(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】炭化物製造システム及び炭化物製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 49/20 20060101AFI20240214BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C10B49/20
C10B53/00 A
(21)【出願番号】P 2023553093
(86)(22)【出願日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2023015778
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022102517
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】成澤 道則
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-070234(JP,A)
【文献】特開2008-088310(JP,A)
【文献】特開2007-136396(JP,A)
【文献】特開2006-124496(JP,A)
【文献】特開2011-184567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 47/22
C10B 49/20
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バイオマスを供給する第1バイオマス供給口を有し、前記第1バイオマスを空気で燃焼する燃焼室を含む燃焼炉と、
前記燃焼炉と接続され、第2バイオマスから連続的に生成された炭化物を回収する炭化物回収装置と、
を備え、
前記第2バイオマスは、前記第1バイオマス供給口よりも下流に設けられた第2バイオマス供給口を介し、前記第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、前記第1バイオマスの燃焼によって前記空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に供給され
、
前記炭化物回収装置はサイクロンを含み、
前記燃焼炉は炉床を含む、炭化物製造システム。
【請求項2】
前記燃焼炉は竪型燃焼炉である、請求項1に記載の炭化物製造システム。
【請求項3】
前記燃焼室には前記第2バイオマスを前記燃焼室内に供給する前記第2バイオマス供給口が設けられ、
前記炭化物は前記燃焼室内で生成される、請求項1又は2に記載の炭化物製造システム。
【請求項4】
前記燃焼炉と前記炭化物回収装置とは接続流路を介して接続され、
前記接続流路には前記第2バイオマスを前記接続流路内に供給する前記第2バイオマス供給口が設けられ、
前記炭化物は前記接続流路内で生成される、請求項1又は2に記載の炭化物製造システム。
【請求項5】
前記燃焼炉と前記炭化物回収装置とは接続流路を介して接続され、
前記接続流路には空気を前記接続流路内に供給する空気供給口が設けられている、請求項1又は2に記載の炭化物製造システム。
【請求項6】
前記炭化物回収装置から排出されたガスを利用するガス利用装置をさらに備え、
前記炭化物は、前記炭化物回収装置において、前記炭化物回収装置から排出されたガスに由来し、前記ガス利用装置で熱交換によって冷却されたガスにより冷却される、請求項1又は2に記載の炭化物製造システム。
【請求項7】
前記燃焼炉は、流動層式燃焼炉、火格子式燃焼炉、又は回転式燃焼炉である、請求項1又は2に記載の炭化物製造システム。
【請求項8】
燃焼炉の燃焼室に供給された第1バイオマスを空気で燃焼する工程と、
前記第1バイオマスよりも下流であって、前記第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、前記第1バイオマスの燃焼によって前記空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に第2バイオマスを供給する工程と、
前記燃焼炉と接続された炭化物回収装置で前記第2バイオマスから連続的に生成された炭化物を回収する工程と、
を含
み、
前記炭化物回収装置はサイクロンを含み、
前記燃焼炉は炉床を含む、炭化物製造方法。
【請求項9】
第1バイオマスを供給する第1バイオマス供給口を有し、前記第1バイオマスを空気で燃焼する燃焼室を含む燃焼炉と、
前記燃焼炉と接続され、第2バイオマスから生成された炭化物を回収する炭化物回収装置と、
前記炭化物回収装置から排出されたガスを利用するガス利用装置と、
を備え、
前記第2バイオマスは、前記第1バイオマス供給口よりも下流に設けられた第2バイオマス供給口を介し、前記第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、前記第1バイオマスの燃焼によって前記空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に供給され、
前記炭化物は、前記炭化物回収装置において、前記炭化物回収装置から排出されたガスに由来し、前記ガス利用装置で熱交換によって冷却されたガスにより冷却される、炭化物製造システム。
【請求項10】
第1バイオマスを供給する第1バイオマス供給口を有し、前記第1バイオマスを空気で燃焼する燃焼室を含む燃焼炉と、
前記燃焼炉と接続され、第2バイオマスから連続的に生成された炭化物を回収する炭化物回収装置と、
を備え、
前記第2バイオマスは、前記第1バイオマス供給口よりも下流に設けられた第2バイオマス供給口を介し、前記第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、前記第1バイオマスの燃焼によって前記空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に供給され、
