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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B66B5/02 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023516014
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2021016500
(87)【国際公開番号】W WO2022224453
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國武 和広
(72)【発明者】
【氏名】大野 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智史
(72)【発明者】
【氏名】宮野 一輝
(72)【発明者】
【氏名】大森 陽太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 平
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/106707(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/134891(WO,A1)
【文献】特開2011-121736(JP,A)
【文献】特開2019-043696(JP,A)
【文献】特開2009-220994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を移動するかごと、
前記昇降路が形成された建物内に設けられ、第1基準値より大きい加速度を検出すると第1信号を出力し、第2基準値より大きい加速度を検出すると第2信号を出力する地震感知器と、
前記昇降路又は前記昇降路の上方の機械室に設けられ、加速度を検出する加速度センサと、
前記地震感知器から前記第2信号が出力されずに前記第1信号が出力されると、地震後の診断運転を行う運転制御手段と、
前記地震感知器から前記第2信号が出力されると、前記加速度センサが検出した加速度が判定基準値以下であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記建物が存在する地域の震度情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した震度情報が示す震度が基準震度以下であるか否かを判定する第2判定手段と、
を備え、
前記第2基準値は前記第1基準値より大きく、
前記判定基準値は前記第2基準値より大きく、
前記運転制御手段は、前記加速度センサが検出した加速度が前記判定基準値以下であることを前記第1判定手段が判定し且つ前記取得手段が取得した震度情報が示す震度が前記基準震度以下であることを前記第2判定手段が判定すると、地震後の診断運転を開始するエレベーターシステム。
【請求項2】
前記第1判定手段、前記取得手段、及び前記第2判定手段を備えたサーバと、
前記サーバと通信するための第1通信手段と、
を更に備え、
前記第1通信手段は、前記地震感知器から前記第2信号が出力されると、前記加速度センサが検出した加速度の情報を含む地震発生信号を前記サーバに送信し、
前記サーバは、第2通信手段を更に備え、
前記第2通信手段は、前記加速度センサが検出した加速度が前記判定基準値以下であることを前記第1判定手段が判定し且つ前記取得手段が取得した震度情報が示す震度が前記基準震度以下であることを前記第2判定手段が判定すると、前記地震発生信号の応答として開始許可信号を送信し、
前記運転制御手段は、前記第1通信手段が前記開始許可信号を受信すると、地震後の診断運転を開始する請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記サーバは、記憶部を更に備え、
前記記憶部に、特定のオプション契約が結ばれているエレベーター装置の情報が記憶され、
前記第2通信手段は、前記地震発生信号を送信した前記第1通信手段を有するエレベーター装置が、前記オプション契約が結ばれているエレベーター装置として前記記憶部に記憶されていなければ、前記開始許可信号を送信しない請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
前記かごを駆動するための巻上機と、
前記運転制御手段を備えた制御装置と、
前記加速度センサ及び前記第1通信手段を備えた監視装置と、
を更に備え、
前記巻上機、前記制御装置、及び前記監視装置は、前記昇降路の頂部に設けられ、
前記地震感知器は、前記昇降路のピットに設けられた請求項2又は請求項3に記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
前記運転制御手段は、
前記地震感知器から前記第2信号が出力された場合に行う診断運転では、第1速度、前記第1速度より大きい第2速度、及び前記第2速度より大きい第3速度で前記かごを移動させ、
前記地震感知器から前記第2信号が出力されずに前記第1信号が出力された場合に行う診断運転では、前記第2速度及び前記第3速度で前記かごを移動させる請求項1から請求項4の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
前記判定基準値は、380Galから520Galの範囲に含まれる値である請求項1から請求項5の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
