(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電気コネクタ対
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6471 20110101AFI20240214BHJP
H01R 13/6585 20110101ALI20240214BHJP
H01R 12/75 20110101ALI20240214BHJP
【FI】
H01R13/6471
H01R13/6585
H01R12/75
(21)【出願番号】P 2023034266
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2019151701の分割
【原出願日】2019-08-22
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 智行
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-176944(JP,A)
【文献】特開2019-009037(JP,A)
【文献】特開2006-066381(JP,A)
【文献】特開2002-124356(JP,A)
【文献】特開2008-147020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/646
H01R 13/658
H01R 12/75
H01R 12/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装される第1のコネクタと同軸ケーブルに接続された第2のコネクタとを備え、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが嵌合して、前記基板と前記同軸ケーブルとを接続する電気コネクタ対であって、
前記第1のコネクタは、
前記基板と接続されて伝送される差動信号毎に設けられた導電性の一対の第1のコンタクトと、
前記第1のコンタクトを、前記差動信号毎に仕切るように前記基板に接地された状態で立設される導電性の壁部と、
前記第1のコンタクト及び前記壁部を保持する絶縁性の第1のハウジングと、
を備え、
前記第2のコネクタは、
前記一対の第1のコンタクトと接触するとともに前記同軸ケーブルの一対の内部導体に接続される、前記差動信号毎に設けられた導電性の一対の第2のコンタクトと、
前記第2のコンタクトを保持する絶縁性の第2のハウジングと、
前記第2のコンタクトから離隔しつつ、前記第2のコンタクトを覆うように前記第2のハウジングに取り付けられるとともに、前記同軸ケーブルの外部導体と電気的に接続される導電性のケーブル側シェルと、を備え、
前記ケーブル側シェルは、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが嵌合すると前記壁部と接触するシェル側接触部を備え、
前記シェル側接触部は、前記一対の第2のコンタクトの間に張り出して設けられている、
電気コネクタ対。
【請求項2】
前記第2のコネクタは、
前記一対の内部導体を覆う絶縁体の外周を巻回して形成された外部導体を有する前記同軸ケーブルと接続される、
請求項
1に記載の電気コネクタ対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタ対に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2本でペアを構成する複数の信号コンタクトと、複数のグランドコンタクトとを備えるコネクタが開示されている。信号コンタクトとグランドコンタクトとは、その一端側では、グランドコンタクトのペアが信号コンタクトのペアを挟む順番で一列に配列される。この一方、信号コンタクトとグランドコンタクトとは、他端側では、各コンタクトが台形の各頂点を構成し、隣接する信号コンタクト間が上底となり、グランドコンタクト間が下底となるように配列される。この台形において、上底と下底は平行であり、上底は下底より短くなっている。信号コンタクトとグランドコンタクトとを、上述のように配列することで、差動伝送における伝送品質を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示された電気コネクタでは、クロストークの抑制に限界がある。このため、信号が伝送される周波数帯域において共振が発生し、信号の伝送品質が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、信号の伝送品質の低下を防止することができる電気コネクタ対を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る電気コネクタ対は、
基板に実装される第1のコネクタと同軸ケーブルに接続された第2のコネクタとを備え、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが嵌合して、前記基板と前記同軸ケーブルとを接続する電気コネクタ対であって、
