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特許7435885眼科画像処理装置、および眼科画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】眼科画像処理装置、および眼科画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240214BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
A61B3/10
G06T7/00 350B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023096815
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2019016062の分割
【原出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2023115058
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】竹野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柴 涼介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 壮平
(72)【発明者】
【氏名】坂下 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 佳紀
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-121886(JP,A)
【文献】国際公開第2018/035473(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 -20/90
30/418
40/16
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置であって、
前記眼科画像処理装置の制御部は、
眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得し、
機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに前記眼科画像を入力することで、前記被検眼における特定の構造に対する解析結果を取得し、
前記数学モデルに入力された前記眼科画像の画像領域を変数とする、前記数学モデルによる前記解析に関する重みの分布の情報であり、前記数学モデルによる前記解析の確信度の分布を示す情報を、補足分布情報として取得し、
前記眼科画像の画像領域内のうち、前記補足分布情報が示す前記確信度が閾値以下の領域における、前記補足分布情報の重みの分布を示す補足マップの画像を、前記被検眼の組織の正面画像に重畳表示させることを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科画像処理装置であって、
前記制御部は、眼底の断層画像である前記眼科画像を前記数学モデルに入力することで、前記被検眼の眼底における特定の層、または特定の層の境界に対する解析結果を取得することを特徴とする眼科画像処理装置。
【請求項3】
被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置によって実行される眼科画像処理プログラムであって、
前記眼科画像処理プログラムが前記眼科画像処理装置の制御部によって実行されることで、
眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得する画像取得ステップと、
機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに前記眼科画像を入力することで、前記被検眼における特定の構造に対する解析結果を取得する解析結果取得ステップと、
前記数学モデルに入力された前記眼科画像の画像領域を変数とする、前記数学モデルによる前記解析に関する重みの分布の情報であり、前記数学モデルによる前記解析の確信度の分布を示す情報を、補足分布情報として取得する補足分布情報取得ステップと、
前記眼科画像の画像領域内のうち、前記補足分布情報が示す前記確信度が閾値以下の領域における、前記補足分布情報の重みの分布を示す補足マップの画像を、前記被検眼の組織の正面画像に重畳表示させる表示ステップと、
を前記眼科画像処理装置に実行させることを特徴とする眼科画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼科画像を処理する眼科画像処理装置、および、眼科画像処理装置において実行される眼科画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルを用いて、種々の医療情報を取得する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の眼科装置では、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに眼形状パラメータが入力されることで、被検眼のIOL関連情報(例えば、予想術後前房深度)が取得される。取得されたIOL関連情報に基づいて、IOL度数が算出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-51223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに眼科画像を入力することで、被検眼における疾患および構造の少なくともいずれかに対する解析結果を取得することも考えられる。ここで、被検眼における疾患の有無、疾患の程度、構造上の特徴等は被検眼に応じて異なるので、解析結果の確実性にはばらつきが生じ得る。従って、数学モデルによって出力された解析結果を単にユーザ(例えば医師等)に提示するだけでは、ユーザによる診断等の業務を適切に補助できない場合もあり得る。
【0005】
本開示の典型的な目的は、ユーザの業務をより適切に補助することが可能な眼科画像処理装置および眼科画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科画像処理装置は、被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置であって、前記眼科画像処理装置の制御部は、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得し、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに前記眼科画像を入力することで、前記被検眼における特定の構造に対する解析結果を取得し、前記数学モデルに入力された前記眼科画像の画像領域を変数とする、前記数学モデルによる前記解析に関する重みの分布の情報であり、前記数学モデルによる前記解析の確信度の分布を示す情報を、補足分布情報として取得し、前記眼科画像の画像領域内のうち、前記補足分布情報が示す前記確信度が閾値以下の領域における、前記補足分布情報の重みの分布を示す補足マップの画像を、前記被検眼の組織の正面画像に重畳表示させる。
