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特許7435835ワイヤーロープ探傷装置およびワイヤーロープの探傷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ワイヤーロープ探傷装置およびワイヤーロープの探傷方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01N27/83
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022581116
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005277
(87)【国際公開番号】W WO2022172402
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 和明
(72)【発明者】
【氏名】福永 寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康太郎
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-214457(JP,A)
【文献】特開2010-111456(JP,A)
【文献】特開2006-71603(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110715976(CN,A)
【文献】特開2019-214442(JP,A)
【文献】実開昭57-83462(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - B66B 7/12
G01N 27/72 - G01N 27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープを磁化する磁化器と、前記ワイヤーロープの損傷部によって発生する漏洩磁束を検出する磁気センサと、を有するセンサ部と、
前記センサ部を複数の前記ワイヤーロープの配列方向に移動可能にする移動軸と、
前記センサ部を前記ワイヤーロープから離れる方向に沿ってガイドするガイド軸と、
前記ワイヤーロープを挟んで前記センサ部に対向する受け面部と、
を備え、
前記センサ部は、前記ガイド軸に沿って前記ワイヤーロープに押し付けられ、
前記移動軸は、前記受け面部に対して前記センサ部を移動可能にしており、
前記受け面部は、複数の前記ワイヤーロープに接触していることを特徴とするワイヤーロープ探傷装置。
【請求項2】
前記受け面部は、前記センサ部が前記移動軸によって移動する移動範囲に対応する前記複数のワイヤーロープに接触している請求項1に記載のワイヤーロープ探傷装置。
【請求項3】
前記ガイド軸が取り付けられたベース部をさらに備え、
前記受け面部は、前記ベース部に対して着脱可能である請求項1または請求項2に記載のワイヤーロープ探傷装置。
【請求項4】
前記受け面部と前記ベース部との接続箇所は、前記センサ部の移動範囲外に設けられている請求項3に記載のワイヤーロープ探傷装置。
【請求項5】
前記センサ部を前記ガイド軸に沿って前記ワイヤーロープに押し付ける力を発生させるばねをさらに備える請求項1から請求項4の何れか1項に記載のワイヤーロープ探傷装置。
【請求項6】
前記移動軸は、前記ばねに対して前記センサ部を移動可能にしていることを特徴とする請求項に記載のワイヤーロープ探傷装置。
【請求項7】
前記受け面部は、回動可能なローラーによって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載のワイヤーロープ探傷装置。
【請求項8】
前記センサ部に対する前記ワイヤーロープの配列方向への移動を拘束する拘束部材をさらに備える請求項1から請求項の何れか1項に記載のワイヤーロープ探傷装置。
【請求項9】
前記拘束部材は、複数のU字状の切り欠きが形成された櫛歯である請求項に記載のワイヤーロープ探傷装置。
【請求項10】
ワイヤーロープを磁化する磁化器と、前記ワイヤーロープの損傷部によって発生する漏洩磁束を検出する磁気センサと、を有するセンサ部と、
複数の前記ワイヤーロープに接触し、前記ワイヤーロープを挟んで前記センサ部に対向する受け面部と、
を備えたワイヤーロープ探傷装置を用いるワイヤーロープの探傷方法であって、
