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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20240214BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240214BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02M7/493
H02M7/48 R
H02J3/38 150
H02J3/38 160
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022558669
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040428
(87)【国際公開番号】W WO2022091249
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 和樹
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一誠
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-23875(JP,A)
【文献】特開2013-198354(JP,A)
【文献】特開2019-180189(JP,A)
【文献】国際公開第2012/023209(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/493
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直流電源と、
前記複数の直流電源にそれぞれ対応して設けられ、対応する直流電源から供給される直流電力を、直流母線を介して直流端から受け、交流電力に変換する複数の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路のそれぞれに設けられた複数の交流端は、並列接続点を介して直接並列接続され、前記複数の交流端から出力された前記交流電力を、前記並列接続点を介して交流側に供給する交流電力系統と、
前記複数の直流電源と前記複数の電力変換回路との間の複数の直流負極母線のうち少なくとも2つと大地との間をそれぞれ接続する複数の接地線と、
前記複数の接地線にそれぞれ直列に挿入され、カソード側が前記直流負極母線に接続され、アノード側が接地される複数のダイオードと、
を備えることを特徴とする電力変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換器において、
前記複数のダイオードに流れる電流をそれぞれ検出する複数の電流検出器と、
前記複数の電流検出器が検出する前記電流を監視する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする電力変換器。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換器において、
前記複数の直流母線にそれぞれ直列に挿入され、前記複数の直流母線をそれぞれ開放可能な複数の第1遮断器を
さらに備え、
前記制御部は、前記複数の電流検出器のうち何れかの電流検出器が前記電流を検出したときは、前記複数の第1遮断器に開放動作指示を与える
ことを特徴とする電力変換器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の電力変換器において、
前記複数の接地線のそれぞれに前記ダイオードと直列に挿入され、前記複数の接地線をそれぞれ開放可能な複数の第2遮断器を
さらに備え、
前記制御部は、前記複数の電流検出器のうち何れかの電流検出器が前記電流を検出したときは、前記複数の第2遮断器に開放動作指示を与える
ことを特徴とする電力変換器。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れか1項に記載の電力変換器において、
前記交流電力系統の電路に挿入され、前記電路を開放可能な第3遮断器を
さらに備え、
前記制御部は、前記複数の電流検出器のうち何れかの電流検出器が前記電流を検出したときは、前記第3遮断器に開放動作指示を与える
ことを特徴とする電力変換器。
【請求項6】
請求項1に記載の電力変換器において、
前記複数の接地線のそれぞれに前記ダイオードと直列に挿入され、前記ダイオードに所定の閾値以上の電流が流れたときに溶断する複数のヒューズと、
前記複数の直流端の前記直流電力の電位変動をそれぞれ検出する複数の電圧検出器と、
前記ヒューズが溶断したときの前記複数の電圧検出器が検出する前記電位変動を監視する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする電力変換器。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換器において、
前記複数の直流母線にそれぞれ直列に挿入され、前記複数の直流母線をそれぞれ開放可能な複数の第1遮断器を
さらに備え、
前記制御部は、前記複数の電圧検出器のうち何れかの電圧検出器が前記電位変動を検出したときは、前記複数の第1遮断器に開放動作指示を与える
ことを特徴とする電力変換器。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の電力変換器において、
前記複数の接地線のそれぞれに前記ダイオードと直列に挿入され、前記複数の接地線をそれぞれ開放可能な複数の第2遮断器を
