(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】支持装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240214BHJP
F16H 19/04 20060101ALI20240214BHJP
E04H 9/02 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/02 L
F16H19/04 A
F16H19/04 E
F16H19/04 J
E04H9/02 331D
(21)【出願番号】P 2023096037
(22)【出願日】2023-06-12
(62)【分割の表示】P 2019124557の分割
【原出願日】2019-07-03
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】信時 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信太郎
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-209975(JP,A)
【文献】特開2000-230548(JP,A)
【文献】特開2006-090510(JP,A)
【文献】特開平03-169984(JP,A)
【文献】特開2015-048937(JP,A)
【文献】特開平07-054913(JP,A)
【文献】特開2001-099149(JP,A)
【文献】特開平10-037520(JP,A)
【文献】米国特許第06725612(US,B2)
【文献】独国特許出願公開第03819278(DE,A1)
【文献】特開2012-013126(JP,A)
【文献】実開平06-032160(JP,U)
【文献】特開2008-094171(JP,A)
【文献】特開平08-121531(JP,A)
【文献】特公平08-006490(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16H 19/04
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
中間部材を介して前記基台の上方に支持される天台と、
前記基台と前記中間部材との間に介在されることにより前記基台上に支持された前記中間部材及び前記天台の第1方向における揺動を許容する第1振子機構と、
前記中間部材と前記天台との間に介在されることにより前記中間部材上に支持された前記天台の第2方向における揺動を許容する第2振子機構と、
前記第1振子機構により形成される第1揺動支点回りに揺動する前記中間部材及び前記天台の傾斜角を変更可能な駆動力を発生する第1駆動部と、
前記第2振子機構により形成される第2揺動支点回りに揺動する前記天台の傾斜角を変更可能な駆動力を発生する第2駆動部と、を備え、
前記第1振子機構は、
前記中間部材及び前記天台の揺動を許容する前記第1方向に並行して延びる湾曲形状の第1レール対と、
前記第1レール対に係合するものであって前記第1駆動部により回転駆動される第1転動体対と、を備え、
前記第2振子機構は、
前記天台の揺動を許容する前記第2方向に並行して延びる湾曲形状の第2レール対と、
前記第2レール対に係合するものであって前記第2駆動部により回転駆動される第2転動体対と、を備えた支持装置。
【請求項2】
前記第1駆動部及び前記第2駆動部の作動を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1方向及び前記第2方向の各加速度に基づいて演算された、前記第1方向及び前記第2方向における前記天台の各傾斜目標角とすべく、前記第1駆動部及び前記第2駆動部の作動を制御する請求項1に記載の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上下方向に重ねて配置される第1要素と第2要素との間に振子機構を介在させた支持装置がある。例えば、特許文献1に記載のシート装置は、第1要素となる車両の床部と第2要素となるシートとの間に、長手方向の両端が上方に反った湾曲形状を有するレールと、このレール上を転動するローラーと、を有した振子機構を介在させる。また、特許文献2に記載の車両は、第1要素となるアンダーボディと第2要素となるアッパーボディとの間に同様の振子機構を介在させる(第10図、及び段落[0090]~[0092]参照)。そして、これらの振子機構の動作に基づいて、その第1要素に対する第2要素の揺動を許容することにより、加速度が生じた場合においても、車両の乗員等、上方に支持する物体の姿勢を安定的に保持することが可能となっている。
【0003】
また、例えば、特許文献3には、互いに交差する第1方向及び第2方向に延設された第1制振機構及び第2制振機構を上下方向に重ねて配置する構成が開示されている。そして、これにより、第1方向及び第2方向を含む平面の全方位において、その制振効果が得られる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-52447号公報
【文献】特開2004-352196号公報
【文献】特開2012-13126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、基台と、中間部材を介して前記基台の上方に支持される天台と、前記基台と前記中間部材との間に介在されることにより前記基台上に支持された前記中間部材及び前記天台の第1方向における揺動を許容する第1振子機構と、前記中間部材と前記天台との間に介在されることにより前記中間部材上に支持された前記天台の第2方向における揺動を許容する第2振子機構と、前記第1振子機構により形成される第1揺動支点回りに揺動する前記中間部材及び前記天台の傾斜角を変更可能な駆動力を発生する第1駆動部と、前記第2振子機構により形成される第2揺動支点回りに揺動する前記天台の傾斜角を変更可能な駆動力を発生する第2駆動部と、を備え、前記第1振子機構は、前記中間部材及び前記天台の揺動を許容する前記第1方向に並行して延びる湾曲形状の第1レール対と、前記第1レール対に係合するものであって前記第1駆動部により回転駆動される第1転動体対と、を備え、前記第2振子機構は、前記天台の揺動を許容する前記第2方向に並行して延びる湾曲形状の第2レール対と、前記第2レール対に係合するものであって前記第2駆動部により回転駆動される第2転動体対と、を備えた支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する支持装置は、基台と、中間部材を介して前記基台の上方に支持される天台と、前記基台と前記中間部材との間に介在されることにより前記基台上に支持された前記中間部材及び前記天台の第1方向における揺動を許容する第1振子機構と、前記中間部材と前記天台との間に介在されることにより前記中間部材上に支持された前記天台の第2方向における揺動を許容する第2振子機構と、前記第1振子機構により形成される第1揺動支点回りに揺動する前記中間部材及び前記天台の傾斜角を変更可能な駆動力を発生する第1駆動部と、前記第2振子機構により形成される