第1の前記ワイヤーロープを前記センサ部と前記受け面部との間に挟んで当該第1の前記ワイヤーロープを測定する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記受け面部に対して前記センサ部を前記ワイヤーロープの配列方向に移動させて、第2の前記ワイヤーロープの位置まで前記センサ部を移動させる第2工程と、
前記第2工程の後に、前記第2の前記ワイヤーロープを前記センサ部と前記受け面部との間に挟んで当該第2の前記ワイヤーロープを測定する第3工程と、
を備えるワイヤーロープの探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤーロープ探傷装置およびワイヤーロープの探傷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ワイヤーロープ探傷装置が開示されている。特許文献1に記載されたワイヤーロープ探傷装置は、ワイヤーロープを長手方向に磁化する磁化手段と、この磁化手段によって磁化されるワイヤーロープの磁化部分に生じる損傷部から漏洩する磁束を検出するセンサ部と、を備えるものである。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤーロープ探傷装置は、ワイヤーロープを挟んでセンサ部に対向するように配置された構造体を備える。これにより、ワイヤーロープのたわみを防止し、探傷精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特許第5331173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のワイヤーロープ探傷装置では、配列された複数のワイヤーロープの探傷を行う場合、1つのワイヤーロープの探傷を行うたびに、センサ部と構造体との分離および再組立を行う必要がある。特許文献1に記載の従来技術においては、配列された複数のワイヤーロープの探傷を行う場合、探傷に要する作業時間が長くなるという課題があった。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものである。本開示の目的は、配列された複数のワイヤーロープの探傷を、より短い作業時間で精度よく行うことができるワイヤーロープ探傷装置および探傷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るワイヤーロープ探傷装置は、ワイヤーロープを磁化する磁化器と、ワイヤーロープの損傷部によって発生する漏洩磁束を検出する磁気センサと、を有するセンサ部を備える。また、このワイヤーロープ探傷装置は、センサ部を複数のワイヤーロープの配列方向に移動可能にする移動軸と、センサ部をワイヤーロープから離れる方向に沿ってガイドするガイド軸と、ワイヤーロープを挟んでセンサ部に対向する受け面部と、を備える。センサ部は、ガイド軸に沿ってワイヤーロープに押し付けられる。移動軸は、受け面部に対してセンサ部を移動可能にしている。受け面部は、複数のワイヤーロープに接触している。
本開示に係るワイヤーロープの探傷方法は、ワイヤーロープを磁化する磁化器と、ワイヤーロープの損傷部によって発生する漏洩磁束を検出する磁気センサと、を有するセンサ部と、複数のワイヤーロープに接触し、ワイヤーロープを挟んでセンサ部に対向する受け面部と、を備えたワイヤーロープ探傷装置を用いるワイヤーロープの探傷方法である。本開示に係るワイヤーロープの探傷方法は、第1のワイヤーロープをセンサ部と受け面部との間に挟んで当該第1のワイヤーロープを測定する第1工程と、第1工程の後に、受け面部に対してセンサ部をワイヤーロープの配列方向に移動させて、第2のワイヤーロープの位置までセンサ部を移動させる第2工程と、第2工程の後に、第2のワイヤーロープをセンサ部と受け面部との間に挟んで当該第2のワイヤーロープを測定する第3工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るワイヤーロープ探傷装置およびワイヤーロープの探傷方法によれば、配列された複数のワイヤーロープの探傷を、より短い作業時間で精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1によるワイヤーロープ探傷装置を示す斜視図である。