前記炭化物回収装置はサイクロンを含み、
前記燃焼炉は、流動層式燃焼炉、火格子式燃焼炉、又は回転式燃焼炉である、炭化物製造システム。
【請求項11】
燃焼炉の燃焼室に供給された第1バイオマスを空気で燃焼する工程と、
前記第1バイオマスよりも下流であって、前記第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、前記第1バイオマスの燃焼によって前記空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に第2バイオマスを供給する工程と、
前記燃焼炉と接続された炭化物回収装置で前記第2バイオマスから連続的に生成された炭化物を回収する工程と、
を含み、
前記炭化物回収装置はサイクロンを含み、
前記燃焼炉は、流動層式燃焼炉、火格子式燃焼炉、又は回転式燃焼炉である、炭化物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化物製造システム及び炭化物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオマスを加熱することにより炭化物を製造する方法が知られている。バイオマスから炭化物を製造することにより、バイオマス中の炭素が炭化物として固定されるため、バイオマスを燃焼した場合と比較し、大気中への二酸化炭素の放出を抑制することができる。
【0003】
特許文献1には、筒状の本体部と、本体部の上方開口部を閉止する蓋体と、底板から離れた位置に配置された通気孔付きの隔壁板と、底板と隔壁板との間に形成された給気室に空気を導入する給気経路とを備える自燃炭化熱処理装置が開示されている。また、特許文献1には、自燃炭化熱処理装置が、隔壁板の通気孔と連通した状態で隔壁板上に立設された通気孔付きの複数の給気用筒体を備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記自燃炭化熱処理装置は、バッチ式で炭化物を生成しており、炭化物取り出し時の冷却時間、原料投入時間が別々に必要となるため、連続処理ができず、生産性が低い。また、上記自燃炭化熱処理装置では、原料が酸素不足状態で自発燃焼し、燃焼領域と同じ領域で原料が炭化される。そのため、炭化物を生成するための条件が安定しないおそれがある。このような場合、バイオマスが必要以上に燃焼してしまい、得られる炭化物の量が低減するなど、炭化物の性状が安定しないおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、バイオマスから安定した炭化物を連続的に製造することが可能な炭化物製造システム及び炭化物製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る炭化物製造システムは、第1バイオマスを供給する第1バイオマス供給口を有し、第1バイオマスを空気で燃焼する燃焼室を含む燃焼炉と、燃焼炉と接続され、第2バイオマスから生成された炭化物を回収する炭化物回収装置とを備えている。第2バイオマスは、第1バイオマス供給口よりも下流に設けられた第2バイオマス供給口を介し、第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、第1バイオマスの燃焼によって空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に供給される。
【0008】
燃焼炉は竪型燃焼炉であってもよい。
【0009】
燃焼室には第2バイオマスを燃焼室内に供給する第2バイオマス供給口が設けられてもよい。炭化物は燃焼室内で生成されてもよい。
【0010】
燃焼炉と炭化物回収装置とは接続流路を介して接続されていてもよい。接続流路には第2バイオマスを接続流路内に供給する第2バイオマス供給口が設けられていてもよい。炭化物は接続流路内で生成されてもよい。
【0011】
燃焼炉と炭化物回収装置とは接続流路を介して接続されてもよい。接続流路には空気を接続流路内に供給する空気供給口が設けられていてもよい。
【0012】
炭化物回収装置はサイクロンを含んでいてもよい。
【0013】
炭化物製造システムは炭化物回収装置から排出されたガスを利用するガス利用装置をさらに備えていてもよい。炭化物は、炭化物回収装置において、炭化物回収装置から排出されたガスに由来し、ガス利用装置で熱交換によって冷却されたガスにより冷却されてもよい。
【0014】
本開示に係る炭化物製造方法は、燃焼炉の燃焼室に供給された第1バイオマスを空気で燃焼する工程を含んでいる。炭化物製造方法は、第1バイオマスよりも下流であって、第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、第1バイオマスの燃焼によって空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に第2バイオマスを供給する工程を含んでいる。炭化物製造方法は、燃焼炉と接続された炭化物回収装置で第2バイオマスから生成された炭化物を回収する工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、バイオマスから安定した炭化物を連続的に製造することが可能な炭化物製造システム及び炭化物製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る炭化物製造システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、第2バイオマス供給口の付近の状態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、
図2をIII-III線で切断した断面図である。
【
