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特許7435859情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023026574
(22)【出願日】2023-02-22
【審査請求日】2023-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕充
(72)【発明者】
【氏名】小灘 聰一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-71038(JP,A)
【文献】特開2011-233108(JP,A)
【文献】特開2018-106389(JP,A)
【文献】特開2018-14103(JP,A)
【文献】特開2003-194671(JP,A)
【文献】特開平5-60596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04 -19/05
G05B 23/00 -23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型の情報処理装置であって、
前記フィールド機器から出力されるダンピングされたまたはダンピング前の出力データを取得する取得部と、
ダンピング前の前記出力データの推定を要するとの設定に応じ、ダンピングされた前記出力データに基づいてダンピング前の前記出力データを推定する推定部と、
ダンピング前の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知する検知部と、
前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する送信部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記フィールド機器に対し着脱可能に取り付けられる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
非接触式のセンサを備え、
前記取得部は、
前記非接触式のセンサによって、前記フィールド機器の導線から前記出力データを間接的に取得する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
バッテリが搭載され、前記バッテリを電源として動作する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記フィールド機器の導線と接続され、
前記取得部は、
前記導線から前記出力データを直接的に取得する、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記導線を介して前記フィールド機器を電源として動作する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記フィールド機器のうち、圧力伝送器、温度伝送器、流量計、制御弁および科学機器の少なくともいずれかに対し取り付けられ、
前記科学機器は、酸素濃度計およびpH計の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記推定部は、
前記出力データがダンピングされている場合に、前記出力データを前記フィールド機器に応じた物理量に変換したうえでの微分処理、差分処理および偏微分処理の少なくともいずれかによってダンピング前の前記出力データを推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記検知部は、
高速フーリエ変換を実行して低周波成分を除去した後、逆高速フーリエ変換を実行した前記出力データを解析する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記検知部は、
前記物理現象として、前記フィールド機器に接続された配管内で発生するキャビテーション、水撃、スラグフロー、プロセス脈動および異物混入の少なくともいずれかを検知する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記取得部、前記推定部および前記検知部が実行する情報処理のログデータをロギング情報として保存するロギング部、
を備える請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記フィールド機器を集線する現場パネルに対しさらに取り付けられる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記外部装置は、
前記プラントのプロセス制御システムに含まれるデータロガー、および、サーバ装置の少なくともいずれかである、
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型のコンピュータが、
前記フィールド機器から出力されるダンピングされたまたはダンピング前の出力データを取得し、
ダンピング前の前記出力データの推定を要するとの設定に応じ、ダンピングされた前記出力データに基づいてダンピング前の前記出力データを推定し、
ダンピング前の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知し、
前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、
処理を実行する、情報処理方法。
【請求項15】
プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型のコンピュータに、
前記フィールド機器から出力されるダンピングされたまたはダンピング前の出力データを取得し、
ダンピング前の前記出力データの推定を要するとの設定に応じ、ダンピングされた前記出力データに基づいてダンピング前の前記出力データを推定し、
ダンピング前の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知し、
前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、
処理を実行させる、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油、石油化学、化学、ガスなどを用いた各種プラントのプロセス制御において、コントローラがプロセスを安定的に制御するために、プラントのフィールド機器の出力値に対してダンピング処理を施すことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、プラントでは、ごく短時間の間に発生する物理現象がある。例えば、液体を移送または圧送するためにポンプが用いられる場合、ポンプの配管内ではキャビテーションや水撃、スラグフローといった、プラントにおける生産の障害となりうる物理現象が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-213483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、従来技術には、既存のプロセス制御に与える影響を抑えつつ、プラントで発生する物理現象を容易に検知するうえで、さらなる改善の余地がある。
【0006】
具体的には、従来技術では、例えばフィールド機器が配管を流れる液体の圧力を測定する圧力伝送器である場合、圧力伝送器が出力する圧力値はダンピング処理が施され、コントローラは、圧力変動が実際の変動よりも平滑化された平滑化データを取り扱う。しかしながら、平滑化データは時間変動が丸められ、言わば鈍(なま)っているため、この鈍ったデータからはごく短時間の間に発生する物理現象を検知することは難しい。
【0007】
一方で、プラントのプロセス制御システムは、安定して稼働することが求められる。この観点から、例えばダンピング処理におけるダンピング係数を変更することでより時間変動の激しいデータをコントローラが取り扱うように対策することは、コントローラが追従できなくなる可能性があるため困難である。
【0008】
また、コントローラが追従できるようにシステムを設計変更することも、プロセス制御システムが連続的に稼働することが求められる現状を踏まえると容易ではない。
【0009】
本発明は、既存のプロセス制御に与える影響を抑えつつ、プラントで発生する物理現象を容易に検知することができる情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面に係る情報処理装置は、プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型の情報処理装置であって、前記フィールド機器から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得する取得部と、前記出力データが平滑化されている場合に、非平滑の前記出力データを推定する推定部と、非平滑の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知する検知部と、前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する送信部と、を備える。
【0011】
