(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】三相信号発生装置および三相信号発生方法
(51)【国際特許分類】
H02P 21/18 20160101AFI20240214BHJP
【FI】
H02P21/18
(21)【出願番号】P 2023510176
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2021022353
(87)【国際公開番号】W WO2022208914
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021056375
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-061289(JP,A)
【文献】特開平2-197289(JP,A)
【文献】特開2008-289345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
H02P 6/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する磁石に対向し、磁界強度を示す第1信号を出力する第1磁気センサと、
前記磁石に対向し、前記第1信号に対して電気角で120°の位相遅れを有する第2信号を出力する第2磁気センサと、
前記第1信号及び前記第2信号を処理する信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、
前記第1信号及び前記第2信号をデジタル変換することより、前記第1信号の瞬時値と前記第2信号の瞬時値とを取得する第1処理と、
前記第1信号の瞬時値から前記第2信号の瞬時値を減算することにより、前記第1信号に含まれる第1基本波信号と前記第2信号に含まれる第2基本波信号との合成信号の瞬時値を算出する第2処理と、
前記合成信号の瞬時値と予め用意された前記合成信号のノルムとに基づいて前記合成信号の偏角を算出する第3処理と、
前記合成信号の偏角と、前記合成信号のノルムと、予め用意された前記合成信号と前記第1基本波信号との位相差とに基づいて、前記合成信号と直交関係にある第3基本波信号の瞬時値を算出する第4処理と、
を実行する、三相信号発生装置。
【請求項2】
前記合成信号の偏角をωt+φ2とし、前記合成信号の瞬時値をHuvとし、前記合成信号のノルムを||Huv||とする場合に、
前記信号処理部は、前記第3処理において、下式(12)に基づいて前記合成信号の偏角ωt+φ2を算出し、算出された偏角ωt+φ2を拡張処理することにより、-180°以上且つ180°未満の範囲に含まれる偏角θを取得する、請求項1に記載の三相信号発生装置。
【数1】
【請求項3】
前記合成信号と前記第1基本波信号との位相差をφ2とし、前記第3基本波信号の瞬時値をHwとする場合に、
前記信号処理部は、前記第2処理において、予め用意された、前記第1信号の振幅値と前記第2信号の振幅値とが等しくなる振幅補正値に基づいて、前記第1信号の瞬時値と前記第2信号の瞬時値との少なくとも一方を補正し、
前記信号処理部は、前記第4処理において、前記合成信号のノルム||Huv||と、前記位相差φ2と、前記偏角θとを下式(13)に代入することにより、前記第3基本波信号の瞬時値を算出する、請求項2に記載の三相信号発生装置。
【数2】
【請求項4】
前記信号処理部は、
前記第1信号の瞬時値と、前記第2信号の瞬時値と、前記第3基本波信号の瞬時値とに基づいて、前記第1信号及び前記第2信号に含まれる同相信号の瞬時値を算出する第5処理と、
前記第1信号の瞬時値から前記同相信号の瞬時値を減算することにより、前記第1基本波信号の瞬時値を算出する第6処理と、
前記第2信号の瞬時値から前記同相信号の瞬時値を減算することにより、前記第2基本波信号の瞬時値を算出する第7処理と、
をさらに実行する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の三相信号発生装置。
【請求項5】
前記第1信号の瞬時値をHu’とし、前記第2信号の瞬時値をHv’とし、前記第3基本波信号の瞬時値をHwとし、前記同相信号の瞬時値をNとする場合に、
前記信号処理部は、前記第5処理において、下式(14)及び下式(15)に基づいて前記同相信号の瞬時値を算出する、請求項4に記載の三相信号発生装置。
【数3】
【請求項6】
回転する磁石に対向し、磁界強度を示す第1信号を出力する第1磁気センサと、
前記磁石に対向し、前記第1信号に対して電気角で120°の位相遅れを有する第2信号を出力する第2磁気センサと、を用いる三相信号発生方法であって、
前記第1信号及び前記第2信号をデジタル変換することより、前記第1信号の瞬時値と前記第2信号の瞬時値とを取得する第1ステップと、
前記第1信号の瞬時値から前記第2信号の瞬時値を減算することにより、前記第1信号に含まれる第1基本波信号と前記第2信号に含まれる第2基本波信号との合成信号の瞬時値を算出する第2ステップと、
前記合成信号の瞬時値と予め用意された前記合成信号のノルムとに基づいて前記合成信号の偏角を算出する第3ステップと、