前記第1のコネクタは、
前記基板と接続されて伝送される差動信号毎に設けられた導電性の一対の第1のコンタクトと、
前記第1のコンタクトを、前記差動信号毎に仕切るように前記基板に接地された状態で立設される導電性の壁部と、
前記第1のコンタクト及び前記壁部を保持する絶縁性の第1のハウジングと、
を備え、
前記第2のコネクタは、
前記一対の第1のコンタクトと接触するとともに前記同軸ケーブルの一対の内部導体に接続される、前記差動信号毎に設けられた導電性の一対の第2のコンタクトと、
前記第2のコンタクトを保持する絶縁性の第2のハウジングと、
前記第2のコンタクトから離隔しつつ、前記第2のコンタクトを覆うように前記第2のハウジングに取り付けられるとともに、前記同軸ケーブルの外部導体と電気的に接続される導電性のケーブル側シェルと、を備え、
前記ケーブル側シェルは、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが嵌合すると前記壁部と接触するシェル側接触部を備え、
前記シェル側接触部は、前記一対の第2のコンタクトの間に張り出して設けられている。
【0015】
前記第2のコネクタは、
前記一対の内部導体を覆う絶縁体の外周を巻回して形成された外部導体を有する前記同軸ケーブルと接続される、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、伝送される信号毎にコンタクトの配列を仕切るように基板に接地された状態で立設される導電性の壁部が設けられている。このようにすれば、コンタクトから生じた電磁波ノイズを壁部で補足することができるうえ、その電磁波ノイズにより壁部内に生じたエネルギーを放出しやすくすることができる。この結果、信号の伝送品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電気コネクタ対の構成を示す斜視図である。
【
図3】(A)はリセプタクルコネクタの上面図である。(B)は、リセプタクルコネクタの側面図である。(C)は、リセプタクルコネクタの底面図である。
【
図4】(A)は、
図3(B)のA-A線断面図である。(B)は、
図3(B)のB-B線断面図である。
【
図6】(A)はプラグコネクタの上面図である。(B)は、プラグコネクタの側面図である。(C)は、プラグコネクタの底面図である。
【
図7】(A)は、
図6(B)のC-C線断面図である。(B)は、
図6(B)のD-D線断面図である。
【
図8】ケーブル側シェル、壁部及び第1のコンタクトの斜視図である。
【
図9】(A)は、リセプタクルコネクタとプラグコネクタとが嵌合された場合の
図3(B)のA-A線、
図6(B)のC-C線に相当する断面図である。(B)は、リセプタクルコネクタとプラグコネクタとが嵌合された場合の
図3(B)のB-B線、
図6(B)のD-D線に相当する断面図である。
【
図10】壁部とケーブル側シェルとを接続した場合と接続していない場合の近端クロストークの特性を比較して示すグラフである。
【
図11】壁部とケーブル側シェルとの接続位置が異なる電気コネクタ対の一例その1を示す断面図である。
【
図12】壁部とケーブル側シェルとの接続位置が異なる電気コネクタ対の一例その2を示す断面図である。
【
図13】(A)は、
図11の電気コネクタ対の近端クロストークの特性を示すグラフである。(B)は、
図12の電気コネクタ対の近端クロストークの特性を示すグラフである。
【
図14】(A)は、本発明の実施の形態2に係る電気コネクタ対を構成するプラグコネクタのケーブル側シェル(上)の斜視図である。(B)は、壁部とケーブル側シェルとが接続される様子を示す斜視図である。
【
図15】
図14のケーブル側シェル(上)を有する電気コネクタ対の近端クロストークの特性を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る電気コネクタ及び電気コネクタ対について、図面を参照して詳細に説明する。全図において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号が付されている。本実施の形態に係る電気コネクタ対では、基板に実装される一方の電気コネクタにおいて信号の伝送線路間のクロストークを軽減すべく、導体から成る壁部が、信号の伝送線路間に設けられており、他方の電気コネクタには、壁部と接続する接地部材が設けられていることを特徴とする。
【0023】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る電気コネクタ対1は、第1のコネクタとしてのリセプタクルコネクタ2と、第2のコネクタとしてのプラグコネクタ3と、を備える。リセプタクルコネクタ2は、基板5とプラグコネクタ3との間で信号を伝送する。本実施の形態では、リセプタクルコネクタ2が、電気コネクタに対応し、プラグコネクタ3が相手コネクタに対応する。
【0024】