前記判定基準値は、450Galから520Galの範囲に含まれる値である請求項1から請求項5の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーターシステムが記載されている。特許文献1に記載されたシステムは、地震感知器を備える。地震感知器が出力した最大加速度が一般基準値以下であれば、診断運転が行われる。地震感知器が出力した最大加速度が一般基準値を超える場合であっても、当該加速度に基づく数値が個別基準を満たす場合は、診断運転が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/134891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシステムでは、個別基準をエレベーター装置毎に設定しなければならない。個別基準の判断が困難であり、エレベーター装置への展開が難しいといった問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、特定の基準値より大きな加速度が検出された場合でも診断運転を行うこと可能であり、且つ展開が容易なエレベーターシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターシステムは、昇降路を移動するかごと、昇降路が形成された建物内に設けられ、第1基準値より大きい加速度を検出すると第1信号を出力し、第2基準値より大きい加速度を検出すると第2信号を出力する地震感知器と、昇降路又は昇降路の上方の機械室に設けられ、加速度を検出する加速度センサと、地震感知器から第2信号が出力されずに第1信号が出力されると、地震後の診断運転を行う運転制御手段と、地震感知器から第2信号が出力されると、加速度センサが検出した加速度が判定基準値以下であるか否かを判定する第1判定手段と、建物が存在する地域の震度情報を取得する取得手段と、取得手段が取得した震度情報が示す震度が基準震度以下であるか否かを判定する第2判定手段と、を備える。第2基準値は第1基準値より大きい。判定基準値は第2基準値より大きい。運転制御手段は、加速度センサが検出した加速度が判定基準値以下であることを第1判定手段が判定し且つ取得手段が取得した震度情報が示す震度が基準震度以下であることを第2判定手段が判定すると、地震後の診断運転を開始する。

【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエレベーターシステムであれば、特定の基準値より大きな加速度が検出された場合でも診断運転を行うこと可能である。また、本システムは展開が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるエレベーターシステムの例を示す図である。
図2】エレベーターシステムが有する機能を説明するための図である。
図3】エレベーター装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】エレベーター装置の動作例を示すフローチャートである。
図5】サーバの動作例を示すフローチャートである。
図6】サーバの他の動作例を示すフローチャートである。
図7】サーバのハードウェア資源の例を示す図である。
図8】サーバのハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベーターシステムの例を示す図である。図2は、エレベーターシステムが有する機能を説明するための図である。
【0011】
エレベーターシステムは、特定の建物に据え付けられたエレベーター装置1を備える。当該建物に昇降路2が形成される。エレベーター装置1は、かご3及びつり合いおもり4を備える。かご3は、昇降路2を上下に移動する。つり合いおもり4は、昇降路2を上下に移動する。かご3及びつり合いおもり4は、ロープ5によって昇降路2に吊り下げられる。
【0012】
ロープ5は、巻上機6に巻き掛けられる。巻上機6は、かご3を駆動する。制御装置7は、巻上機6を制御する。即ち、かご3の移動は、制御装置7によって制御される。図1は、2:1ローピング方式のエレベーター装置1を好適な例として示す。図1に示す例では、巻上機6及び制御装置7は、昇降路2の頂部に設けられる。巻上機6及び制御装置7は、昇降路2のピットに設けられても良い。昇降路2の上方に機械室がある場合、巻上機6及び制御装置7は、機械室に設けられても良い。
【0013】
監視装置8は、制御装置7に接続される。図1に示す例では、監視装置8は昇降路2の頂部に設けられる。監視装置8は、昇降路2のピット或いは機械室に設けられても良い。監視装置8は、ネットワーク9を介して外部機器と通信する。当該外部機器に、サーバ10が含まれる。一例として、サーバ10は、エレベーター装置1を管理する遠隔の情報センターに備えられる。
【0014】
当該建物に地震感知器11が設けられる。図1は、地震感知器11が昇降路2のピットに設けられる例を示す。地震感知器11は、監視装置8に接続される。地震感知器11は、制御装置7に接続されても良い。
【0015】
地震感知器11は、建物の加速度を検出する。地震感知器11は、特定の第1基準値より大きい加速度を検出すると、監視装置8に対して信号s1を出力する。第1基準値は予め設定される。地震感知器11は、特定の第2基準値より大きい加速度を検出すると、監視装置8に対して信号s2を出力する。第2基準値は、第1基準値より大きい。第2基準値は予め設定される。