一側面に係る情報処理方法は、プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型のコンピュータが、前記フィールド機器から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、前記出力データが平滑化されている場合に、非平滑の前記出力データを推定し、非平滑の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知し、前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、処理を実行する。
【0012】
一側面に係る情報処理プログラムは、プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型のコンピュータに、前記フィールド機器から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、前記出力データが平滑化されている場合に、非平滑の前記出力データを推定し、非平滑の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知し、前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
一実施形態によれば、既存のプロセス制御に与える影響を抑えつつ、プラントで発生する物理現象を容易に検知することができる情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来技術の課題の説明図である。
図2】実施形態に係る情報処理方法の概要説明図である。
図3】実施形態に係るプラント制御システムの全体構成例を示す図である。
図4】実施形態に係るエッジデバイスの構成例を示すブロック図である。
図5】実施形態に係るエッジデバイスが実行する処理手順を示すフローチャートである。
図6】装置間の処理分担のパターン例を示す図(その1)である。
図7】装置間の処理分担のパターン例を示す図(その2)である。
図8】装置間の処理分担のパターン例を示す図(その3)である。
図9】装置間の処理分担のパターン例を示す図(その4)である。
図10】メッシュネットワークを構成する場合の説明図である。
図11】検知した物理現象を共有する場合の説明図である。
図12】第1の変形例に係るエッジデバイスの説明図である。
図13】第2の変形例に係るエッジデバイスの説明図である。
図14】エッジデバイスの回収・交換についての説明図である。
図15】実施形態に係るエッジデバイスの機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の開示する情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略し、各実施形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0016】
また、以下では、複数の同一の要素につき区別を要する場合には、同一の符号の後に「-n」(nは自然数)の形式で付番する。区別を要さない場合には、同形式で付番せずに、同一の符号のみを付して総称する。
【0017】
また、以下では、実施形態に係る情報処理装置が、エッジデバイス50(図2等参照)であるものとする。エッジデバイス50は、実施形態に係るプロセス制御システム500(図3参照)において、言わばIIoT(Industrial Internet of Things)を実現するための可搬型の情報処理装置である。
【0018】
また、以下では、プロセス制御においてフィールド機器から出力されるプロセスデータの「ダンピング」のことを適宜「平滑化」と言う。また、平滑化されたデータを適宜「平滑化データ」と言う。これに対し、平滑化前のデータのことを適宜「生データ」と言う。生データは、「非平滑の出力データ」の一例に相当する。
【0019】
[本実施形態に係る情報処理方法の概要]
まず、実施形態に係る情報処理方法の概要について、図1および図2を用いて説明する。図1は、従来技術の課題の説明図である。図2は、実施形態に係る情報処理方法の概要説明図である。
【0020】
図1に示すように、プラント1では、プラント1の様々な場所に、フィールド機器2が設けられる。フィールド機器2は、無線通信や有線通信等によって、他の装置(後述のDCS10等)と通信可能に構成される。
【0021】
フィールド機器2は、センサ機器や操作機器等に分類される。センサ機器は、例えば物理量を取得(検出、測定等)する機器である。センサ機器の例は、圧力伝送器2a、温度伝送器、流量計、科学機器等である。操作機器は、例えば物理量を操作する機器である。操作機器の例は、ポンプ、制御弁、ファン等であり、モータやアクチュエータ等によって駆動される。
【0022】
フィールド機器2のうちのセンサ機器は、プラント1におけるプロセスの状態を示すデータであるプロセスデータをDCS(Distributed Control Systems)10へ送信する。DCS10は、複数のプロセスコントローラと複数の操作監視装置とを含んで構成されるいわゆる分散制御システムである。
【0023】
DCS10は、フィールド機器2からのプロセスデータに応じて、主にPID(Proportional-Integral-Differential)制御等によるプロセス制御を実行する。すなわち、DCS10は、プロセスデータに応じて決定される、フィールド機器2のうちの制御対象となる操作機器に対する操作量によって操作機器を制御する。
【0024】
このとき、図中の説明E1に示すように、プロセスデータは、プラント1の安定制御のためにデータ波形の脈動が緩衝されるよう、フィールド機器2またはDCS10にて平滑化が施される。そして、図中の説明E2に示すように、DCS10は、この平滑化後の平滑化データに基づくプロセス制御を実行する。
【0025】
しかしながら、平滑化データは時間変動が丸められて鈍っているため、この鈍ったデータからは、説明E2に示すようにキャビテーションや水撃、スラグフローといった瞬間的な物理現象の検知が困難である。
【0026】
一方で、プラント1のプロセス制御システム500は、安定して稼働することが求められる。この観点から、例えば平滑化処理におけるダンピング係数を変更することでより時間変動の激しいデータ(例えば、生データ)をDCS10が取り扱うように対策することは、DCS10が追従できなくなる可能性があるため難しい。
【0027】
また、DCS10が追従できるようにシステムを設計変更することも考えられるが、説明E2に示すように、連続稼働するプロセス制御システム500の設計変更は容易でないという現状もある。このことも、従来技術を用いた場合に、やはり瞬間的な物理現象の検知を困難にしていると言える。
【0028】
そこで、実施形態に係る情報処理方法では、エッジデバイス50が、フィールド機器2から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、出力データが平滑化されている場合に、非平滑の出力データを推定し、非平滑の出力データを解析することによって、フィールド機器2において発生している物理現象を検知し、物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、処理を実行することとした。
【0029】
既に述べた通り、エッジデバイス50は、実施形態に係るプロセス制御システム500において、言わばIIoTを実現するための可搬型の情報処理装置である。エッジデバイス50は、フィールド機器2に対し着脱可能に設けられるとともに、外部装置と通信可能に設けられる情報処理装置である。また、エッジデバイス50は、例えば5cm四方程度の小型機器として構成される。
【0030】
図2を用いて具体的に説明する。ここでは、フィールド機器2が圧力伝送器2aであるものとする。エッジデバイス50は、例えば圧力伝送器2aの裏面の端子台付近に貼り付けるなどして取り付けられる。
【0031】
エッジデバイス50は、バッテリが搭載されており、このバッテリによって電源を確保する。バッテリは、例えば太陽電池等である。また、エッジデバイス50は、電流センサ52を有する。
【0032】
電流センサ52は、非接触式のクランプレスセンサとして実現される。すなわち、電流センサ52は、圧力伝送器2aからDCS10へ向けて延びる導線Wに貼り付けられる等して取り付けられる。また、電流センサ52は、圧力伝送器2aからDCS10へ向けて導線Wを流れる電流を間接的に読み取る。電流センサ52は、導線Wに電流が流れる際に生じる磁界を電流センサ52のヘッド内の磁気センサで計測し、電流値として導出することにより電流のモニタリングを実現する。
【0033】
なお、ここでは、圧力伝送器2aは所定のダンピング係数が設定されており、圧力伝送器2aからDCS10へ向けて導線Wを流れる電流信号は平滑化された平滑化データであるものとする。
【0034】
そして、実施形態に係る情報処理方法では、エッジデバイス50は、この電流センサ52を用いて導線Wを流れるデータを取得する(ステップS1)。そして、エッジデバイス50は、必要に応じ、取得したデータが平滑化データである場合に、非平滑の出力データである生データを推定する推定処理を実行する(ステップS2)。