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科画像処理プログラムは、被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置によって実行される眼科画像処理プログラムであって、前記眼科画像処理プログラムが前記眼科画像処理装置の制御部によって実行されることで、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得する画像取得ステップと、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに前記眼科画像を入力することで、前記被検眼における特定の構造に対する解析結果を取得する解析結果取得ステップと、前記数学モデルに入力された前記眼科画像の画像領域を変数とする、前記数学モデルによる前記解析に関する重みの分布の情報であり、前記数学モデルによる前記解析の確信度の分布を示す情報を、補足分布情報として取得する補足分布情報取得ステップと、前記眼科画像の画像領域内のうち、前記補足分布情報が示す前記確信度が閾値以下の領域における、前記補足分布情報の重みの分布を示す補足マップの画像を、前記被検眼の組織の正面画像に重畳表示させる表示ステップと、を前記眼科画像処理装置に実行させる。
【0008】
本開示に係る眼科画像処理装置および眼科画像処理プログラムによると、ユーザの業務がより適切に補助される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】数学モデル構築装置1、眼科画像処理装置21、および眼科画像撮影装置11A,11Bの概略構成を示すブロック図である。
図2】加齢黄斑変性の疾患を有する眼底の正面画像の一例を示す図である。
図3】糖尿病網膜症の疾患を有する眼底の正面画像の一例を示す図である。
図4図2に示す眼科画像30Aに対して自動解析が行われた場合の、補足マップ40Aの一例を示す図である。
図5図3に示す眼科画像30Bに対して自動解析が行われた場合の、補足マップ40Bの一例を示す図である。
図6】数学モデル構築装置1が実行する数学モデル構築処理のフローチャートである。
図7】眼科画像処理装置21が実行する確認用画像表示処理のフローチャートである。
図8】補足マップ40Bに基づいて領域46A,46B,48を設定する方法の一例を説明するための説明図である。
図9】眼科画像30B、補足マップ40B、および確認用画像50を表示している状態の、表示装置28の表示画面の一例を示す図である。
図10】眼科画像処理装置21が実行する統合マップ表示処理のフローチャートである。
図11】2つの補足マップ40A,40Bを統合して統合マップ60を生成する方法の一例を説明するための説明図である。
図12】眼科画像30上に統合マップ60が重畳された状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示で例示する眼科画像処理装置の制御部は、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得する。制御部は、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに眼科画像を入力することで、被検眼における特定の疾患および特定の構造の少なくともいずれかに対する解析結果を取得する。制御部は、数学モデルに入力された眼科画像の画像領域(つまり、領域における座標)を変数とする、数学モデルによる解析に関する重みの分布の情報を、補足分布情報として取得する。制御部は、補足分布情報に基づいて、眼科画像の画像領域内の一部に注目領域を設定する。制御部は、被検眼の組織のうち、注目領域を含む組織の画像を取得して表示部に表示させる。
【0011】
この場合、ユーザ(例えば医師等)は、被検眼の組織のうち、補足分布情報に基づいて設定される注目領域の組織を、表示される画像に基づいて適切に確認することができる。例えば、解析に関する重みが大きい領域の組織の画像が表示される場合には、ユーザは、重みが大きい重要な部位の画像を容易に確認することができる。また、重みが小さい領域の組織の画像が表示される場合には、ユーザは、例えば、解析の確実性が低い部位の画像等を容易に確認することができる。よって、ユーザによる診断等の業務が適切に補助される。
【0012】
なお、数学モデルに入力される眼科画像を撮影する眼科画像撮影装置と、注目領域を含む組織の画像を撮影する眼科画像撮影装置は、同一の装置であってもよいし異なる装置であってもよい。
【0013】
また、数学モデルに入力される眼科画像は、1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の眼科画像が数学モデルに入力される場合、複数の眼科画像は、同一の装置によって撮影された画像であってもよいし、異なる装置によって撮影された画像であってもよい。また、数学モデルに入力される眼科画像の次元は特に限定されない。眼科画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。
【0014】
設定される注目領域は、1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の注目領域が設定される場合、全ての注目領域の画像が表示されてもよいし、複数の注目領域のうちの一部(例えば、ユーザによって選択された注目領域等)の画像が表示されてもよい。
【0015】
補足分布情報は、数学モデルが解析結果を出力する際に影響した影響度(注目度)の分布を示す情報(「アテンションマップ」と言われる場合もある)を含んでいてもよい。この場合、数学モデルによる自動解析に影響した影響度に応じて、適切に注目領域が設定される。
【0016】
また、補足分布情報は、数学モデルによる解析の確信度の分布を示す情報(以下、「確信度マップ」という場合もある)を含んでいてもよい。この場合、数学モデルによる解析の確信度に応じて、適切に注目領域が設定される。
【0017】
なお、「確信度」とは、解析の確実性の高さであってもよいし、確実性の低さ(不確信度)の逆数であってもよい。また、例えば不確信度がx%で表される場合、確信度は、(100-x)%で表される値であってもよい。また、「確信度」は、数学モデルが解析を行う際の自信の度合いを示す。確信度と解析結果の正確性は、比例するとは限らない。
【0018】
確信度マップの具体的な内容は適宜選択できる。例えば、確信度には、数学モデルによる自動的な解析における確率分布のエントロピー(平均情報量)が含まれていてもよい。エントロピーは、不確実性、乱雑さ、無秩序の度合いを表す。自動的な解析における確信度が最大値となる場合、確率分布のエントロピーは0となる。また、確信度が低下する程、エントロピーは増大する。従って、確信度として確率分布のエントロピーが用いられることで、確信度マップが適切に生成される。また、エントロピー以外の値が確信度として採用されてもよい。例えば、自動的な解析における確率分布の散布度を示す標準偏差、変動係数、分散等の少なくともいずれかが、確信度として用いられてもよい。確率分布同士の差異を図る尺度であるKLダイバージェンス等が、確信度として用いられてもよい。確率分布の最大値が確信度として用いられてもよい。また、自動的な解析によって複数の疾患等の順位付けを行う場合には、1位の確率、または、1位の確率とそれ以外の順位の確率(例えば、2位、または2位以下の複数の確率の合計等)の差等が、確信度として使用されてもよい。また、確信度として、学習に用いられたデータまたは条件等が互いに異なる複数の数学モデル間の出力のばらつきが用いられてもよい。この場合、数学モデルの出力が確率分布でなくても適用できる。
【0019】
補足分布情報として確信度マップが用いられる場合、制御部は、眼科画像の画像領域内のうち、特定の疾患または構造である旨の自動的な解析の確信度が閾値以下の領域に、注目領域を設定してもよい。この場合、被検眼の組織のうち、特定の解析(例えば、特定の疾患がある旨の解析)における確信度が低い部位(つまり、解析の確実性が低い部位)の画像が表示部に表示される。従って、ユーザは、解析における確信度が低い部位の状態を、表示される画像によって自ら確認することができる。よって、ユーザの診断等の業務がより適切に補助される。