図2】実施の形態1によるワイヤーロープ探傷装置をワイヤーロープに取り付けた状態を示す斜視図である。
図3】実施の形態1によるワイヤーロープ探傷装置が備えるセンサ部の内部構造を示す斜視図である。
図4】実施の形態1によるワイヤーロープ探傷装置の断面模式図である。
図5図4における局所的漏洩磁束を説明する図である。
図6】実施の形態1によるワイヤーロープの探傷方法を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1の第1の変形例によるワイヤーロープ探傷装置を示す斜視図である。
図8】実施の形態1の第2の変形例によるワイヤーロープ探傷装置を示す斜視図である。
図9】実施の形態1の第3の変形例によるワイヤーロープ探傷装置を示す斜視図である。
図10】実施の形態1の第3の変形例によるワイヤーロープ探傷装置をワイヤーロープに取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。なお、各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付すものとし、本開示では、重複する説明を簡略化または省略する。なお、本開示は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態によって開示される構成のあらゆる組合せおよび変形例を含み得るものである。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるワイヤーロープ探傷装置1aを示す斜視図である。図2は、実施の形態1によるワイヤーロープ探傷装置1aをワイヤーロープ2に取り付けた状態を示す斜視図である。図3は、実施の形態1によるワイヤーロープ探傷装置1aが備えるセンサ部3の内部構造を示す斜視図である。図3は、保護カバー4が取り外された状態のセンサ部3を詳細に示している。
【0012】
ワイヤーロープ探傷装置1aは、主な構成部品として、センサ部3と、当該センサ部3以外の部分を構成する取付部5と、を備えている。センサ部3は、ワイヤーロープ2を磁化する磁化器と、この磁化器によって磁化されたワイヤーロープ2の損傷部によって発生する漏洩磁束を検出する磁気センサ6と、を有する。取付部5は、センサ部3をばね等の部材によってワイヤーロープ2に対して押し付ける。これにより、センサ部3とワイヤーロープ2との相対位置関係が保持される。取付部5は、磁気センサ6による上記の漏洩磁束の検出の精度を確保するためのものである。
【0013】
センサ部3の磁化器は、ワイヤーロープ2の軸方向所定区間に主磁路を形成するものである。磁化器は、例えば、バックヨーク7と、一対の励磁用の永久磁石8aおよび永久磁石8bと、磁極片9aおよび磁極片9bと、から構成されている。バックヨーク7、磁極片9aおよび磁極片9bは、鉄等の強磁性体の材料から形成される。一対の永久磁石8aおよび永久磁石8bは、互いにその極性を逆にした状態で、バックヨーク7の両側端部の上にそれぞれ配置されている。磁極片9aは、永久磁石8aの磁極面のうち、バックヨーク7の反対側の面に配置されている。磁極片9bは、永久磁石8bの磁極面のうち、バックヨーク7の反対側の面に配置されている。磁極片9aおよび磁極片9bは、ワイヤーロープ2の外周の曲率に沿うように、U字状に形成されている。
【0014】
漏洩磁束を検出する磁気センサ6は、コイルおよびホール素子等から構成されている。磁気センサ6は、支持台10に組み付けられている。支持台10は、永久磁石8a、永久磁石8b、磁極片9a、磁極片9bおよびバックヨーク7から構成される磁化器から磁気的に絶縁されて配置される。磁気センサ6が組付けられた支持台10は、磁化器が形成する主磁路から磁気的に絶縁されるように、非磁性体部材11を介してバックヨーク7に接続されている。
【0015】
磁気センサ6が検出する磁束にワイヤーロープ2における漏洩磁束以外の磁束が混入することを防ぐため、支持台10の材質は、強磁性体であることが望ましい。磁気センサ6から支持台10側への漏電を防ぐため、支持台10の表面には絶縁塗装が施されていることが望ましい。また、磁気センサ6および支持台10は、図3に示すように、磁極片9aおよび磁極片9bと同様にU字状に形成されることが望ましい。これにより、より広範囲において磁気センサ6をワイヤーロープ2に近接させることができ、ワイヤーロープ2の損傷部を検出できる範囲を拡大することができる。なお、支持台10の材質は、非磁性体であってもよい。また、磁気センサ6および支持台10は、表面がワイヤーロープ2の中心に向くように配置された平面形状の部材として形成されてもよい。