図4】
図4は、別の実施形態に係る第2バイオマス供給口の付近の状態を示す概略図である。
【
図6】
図6は、別の実施形態に係る第2バイオマス供給口の付近の状態を示す概略図である。
【
図7】
図7は、
図6をVII-VII線で切断した断面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る炭化物製造システムを示す概略図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る炭化物製造システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る炭化物製造システム1について
図1~
図7を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る炭化物製造システム1は、燃焼炉10と、炭化物回収装置40とを備えている。燃焼炉10は、第1バイオマスが燃焼するように構成されている。炭化物回収装置40は、炭化物を回収する。後述するように、炭化物は第2バイオマスから生成される。
【0019】
燃焼炉10は、本実施形態においては、竪型の流動層式燃焼炉である。なお、竪型燃焼炉は多くの設置面積を必要としない点で優れているが、燃焼炉10は、竪型燃焼炉に限られず、横型燃焼炉であってもよい。また、燃焼炉10は、流動層式燃焼炉に限定されず、火格子式燃焼炉、又はキルン式燃焼炉のような回転式燃焼炉であってもよい。
【0020】
燃焼炉10は、風箱11と、風箱11よりも鉛直方向上側に設けられた燃焼室12とを含んでいる。風箱11は、燃焼用空気を供給するための部屋である。燃焼室12は、第1バイオマスを空気で燃焼する部屋である。風箱11と燃焼室12とは、空気分散板13によって区画されている。空気分散板13は、複数の第1空気供給孔14を有している。
【0021】
複数の第1空気供給孔14は、空気を燃焼室12に供給する第1空気供給口である。第1空気供給孔14を介して供給される空気は、一次空気である。一次空気は、流動媒体15に供給され、主として燃焼に用いられる。空気供給部20から供給された空気は、風箱11及び複数の第1空気供給孔14を介して燃焼室12に供給される。なお、本実施形態では、燃焼炉10の散気方式は、分散板式であるが、散気管式であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0022】
風箱11には空気供給部20が接続されている。空気供給部20は、空気流路21と、空気取り込み口22と、送風機23とを含んでいる。空気流路21には、空気取り込み口22と送風機23とが設けられている。また、空気流路21には、空気取り込み口22と送風機23との間に流量調整ダンパ24が設けられている。また、空気流路21には、送風機23と風箱11との間に流量調整ダンパ25が設けられている。そして、流量調整ダンパ24及び流量調整ダンパ25を開いた状態で送風機23を駆動することにより、空気を空気取り込み口22から風箱11に連続的に供給することができる。
【0023】
燃焼室12内において、空気分散板13の上には流動媒体15が配置されている。流動媒体15は、珪砂などの不活性粒子を含んでいてもよい。空気分散板13の第1空気供給孔14を介し、空気が風箱11から燃焼室12へ供給されると、流動媒体15は流動状態となり、流動層を形成する。流動層における空気比は、0.5~1.5程度であってもよい。
【0024】
燃焼室12には、第2空気供給口16と、第1バイオマス供給口17と、第2バイオマス供給口18aと、排出口19とが設けられている。
【0025】
第2空気供給口16は、空気を燃焼室12に供給する供給口である。第2空気供給口16は、燃焼室12を構成する側壁に設けられている。第2空気供給口16は、第1空気供給孔14よりも鉛直方向上側であって、第2バイオマス供給口18a及び排出口19よりも鉛直方向下側に設けられている。第2空気供給口16を介して供給される空気は、二次空気である。二次空気を燃焼室12に供給することにより、一次空気による燃焼温度よりも高い温度で段階燃焼することができるため、熱により流動媒体15が固着するのを抑制することができる。また、二次空気により、後述する炭化領域の酸素濃度を調整することもできる。
【0026】
第2空気供給口16には、空気流路21が接続されている。空気流路21は、送風機23と流量調整ダンパ25との間において分岐している。分岐した空気流路21には、流量調整ダンパ26と、流量調整ダンパ27とが設けられている。そして、流量調整ダンパ24、流量調整ダンパ26及び流量調整ダンパ27を開いた状態で送風機23を駆動することにより、空気取り込み口22から第2空気供給口16を介して空気を燃焼室12に連続的に供給することができる。
【0027】
第1バイオマス供給口17は、第1バイオマスを燃焼室12に供給する供給口である。第1バイオマス供給口17を介して第1バイオマスを燃焼室12に供給することができるため、第1バイオマスを燃焼室12に連続的に供給することができる。バイオマスは再生可能エネルギーとして位置づけられており、カーボンニュートラルの考え方から、バイオマスを燃焼しても大気中へ放出される二酸化炭素の増加につながらないと考えられている。第1バイオマスが燃焼することにより、化石燃料の使用を低減することができ、大気中への二酸化炭素の放出を抑制することができる。
【0028】
第1バイオマス供給口17は、燃焼室12を構成する側壁に設けられている。第1バイオマス供給口17は、第1空気供給孔14よりも鉛直方向上側に設けられている。第1バイオマス供給口17には、第1バイオマスを燃焼炉10の燃焼室12に供給する第1バイオマス供給部30が接続されている。第1バイオマス供給部30によって燃焼室12に供給された第1バイオマスは、流動媒体15と一緒に撹拌され、燃焼される。
【0029】