さらに備え、
前記制御部は、前記複数の電圧検出器のうち何れかの電圧検出器が前記電位変動を検出したときは、前記複数の第2遮断器に開放動作指示を与える
ことを特徴とする電力変換器。
【請求項9】
請求項6から請求項8の何れか1項に記載の電力変換器において、
前記交流電力系統の電路に挿入され、前記電路を開放可能な第3遮断器を
さらに備え、
前記制御部は、前記複数の電圧検出器のうち何れかの電圧検出器が前記電位変動を検出したときは、前記第3遮断器に開放動作指示を与える
ことを特徴とする電力変換器。
【請求項10】
請求項1に記載の電力変換器において、
前記複数の接地線のそれぞれに前記ダイオードと直列に挿入され、前記ダイオードに所定の閾値以上の電流が流れたときに溶断する複数のヒューズと、
前記複数のヒューズのそれぞれに設けられ、自身が設けられたヒューズが溶断されると開放される複数の開閉器と、
前記開閉器の開放動作を監視する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする電力変換器。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れか1項に記載の電力変換器において、
前記直流電源は、太陽電池である
ことを特徴とする電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流側が直接並列接続され、直流側が独立な複数の系統連系電力変換器を有する電力変換システムが知られている。このような電力変換システムにおいて、直流電源に接続された電力変換器の負極側が接地される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/023209号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、接地方式が直接接地の場合、複数の電力変換器間で直流電圧に差が生じると、各電力変換器の負極間で電位差が生じようとするため、接地線を伝って横流が流れることがある。
【0005】
横流が流れると、横流が流れた分だけ電力変換器内の各電気部品に流れる電流も増加するため、各電気部品に流れる電流が過電流になる恐れがある。そのため、横流を考慮して、各電気部品の電流定格を通常よりも大きめに定める必要があった。また、横流が流れると、制御装置が、横流を地絡と誤検出してしまう恐れもあった。
【0006】
そこで、本発明は、交流側が直接並列接続され、直流側が独立な複数の電力変換回路を有する電力変換器において、負極側が接地された場合に、接地線を伝って横流が流れる可能性を従来よりも低減させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の電力変換器は、複数の直流電源と、前記複数の直流電源にそれぞれ対応して設けられ、対応する直流電源から供給される直流電力を、直流母線を介して直流端から受け、交流電力に変換する複数の電力変換回路と、前記複数の電力変換回路のそれぞれに設けられた複数の交流端は、並列接続点を介して直接並列接続され、前記複数の交流端から出力された前記交流電力を、前記並列接続点を介して交流側に供給する交流電力系統と、前記複数の直流電源と前記複数の電力変換回路との間の複数の直流負極母線のうち少なくとも2つと大地との間をそれぞれ接続する複数の接地線と、前記複数の接地線にそれぞれ直列に挿入され、カソード側が前記直流負極母線に接続され、アノード側が接地される複数のダイオードと、を備えることを特徴とする。
【0008】
なお、一態様の電力変換器において、前記複数のダイオードに流れる電流をそれぞれ検出する複数の電流検出器と、前記複数の電流検出器が検出する前記電流を監視する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0009】
また、一態様の電力変換器において、前記複数の直流母線にそれぞれ直列に挿入され、前記複数の直流母線をそれぞれ開放可能な複数の第1遮断器をさらに備え、前記制御部は、前記複数の電流検出器のうち何れかの電流検出器が前記電流を検出したときは、前記複数の第1遮断器に開放動作指示を与えてもよい。
【0010】
なお、一態様の電力変換器において、前記複数の接地線のそれぞれに前記ダイオードと直列に挿入され、前記複数の接地線をそれぞれ開放可能な複数の第2遮断器をさらに備え、前記制御部は、前記複数の電流検出器のうち何れかの電流検出器が前記電流を検出したときは、前記複数の第2遮断器に開放動作指示を与えてもよい。
【0011】
また、一態様の電力変換器において、前記交流電力系統の電路に挿入され、前記電路を開放可能な第3遮断器をさらに備え、前記制御部は、前記複数の電流検出器のうち何れかの電流検出器が前記電流を検出したときは、前記第3遮断器に開放動作指示を与えてもよい。
【0012】
なお、一態様の電力変換器において、前記複数の接地線のそれぞれに前記ダイオードと直列に挿入され、前記ダイオードに所定の閾値以上の電流が流れたときに溶断する複数のヒューズと、前記複数の直流端の前記直流電力の電位変動をそれぞれ検出する複数の電圧検出器と、前記ヒューズが溶断したときの前記複数の電圧検出器が検出する前記電位変動を監視する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0013】
また、一態様の電力変換器において、前記複数の直流母線にそれぞれ直列に挿入され、前記複数の直流母線をそれぞれ開放可能な複数の第1遮断器をさらに備え、前記制御部は、前記複数の電圧検出器のうち何れかの電圧検出器が前記電位変動を検出したときは、前記複数の第1遮断器に開放動作指示を与えてもよい。