【0020】
制御部は、眼科画像の画像領域内のうち、補足分布情報が示す重み(例えば、影響度および確信度の少なくともいずれか)が最も大きい位置を含む領域、または、重みが閾値以上である領域に、注目領域を設定してもよい。この場合、被検眼の組織のうち、自動的な解析における重みが大きい部位の画像が表示部に表示される。従って、ユーザは、重みが大きい重要な部位の状態を、表示される画像によって自ら確認することができる。よって、ユーザの診断等の業務がより適切に補助される。
【0021】
なお、注目領域の設定方法を変更することも可能である。例えば、制御部は、眼科画像の画像領域内のうち、重みが他の領域に比べて相対的に大きい領域に、注目領域を設定してもよい。この場合でも、重みが大きい重要な部位の状態が、ユーザによって適切に確認される。
【0022】
また、制御部は、重みの分布を示す補足マップの画像を、表示部に表示させてもよい。制御部は、数学モデルに入力された眼科画像の画像領域のうち、表示された補足マップ上でユーザによって指定された領域に対応する領域に、注目領域を設定してもよい。制御部は、注目領域を含む組織の画像を取得して、表示部に表示させてもよい。この場合、ユーザは、重みの分布に応じて、確認したい領域の画像を容易に眼科画像処理装置に表示させることができる。
【0023】
制御部は、被検眼の組織のうち、設定した注目領域を通過する部位の断層画像を取得して表示部に表示させてもよい。この場合、ユーザは、注目領域を通過する部位における深さ方向の組織の状態を、表示される画像に基づいて適切に確認することができる。よって、ユーザは、より適切に診断等の業務を行うことができる。なお、断層画像は、二次元断層画像であってもよいし、三次元断層画像であってもよい。断層画像は、例えばOCT装置等によって撮影されてもよい。
【0024】
制御部は、被検眼の組織を撮影した眼科画像から、注目領域を含む画像領域を抽出して表示部に表示させてもよい。この場合、ユーザは、注目領域を含む領域が抽出された画像によって、注目領域における組織の状態をより適切に確認することができる。なお、画像領域が抽出される基の画像は、数学モデルに入力される眼科画像と同一の画像であってもよいし、異なる画像であってもよい。
【0025】
なお、注目領域に基づいて表示部に表示させる画像の態様を変更することも可能である。例えば、制御部は、被検眼の組織を撮影した眼科画像に対し、注目領域を含む画像領域の画質(例えば、コントラスト、解像度、透過度等の少なくともいずれか)を、注目領域以外の画像領域の画質よりも高くして、表示部に表示させてもよい。また、制御部は、注目領域を含む画像領域を拡大させて表示部に表示させてもよい。この場合でも、ユーザは、注目領域における組織の状態を適切に確認することができる。また、制御部は、被検眼の組織を撮影した眼科画像のうち、注目領域以外の領域をマスクして、表示部に表示させてもよい。
【0026】
制御部は、ユーザによって入力された指示に応じて、注目領域を含む組織の画像の表示部における表示と非表示を切り替えてもよい。この場合、ユーザは、注目領域を含む組織の状態を適切なタイミングで確認することができる。
【0027】
なお、制御部は、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルを利用せずに、眼科画像に基づいて解析結果を取得する場合でも、解析結果に付随する補足分布情報を取得することが可能である。この場合、眼科画像処理装置は以下のように表現することも可能である。被検眼の組織の画像である眼科画像を処理する眼科画像処理装置であって、前記眼科画像処理装置の制御部は、眼科画像撮影装置によって撮影された眼科画像を取得し、前記被検眼における特定の疾患および特定の構造の少なくともいずれかに対する解析結果を前記眼科画像に基づいて取得し、前記眼科画像の画像領域を変数とする、前記解析に関する重みの分布の情報を、補足分布情報として取得し、前記補足分布情報に基づいて、前記眼科画像の画像領域内の一部に注目領域を設定し、前記被検眼の組織のうち、前記注目領域を含む組織の画像を取得して、表示部に表示させる。
【0028】
<実施形態>
(装置構成)
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態では、数学モデル構築装置1、眼科画像処理装置21、および眼科画像撮影装置11A,11Bが用いられる。数学モデル構築装置1は、機械学習アルゴリズムによって数学モデルを訓練させることで、数学モデルを構築する。構築された数学モデルは、入力された眼科画像に基づいて、被検眼における特定の疾患および特定の構造の少なくともいずれかに対する解析結果を出力する。眼科画像処理装置21は、数学モデルを用いて解析結果を取得すると共に、自動解析における特定の確認項目に対する、入力画像の領域(座標)を変数とする重みの分布(例えば、自動解析に影響した影響度の分布、および自動解析の確信度の分布の少なくともいずれか)を示す補足分布情報(詳細は後述する)を取得する。眼科画像処理装置21は、補足分布情報に基づいて、ユーザ(例えば医師等)の業務を補助するための各種情報を生成し、ユーザに提示する。眼科画像撮影装置11A,11Bは、被検眼の組織の画像である眼科画像を撮影する。
【0029】
一例として、本実施形態の数学モデル構築装置1にはパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)が用いられる。詳細は後述するが、数学モデル構築装置1は、眼科画像撮影装置11Aから取得した被検眼の眼科画像(以下、「訓練用眼科画像」という)のデータと、訓練用眼科画像が撮影された被検眼の疾患および構造の少なくともいずれかを示すデータとを利用して、数学モデルを訓練させる。その結果、数学モデルが構築される。ただし、数学モデル構築装置1として機能できるデバイスは、PCに限定されない。例えば、眼科画像撮影装置11Aが数学モデル構築装置1として機能してもよい。また、複数のデバイスの制御部(例えば、PCのCPUと、眼科画像撮影装置11AのCPU13A)が、協働して数学モデルを構築してもよい。
【0030】
また、本実施形態の眼科画像処理装置21にはPCが用いられる。しかし、眼科画像処理装置21として機能できるデバイスも、PCに限定されない。例えば、眼科画像撮影装置11Bまたはサーバ等が、眼科画像処理装置21として機能してもよい。眼科画像撮影装置11Bが眼科画像処理装置21として機能する場合、眼科画像撮影装置11Bは、眼科画像を撮影しつつ、撮影した眼科画像から解析結果および補足分布情報を取得することができる。また、眼科画像撮影装置11Bは,取得した補足分布情報に基づいて、被検眼における適切な部位を撮影することもできる。また、タブレット端末またはスマートフォン等の携帯端末が、眼科画像処理装置21として機能してもよい。複数のデバイスの制御部(例えば、PCのCPUと、眼科画像撮影装置11BのCPU13B)が、協働して各種処理を行ってもよい。
【0031】
また、本実施形態では、各種処理を行うコントローラの一例としてCPUが用いられる場合について例示する。しかし、各種デバイスの少なくとも一部に、CPU以外のコントローラが用いられてもよいことは言うまでもない。例えば、コントローラとしてGPUを採用することで、処理の高速化を図ってもよい。
【0032】