【0035】
なお、ダンピングは広義では積分に相当するため、エッジデバイス50は、この推定処理において例えば積分の逆の演算である微分処理によって生データを推定する。ここで、微分処理に限らず、差分処理や偏微分処理等によって生データを推定してもよい。
【0036】
また、エッジデバイス50は、圧力伝送器2aが生データを出力するように設定されている場合は、ステップS2を実行しなくともよい。エッジデバイス50は、こうした処理の有無を予め設定情報として設定しておくことが可能である。
【0037】
そして、エッジデバイス50は、推定処理によって推定されたあるいは圧力伝送器2aから出力された生データに基づいて物理現象を検知する(ステップS3)。エッジデバイス50は、予め生データに基づいて物理現象を検知するアルゴリズムを実行するプログラムが実装されており、このプログラムが行う検知処理によって瞬間的な物理現象を検知することができる。このプログラムは、検知対象とする物理現象等に応じて、リモート等で適宜入れ替えが可能である。
【0038】
そのうえで、エッジデバイス50は、例えば検知処理によって物理現象が検知された場合、その検知結果を外部装置へ送信する(ステップS4)。エッジデバイス50は、例えばWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等によってこの外部装置への送信を行う。
【0039】
外部装置は、例えばデータロガー20や、他のエッジデバイス50や、統合サーバ装置100や、クラウドサーバ200等である。これらを含むプロセス制御システム500の全体構成例については、図3を用いて後述する。
【0040】
外部装置は、エッジデバイス50から物理現象の発生を通知された場合、例えばログとして保存したり、既存のプロセス制御の動作に基づいてDCS10等へ物理現象の発生に応じた制御を行わせたりすることとなる。
【0041】
このように、実施形態に係る情報処理方法では、プラント1のフィールド機器2に対し取り付け可能に設けられる可搬型の情報処理装置であるエッジデバイス50が、フィールド機器2から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、出力データが平滑化されている場合に、非平滑の出力データを推定し、非平滑の出力データを解析することによって、フィールド機器2において発生している物理現象を検知し、物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、処理を実行する。
【0042】
したがって、実施形態に係る情報処理方法によれば、既存のプロセス制御に与える影響を抑えつつ、プラント1で発生する物理現象を容易に検知することができる。
【0043】
なお、「フィールド機器2に対し取り付け可能」とは、フィールド機器2の本体に取り付け可能である場合の他、フィールド機器2の近傍に取り付け可能である場合を含む。また、エッジデバイス50の設置形態は、図2に示した例に限られない。このエッジデバイス50の設置形態の変形例については、図12図13を用いた説明で後述する。また、図2を用いた説明では、エッジデバイス50が生データの推定処理や物理現象の検知処理を行うこととしたが、これらの処理の一部を外部装置が行うようにしてもよい。この処理分担の具体例については、図6図9等を用いた説明で後述する。
【0044】
以下、実施形態に係るエッジデバイス50を含むプロセス制御システム500の構成例について、より具体的に説明する。
【0045】
[プロセス制御システム500の全体構成例]
図3は、実施形態に係るプロセス制御システム500の全体構成例を示す図である。プロセス制御システム500は、プラント1の運転制御および監視を実行するプラントシステムである。
【0046】
図3に示すように、プロセス制御システム500は、プラント1と、DCS10と、データロガー20と、高度制御装置30と、プロトコルサーバ40と、統合サーバ装置100と、クラウドサーバ200とを含む。
【0047】
プラント1は、石油、石油化学、化学、ガスなどを用いた各種プラントの一例である。プラント1は、生成物を得るためのさまざまな施設を備える工場等を含む。生成物の例は、LNG(液化天然ガス)、樹脂(プラスチック、ナイロン等)、化学製品等である。施設の例は、工場施設、機械施設、生産施設、発電施設、貯蔵施設、石油・天然ガス等を採掘する井戸元における施設等である。
【0048】
既に述べた通り、プラント1の様々な場所には、フィールド機器2が設けられる。フィールド機器2は、圧力伝送器2aや、温度伝送器2bや、流量計2cや、制御弁2dや、科学機器2e等である。流量計2cは、コリオリ流量計や、電磁流量計や、渦流量計等である。科学機器2eは、酸素濃度計や、pH計等である。
【0049】
また、プラント1には、フィールド機器2-1,2-2,…,2-nといったフィールド機器2のまとまりごとに現場パネル3が設けられる。現場パネル3は、例えば中継端子盤等である。現場パネル3は、複数のフィールド機器2に接続され、各フィールド機器2から出力された信号を例えば中継してDCS10へ出力する。
【0050】
また、フィールド機器2および現場パネル3にはそれぞれ、エッジデバイス50が取り付けられる。エッジデバイス50は、現場パネル3に設けられる場合、例えば現場パネル3内に置かれて、接続された各フィールド機器2からのデータを集約して保存してもよい。現場パネル3内に置かれる場合、現場パネル3に直結すればエッジデバイス50は電源確保が容易である。
【0051】
エッジデバイス50は、図3に示すように、圧力伝送器2aや、温度伝送器2bや、流量計2cや、制御弁2dや、科学機器2eにそれぞれ取り付けることができる。エッジデバイス50は、これら以外にも、レベル計や、重量計(ロードセル)や、距離計等に取り付けられてもよい。制御弁2dに取り付けられるエッジデバイス50は、バルブの実開度に対応する信号(4-20mA)を読み取ることとなる。エッジデバイス50を用いた物理現象の検知処理においては、高速サンプリングされた生データを推定することによって、キャビテーションや水撃、スラグフローの他、配管の錆や詰まり等や、ポンプ内の異物やインペラの損傷等までも検知するようにしてもよい。
【0052】
なお、物理現象の検知処理では、エッジデバイス50が例えば流量計2cに取り付けられた場合は、スラグフローやサージ現象などが分かる。エッジデバイス50が制御弁2dに取り付けられた場合は、開度指示と実開度との差から、例えばスティックスリップが分かる。もしも実開度が揺れている場合、プロセスの極微小な変化(例えば、脈動、異物混入、アスファルテンやハイドレードの詰まり、漏れなど)が分かる。これらが微小に発生していると、パッキンやステムが痛むという影響が出る。エッジデバイス50が温度伝送器2bに取り付けられた場合は、保温効果漏れ(保温材の劣化)などが分かる。
【0053】
DCS10は、複数のプロセスコントローラと複数の操作・監視装置とを含む。各プロセスコントローラとプラント1の各フィールド機器2とは、フィールドバス等を介して相互に通信可能に接続される。運転制御装置11は、プロセスコントローラの一例である。監視装置12は、操作・監視装置の一例である。
【0054】
運転制御装置11は、各フィールド機器2からデータを収集し、かかるデータをプロセスデータとして高度制御装置30へ通知する。また、運転制御装置11は、プロセスデータに基づく高度制御装置30からの指示に基づいてプロセス制御を実行する。
【0055】
監視装置12は、プラント1を監視または任意に操作するための装置である。監視装置12は、プラント1に関する各種情報を表示して、各フィールド機器2の動作や各種プロセスの状況などをオペレータに監視させる。
【0056】
また、監視装置12は、各フィールド機器2に対するオペレータからの所望の指示操作を受け付け、運転制御装置11へ通知する。運転制御装置11は、受け付けられた指示操作に基づき、各フィールド機器2を制御する。
【0057】
データロガー20は、各エッジデバイス50から送信されたデータをロギングし、物理現象検知に関するロギング情報として保存する。
【0058】
DCS10と、データロガー20と、プロトコルサーバ40とは、ネットワークN1を介して相互に通信可能に接続される。高度制御装置30と、プロトコルサーバ40と、統合サーバ装置100とは、ネットワークN2を介して相互に通信可能に接続される。統合サーバ装置100と、クラウドサーバ200とは、ネットワークN3を介して相互に通信可能に接続される。
【0059】
ネットワークN1は、例えば専用に構築された制御バスが採用される。ネットワークN1で伝送されるデータは、プラント1に関するデータであり、プラント1の制御等を行うためのデータを含む。かかる制御には、リアルタイム制御が含まれ得る。このため、ネットワークN1は、データ伝送の信頼性を確保する観点から例えば二重化される。
【0060】
二重化された場合、ネットワークN1は、2つの通信経路で同じデータを並列に伝送してもよい。この場合、ネットワークN1は、二重化されたうちの一方の通信経路に不具合等が生じても、他方の通信経路においてデータの伝送(送受信)を維持することができる。このようなネットワークN1としては、Vnet/IP(登録商標)などを利用することができる。
【0061】