【0014】
なお、一態様の電力変換器において、前記複数の接地線のそれぞれに前記ダイオードと直列に挿入され、前記複数の接地線をそれぞれ開放可能な複数の第2遮断器をさらに備え、前記制御部は、前記複数の電圧検出器のうち何れかの電圧検出器が前記電位変動を検出したときは、前記複数の第2遮断器に開放動作指示を与えてもよい。
【0015】
また、一態様の電力変換器において、前記交流電力系統の電路に挿入され、前記電路を開放可能な第3遮断器をさらに備え、前記制御部は、前記複数の電圧検出器のうち何れかの電圧検出器が前記電位変動を検出したときは、前記第3遮断器に開放動作指示を与えてもよい。
【0016】
なお、一態様の電力変換器において、前記複数の接地線のそれぞれに前記ダイオードと直列に挿入され、前記ダイオードに所定の閾値以上の電流が流れたときに溶断する複数のヒューズと、前記複数のヒューズのそれぞれに設けられ、自身が設けられたヒューズが溶断されると開放される複数の開閉器と、前記開閉器の開放動作を監視する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0017】
また、一態様の電力変換器において、前記直流電源は、太陽電池であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、交流側が直接並列接続され、直流側が独立な複数の電力変換回路を有する電力変換器において、負極側が接地された場合に、接地線を伝って横流が流れる可能性を従来よりも低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る電力変換器及びこれを備えた電力変換システムの構成を示す図である。
図2図1に示す実施形態の比較例として、負極側を直接接地することによって横流が流れた状態の一例を示す図である。
図3】ダイオードの作用の一例を示す図である。
図4】第2実施形態に係る電力変換器及びこれを備えた電力変換システムの構成を示す図である。
図5】第3実施形態に係る電力変換器及びこれを備えた電力変換システムの構成を示す図である。
図6】第3実施形態の変形例に係る電力変換器及びこれを備えた電力変換システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電力変換器の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電力変換器30及びこれを備えた電力変換システム1の構成を示す図である。
【0022】
電力変換システム1は、m台の直流電源10と、m台の電力変換器30と、連系変圧器50とを有する。図1に示すとおり、図1に示す実施形態の電力変換システム1は、交流側が並列接続点41を介して直接並列接続され、直流側が独立な複数の電力変換器30(系統連系電力変換器3)を有する。すなわち、1台の直流電源10と1台の電力変換器30とが1対1で接続され、それらの組が全部でm組設けられている。m台の電力変換器30は、系統連系電力変換器3を構成する。なお、mは2以上の任意の正の整数である。各電力変換器30の交流端は、電路40に設けられた並列接続点41で合流し、連系変圧器50の一端と接続されている。m台の電力変換器30(系統連系電力変換器3)は、請求項の電力変換器の一例である。
【0023】
直流電源10は、例えば、太陽電池パネル、太陽電池モジュール、又は太陽電池アレイ等であり(以下、単に「太陽電池」ともいう。)、電力変換器30に直流電力を供給する。なお、直流電源10は、蓄電池でもよく、風力発電機と交流直流コンバータとからなる直流電源システムであってもよい。直流電源10は、直流電圧Eを有する。複数の直流電源10は完全に同じ直流電圧Eを有するとは限らないので、便宜上、直流電圧E1、E2、…Emと称して区別することがある。
【0024】
電力変換器30は、電力変換回路31と、交流リアクトル32と、接地線33と、ダイオード34とを有する。電力変換器30は、直流電源10から供給される直流電力を交流電力に変換する。なお、電力変換器30は、インバータユニット、パワーコンディショナー、パワーコンディショニングシステム(PCS:Power Conditioning Subsystem)とも称される。
【0025】
電力変換回路31は、インバータ回路又は単にインバータとも称され、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の複数のスイッチング素子で構築されている。電力変換回路31は、不図示のインバータ制御回路を有し、インバータ制御回路は、スイッチング素子のゲート駆動信号であるパルス幅変調信号を生成する。電力変換回路31の直流端は、直流正極母線20pと直流負極母線20nと(以下、これらをまとめて「直流母線20」ともいう。)を介して、直流電源10と接続されている。電力変換回路31の交流端は、交流リアクトル32と接続されている。電力変換回路31は、直流電源10から供給される直流電力を、直流母線20を介して直流端から受け、交流電力に変換し、交流端から出力する。
【0026】
交流リアクトル32は、一端が電力変換回路31と接続され、他端が電路40の並列接続点41を介して連系変圧器50と接続されている。電力変換回路31の出力側の交流リアクトル32は、通常よりも騒音を低減させる効果やサージ電圧を抑制させる効果を有する。
【0027】