数学モデル構築装置1について説明する。数学モデル構築装置1は、例えば、眼科画像処理装置21または眼科画像処理プログラムをユーザに提供するメーカー等に配置される。数学モデル構築装置1は、各種制御処理を行う制御ユニット2と、通信I/F5を備える。制御ユニット2は、制御を司るコントローラであるCPU3と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置4を備える。記憶装置4には、後述する数学モデル構築処理(図2参照)を実行するための数学モデル構築プログラムが記憶されている。また、通信I/F5は、数学モデル構築装置1を他のデバイス(例えば、眼科画像撮影装置11Aおよび眼科画像処理装置21等)と接続する。
【0033】
数学モデル構築装置1は、操作部7および表示装置8に接続されている。操作部7は、ユーザが各種指示を数学モデル構築装置1に入力するために、ユーザによって操作される。操作部7には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。なお、操作部7と共に、または操作部7に代えて、各種指示を入力するためのマイク等が使用されてもよい。表示装置8は、各種画像を表示する。表示装置8には、画像を表示可能な種々のデバイス(例えば、モニタ、ディスプレイ、プロジェクタ等の少なくともいずれか)を使用できる。なお、本開示における「画像」には、静止画像も動画像も共に含まれる。
【0034】
数学モデル構築装置1は、眼科画像撮影装置11Aから眼科画像のデータ(以下、単に「眼科画像」という場合もある)を取得することができる。数学モデル構築装置1は、例えば、有線通信、無線通信、着脱可能な記憶媒体(例えばUSBメモリ)等の少なくともいずれかによって、眼科画像撮影装置11Aから眼科画像のデータを取得してもよい。
【0035】
眼科画像処理装置21について説明する。眼科画像処理装置21は、例えば、被検者の診断または検査等を行う施設(例えば、病院または健康診断施設等)に配置される。眼科画像処理装置21は、各種制御処理を行う制御ユニット22と、通信I/F25を備える。制御ユニット22は、制御を司るコントローラであるCPU23と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置24を備える。記憶装置24には、後述する眼科画像処理(図7に示す確認用画像表示処理、および、図10に示す統合マップ表示処理)を実行するための眼科画像処理プログラムが記憶されている。眼科画像処理プログラムには、数学モデル構築装置1によって構築された数学モデルを実現させるプログラムが含まれる。通信I/F25は、眼科画像処理装置21を他のデバイス(例えば、眼科画像撮影装置11Bおよび数学モデル構築装置1等)と接続する。
【0036】
眼科画像処理装置21は、操作部27および表示装置28に接続されている。操作部27および表示装置28には、前述した操作部7および表示装置8と同様に、種々のデバイスを使用することができる。
【0037】
眼科画像処理装置21は、眼科画像撮影装置11Bから眼科画像を取得することができる。眼科画像処理装置21は、例えば、有線通信、無線通信、着脱可能な記憶媒体(例えばUSBメモリ)等の少なくともいずれかによって、眼科画像撮影装置11Bから眼科画像を取得してもよい。また、眼科画像処理装置21は、数学モデル構築装置1によって構築された数学モデルを実現させるプログラム等を、通信等を介して取得してもよい。
【0038】
眼科画像撮影装置11A,11Bについて説明する。一例として、本実施形態では、数学モデル構築装置1に眼科画像を提供する眼科画像撮影装置11Aと、眼科画像処理装置21に眼科画像を提供する眼科画像撮影装置11Bが使用される場合について説明する。しかし、使用される眼科画像撮影装置の数は2つに限定されない。例えば、数学モデル構築装置1および眼科画像処理装置21は、複数の眼科画像撮影装置から眼科画像を取得してもよい。また、数学モデル構築装置1および眼科画像処理装置21は、共通する1つの眼科画像撮影装置から眼科画像を取得してもよい。
【0039】
また、本実施形態では、眼科画像撮影装置11(11A,11B)として、OCT装置を例示する。ただし、OCT装置以外の眼科画像撮影装置(例えば、レーザ走査型検眼装置(SLO)、眼底カメラ、シャインプルーフカメラ、または角膜内皮細胞撮影装置(CEM)等)が用いられてもよい。
【0040】
眼科画像撮影装置11(11A,11B)は、各種制御処理を行う制御ユニット12(12A,12B)と、眼科画像撮影部16(16A,16B)を備える。制御ユニット12は、制御を司るコントローラであるCPU13(13A,13B)と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置14(14A,14B)を備える。
【0041】
眼科画像撮影部16は、被検眼の眼科画像を撮影するために必要な各種構成を備える。本実施形態の眼科画像撮影部16には、OCT光源、OCT光源から出射されたOCT光を測定光と参照光に分岐する分岐光学素子、測定光を走査するための走査部、測定光を被検眼に照射するための光学系、被検眼の組織によって反射された光と参照光の合成光を受光する受光素子等が含まれる。
【0042】
眼科画像撮影装置11は、被検眼の眼底の二次元断層画像および三次元断層画像を撮影することができる。詳細には、CPU13は、スキャンライン上にOCT光(測定光)を走査させることで、スキャンラインに交差する断面の二次元断層画像を撮影する。二次元断層画像は、同一部位の複数の断層画像に対して加算平均処理を行うことで生成された加算平均画像であってもよい。また、CPU13は、OCT光を二次元的に走査することによって、組織における三次元断層画像を撮影することができる。例えば、CPU13は、組織を正面から見た際の二次元の領域内において、位置が互いに異なる複数のスキャンライン上の各々に測定光を走査させることで、複数の二次元断層画像を取得する。次いで、CPU13は、撮影された複数の二次元断層画像を組み合わせることで、三次元断層画像を取得する。さらに、本実施形態の眼科画像撮影装置11は、被検眼の眼底を正面(測定光の光軸に沿うZ方向)から見た場合の二次元正面画像を撮影することもできる。二次元正面画像のデータは、例えば、Z方向に交差するXY方向の各位置で深さ方向に輝度値が積算された積算画像データ、XY方向の各位置でのスペクトルデータの積算値、ある一定の深さにおけるXY方向の各位置での輝度データ、網膜のいずれかの層(例えば、網膜表層)におけるXY方向の各位置での輝度データ等であってもよい。
【0043】
(自動解析)
図2および図3を参照して、眼科画像処理装置21が実行する自動解析の一例について説明する。前述したように、眼科画像処理装置21は、被検眼の疾患および構造の少なくともいずれかに対する自動解析を、数学モデルを用いて実行する。一例として、本実施形態では、被検眼の疾患の自動解析(つまり、自動診断)を実行する場合について説明する。自動解析の対象とする疾患の種類は適宜選択できる。本実施形態の眼科画像処理装置21は、数学モデルに眼科画像を入力することで、加齢黄斑変性および糖尿病網膜症を含む複数の疾患の各々の有無を自動的に解析することができる。
【0044】
図2は、加齢黄斑変性の疾患を有する眼底の正面画像の一例を示す。図2に例示する眼科画像30Aでは、眼底における視神経乳頭31、黄斑32、および眼底血管33に加えて、加齢黄斑変性による病変部35が黄斑32の近傍に表れている。数学モデルは、図2に例示する眼科画像30Aのデータ(入力用訓練データ)と、眼科画像30Aが撮影された被検眼の疾患が加齢黄斑変性である旨のデータ(出力用訓練データ)によって、予め訓練されている。従って、図2に近似する眼科画像が数学モデルに入力されると、被検眼が加齢黄斑変性の疾患を有する可能性が高いことを示す自動解析結果が出力される。
【0045】