また、ネットワークN2は、LAN(Local Area Network)などを利用することができる。また、ネットワークN2についても、信頼性の確保等の観点から二重化することができる。また、ネットワークN3は、インターネットや携帯電話回線網などを利用することができる。
【0062】
各エッジデバイス50は、これらネットワークN1,N2,N3を介し、無線通信または有線通信によりデータロガー20や、他のエッジデバイス50や、統合サーバ装置100や、クラウドサーバ200等の外部装置へデータを送信することができる。
【0063】
なお、図3は、必ずしも物理的な構成を表すものではない。したがって、プロセス制御システム500におけるネットワーク・トポロジーは、図3に示すバス型に限られない。
【0064】
高度制御装置30は、プラント1の高度制御(APC:Advanced Process Control)を実行する制御装置の一例である。高度制御装置30は、プロトコルサーバ40を介して運転制御装置11からのプロセスデータを取得する。また、高度制御装置30は、取得したプロセスデータや統合サーバ装置100からの指示等に応じたフィールド機器2の操作条件を決定する。また、高度制御装置30は、決定した操作条件に基づくフィールド機器2の運転制御を指示する。すなわち、高度制御装置30は、プロトコルサーバ40を介し、決定した操作条件に対応する各フィールド機器2の操作量を運転制御装置11に対し通知する。
【0065】
プロトコルサーバ40は、ネットワークN1とネットワークN2の間のデータのフォーマット変換および受け渡し等を担う装置である。
【0066】
例えば、ネットワークN1のプロトコル(データフォーマット、通信規格等)と、ネットワークN2のプロトコルとは異なっており、プロトコルサーバ40は、それらの間のデータのプロトコル変換等を行う。ネットワークN1におけるデータフォーマットは、プラント1を運転制御する各プロセスコントローラの独自の規格に従ってよい。ネットワークN2におけるデータフォーマットは、高度制御装置30および統合サーバ装置100のプロトコル、例えばOPC(Open Platform Communications)等のプロトコルに従ってよい。プロトコルサーバ40は、OPCサーバであってよい。
【0067】
統合サーバ装置100は、プロセス制御システム500を統合的に管理する装置である。統合サーバ装置100は、ネットワークN1、プロトコルサーバ40およびネットワークN2を介し、例えば各プロセスコントローラから通知されるアラームを収集してアラームメッセージや現在のアラーム状態を表示する。オペレータは、統合サーバ装置100に表示された表示内容を通じて、アラームメッセージや現在のアラーム状態を含む、プロセス制御システム500全体の状況を確認することができる。また、オペレータは、確認したプロセス制御システム500の状況に応じた指示操作を統合サーバ装置100に入力し、統合サーバ装置100は、この指示操作に応じた指示信号を高度制御装置30に対して送信する。
【0068】
クラウドサーバ200は、例えばパブリッククラウドとして実現される。クラウドサーバ200は、例えば上述したステップS2の推定処理や、ステップS3の物理現象の検知処理を実行する実行サービスを提供可能に設けられる。
【0069】
[エッジデバイス50の構成例]
次に、図4は、実施形態に係るエッジデバイス50の構成例を示すブロック図である。なお、図4では、本実施形態の説明に必要となる構成要素のみを機能ブロックで示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0070】
また、図4を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については説明を適宜簡略するか省略する。
【0071】
図4に示すように、エッジデバイス50は、HMI(Human Machine Interface)部51と、電流センサ52と、通信部53と、給電部54と、記憶部55と、制御部56とを備える。
【0072】
HMI部51は、ユーザ(例えばオペレータ)に対する入力および出力に関するインターフェイス部品を提供する構成要素である。HMI部51は、ユーザからの入力操作を受け付ける入力インターフェイスを含む。入力インターフェイスは、例えばタッチパネルや、ポインティングデバイスや、ボタンや、マイク等によって実現される。また、入力インターフェイスは、ソフトウェア部品によって実現されてもよい。
【0073】
また、HMI部51は、ユーザに対して画像情報や、発光情報、音声情報、振動情報等を提示する出力インターフェイスを含む。出力インターフェイスは、例えばディスプレイや、LED(Light-Emitting Diode)や、スピーカーや、振動子等によって実現される。なお、HMI部51は、入力インターフェイスおよび出力インターフェイスが一体となったタッチパネルディスプレイによって実現されてもよい。
【0074】
また、エッジデバイス50は小型機器であることから、HMI部51は、リモートで接続されたPC(Personal Computer)等からのリモート入力やリモート出力が可能なインターフェイス部品であってもよい。
【0075】
電流センサ52については説明済みであるので、ここでの説明は省略する。通信部53は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等による無線通信および/または有線通信により、エッジデバイス50と、データロガー20、他のエッジデバイス50、統合サーバ装置100およびクラウドサーバ200等の外部装置とを通信可能に接続する。通信部53は、ネットワークアダプタ等によって実現される。
【0076】
給電部54は、電源と接続され、エッジデバイス50への給電を行う。エッジデバイス50は、バッテリBを搭載しており、給電部54はこのバッテリBによって電源を確保する。バッテリBは、太陽電池や乾電池等であってよい。
【0077】
記憶部55は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の記憶デバイスによって実現される。記憶部55は、SDカード等のメモリカードによって実現されてもよい。記憶部55は、制御部56が実行する実施形態に係る情報処理プログラムを記憶する。また、記憶部55は、制御部56が実行する情報処理において用いられる各種の情報を記憶する。
【0078】
図4の例では、記憶部55は、設定情報55aと、検知モデル55bと、ロギング情報55cとを記憶する。設定情報55aは、エッジデバイス50が実行する処理の設定に関する情報である。設定情報55aは、例えば上述したステップS2の推定処理やステップS3の検知処理の実行の要否といった情報を含む。また、設定情報55aは、例えばデータの送信先となる外部装置等の情報を含む。また、設定情報55aは、例えば検知処理において用いられる判定閾値等の情報を含む。
【0079】
設定情報55aは、エッジデバイス50の設置形態や、取り付けられるフィールド機器2の設定内容等に応じて、ユーザの操作等に基づき、後述する設定部56bによって設定される。
【0080】
検知モデル55bは、物理現象の検知処理に用いられる解析モデルである。検知モデル55bは、例えば検知したい物理現象を解析するための数式で記述された数理モデルであってもよいし、機械学習のアルゴリズムを用いてAI(Artificial Intelligence)学習された学習モデルであってもよい。学習モデルの場合、検知モデル55bは例えば、推定された生データあるいはフィールド機器2から出力された生データが入力された場合に、所定の1以上の物理現象に該当すればこの物理現象の判別値を出力するように学習される。機械学習のアルゴリズムとしては、例えばディープラーニング等を用いることができるが、アルゴリズムを限定するものではない。
【0081】
ロギング情報55cは、エッジデバイス50における情報処理に関するログデータ群であり、後述するロギング部56gによって保存される。
【0082】
制御部56は、いわゆるプロセッサに相当する。制御部56は、CPU(Central Processing Unit)や、MPU(Micro Processing Unit)等によって実現される。
【0083】
制御部56は、記憶部55に記憶されている実施形態に係る情報処理プログラムを読み込んでRAMを作業領域として実行する。制御部56は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することもできる。
【0084】
制御部56は、UI(User Interface)制御部56aと、設定部56bと、取得部56cと、推定部56dと、検知部56eと、送信部56fと、ロギング部56gを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0085】
なお、制御部56の内部構成は、図4に示した構成に限られず、以下に説明する情報処理を実行可能な構成であれば他の構成であってもよい。また、制御部56が有する各処理部の接続関係は、図4に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。
【0086】