リセプタクルコネクタ2は、基板5に実装されており、プラグコネクタ3には、並列に並ぶ16本の同軸ケーブル4が接続されている。リセプタクルコネクタ2とプラグコネクタ3とが嵌合することにより、16本の同軸ケーブル4と基板5の回路とが接続される。なお、本実施の形態では、基板5の主面をxy面に平行な面とし、基板5の主面の法線をz軸方向とするxyz座標系に基づいて、説明を行う。
【0025】
図2に示すように、同軸ケーブル4は、一対の内部導体4aを有している。一対の内部導体4aの端部は外部に露出しており、一対の内部導体4aは、その露出した部分でプラグコネクタ3と接続される。また、同軸ケーブル4は、外部導体4bを有している。外部導体4bは、一対の内部導体4aの外周に配置(巻回)されている。外部導体4bの端部は外部に露出しており、外部導体4bは、その露出した部分でプラグコネクタ3と接続される。
【0026】
同軸ケーブル4では、一方の内部導体4aと外部導体4bとの電位差と、他方の内部導体4aと外部導体4bとの電位差との差分による信号が、差動信号となる。電気コネクタ対1は、16の差動信号を同時に伝送可能である。
【0027】
まず、リセプタクルコネクタ2の構成について説明する。
図3(A)、
図3(B)及び
図3(C)、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、リセプタクルコネクタ2は、第1のコンタクト20と、第1のハウジング21と、壁部22Aと、基板側シェル23と、を備える。
【0028】
第1のコンタクト20は、
図4(A)に示すように、x軸方向を長手方向とする金属から成る導電性の部材である。第1のコンタクト20は、基板5と接続されて信号を伝送する。
図3(A)乃至
図3(C)に示すように、第1のコンタクト20は、同軸ケーブル4(
図1参照)の内部導体4a(
図7(A)参照)の数に合わせて32本設けられている。第1のコンタクト20は、信号が伝送される毎に必要本数設けられている。第1のコンタクト20は、プラグコネクタ3の第2のコンタクト30(
図6(C)参照)に対応してy軸方向に一列に配列されている。本実施の形態では、第1のコンタクト20は、隣接する一対のものが一組となって、差動信号を伝送する。
【0029】
図4(A)に示すように、第1のコンタクト20には、基板5と接続する基板接続部20aが形成されている。基板接続部20aは、はんだ付けにより、基板5の信号電極5aと接続する。さらに、第1のコンタクト20には、基板接続部20aの一端で基板5から離れる方向に折れ曲がって延びる立ち上がり部20bが形成されている。
【0030】
さらに、第1のコンタクト20には、立ち上がり部20bの一端で基板5に沿う方向に折れ曲がって延びて第2のコンタクト30(
図6(C)参照)と接触する第1のコンタクト接触部20cが形成されている。立ち上がり部20bと第1のコンタクト接触部20cとの間には、第1のハウジング21と係止する係止部20dが設けられている。
【0031】
このように、第1のコンタクト20は、基板5と接続されるとともにプラグコネクタ3と嵌合すると第2のコンタクト30(信号伝送部材)と接触し、基板5と第2のコンタクト30との間で信号を伝送する。
図4(A)に示すように、第1のコンタクト20では、基板5を基準とするz軸方向の高さは、基板接続部20a、立ち上がり部20b、係止部20d及び第1のコンタクト接触部20cの各部で異なる。第1のコンタクト20の基板5からの最大高さは、第1のコンタクト接触部20cの高さh1となっている。
【0032】
第1のハウジング21は、樹脂から成る絶縁性の部材である。第1のハウジング21は、第1のコンタクト20及び壁部22Aを保持する。
図4(A)に示すように、第1のハウジング21には、後述のプラグコネクタ3の第2のハウジング31の突出部31a(
図5参照)が嵌まり込む凹部21aが設けられている。
【0033】
壁部22Aは、第1のハウジング21内に圧入された導電性の部材であり、基板5に接地されている。壁部22Aは、
図3(C)に示すように、基板5上において、伝送される信号(差動信号)毎に第1のコンタクト20を仕切るように立設されている。さらに、
図4(B)に示すように、壁部22Aは、第1のコンタクト20の配列の両端にx軸方向に延びた状態で基板5上に立設されている。言い換えると、リセプタクルコネクタ2では、一対の壁部22Aが、一対の第1のコンタクト20を挟んだ状態で基板5上に立設された構造となっている。
【0034】
壁部22Aは、壁部本体22aと壁部側接触部22bとを備える。
図4(B)に示すように、壁部本体22aは、基板5の接地電極5bにはんだ付けされ、基板5に接地されている。
図4(A)と
図4(B)を対比するとわかるように、壁部本体22aの基板5に沿った部分の長さ(x軸方向の長さ)L2は、第1のコンタクト20の基板5に沿った部分の長さL1以上に規定されている。また、壁部本体22aの基板5からの高さh2は、第1のコンタクト20の基板5からの高さh1以上に規定されている。この結果、壁部本体22aは、
y軸方向から見て、第1のコンタクト20を隠すような大きさとなっている。
【0035】