図3は、糖尿病網膜症の疾患を有する眼底の正面画像の一例を示す。図3に例示する眼科画像30Bでは、眼底における視神経乳頭31、黄斑32、および眼底血管33に加えて、糖尿病網膜症による病変部36が眼底血管33の近傍に表れている。数学モデルは、図3に例示する眼科画像30Bのデータ(入力用訓練データ)と、眼科画像30Bが撮影された被検眼の疾患が糖尿病網膜症である旨のデータ(出力用訓練データ)によって、予め訓練されている。従って、図3に近似する眼科画像が数学モデルに入力されると、被検眼が糖尿病網膜症の疾患を有する可能性が高いことを示す自動解析結果が出力される。
【0046】
なお、本実施形態の数学モデルによると、1つの眼科画像に対して複数の疾患の自動解析が実行される。従って、発症している可能性が高い疾患として、複数の疾患(例えば、加齢黄斑変性と糖尿病網膜症)が自動的に解析される場合もある。
【0047】
なお、眼科画像処理装置21は、疾患の自動解析の代わりに、または疾患の自動解析と共に、被検眼の構造(例えば、眼底の層、黄斑、視神経乳頭、および眼底血管等の少なくともいずれか)の自動解析を行ってもよい。詳細には、眼科画像処理装置21は、眼底の断層画像(二次元断層画像および三次元断層画像の少なくともいずれか)を数学モデルに入力することで、被検眼の眼底における特定の層、または特定の層の境界を自動的に解析してもよい。また、眼科画像処理装置21は、眼底の正面画像または断層画像を数学モデルに入力することで、被検眼の組織(例えば、黄斑および視神経乳頭等の少なくともいずれか)の構造を自動的に解析してもよい。また、眼科画像処理装置21は、眼底の正面画像または断層画像を数学モデルに入力することで、被検眼の眼底血管を自動的に解析してもよい。この場合、眼科画像処理装置21は、被検眼の眼底における動脈と静脈を自動的に解析してもよい。
【0048】
(補足分布情報)
図4および図5を参照して、補足分布情報の一例について説明する。本実施形態では、数学モデルに入力される眼科画像は二次元の画像である。従って、補足分布情報も、二次元の情報(マップ)となる。しかし、例えば三次元の眼科画像が数学モデルに入力されてもよい。この場合、補足分布情報は三次元の情報となる。
【0049】
本実施形態では、補足分布情報(補足マップ)として、アテンションマップおよび確信度マップの少なくともいずれかが用いられる。
【0050】
アテンションマップでは、数学モデルが自動解析結果を出力する際に影響した各位置に対する影響度(注目度)の、画像領域内における分布である。影響度が高い領域は、影響度の低い領域に比べて、自動解析結果に強く影響する。アテンションマップの一例は、例えば以下の論文等に記載されている。「Ramprasaath R. Selvaraju, et al. "Grad-CAM: Visual Explanations from Deep Networks via Gradient-based Localization" Proceedings of the IEEE International Conference on Computer Vision, 2017-Oct, pp. 618-626」
【0051】
確信度マップでは、数学モデルが自動解析を実行する際の、各画素における自動解析の確信度の、画像領域内における分布である。確信度は、自動解析の確実性の高さであってもよいし、確実性の低さ(不確信度)の逆数等であってもよい。また、例えば不確信度がx%で表される場合、確信度は(100-x)%で表される値であってもよい。一例として、本実施形態では、自動解析における確率分布のエントロピー(平均情報量)が確信度として用いられる。自動解析における確信度が最大値となる場合、確率分布のエントロピーは0となる。また、確信度が低下する程、エントロピーは増大する。従って、例えば、確率分布のエントロピーの逆数等が確信度として用いられることで、確信度マップが適切に生成される。ただし、確率分布のエントロピー以外の情報(例えば、確率分布の標準偏差、変動係数、分散等)が、確信度マップの生成に利用されてもよい。自動解析における確率分布が確信度として利用される場合、確率分布は、画素毎の自動解析の確率分布であってもよいし、一次元以上の座標を確率変数とする確率分布であってもよい。また、自動解析によって何らかの順位付けを行う場合には、1位の確率、または、1位の確率とそれ以外の順位の確率(例えば、2位、または2位以下の複数の確率の合計等)の差等が、確信度として利用されてもよい。
【0052】
図4は、図2に示す眼科画像30Aに対して数学モデルに基づく自動解析が行われた場合の、補足マップ40Aの一例を示す図である。図4では、眼科画像30A(図2参照)の画像領域と補足マップ40Aの領域の対比を容易にするために、眼科画像30Aにおける眼底血管33等の組織が点線で模式的に示されている。図4に示す補足マップ40Aでは、加齢黄斑変性の可能性が高いことを示す自動解析結果に関する、各位置における重み(本実施形態では、影響度または確信度)の大きさが、色の濃さによって表されている。つまり、色が濃い部分は、色が薄い部分に比べて、自動解析結果に関する影響度または確信度が大きい部分となる。(図4および図5では、便宜上、色の濃さを図形の線の太さで表現している。)図4に示す例では、病変部35(図2参照)における影響度または確信度が大きくなっている。また、病変部35内の中心の影響度または確信度は、病変部35内の周辺部の影響度または確信度よりも大きくなっている。
【0053】
図5は、図3に示す眼科画像30Bに対して数学モデルに基づく自動解析が行われた場合の、補足マップ40Bの一例を示す図である。図5でも図4と同様に、眼科画像30B(図3参照)における眼底血管等の組織が点線で模式的に示されている。図5に示す補足マップ40Bでは、糖尿病網膜症の可能性が高いことを示す自動解析結果に関する、各位置における影響度または確信度の大きさが、色の濃さによって表されている。色が濃い部分は、自動解析結果に対する影響度または確信度が大きい。図5に示す例でも、病変部36(図3参照)における影響度または確信度が大きくなっている。
【0054】
本実施形態の補足マップ40A,40Bでは、自動解析の対象とする疾患または構造に応じて、影響度または確信度の表示態様が変えられる。本実施形態では、影響度または確信度を示す色が、自動解析の対象とする疾患または構造に応じて変えられる。ただし、補足マップの具体的な態様を変更することも可能である。例えば、影響度または確信度の大きさが等しい位置を線で結ぶことで等高線を生成することで、影響度または確信度の大きさを示してもよい。この場合、自動解析の対象とする疾患または構造に応じて、等高線を構成する線の色、線種、線の太さ等の少なくともいずれかを変えてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、眼科画像が数学モデルに入力されると、数学モデルは、眼科画像に対する自動解析結果と、自動解析に付随する補足分布情報(本実施形態では補足マップ)を共に出力する。しかし、補足分布情報を生成する方法を変更することも可能である。例えば、眼科画像処理装置21のCPU23が、数学モデルによって出力された自動解析結果に基づいて補足分布情報を生成してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、被検眼の疾患の自動解析を実行する場合について例示している。しかし、被検眼の構造の自動解析を実行する場合にも、前述した補足分布情報と同様の補足分布情報を生成することが可能である。例えば、被検眼の眼底における動脈と静脈を自動的に解析する場合には、動脈である旨の自動解析結果に対する補足分布情報と、静脈である旨の自動解析結果に対する補足分布情報が生成されてもよい。この場合、眼底血管のうち、動脈および静脈の自動解析の確信度が小さい部位については、確信度が小さい血管であることを示す表示態様で補足分布情報が生成されてもよい。
【0057】
(数学モデル構築処理)
