(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】有機溶剤回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240214BHJP
C07B 63/00 20060101ALI20240214BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B01D53/04 230
C07B63/00 G
B01D5/00 E
(21)【出願番号】P 2023570451
(86)(22)【出願日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2023026044
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2022115758
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 武将
(72)【発明者】
【氏名】林 敏明
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/054733(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/014013(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/132071(WO,A1)
【文献】特開平09-173758(JP,A)
【文献】特開2012-005956(JP,A)
【文献】特開2014-193422(JP,A)
【文献】特開昭61-082825(JP,A)
【文献】米国特許第5389125(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 5/00、53/02-12
C07B 63/00
C07C 7/00-13
D06F 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する被処理ガスから前記有機溶剤を分離して回収する有機溶剤回収システムであって、
前記被処理ガスを冷却することで、前記被処理ガスに含有される前記有機溶剤を凝縮させて、含有する前記有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスとして排出する、凝縮回収装置と、
前記冷却処理ガスに含有される前記有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子を有し、前記冷却処理ガスの導入による前記吸脱着素子への前記有機溶剤の吸着と、脱着用ガスの導入による前記吸脱着素子からの前記有機溶剤の脱着と、を交互に行なう吸脱着処理装置と、
前記被処理ガスを前記凝縮回収装置に導入する経路である第1流路と、
前記凝縮回収装置から前記吸脱着処理装置への前記冷却処理ガスの経路である第2流路と、
前記第1流路に設けられ、前記第1流路を開閉する第1開閉弁と、
前記第2流路に設けられ、前記第2流路を開閉する第2開閉弁と、
前記第1開閉弁と前記第2開閉弁とのいずれか一方と前記凝縮回収装置との間に接続され、前記凝縮回収装置に不活性ガスを供給する経路となるガス供給経路と、
前記凝縮回収装置から排出される前記不活性ガスの経路となるガス排出経路と、を備える、有機溶剤回収システム。
【請求項2】
前記ガス供給経路を開閉するガス供給弁を備え、
前記ガス供給弁が開路状態にした前記ガス供給経路を経由して、前記凝縮回収装置に前記不活性ガスが供給される、請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項3】
前記ガス排出経路を開閉するガス排出弁を備え、
前記凝縮回収装置から排出される前記不活性ガスは、前記ガス排出弁が開路状態にした前記ガス排出経路を通過する、請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項4】
前記凝縮回収装置は、前記有機溶剤を凝縮させる凝縮部と、凝縮された液状の前記有機溶剤を回収する回収タンクとを有し、
前記回収タンク内に貯留された前記有機溶剤上の気層部と、前記凝縮回収装置から排出される前記不活性ガスの経路と、を接続する戻りガス経路をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項5】
前記冷却処理ガスの温度を検出して伝送する温度伝送器をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項6】
前記有機溶剤回収システムへの前記被処理ガスの供給が停止している間に、前記第1開閉弁と前記第2開閉弁とを閉じ、前記ガス供給経路から前記凝縮回収装置に前記不活性ガスを供給することにより、前記凝縮回収装置内の前記被処理ガスを前記不活性ガスで置換する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機溶剤回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開2021/132071号(特許文献1)には、被処理ガスに含まれる有機溶剤の一部を凝縮回収装置で凝縮させた後、未凝縮の有機溶剤を吸脱着素子で吸着して、被処理ガスから有機溶剤を回収する、有機溶剤回収システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機溶剤回収システムの停止中に、凝縮回収装置の温度が外気温によって上昇し、凝縮回収装置内に残存する液体状の有機溶剤が再揮発することがある。再揮発した有機溶剤が吸脱着素子に吸着すると、次回の有機溶剤回収システムの起動時に、吸脱着処理装置の性能が低下する。