接地線33は、一端が直流電源10と電力変換器30との間の直流負極母線20nに接続され、他端が大地GNDに接地されている。接地線33は、例えば、直流電源10が太陽電池である場合、PID(Potential Induced Degradation)現象の対策として設けられる。PID現象とは、太陽光発電システムにおいて、太陽電池の負極の対地電位が負側に大きくなると、太陽電池が劣化するという現象であり、PID現象が起こると太陽電池の発電量が通常よりも大幅に低下してしまう。このため、接地線33は、例えば、直流電源10が太陽電池である場合、このようなPID現象の対策として、直流電源10に接続される電力変換器30の負極側を接地したものである。
【0028】
なお、図1に示す実施形態において、接地線33は、少なくとも2つの電力変換器30の負極側を接地すればよく、全ての電力変換器30に接続されている全ての直流負極母線20nに設けられる必要はない。例えば、直流電源10が蓄電池である場合、直流電源10が太陽電池である場合よりも、PID現象の対策をする必要性が低い。このため、直流電源10に太陽電池と蓄電池とを併用している場合、蓄電池を用いた系統には、接地線33が設けられていない場合が存在する。また、直流電源10が全て太陽電池である場合でも、接地するか否かは任意であり、国によって接地の要否が異なる場合もあるため、接地線33が設けられない系統が存在する場合も考えられる。
【0029】
ダイオード34は、接地線33に直列に挿入され、カソード側が直流負極母線20nに接続され、アノード側が大地GNDに接地される。ダイオード34は、電流をアノード側からカソード側に向けた一定方向にしか流さない整流作用を有する電子素子である。このため、図1に示す方向で接地線33にダイオード34を設けた場合、アノード側の大地GNDからカソード側の直流負極母線20nに向けてのみ電流が流れ、カソード側の直流負極母線20nからアノード側の大地GNDに向けては電流が流れずブロックされる。
【0030】
電路40は、一端が各電力変換回路31の交流端のそれぞれと接続され、並列接続点41で合流し、他端が連系変圧器50と接続されている。電路40は、各電力変換器30で変換された交流電力を連系変圧器50に供給する経路となる。なお、電路40は、後述の横流60の電流経路の一部となることがある(図2参照)。
【0031】
連系変圧器50は、一端が並列接続点41を介して各電力変換器30とそれぞれ接続されており、他端が交流電力系統と接続されている。連系変圧器50は、並列接続点41よりも交流側に設けられているため、各電力変換器30から出力された交流電力は、並列接続点41で合流された後に連系変圧器50を介して交流電力系統に供給される。
【0032】
図2は、図1に示す実施形態の比較例として、負極側を直接接地することによって横流60が流れた状態の一例を示す図である。なお、図2において、図1と同一の構成については、図1と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図2では、接地線33には、ダイオード34が挿入されておらず、直接接地されている。図2において、図中上部の電力変換器30の直流電圧E1と図中下部の電力変換器30の直流電圧Emとは、図中中央の電力変換器30の直流電圧E2よりも低いものとする。図2に示すように、接地線33の接地方式が直接接地である場合、各電力変換器30の間で直流電圧Eに差が生じると、各電力変換器30の負極間で電位差が生じようとするため、接地線33や電路40を伝って横流60が流れることがある。横流60が流れると、上述のとおり、過電流や地絡の誤検出などの問題が生じる。
【0033】
一方、図1に示す実施形態では、各接地線33にダイオード34が挿入されている。図1に示す構成においては、接地線33を介して横流60が流れようとした場合、横流60の電流経路上には必ずダイオード34のカソード側からアノード側に電流が向かう箇所が存在する(図2の中央の接地線33参照)。しかし、ダイオード34の整流作用により、ダイオード34のカソード側からアノード側に向かう電流はブロックされるため、当該箇所に横流60が流れることはない。
【0034】
さらに、直流電源10が太陽電池である場合、上述のとおり、太陽電池の負極の対地電位が負側に大きくなると、太陽電池が劣化するというPID現象が知られている。例えば、直流電源10が太陽電池であり、かつ、各電力変換器30が独立したMPPT(Maximum power point tracking:最大電力点追従)制御を行っている場合、各太陽電池への日射量の差によって、各電力変換器30の直流電圧に差が生じる。この場合、太陽電池の負極の対地電位が負側に大きくなり、太陽電池が劣化するというPID現象が発生することがある。なお、MPPT制御(最大電力点追従制御)とは、太陽電池からの電力が最大になる出力電圧で電流を取り出すための制御機能のことである。
【0035】
その対策として、太陽電池に接続される電力変換器30の負極側を接地することが考えられる。しかし、接地方式が図2に示す比較例のような直接接地であった場合、電力変換器30間で直流電圧Eに差が生じると、各電力変換器30の負極間で電位差が生じようとするため、接地線33を伝って横流60が流れてしまう。このため、従来、横流60により生じる過電流の対策等を電力変換器30に行っていない場合には、PID現象の対策として、太陽電池に接続される電力変換器30の負極側を接地することが出来なかった。
【0036】
一方、図1に示す実施形態では、カソード側が直流負極母線20nに接続され、アノード側が大地GNDに接地されたダイオード34が、各接地線33に挿入されている。このため、負極の対地電位がクランプされ、負極の対地電位が負とならない。ここで、図1に示す実施形態におけるクランプの意味について説明する。