図6を参照して、数学モデル構築装置1が実行する数学モデル構築処理について説明する。数学モデル構築処理は、記憶装置4に記憶された数学モデル構築プログラムに従って、CPU3によって実行される。数学モデル構築処理では、訓練データセットによって数学モデルが訓練されることで、被検眼の疾患または構造に対する自動解析を行うための数学モデルが構築される。訓練データセットには、入力側のデータ(入力用訓練データ)と出力側のデータ(出力用訓練データ)が含まれる。
【0058】
図6に示すように、CPU3は、眼科画像撮影装置11Aによって撮影された眼科画像である訓練用眼科画像のデータを、入力用訓練データとして取得する(S1)。本実施形態では、訓練用眼科画像のデータは、眼科画像撮影装置11Aによって生成された後、数学モデル構築装置1によって取得される。しかし、CPU3は、訓練用眼科画像を生成する基となる信号(例えばOCT信号)を眼科画像撮影装置11Aから取得し、取得した信号に基づいて訓練用眼科画像を生成することで、訓練用眼科画像のデータを取得してもよい。
【0059】
なお、本実施形態のS1では、OCT装置である眼科画像撮影装置11Aによって撮影された眼底の二次元正面画像(所謂Enface画像)が、訓練用眼科画像として取得される。しかし、訓練用眼科画像は、OCT装置以外の装置(例えば、SLO装置、眼底カメラ、赤外カメラ、角膜内皮細胞撮影装置等の少なくともいずれか)によって撮影されてもよい。また、訓練用眼科画像は、眼底の二次元正面画像に限定されない。例えば、二次元断層画像または三次元断層画像等が、訓練用眼科画像として取得されてもよい。訓練用眼科画像として動画像が取得されてもよい。
【0060】
次いで、CPU3は、訓練用眼科画像が撮影された被検眼の、疾患および構造の少なくともいずれか(本実施形態では疾患)を示すデータを、出力用訓練データとして取得する(S2)。一例として、本実施形態では、作業者(例えば医師等)が訓練用眼科画像を確認して疾患の診断を行い、疾患が存在する場合に疾患の種類を操作部7の操作によって数学モデル構築装置1に入力することで、出力用訓練データが生成される。出力用訓練データでは、疾患の有無、および疾患の種類のデータに加えて、病変部の位置を示すデータが含まれていてもよい。
【0061】
なお、出力用訓練データを変更することも可能である。例えば、数学モデルによって被検眼の構造の自動解析を実行する場合には、訓練用眼科画像のうち、特定の構造の位置(例えば、層の位置、境界の位置、特定の組織の位置等の少なくともいずれか)を示すデータが、出力用訓練データとして使用されてもよい。
【0062】
次いで、CPU3は、機械学習アルゴリズムによって、訓練データセットを用いた数学モデルの訓練を実行する(S3)。機械学習アルゴリズムとしては、例えば、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ブースティング、サポートベクターマシン(SVM)等が一般的に知られている。
【0063】
ニューラルネットワークは、生物の神経細胞ネットワークの挙動を模倣する手法である。ニューラルネットワークには、例えば、フィードフォワード(順伝播型)ニューラルネットワーク、RBFネットワーク(放射基底関数)、スパイキングニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク(リカレントニューラルネット、フィードバックニューラルネット等)、確率的ニューラルネット(ボルツマンマシン、ベイシアンネットワーク等)等がある。
【0064】
ランダムフォレストは、ランダムサンプリングされた訓練データに基づいて学習を行って、多数の決定木を生成する方法である。ランダムフォレストを用いる場合、予め識別器として学習しておいた複数の決定木の分岐を辿り、各決定木から得られる結果の平均(あるいは多数決)を取る。
【0065】
ブースティングは、複数の弱識別器を組み合わせることで強識別器を生成する手法である。単純で弱い識別器を逐次的に学習させることで、強識別器を構築する。
【0066】
SVMは、線形入力素子を利用して2クラスのパターン識別器を構成する手法である。SVMは、例えば、訓練データから、各データ点との距離が最大となるマージン最大化超平面を求めるという基準(超平面分離定理)で、線形入力素子のパラメータを学習する。
【0067】
数学モデルは、例えば、入力データ(本実施形態では、訓練用眼科画像と同様の二次元正面画像のデータ)と、出力データ(本実施形態では、疾患に関する自動解析結果のデータ)の関係を予測するためのデータ構造を指す。数学モデルは、訓練データセットを用いて訓練されることで構築される。前述したように、訓練データセットは、入力用訓練データと出力用訓練データのセットである。例えば、訓練によって、各入力と出力の相関データ(例えば、重み)が更新される。また、本実施形態の数学モデルは、自動解析結果と共に、自動解析に付随する補足分布情報(本実施形態では補足マップ)を出力するように訓練される。
【0068】
本実施形態では、機械学習アルゴリズムとして多層型のニューラルネットワークが用いられている。ニューラルネットワークは、データを入力するための入力層と、予測したい自動解析結果のデータを生成するための出力層と、入力層と出力層の間の1つ以上の隠れ層を含む。各層には、複数のノード(ユニットとも言われる)が配置される。詳細には、本実施形態では、多層型ニューラルネットワークの一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が用いられている。
【0069】
なお、他の機械学習アルゴリズムが用いられてもよい。例えば、競合する2つのニューラルネットワークを利用する敵対的生成ネットワーク(Generative adversarial networks:GAN)が、機械学習アルゴリズムとして採用されてもよい。
【0070】
数学モデルの構築が完了するまで(S4:NO)、S1~S3の処理が繰り返される。つまり、疾患を有する被検眼の訓練データセット(例えば、図2および図3参照)と、疾患を有さない被検眼の訓練データセットを含む多数の訓練データセットによって、数学モデルは繰り返し訓練される。数学モデルの構築が完了すると(S4:YES)、数学モデル構築処理は終了する。構築された数学モデルを実現させるプログラムおよびデータは、眼科画像処理装置21に組み込まれる。
【0071】
(確認用画像表示処理)
図7から図9を参照して、眼科画像処理装置21が実行する確認用画像表示処理について説明する。確認用画像とは、ユーザが直接確認することが有効な可能性が高い画像である。本実施形態では、確認用画像は補足分布情報に基づいて自動的に取得される。確認用画像表示処理は、記憶装置21に記憶された眼科画像処理プログラムに従って、CPU23によって実行される。
【0072】
まず、CPU23は、被検眼の眼科画像を取得する(S11)。S11で取得される眼科画像の種類は、前述した数学モデル構築処理(図6参照)において入力用訓練データとして使用される眼科画像と同様の眼科画像であることが望ましい。一例として、本実施形態のS11では、被検眼の眼底の二次元正面画像が取得される。なお、CPU23は、眼科画像を生成する基となる信号(例えばOCT信号)を眼科画像撮影装置11Bから取得し、取得した信号に基づいて眼科画像を生成してもよい。
【0073】
CPU23は、取得した眼科画像を数学モデルに入力することで、数学モデルによって出力される自動解析結果を取得する(S12)。前述したように、本実施形態では、特定の複数の疾患の各々についての自動解析結果が、数学モデルによって出力される。
【0074】