UI制御部56aは、HMI部51を介したユーザに対する入出力制御を行う。設定部56bは、UI制御部56aによる入出力制御のもと、HMI部51を介したユーザのエッジデバイス50に対する設定に関しての操作を受け付け、操作に応じた設定内容を設定情報55aへ設定する。
【0087】
なお、ユーザは、例えば検知処理において用いられる判定閾値等を現場で設定してもよいし、リモートで設定してもよい。また、判定閾値の設定後、ユーザは、閾値を超えた場合のアラーム通知を設定するようにしてもよい。また、ユーザは、閾値を超えた場合の日時を記録するようにしてもよい。このような閾値を超えた場合のエッジデバイス50の挙動を設定することにより、エッジデバイス50を言わばドライブレコーダのように活用することが可能となる。
【0088】
取得部56cは、電流センサ52を介し、導線Wを流れるデータを読み取って取得する。推定部56dは、上述したステップS2の推定処理を実行する。
【0089】
具体的には、推定部56dは、取得部56cによって取得されたデータを物理量へ変換する。例えば推定部56dは、フィールド機器2が圧力伝送器2aのとき、取得されたデータが4-20mAの電流値(または1-5Vの電圧値)である場合、200-500kPaの圧力値へ変換する。
【0090】
また、推定部56dは、変換された圧力値に基づいて生データを推定する。このとき、推定部56dは、上述したように微分処理や差分処理、偏微分処理等によって生データを推定する。
【0091】
検知部56eは、上述したステップS3の検知処理を実行する。検知部56eは、検知モデル55bを用いて、推定部56dによって推定された生データを解析する。また、検知部56eは、解析の結果に基づいて、物理現象の発生の有無を判定する。
【0092】
送信部56fは、検知部56eによって物理現象が発生したと判定された場合に、通信部53を介し、物理現象の検知結果を上位装置へ送信する。ロギング部56gは、物理現象の検知結果を含む、エッジデバイス50における情報処理に関するログデータ群をロギング情報55cへ保存する。
【0093】
[エッジデバイス50が実行する処理手順]
次に、エッジデバイス50が実行する処理手順について、図5を用いて説明する。図5は、実施形態に係るエッジデバイス50が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0094】
なお、図5には、設定情報55aが設定済みであり、この設定情報55aに基づいて上述したステップS2およびステップS3の検知処理のいずれもがエッジデバイス50にて行われる場合の処理手順を示している。エッジデバイス50や外部装置の間で処理分担が行われるその他の場合については図6図9を用いた説明で後述する。
【0095】
図5に示すように、まず取得部56cが、導線Wを流れるデータを読み取ることによって平滑化データを取得する(ステップS11)。
【0096】
つづいて、推定部56dが、取得した平滑化データを物理量へ変換する(ステップS12)。図中に示すように、フィールド機器2が圧力伝送器2aである場合、推定部56dは例えば4-20mAの電流値を200-500kPaの圧力値へ変換する。
【0097】
そして、推定部56dは、変換後の平滑化データに基づいて生データを推定する(ステップS13)。
【0098】
つづいて、検知部56eが、検知モデル55bを用いて、推定部56dによって推定された生データを解析する(ステップS14)。そして、検知部56eは、解析の結果、物理現象を検知したか否かを判定する(ステップS15)。
【0099】
ここで、物理現象を検知した場合(ステップS15,Yes)、送信部56fが物理現象の検知結果を外部装置へ送信する(ステップS16)。物理現象を検知しない場合(ステップS15,No)、ステップS17へ遷移する。
【0100】
そして、ロギング部56gが、実行した情報処理に関するログデータ群をロギング情報55cへ保存するロギングを実行する(ステップS17)。以上により、図5に示す処理手順の1回分が終了する。この処理手順は、プロセス制御システム500が稼働している間、繰り返される。
【0101】
なお、ステップS13~S14の間において、検知部56eは、FFT(Fast Fourier Transform)を実行し、低周期のプロセスの動きなどを示す物理現象の検知に不要な低周波数成分をハイパスフィルタ等により除去する前処理を行ってもよい。この場合、検知部56eは、不要な低周波数成分を取り除いたデータに対し逆FFTを実行したうえで、ステップS14の解析に関する演算処理を実行することとなる。
【0102】
[処理分担のパターン例]
次に、エッジデバイス50および外部装置の間での処理分担のパターン例について、図6図9を用いて説明する。図6は、装置間の処理分担のパターン例を示す図(その1)である。図7は、装置間の処理分担のパターン例を示す図(その2)である。図8は、装置間の処理分担のパターン例を示す図(その3)である。図9は、装置間の処理分担のパターン例を示す図(その4)である。
【0103】
なお、図6図9では、図3に示したバス型のネットワーク・トポロジーに応じ、各装置の関係をレベル#1~#5の階層別にレベル分けして示している。
【0104】
また、図6には、図5の処理手順をレベル#1のエッジデバイス50が実行した場合の例を挙げている。この例の場合、レベル#1の各エッジデバイス50は、各フィールド機器2から平滑化データを取得し、生データを推定し、物理現象を検知し、検知した場合これを外部装置へ送信する(ステップS101)。
【0105】
そして、この場合、例えばレベル#2の現場パネル3のエッジデバイス50、レベル#3のデータロガー20、レベル#5の統合サーバ装置100の少なくともいずれかが物理現象検知の通知を取得する(ステップS102)。
【0106】
レベル#2の現場パネル3のエッジデバイス50が取得した場合、これをロギングして保存する(ステップS103)。なお、この場合、レベル#2のエッジデバイス50は、自身が集約するレベル#1の各エッジデバイス50のデータロガーとして機能すると言える。
【0107】
また、レベル#3のデータロガー20が取得した場合、これをロギングして保存する(ステップS104)。なお、この場合、レベル#3のデータロガー20は、プロセス制御システム500に設けられたすべての各エッジデバイス50のデータロガーとして機能する。
【0108】
また、レベル#5の統合サーバ装置100が取得した場合、統合サーバ装置100は、例えばアラーム情報として物理現象検知を通知し、発生した物理現象に対応するオペレータの指示操作を受け付ける。また、統合サーバ装置100は、指示操作を受け付けた場合に、レベル#4の高度制御装置30に対し、この操作に応じた指示を行う(ステップS105)。
【0109】
レベル#4の高度制御装置30は、この指示に応じた操作条件を決定し、レベル#3のDCS10に対して指示を行う(ステップS106)。そして、レベル#3のDCS10は、この指示に応じてレベル#1の各フィールド機器2を制御することとなる(ステップS107)。
【0110】
次に、図7には、レベル#2のエッジデバイス50が生データの推定および物理現象の検知を行う場合の例を挙げている。この例の場合、レベル#1の各エッジデバイス50は、各フィールド機器2から平滑化データを取得し、取得した平滑化データを外部装置へ送信する(ステップS201)。ここでの外部装置は、レベル#2のエッジデバイス50となる。
【0111】
そして、レベル#2のエッジデバイス50は、レベル#1の各エッジデバイス50から平滑化データを収集し、生データを推定し、物理現象を検知し、外部装置へ送信する(ステップS202)。
【0112】
このとき、レベル#2のエッジデバイス50は、レベル#1の各エッジデバイス50に対応する複数の生データに基づいて物理現象を検知することができる。すなわち、この場合、レベル#2のエッジデバイス50は、レベル#1の各エッジデバイス50に対応する生データを総合的に評価した精度のよい物理現象の検知を行うことが可能となる。
【0113】
そして、ステップS202により、例えばレベル#3のデータロガー20、レベル#5の統合サーバ装置100の少なくともいずれかが物理現象検知の通知を取得する(ステップS203)。なお、レベル#2のエッジデバイス50は、レベル#1の各エッジデバイス50の生データおよびこれに基づく物理現象の検知結果をロギングして保存する(ステップS204)。
【0114】
レベル#3のデータロガー20が取得した場合、これをロギングして保存する(ステップS205)。
【0115】
また、レベル#5の統合サーバ装置100が取得した場合、統合サーバ装置100は、例えばアラーム情報として物理現象検知を通知し、発生した物理現象に対応するオペレータの指示操作を受け付ける。また、統合サーバ装置100は、指示操作を受け付けた場合に、レベル#4の高度制御装置30に対し、この操作に応じた指示を行う(ステップS206)。
【0116】
レベル#4の高度制御装置30は、この指示に応じた操作条件を決定し、レベル#3のDCS10に対して指示を行う(ステップS207)。そして、レベル#3のDCS10は、この指示に応じてレベル#1の各フィールド機器2を制御することとなる(ステップS208)。
【0117】