前記合成信号の偏角と、前記合成信号のノルムと、予め用意された前記合成信号と前記第1基本波信号との位相差とに基づいて、前記合成信号と直交関係にある第3基本波信号の瞬時値を算出する第4ステップと、
を含む、三相信号発生方法。
【請求項7】
前記合成信号の偏角をωt+φ2とし、前記合成信号の瞬時値をHuvとし、前記合成信号のノルムを||Huv||とする場合に、
前記第3ステップにおいて、下式(12)に基づいて前記合成信号の偏角ωt+φ2を算出し、算出された偏角ωt+φ2を拡張処理することにより、-180°以上且つ180°未満の範囲に含まれる偏角θを取得する、請求項6に記載の三相信号発生方法。
【数4】
【請求項8】
前記合成信号と前記第1基本波信号との位相差をφ2とし、前記第3基本波信号の瞬時値をHwとする場合に、
前記第2ステップにおいて、予め用意された、前記第1信号の振幅値と前記第2信号の振幅値とが等しくなる振幅補正値に基づいて、前記第1信号の瞬時値と前記第2信号の瞬時値との少なくとも一方を補正し、
前記第4ステップにおいて、前記合成信号のノルム||Huv||と、前記位相差φ2と、前記偏角θとを下式(13)に代入することにより、前記第3基本波信号の瞬時値を算出する、請求項7に記載の三相信号発生方法。
【数5】
【請求項9】
前記第1信号の瞬時値と、前記第2信号の瞬時値と、前記第3基本波信号の瞬時値とに基づいて、前記第1信号及び前記第2信号に含まれる同相信号の瞬時値を算出する第5ステップと、
前記第1信号の瞬時値から前記同相信号の瞬時値を減算することにより、前記第1基本波信号の瞬時値を算出する第6ステップと、
前記第2信号の瞬時値から前記同相信号の瞬時値を減算することにより、前記第2基本波信号の瞬時値を算出する第7ステップと、
をさらに含む、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の三相信号発生方法。
【請求項10】
前記第1信号の瞬時値をHu’とし、前記第2信号の瞬時値をHv’とし、前記第3基本波信号の瞬時値をHwとし、前記同相信号の瞬時値をNとする場合に、前記第5ステップにおいて、下式(14)及び下式(15)に基づいて前記同相信号の瞬時値を算出する、請求項9に記載の三相信号発生方法。
【数6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相信号発生装置および三相信号発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転位置を正確に制御可能なモータとして、光学エンコーダ、レゾルバ等の絶対角位置センサを備える構成が知られる。しかし、絶対角位置センサは、大型、高コストである。そこで、特許文献1には、安価且つ小型の3つの磁気センサを用いて生成される三相信号に基づいてモータの回転位置を推定する方法が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の位置推定方法によると、3つの磁気センサを用いて回転位置の推定に必要な三相信号を生成するが、三相信号の生成をより安価且つ小型な装置構成で実現できる技術が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の三相信号発生装置における一つの態様は、回転する磁石に対向し、磁界強度を示す第1信号を出力する第1磁気センサと、前記磁石に対向し、前記第1信号に対して電気角で120°の位相遅れを有する第2信号を出力する第2磁気センサと、前記第1信号及び前記第2信号を処理する信号処理部と、を備える。前記信号処理部は、前記第1信号及び前記第2信号をデジタル変換することより、前記第1信号の瞬時値と前記第2信号の瞬時値とを取得する第1処理と、前記第1信号の瞬時値から前記第2信号の瞬時値を減算することにより、前記第1信号に含まれる第1基本波信号と前記第2信号に含まれる第2基本波信号との合成信号の瞬時値を算出する第2処理と、前記合成信号の瞬時値と予め用意された前記合成信号のノルムとに基づいて前記合成信号の偏角を算出する第3処理と、前記合成信号の偏角と、前記合成信号のノルムと、予め用意された前記合成信号と前記第1基本波信号との位相差とに基づいて、前記合成信号と直交関係にある第3基本波信号の瞬時値を算出する第4処理と、を実行する。
【0006】
本発明の三相信号発生方法における一つの態様は、回転する磁石に対向し、磁界強度を示す第1信号を出力する第1磁気センサと、前記磁石に対向し、第1信号に対して電気角で120°の位相遅れを有する第2信号を出力する第2磁気センサと、を用いる三相信号発生方法であって、前記第1信号及び前記第2信号をデジタル変換することより、前記第1信号の瞬時値と前記第2信号の瞬時値とを取得する第1ステップと、前記第1信号の瞬時値から前記第2信号の瞬時値を減算することにより、前記第1信号に含まれる第1基本波信号と前記第2信号に含まれる第2基本波信号との合成信号の瞬時値を算出する第2ステップと、前記合成信号の瞬時値と予め用意された前記合成信号のノルムとに基づいて前記合成信号の偏角を算出する第3ステップと、前記合成信号の偏角と、前記合成信号のノルムと、予め用意された前記合成信号と前記第1基本波信号との位相差とに基づいて、前記合成信号と直交関係にある第3基本波信号の瞬時値を算出する第4ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、2つの磁気センサを使って三相信号を生成可能な三相信号発生装置および三相信号発生方法が提供される。