壁部側接触部22bは、基板5に沿って+x方向に張り出している。これは、相手コネクタとしてのプラグコネクタ3と嵌合すると、プラグコネクタ3に設けられた接地部材としてのケーブル側シェル(上)33Aと接触するためである。壁部側接触部22bは、基板5から見て第1のコンタクト20の高さh1以上の位置でケーブル側シェル(上)33Aと接触する。
【0036】
壁部側接触部22bは、弾性力を有している。リセプタクルコネクタ2がプラグコネクタ3と嵌合すると、壁部側接触部22bは、その弾性力によりケーブル側シェル(上)33A(
図9(A)参照)と押圧接触する。
【0037】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、基板側シェル23は、第1のハウジング21に取り付けられている。基板側シェル23は、基板5の接地電極5bに接続し、第1のコンタクト20を含む信号の伝送線路の上下に配置されている。基板側シェル23は、この信号の伝送線路に対する電磁波遮蔽材として機能する。
【0038】
基板側シェル23は、第1のコンタクト20及び壁部22Aから離隔している。基板側シェル23は、プラグコネクタ3と嵌合すると、プラグコネクタ3の後述するケーブル側シェル(下)34(
図9(B)参照)と接触する。
【0039】
次に、プラグコネクタ3の構成について説明する。
図5、
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、プラグコネクタ3は、第2のコンタクト30と、第2のハウジング31と、ケーブル側シェル(上)33Aと、ケーブル側シェル(下)34と、プルバー35と、を備える。なお、
図7(A)及び
図7(B)では、プルバー35の図示は、省略されている。
【0040】
図7(A)に示すように、第2のコンタクト30は、x軸方向を長手方向とする導電性の部材である。
図6(A)~
図6(C)に示すように、第2のコンタクト30は、リセプタクルコネクタ2の第1のコンタクト20(
図3(A)~
図3(C)参照)に対応してy軸方向に一列に配列されている。本実施の形態では、第2のコンタクト30は、隣接する一対のものが一組となって、差動信号を伝送する。
【0041】
図7(A)に示すように、第2のコンタクト30には、同軸ケーブル4の内部導体4aと接続するケーブル接続部30aが形成されている。さらに、第2のコンタクト30には、第1のコンタクト20と接触する第2のコンタクト接触部30bが形成されている。さらに、第2のコンタクト30には、第2のハウジング31に係止する係止部30cが形成されている。このように、第2のコンタクト30は、第1のコンタクト20と接触するとともに同軸ケーブル4の内部導体4aに接続されて、第1のコンタクト20と内部導体4aとの間で信号を伝送する。
【0042】
第2のハウジング31は、絶縁性の部材である。第2のハウジング31は、第2のコンタクト30を保持する。さらに、第2のハウジング31は、ケーブル側シェル(上)33Aと、ケーブル側シェル(下)34とを保持する。
図5及び
図7(A)に示すように、第2のハウジング31には、一対の第2のコンタクト30を保持し、-x方向に突出する複数の突出部31aが設けられている。
図9(A)に示すように、この突出部31aが、リセプタクルコネクタ2の凹部21aに嵌まり込んで、プラグコネクタ3とリセプタクルコネクタ2との嵌合が行われる。
【0043】
図7(A)に示すように、ケーブル側シェル(上)33Aと、ケーブル側シェル(下)34とは、一対の同軸ケーブル4の外部導体4bを挟むように保持している。なお、同軸ケーブル4において、内部導体4aと外部導体4bとの間には絶縁体4cが挿入されており、外部導体4bの外側、すなわち最外部に外部被膜4dが形成されている。
【0044】
ケーブル側シェル(上)33Aと、ケーブル側シェル(下)34とは、導電性の部材である。ケーブル側シェル(上)33Aは、第2のハウジング31の樹脂成形時に同時に一体成形される。ケーブル側シェル(下)34は、同軸ケーブル4が第2のコンタクト30と結線された後に第2のハウジング31に取り付けられる。ケーブル側シェル(上)33Aと、ケーブル側シェル(下)34とは、互いに接触している。ケーブル側シェル(上)33A及びケーブル側シェル(下)34は、第2のコンタクト30から離隔しつつ、第2のコンタクト30を覆うように第2のハウジング31に取り付けられ、リセプタクルコネクタ2と嵌合すると基板側シェル23と接触する。
【0045】
図8に示すように、ケーブル側シェル(上)33Aは、シェル本体33aと、シェル側接触部としての端子部33bと、を備える。シェル本体33aは、上述のように、第2のハウジング31全体を覆っている。端子部33bは、シェル本体33aの-x側端部においてy軸方向に配列されており、それぞれがシェル本体33aから基板5に沿って張り出して-x方向に延びている。端子部33bは、リセプタクルコネクタ2の壁部22Aに対応して設けられており、リセプタクルコネクタ2とプラグコネクタ3とが嵌合すると、端子部33bは、壁部22Aの壁部側接触部22bと接触する。