【0016】
地震感知器11は、特定のP波基準値より大きい加速度を検出した場合に、監視装置8に対して信号spを出力しても良い。P波基準値は、第1基準値より小さい。P波基準値は予め設定される。例えば、建物に第1基準値より大きく第2基準値より小さい加速度が発生すると、地震感知器11から信号sp及び信号s1が出力される。
【0017】
制御装置7は、運転制御部21、及び異常検出部22を備える。運転制御部21は、通常運転、及び診断運転を制御する。通常運転は、登録された呼びにかご3を順次応答させるための運転である。診断運転は、地震の後に必要に応じて行われる。診断運転は、地震が発生した後、エレベーター装置1を通常運転に復帰させるために必要な診断を行う運転である。
【0018】
監視装置8は、加速度センサ30、地震判定部31、及び通信部32を備える。加速度センサ30は、加速度を検出する。エレベーター装置1は、監視装置8の通信部32によってサーバ10と通信する。サーバ10は、記憶部40、第1判定部41、第2判定部42、取得部43、及び通信部44を備える。
【0019】
以下に、図3から図5も参照し、本エレベーターシステムが有する機能について詳しく説明する。図3及び図4は、エレベーター装置1の動作例を示すフローチャートである。図3及び図4は一連の動作を示す。
【0020】
エレベーター装置1では、運転制御部21が通常運転を行う(S101)。通常運転では、登録された呼びにかご3が順次応答する。
【0021】
通常運転が行われている間、地震判定部31は、地震が発生したか否かを判定する。例えば、地震判定部31は、地震感知器11から信号spを受信したか否かを判定する(S102)。地震感知器11がP波基準値より大きい加速度を検出していなければ、地震感知器11から信号spは出力されない。かかる場合、S102でNoと判定される。S102でNoと判定されると、運転制御部21は通常運転を行う。
【0022】
地震感知器11がP波基準値より大きい加速度を検出すると、地震感知器11から信号spが出力される。これにより、S102でYesと判定される。S102でYesと判定されると、地震判定部31は、地震感知器11から信号s1を受信したか否かを判定する(S103)。
【0023】
地震感知器11がP波基準値より大きく第1基準値より小さい加速度を検出すると、地震感知器11から信号spのみが出力される。かかる場合、S103でNoと判定される。S103でNoと判定されると、運転制御部21は、かご3を一定時間だけ停止させる(S104)。上記一定時間が経過すると、地震感知器11が自動的にリセットされる(S105)。S105で地震感知器11がリセットされると、運転制御部21は通常運転を再開する。
【0024】
地震感知器11が第1基準値より大きい加速度を検出すると、地震感知器11から信号sp及び信号s1が出力される。これにより、S103でYesと判定される。S103でYesと判定されると、地震判定部31は、地震感知器11から信号s2を受信したか否かを判定する(S106)。
【0025】
地震感知器11が第1基準値より大きく第2基準値より小さい加速度を検出すると、地震感知器11から信号sp及び信号s1のみが出力される。地震感知器11から信号s2は出力されない。かかる場合、S106でNoと判定される。S106でNoと判定されると、運転制御部21は診断運転を行う(S107)。一例として、診断運転は、かご3内の乗客を救出するための管制運転が終了した後に一定の条件が成立すると自動的に開始される。
【0026】
診断運転では、診断に必要な各種データが取得される。また、診断運転では、異常が検出されたか否かが判定される(S108)。異常検出部22は、取得されたデータに基づいて異常を検出する。運転制御部21は、異常検出部22が異常を検出すると(S108のYes)、運転を休止する(S109)。かかる場合、専門の技術者による確認作業が終了しなければ、通常運転への復帰は行われない。
【0027】
異常検出部22が異常を検出することなく診断運転が終了すると(S108のNo)、エレベーター装置1は仮復旧する(S110)。仮復旧では、運転制御部21は、登録された呼びにかご3を順次応答させる運転を行う。このため、エレベーター装置が仮復旧すると、乗客は、かご3に乗って目的階に行くことができる。更に、仮復旧では、仮復旧であることを示す特定の表示が乗場12で行われる。乗客は、当該表示を見ることにより、完全な復旧ではないことを知ることができる。その後、専門の技術者による確認作業が終了すると、エレベーター装置1は本復旧する。即ち、通常運転が再開される。
【0028】
一方、地震感知器11が第2基準値より大きい加速度を検出すると、地震感知器11から信号sp、信号s1、及び信号s2が出力される。これにより、S106でYesと判定される。S106でYesと判定されると、通信部32は、地震発生信号をサーバ10に送信する(S111)。地震発生信号には、加速度センサ30によって検出された加速度の情報が含まれる。
【0029】
図5は、サーバ10の動作例を示すフローチャートである。サーバ10では、地震発生信号を受信したか否かが判定される(S201)。S111で監視装置8から送信された地震発生信号をサーバ10の通信部44が受信すると、S201でYesと判定される。即ち、地震感知器11から信号s2が出力されると、S201でYesと判定される。
【0030】