第2揺動支点回りに揺動する前記天台の傾斜角を変更可能な駆動力を発生する第2駆動部と、を備え、前記第1振子機構は、前記中間部材及び前記天台の揺動を許容する前記第1方向に並行して延びる湾曲形状の第1レール対と、前記第1レール対に係合するものであって前記第1駆動部により回転駆動される第1転動体対と、を備え、前記第2振子機構は、前記天台の揺動を許容する前記第2方向に並行して延びる湾曲形状の第2レール対と、前記第2レール対に係合するものであって前記第2駆動部により回転駆動される第2転動体対と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基台と、中間部材を介して前記基台の上方に支持される天台と、前記基台と前記中間部材との間に介在されることにより前記基台上に支持された前記中間部材及び前記天台の第1方向における揺動を許容する第1振子機構と、前記中間部材と前記天台との間に介在されることにより前記中間部材上に支持された前記天台の第2方向における揺動を許容する第2振子機構と、前記第1振子機構により形成される第1揺動支点回りに揺動する前記中間部材及び前記天台の傾斜角を変更可能な駆動力を発生する第1駆動部と、前記第2振子機構により形成される第2揺動支点回りに揺動する前記天台の傾斜角を変更可能な駆動力を発生する第2駆動部と、を備え、前記第1振子機構は、前記中間部材及び前記天台の揺動を許容する前記第1方向に並行して延びる湾曲形状の第1レール対と、前記第1レール対に係合するものであって前記第1駆動部により回転駆動される第1転動体対と、を備え、前記第2振子機構は、前記天台の揺動を許容する前記第2方向に並行して延びる湾曲形状の第2レール対と、前記第2レール対に係合するものであって前記第2駆動部により回転駆動される第2転動体対と、を備えた支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図29】加速度に応じた傾斜角目標値を規定するマップの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、支持装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態の支持装置1は、基台11と、この基台11の上方に支持される天台12と、これら基台11と天台12との間に介在される中間部材13と、を備えている。また、本実施形態の支持装置1において、天台12は、その上方に支持する物体の載置面Sとなる平坦面15を有している。即ち、この天台12は、その平坦面15を上方に向けた状態で基台11に組み付けられる。そして、本実施形態の支持装置1は、これらの基台11、天台12、及び中間部材13を一体に組み付けた状態において、略立方体状の外形を有している。
【0010】
詳述すると、
図4~
図7に示すように、本実施形態の基台11は、その上面部11aに開口する第1収容凹部21を有している。具体的には、本実施形態の基台11において、この第1収容凹部21は、
図5中、上下方向、及び
図7中、左右方向を第1方向とした場合に、この第1方向に延在する溝形状を有している。そして、本実施形態の支持装置1は、この第1収容凹部21の内側に中間部材13を配置する、詳しくは、その略下側半分を収容する構成となっている。
【0011】
また、
図8~
図11に示すように、本実施形態の天台12は、その平坦面15の裏側となる下面部12bに開口する第2収容凹部22を有している。具体的には、本実施形態の天台12において、この第2収容凹部22は、
図8及び
図10中、左右方向を第2方向とした場合に、この第2方向に延在する溝形状を有している。更に、本実施形態の支持装置1においては、この第2方向は、上記のように、その第1収容凹部21が延設された第1方向に対して直交する方向となっている(
図1~
図3参照)。そして、本実施形態の支持装置1は、この第2収容凹部22の内側に中間部材13を配置、詳しくは、その略上側半分を収容する状態で、その基台11の上面部11aに対して、中間部材13及び天台12を順次組み付ける構成となっている。
【0012】
さらに詳述すると、
図4~
図7に示すように、本実施形態の支持装置1は、中間部材13を間に挟んで互いに並行する位置において、その基台11に設けられた第1レール対31,31を有している。具体的には、本実施形態の基台11において、これらの第1レール対31,31は、上記のような溝形状を有した第1収容凹部21の延在方向に沿って、その両側壁面21s,21sに凹設されている。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、これらの第1レール対31,31が第1方向に延在する構成になっている。
【0013】
また、
図8~
図11に示すように、本実施形態の支持装置1は、中間部材13を間に挟んで互いに並行する位置において、その天台12に設けられた第2レール対32,32を有している。具体的には、本実施形態の天台12において、これらの第2レール対32,32は、上記のような溝形状を有した第2収容凹部22の延在方向に沿って、その両側壁面22s,22sに凹設されている。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、これらの第2レール対32,32が第2方向に延在する構成になっている。
【0014】
更に、
図4、
図5、
図10~
図13に示すように、本実施形態の中間部材13は、その基台11に設けられた第1収容凹部21の溝幅及び天台12に設けられた第2収容凹部22の溝幅よりも寸法の小さな扁平略四角箱状のケース33を備えている。また、本実施形態の中間部材13には、そのケース33から略水平方向に突出する状態で、回転可能に軸支された複数の回転部材40が設けられている。そして、本実施形態の支持装置1は、これらの各回転部材40が、その基台11に設けられた第1レール対31,31に係合する第1転動体対41,41、及び天台12に設けられた第2レール対32,32に係合する第2転動体対42,42として機能する構成になっている。
【0015】
即ち、本実施形態の支持装置1においては、中間部材13に設けられた第1転動体対41,41が、基台11に設けられた第1レール対31,31に対して上側から係合することにより、この基台11の上方に中間部材13が支持されている。更に、この中間部材13を内側に配置する第1収容凹部21の溝形状に基づいて、その第1方向における基台11と中間部材13との相対移動が許容されている。そして、本実施形態の支持装置1は、その第1レール対31,31上を第1転動体対41,41が転動することにより、これらの第1レール対31,31が延在する第1方向において、その基台11に対する中間部材13の相対位置が変化する構成になっている。
【0016】
また、本実施形態の支持装置1においては、中間部材13に設けられた第2転動体対42,42に対し、天台12に設けられた第2レール対32,32が上側から係合することにより、その中間部材13の上方に天台12が支持されている。更に、中間部材13を内側に配置する第2収容凹部22の溝形状に基づいて、その第2方向における天台12と中間部材13との相対移動が許容されている。そして、本実施形態の支持装置1は、見かけ上、その第2レール対32,32上を第2転動体対42,42が転動することにより、これらの第2レール対32,32が延在する第2方向において、その中間部材13が支持された基台11に対する天台12の相対位置が変化する構成になっている。