【0016】
図4はワイヤーロープ探傷装置1aの断面模式図である。図4は、ワイヤーロープ2の損傷部であるワイヤーロープ損傷部12が磁気センサ6付近を通過する時の磁束の流れの様子を示す。図4に示すように、永久磁石8aから発生した主磁束は、ワイヤーロープ2を通り、永久磁石8bを経て、バックヨーク7を通って永久磁石8aに戻る。ワイヤーロープ損傷部12付近から発生した局所的漏洩磁束13は、非磁性体である保護カバー4、磁気センサ6および支持台10を通って、ワイヤーロープ2に戻る。
【0017】
図5は、図4における局所的漏洩磁束13を説明する図である。図5(a)は、図4中の局所的漏洩磁束13の流れを示す拡大図である。図5(b)は、ワイヤーロープ2の径方向xの磁束密度分布を示すグラフである。図5(b)のグラフ中の曲線a、曲線bおよび曲線cは、それぞれ、図5(a)中の一点鎖線a、一点鎖線bおよび一点鎖線cの位置における磁束密度分布を示している。
【0018】
ワイヤーロープ2の外側に出た局所的漏洩磁束13は、なるべく短い磁路でワイヤーロープ2に戻ろうとする。このため、局所的漏洩磁束13のうちワイヤーロープ2の外側に分布する領域は小さくなる。ワイヤーロープ損傷部12を起点としてワイヤーロープ2の軸方向ならびに径方向に離れるほど、磁束密度の分布は小さくなる。このため、ワイヤーロープ2と磁気センサ6との距離が離れると、磁気センサ6によって検出される信号の強度が下がってしまう。
【0019】
また、ワイヤーロープ損傷部12によって局所的漏洩磁束13を発生させるためには、ワイヤーロープ2内を磁気飽和させる必要がある。ワイヤーロープ2内が磁気飽和していない場合、ワイヤーロープ損傷部12があったとしても、磁束は、ワイヤーロープ2から漏洩せずに、ワイヤーロープ2内の比較的磁束密度が低い箇所を通過する。
【0020】
一方、ワイヤーロープ2内が磁気飽和している場合、ワイヤーロープ損傷部12以外の位置からも少なからず磁束が漏洩する。漏洩磁束は、磁気センサ6を通過する。このため、ワイヤーロープ2と磁気センサ6との相対位置関係が変動すると、磁気センサ6を通過する磁束も変動する。ワイヤーロープ2と磁気センサ6との相対位置関係の変動は、漏洩磁束の検出におけるノイズの原因となる。ノイズが大きくなると、磁気センサ6が検出する信号がノイズに埋もれてしまい、ワイヤーロープ探傷装置1aによるワイヤーロープ損傷部12の検出精度が低下する。以下、ワイヤーロープ探傷装置1aによるワイヤーロープ損傷部12の検出精度を、「探傷精度」とも称することとする。
【0021】
探傷精度を確保するためには、ワイヤーロープ2と磁気センサ6との相対位置関係を保持する必要がある。ワイヤーロープ2には、永久磁石8aおよび永久磁石8bによって、センサ部3に吸着しようとする磁力が発生する。この磁力により、ワイヤーロープ2は、センサ部3の保護カバー4に押し付けられる。これにより、ワイヤーロープ2と磁気センサ6との相対位置関係が保持される。
【0022】
ワイヤーロープ2の走行時に発生する振動を完全に抑制するためには、上記の磁力を強くする、あるいは、磁力以外の力を追加する、ということが考えられる。本実施の形態では、ノイズが少なくコスト的にも有利な手法の一例として、磁力以外の力を追加する手法について説明する。
【0023】
本実施の形態に係る取付部5は、ワイヤーロープ2と磁気センサ6との相対位置関係を保持するための磁力以外の力を発生させる機能を有している。当該機能を有する取付部5は、センサ部3をワイヤーロープ2の配列方向に移動可能にする移動軸14aおよび移動軸14bを備える。また、取付部5は、センサ部3をワイヤーロープ2から離れる方向に沿ってガイドするガイド軸として、前後軸15aおよび前後軸15bを備える。
【0024】
取付部5は、前後軸15aおよび前後軸15bに沿ってセンサ部3と同様に移動する中間部16aおよび中間部16b備える。移動軸14aおよび移動軸14bは、それぞれ、中間部16aおよび中間部16bに備え付けられている。また、取付部5は、ワイヤーロープ2周辺の構造体に固定されるベース部17aを備える。前後軸15aおよび前後軸15bは、ベース部17aに備え付けられている。
【0025】