【0005】
本開示では、有機溶剤回収システムの停止中に有機溶剤が吸脱着素子に吸着することを抑制できる、有機溶剤回収システムが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、以下の有機溶剤回収システムが提案される。
(第1項)有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を分離して回収する有機溶剤回収システムは、凝縮回収装置と、吸脱着処理装置と、第1流路と、第2流路と、第1開閉弁と、第2開閉弁と、ガス供給経路と、ガス排出経路と、を備えている。凝縮回収装置は、被処理ガスを冷却することで、被処理ガスに含有される有機溶剤を凝縮させて、含有する有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスとして排出する。吸脱着処理装置は、冷却処理ガスに含有される有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子を有している。吸脱着処理装置は、冷却処理ガスの導入による吸脱着素子への有機溶剤の吸着と、脱着用ガスの導入による吸脱着素子からの有機溶剤の脱着と、を交互に行なう。第1流路は、被処理ガスを凝縮回収装置に導入する経路である。第2流路は、凝縮回収装置から吸脱着処理装置への冷却処理ガスの経路である。第1開閉弁は、第1流路に設けられている。第1開閉弁は、第1流路を開閉する。第2開閉弁は、第2流路に設けられている。第2開閉弁は、第2流路を開閉する。ガス供給経路は、凝縮回収装置に不活性ガスを供給する経路となる。ガス供給経路は、第1開閉弁と第2開閉弁とのいずれか一方と凝縮回収装置との間に接続されている。ガス排出経路は、凝縮回収装置から排出される不活性ガスの経路となる。
【0007】
(第2項)第1項に記載の有機溶剤回収システムは、ガス供給経路を開閉するガス供給弁を備え、ガス供給弁が開路状態にしたガス供給経路を経由して、凝縮回収装置に不活性ガスが供給されてもよい。
【0008】
(第3項)第1項または第2項に記載の有機溶剤回収システムは、ガス排出経路を開閉するガス排出弁を備え、凝縮回収装置から排出される不活性ガスは、ガス排出弁が開路状態にしたガス排出経路を通過してもよい。
【0009】
(第4項)第1項から第3項のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システムにおいて、凝縮回収装置は、有機溶剤を凝縮させる凝縮部と、凝縮された液状の有機溶剤を回収する回収タンクとを有し、有機溶剤回収システムは、戻りガス経路をさらに備え、戻りガス経路は、回収タンク内に貯留された有機溶剤上の気層部と、凝縮回収装置から排出される不活性ガスの経路と、を接続してもよい。
【0010】
(第5項)第1項から第4項のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システムは、冷却処理ガスの温度を検出して伝送する温度伝送器をさらに備えてもよい。
【0011】
(第6項)第1項から第5項のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システムにおいて、有機溶剤回収システムへの被処理ガスの供給が停止している間に、第1開閉弁と第2開閉弁とを閉じ、ガス供給経路から凝縮回収装置に不活性ガスを供給することにより、凝縮回収装置内の被処理ガスを不活性ガスで置換してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の有機溶剤回収システムによれば、有機溶剤回収システムの停止中に再揮発した有機溶剤が吸脱着素子に吸着することを、抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】第2実施形態の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。
【
図3】第3実施形態の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の有機溶剤回収システム1の構成を概略的に示す図である。有機溶剤を含有する被処理ガスは、生産設備90から排出される。有機溶剤回収システム1は、被処理ガスから有機溶剤を分離して回収するシステムである。被処理ガスに含有される有機溶剤は、たとえば、沸点が100℃以下の低沸点溶剤であってもよい。
【0016】