【0017】
更に、
図4及び
図7、並びに
図8及び
図11に示すように、本実施形態の支持装置1において、第1レール対31,31及び第2レール対32,32は、それぞれ、その長手方向の両端が上方に反った略円弧状の湾曲形状を有している。そして、本実施形態の支持装置1は、これら第1レール対31,31に係合する第1転動体対41,41及び第2レール対32,32に係合する第2転動体対42,42を有した中間部材13が、その第1方向における天台12の揺動を許容する第1振子機構51と、第2方向における天台12の揺動を許容する第2振子機構52と、を形成する。
【0018】
即ち、
図14に示すように、本実施形態の支持装置1は、第1レール対31,31上を転動する第1転動体対41,41の軌跡Q1が円弧形状を描くことで、これらの第1レール対31,31及び第1転動体対41,41を介して基台11の上方に支持された中間部材13及び天台12もまた、円弧状の移動軌跡R1を描いて揺動する。具体的には、第1レール対31,31に設定された円弧の中心が、その第1方向(
図14中、左右方向)に揺動する中間部材13及び天台12の揺動支点となる。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、第1方向の加速度が発生した場合に、その慣性力の働く方向に振り出されるかたちで、自律的に、天台12が揺動する構成になっている。
【0019】
また、
図15に示すように、本実施形態の支持装置1は、見かけ上、その第2レール対32,32上を転動する第2転動体対42,42の軌跡Q2が円弧形状を描くことで、これらの第2レール対32,32及び第2転動体対42,42を介して中間部材13上に支持された天台12もまた、円弧状の移動軌跡R2を描いて第2方向に揺動する。具体的には、第2レール対32,32に設定された円弧の中心が、その第2方向(
図15中、左右方向)に揺動する天台12の揺動支点となる。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、第2方向の加速度が発生した場合に、その慣性力の働く方向に振り出されるかたちで、自律的に、天台12が揺動する構成になっている。
【0020】
つまり、本実施形態の支持装置1は、これら第1振子機構51及び第2振子機構52の作動によって、その第1方向及び第2方向を含む水平面の全方位について、その天台12の自律的な揺動を許容する。そして、これにより、慣性力の働く方向を天台12の載置面Sに直交する方向に近づけることで、その天台12が形成する載置面S上に支持された物体の姿勢を安定的に保持することが可能となっている。
【0021】
尚、
図4及び
図7に示すように、本実施形態の支持装置1において、基台11に設けられた第1収容凹部21の底面21bは、その第1レール対31,31に沿って延びる湾曲凹面となっている。また、
図8及び
図11に示すように、天台12に設けられた第2収容凹部22の底面22bは、その第2レール対32,32に沿って延びる湾曲凸面となっている。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、その基台11上に支持された中間部材13が第1方向に揺動する際、及び、この中間部材13上に支持された天台12が第2方向に揺動する際、その中間部材13が、基台11及び天台12に干渉しない構成となっている。
【0022】
また、
図4、
図6、及び
図7に示すように、本実施形態の支持装置1において、第1収容凹部21が開口する基台11の上面部11aは、この基台11に設けられた第1レール対31,31に沿って第1方向に湾曲して延びるとともに、天台12に設けられた第2レール対32,32に沿って第2方向に湾曲して延びる湾曲凹面55となっている。
【0023】
更に、
図8、
図9、及び
図11に示すように、本実施形態の支持装置1において、第2収容凹部22が開口する天台12の下面部12bは、この天台12に設けられた第2レール対32,32に沿って第2方向に湾曲して延びるとともに、基台11に設けられた第1レール対31,31に沿って第1方向に湾曲して延びる湾曲凸面56となっている。
【0024】
即ち、
図1及び
図2に示すように、本実施形態の支持装置1は、上下方向に向かい合う基台11の上面部11aと天台12の下面部12bとが、略同一の湾曲形状を有している。更に、
図14及び
図15に示すように、本実施形態の支持装置1においては、これら基台11側の湾曲凹面55と天台12側の湾曲凸面56とが、一定の間隔を保持する状態で、その天台12が、第1方向及び第2方向を含む水平面の全方位に揺動する。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、その揺動する天台12が基台11に干渉することなく、これら基台11と天台12との間隔を短縮して、上下方向の寸法を抑えることが可能となっている。
【0025】
さらに詳述すると、
図16~
図19に示すように、本実施形態の中間部材13は、そのケース33を略水平方向に貫通する状態で設けられた複数の支軸60を備えている。そして、本実施形態の支持装置1においては、これらの各支軸60の両端に、その第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を構成する回転部材40が設けられている。
【0026】
具体的には、
図5、
図16~
図19に示すように、本実施形態の中間部材13は、基台11に設けられた第1レール対31,31に対向するケース33の側面33a,33aを貫通する状態で回転自在に軸支された一対の支軸61,61を備えている。そして、本実施形態の支持装置1においては、これらの各支軸61の両端部に固定された一対の回転部材40が、それぞれ、その第1レール対31,31に係合する第1転動体対41,41として機能する構成になっている。
【0027】
また、
図10、及び
図16~
図19に示すように、本実施形態の中間部材13は、天台12に設けられた第2レール対32,32に対向するケース33の側面33b,33bを貫通する状態で回転自在に軸支された一対の支軸62,62を備えている。そして、本実施形態の支持装置1においては、これらの各支軸62の両端部に固定された一対の回転部材40が、それぞれ、その第2レール対32,32に係合する第2転動体対42,42として機能する構成になっている。
【0028】
更に、
図16~
図19に示すように、本実施形態の支持装置1において、上記各支軸61,61及び各支軸62,62は、それぞれ、その一方側が駆動軸61d,62dに設定されている。そして、本実施形態の中間部材13は、その駆動軸61dと一体に第1転動体対41,41を回転駆動する第1駆動部71と、その駆動軸62dと一体に第2転動体対42,42を回転駆動する第2駆動部72と、を備えている。
【0029】