さらに、取付部5は、一例として、センサ部3をワイヤーロープ2に対して押し付ける力を発生させるばね18aおよびばね18bを備えている。ばね18aは、前後軸15aと平行に設置される。ばね18bは、前後軸15bと平行に設置される。ばね18aとばね18bとは、センサ部3、移動軸14a、移動軸14b、中間部16aおよび中間部16bを、前後軸15aおよび前後軸15bに沿ってワイヤーロープ2に対して押し込む。また、取付部5は、ワイヤーロープ2を挟んでセンサ部3に対向する受け面部19aを備える。本実施の形態において、受け面部19aは、ベース部17aに対して取り付けおよび取り外しができるように構成されている。
【0026】
移動軸14aは、センサ部3に設けられた空孔を通っている。同様に、移動軸14bも、センサ部3に設けられた空孔を通っている。移動軸14aの軸方向両端部は、中間部16aによって支持されている。移動軸14bの軸方向両端部は、中間部16bによって支持されている。このような構成によれば、センサ部3は、移動軸14aおよび移動軸14bに沿って移動可能となる。また、センサ部3に移動軸14aおよび移動軸14bという2つの軸が通されることで、当該センサ部3の傾きが規制される。
【0027】
なお、センサ部3をワイヤーロープ2の配列方向に移動可能にする機構は、上述した移動軸14aおよび移動軸14bによるものに限られない。例えば、リニアガイドを用いることで、センサ部3をワイヤーロープ2の配列方向に移動可能としてもよい。より具体的には、センサ部3側にブロックを取り付けた上で移動軸14aおよび移動軸14bの代わりにガイドレールを設け、当該ガイドレールに沿ってセンサ部3が移動できるようにしてもよい。金属ブッシュ等の無給油ブッシュまたはボールブッシュ等をセンサ部3の空孔に、追加することによって、センサ部3の移動をより滑らかにしてもよい。また、センサ部3に空孔の代わりに突起を設けた上で、中間部16aおよび中間部16bには移動軸14aおよび移動軸14bの代わりに空孔を設けてもよい。センサ部3に設けられた突起を中間部16aおよび中間部16bに設けられた空孔に通すことによっても、センサ部3を移動可能とすることができる。このように、センサ部3をワイヤーロープ2の配列方向に移動可能にする機構には、様々な既知の移動機構を用いることが可能である。
【0028】
前後軸15aは、中間部16aに設けられた空孔を通っている。前後軸15aの軸方向片側端部は、ベース部17aによって支持されている。同様に、前後軸15bも、中間部16aに設けられた空孔を通っている。前後軸15bの軸方向片側端部は、ベース部17aによって支持されている。このような構成によれば、センサ部3は、前後軸15aおよび前後軸15bに沿って移動可能となり、当該センサ部3の傾きが規制される。
【0029】
なお、センサ部3をワイヤーロープ2に近づく方向および離れる方向に移動可能にする機構は、前後軸15aおよび前後軸15bによるものに限られない。センサ部3をワイヤーロープ2に近づく方向および離れる方向に移動可能にする機構には、様々な既知の移動機構を用いることが可能である。
【0030】
中間部16aおよび中間部16bの形状は、移動軸14a、移動軸14b、前後軸15aおよび前後軸15bの構成に応じて設計される。一例として、中間部16aおよび中間部16bは、それぞれ、U字形状になっている。移動軸14aは、U字形状の中間部16aの端部同士をつなぎ合わせるように配置されている。同様に、移動軸14bは、U字形状の中間部16bの端部同士をつなぎ合わせるように配置されている。また、U字形状の中間部16aの中央部には、前後軸15aを通すための空孔が設けられている。U字形状の中間部16bの中央部には、前後軸15bを通すための空孔が設けられている。一例として、中間部16aおよび中間部16bは、それぞれ、線対称形状に形成されている。
【0031】
前後軸15aの片側端部および前後軸15bの片側端部を支持しているベース部17aには、接続部20が備えられている。接続部20は、受け面部19aを接続するための部分である。ベース部17aは、何らかの構造体に固定されており、ワイヤーロープ探傷装置1a全体の位置を固定する役割を担っている。何らかの構造体には、例えば、ワイヤーロープ2がエレベーター用のワイヤーロープである場合、ワイヤーロープ2近傍に設けられた梁等が該当する。
【0032】