従って、3つの磁気センサを使用する従来技術と比較して、三相信号の生成をより安価且つ小型な装置構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における三相信号発生装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における三相信号発生装置の処理部が実行する信号生成処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1信号Hu’及び第2信号Hv’を複素平面上において回転するベクトルで表した図である。
【
図4】
図4は、複素平面上において第1信号Hu’のベクトルが1回転する間に得られる第1信号Hu’の波形データと、複素平面上において第2信号Hv’のベクトルが1回転する間に得られる第2信号Hv’の波形データとの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1基本波信号Huと第2基本波信号Hvとの合成信号Huvを複素平面上において回転するベクトルで表した図である。
【
図6】
図6は、複素平面上において第1信号Hu’及び第2信号Hv’のベクトルが1回転する間に得られる合成信号Huvの波形データの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、学習処理において第1信号Hu’と第2信号Hv’との位相差φ1を算出する方法に関する説明図である。
【
図8】
図8は、学習処理において合成信号Huvと第1信号Hu’との位相差φ2を算出する方法に関する説明図である。
【
図9】
図9は、合成信号Huvと第1基本波信号Huとの位相差は、合成信号Huvと第1信号Hu’との位相差φ2と等しいことを示す説明図である。
【
図10】
図10は、合成信号Huvの偏角ωt+φ2に関する説明図である。
【
図11】
図11は、合成信号Huvと直交関係にある第3基本波信号Hwを複素平面上において回転するベクトルで表した図である。
【
図12】
図12は、複素平面上において合成信号Huvのベクトルが1回転する間に得られる第3基本波信号Hwの波形データの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1基本波信号Huの波形データと、第2基本波信号Hvの波形データと、第3基本波信号Hwの波形データとの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における三相信号発生装置1の構成を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、三相信号発生装置1は、モータ100の回転位置(回転角)に応じて変化する磁界強度を示す三相の基本波信号を発生する装置である。本実施形態において三相の基本波信号とは、互いに電気角で120°の位相差を有する3つの基本波信号を意味する。
【0010】
本実施形態においてモータ100は、例えばインナーロータ型の三相ブラシレスDCモータである。モータ100は、ロータシャフト110と、センサマグネット120と、を有する。ロータシャフト110は、モータ100のロータに取り付けられる回転軸である。モータ100の回転位置とは、ロータシャフト110の回転位置を意味する。
【0011】
センサマグネット120は、ロータシャフト110に取り付けられ、ロータシャフト110に同期して回転する円板状の磁石である。センサマグネット120は、P個(Pは2以上の整数)の磁極対を有する。本実施形態では、一例として、センサマグネット120は、4つの磁極対を有する。なお、磁極対とは、N極とS極とのペアを意味する。すなわち、本実施形態においてセンサマグネット120は、N極とS極とのペアを4つ有し、計8つの磁極を有する。
【0012】
三相信号発生装置1は、第1磁気センサ10と、第2磁気センサ20と、信号処理部30と、を備える。
図1では図示を省略するが、モータ100には回路基板が装着されており、第1磁気センサ10、第2磁気センサ20及び信号処理部30は、回路基板上に配置される。センサマグネット120は、回路基板と干渉しない位置に配置される。センサマグネット120は、モータ100のハウジングの内部に配置されてもよいし、或いはハウジングの外部に配置されてもよい。
【0013】
第1磁気センサ10及び第2磁気センサ20は、回路基板上において、センサマグネット120に対向する状態で配置される。本実施形態において、第1磁気センサ10及び第2磁気センサ20は、回路基板上において、センサマグネット120の回転方向CWに沿って30°間隔で配置される。例えば、第1磁気センサ10及び第2磁気センサ20は、それぞれ、例えばホール素子、或いはリニアホールICなど、磁気抵抗素子を含めたアナログ出力タイプの磁気センサである。第1磁気センサ10及び第2磁気センサ20は、それぞれ、ロータシャフト110の回転位置、すなわちセンサマグネット120の回転位置に応じて変化する磁界強度を示すアナログ信号を出力する。