具体的には、本実施形態の中間部材13において、これらの第1駆動部71及び第2駆動部72は、それぞれ、略四角箱状のケース71c,72c内に、その駆動源となるモータ及び減速機を収容する。そして、本実施形態の中間部材13は、これらの第1駆動部71及び第2駆動部72を、そのケース33内に収容する構成になっている。
【0030】
即ち、
図16~
図20に示すように、本実施形態の支持装置1においては、第1駆動部71及び第2駆動部72の作動に基づいて、その第1レール対31,31及び第1転動体対41,41を構成要素とする第1振子機構51、並びに第2レール対32,32及び第2転動体対42,42を構成要素とする第2振子機構52を駆動することができる。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、コンパクトな構成にて、その天台12の揺動を能動的に制御することが可能となっている。
【0031】
さらに詳述すると、
図21~
図24に示すように、本実施形態の支持装置1において、上方に臨む第1レール対31,31の各係合面31a及び下方に臨む第2レール対32,32の各係合面32aには、それぞれ、ラック歯75が設けられている。そして、これらの第1レール対31,31及び第2レール対32,32に係合することにより第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を構成する各回転部材40には、そのラック歯75に歯合するギヤ部76が設けられている。
【0032】
具体的には、
図12,
図13,及び
図22に示すように、本実施形態の支持装置1において、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を構成する各回転部材40は、略円筒状の外形を有する本体部40xを備えている。そして、ギヤ部76は、この本体部40xにおける基端側の軸方向位置から径方向外側に向かってフランジ状に延出するかたちで設けられている。
【0033】
また、
図4、
図5、
図23及び
図25に示すように、本実施形態の第1レール対31,31は、階段状に設けられた二段の係合面31a,31bを有している。更に、これらの第1レール対31,31は、略円弧状の溝形状を有して基台11に設けられた第1収容凹部21の両側壁面21s,21sに開口する当該第1レール対31,31における開口側の各係合面31a、つまりは、中間部材13のケース33が配置される第1収容凹部21内から見て、手前側の各係合面31aにラック歯75を有している。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、この手前側の係合面31aに設けられたラック歯75に対してギヤ部76が歯合するとともに、奥側の係合面31bに対して本体部40xが摺接する状態で、その第1転動体対41,41を構成する各回転部材40が、その第1レール対31,31に係合する構成になっている。
【0034】
更に、
図10、
図11、
図24及び
図26に示すように、本実施形態の支持装置1においては、第2レール対32,32もまた、階段状に設けられた二段の係合面32a,32bを有するとともに、同じく中間部材13のケース33が配置される天台12側の第2収容凹部22内から見て、手前側の係合面32aにラック歯75を有している。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、天台12側においても、この手前側の係合面32aに設けられたラック歯75に対してギヤ部76が歯合するとともに、奥側の係合面32bに対して本体部40xが摺接する状態で、その第2転動体対42,42を構成する各回転部材40が、その第2レール対32,32に係合する構成になっている。
【0035】
即ち、ギヤ部76とラック歯75との歯合により、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を構成する各回転部材40の係合位置を安定的に保持することができる。具体的には、第1レール対31,31に係合する第1転動体対41,41及び第2レール対32,32に係合する第2転動体対42,42の位置ズレや空転を抑えることができる。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、基台11の上方に支持された中間部材13及び天台12の姿勢を安定的に維持するとともに、中間部材13に設けられた第1駆動部71及び第2駆動部72の作動に基づいて、その第1振子機構51及び第2振子機構52を安定的に駆動することが可能となっている。
【0036】
また、
図22、
図25及び
図26に示すように、本実施形態の各回転部材40は、それぞれ、その回転中心位置、つまりは、その支軸と同軸位置において、本体部40xから軸方向に突出する突起部78を有している。更に、本実施形態の支持装置1においては、第1レール対31,31に係合する第1転動体対41,41及び第2レール対32,32に係合する第2転動体対42,42が軸方向に変位した場合、上記のように各回転部材40に設けられた突起部78が、その軸方向に対向する壁面部79に摺接する。そして、支持装置1は、これにより、その摺動抵抗の増加を抑えて、第1振子機構51及び第2振子機構52の円滑な動作を担保する構成になっている。
【0037】
(揺動制御)
次に、本実施形態の支持装置1における揺動制御の態様について説明する。
図27に示すように、本実施形態の支持装置1は、その中間部材13に設けられた第1駆動部71及び第2駆動部72の作動を制御する制御装置80を備えている。具体的には、本実施形態の支持装置1において、これらの第1駆動部71及び第2駆動部72は、それぞれ、モータ81a,81bの回転を減速機82a,82bにより減速して、その第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42の各駆動軸62d,62dに伝達する。そして、本実施形態の制御装置80は、その駆動源であるモータ81a,81bに対する駆動電力の供給を通じて、これら第1駆動部71及び第2駆動部72の作動を制御する。
【0038】
詳述すると、本実施形態の制御装置80は、傾斜角センサ83a,83bの出力信号に基づいて、その第1振子機構51及び第2振子機構52の作動により天台12に生じた第1方向及び第2方向の各傾斜角α,βを検出する(
図14及び
図15参照)。更に、この制御装置80は、加速度センサ84a,84bの出力信号に基づいて、その支持装置1に発生した第1方向及び第2方向の各加速度G1,G2を検出する。そして、本実施形態の制御装置80は、その第1方向及び第2方向の各加速度G1,G2に応じて、第1方向及び第2方向における天台12の各傾斜角α,βを最適化すべく、第1駆動部71及び第2駆動部72の作動、つまりは、第1振子機構51及び第2振子機構52の動作に基づいた天台12の揺動を制御する構成になっている。
【0039】
詳述すると、
図28に示すように、本実施形態の制御装置80は、第1駆動部71の作動を制御する第1制御部91と、第2駆動部72の作動を制御する第2制御部92と、を有している。
【0040】