ばね18aの片側端部は、ベース部17aに接触している。ばね18aの反対側端部は、中間部16aに接触している。同様に、ばね18bの片側端部は、ベース部17aに接触している。ばね18bの反対側端部は、中間部16bに接触している。ばね18aおよびばね18bは、中間部16aおよび中間部16bを介してセンサ部3をワイヤーロープ2に押し付ける役割を担っている。なお、ばね18aおよびばね18bは、図示の例のように前後軸15aおよび前後軸15bと同軸上に配置してもよいし、前後軸15aおよび前後軸15bとは異なる場所に配置してもよい。
【0033】
ベース部17aの接続部20に接続された受け面部19aは、ばね18aおよびばね18bによる押付力を受ける役割を担っている。受け面部19aは、配列されたすべてのワイヤーロープ2に接触するように設置されている。受け面部19aの形状は、すべてのワイヤーロープ2に線接触するような平面形状としてもよいし、例えば、ワイヤーロープ2の径に合わせたU字状の切り欠きを有する形状としてもよい。後者の場合には、受け面部19aとワイヤーロープ2とが、面接触することとなる。
【0034】
受け面部19aと接続部20との接続場所は、センサ部3の移動範囲外に設けられている。受け面部19aは、ベース部17aに対して容易に着脱できるように構成されている。例えば、ベース部17aの接続部20と受け面部19aとは、ねじによって固定される。ここで、受け面部19aの固定に用いるねじを、蝶ボルトあるいはクランプレバー等にすれば、工具を用いることなく、受け面部19aを着脱することができる。本例であれば、ワイヤーロープ探傷装置1aの使用時における作業性を、より向上させることができる。
【0035】
また、探傷精度を確保するためには、受け面部19aをベース部17aに取り付けをした際における受け面部19aの位置の再現性が重要になる。そこで、例えば、接続部20に位置決めピン21を設け、受け面部19a側に位置決めピン21に対応した空孔を設けてもよい。位置決めピン21と空孔によって、受け面部19aの位置再現性を確保することができる。なお、位置決めピン21を受け面部19a側に設け、空孔を接続部20側に設けても、同様に、受け面部19aの位置再現性を確保することができる。
【0036】
以上に示したように構成されたワイヤーロープ探傷装置1aであれば、ワイヤーロープ2をセンサ部3と受け面部19aとで挟みこむことができる。これにより、ワイヤーロープ2の振動の影響が低減され、センサ部3とワイヤーロープ2との相対位置関係が保持される。また、ワイヤーロープ2をセンサ部3と受け面部19aとで挟みこむことで、ワイヤーロープ2がたわんで逃げてしまうことを抑制することもできる。本実施の形態に係るワイヤーロープ探傷装置1aであれば探傷精度の向上効果を得ることができる。また、受け面部19aとベース部17a部との接続場所は、センサ部3が移動軸14aおよび移動軸14bに沿って移動する範囲外にある。そして、センサ部3は、受け面部19aに対して移動可能構成されている。このため、受け面部19aを取り外すことなく、配列された複数のワイヤーロープ2の全ての探傷を行うことができる。本実施の形態によれば、配列された複数のワイヤーロープの探傷を、より短い作業時間で精度よく行うことができるワイヤーロープ探傷装置1aを得ることができる。
【0037】
また、本実施の形態に係るワイヤーロープ探傷装置1aが備える磁気センサ6は、少なくとも1つあればよい。ワイヤーロープ探傷装置1aは、複数の磁気センサ6を必要とすることがない。これにより、ワイヤーロープ探傷装置1aのコストの増加およびワイヤーロープ探傷装置1aの総重量の増加を回避することができる。
【0038】
また、本実施の形態に係るワイヤーロープ探傷装置1aは、ばね18aおよびばね18bによって、センサ部3をワイヤーロープ2に押し付けることができる。このため、例えば、センサ部3とワイヤーロープ2との間で作用する磁力が小さいことによってワイヤーロープ2が振動しても、ばね18aおよびばね18bからの押付力によって、センサ部3はワイヤーロープ2の動きに追従する。本実施の形態では、ワイヤーロープ2とセンサ部3との相対位置関係がばね18aおよびばね18bによってより確実に維持される。これにより、探傷精度を向上させる効果が得られる。なお、センサ部3を前後軸15aおよび前後軸15bに沿ってワイヤーロープ2に押し込む機構として、例えば、エアシリンダまたは電動の軸等をばね18aおよびばね18bに代えて設けてもよい。
【0039】