【0037】
図3は、ダイオードの作用の一例を示す図である。図3に示すように、2つのダイオードのアノード側を別々にし、カソード側を共通として、アノード側の電圧をそれぞれV1、V2とし、カソード側の電圧をV3とした場合について考える。この場合、ダイオードのカソード側には、最大電圧を選択する作用があることが知られているため、電圧V3は、電圧V1と電圧V2とのうち、最大の電圧が選択される。すなわち、この場合、ダイオードの作用によって、V3=max(V1,V2)となることが知られている。
【0038】
図1に示す実施形態では、ダイオード34は、全てアノード側が大地GNDに接地されている。このため、ダイオード34のカソード側に接続されている負極の電位が複数あるうちの最も小さな電位が、対地電位と等しくなる。仮に、対地電位に対してある電力変換器30の負極の電位がマイナス方向に振れようとしても、ダイオード34の整流作用によって短絡されてしまうため、当該電位は、0V以下にはならない。一方で、対地電位に対してある電力変換器30の負極の電位が高くなろうとすると、ダイオード34の整流作用によりブロックされるので回路的に作用しない。
【0039】
結果として、図1に示す実施形態の場合、複数ある負極のうち、一番電位が低い負極が大地GNDに対して導通状態となり、当該負極のダイオード34のアノード側とカソード側とが同電位となる。一方、複数ある負極のうち、導通状態となった負極以外の負極は、全て導通状態となった負極よりも電位が高いため、ダイオード34の整流作用によりブロックされて電流が流れない。図1に示す実施形態においては、このような状態のことをクランプされているという。
【0040】
図1に示す実施形態では、ダイオード34が、接地線33に直列に挿入され、カソード側が直流負極母線20nに接続され、アノード側が大地GND(0V)に接地されている。このため、上述したダイオード34の作用により負極の対地電位がクランプされ、負極の対地電位は負(0V以下)にはならない。従って、図1に示す実施形態では、直流電源10が太陽電池である場合、太陽電池の負極の対地電位が負側に大きくなると太陽電池が劣化するというPID現象の発生を従来よりも低減させることが可能である。
【0041】
以上より、図1に示す実施形態によれば、ダイオード34が設けられたため、交流側が直接並列接続され、直流側が独立な複数の電力変換器30において、負極側が接地された場合でも、横流60が流れる可能性を従来よりも低減させることができる。また、図1に示す実施形態では、直流電源10が太陽電池である場合、ダイオード34の作用により、太陽電池の劣化を従来よりも低減させることができる。
【0042】
<第2実施形態>
次に、図1に示す実施形態とは別の実施形態について説明する。
【0043】
図4は、第2実施形態に係る電力変換器30A及びこれを備えた電力変換システム1Aの構成を示す図である。なお、図4において、図1と同一の構成については、図1と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
図4において、各直流正極母線20pと各直流負極母線20nとには、それぞれ直列に直流スイッチ21が設けられる。各接地線33の各ダイオード34には、それぞれ電流センサ35が接続される。各接地線33には、ダイオード34と直列にそれぞれスイッチ36が接続される。電路40には、それぞれ交流スイッチ42が設けられる。m台の電力変換器30A(系統連系電力変換器3A)の上位には、制御部70Aが設けられる。
【0045】
直流スイッチ21は、制御部70Aの投入指示又は開放指示に従って、各直流正極母線20p及び各直流負極母線20nの電流経路を接続又は開放する。直流スイッチ21が開放されると直流電源10から供給される直流電流が電力変換器30Aに流入することが遮断される。なお、直流スイッチ21は、請求項の第1遮断器の一例である。
【0046】
電流センサ35は、各ダイオード34の電流を検出する。図4に示す実施形態において、地絡が発生すると、ダイオード34を流れる電流値が上昇する。電流センサ35は、ダイオード34の電流を検出することによって、地絡が発生したときの電流を検出することができる。なお、電流センサ35は、各ダイオード34を流れる電流を検出出来ればよく、電流センサ35が設けられる位置は、図4に示す位置には限られない。なお、電流センサ35は、請求項の電流検出器の一例である。
【0047】
スイッチ36は、制御部70Aの投入指示又は開放指示に従って、各接地線33の電流経路を接続又は開放する。スイッチ36が開放されると、接地線33を経由して地絡電流が電力変換器30Aに流入することが遮断される。なお、スイッチ36は、請求項の第2遮断器の一例である。
【0048】
交流スイッチ42は、制御部70Aの投入指示又は開放指示に従って、電路40の電流経路を接続又は開放する。交流スイッチ42は、並列接続点41よりも電力変換器30A側の各電路40にそれぞれ設けられている。交流スイッチ42が開放されると、電路40を経由して地絡電流が電力変換器30Aに流入、及び交流電力系統に流出することが遮断される。なお、交流スイッチ42は、請求項の第3遮断器の一例である。
【0049】
制御部70Aは、電力変換システム1Aの動作を制御するものであり、全ての電力変換器30Aの動作を制御する。制御部70Aは、各電力変換器30Aの各電流センサ35の値を監視し、何れかの電力変換器30Aのダイオード34に所定の閾値を超えた電流が流れたか否かを判定する。閾値は、任意に設定することが可能であり、地絡が発生したときの値に設定することが出来る。このため、閾値の設定が適切に行われることにより、地絡検出を適切なレベルに設定することができる。