CPU23は、S12における自動解析に付随する補足分布情報を取得する(S13)。前述したように、本実施形態では、アテンションマップおよび確信度マップの少なくともいずれかが、補足分布情報(補足マップ)として取得される。また、本実施形態では、数学モデルが自動解析結果と補足分布情報を共に出力する。しかし、CPU23が、自動解析結果に基づいて補足分布情報を生成してもよい。
【0075】
次いで、CPU23は、補足分布情報に基づいて、S11において取得された眼科画像の画像領域内の一部に注目領域を設定する(S16)。詳細には、本実施形態の眼科画像処理装置21は、補足分布情報として確信度マップが取得されている場合に、確信度が小さい部位(つまり、本実施形態では、特定の疾患である旨の自動解析の確実性が低いと思われる部位)の画像を、表示装置28に表示させることができる。この場合、ユーザは、特定の自動解析の確信度が小さい部位の状態を、表示される確認用画像によって自ら確認することができる。また、本実施形態の眼科画像処理装置21は、補足分布情報が示す重み(影響度および確信度の少なくともいずれか)が大きい部位の画像を、表示装置28に表示させることができる。この場合、ユーザは、重みが大きい重要な部位の状態(つまり、本実施形態では、特定の疾患である可能性が高いと判定された部位の状態)を、確認用画像によって適切に確認することができる。ユーザは、操作部27を操作することで、確信度が小さい部位の表示指示と、影響度または確信度が大きい部位の表示指示のいずれかを、眼科画像処理装置21に入力することができる。
【0076】
確信度が小さい部位の表示指示が入力されている場合、CPU23は、補足分布情報(詳細には確信度マップ)が示す確信度が閾値以下の領域に、注目領域を設定する(S16)。つまり、CPU23は、特定の疾患または構造(本実施形態では特定の疾患)である旨の自動解析の確信度が閾値以下の領域に、注目領域を設定する。
【0077】
注目領域を設定するための具体的な処理内容は適宜選択できる。一例として、本実施形態のCPU23は、図8に示すように、特定の疾患または構造である旨の自動解析の確信度が第1閾値以上である連続した領域を、別個に抽出する。図8に示す例では、確信度が第1閾値以上である2つの領域46A,46Bが抽出される。次いで、CPU23は、抽出した領域内における確信度の最大値が第2閾値以下(第2閾値>第1閾値)である領域に、注目領域を設定する。図8に示す例では、領域46Aでは、確信度の最大値が第2閾値よりも大きいので、特定の疾患である旨の自動解析の確実性が高いと考えられる。一方で、領域46Bでは、確信度の最大値が第2閾値以下であり、特定の疾患である旨の自動解析の確実性が低いと考えられる。従って、図8に示す例では、2つの領域46A,46Bのうち、確信度の最大値が第2閾値以下である領域46Bに、注目領域48が設定される。この場合、特定の疾患の可能性があると自動的に解析された領域46A,46Bのうち、自動解析の確実性が低い領域のみが、注目領域に設定される。
【0078】
なお、注目領域を設定するための処理内容を変更することも可能である。例えば、CPU23は、確信度が前述した第1閾値以上であり、且つ第2閾値以下である領域の全てを、注目領域として設定してもよい。第1閾値は、0よりも大きい値であれば、各種条件に応じて適宜設定することが可能である。
【0079】
また、重み(本実施形態では影響度または確信度)が大きい部位の表示指示が入力されている場合、CPU23は、補足分布情報(詳細には、アテンションマップおよび確信度マップの少なくともいずれか)が示す重みが最も大きい位置を含む領域に、注目領域を設定する(S16)。例えば、図8に示す例では、影響度または確信度が最も大きい位置は、領域46A内に存在する。従って、CPU23は、領域46Aを注目領域に設定する。なお、重みが大きい部位の表示指示が入力されている場合にも、S16における処理内容を変更することは可能である。例えば、CPU23は、重み(影響度または確信度)が閾値以上である領域に注目領域を設定してもよい。また、CPU23は、重みが他の領域よりも相対的に大きい領域に、注目領域を設定してもよい。また、領域内の重みの累積値が最も高くなるように、特定の大きさの注目領域が設定されてもよい。2つ以上の注目領域が設定されてもよい。
【0080】
次いで、CPU23は、被検眼の組織のうち、注目領域を含む組織の画像を、確認用画像として取得する(S18)。一例として、本実施形態のCPU23は、被検眼の組織のうち、注目領域を通過する部位の断層画像を、確認用画像として取得する。
【0081】
図9は、眼科画像30B、補足マップ40B、および確認用画像50を表示している状態の、表示装置28の表示画面の一例を示す図である。図9に示す例では、数学モデルに入力された眼科画像30Bに対して、補足マップ40Bが、領域を合致させた状態で重畳表示されている。従って、ユーザは、自動解析に付随する重みの分布を、眼科画像30B上で適切に確認することができる。
【0082】
また、図9に示す例では、CPU23は、二次元の注目領域48上に、断層画像の取得位置を示すライン49を設定し、表示装置28に表示させる。図9に示す例では、直線状の1本のライン49が、注目領域48を横切るように設定されている。しかし、ラインは直線状でなくてもよい。また、複数のラインが設定されてもよい。また、ラインの代わりに、断層画像の取得位置を示す二次元の領域が設定されてもよい。CPU23は、設定したラインを組織の深さ方向に横断する断面の二次元断層画像50を取得し、表示装置28に表示させる。また、断層画像の取得位置を示す二次元の領域が設定されている場合、CPU23は、設定された二次元の領域から組織の深さ方向に延びる三次元断層画像を取得し、表示装置28に表示させる。なお、CPU23は、眼科画像撮影装置11Bによって予め撮影された二次元断層画像または三次元断層画像から、設定したラインまたは領域に対応する断層画像を取得してもよい。また、CPU23は、設定したラインまたは領域に対応する断層画像を撮影させる指示を、眼科画像撮影装置11Bに出力してもよい。
【0083】
なお、本実施形態のS16では、補足分布情報に基づいて、注目領域が自動的に設定される。しかし、ユーザによって入力された指示に基づいて注目領域が設定されてもよい。例えば、CPU23は、図9に示すように、補足マップ40Bを表示装置28に表示させた状態で、補足マップ40B上で注目領域をユーザに指定させてもよい。CPU23は、眼科画像30Bの画像領域のうち、補足マップ40B上でユーザによって指定された領域に対応する領域に、注目領域を設定してもよい。
【0084】
また、本実施形態のCPU23は、断層画像以外の画像を確認用画像として表示させることも可能である。例えば、CPU23は、被検眼の組織を撮影した眼科画像から、注目領域を含む画像領域を、確認用画像として抽出することができる。この場合、確認用画像が抽出される基の眼科画像は、数学モデルに入力される眼科画像30A,30Bと同一の画像であってもよいし、異なる画像であってもよい。確認用画像が抽出される基の眼科画像は、二次元の画像であってもよいし、三次元の画像であってもよい。
【0085】
また、CPU23は、被検眼の組織を撮影した眼科画像に対し、注目領域を含む画像領域の画質を、他の領域の画質よりも高くして、表示装置28に表示させることもできる。また、CPU23は、被検眼の組織を撮影した眼科画像のうち、注目領域を含む画像領域を拡大させて、表示装置28に表示させることもできる。また、CPU23は、注目領域以外の領域をマスクした状態で、眼科画像を表示装置28に表示させてもよい。
【0086】
次いで、CPU23は、確認用画像の表示指示がユーザによって入力されているか否かを判断する(S20)。本実施形態では、ユーザは、表示装置28における確認用画像の表示または非表示を選択する指示を、操作部27を介して入力することができる。表示指示が入力されている場合(S20:YES)、CPU23は、確認用画像を表示装置28に表示させる。一方で、非表示の指示が入力されている場合(S20:NO)、CPU23は、確認用画像を非表示とする(S22)。処理を終了させる指示が入力されるまで(S23:NO)、S20~S23の処理が繰り返される。終了指示が入力されると(S23:YES)、確認用画像表示処理は終了する。