次に、図8には、レベル#5の統合サーバ装置100および/またはクラウドサーバ200が生データの推定および物理現象の検知を行う場合の例を挙げている。この例の場合、レベル#1の各エッジデバイス50は、各フィールド機器2から平滑化データを取得し、取得した平滑化データを外部装置へ送信する(ステップS301)。
【0118】
そして、この場合、少なくともレベル#5の統合サーバ装置100および/またはクラウドサーバ200が平滑化データを取得し、生データを推定し、物理現象を検知する(ステップS302)。なお、ステップS301でレベル#1の各エッジデバイス50は、平滑化データをレベル#2のエッジデバイス50、レベル#3のデータロガー20へ送信してもよい。
【0119】
レベル#2のエッジデバイス50が取得した場合、これをロギングして保存する(ステップS303)。また、レベル#3のデータロガー20が取得した場合、これをロギングして保存する(ステップS304)。
【0120】
また、ステップS302でレベル#5の統合サーバ装置100が物理現象を検知した場合、統合サーバ装置100は、例えばアラーム情報として物理現象検知を通知し、発生した物理現象に対応するオペレータの指示操作を受け付ける。また、ステップS302でレベル#5のクラウドサーバ200が物理現象を検知した場合、統合サーバ装置100がその通知をクラウドサーバ200から取得する。そして、同様に、統合サーバ装置100は、発生した物理現象に対応するオペレータの指示操作を受け付ける。
【0121】
そして、統合サーバ装置100は、指示操作を受け付けた場合に、レベル#4の高度制御装置30に対し、この操作に応じた指示を行う(ステップS305)。
【0122】
レベル#4の高度制御装置30は、この指示に応じた操作条件を決定し、レベル#3のDCS10に対して指示を行う(ステップS306)。そして、レベル#3のDCS10は、この指示に応じてレベル#1の各フィールド機器2を制御することとなる(ステップS307)。
【0123】
次に、図9には、図6に示した例に対し、レベル#1のエッジデバイス50において生データの推定処理が不要である場合の例を挙げている。この例の場合、レベル#1の各エッジデバイス50は、各フィールド機器2から生データを取得し、この生データに基づいて物理現象を検知し、検知した場合これを外部装置へ送信する(ステップS401)。
【0124】
これにつづくステップS402~S407については、図6のステップS102~ステップS107と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0125】
[メッシュネットワークを構成する場合]
なお、プロセス制御システム500は、エッジデバイス50と外部装置との間でメッシュネットワークを構成し、メッシュネットワークにおいて検知した物理現象を共有してもよい。
【0126】
次に、このメッシュネットワークを構成する場合について、図10図11を用いて説明する。図10は、メッシュネットワークを構成する場合の説明図である。図11は、検知した物理現象を共有する場合の説明図である。
【0127】
図10に示すように、現場パネル3のエッジデバイス50を含む各エッジデバイス50、統合サーバ装置100およびクラウドサーバ200等は、メッシュネットワークを構成してもよい。また、この場合に、例えば統合サーバ装置100等に接続され、オペレータ等が使用する端末装置300がメッシュネットワークに含まれてもよい。
【0128】
そして、この場合に、各装置において検知された物理現象が、メッシュネットワークにおいて共有されてもよい。
【0129】
図11に示すように、例えばエッジデバイス50-1はポンプ400の入力(IN)側の圧力データに基づいて物理現象を検知し、エッジデバイス50-2はポンプ400の位置(または振動)データに基づいて物理現象を検知するものとする。
【0130】
この場合において、エッジデバイス50-1,50-2のそれぞれの検知結果の組み合わせに基づいて例えばポンプ400に現れる物理現象の真の原因を特定することが可能となる。
【0131】
例えば、図11に示すように、エッジデバイス50-1は異常(すなわち物理現象の発生)を検知しないが、エッジデバイス50-2は異常を検知した場合、これらの検知結果を共有することによって「ミスアライメント等」の発生を特定することができる。
【0132】
また、例えば、エッジデバイス50-2は異常を検知しないが、エッジデバイス50-1は異常を検知した場合、これらの検知結果を共有することによって「キャビテーション」の発生を特定することができる。また、例えば、エッジデバイス50-1,50-2ともに異常を検知した場合、これらの検知結果を共有することによって「ミスアライメント等+キャビテーション」の発生を特定することができる。すなわち、ここに言う「共有」は、各装置において検知された物理現象の総合的な判断を可能にする。これにより、物理現象の検知をより精度高く行うことが可能となる。なお、図示は略しているが、図11の例の場合、例えばポンプ400の出力(OUT)側の圧力データに基づいて物理現象を検知する別のエッジデバイス50をさらに設けてもよい。無論、この別のエッジデバイス50の検知結果をさらに加味した判断を行うことで、物理現象の真の原因をより詳細に特定することが可能となる。
【0133】
[エッジデバイス50の設置形態の変形例]
次に、エッジデバイス50の設置形態の変形例について、図12および図13を用いて説明する。図12は、第1の変形例に係るエッジデバイス50Aの説明図である。図13は、第2の変形例に係るエッジデバイス50Bの説明図である。
【0134】
実施形態に係るエッジデバイス50は、クランプレスセンサとして実現される電流センサ52を備え、DCS10へ向けて導線Wを流れるデータを読み取ることとした。また、エッジデバイス50は、バッテリBが搭載され、このバッテリBによって電源を確保することとした。
【0135】
これに対し、図12に示すように、第1の変形例に係るエッジデバイス50Aは、導線Wに対し直結されることとしてもよい。この場合、エッジデバイス50Aは、例えば圧力伝送器2aの出力値を導線Wから直接読み取ることとなるため、電流センサ52は不要となる。また、エッジデバイス50Aは、導線Wを介した電源確保が可能となるので、バッテリBについても不要となる。
【0136】
プラント1において計装ケーブルは数kmにも及ぶことがあるため、高速でデータを読み取るためにも、エッジデバイス50Aが導線Wに直結されることは好ましい。また、エッジデバイス50Aが導線Wに対し直結されると、上述した推定処理や検知処理を実行するプログラムは圧力伝送器2aのファームウェアとして実装することも可能である。
【0137】
また、図13に示すように、第2の変形例に係るエッジデバイス50Bは、例えば圧力伝送器2aの裏側の端子台付近に設けられたソケットSCに対し、差し込むことによって取り付け可能に設けられてもよい。この場合、ソケットSCは、DCS10への導線Wに結線されており、エッジデバイス50Bは、エッジデバイス50Aと同様に、圧力伝送器2aの出力値を導線Wから直接読み取ることとなる。
【0138】
このため、電流センサ52は不要となる。また、エッジデバイス50Bは、導線Wを介した電源確保が可能となるので、エッジデバイス50Aと同様に、バッテリBについても不要となる。
【0139】
[エッジデバイス50,50Bの回収・交換について]
また、エッジデバイス50は、小型機器であり、かつ、容易に着脱可能であることの利点を活かし、適宜回収・交換することとしてもよい。図14は、エッジデバイス50,50Bの回収・交換についての説明図である。
【0140】
図14に示すように、エッジデバイス50,50Bは、プラント1の日常点検(現場パトロールなど)で、例えば少なくともデータロガーとして機能する現場パネル3のエッジデバイス50,50Bを古いエッジデバイス50-Oから新しいエッジデバイス50-Nへ交換可能である。回収したデータを解析することや日報に情報を反映することで、プラント1の生産や保守に役立てることができる。
【0141】
また、現場パネル3以外の各エッジデバイス50,50Bについても、古いエッジデバイス50-Oを回収し、新しいエッジデバイス50-Nへ適宜交換することができる。例えばプラント1以外からのネットワークアクセスが不能な遠隔地(例えば砂漠など)のプラント1において、現場での点検周期ごとに各エッジデバイス50,50Bを総入れ替えすることも可能である。
【0142】
このとき、入れ替え前と入れ替え後で取得するデータの種別を任意に変更(例えば、第1周期では圧力を取得し、第2周期では温度を取得するなど)することも可能である。また、入れ替え前と入れ替え後で検知対象となる物理現象を任意に変更することも可能である。
【0143】
[効果]
上述してきたように、実施形態に係るエッジデバイス50は、プラント1のフィールド機器2に対し取り付け可能に設けられる可搬型の情報処理装置であって、フィールド機器2から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得する取得部56cと、出力データが平滑化されている場合に、非平滑の出力データを推定する推定部56dと、非平滑の出力データを解析することによって、フィールド機器2において発生している物理現象を検知する検知部56eと、物理現象の検知結果を外部装置へ送信する送信部56fと、を備える。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、フィールド機器2に対して後付けが可能であり、また既存のプロセス制御システム500に対し設計変更を加えることもなく、瞬間的な物理現象の検知が可能となる。すなわち、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、既存のプロセス制御に与える影響を抑えつつ、プラント1で発生する物理現象を容易に検知することができる。