第2バイオマス供給口18aは、第2バイオマスを燃焼室12内に供給する供給口である。第2バイオマスを燃焼室12内に供給する場合、炭化物は燃焼室12内で生成される。第2バイオマス供給口18aを介して第2バイオマスを燃焼室12に供給することができるため、第2バイオマスを燃焼室12に連続的に供給することができる。第2バイオマス供給口18aは、燃焼室12を構成する側壁に設けられている。第2バイオマス供給口18aは、第1バイオマス供給口17よりも下流に設けられている。具体的には、第2バイオマス供給口18aは、第1バイオマス供給口17よりも鉛直方向上側に設けられている。また、第2バイオマス供給口18aは、第1空気供給孔14よりも下流に設けられている。第2バイオマス供給口18aには、第2バイオマスを燃焼室12に供給する第2バイオマス供給部31が接続されている。第2バイオマス供給部31によって燃焼室12に供給された第2バイオマスは、後述するように炭化され、第2バイオマスから炭化物が生成される。
【0030】
第2バイオマスは、第2バイオマス供給口18aを介し、第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、第1バイオマスの燃焼によって空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に供給される。炭化領域は、炭化物の生成に適した温度かつ低い酸素濃度に維持されており、このような制御された雰囲気下に第2バイオマスが供給される。第2バイオマスは第1バイオマスの燃焼によって生成された高温ガスにより加熱される。そのため、第2バイオマスの熱分解が安定的に進行し、第2バイオマスから炭化物を安定的に生成することができる。
【0031】
生成される炭化物の性状は、第2バイオマスの種類及び乾燥状態、第2バイオマス供給量、炭化領域の温度、及び炭化領域の酸素濃度などの条件によって変化する。そのため、製造したい炭化物の性状に応じ、第2バイオマス供給量、炭化領域の温度、及び炭化領域の酸素濃度の条件を事前に試運転にて決定しておいてもよい。
【0032】
排出口19は、第1バイオマス燃焼後のガスを排出する排出口である。燃焼室12内で第2バイオマスから炭化物が生成される場合、炭化物も排出口19を介して排出される。炭化物は、燃焼によって体積が膨張した燃焼ガスに乗って、排出口19から排出することができる。排出口19は、第1空気供給孔14、第2空気供給口16及び第1バイオマス供給口17及び第2バイオマス供給口18aよりも鉛直方向上側に設けられている。具体的には、排出口19は、燃焼室12を構成する天井に設けられている。排出口19は、第1接続流路36と接続されている。
【0033】
第1バイオマス及び第2バイオマスは同じ種類のバイオマスであってもよく、それぞれ異なる種類のバイオマスであってもよい。バイオマスは、例えば、木材、草本、家畜排せつ物、下水汚泥及び浄化槽汚泥などの生活排水、並びに食品廃棄物などの有機物を含んでいてもよい。バイオマスは、廃棄物系バイオマス及び未利用系バイオマスの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。廃棄物系バイオマスは、鶏糞のような家畜排泄物を含んでいてもよい。未利用系バイオマスは、農作物非食用部、林地残材、竹及び笹の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。農作物非食用部は、もみ殻、稲わら、麦わら、トウモロコシ茎、パーム空果房(EFB)、パーム古木(OPT)及びパーム核殻(PKS)からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。バイオマスは、草本系バイオマス及び木質バイオマスの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。木質バイオマスは、間伐材及び剪定枝の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。これらの中でも、バイオマスは、存在量及び重量の観点から、もみ殻、稲わら、麦わら、鶏糞,トウモロコシ茎、竹、笹、間伐材及び剪定枝からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいることが好ましい。
【0034】
第1バイオマス供給部30及び第2バイオマス供給部31は、スクリューフィーダ及びテーブルフィーダなどのような連続供給方式の供給機をそれぞれ含んでいてもよい。また、第1バイオマス供給部30及び第2バイオマス供給部31は、ロスインウェイト式のような重量式フィーダ又は容積式フィーダを含んでいてもよい。また、第2バイオマス供給部31から供給される第2バイオマスの量は、第1バイオマス供給部30から供給される第1バイオマスの量よりも多くてもよい。第2バイオマス供給部31から供給される第2バイオマスの量は、第1バイオマス供給部30から供給される第1バイオマスの量に対し、例えば2倍以上10倍以下であってもよい。
【0035】
炭化物製造システム1は、第1粉砕機32と、第2粉砕機33とを含んでいてもよい。第1粉砕機32は、第1バイオマス及び第2バイオマスを粉砕している。第2粉砕機33は、第1粉砕機32で粉砕した第2バイオマスをさらに粉砕している。第1粉砕機32で第1バイオマスを粉砕することにより、第1バイオマスを燃焼に適した大きさに粉砕することができる。また、第1粉砕機32及び第2粉砕機33で第2バイオマスを粉砕し、粒子径を小さくすることにより、第2バイオマスの炭化を容易にし、炭化物回収装置40への移送を容易にすることができる。第2バイオマス供給口18aを介して供給される第2バイオマスは、第1バイオマス供給口17を介して供給される第1バイオマスよりも小さいサイズであってもよい。なお、第1バイオマス及び第2バイオマスが最適な大きさである場合、第1バイオマス及び第2バイオマスを第1粉砕機32及び第2粉砕機33で粉砕しなくてもよい。