【0046】
また、ケーブル側シェル(上)33Aには、リセプタクルコネクタ2との接続状態を補強するためのプルバー35が設けられている。
【0047】
図1に示すように、基板5に実装されたリセプタクルコネクタ2にプラグコネクタ3が嵌め込まれ、プルバー35が回動してリセプタクルコネクタ2に係合すると、
図9(A)及び
図9(B)に示す状態となる。
【0048】
この場合、
図9(A)に示すように、第1のコンタクト20の第1のコンタクト接触部20cと第2のコンタクト30の第2のコンタクト接触部30bとが接触する。これにより、基板5の信号電極5a、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30、同軸ケーブル4の内部導体4aという信号の伝送線路が形成される。
【0049】
さらに、この状態で、
図9(B)に示すように、基板側シェル23が、ケーブル側シェル(上)33A、ケーブル側シェル(下)34と接触する。これにより、同軸ケーブル4の外部導体4b、ケーブル側シェル(上)33A、ケーブル側シェル(下)34、基板側シェル23、基板5の接地電極5bという接地用の伝送線路が形成される。
【0050】
また、基板5に実装されたリセプタクルコネクタ2にプラグコネクタ3が嵌め込まれると、
図9(B)に示すように、リセプタクルコネクタ2の壁部22Aがプラグコネクタ3のケーブル側シェル(上)33Aの端子部33bに接触する。壁部22Aは、基板5の接地電極5bに接続されている。したがって、壁部22Aは、同軸ケーブル4の外部導体4bと同電位となる。
【0051】
同軸ケーブル4の一対の内部導体4aは、差動信号を伝送する。したがって、電気コネクタ対1においても、隣接する一対の伝送線路で差動信号が伝送される。電気コネクタ対1では、壁部22Aが、差動信号を伝送する一対の伝送線路を挟むように形成されている。言い換えると、壁部22Aは、差動信号を伝送する一対の伝送線路単位(コンタクト単位)で、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30同士を仕切っている。すなわち、壁部22Aは、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30の配列を、伝送される信号毎に仕切るように基板5に接地された状態で立設される。これにより、壁部22Aは、一対の伝送線路から、隣接する一対の伝送線路へ放射する電磁波ノイズを遮蔽する導体として機能する。壁部22Aで捕捉された電磁波ノイズによるエネルギーは、主として基板5の接地電極5bから放出される。
【0052】
図9(A)及び
図9(B)に示すように、壁部本体22a及び壁部側接触部22bの基板5に沿った部分の長さL5は、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30で構成される信号の伝送線路の基板5に沿った部分の長さL3以上に規定されている。これにより、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30から発する電磁波ノイズを壁部本体22a及び壁部側接触部22bで捕捉しやすくなる。
【0053】
図9(A)及び
図9(B)に示すように、壁部22Aとケーブル側シェル(上)33Aとは、基板5から見て、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び同軸ケーブル4の内部導体4aの露出部分の高さh3以上の高さh4で接触している。第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び同軸ケーブル4の内部導体4aの露出部分から発する電磁波ノイズが壁部22Aの上側で捕捉された場合でも、その成分をケーブル側シェル(上)33Aから迅速に逃がすことが可能となる。
【0054】
また、壁部22A及びケーブル側シェル(上)33Aの基板5に沿った部分の全長L6は、第1のコンタクト20において基板5と接続する部分(基板接続部20a)から、第2のコンタクト30において内部導体4aと接続する部分までの信号の伝送線路の基板5に沿った全長L4以上となるように規定されている。これにより、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び露出した内部導体4aから成る信号の伝送線路全体を、壁部22Aでカバーすることができる。
【0055】
このように、壁部22Aは、差動信号を伝送する一対の信号の伝送線路同士でのクロストークを低減するために設けられている。ここで、伝送線路の周波数特性である近端クロストーク(S-Parameter NEXT(Near End Crosstalk))がどの程度低減されているかについて説明する。
【0056】