【0050】
制御部70Aは、電流センサ35の値を監視し、各電力変換器30Aのうち、何れかの電力変換器30Aのダイオード34に所定の閾値を超える電流が流れたと判定したときは、地絡が発生したと判定する。一方、制御部70Aは、何れの電力変換器30Aのダイオード34にも所定の閾値を超える電流は流れていないと判定したときは、そのまま監視を継続する。なお、制御部70Aは、地絡が発生したと判定したときは、以下の3通りの方法で制御を行う。
【0051】
第1の方法として、制御部70Aは、地絡が発生したと判定したときは、各直流スイッチ21に開放動作指示を与える。各直流スイッチ21は、制御部70Aの指示に従い、各直流正極母線20p及び各直流負極母線20nの電流経路を開放する。このとき、制御部70Aは、一旦全ての直流スイッチ21に開放動作指示を与える。これは、例えば、制御部70Aが、図中中央の電力変換器30Aに設けられた電流センサ35が所定の閾値を超える電流を検出したと判定した場合であっても、必ずしも図中中央の電力変換器30Aに地絡が発生しているとは限らないためである。
【0052】
しかし、例えば、制御部70Aが、図中中央の電力変換器30Aに設けられた電流センサ35が所定の閾値を超える電流を検出したと判定した場合、他の系統よりも、図中中央の電力変換器30Aの系統に地絡が発生している蓋然性が高い。このため、制御部70Aは、所定の閾値を超える電流を検出した電流センサ35が存在する電力変換器30Aの直流スイッチ21のみを開放させてもよい。このようにすれば、他の系統よりも地絡が発生している蓋然性の高い系統のみ運転を停止させ、他の系統は運転を継続できるためである。
【0053】
次に、第2の方法として、制御部70Aは、地絡が発生したと判定したときは、各スイッチ36に開放動作指示を与える。各スイッチ36は、制御部70Aの指示に従い、各接地線33の電流経路を開放する。このとき、制御部70Aは、一旦全てのスイッチ36を開放させてもよく、所定の閾値を超える電流を検出した電流センサ35が存在する電力変換器30Aのスイッチ36のみを開放させてもよい。その理由は、第1の方法で述べた理由と同様である。
【0054】
次に、第3の方法として、制御部70Aは、地絡が発生したと判定したときは、各交流スイッチ42に開放動作指示を与える。各交流スイッチ42は、制御部70Aの指示に従い、電路40の電流経路を開放する。このとき、制御部70Aは、一旦全ての交流スイッチ42を開放させてもよく、所定の閾値を超える電流を検出した電流センサ35が存在する電力変換器30Aの系統の交流スイッチ42のみを開放させてもよい。その理由は、第1の方法で述べた理由と同様である。
【0055】
なお、図4に示す実施形態では、直流スイッチ21と、スイッチ36と、交流スイッチ42とが全て設けられているが、これらの何れか1以上が設けられていてもよい。この場合、制御部70Aは、設けられたスイッチに対応して、第1の方法から第3の方法のうち、いずれかの方法で制御すればよい。なお、制御部70Aは、第1の方法から第3の方法のうち、いずれか1つの方法で制御することには限られない。制御部70Aは、何れか2以上のスイッチが設けられていれば、設けられたスイッチに対応した何れか2以上の方法を併用して制御してもよい。
【0056】
また、図4に示す実施形態では、直流スイッチ21と、スイッチ36と、交流スイッチ42とが設けられているが、これらが1つも設けられていなくてもよい。この場合、制御部70Aは、地絡が発生したと判定したときは、その旨の警告を発するようにしてもよい。地絡の発生により、電流を遮断するか否かは、作業者や別の制御装置が判断する場合もあるからである。なお、上記のスイッチのいずれか1つ以上が設けられている場合であっても、制御部70Aは、地絡が発生したと判定したときに、その旨の警告を発するのみでもよい。
【0057】
なお、図4に示す実施形態においても、図1に示す実施形態と同様に、例えば、直流電源10が太陽電池であり、かつ、各電力変換器30Aが独立したMPPT制御を行っている場合、各太陽電池への日射量の差により、PID現象が発生することがある。その対策として、太陽電池に接続される電力変換器30Aの負極側を接地することが考えられるが、接地方式が図2に示す比較例のような直接接地であった場合、接地線33を伝って横流60が流れてしまう。
【0058】
その一方で、負極を接地しない場合、電力変換器30Aの直流側は非接地状態となるため、電力変換器30Aの直流側と大地GNDとの間に挿入されたインピーダンスは、直流側の対地電圧を測定するために設けられた分圧抵抗のみとなり、高抵抗となってしまう。地絡を検出するために、地絡によって発生する直流側の電位変動を検出する方法があるが、上記の場合、直流側の大地GNDとの間の抵抗が高抵抗であるため、大地GNDへのわずかな漏れ電流によって直流側の電位が大きく振れてしまう。従って、負極を接地しない場合、地絡検出が過敏となる場合があった。
【0059】
一方、図4に示す実施形態では、図1に示す実施形態と同様に、電力変換器30Aにおいて、負極側が接地されているが、接地線33にダイオード34が設けられたため、横流60が流れる可能性を従来よりも低減させることができる。さらに、図4に示す実施形態では、制御部70Aは、各電力変換器30Aの各電流センサ35の値を監視し、何れかのダイオード34に所定の閾値を超えた電流が流れたか否かによって地絡が発生したか否かを判定している。当該閾値は任意に設定することが可能である。このため、図4に示す実施形態では、閾値の設定が適切に行われることにより、負極を接地しない場合と比べて、地絡検出を適切なレベルに設定することができる。
