベルの前記第2信号を出力し、
判定回路103は、前記第1信号がハイレベルである場合、前記第1信号が有効であると判定し、前記第2信号がハイレベルである場合、前記第2信号が有効であると判定する。
【0050】
それにより、簡単な構成でIGBTの状態を示す第2信号を出力することができるとともに、簡単な構成でIGBTに異常があったか否かを判定することもできる。
【0051】
ここで注意すべきなのは、第1レベルと第2レベルは、それらに限定されておらず、例えば、第1レベルがローレベルであり、第2レベルがハイレベルであってもよく、相応に処理してもよい。
【0052】
幾つかの実施例では、IGBTをオンにする前記第1レベルはローレベルであり、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフにする前記第2レベルはハイレベルである。
【0053】
それにより、駆動信号のハイ・ローレベルに基づいて駆動信号の収集を行い、ローレベルの場合に遅延処理を行うが、ハイレベルの場合に遅延処理を行わないことで、IGBTの性能の更なる向上及び保護回路のコストの削減を可能にするとともに、IGBTの制御に対する調節容易性を向上する。
【0054】
幾つかの実施例では、検出回路102は、前記電圧が前記予め設定された閾値を超え且つIGBTのブートストラップ電源が正常である場合に、ローレベルの前記第2信号を出力し、検出回路102は、前記電圧が前記予め設定された閾値以下であり、又は、IGBTのブートストラップ電源がオフにされ、又は、IGBTのブートストラップ電源がオンにされたが異常があった場合に、ハイレベルの前記第2信号を出力し、
判定回路103は、前記第1信号がローレベルである場合、前記第1信号が有効であると判定し、前記第2信号がローレベルである場合、前記第2信号が有効であると判定する。
【0055】
それにより、簡単な構成でIGBTの状態を示す第2信号を出力することができるとともに、簡単な構成でIGBTに異常があったか否かを判定することもできる。
【0056】
以下は、説明の便宜上、第1レベルがハイレベルであり、第2レベルがローレベルである場合を例にして、回路により、本願の実施例における保護装置を例示的に説明する。
【0057】
図3は、本願の実施例におけるIGBTの保護装置の一例示図である。
図3に示されるように、保護装置300は、収集回路301と、検出回路302と、判定回路303を含む。
【0058】
収集回路301について、
図3に示されるように、分岐路3011によって、PWM信号が遅延処理されるとともに、遅延処理の信号がANDゲート3013の1つの入力端に入力されてもよい。また、分岐路3012によって、当該PWM信号は、ANDゲート3013のもう1つの入力端に入力される。
【0059】
例えば、PWM信号がハイレベル(H)である場合、又は、ローレベル(L)からハイレベル(H)に変換した場合、PWM信号は、収集回路301におけるコンデンサなどの素子によって遅延される。遅延時間は、抵抗やコンデンサの大きさなどによって決められてもよい。例えば、当該遅延時間は、IGBTの最大許容時間よりも短く、IGBTのオン時間とソフトウェアによる処理時間の和よりも大きいとしている。抵抗やコンデンサなどの素子の値を調整することにより、遅延時間の大きさを調節することができ、調節容易性を向上することもできる。
【0060】
図3に示されるように、PWM信号がローレベル(L)である場合、又は、ハイレベル(H)からローレベル(L)に変換した場合に、分岐路3012における当初収集された駆動信号とのANDゲート処理が行われたので、分岐路3011での遅延処理がキャンセルされ、即ち、遅延処理が行わないこととなる。それにより、遅延を低減することができ、IGBTの性能を向上する。
【0061】
検出回路302について、
図3に示されるように、IGBTのブートストラップ電源(例えば、
図3に示す検出電源V
Bと関係するもの)がオンにされて正常に作動し、且つ、V
CEが予め設定された閾値(例えば、検出電源V
Bによって決められるもの)よりも大きい場合、検出回路302により、信号が位置Aで生成され、フォトカプラ3021により、第2信号がハイレベルとなる。V
CEが予め設定された閾値以下であり、又は、IGBTのブートストラップ電源がオフにされ、又は、IGBTのブートストラップ電源がオンにされたが異常があった場合に、検出回路302により、信号が位置Aで生成されることなく、フォトカプラ3021により、第2信号がローレベルとなる。
【0062】