【0014】
第1磁気センサ10及び第2磁気センサ20から出力されるアナログ信号の電気角1周期は、機械角1周期の1/Pに相当する。本実施形態では、センサマグネット120の極対数Pが「4」なので、各アナログ信号の電気角1周期は、機械角1周期の1/4、すなわち機械角で90°に相当する。また、第2磁気センサ20から出力されるアナログ信号は、第1磁気センサ10から出力されるアナログ信号に対して電気角で120°の位相遅れを有する。
【0015】
以下では、第1磁気センサ10から出力されるアナログ信号を第1信号Hu’と呼称し、第2磁気センサ20から出力されるアナログ信号を第2信号Hv’と呼称する。第1磁気センサ10は、回転する磁石であるセンサマグネット120に対向し、磁界強度を示す第1信号Hu’を信号処理部30に出力する。第2磁気センサ20は、センサマグネット120に対向し、第1信号Hu’に対して電気角で120°の位相遅れを有する第2信号Hv’を信号処理部30に出力する。
【0016】
信号処理部30は、第1磁気センサ10から出力される第1信号Hu’と、第2磁気センサ20から出力される第2信号Hv’とを処理する信号処理回路である。信号処理部30は、第1信号Hu’及び第2信号Hv’に基づいて、センサマグネット120の回転位置に応じて変化する磁界強度を示す三相の基本波信号を生成する。信号処理部30は、処理部31と、記憶部32と、を備える。
【0017】
処理部31は、例えばMCU(Microcontroller Unit)などのマイクロプロセッサである。第1磁気センサ10から出力される第1信号Hu’と、第2磁気センサ20から出力される第2信号Hv’とは、処理部31に入力される。処理部31は、不図示の通信バスを介して記憶部32と通信可能に接続される。詳細は後述するが、処理部31は、記憶部32に予め記憶されるプログラムに従って信号生成処理を実行する。信号生成処理とは、第1信号Hu’及び第2信号Hv’に基づいて、三相の基本波信号を生成する処理である。
【0018】
記憶部32は、処理部31に各種処理を実行させるのに必要なプログラムおよび各種設定データなどを記憶する不揮発性メモリと、処理部31が各種処理を実行する際にデータの一時保存先として使用される揮発性メモリとを含む。不揮発性メモリは、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)又はフラッシュメモリなどである。揮発性メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)などである。
【0019】
次に、処理部31が実行する信号生成処理について説明する。
ロータシャフト110とともにセンサマグネット120が回転すると、センサマグネット120の回転位置に応じて変化する磁界強度を示す第1信号Hu’が第1磁気センサ10から出力され、第1信号Hu’に対して電気角で120°の位相遅れを有する第2信号Hv’が第2磁気センサ20から出力される。
【0020】
処理部31にはA/D変換器が内蔵されており、処理部31は、A/D変換器によって第1信号Hu’及び第2信号Hv’を所定のサンプリング周波数でデジタル変換する。処理部31は、デジタル変換の実行タイミング、すなわちサンプリングタイミングが到来するたびに、
図2のフローチャートで示される信号生成処理を実行する。
【0021】
図2に示すように、サンプリングタイミングが到来すると、処理部31は、上記のようにセンサマグネット120の回転に伴って処理部31に出力される第1信号Hu’及び第2信号Hv’をデジタル変換することにより、第1信号Hu’の瞬時値と、第2信号Hv’の瞬時値とをデジタル値として取得する(ステップS1)。このステップS1は第1ステップに相当し、ステップS1で実行される処理は第1処理に相当する。
【0022】
図3は、第1信号Hu’及び第2信号Hv’を複素平面上において回転するベクトルで表した図である。
図3において、横軸は実数軸であり、縦軸は虚数軸である。第1信号Hu’及び第2信号Hv’は、複素平面上において矢印の方向に角速度ωで回転する。
図3に示すように、第1信号Hu’は、基本波信号である第1基本波信号Huと、同相信号Nとを含む。第1信号Hu’は、第1基本波信号Huと同相信号Nとの合成ベクトルで表される。すなわち、第1信号Hu’は、下式(1)で表される。第2信号Hv’は、基本波信号である第2基本波信号Hvと、同相信号Nとを含む。第2信号Hv’は、第2基本波信号Hvと同相信号Nとの合成ベクトルで表される。すなわち、第2信号Hv’は、下式(2)で表される。同相信号Nは、直流信号および第3次高調波信号などを含むノイズ信号である。
【0023】
【0024】
ステップS1で取得される第1信号Hu’の瞬時値は、