【0036】
炭化物製造システム1は、図示しない磁力選別機、風力選別機及び粒度選別機からなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。これらの選別機により、第1バイオマス供給部30で供給される第1バイオマス及び第2バイオマス供給部31で供給される第2バイオマスから、金属やコンクリート片などの異物を除去することができる。
【0037】
燃焼炉10は、燃焼室12において、第2空気供給口16よりも鉛直方向上側であって、排出口19よりも鉛直方向下側の温度を測定する温度計34を含んでいてもよい。温度計34によって炭化領域の温度を測定することにより、炭化温度を容易に制御することができる。炭化領域の温度は、700℃~1200℃程度であってもよい。炭化領域の温度を700℃以上にすることにより、第2バイオマスに水分が多く含まれる場合であっても、炭化を容易に進行させることができる。また、炭化領域の温度を1200℃以下とすることにより、第2バイオマスの成分などが部分的に溶融し、燃焼炉10の内壁に付着するのを抑制することができる。
【0038】
燃焼炉10は、燃焼室12において、第2空気供給口16よりも鉛直方向上側であって、排出口19よりも鉛直方向下側の酸素濃度を測定する酸素濃度計35を含んでいてもよい。酸素濃度計35によって炭化領域の酸素濃度を測定することにより、酸素濃度を容易に制御することができる。炭化領域の酸素濃度は、0体積%~7体積%程度であってもよい。酸素濃度を0体積%以上とすることにより、第2バイオマスの揮発分が多い場合であっても、炭化物を容易に生成することができる。また、酸素濃度を7体積%以下とすることにより、燃焼によって二酸化炭素の生成が促進され、炭素の残存量が低減するのを抑制することができる。
【0039】
燃焼炉10と炭化物回収装置40とは第1接続流路36を介して接続されている。第1接続流路36には、第2バイオマスを第1接続流路36内に供給する第2バイオマス供給口18bが設けられている。第2バイオマスが第1接続流路36内に供給される場合、炭化物は第1接続流路36内で生成される。具体的には、第2バイオマスは、第2バイオマス供給口18bを介し、第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、第1バイオマスの燃焼によって空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に供給される。第1接続流路36内は、燃焼炉10内のガスが通過するため、高温かつ低酸素雰囲気となっている。このような雰囲気下に第2バイオマスを供給することにより、第2バイオマス供給口18aを介して第2バイオマスを燃焼室12内に供給した場合と同様に、第2バイオマスから炭化物を安定的に生成することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、第1接続流路36の円筒部分の中心軸方向からみて略中央部分に第2バイオマス供給口18bが設けられている。第1接続流路36は、燃焼炉10と接続され、鉛直方向に延びる第1円筒管36aと、炭化物回収装置40と接続され、水平方向に延びる第2円筒管36bとを含んでいる。
図3に示すように、第2円筒管36bの中心軸の方向から見て、第1円筒管36aの中心軸が第2円筒管36bの中心軸と水平方向に異なる位置になるように第1円筒管36aと第2円筒管36bとが接続されている。そのため、
図2及び
図3の矢印で示すように、第1接続流路36は、燃焼炉10から送られてきたガスが第2円筒管36b内を螺旋状に流れるように構成されている。そして、第2円筒管36bの中心軸の方向から見て、第2バイオマス供給口18bは第2円筒管36bの中心軸と概ね一致するように第1接続流路36に接続されている。そのため、第2バイオマスは、螺旋状に流れるガスの中心部に供給され、螺旋状に流れる。これにより、第2バイオマスの滞留距離を長くすることができる。
【0041】
ただし、第1接続流路36において、第2バイオマス供給口18bが設けられる位置はこのような形態に限定されない。例えば
図4及び
図5に示すように、第2バイオマス供給口18bは、第2円筒管36bの側壁に設けられていてもよい。第2バイオマス供給口18bが第2円筒管36bの側壁に設けられていると、供給された第2バイオマスが第2円筒管36b内に落下する。すなわち、内部の螺旋状流れに第2バイオマスが同伴されやすくなり、比較的粒度の大きいバイオマスも燃焼炉10の流動層に落下しにくいため、燃焼炉10内で安定した燃焼条件を保つことができる。また、供給するバイオマスの粒度を大きくすることができるため、炭化物製造の自由度を広げることができる。
【0042】
また、第1円筒管36aは垂直方向に延び、第2円筒管36bは水平方向に延びているが、このような形態に限定されない。例えば
図6及び
図7に示すように、第2円筒管36bは、第1円筒管36aとの接続部から炭化物回収装置40に向かうにつれ、鉛直方向下側に傾くように設けられていてもよい。また、本実施形態では、第1円筒管36a及び第2円筒管36bは、円筒状をしているが、例えば楕円筒状の形状をしていてもよい。また、本実施形態では、第1円筒管36aと第2円筒管36bとが接続されて角張ったL字状をしているが、第1接続流路36は、湾曲部を有し、湾曲部を介して第1円筒管36aと第2円筒管36bとが接続されていてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、第2バイオマス供給口18は、燃焼室12に設けられた第2バイオマス供給口18aと、第1接続流路36に設けられた第2バイオマス供給口18bとを含んでいる。しかしながら、第2バイオマス供給口18は、第2バイオマス供給口18a又は第2バイオマス供給口18bのいずれか一方のみを含んでいてもよい。すなわち、第2バイオマス供給口18は、第2バイオマス供給口18a及び第2バイオマス供給口18bの少なくともいずれか一方を含んでいればよい。