【0144】
また、エッジデバイス50は、フィールド機器2に対し着脱可能に取り付けられる。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、フィールド機器2に対し容易に取り付けまたは取り外しが可能である。また、容易に回収・交換が可能であり、プラント1の保守性も向上させることができる。
【0145】
また、エッジデバイス50は、クランプレスセンサである電流センサ52(「非接触式のセンサ」の一例に相当)を備え、取得部56cは、電流センサ52によって、フィールド機器2の導線Wから出力データを間接的に取得する。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、フィールド機器2の導線Wの接続を変更することなく容易にフィールド機器2の出力データを取得することが可能となる。
【0146】
また、エッジデバイス50は、バッテリBが搭載され、バッテリBを電源として動作する。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、自主電源で動作することにより、プラント1の電力系統に影響を与えることなく、プラント1で発生する物理現象を検知することが可能となる。
【0147】
また、エッジデバイス50は、フィールド機器2の導線Wと接続され、取得部56cは、導線Wから出力データを直接的に取得する。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、フィールド機器2の出力データを高品位に取得することが可能となる。
【0148】
また、エッジデバイス50は、導線Wを介してフィールド機器2を電源として動作する。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、バッテリ不足により動作不能に陥ることなく、フィールド機器2とともに連続稼働しながら、プラント1で発生する物理現象を検知することが可能となる。
【0149】
また、エッジデバイス50は、フィールド機器2のうち、圧力伝送器2a、温度伝送器2b、流量計2c、制御弁2dおよび科学機器2eの少なくともいずれかに対し取り付けられる。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、少なくとも圧力伝送器2a、温度伝送器2b、流量計2c、制御弁2dおよび科学機器2eにおいて発生する物理現象の検知が可能となる。
【0150】
また、推定部56dは、出力データが平滑化されている場合に、出力データをフィールド機器2に応じた物理量に変換したうえでの微分処理、差分処理および偏微分処理の少なくともいずれかによって非平滑の出力データを推定する。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、微分処理、差分処理および偏微分処理の少なくともいずれかにフィールド機器2の生データを推定することができる。
【0151】
また、検知部56eは、高速フーリエ変換を実行して低周波成分を除去した後、逆高速フーリエ変換を実行した出力データを解析する。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、物理現象の検知に不要な成分を予め除去したデータを解析することで、高精度な物理現象の検知が可能となる。
【0152】
また、検知部56eは、物理現象として、フィールド機器2に接続された配管内で発生するキャビテーション、水撃およびスラグフローの少なくともいずれかを検知する。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、物理現象として、キャビテーション、水撃およびスラグフローの少なくともいずれかの検知が可能である。
【0153】
また、エッジデバイス50は、取得部56c、推定部56dおよび検知部56eが実行する情報処理のログデータをロギング情報55cとして保存するロギング部56g、を備える。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、言わばドライブレコーダのような活用が可能となる。
【0154】
また、エッジデバイス50は、フィールド機器2を集線する現場パネル3に対しさらに取り付けられる。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、現場パネル3に対し設置されることで、電源確保が容易な取り付けを行うことができる。また、現場パネル3に対し設置されることで、現場パネル3が集約するフィールド機器2全体のデータロガーとして機能することが可能となる。
【0155】
また、上記外部装置は、プラント1のプロセス制御システム500に含まれるデータロガー20、統合サーバ装置100および/またはクラウドサーバ200(「サーバ装置」の一例に相当)、ならびに、現場パネル3に対し取り付けられるエッジデバイス50の少なくともいずれかである。したがって、実施形態に係るエッジデバイス50によれば、これら外部装置に対し物理現象の発生を通知することで、ログデータを残したり、既存のプロセス制御システム500の指示系統に基づいて物理現象に応じた制御を行わせたりすることが可能となる。
【0156】
また、実施形態に係る情報処理方法は、プラント1のフィールド機器2に対し取り付け可能に設けられる可搬型のエッジデバイス50(「コンピュータ」の一例に相当)が、フィールド機器2から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、出力データが平滑化されている場合に、非平滑の出力データを推定し、非平滑の出力データを解析することによって、フィールド機器2において発生している物理現象を検知し、物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、処理を実行する。したがって、実施形態に係る情報処理方法によれば、フィールド機器2に対して後付けが可能なエッジデバイス50を用いて、既存のプロセス制御システム500に対し設計変更を加えることもなく、瞬間的な物理現象の検知が可能となる。すなわち、実施形態に係る情報処理方法によれば、既存のプロセス制御に与える影響を抑えつつ、プラント1で発生する物理現象を容易に検知することができる。
【0157】
また、実施形態に係る情報処理プログラムは、プラント1のフィールド機器2に対し取り付け可能に設けられる可搬型のエッジデバイス50に、フィールド機器2から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、出力データが平滑化されている場合に、非平滑の出力データを推定し、非平滑の出力データを解析することによって、フィールド機器2において発生している物理現象を検知し、物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、処理を実行させる。すなわち、可搬型であり、フィールド機器2に対して後付けが可能なコンピュータであるエッジデバイス50が、フィールド機器2から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得する取得処理を実行し、出力データが平滑化されている場合に、非平滑の出力データを推定する推定処理を実行し、非平滑の出力データを解析することによって、フィールド機器2において発生している物理現象を検知する検知処理を実行し、物理現象の検知結果を外部装置へ送信する送信処理を実行する。したがって、実施形態に係る情報処理プログラムによれば、既存のプロセス制御システム500に対し設計変更を加えることもなく、瞬間的な物理現象の検知が可能となる。すなわち、実施形態に係る情報処理方法によれば、既存のプロセス制御に与える影響を抑えつつ、プラント1で発生する物理現象を容易に検知することができる。
【0158】
[その他の実施形態]
さて、これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0159】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0160】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0161】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0162】
[ハードウェア]
上述してきた実施形態に係るエッジデバイス50,50A,50Bは、例えば図15に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、エッジデバイス50を例に挙げて説明する。図15は、実施形態に係るエッジデバイス50の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。