図3においてベクトルで表される第1信号Hu’の実数部(実数軸に投影される部分)に相当する。同様に、ステップS1で取得される第2信号Hv’の瞬時値は、
図3においてベクトルで表される第2信号Hv’の実数部に相当する。例えば、第1信号Hu’の瞬時値は、下式(3)で表される。下式(3)において、||Hu’||は第1信号Hu’のノルムであり、kは1以上の整数である。
【0025】
【0026】
図4は、複素平面上において第1信号Hu’のベクトルが1回転する間に得られる第1信号Hu’の瞬時値の時系列データ(第1信号Hu’の波形データ)と、複素平面上において第2信号Hv’のベクトルが1回転する間に得られる第2信号Hv’の瞬時値の時系列データ(第2信号Hv’の波形データ)との一例を示す図である。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸はデジタル値を示す。
図4に示すように、同相信号Nを含む第1信号Hu’及び第2信号Hv’の波形は完全な正弦波形にならず、歪みを有する波形となる。
【0027】
図2に戻り、処理部31は、第1信号Hu’の瞬時値から第2信号Hv’の瞬時値を減算することにより、第1信号Hu’に含まれる第1基本波信号Huと第2信号Hv’に含まれる第2基本波信号Hvとの合成信号Huvの瞬時値を算出する(ステップS2)。このステップS2は第2ステップに相当し、ステップS2で実行される処理は第2処理に相当する。
【0028】
下式(4)に示すように、第1信号Hu’の瞬時値から第2信号Hv’の瞬時値を減算することにより、両信号に含まれる同相信号Nが相殺され、第1基本波信号Huと第2基本波信号Hvとの合成信号Huvの瞬時値が得られることがわかる。
図5は、第1基本波信号Huと第2基本波信号Hvとの合成信号Huvを複素平面上において回転するベクトルで表した図である。
図6は、複素平面上において第1信号Hu’及び第2信号Hv’のベクトルが1回転する間に得られる合成信号Huvの瞬時値の時系列データ(合成信号Huvの波形データ)の一例を示す図である。
図6に示すように、合成信号Huvの波形は、完全な正弦波形となる。
【0029】
【0030】
なお、ステップS2において、処理部31は、合成信号Huvの瞬時値を算出する前に、予め用意された振幅補正値に基づいて、第1信号Hu’の瞬時値と第2信号Hv’の瞬時値との少なくとも一方を補正する。振幅補正値とは、第1信号Hu’の振幅値と第2信号Hv’の振幅値とが等しくなる補正値である。振幅補正値は、事前に行われる学習処理によって得られる学習値の一つであり、予め記憶部32の不揮発性メモリに記憶されている。すなわち、ステップS2において、処理部31は、記憶部32の不揮発性メモリから振幅補正値を読み出し、読み出した振幅補正値に基づいて、第1信号Hu’の振幅値と第2信号Hv’の振幅値とが等しくなるように第1信号Hu’の瞬時値と第2信号Hv’の瞬時値との少なくとも一方を補正する。
【0031】
図2に戻り、処理部31は、合成信号Huvの瞬時値と予め用意された合成信号Huvのノルムとに基づいて、合成信号Huvの偏角を算出する(ステップS3)。このステップS3は第3ステップに相当し、ステップS3で実行される処理は第3処理に相当する。
【0032】
合成信号Huvのノルムは、上記の振幅補正値と同様に、事前に行われる学習処理によって得られる学習値の一つであり、予め記憶部32の不揮発性メモリに記憶されている。振幅補正値および合成信号Huvのノルムの他、合成信号Huvと第1基本波信号Huとの位相差も学習値として予め記憶部32の不揮発性メモリに記憶されている。以下では、事前に行われる学習処理について説明する。
【0033】
学習処理は、ロータシャフト110とともにセンサマグネット120が回転する状態で行われる。学習処理において、処理部31は、少なくとも第1信号Hu’及び第2信号Hv’の電気角1周期に相当する時間が経過するまで、つまり、少なくともセンサマグネット120が機械角で90°回転するまで、上記のステップS1及びステップS2の処理を所定のサンプリング周波数で繰り返す。言い換えれば、処理部31は、複素平面上において第1信号Hu’及び第2信号Hv’のベクトルが少なくとも1回転するまで、上記のステップS1及びステップS2の処理を所定のサンプリング周波数で繰り返す。
【0034】
これにより、処理部31は、第1信号Hu’の瞬時値と、第2信号Hv’の瞬時値と、合成信号Huvの瞬時値とを逐次取得し、過去の各瞬時値の最大値と現時刻(現在のサンプリングタイミング)の各瞬時値とを比較し、現時刻の各瞬時値が過去の各瞬時値の最大値より大きい場合に、過去の各瞬時値の最大値を現時刻の各瞬時値に更新する処理を行う。また、処理部31は、第1信号Hu’の瞬時値と、第2信号Hv’の瞬時値と、合成信号Huvの瞬時値とを逐次取得し、過去の各瞬時値の最小値と現時刻の各瞬時値とを比較し、現時刻の各瞬時値が過去の各瞬時値の最小値より小さい場合に、過去の各瞬時値の最小値を現時刻の各瞬時値に更新する処理を行う。
【0035】