次に、フローチャートを参照して、ワイヤーロープ探傷装置1aを用いたワイヤーロープ2の探傷方法について説明する。図6は、実施の形態1によるワイヤーロープ2の探傷方法を示すフローチャートである。
【0040】
ワイヤーロープ2の探傷を行う場合、まず、ワイヤーロープ探傷装置1aをワイヤーロープ2に対して取り付け(ステップS1)、ワイヤーロープ2の測定を実施する(ステップS2)。その後、測定対象のワイヤーロープ2がまだある場合(ステップS3)には、押し付け解除(ステップS4)、センサ部移動(ステップS5)および押し付け(ステップS6)を実施した後、次のワイヤーロープ2の測定(ステップS2)を実施する。上記の各ステップをすべてのワイヤーロープ2の測定が終わるまで繰り返した後(ステップS3)、取り外し(ステップS7)を実施する。
【0041】
ステップS1の「取り付け」では、まず、センサ部3と受け面部19aとが外された状態の取付部5を構造体に取り付ける。そして、センサ部3を、ワイヤーロープ2と接するように位置調整した上で取り付ける。その後、取付部5のベース部17aに対して、受け面部19aを取り付ける。
【0042】
ステップS2の「測定」は、ワイヤーロープ2をワイヤーロープ探傷装置1aに対して走行させることにより探傷することである。ワイヤーロープ2の測定対象の区間がすべてワイヤーロープ探傷装置1aを通過すれば探傷は完了する。ここで、ワイヤーロープ2を逆方向に走行させることでワイヤーロープ2を往復させたり、ワイヤーロープ2を同方向に複数回走行させたりすることによって、測定対象の区間がワイヤーロープ探傷装置1aを複数回通過するようにしてもよい。これにより、探傷精度を向上させることができる。
【0043】
一度目の「取り付け」および「測定」は、本開示に係るワイヤーロープの探傷方法が備える第1工程に相当する。第1工程は、第1のワイヤーロープ2をセンサ部3と受け面部19aとの間に挟んで当該第1のワイヤーロープ2をワイヤーロープ探傷装置1aによって測定する工程である。
【0044】
ステップS4の「押し付け解除」は、ワイヤーロープ2からセンサ部3を離すことである。具体的には、ばね18aおよびばね18bを圧縮することにより、センサ部3、移動軸14a、移動軸14b、中間部16aおよび中間部16bを、前後軸15aおよび前後軸15bに沿ってベース部17aに近づく方向に移動させる。このとき、少なくともセンサ部3が移動軸14aおよび移動軸14bに沿って移動可能になる位置まで、各部材を移動させる必要である。
【0045】
ステップS5の「センサ部移動」は、センサ部3の位置と次に測定するワイヤーロープ2との位置が揃うように、センサ部3を移動軸14aおよび移動軸14bに沿って移動させることである。「センサ部移動」は、本開示に係るワイヤーロープの探傷方法が備える第2工程に相当する。第2工程は、第1工程の後に実行される工程である。第2工程は、受け面部19aに対してセンサ部3をワイヤーロープ2の配列方向に移動させて、第2のワイヤーロープ2の位置までセンサ部3を移動させる工程である。
【0046】
ステップS6の「押し付け」は、ステップS5の「センサ部移動」によって移動したセンサ部3を、次に測定するワイヤーロープ2に接触させることである。「押し付け」は、圧縮されたばね18aおよびばね18bを解放することによって行われる。
【0047】
「押し付け」および「押し付け」の後に再び行われる「測定」は、本開示に係るワイヤーロープの探傷方法が備える第3工程に相当する。第3工程は、第2工程の後に実行される工程である。第3工程は、第2のワイヤーロープ2をセンサ部3と受け面部19aとの間に挟んで当該第2のワイヤーロープ2をワイヤーロープ探傷装置1aによって測定する工程である。
【0048】
最後に実施するステップS7の「取り外し」では、まず、受け面部19aを取り外す。その後、受け面部19a以外の部品を構造体から取り外す。
【0049】
本実施の形態によって示した探傷の手順によれば、受け面部19aを途中で取り外すことなく、配列された複数のワイヤーロープ2のすべてを測定することができる。
【0050】
また、図7は、実施の形態1の第1の変形例によるワイヤーロープ探傷装置1bを示す斜視図である。この第1の変形例においては、上記の実施例における移動軸と前後軸とばねとの配置が入れ替えられている。
【0051】