【0060】
以上、図4に示す実施形態では、図1に示した実施形態と同様の効果を奏する。さらに、図4に示す実施形態では、地絡電流を判定する閾値を任意に選定できるため、地絡検出が過敏とはならず、負極を接地しない場合と比べて、地絡検出の検出感度を適切なレベルに設定することができる。また、図4に示す実施形態では、地絡検出を適切なレベルに設定することが出来るため、制御部70Aは、直流スイッチ21と、スイッチ36と、交流スイッチ42との何れかを制御することにより、地絡電流を従来よりも適切に遮断することができる。
【0061】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る電力変換器30B及びこれを備えた電力変換システム1Bの構成を示す図である。なお、図5において、図1及び図4と同一の構成については、図1及び図4と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図4に示す実施形態では、各接地線33の各ダイオード34に、それぞれ電流センサ35が接続されていたが、図5に示す実施形態では、その代わりに、各直流母線20に、それぞれ電圧センサ37が設けられる。また、図4に示す実施形態では、各接地線33には、ダイオード34と直列にそれぞれスイッチ36が接続されていたが、図5に示す実施形態では、その代わりに、各接地線33には、ダイオード34と直列にそれぞれヒューズ38が接続されている。また、図4に示す実施形態では、制御部70Aが設けられていたが、図5に示す実施形態では、その代わりに、制御部70Bが設けられている。
【0062】
電圧センサ37は、各直流母線20の直流電圧Eを検出する。図5に示す実施形態において、地絡が発生するとダイオード34を流れる電流が増加する。このとき、ダイオード34を所定の閾値以上の電流が流れると、ヒューズ38が溶断される。ヒューズ38が溶断されると、直流母線20の電位が急激に変動する。電圧センサ37は、直流母線20の電圧値を検出することによって、地絡が発生したときの急激な電位変動を検出することができる。なお、電圧センサ37は、直流母線20の電位変動を検出出来ればよく、電圧センサ37が設けられる位置は、図5に示す位置には限られない。なお、電圧センサ37は、請求項の電圧検出器の一例である。
【0063】
ヒューズ38は、各接地線33に各ダイオード34と直列に設けられ、接地線33を所定の閾値以上の電流が流れると溶断される。ヒューズ38が溶断される閾値は、定格電流が異なるヒューズ38を用いることによって任意に変更することが可能である。このため、ヒューズ38の定格電流が適切に設定されることによって、地絡検出を適切なレベルに設定することができる。
【0064】
制御部70Bは、電力変換システム1Bの動作を制御するものであり、全ての電力変換器30Bの動作を制御する。制御部70Bは、各電力変換器30Bの各電圧センサ37の値を監視し、何れかの電力変換器30Bの直流母線20に所定の閾値を超えた電位変動が発生したか否かを判定する。閾値は、任意に設定することが可能であり、地絡が発生したときの値に設定することが出来る。このため、閾値の設定が適切に行われることにより、地絡検出を適切なレベルに設定することができる。
【0065】
制御部70Bは、電圧センサ37の値を監視し、各電力変換器30Bのうち、何れかの電力変換器30Bの直流母線20に所定の閾値を超えた電位変動が発生したと判定したときは、地絡が発生したと判定する。一方、制御部70Bは、何れの電力変換器30Bの直流母線20にも所定の閾値を超えた電位変動が発生していないと判定したときは、そのまま監視を継続する。なお、制御部70Bは、地絡が発生したと判定したときは、以下の3通りの方法で制御を行う。
【0066】
第1の方法として、制御部70Bは、地絡が発生したと判定したときは、各直流スイッチ21に開放動作指示を与える。各直流スイッチ21は、制御部70Bの指示に従い、各直流正極母線20p及び各直流負極母線20nの電流経路を開放する。このとき、制御部70Bは、一旦全ての直流スイッチ21に開放動作指示を与える。これは、例えば、図中中央の電力変換器30Bに設けられたヒューズ38が溶断された場合であっても、必ずしも、図中中央の電力変換器30Bに地絡が発生しているとは限らないためである。すなわち、例えば、制御部70Bが、図中中央の電力変換器30Bの電圧センサ37が所定の閾値を超える電位変動を検出したと判定した場合であっても、必ずしも、図中中央の電力変換器30Bに地絡が発生しているとは限らないためである。
【0067】
しかし、例えば、制御部70Bが、図中中央の電力変換器30Bに設けられた電圧センサ37が所定の閾値を超える電位変動を検出したと判定した場合、他の系統よりも、図中中央の電力変換器30Bの系統に地絡が発生している蓋然性が高い。このため、制御部70Bは、所定の閾値を超える電位変動を検出した電圧センサ37が存在する電力変換器30Bの直流スイッチ21のみを開放させてもよい。このようにすれば、他の系統よりも地絡が発生している蓋然性の高い系統のみ運転を停止させ、他の系統は運転を継続できるためである。
【0068】
次に、第2の方法として、制御部70Bは、地絡が発生したと判定したときは、各スイッチ36に開放動作指示を与える。各スイッチ36は、制御部70Bの指示に従い、各接地線33の電流経路を開放する。このとき、制御部70Bは、一旦全てのスイッチ36を開放させてもよく、所定の閾値を超える電位変動を検出した電圧センサ37が存在する電力変換器30Bのスイッチ36のみを開放させてもよい。その理由は、第1の方法で述べた理由と同様である。