【0163】
図15に示すように、コンピュータ1000は、通信装置1000a、二次記憶装置1000b、メモリ1000c、プロセッサ1000dを有する。また、図15に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0164】
通信装置1000aは、NICなどであり、他の装置との通信を行う。二次記憶装置1000bは、フラッシュメモリ等によって実現され、図4に示した機能を動作させるプログラムやデータベースを記憶する。
【0165】
プロセッサ1000dは、図4に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムを二次記憶装置1000b等から読み出してメモリ1000cに展開することで、図4等で説明した各機能を実行するスレッドを動作させる。例えば、このスレッドは、エッジデバイス50が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ1000dは、UI制御部56aと、設定部56bと、取得部56cと、推定部56dと、検知部56eと、送信部56fと、ロギング部56gと同様の機能を有するプログラムを二次記憶装置1000b等から読み出す。そして、プロセッサ1000dは、UI制御部56aと、設定部56bと、取得部56cと、推定部56dと、検知部56eと、送信部56fと、ロギング部56g等と同様の処理を実行するスレッドを実行する。
【0166】
このように、コンピュータ1000は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、コンピュータ1000は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、ここにいうプログラムは、コンピュータ1000のみによって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のハードウェア構成を有するコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0167】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク(Hard Disk)、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。かかるプログラムが記録された記録媒体も、本開示の一態様である。
【0168】
[その他]
開示される技術特徴の組み合わせのいくつかの例を以下に記載する。
【0169】
(1)
プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型の情報処理装置であって、
前記フィールド機器から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得する取得部と、
前記出力データが平滑化されている場合に、非平滑の前記出力データを推定する推定部と、
非平滑の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知する検知部と、
前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する送信部と、
を備える情報処理装置。
(2)
前記フィールド機器に対し着脱可能に取り付けられる、
(1)に記載の情報処理装置。
(3)
非接触式のセンサを備え、
前記取得部は、
前記非接触式のセンサによって、前記フィールド機器の導線から前記出力データを間接的に取得する、
(2)に記載の情報処理装置。
(4)
バッテリが搭載され、前記バッテリを電源として動作する、
(3)に記載の情報処理装置。
(5)
前記フィールド機器の導線と接続され、
前記取得部は、
前記導線から前記出力データを直接的に取得する、
(1)または(2)に記載の情報処理装置。
(6)
前記導線を介して前記フィールド機器を電源として動作する、
(5)に記載の情報処理装置。
(7)
前記フィールド機器のうち、圧力伝送器、温度伝送器、流量計、制御弁および科学機器の少なくともいずれかに対し取り付けられる、
(1)~(6)のいずれか一つに記載の情報処理装置。
(8)
前記推定部は、
前記出力データが平滑化されている場合に、前記出力データを前記フィールド機器に応じた物理量に変換したうえでの微分処理、差分処理および偏微分処理の少なくともいずれかによって非平滑の前記出力データを推定する、
(1)~(7)のいずれか一つに記載の情報処理装置。
(9)
前記検知部は、
高速フーリエ変換を実行して低周波成分を除去した後、逆高速フーリエ変換を実行した前記出力データを解析する、
(8)に記載の情報処理装置。
(10)
前記検知部は、
前記物理現象として、前記フィールド機器に接続された配管内で発生するキャビテーション、水撃およびスラグフローの少なくともいずれかを検知する、
(1)~(9)のいずれか一つに記載の情報処理装置。
(11)
前記取得部、前記推定部および前記検知部が実行する情報処理のログデータをロギング情報として保存するロギング部、
を備える(1)~(10)のいずれか一つに記載の情報処理装置。
(12)
前記フィールド機器を集線する現場パネルに対しさらに取り付けられる、
請求項(1)~(11)のいずれか一つに記載の情報処理装置。
(13)
前記外部装置は、
前記プラントのプロセス制御システムに含まれるデータロガー、サーバ装置、および、前記現場パネルに対し取り付けられる前記情報処理装置の少なくともいずれかである、
(12)に記載の情報処理装置。
(14)
プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型のコンピュータが、
前記フィールド機器から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、
前記出力データが平滑化されている場合に、非平滑の前記出力データを推定し、
非平滑の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知し、
前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、
処理を実行する、情報処理方法。
(15)
プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型のコンピュータに、
前記フィールド機器から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、
前記出力データが平滑化されている場合に、非平滑の前記出力データを推定し、
非平滑の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知し、
前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、
処理を実行させる、情報処理プログラム。
(16)
情報処理プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記情報処理プログラムは、
プラントのフィールド機器に対し取り付け可能に設けられる可搬型のコンピュータに、
前記フィールド機器から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、
前記出力データが平滑化されている場合に、非平滑の前記出力データを推定し、
非平滑の前記出力データを解析することによって、前記フィールド機器において発生している物理現象を検知し、
前記物理現象の検知結果を外部装置へ送信する、
処理を実行させる、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【符号の説明】
【0170】
1 プラント
2 フィールド機器
2a 圧力伝送器
2b 温度伝送器
2c 流量計
2d 制御弁
2e 科学機器
3 現場パネル
10 DCS
11 運転制御装置
12 監視装置
20 データロガー
30 高度制御装置
40 プロトコルサーバ
50,50A,50B エッジデバイス
51 HMI部
52 電流センサ
53 通信部
54 給電部
55 記憶部
55a 設定情報
55b 検知モデル
55c ロギング情報
56 制御部
56a UI制御部
56b 設定部
56c 取得部
56d 推定部
56e 検知部
56f 送信部
56g ロギング部
100 統合サーバ装置
200 クラウドサーバ
500 プロセス制御システム
B バッテリ
【要約】
【課題】既存のプロセス制御に与える影響を抑えつつ、プラントで発生する物理現象を容易に検知することを課題とする。
【解決手段】プラントのフィールド機器(2)に対し取り付け可能に設けられる可搬型のエッジデバイス(50)が、フィールド機器(2)から出力される平滑化されたまたは非平滑の出力データを取得し、出力データが平滑化されている場合に、非平滑の出力データを推定し、非平滑の出力データを解析することによって、フィールド機器(2)において発生している物理現象を検知し、物理現象の検知結果を外部装置へ送信する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15