上述したように、地震発生信号には、地震発生時に加速度センサ30によって検出された加速度の情報が含まれる。S201でYesと判定されると、第1判定部41は、加速度センサ30によって検出された加速度が判定基準値以下であるか否かを判定する(S202)。判定基準値は、第2基準値より大きい。判定基準値は予め設定される。加速度センサ30によって検出された加速度が判定基準値以下であれば、第1判定部41は、S202でYesと判定する。
【0031】
なお、従来では、震度5強に相当する加速度が検出されると診断運転は行われていなかった。しかし、出願人の調査によれば、昇降路2の頂部に設置された加速度センサで検出された加速度が240Galから520Galの範囲(震度5強相当)であれば、エレベーター装置1に損傷は殆ど見られないことが判明した。診断運転を行う範囲を拡大するため、判定基準値は、240Galから520Galの範囲に含まれる値であることが好ましい。診断運転を行う範囲を拡大するため、判定基準値は、240Galから520Galの上位50%の範囲、即ち、380Galから520Galの範囲に含まれる値であれば更に好ましい。判定基準値は、240Galから520Galの上位25%の範囲、即ち、450Galから520Galの範囲に含まれる値であれば更に好ましい。
【0032】
また、S201でYesと判定されると、取得部43は、当該建物が存在する地域の震度情報を取得する(S203)。震度情報は、地震による揺れの強さ(震度)を示す情報である。日本であれば、震度は、震度0から震度7までの10段階で表される。取得部43は、気象庁等の外部の機関からその地域の震度情報を取得する。
【0033】
次に、第2判定部42は、取得部43がS203で取得した震度情報が示す震度が特定の基準震度以下であるか否かを判定する(S204)。基準震度は予め設定される。判定基準値が240Galから520Galの範囲に含まれる値である場合、基準震度は震度5強であることが好ましい。取得部43が取得した震度情報が示す震度が基準震度以下であれば、第2判定部42は、S204でYesと判定する。
【0034】
S202の判定は、S204の判定より先に行われても良い。S202及びS204の双方でYesと判定されると、通信部44は、S201で受信した地震発生信号の応答として監視装置8に開始許可信号を送信する(S205)。
【0035】
一方、加速度センサ30によって検出された加速度が判定基準値より大きければ、第1判定部41は、S202でNoと判定する。取得部43が取得した震度情報が示す震度が基準震度より大きければ、第2判定部42は、S204でNoと判定する。S202又はS204の少なくとも一方でNoと判定されると、通信部44は、S201で受信した地震発生信号の応答として監視装置8に開始不許可信号を送信する(S206)。
【0036】
監視装置8では、図4に示すように、S111で通信部32から地震発生信号が送信されると、その応答としてサーバ10から開始許可信号を受信したか否かが判定される(S112)。また、監視装置8では、サーバ10から開始許可信号を受信していなければ(S112のNo)、地震発生信号の応答としてサーバ10から開始不許可信号を受信したか否かが判定される(S113)。
【0037】
S205でサーバ10から送信された開始許可信号を通信部32が受信すると、S112でYesと判定される。即ち、S202及びS204の双方でYesと判定されると、S112でYesと判定される。S112でYesと判定されると、運転制御部21は診断運転を開始する(S114)。
【0038】
S114で診断運転が開始された後のS115からS117に示す処理は、S107で診断運転が開始された後のS108からS110に示す処理と同様である。即ち、診断運転では、異常が検出されたか否かが判定される(S115)。異常検出部22が異常を検出すると(S115のYes)、運転制御部21は運転を休止する(S116)。かかる場合、専門の技術者による確認作業が終了しなければ、通常運転への復帰は行われない。
【0039】
異常検出部22が異常を検出することなく診断運転が終了すると(S115のNo)、エレベーター装置1は仮復旧する(S117)。仮復旧では、運転制御部21は、登録された呼びにかご3を順次応答させる運転を行う。また、仮復旧では、仮復旧であることを示す特定の表示が乗場12で行われる。その後、専門の技術者による確認作業が終了すると、エレベーター装置1は本復旧する。即ち、通常運転が再開される。
【0040】
一方、S206でサーバ10から送信された開始不許可信号を通信部32が受信すると、S113でYesと判定される。即ち、S202又はS204の少なくとも一方でNoと判定されると、S113でYesと判定される。S113でYesと判定されると、運転制御部21は運転を休止する(S116)。このため、S113でYesと判定されると、運転制御部21は診断運転を開始しない。かかる場合、専門の技術者による確認作業が終了しなければ、通常運転への復帰は行われない。
【0041】
本実施の形態に示す例であれば、地震感知器11が第2基準値より大きい加速度を検出した場合であっても、診断運転を行うことが可能である。また、地震感知器11から信号s2が出力された場合は、S202及びS204の双方でYesと判定されると、診断運転が開始される。診断運転を開始する条件をエレベーター装置毎に個別に設定する必要はなく、本システムの展開を容易に行うことができる。
【0042】
以下に、本エレベーターシステムが採用可能な他の機能について説明する。
【0043】