判定回路303について、
図3に示されるように、第1信号がANDゲート3031の1つの入力端に入力され、第2信号がANDゲート3031のもう1つの入力端に入力される。
【0063】
例えば、前記第1信号がハイレベルである場合、前記第1信号が有効であり、前記第2信号がハイレベルである場合、前記第2信号が有効である。判定回路303は、第1信号も第2信号もハイレベルである場合、ハイレベルを出力するとともに、IGBTが異常であると判定し、当該ハイレベルがアラーム信号または保護信号として出力される。第1信号及び/又は第2信号がローレベルである場合、ローレベルを出力するとともに、IGBTが正常であると判定する。
【0064】
以上の
図3は、本願の実施例を例示的に説明するものに過ぎず、本願では、それに限定されておらず、実際な必要に応じて、具体的な部品を調整することができる。例えば、収集回路301では、ANDゲート3013のみを例にして第1信号を例示的に説明していたが、本願は、それに限定されておらず、例えば、他の素子又は部材又は回路を用いて同一または類似した機能を実現させてもよい。
【0065】
幾つかの実施例では、IGBTの駆動電源(例えば、
図3に示す電源V
N)は、保護装置の検出電源(例えば、
図3に示す電源V
B)とは異なるものであって、安全規則に従って離間している。例えば、
図3に示されるように、V
BとV
Nは、個別的に配置されるとともに、安全規則に従って互いに離間している。
【0066】
それにより、IGBTと保護回路に対して、電源を個別に配置することができ、製品種類の選択上の柔軟性を向上する。
【0067】
幾つかの実施例では、IGBTは、IPMに配置されており、前記IPMは、1つ又は複数のIGBTを含み、前記1つ又は複数のIGBTの各々には前記保護装置が配置されている。
【0068】
それにより、1つ又は複数のIGBTに対して、保護回路を個別に配置することができ、製品種類の選択上の柔軟性を向上する。
【0069】
幾つかの実施例では、前記IPMは、上ブリッジ回路を含み、前記上ブリッジ回路は、3つのIGBTを含み、前記3つのIGBTの各々には前記保護装置が配置されており、前記3つのIGBTは、それぞれ異なるブートストラップ電源を有し、前記3つのIGBTの駆動電源は、前記保護装置の検出電源とは異なるものであって、安全規則に従って離間している。
【0070】
図4は、本願の実施例におけるIGBTの保護装置の別の例示図である。
図4に示されるように、U、V、Wの3相に向けて、それぞれの保護装置が配置されてもよい。しかも、U、V、Wの3相に対応する3つのIGBTの駆動電源(
図4に示すV
N)及び保護装置の検出電源(
図4に示すV
B(U)、V
B(V)、V
B(W))の合計4路の電源は、個別的に配置されるとともに、安全規則に従って互いに離間している。
【0071】
図4に示されるように、U、V、Wの3相にそれぞれ配置された保護装置の出力信号は、トランジスタ401に入力されてもよい。当該トランジスタ401により、上ブリッジ回路における3路のIGBTに対する過電流保護及び/又は短絡を総合的に判断することができ、そのうちのいずれか1路から信号(例えば、有効なハイレベルを示すもの)が出力された場合、アラーム信号又は保護信号を出力することにより、回路保護の信頼性をさらに向上することができる。
【0072】
それにより、上ブリッジ回路に対して、保護回路を個別に配置することができ、製品種類の選択上の柔軟性を向上するとともに、保護回路の検出電源と上ブリッジ回路における3つのIGBTの駆動電源はそれぞれ、安全規則に従って離間しているため、3回路における駆動信号による共通接地の影響を受けることなく、信頼性をより一層向上することができる。
【0073】
ここで注意すべきなのは、
図1~
図4は、本願の実施例を例示的に説明するものに過ぎず、本願ではそれらに限定されていない。例えば、他の部材または装置が設けられてもよい。具体的には、関連する技術を参照されたい。ここでは説明を省略されたい。
図1~
図4には、特に明記されていない部材または素子について、関連する技術を参照されたい。本願では、それらについて限定されていない。
【0074】
また、以上は、各装置または部材を例示的に説明していたが、本願では、それらに限定されていない。各装置または部材に関する具体的な内容について、関連する技術を参照されたい。また、
図1~4に示されていない装置または部材を増加したり、
図1~4に示す1つ又は複数の装置または部材を減少したりしてもよい。
【0075】