図10に示すように、壁部22Aとプラグコネクタ3のケーブル側シェル(上)33Aとが接触していない場合の近端クロストーク(点線)と、本実施の形態のように壁部22Aとプラグコネクタ3のケーブル側シェル(上)33Aとが接触している場合の近端クロストーク(実線)とを比較すると、共振周波数がシフトし、そのレベルが低減しているのがわかる。これにより、例えば、信号の伝送線路の共振周波数を信号の伝送周波数からずらして、クロストークを低減することが可能となる。
【0057】
なお、
図11に示すように壁部22Aの壁部側接触部22bとケーブル側シェル(上)33Aとの接触位置の基板5からの高さh4を低くするようにしてもよい。このようにしても、
図13(A)に示すように、壁部22Aとプラグコネクタ3のケーブル側シェル(上)33Aとが接触していない場合(点線)に比べ、近端クロストーク(実線)の共振周波数をシフトさせることができる。
【0058】
しかしながら、
図12に示すように、壁部22Aの壁部側接触部22bを、ケーブル側シェル(下)34と接続した場合では、
図13(B)に示すように、壁部22Aとプラグコネクタ3のケーブル側シェル(上)33Aとが接触していない場合(点線)に比べても、近端クロストーク(実線)の共振周波数はほとんどシフトしなかった。このことは、壁部22Aと、ケーブル側シェル(上)33Aとが、第1のコンタクト20よりも高い位置で接続するのが望ましいことを示している。
【0059】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図14(A)に示すように、本実施の形態2に係る電気コネクタ対1は、プラグコネクタ3において、ケーブル側シェル(上)33Aの代わりにケーブル側シェル(上)33Bを備える点が、上記実施の形態1と異なる。
【0060】
ケーブル側シェル(上)33Bは、端子部33bの代わりに、シェル側接触部33cを備える点が、ケーブル側シェル(上)33Aと異なっている。シェル側接触部33cは、平板状となっている。
図14(B)に示すように、壁部22Aの壁部側接触部22bは、このシェル側接触部33cに接触する。このようにしても、
図15に示すように、壁部22Aとプラグコネクタ3のケーブル側シェル(上)33Bとが接触していない場合(点線)に比べ、近端クロストーク(実線)の共振周波数をシフトさせることができる。
【0061】
以上詳細に説明したように、上記実施の形態によれば、第1のコンタクト20の配列を、伝送される信号毎に仕切るように基板5に接地された状態で立設される導電性の壁部22Aが設けられており、壁部22Aはプラグコネクタ3のケーブル側シェル(上)33Aに接続している。このようにすれば、第1のコンタクト20から生じた電磁波ノイズを壁部22Aで補足することができるうえ、その電磁波ノイズにより壁部22A内に生じたエネルギーを放出しやすくすることができる。この結果、信号の伝送品質の低下を防止することができる。
【0062】
また、上記実施の形態では、壁部側接触部22bは、基板5から見て第1のコンタクト20の高さ以上の位置でケーブル側シェル(上)33Aと接触する。このようにすれば、例えば、信号の伝送線路の共振周波数を信号の伝送周波数からずらして、近端クロストークを低減することが可能となる。
【0063】
また、上記実施の形態では、壁部側接触部22bは、壁部本体22aから、基板5に沿ってケーブル側シェル(上)33Aに向かって張り出している。このようにすれば、信号の伝送線路に沿って壁部22Aの長さを長くし、信号の伝送線路からの電磁波ノイズを捕捉しやすくすることができる。
【0064】
また、上記実施の形態では、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、壁部本体22aの基板5に沿った部分の長さL2は、第1のコンタクト20の基板5に沿った部分の長さL1以上に規定されている。このようにすれば、第1のコンタクト20から発する電磁波ノイズをより確実に壁部本体22aで捕捉することが可能となる。
【0065】
また、上記実施の形態によれば、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、壁部本体22a及び壁部側接触部22bの基板5に沿った部分の長さL5は、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30で構成される信号の伝送線路の基板5に沿った部分の長さL3以上に規定されている。このようにすれば、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30から発する電磁波ノイズをより確実に壁部22Aで捕捉することが可能となる。
【0066】
また、上記実施の形態によれば、壁部側接触部22bは、弾性力を有し、プラグコネクタ3と嵌合すると、弾性力によりケーブル側シェル(上)33Aと押圧接触する。このようにすれば、壁部側接触部22bとケーブル側シェル(上)33Aとをより確実に接触させることができる。
【0067】
また、上記実施の形態によれば、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、壁部本体22aの基板5からの高さh2は、第1のコンタクトの基板5からの高さh1以上である。このようにすれば、第1のコンタクト20から発する電磁波ノイズをより確実に壁部本体22aで捕捉することが可能となる。