【0069】
次に、第3の方法として、制御部70Bは、地絡が発生したと判定したときは、各交流スイッチ42に開放動作指示を与える。各交流スイッチ42は、制御部70Bの指示に従い、電路40の電流経路を開放する。このとき、制御部70Bは、一旦全ての交流スイッチ42を開放させてもよく、所定の閾値を超える電位変動を検出した電圧センサ37が存在する電力変換器30Bの系統の交流スイッチ42のみを開放させてもよい。その理由は、第1の方法で述べた理由と同様である。
【0070】
なお、図5に示す実施形態では、直流スイッチ21と、スイッチ36と、交流スイッチ42とが全て設けられているが、図4に示す実施形態と同様に、これらの何れか1以上が設けられていてもよい。また、図5に示す実施形態では、図4に示す実施形態と同様に、これらが1つも設けられていなくてもよい。その理由及びその場合の動作は、図4に示す実施形態と同様である。
【0071】
以上、図5に示す実施形態は、図4に示す実施形態と同様に、図1に示した実施形態と同様の効果を奏する。さらに、図5に示す実施形態では、図4に示す実施形態と同様に、地絡電流を判定する閾値を任意に選定できるため、負極を接地しない場合と比べて、地絡検出の検出感度を適切なレベルに設定することができる。また、図5に示す実施形態では、図4に示す実施形態と同様に、地絡検出を適切なレベルに設定することが出来るため、地絡電流を従来よりも適切に遮断することができる。
【0072】
<第3実施形態の変形例>
図6は、第3実施形態の変形例に係る電力変換器30B’及びこれを備えた電力変換システム1B’の構成を示す図である。なお、図6において、図5と同一の構成については、図5と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0073】
図5に示す実施形態では、制御部70Bは、各電圧センサ37の値を監視することにより、ヒューズ38が溶断された際に発生する電位変動を検出することによって、地絡が発生したか否かを判定していた。しかし、図6に示す実施形態では、電圧センサ37が設けられておらず、ヒューズ38の代わりにヒューズ38’が設けられている。また、図6に示す実施形態では、制御部70Bの代わりに、制御部70B’が設けられている。
【0074】
ヒューズ38’は、溶断されると作動するスイッチを有する。制御部70B’は、各ヒューズ38’が有するスイッチの作動状態を監視することにより、地絡が発生したか否かを判定する。制御部70B’は、何れかのヒューズ38’が有するスイッチが作動したと判定すると、地絡が発生したと判定する。図6に示す実施形態におけるその他の構成及び動作は、図5に示す実施形態と同様である。なお、各ヒューズ38’が有するスイッチは、請求項の開閉器の一例である。
【0075】
以上、図6に示す実施形態は、図5に示した実施形態と同様の効果を奏する。
【0076】
<実施形態の補足事項>
図4から図6に示す実施形態では、制御部70A,70B,70B’(以下、これらをまとめて「制御部70」という。)がそれぞれ1つ設けられているが、これには限られない。制御部70は、各電力変換器30A,30B,30B’にそれぞれ個別に複数設けられても良い。この場合、各制御部70は、自身が設けられた電力変換器30A,30B,30B’をそれぞれ個別に監視して、自身が設けられた電力変換器30A,30B,30B’地絡が発生したか否かを判定してもよい。この場合、地絡が発生したと判定した制御部70は、上述の方法により、自身が設けられている電力変換器30A,30B,30B’のスイッチのみに対して開放動作指示を与えてもよい。また、地絡が発生したと判定した制御部70は、自身が設けられている電力変換器30A,30B,30B’のみについて警告を発しても良い。この場合も、図4から図6に示す実施形態と同様の効果を奏する。
【0077】
また、図5に示す実施形態では、制御部70Aは、電圧センサ37の電位変動を検出して、ヒューズ38が溶断されたか否か、すなわち地絡が発生したか否かを判定していたが、これには限られない。図5に示す実施形態においても電流センサ35が設けられ、電流センサ35の電流値の変動によって、ヒューズ38が溶断されたか否か、すなわち地絡が発生したか否かを判定しても良い。この場合も、図5に示す実施形態と同様の効果を奏する。
【0078】
また、図1及び図4から図6に示す実施形態は、それぞれ別の実施形態として記載されているが、これらの実施形態は、適宜組み合わされてもよい。この場合、直流スイッチ21、スイッチ36、電流センサ35、電圧センサ37、ヒューズ38,38’、交流スイッチ42、制御部70等が適宜組み合わされて設けられてもよい。
【0079】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,1B,1B’…電力変換システム;3,3A,3B,3B’…系統連系電力変換器;10…直流電源;20…直流母線;20p…直流正極母線;20n…直流負極母線;21…直流スイッチ;30,30A,30B,30B’…電力変換器;31…電力変換回路;32…交流リアクトル;33…接地線;34…ダイオード;35…電流センサ;36…スイッチ;37…電圧センサ;38,38’…ヒューズ;40…電路;41…並列接続点;42…交流スイッチ;50…連系変圧器;60…横流;70,70A,70B,70B’…制御部;E,E1,E2,Em…直流電圧;GND…大地;V1,V2,V3…電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6