運転制御部21は、S114において、S107で行う診断運転の内容と異なる内容の診断運転を行っても良い。例えば、運転制御部21は、S114で診断運転を行う場合、最初にかご3を第1速度で移動させる。第1速度でかご3を移動させて異常が検出されなければ、運転制御部21は、次にかご3を第2速度で移動させる。第2速度は、第1速度より大きい。
【0044】
第2速度でかご3を移動させて異常が検出されなければ、運転制御部21は、最後にかご3を第3速度で移動させる。第3速度は、第2速度より大きい。第3速度でかご3を移動させて異常が検出されなければ、S115においてNoと判定される。即ち、S114で行われる診断運転では、運転制御部21は、かご3を3段階の速度で移動させる。
【0045】
一方、運転制御部21は、S107で診断運転を行う場合、最初にかご3を第2速度で移動させる。第2速度でかご3を移動させて異常が検出されなければ、運転制御部21は、次にかご3を第3速度で移動させる。第3速度でかご3を移動させて異常が検出されなければ、S108においてNoと判定される。即ち、運転制御部21は、S107で行われる診断運転では、かご3を2段階の速度で移動させても良い。
【0046】
図6は、サーバ10の他の動作例を示すフローチャートである。図6に示す動作フローは、図5に示す動作フローにS207に示す処理を追加したものに相当する。図6に示す例では、サーバ10の記憶部40に、特定のオプション契約が結ばれている複数のエレベーター装置の情報が記憶される。
【0047】
S201でYesと判定されると、サーバ10では、地震発生信号を送信した通信部32を有するエレベーター装置1が、上記オプション契約が結ばれているエレベーター装置として記憶部40に記憶されているか否かが判定される(S207)。図6に示す例では、エレベーター装置1が、上記オプション契約が結ばれているエレベーター装置として記憶部40に記憶されていなければ(S207のNo)、監視装置8に開始許可信号は送信されない。S206において、監視装置8に対して開始不許可信号が送信される。S207、S202、及びS204の全てにおいてYesと判定されると、S205において開始許可信号が送信される。
【0048】
本実施の形態において、符号40~44に示す各部は、サーバ10が有する機能を示す。図7は、サーバ10のハードウェア資源の例を示す図である。サーバ10は、ハードウェア資源として、プロセッサ51とメモリ52とを含む処理回路50を備える。サーバ10は、メモリ52に記憶されたプログラムをプロセッサ51によって実行することにより、符号41~44に示す各部の機能を実現する。記憶部40の機能はメモリ52によって実現される。メモリ52として、半導体メモリ等が採用できる。
【0049】
図8は、サーバ10のハードウェア資源の他の例を示す図である。図8に示す例では、サーバ10は、プロセッサ51、メモリ52、及び専用ハードウェア53を含む処理回路50を備える。図8は、サーバ10が有する機能の一部を専用ハードウェア53によって実現する例を示す。サーバ10が有する機能の全部を専用ハードウェア53によって実現しても良い。専用ハードウェア53として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【0050】
監視装置8のハードウェア資源は、図7或いは図8に示す例と同様である。監視装置8は、ハードウェア資源として、プロセッサとメモリとを含む処理回路を備える。監視装置8は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、符号31及び32に示す各部の機能を実現する。監視装置8は、ハードウェア資源として、プロセッサ、メモリ、及び専用ハードウェアを含む処理回路を備えても良い。監視装置8が有する機能の一部或いは全部を専用ハードウェアによって実現しても良い。
【0051】
制御装置7のハードウェア資源は、図7或いは図8に示す例と同様である。制御装置7は、ハードウェア資源として、プロセッサとメモリとを含む処理回路を備える。制御装置7は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、符号21及び22に示す各部の機能を実現する。制御装置7は、ハードウェア資源として、プロセッサ、メモリ、及び専用ハードウェアを含む処理回路を備えても良い。制御装置7が有する機能の一部或いは全部を専用ハードウェアによって実現しても良い。
【0052】
なお、サーバ10が有する機能の一部又は全部は、エレベーター装置1が備えても良い。例えば、サーバ10が有する機能の一部を監視装置8が備えても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示に係るエレベーターシステムは、地震後に診断運転を行うシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 エレベーター装置、 2 昇降路、 3 かご、 4 つり合いおもり、 5 ロープ、 6 巻上機、 7 制御装置、 8 監視装置、 9 ネットワーク、 10 サーバ、 11 地震感知器、 12 乗場、 21 運転制御部、 22 異常検出部、 30 加速度センサ、 31 地震判定部、 32 通信部、 40 記憶部、 41 第1判定部、 42 第2判定部、 43 取得部、 44 通信部、 50 処理回路、 51 プロセッサ、 52 メモリ、 53 専用ハードウェア
図1
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図8