処理部31は、上記のような逐次更新処理を行うことにより各信号の最大値及び最小値を取得する。そして、処理部31は、第1信号Hu’の最大値Max(Hu’)及び最小値Min(Hu’)を下式(5)に代入することにより、第1信号Hu’の振幅値であるノルム||Hu’||を算出する。処理部31は、第2信号Hv’の最大値Max(Hv’)及び最小値Min(Hv’)を下式(6)に代入することにより、第2信号Hv’の振幅値であるノルム||Hv’||を算出する。処理部31は、合成信号Huvの最大値Max(Huv)及び最小値Min(Huv)を下式(7)に代入することにより、合成信号Huvの振幅値であるノルム||Huv||を算出する。
【0036】
【0037】
処理部31は、第1信号Hu’のノルム||Hu’||と、第2信号Hv’のノルム||Hv’||とが等しくなる振幅補正値を算出する。処理部31は、第1信号Hu’の波形データに含まれる全ての瞬時値と、第2信号Hv’の波形データに含まれる全ての瞬時値との少なくとも一方を、振幅補正値によって補正する。これにより、振幅値(ノルム)が等しい第1信号Hu’の波形データと第2信号Hv’の波形データとが得られる。
【0038】
図7に示すように、処理部31は、振幅補正後の第1信号Hu’の波形データと第2信号Hv’の波形データとに基づいて、第1信号Hu’を基準として、第1信号Hu’と第2信号Hv’との位相差φ1(≒typ.-120°)を算出する。具体的には、
図7に示すように、処理部31は、第1信号Hu’の最大値Max(Hu’)と第2信号Hv’の最大値Max(Hv’)との間の時間を基準エンコーダなどでカウントし、カウント結果Nmaxを下式(8)に代入することで位相差φ1を算出する。または、処理部31は、第1信号Hu’の最小値Min(Hu’)と第2信号Hv’の最小値Min(Hv’)との間の時間を基準エンコーダなどでカウントし、カウント結果Nminを下式(9)に代入することで位相差φ1を算出してもよい。式(8)及び式(9)において、Ncprは、基準エンコーダの分解能である。なお、学習処理において、基準エンコーダは回転軸に予め取り付けられる。
【0039】
【0040】
図8に示すように、処理部31は、第1信号Hu’と第2信号Hv’との位相差φ1に基づいて、合成信号Huvと第1信号Hu’との位相差φ2(≒typ.+30°)を算出する。具体的には、処理部31は、第1信号Hu’と第2信号Hv’との位相差φ1を下式(10)に代入することにより、合成信号Huvと第1信号Hu’との位相差φ2を算出する。
【0041】
【0042】
図9に示すように、合成信号Huvと第1信号Hu’との位相差φ2は、合成信号Huvと第1基本波信号Huとの位相差と等しい。従って、処理部31は、合成信号Huvと第1信号Hu’との位相差φ2を、合成信号Huvと第1基本波信号Huとの位相差として取得する。上記のような学習処理によって、振幅補正値と、合成信号Huvのノルム||Huv||と、合成信号Huvと第1基本波信号Huとの位相差φ2とが学習値として得られる。処理部31は、これらの学習値を記憶部32の不揮発性メモリに格納する。
【0043】
以上が学習処理の説明であり、以下では
図2に戻って信号生成処理の説明を続ける。
図2のステップS3において、処理部31は、ステップS2で算出された合成信号Huvの瞬時値と、学習処理によって事前に得られた合成信号Huvのノルム||Huv||とに基づいて、合成信号Huvの偏角を算出する。
図10に示すように、合成信号Huvの偏角をωt+φ2とすると、合成信号Huvの瞬時値は下式(11)で表される。
【0044】
【0045】
そこで、処理部31は、ステップS3において、下式(12)に基づいて合成信号Huvの偏角ωt+φ2を算出する。すなわち、処理部31は、記憶部32の不揮発性メモリから合成信号Huvのノルム||Huv||を読み出し、読み出した合成信号Huvのノルム||Huv||と、ステップS2で算出された合成信号Huvの瞬時値とを下式(12)に代入することにより、合成信号Huvの偏角ωt+φ2を算出する。
【0046】
ただし、式(12)によって得られる合成信号Huvの偏角ωt+φ2は、0°以上且つ180°以下の値に制限される。そのため、偏角ωt+φ2のサイン値は、0以上且つ1以下の正極性の値に制限される。そこで、本実施形態において処理部31は、算出された偏角ωt+φ2を拡張処理することにより、-180°以上且つ180°未満の範囲に含まれる偏角θを取得する。これにより、偏角θのサイン値は、-1以上且つ1以下の範囲内で正極性及び負極性の両方の値を取り得る。
【0047】
【0048】
そして、処理部31は、合成信号Huvの偏角θと、合成信号Huvのノルム||Huv||と、予め用意された合成信号Huvと第1基本波信号Huとの位相差φ2とに基づいて、合成信号Huvと直交関係にある第3基本波信号Hwの瞬時値を算出する(ステップS4)。このステップS4は第4ステップに相当し、ステップS4で実行される処理は第4処理に相当する。
【0049】