本実施形態の制御装置80において、第1制御部91は、支持装置1に発生した第1方向の加速度G1に基づいて、その第1方向における天台12の傾斜角目標値α0を演算する傾斜角目標値演算部93aを備えている。また、第1制御部91は、その第1方向における傾斜角目標値α0と実際の傾斜角αとの偏差Δαに基づいた制御量ε1を演算するフィードバック制御部94aを備えている。更に、第1制御部91は、その制御量ε1に基づいてモータ制御信号Sm1を演算するモータ制御信号生成部95aを備えている。そして、本実施形態の第1制御部91は、このモータ制御信号Sm1に基づいて駆動回路96aが作動することにより、その第1制御部91に対する駆動電力の供給を実行する構成になっている。
【0041】
同様に、第2制御部92は、支持装置1に発生した第2方向の加速度G2に基づいて、その第2方向における天台12の傾斜角目標値β0を演算する傾斜角目標値演算部93bを備えている。また、第2制御部92は、その第2方向における傾斜角目標値β0と実際の傾斜角βとの偏差Δβに基づいた制御量ε2を演算するフィードバック制御部94bを備えている。更に、第2制御部92は、その制御量ε2に基づいてモータ制御信号Sm2を演算するモータ制御信号生成部95bを備えている。そして、本実施形態の第2制御部92は、このモータ制御信号Sm2に基づいて駆動回路96bが作動することにより、その第2制御部92に対する駆動電力の供給を実行する構成になっている。
【0042】
尚、
図29に示すように、本実施形態の制御装置80は、図示しない記憶領域に、その支持装置1に発生した第1方向及び第2方向の各加速度G1,G2と、その傾斜角目標値α0,β0との関係を規定するマップMを備えている。本実施形態の支持装置1において、このマップMは、予め実験やシミュレーション等を行うことにより得られた値を一次の近似式に表すものとなっている。そして、第1制御部91及び第2制御部92の各傾斜角目標値演算部93a,93bは、それぞれ、このマップMを用いることにより、その第1方向の傾斜角目標値α0及び第2方向の傾斜角目標値β0を演算する構成になっている。
【0043】
また、
図16~
図19に示すように、本実施形態の支持装置1は、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42の各駆動軸61d,62dに設けられたピニオンギヤ97a,97bを有している。更に、この支持装置1は、これらの各ピニオンギヤ97a,97bのうち、一方のピニオンギヤ97aに歯合するピニオンギヤ98aを有した回転センサ99aと、他方のピニオンギヤ97bに歯合するピニオンギヤ98a,98bを有した回転センサ99aと、を備えている。更に、本実施形態の制御装置80は、これらの各回転センサ99a,99bが出力するパルス信号のエッジをカウントすることにより、その基台11に対する中間部材13の相対的な揺動位置、及び中間部材13を支持する基台11に対する天台12の相対的な揺動位置を検出する。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、これらの各回転センサ99a,99bが、その傾斜角センサ83a,83bとして機能する構成になっている。
【0044】
ここで、
図3に示すように、本実施形態の支持装置1は、基台11に対して着脱可能に組み付けられる一対の意匠パネル101,101と、天台12に対して着脱可能に組み付けられる一対の意匠パネル102,102と、を備えている。
【0045】
具体的には、
図3及び
図6に示すように、本実施形態の基台11は、溝形状を有して第1方向に延在する第1レール対31,31の長手方向端部31e,31eが、その第1方向に直交する広がりを有した各側壁面11s,11sに開口する構成になっている。そして、本実施形態の支持装置1は、これら第1レール対31,31の長手方向端部31e,31eを閉塞する位置において、その基台11の側壁面11s,11sに対して各意匠パネル101,101が固定される構成になっている。
【0046】
また、
図3及び
図9に示すように、本実施形態の天台12は、溝形状を有して第2方向に延在する第2レール対32,32の長手方向端部32e,32eが、その第2方向に直交する広がりを有した各側壁面12s,12sに開口する構成になっている。そして、本実施形態の支持装置1は、これら第2レール対32,32の長手方向端部32e,32eを閉塞する位置において、その天台12の側壁面12s,12sに対して各意匠パネル102,102が固定される構成になっている。
【0047】
即ち、本実施形態の支持装置1において、中間部材13は、各意匠パネル101,101を取り外した状態で、その長手方向端部31e,31eから第1レール対31,31内に第1転動体対41,41となる各回転部材40を挿入することにより、基台11に対して組み付けられる。そして、天台12もまた、各意匠パネル102,102を取り外した状態で、その長手方向端部32e,32eから第2レール対32,32内に第2転動体対42,42となる各回転部材40を挿入することにより、中間部材13に対して組み付けられる構成になっている。
【0048】
更に、本実施形態の支持装置1においては、その基台11に各意匠パネル101,101が固定された状態で、これら各意匠パネル101,101の何れか一方に第1転動体対41,41が当接する位置まで、中間部材13及び天台12を第1方向に揺動させる。また、天台12についても同様に、各意匠パネル102,102が固定された状態で、これら各意匠パネル102,102の何れか一方に第2転動体対42,42が当接する位置まで第2方向に揺動させる。そして、本実施形態の支持装置1は、これにより、その第1方向及び第2方向における各揺動位置、即ち天台12の各傾斜角α,βについて、容易に、その原点を設定することが可能となっている。
【0049】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)支持装置1は、基台11と、中間部材13を介して基台11の上方に支持される天台12と、中間部材13を間に挟んで互いに並行する位置において基台11に設けられた第1レール対31,31と、中間部材13を間に挟んで互いに並行する位置において天台12に設けられた第2レール対32,32と、を備える。また、第1レール対31,31は、第1方向に延設され、第2レール対32,32は、第1方向に対して交差する第2方向に延設されるとともに、これら第1レール対31,31及び第2レール対32,32は、長手方向の両端が上方に反った湾曲形状を有する。更に、中間部材13は、第1レール対31,31に係合する第1転動体対41,41と、第2レール対32,32に係合する第2転動体対42,42と、を有して、第1方向における天台12の揺動を許容する第1振子機構51と、第2方向における天台12の揺動を許容する第2振子機構52と、を形成する。そして、中間部材13には、第1転動体対41,41を回転駆動する第1駆動部71と、第2転動体対42,42を回転駆動する第2駆動部72と、が設けられる。
【0050】