より具体的には、有機溶剤は、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロプロパン、フロン-112、フロン-113、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ヨウ化メチル等のハロゲン系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、炭酸ジエチル等のエステル系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジアセチル等のケトン系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、エポキシド等のエーテル系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、アクリロニトリル等のニトリル系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン等の炭化水素系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、ベンゼン等の芳香族系有機溶剤であってもよい。
【0017】
図1に示されるように、有機溶剤回収システム1は、凝縮回収装置10と、吸脱着処理装置50とを主に備えている。
【0018】
生産設備90から排出される被処理ガスは、第1流路F1を経由して凝縮回収装置10に導入される。第1流路F1は、被処理ガスを凝縮回収装置10に導入する経路である。凝縮回収装置10は、凝縮部20を有している。凝縮部20は、冷却部21と、分離部22と、チャンバ23を有している。
【0019】
冷却部21は、冷却部21を通過する被処理ガスを冷却する。冷却部21は、被処理ガスを冷却することによって、被処理ガスに含有される有機溶剤の一部を凝縮させる。分離部22は、被処理ガスから、凝縮された液体状の有機溶剤を分離する。
【0020】
冷却部21が被処理ガスを冷却する手段は、特に限定されない。冷却部21はたとえば、冷却水、冷水、ブラインなどの冷媒と、被処理ガスと、の熱交換によって被処理ガスを冷却する熱交換器であってもよい。冷媒の流量および温度などの冷却条件は、被処理ガスに含有される有機溶剤に応じて、適宜決めることができる。
【0021】
分離部22が液体状の有機溶剤を分離する手段は、特に限定されない。分離部22はたとえば、デミスター、フィルター、メッシュなどの液滴を接触して捕捉する網目状構造体を用いてもよい。
【0022】
チャンバ23は、一定容量の空間を有する構造体である。分離部22において有機溶剤が分離された被処理ガスは、中空空間であるチャンバ23を通過する。チャンバ23から、含有する有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスが排出される。冷却処理ガスには、未凝縮の有機溶剤が含まれている。凝縮回収装置10から排出された冷却処理ガスは、第2流路F2を経由して流れる。第2流路F2は、凝縮回収装置10から吸脱着処理装置50への冷却処理ガスの経路である。
【0023】
凝縮回収装置10は、回収タンク30を有している。回収タンク30は、分離部22の下方に配置されている。分離部22と回収タンク30とは、第6流路F6によって接続されている。冷却部21で凝縮され分離部22で捕捉された液体状の有機溶剤は、重力の作用によって、第6流路F6を経由して、回収タンク30に集液される。回収タンク30内には、液体状の有機溶剤が貯留する液貯留部32と、液貯留部32の上方の気層部31とが形成されている。第6流路F6の径は、第2流路F2の径よりも小さくてもよい。
【0024】
液貯留部32に貯留されている液体状の有機溶剤が、回収液L3として回収される。回収液L3の流路に、図示しないポンプが設けられていてもよい。回収タンク30には、図示しない液面計が設けられていてもよい。回収タンク30内の有機溶剤の液面レベルが上限に到達したことを液面計が検知すると、ポンプを起動させて回収液L3の回収が開始されてもよい。液体状の有機溶剤が回収タンク30から流出すると、回収タンク30内の有機溶剤の液面レベルが低下する。有機溶剤の液面レベルが下限に到達したことを液面計が検知すると、ポンプを停止させて回収液L3の回収を停止してもよい。
【0025】
第2流路F2には、冷却処理ガス送風機40が設けられている。冷却処理ガスは、冷却処理ガス送風機40で送り出されて、吸脱着処理装置50に送り込まれる。第2流路F2に、冷却処理ガスを加温するガスヒーターが設けられてもよい。冷却処理ガスの湿度が高すぎると、吸脱着処理装置50が十分な性能を発揮できないことがある。ガスヒーターによって冷却処理ガスの温度を上げることで、冷却処理ガスの湿度を下げて、吸脱着処理装置50の性能向上が図れる。
【0026】
温度伝送器70は、第2流路F2を流れる冷却処理ガスの温度を検出する。第2流路F2に上述のガスヒーターが設けられる場合には、温度伝送器70は、ガスヒーターよりも上流側(凝縮回収装置10に近い側)の、冷却処理ガスの温度を検出する。温度伝送器70は、検出した冷却処理ガスの温度を、図示しない制御装置に伝送する。温度伝送器70が検出し伝送する冷却処理ガスの温度に基づいて、冷却部21に供給される冷媒の流量および温度を調整するフィードバック制御が行なわれる。
【0027】