図11は、合成信号Huvと直交関係にある第3基本波信号Hwを複素平面上において回転するベクトルで表した図である。振幅補正により、第1信号Hu’の振幅値(||Hu’||)と第2信号Hv’の振幅値(||Hv’||)とが等しいという条件が成立する場合、第1基本波信号Huの振幅値(||Hu||)と第2基本波信号Hvの振幅値(||Hv||)とが等しくなる。この場合、合成信号Huvのノルム||Huv||と、第3基本波信号Hwのノルム||Hw||との比は、1/2sin(φ2)となる。従って、合成信号Huvと直交関係にある第3基本波信号Hwの瞬時値は、下式(13)で表される。
【0050】
ステップS4において、処理部31は、記憶部32の不揮発性メモリから合成信号Huvのノルム||Huv||と位相差φ2とを読み出し、これら合成信号Huvのノルム||Huv||及び位相差φ2と、ステップS3で取得した偏角θとを下式(13)に代入することにより、第3基本波信号Hwの瞬時値を算出する。
図12は、複素平面上において合成信号Huvのベクトルが1回転する間に得られる第3基本波信号Hwの瞬時値の時系列データ(第3基本波信号Hwの波形データ)の一例を示す図である。
図12に示すように、第3基本波信号Hwの波形は、合成信号Huv、第1基本波信号Hu及び第2基本波信号Hvの波形と同様に、完全な正弦波形となる。
【0051】
【0052】
図2に戻り、処理部31は、第1信号Hu’の瞬時値と、第2信号Hv’の瞬時値と、第3基本波信号Hwの瞬時値とに基づいて、第1信号Hu’及び第2信号Hv’に含まれる同相信号Nの瞬時値を算出する(ステップS5)。このステップS5は第5ステップに相当し、ステップS5で実行される処理は第5処理に相当する。具体的には、ステップS5において、処理部31は、下式(14)及び下式(15)に基づいて同相信号Nの瞬時値を算出する。
【0053】
【0054】
ステップS5において、処理部31は、まず、第1信号Hu’の瞬時値と第2信号Hv’の瞬時値とを上式(14)に代入することにより、第3信号Hw’の瞬時値を算出する。第3信号Hw’は、第1信号Hu’及び第2信号Hv’とともに三相平衡式(Hu’+Hv’+Hw’=0)を満たす信号である。言い換えれば、第3信号Hw’は、第1信号Hu’に対して電気角で240°の位相遅れを有し、第2信号Hv’に対して電気角で120°の位相遅れを有する信号である。
【0055】
図11に示すように、第3信号Hw’を複素平面上において回転するベクトルで表したとき、第3信号Hw’は、第3基本波信号Hwのベクトルと、同相信号Nの負の2倍のベクトルとを合成したベクトル(Hw’=Hw-2N)で表される。従って、同相信号Nは、上式(15)で表すことができる。ステップS5において、処理部31は、式(14)により算出した第3信号Hw’の瞬時値と、ステップS4で算出した第3基本波信号Hwの瞬時値とを式(15)に代入することにより、同相信号Nの瞬時値を算出する。
図12に、第3信号Hw’の波形及び同相信号Nの波形の一例を示す。
【0056】
図2に戻り、処理部31は、第1信号Hu’の瞬時値から同相信号Nの瞬時値を減算することにより、第1基本波信号Huの瞬時値を算出する(ステップS6)。このステップS6は第6ステップに相当し、ステップS6で実行される処理は第6処理に相当する。上式(1)を参照すれば、第1信号Hu’の瞬時値から同相信号Nの瞬時値を減算することにより、第1基本波信号Huの瞬時値を算出できることは容易に理解できるであろう。
【0057】
最後に、処理部31は、第2信号Hv’の瞬時値から同相信号Nの瞬時値を減算することにより、第2基本波信号Hvの瞬時値を算出する(ステップS7)。このステップS7は第7ステップに相当し、ステップS7で実行される処理は第7処理に相当する。上式(2)を参照すれば、第2信号Hv’の瞬時値から同相信号Nの瞬時値を減算することにより、第2基本波信号Hvの瞬時値を算出できることは容易に理解できるであろう。
【0058】
上記のようなステップS1からステップS7までの処理を含む信号生成処理が、サンプリングタイミングが到来するたびに処理部31によって実行される。その結果、
図13に示すように、第1基本波信号Huの瞬時値の時系列データ(第1基本波信号Huの波形データ)と、第2基本波信号Hvの瞬時値の時系列データ(第2基本波信号Hvの波形データ)と、第3基本波信号Hwの瞬時値の時系列データ(第3基本波信号Hwの波形データ)とが得られる。
図13に示すように、第1基本波信号Hu、第2基本波信号Hv及び第3基本波信号Hwの波形は、完全な正弦波形となる。また、第1基本波信号Hu、第2基本波信号Hv及び第3基本波信号Hwは、互いに電気角で120°の位相差を有する。
【0059】
以上のように、本実施形態の三相信号発生装置1は、第1磁気センサ10及び第2磁気センサ20の2つの磁気センサを用いて、モータ100の回転位置に応じて変化する磁界強度を示す三相の基本波信号を発生することができる。従って、3つの磁気センサを使用する従来技術と比較して、三相信号の生成をより安価且つ小型な装置構成で実現できる。
【0060】