【0044】
図1に示すように、第1接続流路36には、空気を第1接続流路36内に供給する第3空気供給口37が設けられていてもよい。第1接続流路36内の温度は、第2バイオマスを熱分解することによってエネルギーが消費され、低くなる場合がある。また、第2バイオマスが水分を多く含む場合、水分の気化に熱エネルギーが使用され、第1接続流路36内の温度が低くなる場合がある。そこで、第3空気供給口37から第1接続流路36内に空気を供給し、第1接続流路36内で第2バイオマスの一部を燃焼することにより、第1接続流路36内の温度の低下を抑制することができる。これにより、第1接続流路36内を炭化に適した温度に維持することができる。
【0045】
第3空気供給口37は、第1接続流路36において、炭化物回収装置40よりも第2バイオマス供給口18bに近い位置に設けられていてもよい。これにより、第2バイオマス供給口18bから炭化物回収装置40に至るまでの第1接続流路36内の温度にムラが生じるのを抑制することができる。
【0046】
第3空気供給口37には、空気流路21が接続されている。空気流路21は、送風機23と流量調整ダンパ25との間において分岐している。分岐した空気流路21には、流量調整ダンパ26と、流量調整ダンパ28とが設けられている。そして、流量調整ダンパ24、流量調整ダンパ26及び流量調整ダンパ28を開いた状態で送風機23を駆動することにより、空気取り込み口22から第3空気供給口37を介して空気を第1接続流路36内に連続的に供給することができる。
【0047】
炭化物回収装置40は、燃焼炉10と接続され、第2バイオマスから生成された炭化物を回収する。炭化物回収装置40はバグフィルタなどのような粉末回収装置であってもよいが、本実施形態では炭化物回収装置40はサイクロンを含んでいる。サイクロンは、炭化物を遠心力によって分離捕集する装置である。炭化物回収装置40には、燃焼炉10でのバイオマスの熱分解に由来するガス状のタールも供給される。サイクロンはタールが凝縮しない高温状態でフィルタを介さずにガスと炭化物とを分離することができるため、タールの付着が少ない炭化物を容易に回収することができる。
【0048】
サイクロンは、炭化物が分散されたガスが供給される供給口41と、炭化物を遠心分離する本体部42と、炭化物を収集する集塵室43と、炭化物が除去されたガスを排出する円筒状の排出管44とを含んでいる。本体部42は、上部に配置された円筒部42aと、円筒部42aよりも鉛直方向下側に設けられた円錐部42bとを有している。排出管44は、円筒部42aの内側に配置されている。炭化物は、本体部42内を落下し、集塵室43内に収集される。炭化物が除去されたガスは、排出管44を通じて炭化物回収装置40から排出される。
【0049】
集塵室43には、2つのダンパが連なった二重ダンパ45が接続されている。各ダンパは蓋46を含んでおり、一方の蓋46を開き、もう一方の蓋46を閉じることにより、大気中の空気が入らないように炭化物回収装置40から炭化物を取り出すことができる。なお、二重ダンパ45に代え、ロータリーバルブなどのような回転式の取出し装置を用いてもよい。また、取出し装置として本体部42に接続された水封装置を用いてもよい。水封装置は水を貯水する貯水タンクを含んでいてもよい。本体部42の一端は貯水タンクの水で封じられるため、本体部42で分離された炭化物は貯水タンク内の水に接触して冷却される。なお、上記取出し装置はサイクロン以外の炭化物回収装置40に適用してもよい。
【0050】
回収された炭化物は、第2バイオマスに由来する炭素を有している。第2バイオマスを燃焼せずに炭化することにより、大気中への二酸化炭素の放出を抑制することができる。得られた炭化物は、例えば採石場の採石跡に埋め戻し材として利用してもよい。このような場合、CCS(二酸化炭素回収・貯留)と同様の効果が得られる。また、炭化物は、土壌へ炭素隔離することもできる。炭化物は、田畑などの農地で用いる場合、炭素隔離に加え、土壌改良材としての役割も果たす。本実施形態に係る炭化物製造システム1は、炭化領域の温度及び酸素濃度を安定的に制御することができるため、炭化物中の炭素量、植物に必須の栄養素である窒素、リン及びカリウムなどの成分量を任意に調整することもできる。また、炭化物は、光を吸収して加熱しやすいため、融雪剤として用いてもよい。また、炭化物は、脱臭剤として用いることもできる。
【0051】
炭化物製造システム1は、炭化物回収装置40から排出されたガスを利用するガス利用装置50をさらに備えていてもよい。本実施形態において、ガス利用装置50はボイラを含んでいる。具体的には、ガス利用装置50は排熱回収ボイラ51を含んでいる。排熱回収ボイラ51は、炭化物回収装置40から排出されたガスの熱を熱交換によって回収して水蒸気及び温水の少なくともいずれか一方を生成する。排熱回収ボイラ51で回収された熱は、工場などで熱エネルギーとして利用することができる。
【0052】
ガス利用装置50は、炭化物回収装置40と第2接続流路52を介して接続されている。第2接続流路52には第4空気供給口53が設けられている。第4空気供給口53には、空気流路21が接続されている。空気流路21は、送風機23と流量調整ダンパ25との間において分岐している。分岐した空気流路21には、流量調整ダンパ26と、流量調整ダンパ29とが設けられている。そして、流量調整ダンパ24、流量調整ダンパ26及び流量調整ダンパ29を開いた状態で送風機23を駆動することにより、空気取り込み口22から第4空気供給口53を介して空気を第2接続流路52に連続的に供給することができる。空気が第2接続流路52内に供給されることにより、残存した可燃成分を燃焼させることができる。
【0053】