上記構成によれば、互いに交差する第1方向及び第2方向を含む平面の全方位について、その発生する加速度に応じた慣性力、例えば遠心力の働く方向に振り出される態様で、基台11の上方に支持された天台12が揺動する。そして、これにより、その慣性力の働く方向を天台12の載置面Sに直交する方向に近づけることで、この天台12上に支持された物体の姿勢を安定的に保持することができる。
【0051】
また、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を備えた中間部材13が、一段目の第1振子機構51における上側の第2要素及び二段目の第2振子機構52における下側の第1要素を兼ねる構成となっている。更に、この中間部材13に設けられた第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42に係合する基台11側の第1レール対31,31及び天台12側の第2レール対32,32が、それぞれ、その中間部材13を間に挟む位置に配置されている。そして、これにより、第1レール対31,31及び第2レール対32,32に設定された湾曲形状に依らず、上下方向の寸法を抑えることができる。
【0052】
加えて、第1振子機構51の構成要素である第1転動体対41,41、及び第2振子機構52の構成要素である第2転動体対42,42を、それぞれ、その中間部材13に設けられた第1駆動部71及び第2駆動部72が回転駆動することにより、コンパクトな構成にて、その天台12の揺動を能動的に制御することができる。そして、これにより、天台12上に支持された物体の姿勢を、より安定的に保持することができる。
【0053】
(2)基台11には、第1方向の相対移動を許容する状態で中間部材13を内側に配置する上方に開口した第1収容凹部21が設けられるとともに、天台12には、第2方向の相対移動を許容する状態で中間部材13を内側に配置する下方に開口した第2収容凹部22が設けられる。
【0054】
上記構成によれば、基台11及び天台12に対する中間部材13の干渉を回避しつつ、その基台11と天台12との間隔を縮めることができる。そして、これにより、上下方向の寸法を抑えて、更なる小型化を図ることができる。
【0055】
(3)第1収容凹部21が設けられた基台11の上面部11aは、第1レール対31,31に沿って第1方向に湾曲して延びるとともに第2レール対32,32に沿って第2方向に湾曲して延びる湾曲凹面55としての構成を有する。そして、第2収容凹部22が設けられた天台12の下面部12bもまた、第2レール対32,32に沿って第2方向に湾曲して延びるとともに第1レール対31,31に沿って第1方向に湾曲して延びる湾曲凸面56としての構成を有する。
【0056】
上記構成によれば、基台11側の湾曲凹面55と天台12側の湾曲凸面56とが一定の間隔を保持する状態で、その天台12が、第1方向及び第2方向を含む水平面の全方位に揺動可能となる。その結果、これら基台11と天台12との干渉を回避しつつ、その基台11及び天台12の間隔を縮めることができる。そして、これにより、上下方向の寸法を抑えて、更なる小型化を図ることができる。
【0057】
(4)第1レール対31,31は、第1収容凹部21内に設けられるとともに、第2レール対32,32は、第2収容凹部22内に設けられる。
上記構成によれば、基台11の上面部11aにおける第1レール対31,31の突出、及び天台12の下面部12bにおける第2レール対32,32の突出を抑えることができる。そして、これにより、基台11及び天台12の間隔を縮めることで、上下方向の寸法を抑えて、更なる小型化を図ることができる。
【0058】
(5)第1レール対31,31の係合面31a及び第2レール対32,32の係合面32aには、それぞれ、ラック歯75が設けられる。そして、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42に用いられる各回転部材40には、そのラック歯75に歯合するギヤ部76が設けられる。
【0059】
上記構成によれば、ギヤ部76とラック歯75との歯合により、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を構成する各回転部材40の係合位置を安定的に保持することができる。その結果、第1レール対31,31に係合する第1転動体対41,41及び第2レール対32,32に係合する第2転動体対42,42の位置ズレや空転を抑えることができる。そして、これにより、基台11の上方に支持された中間部材13及び天台12の姿勢を安定的に維持するとともに、中間部材13に設けられた第1駆動部71及び第2駆動部72の作動に基づいて、その第1振子機構51及び第2振子機構52を安定的に駆動することができる。
【0060】
(6)各回転部材40には、当該各回転部材40の回転中心位置において軸方向に突出する突起部78が設けられる。
上記構成によれば、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42が軸方向に変位した場合に、これらの第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を構成する各回転部材40に設けられた突起部78を、その軸方向に対向する壁面部79に対して摺接させることができる。そして、これにより、摺動抵抗の増加を抑えつつ、その第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42の軸方向変位を抑えて、基台11の上方に支持された中間部材13及び天台12の姿勢を安定的に維持することができる。
【0061】
(7)第1レール対31,31は、第1方向に延在する第1収容凹部21の両側壁面21sに設けられるとともに、第2レール対32,32は、第2方向に延在する第2収容凹部22の両側壁面22sに設けられる。
【0062】
上記構成によれば、第1レール対31,31及び第2レール対32,32を、それぞれ、その基台11及び天台12と一体化することにより、更なる小型化を図ることができる。そして、部品点数の削減により、組付け作業の容易化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0063】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
・上記実施形態では、支軸61の両端部に固定された一対の回転部材40が第1転動体対41,41を構成し、支軸62の両端部に固定された一対の回転部材40が第2転動体対42,42を構成する。そして、中間部材13は、一対の支軸61,61及び一対の支軸62,62を有することにより、その第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を、それぞれ、二組ずつ備えることとした。しかし、これに限らず、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42の組数は、それぞれ、一組でも3組以上であってもよい。
【0065】