【0068】
また、上記実施の形態によれば、リセプタクルコネクタ2の基板側シェル23を、プラグコネクタ3のケーブル側シェル(上)33Aと接続する。このようにすれば、信号の伝送線路に電磁波ノイズが入射することを防止することができる。
【0069】
また、上記実施の形態によれば、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、壁部22Aとケーブル側シェル(上)33Aとは、基板5から見て、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び同軸ケーブル4の内部導体4aの露出部分の高さh3以上の高さh4で接触している。このようにすれば、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び同軸ケーブル4の内部導体4aの露出部分から発する電磁波ノイズをより確実に捕捉することができる。
【0070】
また、上記実施の形態によれば、壁部22Aに壁部側接触部22bを設け、ケーブル側シェル(上)33Aに接触させたが、本発明はこれには限られない。壁部側接触部22bを設けず、ケーブル側シェル(上)33Aに端子部33bの長さを延長して、壁部本体22aに接触させるようにしてもよい。
【0071】
また、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、壁部22A及びケーブル側シェル(上)33Aの基板5に沿った部分の全長L6は、第1のコンタクト20において基板5と接続する部分から、第2のコンタクト30において内部導体4aと接続する部分までの信号の伝送線路の基板5に沿った全長L4以上となるように規定されている。このようにすれば、第1のコンタクト20が基板5と接続する基板接続部20aから、第2のコンタクト30が内部導体4aと接続する部分までの伝送線路から発する電磁波ノイズを、より確実に壁部22A及びケーブル側シェル(上)33Aで捕捉することが可能となる。
【0072】
なお、壁部22Aとケーブル側シェル(上)33Aとの接続点数をさらに増やしても良い。すなわち、壁部22Aとケーブル側シェル(上)33Aとは、複数の接続箇所で接続されていてもよい。
【0073】
なお、上記実施の形態では、プラグコネクタ3を構成するケーブル側シェルは、ケーブル側シェル(上)33Aと、ケーブル側シェル(下)34とに分かれているが、これらは一体のものであってもよい。
【0074】
また、ケーブル側シェル(上)33A、ケーブル側シェル(下)34は、外部導体4bを挟んで保持する導電性部材であるグランドバーを介して外部導体4bと電気的に接続していることとしてもよい。
【0075】
なお、上記実施の形態では、基板5に実装される第1のコネクタをリセプタクルコネクタ2とし、同軸ケーブル4に接続される第2のコネクタをプラグコネクタ3としたが、本発明はこれには限られない。基板5に実装される第1のコネクタをプラグコネクタとし、同軸ケーブル4と接続される第2のコネクタをリセプタクルコネクタとしてもよい。この場合にも、第1のコネクタの壁部が、第2のコネクタの接地部材と接続していればよい。
【0076】
また、上記実施の形態では、一対の内部導体4aを有する同軸ケーブル4を接続する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれには限られない。1本の内部導体を有する同軸ケーブルを基板と接続する電気コネクタに本発明を適用することが可能である。
【0077】
なお、上記実施の形態では、差動信号を伝送する電気コネクタ対1について説明したが、本発明はこれには限られない。シングルエンド信号を伝送する電気コネクタ対にも本発明を適用することができる。
【0078】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、同軸ケーブルと基板とを電気的に接続し、高い周波数の信号を伝送する電気コネクタに適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 電気コネクタ対、2 リセプタクルコネクタ、3 プラグコネクタ、4 同軸ケーブル、4a 内部導体、4b 外部導体、4c 絶縁体、4d 外部被膜、5 基板、5a 信号電極、5b 接地電極、20 第1のコンタクト、20a 基板接続部、20b 立ち上がり部、20c 第1のコンタクト接触部、20d 係止部、21 第1のハウジング、21a 凹部、22A 壁部、22a 壁部本体、22b 壁部側接触部、23 基板側シェル、30 第2のコンタクト、30a ケーブル接続部、30b 第2のコンタクト接触部、30c 係止部、31 第2のハウジング、31a 突出部、33A,33B ケーブル側シェル(上)、33a シェル本体、33b 端子部、33c シェル側接触部、34 ケーブル側シェル(下)、35 プルバー