炭化物製造システム1は、第4空気供給口53よりも下流に設けられ、第2接続流路52の内部の温度を測定する温度計54を備えていてもよい。これにより、ガス利用装置50に供給されるガスの温度を管理することができる。また、炭化物製造システム1は、第4空気供給口53よりも下流に設けられ、第2接続流路52の内部の酸素濃度を測定する酸素濃度計55を備えていてもよい。これにより、ガス利用装置50に供給されるガスの酸素濃度を管理することができる。
【0054】
灰分離装置56は排熱回収ボイラ51に接続されている。灰分離装置56は排熱回収ボイラ51から排出されたガスから灰分を除去する。灰分離装置56にはサイクロン57が接続されている。灰分離装置56で灰分が分離されたガスは、サイクロン57に供給される。サイクロン57に供給されるガスには微量の微粒子が残存しているおそれがあるため、微粒子をサイクロン57で分離した後に大気中に放出することができる。
【0055】
サイクロン57のガス排出口は、炭化物回収装置40の集塵室43と冷却ガス流路58を介して接続されている。冷却ガス流路58には流量調整ダンパ59及び循環冷却ファン60が設けられている。そして、流量調整ダンパ59を開いた状態で循環冷却ファン60を駆動することにより、サイクロン57から炭化物回収装置40にガスが供給される。そのため、炭化物は、炭化物回収装置40において、炭化物回収装置40から排出されたガスに由来し、ガス利用装置50で熱交換によって冷却されたガスにより冷却される。炭化物回収装置40で回収されたばかりの炭化物は、高温であり、空気と触れると、空気中の酸素によって燃焼してしまうおそれがある。しかしながら、炭化物回収装置40から排出されたガスの酸素濃度は低い。また、炭化物回収装置40から排出されたガスの熱は、ガス利用装置50によって回収されて冷却される。そのため、このようなガスを回収された炭化物の冷却に用いることにより、低酸素濃度の冷却用ガスを別途準備しなくても、炭化物を冷却することができる。
【0056】
なお、本実施形態のようなガス利用装置50を利用せず、図示しない冷却装置により、酸素濃度が低いガスを200℃以下の低温で炭化物回収装置40に導入してもよい。このような構成によっても、炭化物回収装置40で回収された炭化物の燃焼を抑制することができる。また、上述したような水封装置を用いる場合には、炭化物を水によって冷却することができるため、酸素濃度が低い低温ガスを用いずに炭化物を冷却することができる。
【0057】
以上の通り、本実施形態に係る炭化物製造システム1は、第1バイオマスを供給する第1バイオマス供給口17を有し、第1バイオマスを空気で燃焼する燃焼室12を含む燃焼炉10を備えている。炭化物製造システム1は、燃焼炉10と接続され、第2バイオマスから生成された炭化物を回収する炭化物回収装置40を備えている。第2バイオマスは、第2バイオマス供給口18を介し、第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、第1バイオマスの燃焼によって空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に供給される。第2バイオマス供給口18は、第1バイオマス供給口17よりも下流に設けられている。
【0058】
また、本実施形態に係る炭化物製造方法は、燃焼炉10の燃焼室12に供給された第1バイオマスを空気で燃焼する工程を含んでいる。炭化物製造方法は、第1バイオマスよりも下流であって、第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、第1バイオマスの燃焼によって空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に第2バイオマスを供給する工程を含んでいる。炭化物製造方法は、燃焼炉10と接続された炭化物回収装置40で第2バイオマスから生成された炭化物を回収する工程を含んでいる。
【0059】
そのため、本実施形態に係る炭化物製造システム1によれば、バイオマスから安定した炭化物を連続的に製造することができる。例えば,もみ殻などのバイオマス原料は保管状態により水分濃度が異なり、性状が変化するが、本実施形態に係る炭化物製造システム1によれば、安定した高温雰囲気を制御して維持できる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る炭化物製造システム1について
図8を用いて説明する。第2実施形態に係る炭化物製造システム1は、第1実施形態に係る炭化物製造システム1と比較し、ガス利用装置50の形態が異なっている。第2実施形態に係る炭化物製造システム1は、これ以外の点については第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0061】
図8に示すように、本実施形態に係るガス利用装置50は、排熱回収ボイラ70を備えている。また、炭化物製造システム1は、タービン72と、発電機73と、空冷式蒸気復水器74と、復水タンク75とを備えている。
【0062】
排熱回収ボイラ70には、第2接続流路52が接続されている。排熱回収ボイラ70は、炭化物回収装置40から排出されたガスの熱を熱交換によって回収し、水蒸気を生成する。水蒸気となって体積が膨張した水蒸気は、タービン72を通過し、タービン72を回転させる動力として用いられる。タービン72は、発電機73と機械的に接続されており、タービン72の回転によって発電機73が発電するように設けられている。タービン72から排出された水蒸気は、空冷式蒸気復水器74に供給される。空冷式蒸気復水器74に供給された水蒸気は冷却されて凝縮し、凝縮した水は復水タンク75に貯水される。復水タンク75内の水は、ポンプ76の駆動によって排熱回収ボイラ70に供給され、循環する。
【0063】