・上記実施形態では、第1レール対31,31は、第1方向に延在する第1収容凹部21の両側壁面21sに凹設されるとともに、第2レール対32,32は、第2方向に延在する第2収容凹部22の両側壁面22sに凹設されることとした。しかし、これに限らず、基台11及び天台12に対し、これら基台11及び天台12とは別体に形成されたレール部材を固定することにより、その第1レール対31,31及び第2レール対32,32を形成する構成であってもよい。更に、これら第1レール対31,31及び第2レール対32,32を設ける位置についてもまた、例えば、第1収容凹部21の底面21b及び第2収容凹部22の底面22bにレール部材を固定する等、必ずしも、その両側壁面21s及び両側壁面22sでなくともよい。そして、これらの第1収容凹部21及び第2収容凹部22の外側に、その第1レール対31,31及び第2レール対32,32を設ける構成であってもよい。
【0066】
・また、上記実施形態では、第1レール対31,31の各係合面31a及び第2レール対32,32の各係合面32aには、それぞれ、ラック歯75が設けられる。そして、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42に用いられる各回転部材40には、そのラック歯75に歯合するギヤ部76が設けられることとした。
【0067】
しかし、これに限らず、必ずしも、その第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42を構成する各回転部材40の全てが、このようなラック歯75に歯合するギヤ部76を有したギヤ付きの回転部材40でなくともよい。例えば、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42の各駆動軸61d,62dに設けられた各回転部材40にのみ、そのギヤ部76が設けられる構成であってもよい。そして、例えば、ゴム等、滑りにくい素材を用いて各回転部材40を形成する等には、これらの各回転部材40にギヤ部76を設けず、第1レール対31,31の各係合面31a及び第2レール対32,32の各係合面32aにもラック歯75を設けなくともよい。
【0068】
・更に、第1転動体対41,41及び第2転動体対42,42の各駆動軸61d,62dに設けられた各回転部材40にギヤ部76が設けられる場合、そのギヤ部76が回転部材40の本体部40xから独立して回転する構成としてもよい。
【0069】
例えば、
図30に示すように、中空状に形成された駆動軸110の両端部外周に、そのギヤ部76となるピニオンギヤ111を固定する。更に、この駆動軸110の筒内に支軸115を挿通する。そして、この支軸115の両端にギヤ部76を有しない回転部材40Bを固定する構成であってもよい。
【0070】
・上記実施形態では、基台11には、第1方向の相対移動を許容する状態で中間部材13を内側に配置する上方に開口した第1収容凹部21が設けられるとともに、天台12には、第2方向の相対移動を許容する状態で中間部材13を内側に配置する下方に開口した第2収容凹部22が設けられる。そして、その上下方向に向かい合う基台11の上面部11a及び天台12の下面部12bは、一定の間隔を保持する状態で、その基台11及び天台12の揺動を許容する湾曲凹面55及び湾曲凸面56であることとした。
【0071】
しかし、これに限らず、基台11の上面部11a及び天台12の下面部12bの形状は、任意に変更してもよい。そして、基台11の上面部11a及び天台12の下面部12bに対して、第1収容凹部21及び第2収容凹部22を設けない構成であってもよい。但し、基台11及び天台12に対する中間部材13の干渉を回避しつつ、その基台11と天台12との間隔を縮める観点からは、上記第1収容凹部21及び第2収容凹部22を設ける構成が、より好ましい。そして、基台11と天台12との干渉を回避しつつ、その基台11と天台12との間隔を縮める観点からは、基台11の上面部11a及び天台12の下面部12bを上記のような湾曲凹面55及び湾曲凸面56とする構成が、より好ましい。
【0072】
・上記実施形態では、第1方向及び第2方向は、支持装置1における水平面に含まれることとした。しかし、これに限らず、互いに交差する第1方向及び第2方向を含む平面は、必ずしも水平面でなくともよい。そして、第1方向及び第2方向についてもまた、互いに交差する二方向であれば、必ずしも直交していなくともよい。
【0073】
・上記実施形態では、第1方向に直交する広がりを有した基台11の側壁面11s,11sに固定された各意匠パネル101,101の何れか一方に第1転動体対41,41が当接する位置まで中間部材13及び天台12を第1方向に揺動させる。また、同様に、第2方向に直交する広がりを有した天台12の側壁面12s,12sに固定された各意匠パネル102,102の何れか一方に第2転動体対42,42が当接する位置まで天台12を第3方向に揺動させる。そして、これにより、その第1方向及び第2方向における各揺動位置、即ち天台12の各傾斜角α,βについて、その原点を設定することとした。しかし、これに限らず、天台12の各傾斜角α,βに原点を設定する方法については、任意に変更してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、天台12に設けられた平坦面15を載置面Sとして、その上方に物体を支持することとしたが、載置面Sの形状は、任意に変更してもよい。また、その大きさについても任意に変更してもよく、載置面S上に支持する物体についても任意に変更してもよい。例えば、車両フロア上に支持装置1を設置して、その上方にシートや荷持等を支持する構成であってもよい。そして、この支持装置1が自走機能を有する構成であってもよい。
【0075】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記第1レール対は、前記第1方向に延在する前記第1収容凹部の両側壁面に設けられるとともに、前記第2レール対は、前記第2方向に延在する前記第2収容凹部の両側壁面に設けられることが好ましい。
【0076】
上記構成によれば、第1レール対及び第2レール対を、それぞれ、その基台及び天台と一体化することにより、更なる小型化を図ることができる。そして、部品点数の削減により、組付け作業の容易化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0077】
以下に技術的思想について記載する。
・しかしながら、振子機構を用いる場合には、その湾曲したレールの配置スペースが必要となる。このため、上記従来技術に用いられる直動式の制振機構のように二方向の揺動機構を単純に重ねて配置する構成を採用した場合には、上下方向の寸法が大型化するという問題があることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0078】
以下の技術的思想は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、コンパクトな構成にて、上方に支持する物体の姿勢を安定的に保持することのできる支持装置を提供することにある。
【0079】