【0087】
なお、図8および図9では、複数の疾患および構造のうちの1つである糖尿病網膜症の自動解析結果のみが出力された場合について例示した。しかし、前述したように、本実施形態の数学モデルによると、1つの眼科画像に対して複数の疾患の自動解析が実行される。複数の疾患または構造に対する自動解析結果が出力された場合、確認用画像を表示させる処理は、1つの自動解析結果に対して実行されてもよいし、複数の自動解析結果の各々に対して実行されてもよい。また、複数の自動解析結果のうち、ユーザによって選択された自動解析結果に対して、確認用画像を表示させる処理が実行されてもよい。
【0088】
(統合マップ表示処理)
図10から図12を参照して、眼科画像処理装置21が実行する統合マップ表示処理について説明する。統合マップとは、複数の自動解析結果の各々に付随する複数の補足マップを統合することで生成されるマップである。統合マップによると、複数の自動解析結果の各々に関する重み(本実施形態では影響度または確信度)の分布が、容易に把握される。統合マップ表示処理は、記憶装置21に記憶された眼科画像処理プログラムに従って、CPU23によって実行される。
【0089】
まず、CPU23は、被検眼の眼科画像を取得する(S31)。S31の処理には、前述したS11の処理(図7参照)と同様の処理を採用できる。次いで、CPU23は、取得した眼科画像を数学モデルに入力することで、複数の疾患および構造の各々に対する複数の自動解析結果を取得する(S32)。前述したように、本実施形態では、特定の複数の疾患の各々についての自動解析結果が、数学モデルによって出力される。
【0090】
CPU23は、S32における複数の自動解析の各々に付随する複数の補足マップを取得する(S33)。前述したように、本実施形態では、アテンションマップおよび確信度マップの少なくともいずれかが、補足マップとして取得される。
【0091】
CPU23は、S33で取得された複数の補足マップを同一の領域内で統合させることで、統合マップを生成する(S34)。図11は、2つの補足マップ40A,40B(図4および図5参照)を統合して統合マップ60を生成する方法の一例を説明する説明図である。CPU23は、複数の補足マップ(図11に示す例では、2つの補足マップ40A,40B)を同一の領域内で統合させることで、1つの統合マップ60を生成する。詳細には、本実施形態のCPU23は、補足マップ40A,40B毎に表示態様を変えて、複数の補足マップ40A,40Bを統合させる。図11に示す例では、CPU23は、影響度または確信度を示す色を、補足マップ40A,40B毎に変えている。しかし、CPU23は、色以外の表示態様を補足マップ毎に変えてもよい。
【0092】
次いで、CPU23は、統合マップ60を眼科画像30上に重畳表示させる指示が入力されているか否かを判断する(S36)。本実施形態では、ユーザは、眼科画像30上に統合マップ60を重畳させるか否かを選択する指示を、操作部27を介して入力することができる。重畳表示させる指示が入力されていなければ(S36:NO)、CPU23は、眼科画像30上への統合マップ60の重畳表示を非表示とする(S37)。重畳表示させる指示が入力されている場合(S36:YES)、CPU23は、図12に示すように、統合マップ60を被検眼の眼科画像30上に重畳させて表示させる(S38)。従って、ユーザは、複数種類の影響度または確信度の分布を、被検眼の組織の分布と容易に対比させることができる。
【0093】
次いで、CPU23は、眼科画像30に重畳表示させる統合マップ60の透過度の変更指示が入力されたか否かを判断する(S39)。本実施形態では、ユーザは、操作部27を操作することで、統合マップ60の透過度を指定することができる。透過度の変更指示が入力されている場合(S39:YES)、CPU23は、眼科画像30上に重畳表示されている統合マップ60の透過度を、指示された透過度に変更する(S40)。従って、ユーザは、複数種類の重み(影響度または確信度)の分布と、被検眼の組織の分布の比較をより適切に実行することができる。処理を終了させる指示が入力されるまで(S42:NO)、S36~S42の処理が繰り返される。終了指示が入力されると(S42:YES)、統合マップ表示処理は終了する。
【0094】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態では、複数の疾患の各々に対する自動解析を実行する場合について例示している。しかし、被検眼における複数の構造の各々に対する自動解析を実行する場合にも、前述した処理と同様の処理を実行することが可能である。例えば、被検眼の眼底における動脈と静脈を自動的に解析する場合には、動脈である旨の自動解析結果に関する補足マップと、静脈である旨の自動解析結果に関する補足マップを統合させて、統合マップを生成してもよい。この場合、動脈および静脈の解析の確実性が高い部分と低い部分が、統合マップによって容易に把握される。
【0095】
また、上記実施形態では、2次元の補足マップおよび統合マップが表示装置28に表示される。しかし、CPU23は、三次元の補足マップを取得して表示装置28に表示させてもよい。また、CPU23は、複数の三次元の補足マップを統合させて、三次元の統合マップを生成し、表示装置28に表示させてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、特定の疾患および特定の構造の少なくともいずれかに対する解析結果を取得するために、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルが利用される。しかし、CPU23は、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルを利用せずに、眼科画像に基づいて解析結果を自動的に取得する場合でも、自動解析に付随する補足分布情報を取得することは可能である。この場合でも、CPU23は、上記実施形態と同様に、補足分布情報に基づいて注目領域を設定し、注目領域を含む組織の画像を表示装置28に表示させてもよい。また、CPU23は、機械学習アルゴリズムを利用せずに複数の自動解析結果を取得する際に、複数の自動解析の各々に付随する複数の補足マップを取得し、複数の補足マップを統合させた統合マップを生成してもよい。
【0097】
なお、図7のS11および図10のS31で眼科画像を取得する処理は、「画像取得ステップ」の一例である。図7のS12および図10のS32で自動解析結果を取得する処理は、「解析結果取得ステップ」の一例である。図7のS13および図10のS33で補足分布情報(補足マップ)を取得する処理は、補足分布情報取得ステップおよび補足マップ取得ステップの一例である。図7のS16で注目領域を設定する処理は、「注目領域設定ステップ」の一例である。図7のS21で確認用画像を表示させる処理は、「表示ステップ」の一例である。図10のS34およびS38で統合マップを生成して表示させる処理は、「統合マップ表示ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0098】
1 数学モデル構築装置
11 眼科画像撮影装置
21 眼科画像処理装置
23 CPU
24 記憶装置
28 表示装置
30A,30B 眼科画像
40A,40B 補足マップ
48 注目領域
図1
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