排熱回収ボイラ70のガス排出口は、炭化物回収装置40の集塵室43と冷却ガス流路77を介して接続されている。冷却ガス流路77には、バグフィルタ78と、流量調整ダンパ79と、誘引ファン80と、流量調整ダンパ81と、循環冷却ファン82とが、排熱回収ボイラ70のガス排出口から炭化物回収装置40の集塵室43に向かってこの順番で設けられている。排熱回収ボイラ70から排出されたガス中の微粒子は、バグフィルタ78で集塵される。そして、流量調整ダンパ79を開いた状態で誘引ファン80を駆動することにより、微粒子が取り除かれたガスの一部は、煙突83から大気中へ排出される。また、流量調整ダンパ81を開いた状態で循環冷却ファン82を駆動することにより、微粒子が取り除かれたガスの一部は、炭化物回収装置40の集塵室43に供給される。そのため、炭化物は、炭化物回収装置40において、炭化物回収装置40から排出されたガスに由来し、ガス利用装置50で熱交換によって冷却されたガスにより冷却される。
【0064】
本実施形態に係る炭化物製造システム1によれば、バイオマスから安定した炭化物を連続的に製造することができ、発電することもできる。
【0065】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る炭化物製造システム1について
図9を用いて説明する。第3実施形態に係る炭化物製造システム1は、第1実施形態に係る炭化物製造システム1と比較し、ガス利用装置50の形態が異なっている。第3実施形態に係る炭化物製造システム1は、これ以外の点については第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0066】
図9に示すように、本実施形態に係るガス利用装置50は、石炭焚きボイラ90を備えている。また、本実施形態に係る炭化物製造システム1は、サイクロン97を備えている。
【0067】
石炭焚きボイラ90は、石炭を燃料とするボイラである。石炭焚きボイラ90の燃焼室91には、石炭供給機92によって石炭が供給され、空気供給部93によって空気が供給される。具体的には、空気供給部93は、空気取り込み口94と、流量調整ダンパ95と、送風機96とを含んでおり、流量調整ダンパ95を開いた状態で送風機96を駆動することにより、空気取り込み口94から燃焼室91に空気が供給される。
【0068】
石炭焚きボイラ90には、第2接続流路52が接続されている。本実施形態では、第1実施形態と異なり、第4空気供給口53は、第2接続流路52において、炭化物回収装置40よりも石炭焚きボイラ90に近い位置に設けられている。そのため、炭化物回収装置40から排出された可燃成分を石炭焚きボイラ90内で燃焼させることができる。この燃焼熱を石炭焚きボイラ90で熱交換によって回収することができるため、石炭焚きボイラ90で使用される石炭を削減することができる。なお、石炭焚きボイラ90に代え、重油焚きボイラ又はガス焚きボイラを用いてもよい。このような場合であっても、化石燃料を削減することができる。
【0069】
石炭焚きボイラ90のガス排出口は、サイクロン97と接続されている。燃焼室91内のガスは、熱交換によって冷却され、冷却されたガスがサイクロン97を通過する。サイクロン97では、微粒子が集塵され、一部のガスがサイクロン97から大気中へ放出される。
【0070】
サイクロン97と炭化物回収装置40の集塵室43とは、冷却ガス流路98を介して接続されている。冷却ガス流路98には、流量調整ダンパ99と循環冷却ファン100とが設けられている。そして、流量調整ダンパ99を開いた状態で循環冷却ファン100を駆動することにより、微粒子が取り除かれたガスの一部は、炭化物回収装置40の集塵室43に供給される。そのため、炭化物は、炭化物回収装置40において、炭化物回収装置40から排出されたガスに由来し、ガス利用装置50で熱交換によって冷却されたガスにより冷却される。
【0071】
本実施形態に係る炭化物製造システム1によれば、バイオマスから安定した炭化物を連続的に製造することができ、石炭焚きボイラ90に必要な石炭の使用を低減することもできる。
【0072】
なお、第1実施形態から第3実施形態では、1つの送風機23を用い、空気を複数の空気供給口を介して炭化物製造システム1に供給している。しかしながら、流量調整ダンパの上流に送風機をそれぞれ配置し、各々の空気供給口を介して空気を炭化物製造システム1に供給してもよい。
【0073】
特願2022-102517号(出願日:2022年6月27日)の全内容は、ここに援用される。
【0074】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0075】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標2「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」、目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」、及び目標15「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 炭化物製造システム
10 燃焼炉
12 燃焼室
17 第1バイオマス供給口
18 第2バイオマス供給口
36 第1接続流路
37 第3空気供給口
40 炭化物回収装置
50 ガス利用装置
【要約】
炭化物製造システム(1)は、第1バイオマスを供給する第1バイオマス供給口(17)を有し、第1バイオマスを空気で燃焼する燃焼室(12)を含む燃焼炉(10)と、燃焼炉(10)と接続され、第2バイオマスから生成された炭化物を回収する炭化物回収装置(40)とを備え、第2バイオマスは、第1バイオマス供給口(17)よりも下流に設けられた第2バイオマス供給口(18)を介し、第1バイオマスの燃焼によって加熱され、かつ、第1バイオマスの燃焼によって空気よりも酸素濃度が低くなった低濃度酸素ガスが存在する炭化領域に供給される。