以上の実施例から分かるように、IGBTの駆動信号のレベルに基づいて遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号に基づき、第1信号を出力するとともに、IGBTのVCEと予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力し、第1信号も第2信号も有効である場合に、アラーム信号又は保護信号を出力することで、簡単な構成で遅延処理を行うことができ、過電流保護及び/又は短絡保護を図るとともに、駆動信号にも影響を及ぼすことがない。また、IGBTの性能の向上及び保護回路のコストの削減を可能にするとともに、IGBTの制御に対する調節容易性を向上する。
【0076】
第2の態様による実施例
本願の実施例は、IGBTの保護方法をさらに提供し、第1の態様による実施例と同一の内容を有する部分への説明を省略されたい。
【0077】
図5は、本願の実施例におけるIGBTの保護方法の一模式図である。
図5に示されるように、当該方法では、
IGBTの駆動信号を収集するとともに、前記駆動信号がIGBTをオンにする第1レベルであり、又は、IGBTをオフにする第2レベルからIGBTをオンにする第1レベルに変換した場合に、遅延処理を行い、遅延処理後の信号と前記駆動信号に基づき、第1信号を出力するステップ501、
IGBTのコレクタ・エミッタ間の電圧を検出するとともに、前記電圧と予め設定された閾値に基づき、第2信号を出力するステップ502、および、
前記第1信号も前記第2信号も有効である場合に、IGBTに異常があったと判定して、アラーム信号又は保護信号を出力し、前記第1信号と前記第2信号のうち少なくとも1つの信号が無効である場合、IGBTが正常であると判定するステップ503、を含む。
【0078】
ここに注意すべきなのは、上記
図5が本願の実施例を例示的に説明するためのものに過ぎず、本願は、それらに限られていない。例えば、各ステップ間の実行順序を調整することができ、また、他のいくつかのステップを追加することができ、あるいは、その中からいくつかのステップを削減することもできる。当業者は、上記内容に応じて適宜に変形することができるが、上記
図5の記載に限られていない。
【0079】
本願の実施例は、IPMをさらに提供し、第1の態様による実施例と同一の内容を有する部分への説明を省略されたい。
【0080】
本願の実施例におけるIPMは、1つ又は複数のIGBTを含み、前記IPMは、第1の態様による実施例に記載の保護装置100をさらに含み、例えば、第1の態様による実施例に記載の1つ又は複数の保護装置100が当該IPMに集積化されてもよい。
【0081】
幾つかの実施例では、当該IPMは、上ブリッジ回路を含み、前記上ブリッジ回路は、3つのIGBTを含み、前記3つのIGBTの各々には前記保護装置が配置されており、前記3つのIGBTは、それぞれ異なるブートストラップ電源を有し、前記3つのIGBTの駆動電源は、前記保護装置の検出電源とは異なるものであって、安全規則に従って離間している。
【0082】
幾つかの実施例では、上ブリッジ回路における3つのIGBTに向けて、それぞれ配置された保護装置の出力信号は、トランジスタに入力されてもよい。当該トランジスタにより、上ブリッジ回路における3路のIGBTに対する過電流保護及び/又は短絡を総合的に判断することができ、そのうちのいずれか1路から信号(例えば、有効なハイレベルを示すもの)が出力された場合、アラーム信号又は保護信号を出力することにより、回路保護の信頼性をさらに向上することができる。
【0083】
以上、具体的な実施の形態を結び付けて、本願を説明した。しかし、当業者が理解すべきことは、それらの記載はいずれも例示的なものに過ぎず、本願の保護範囲に対する限定ではない。当業者は本願の精神と原理に基づいて、本願に対して種々変形や修正を行うことができるが、それらの変形と修正も本発明の範囲内に入っている。
【0084】
以上は、本願における好ましい実施の形態を添付図面を参照しながら説明していた。それらの実施形態の多くの特徴や利点は、上記の明細書の詳細からすれば、明瞭なものとなるため、添付される特許請求の範囲は、それらの実施形態における、その真の精神や範囲内に入っているそれらの特徴や利点を全部カバーすることを目的にしている。また、当業者であれば、多くの修正や変形を容易に想到できるはずであるため、本願における実施の形態は、例示や説明した精確な構造と操作に限定されるものではなく、その範囲内に入っている全ての適切な修正、変形、や均等物をカバーできるものである。