・支持装置は、基台と、中間部材を介して前記基台の上方に支持される天台と、前記中間部材を間に挟んで互いに並行する位置において前記基台に設けられた第1レール対と、前記中間部材を間に挟んで互いに並行する位置において前記天台に設けられた第2レール対と、を備え、前記第1レール対は、第1方向に延設され、前記第2レール対は、前記第1方向に対して交差する第2方向に延設されるとともに、前記第1レール対及び前記第2レール対は、長手方向の両端が上方に反った湾曲形状を有し、前記中間部材は、前記第1レール対に係合する第1転動体対と、前記第2レール対に係合する第2転動体対と、を有して、前記第1方向における前記天台の揺動を許容する第1振子機構と、前記第2方向における前記天台の揺動を許容する第2振子機構と、を形成するとともに、前記中間部材には、前記第1転動体対を回転駆動する第1駆動部と、前記第2転動体対を回転駆動する第2駆動部と、が設けられる。
【0080】
上記構成によれば、互いに交差する第1方向及び第2方向を含む平面の全方位について、その発生する加速度に応じた慣性力、例えば遠心力の働く方向に振り出される態様で、基台の上方に支持された天台が揺動する。そして、これにより、その慣性力の働く方向を天台の載置面に直交する方向に近づけることで、この天台上に支持された物体の姿勢を安定的に保持することができる。
【0081】
また、第1転動体対及び第2転動体対を備えた中間部材が、一段目の第1振子機構における上側の第2要素及び二段目の第2振子機構における下側の第1要素を兼ねる構成となっている。更に、この中間部材に設けられた第1転動体対及び第2転動体対に係合する基台側の第1レール対及び天台側の第2レール対が、それぞれ、その中間部材を間に挟む位置に配置されている。そして、これにより、第1レール対及び第2レール対に設定された湾曲形状に依らず、上下方向の寸法を抑えることができる。
【0082】
加えて、第1振子機構の構成要素である第1転動体対及び第2振子機構の構成要素である第2転動体対を、それぞれ、その中間部材に設けられた第1駆動部及び第2駆動部が回転駆動することにより、コンパクトな構成にて、その天台の揺動を能動的に制御することができる。そして、これにより、天台上に支持された物体の姿勢を、より安定的に保持することができる。
【0083】
・上記支持装置において、前記基台には、前記第1方向の相対移動を許容する状態で前記中間部材を内側に配置する上方に開口した第1収容凹部が設けられるとともに、前記天台には、前記第2方向の相対移動を許容する状態で前記中間部材を内側に配置する下方に開口した第2収容凹部が設けられることが好ましい。
【0084】
上記構成によれば、基台及び天台に対する中間部材の干渉を回避しつつ、その基台と天台との間隔を縮めることができる。そして、これにより、上下方向の寸法を抑えて、更なる小型化を図ることができる。
【0085】
・上記支持装置において、前記第1収容凹部が設けられた前記基台の上面部は、前記第1レール対に沿って前記第1方向に湾曲して延びるとともに前記第2レール対に沿って前記第2方向に湾曲して延びる湾曲凹面であり、前記第2収容凹部が設けられた前記天台の下面部は、前記第2レール対に沿って前記第2方向に湾曲して延びるとともに前記第1レール対に沿って前記第1方向に湾曲して延びる湾曲凸面であることが好ましい。
【0086】
上記構成によれば、基台側の湾曲凹面と天台側の湾曲凸面とが一定の間隔を保持する状態で、その天台が、第1方向及び第2方向を含む平面の全方位に揺動可能となる。その結果、これら基台と天台との干渉を回避しつつ、その基台及び天台の間隔を縮めることができる。そして、これにより、上下方向の寸法を抑えて、更なる小型化を図ることができる。
【0087】
・上記支持装置において、前記第1レール対は、前記第1収容凹部内に設けられるとともに、前記第2レール対は、前記第2収容凹部内に設けられる。
上記構成によれば、基台の上面部における第1レール対の突出、及び天台の下面部における第2レール対の突出を抑えることができる。そして、これにより、基台及び天台の間隔を縮めることで、上下方向の寸法を抑えて、更なる小型化を図ることができる。
【0088】
・上記支持装置において、前記第1レール対及び前記第2レール対の各係合面には、ラック歯が設けられるとともに、前記第1転動体対及び前記第2転動体対に用いられる回転部材として、前記ラック歯に歯合するギヤ部を有したギヤ付き回転部材を備えることが好ましい。
【0089】
上記構成によれば、ギヤ部とラック歯との歯合により、第1転動体対及び第2転動体対を構成する各回転部材の係合位置を安定的に保持することができる。その結果、第1レール対に係合する第1転動体対及び第2レール対に係合する第2転動体対の位置ズレや空転を抑えることができる。そして、これにより、基台の上方に支持された中間部材及び天台の姿勢を安定的に維持するとともに、中間部材に設けられた第1駆動部及び第2駆動部の作動に基づいて、その第1振子機構及び第2振子機構を安定的に駆動することができる。
【0090】
・上記支持装置において、前記第1転動体対及び前記第2転動体対に用いられる回転部材には、該回転部材の回転中心位置において軸方向に突出する突起部が設けられることが好ましい。
【0091】
上記構成によれば、第1転動体対及び第2転動体対が軸方向に変位した場合に、これらの第1転動体対及び第2転動体対を構成する各回転部材に設けられた突起部を、その軸方向に対向する壁面部に対して摺接させることができる。そして、これにより、摺動抵抗の増加を抑えつつ、その第1転動体対及び第2転動体対の軸方向変位を抑えて、基台の上方に支持された中間部材及び天台の姿勢を安定的に維持することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…支持装置、11…基台、11a…上面部、11s…側壁面、12…天台、12b…下面部、12s…側壁面、13…中間部材、15…平坦面、21…第1収容凹部、21b…底面、21s…側壁面、22…第2収容凹部、22b…底面、22s…側壁面、31…第1レール対、31a,31b…係合面、31e…長手方向端部、32…第2レール対、32s,32a,32b…係合面、32e…長手方向端部、33…ケース、33a,33b…側面、40,40B…回転部材、40x…本体部、41…第1転動体対、42…第2転動体対、51…第1振子機構、52…第2振子機構、55…湾曲凹面、56…湾曲凸面、60,61,62…支軸、61d,62d…駆動軸、71…第1駆動部、71c…ケース、72…第2駆動部、72c…ケース、75…ラック歯、76…ギヤ部、78…突起部、79…壁面部、80…制御装置、81a,81b…モータ、82a,82b…減速機、83a,83b…傾斜角センサ、84a,84b…加速度センサ、91…第1制御部、92…第2制御部、93a,93b…傾斜角目標値演算部、94a,94b…フィードバック制御部、95a,95b…モータ制御信号生成部、96a,96b…駆動回路、97a,97b,98a,98b…ピニオンギヤ、99a,99b…回転センサ、101,102…意匠パネル、110…駆動軸、111…ピニオンギヤ、115…支軸、S…載置面、Q1,Q2…軌跡、R1,R2…移動軌跡、E1…第1要素、E2…第2要素、G1,G2…加速度、α,β…傾斜角、α0,β0…傾斜角目標値、M…マップ、Δα,Δβ…偏差、ε1,ε2…制御量、Sm1,Sm2…モータ制御信号。