本実施形態の三相信号発生装置は、回転する磁石に対向し、磁界強度を示す第1信号を出力する第1磁気センサと、第1信号に対して電気角で120°の位相遅れを有する第2信号を出力する第2磁気センサと、第1信号及び第2信号を処理する信号処理部と、を備える。信号処理部は、第1信号の瞬時値と第2信号の瞬時値とを取得する第1処理と、第1信号の瞬時値から第2信号の瞬時値を減算することにより、第1信号に含まれる第1基本波信号と第2信号に含まれる第2基本波信号との合成信号の瞬時値を算出する第2処理と、合成信号の瞬時値と予め用意された合成信号のノルムとに基づいて合成信号の偏角を算出する第3処理と、合成信号の偏角と、合成信号のノルムと、予め用意された合成信号と第1基本波信号との位相差とに基づいて、合成信号と直交関係にある第3基本波信号の瞬時値を算出する第4処理と、を実行する。
これにより、2つの磁気センサによって得られる二相の信号(第1信号及び第2信号)から、同相信号を含まない三相目の信号(第3基本波信号)を生成することができる。従って、3つの磁気センサを使用する従来技術と比較して、三相信号の生成をより安価且つ小型な装置構成で実現できる。
【0061】
本実施形態の信号処理部は、第3処理において、式(12)に基づいて合成信号の偏角ωt+φ2を算出し、算出された偏角ωt+φ2を拡張処理することにより、-180°以上且つ180°未満の範囲に含まれる偏角θを取得する。
これにより、処理負荷の小さい簡易な数式によって、合成信号の瞬時値及びノルムから合成信号の偏角ωt+φ2を算出できる。なお、式(12)に基づいて合成信号の偏角ωt+φ2を算出する際に、テーブル値を用いた補間処理によって合成信号の偏角ωt+φ2を算出してもよい。また、算出された偏角ωt+φ2を拡張処理して、-180°以上且つ180°未満の範囲に含まれる偏角θを取得することにより、偏角θのサイン値は、-1以上且つ1以下の範囲内で正極性及び負極性の両方の値を取ることができるため、第4処理によって生成される第3基本波信号の波形を完全な正弦波形にすることができる。
【0062】
本実施形態の信号処理部は、第2処理において、予め用意された、第1信号の振幅値と第2信号の振幅値とが等しくなる振幅補正値に基づいて、第1信号の瞬時値と第2信号の瞬時値との少なくとも一方を補正し、信号処理部は、第4処理において、合成信号のノルム||Huv||と、位相差φ2と、偏角θとを式(13)に代入することにより、第3基本波信号の瞬時値を算出する。
これにより、処理負荷の小さい簡易な数式によって、合成信号のノルム及び偏角と、合成信号と第1基本波信号との位相差とから、合成信号と直交関係にある第3基本波信号の瞬時値を算出できる。
【0063】
本実施形態の信号処理部は、第1信号の瞬時値と第2信号の瞬時値と第3基本波信号の瞬時値とに基づいて同相信号の瞬時値を算出する第5処理と、第1信号の瞬時値から同相信号の瞬時値を減算することにより、第1基本波信号の瞬時値を算出する第6処理と、第2信号の瞬時値から同相信号の瞬時値を減算することにより、第2基本波信号の瞬時値を算出する第7処理と、をさらに実行する。
これにより、第1信号から正弦波形を有する第1基本波信号を抽出でき、第2信号から正弦波形を有し且つ第1基本波信号に対して電気角で120°の位相遅れを有する第2基本波信号を抽出することができる。
【0064】
本実施形態の信号処理部は、第5処理において、式(14)及び式(15)に基づいて同相信号の瞬時値を算出する。
これにより、処理負荷の小さい簡易な数式によって、第1信号及び第2信号から同相信号を抽出できる。
【0065】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されず、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
例えば、上記実施形態では、モータと三相信号発生装置との組み合わせを例示したが、本発明はこの形態に限定されず、回転軸に取り付けられたセンサマグネットと三相信号発生装置との組み合わせもあり得る。
上記実施形態では、回転軸の軸方向において、第1磁気センサ及び第2磁気センサが、円板状のセンサマグネットに対向する状態で配置される形態を例示したが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、円板状のセンサマグネットの代わりにリング状磁石を用いる場合、リング状磁石の半径方向に磁束が流入するため、リング状磁石の半径方向において、第1磁気センサ及び第2磁気センサが、リング状磁石と対向する状態で配置されてもよい。
例えば、上記実施形態では、回転する磁石として、モータ100のロータシャフト110に取り付けられるセンサマグネット120を使用する場合を例示したが、モータ100のロータに取り付けられるロータマグネットを、回転する磁石として用いてもよい。ロータマグネットもロータシャフト110に同期して回転する磁石である。
【0066】
上記実施形態では、センサマグネット120が4つの磁極対を有する場合を例示したが、センサマグネット120の極対数は4つに限定されない。回転する磁石としてロータマグネットを用いる場合も同様に、ロータマグネットの極対数は4つに限定されない。
【符号の説明】
【0067】
1…三相信号発生装置、10…第1磁気センサ、20…第2磁気センサ、30…信号処理部、31…処理部、32…記憶部、100…モータ、110…ロータシャフト、120…センサマグネット(磁石)