具体的には、図7に示すように、ワイヤーロープ探傷装置1bは、移動軸14c、移動軸14d、前後軸15c、前後軸15d、中間部16c、中間部16dおよびベース部17bを備えている。前後軸15cおよび15dは、センサ部3に設けられた空孔に通されている。前後軸15cの片側端部は中間部16cに取り付けられ、前後軸15dの片側端部は中間部16dに取り付けられている。中間部16cおよび中間部16dのそれぞれには空孔が設けられている。移動軸14cは中間部16cの空孔を通り、移動軸14dは中間部16dの空孔を通っている。移動軸14cの両端部および移動軸14dの両端部は、ベース部17bに固定される。本変形例によれば、中間部16cおよび中間部16dを、中間部16aおよび中間部16bに比べて小型化および軽量化することができる。本変形例に係るワイヤーロープ探傷装置1bであれば、作業性をより向上させることができる。
【0052】
図8は、実施の形態1の第2の変形例によるワイヤーロープ探傷装置1cを示す斜視図である。図8においては、図1および図2と重複する要素について、符号を省略している。
【0053】
図8に示す第2の変形例では、受け面部19bが、回動可能なローラー22aおよびローラー22bによって構成されている。本変形例によれば、ワイヤーロープ2が受け面部19b上を摺動することよる摩耗の影響を低減することができる。本変形例によれば、ワイヤーロープ2および受け面部19bの機械寿命を長くすることができる。
【0054】
図9は、実施の形態1の第3の変形例によるワイヤーロープ探傷装置1dを示す斜視図である。図10は、実施の形態1の第3の変形例によるワイヤーロープ探傷装置1dをワイヤーロープ2に取り付けた状態を示す斜視図である。図9および図10においては、図1および図2と重複する要素について、符号を省略している。
【0055】
図9および図10に示すように、本変形例に係るワイヤーロープ探傷装置1dは、ワイヤーロープ2の配列方向への移動を拘束する拘束部材として、櫛歯23aおよび櫛歯23bを備えている。櫛歯23aおよび23bはベース部17aに取り付けられている。櫛歯23aおよび櫛歯23bの先端部には、ワイヤーロープ2の径より大きく設定された径を有するU字状の切り欠き24が、ワイヤーロープ2の本数分だけ形成されている。櫛歯23aおよび櫛歯23bは、切り欠き24内にワイヤーロープ2を拘束し続けるように構成されている。本変形例によれば、探傷の対象となるワイヤーロープ2を変更する際にセンサ部3をワイヤーロープ2から一度離したとしても、センサ部3を再びワイヤーロープ2に押し付ける際にワイヤーロープ2を簡単にとらえることができる。本変形例によれば、探傷の対象となるワイヤーロープ2の変更時における作業性を向上させることができる。なお、本開示に係る拘束部材は、U字状の切り欠き24が形成された櫛歯23aおよび櫛歯23bに限られるものではない。拘束部材には、任意の形状および構造のものを用いることができる。例えば、切り欠き24の形状は、四角形状または円形状等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示に係るワイヤーロープ探傷装置およびワイヤーロープの探傷方法は、例えば、エレベーター、ホイストおよびクレーン等に用いられるワイヤーロープの損傷部を検出することに利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1a ワイヤーロープ探傷装置、 1b ワイヤーロープ探傷装置、 1c ワイヤーロープ探傷装置、 1d ワイヤーロープ探傷装置、 2 ワイヤーロープ、 3 センサ部、 4 保護カバー、 5 取付部、 6 磁気センサ、 7 バックヨーク、 8a 永久磁石、 8b 永久磁石、 9a 磁極片、 9b 磁極片、 10 支持台、 11 非磁性体部材、 12 ワイヤーロープ損傷部、 13 局所的漏洩磁束、 14a 移動軸、 14b 移動軸、 14c 移動軸、 14d 移動軸、 15a 前後軸、 15b 前後軸、 15c 前後軸、 15d 前後軸、 16a 中間部、 16b 中間部、 16c 中間部、 16d 中間部、 17a ベース部、 17b ベース部、 18a ばね、 18b ばね、 19a 受け面部、 20 接続部、 21 位置決めピン、 22a ローラー、 22b ローラー、 23a 櫛歯、 23b 櫛歯、 24 切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10