凝縮回収装置10から排出される冷却処理ガス中の有機溶剤の濃度は、飽和濃度に達している。ガス中に含有される有機溶剤の飽和濃度は、そのガスの温度で決まる。ガスの温度が低いほど、ガス中に含有され得る有機溶剤の濃度が低くなる。冷却処理ガスの温度をモニタリングすることで、冷却処理ガスに含有される有機溶剤の濃度が爆発下限界温度以下であるかどうかを判断できる。冷却処理ガスの温度に基づいて、冷却処理ガスに含有される有機溶剤の濃度が爆発下限界温度以下となるように、冷却部21における被処理ガスの冷却を制御することができる。これにより、爆発下限界濃度を超える濃度の有機溶剤を含む冷却処理ガスが冷却処理ガス送風機40に送られて、空気雰囲気下で冷却処理ガスが発火する可能性を、低減できる。
【0028】
吸脱着処理装置50は、第1処理槽51を有している。第1処理槽51には、中空円筒形状の吸脱着素子52が収容されている。第1処理槽51の下部に、ダンパ55が設けられている。第1処理槽51の、吸脱着素子52の上方に、ダンパ56が設けられている。吸脱着処理装置50は、第2処理槽53を有している。第2処理槽53には、中空円筒形状の吸脱着素子54が収容されている。第2処理槽53の下部に、ダンパ57が設けられている。第2処理槽53の、吸脱着素子54の上方に、ダンパ58が設けられている。
【0029】
吸脱着素子52,54に対して径方向外側から内側へ向けて冷却処理ガスが通過することにより、吸脱着素子52,54に冷却処理ガスが接触する。このとき、冷却処理ガスに含有される有機溶剤が吸脱着素子52,54に吸着される。これにより冷却処理ガスが清浄化される。清浄化された清浄ガスG9は、第3流路F3から外部に排出される。第3流路F3は、吸脱着処理装置50で有機溶剤の吸着処理が行なわれ清浄化された後の清浄ガスG9を、有機溶剤回収システム1の外部に排出する経路である。
【0030】
第3流路F3から、第4流路F4が分岐している。吸脱着処理装置50で有機溶剤の吸着処理が行なわれた後のガスの一部は、脱着用ガスとして使用される。第4流路F4は、加熱気体である脱着用ガスを吸脱着処理装置50に供給する経路である。第4流路F4には、脱着用ガス送風機61と、脱着ヒーター62と、切換弁63,64とが設けられている。脱着用ガスは、脱着用ガス送風機61で送り出されて、吸脱着処理装置50に送り込まれる。脱着ヒーター62は、吸脱着処理装置50に導入される前の脱着用ガスを加熱する。
【0031】
切換弁63,64は、第1処理槽51への脱着用ガスの供給および停止と、第2処理槽53への脱着用ガスの供給および停止とを切り換える。切換弁63は、第1処理槽51への脱着用ガスの経路に設けられている。切換弁63は、第1処理槽51への脱着用ガスの経路の開閉を切り換える。切換弁64は、第2処理槽53への脱着用ガスの経路に設けられている。切換弁64は、第2処理槽53への脱着用ガスの経路の開閉を切り換える。切換弁63,64は、開閉弁である。切換弁63,64は、電磁弁または電動弁であってもよい。
【0032】
吸脱着素子52,54に対して径方向内側から外側へ向けて脱着用ガスが通過することにより、吸脱着素子52,54に吸着された有機溶剤が吸脱着素子52,54から脱着する。
【0033】
第1処理槽51と第2処理槽53とのいずれか一方に、冷却処理ガスが供給されて、冷却処理ガスに含有される有機溶剤を吸着する処理が行なわれる。このとき、第1処理槽51と第2処理槽53とのいずれか他方には、脱着用ガスが供給されて、吸脱着素子52,54に吸着した有機溶剤を脱着する処理が行なわれる。吸脱着素子52,54への有機溶剤の吸着と、吸脱着素子52,54からの有機溶剤の脱着と、が交互に行なわれる。
【0034】
具体的に、ダンパ55は、第1処理槽51への冷却処理ガスの経路の開閉を切り換える。ダンパ56は、第1処理槽51から排出される清浄ガスの経路の開閉を切り換える。ダンパ57は、第2処理槽53への冷却処理ガスの経路の開閉を切り換える。ダンパ58は、第2処理槽53から排出される清浄ガスの経路の開閉を切り換える。ダンパ55~58による経路の開閉の切り換えと、切換弁63,64の開閉とが、互いに連動している。
【0035】
ダンパ55で第1処理槽51への冷却処理ガスの経路を開放するとともに、ダンパ56で第1処理槽51からの清浄ガスの経路を開放する。このとき、ダンパ57で第2処理槽53への冷却処理ガスの経路を閉塞させるとともに、ダンパ58で第2処理槽53からの清浄ガスの経路を閉塞させる。かつ、切換弁63を閉状態にして第1処理槽51への脱着用ガスの経路を閉塞させ、切換弁64を開状態にして第2処理槽53への脱着用ガスの経路を開放する。これにより、第1処理槽51に冷却処理ガスを通過させて、冷却処理ガスに含有される有機溶剤を吸脱着素子52で吸着する処理と、第2処理槽53に脱着用ガスを通過させて、吸脱着素子54から有機溶剤を脱着する処理と、が同時に行なわれる。
【0036】
ダンパ57で第2処理槽53への冷却処理ガスの経路を開放するとともに、ダンパ58で第2処理槽53からの清浄ガスの経路を開放する。このとき、ダンパ55で第1処理槽51への冷却処理ガスの経路を閉塞させるとともに、ダンパ56で第1処理槽51への脱着用ガスの経路を閉塞させる。かつ、切換弁64を閉状態にして第2処理槽53への脱着用ガスの経路を閉塞させ、切換弁63を開状態にして第1処理槽51への脱着用ガスの経路を開放する。これにより、第2処理槽53に冷却処理ガスを通過させて、冷却処理ガスに含有される有機溶剤を吸脱着素子54で吸着する処理と、第1処理槽51に脱着用ガスを通過させて、吸脱着素子52から有機溶剤を脱着する処理と、が同時に行なわれる。
【0037】
吸脱着素子52,54に含まれる吸着材としては、たとえば、粒状、粉体状、繊維状、ハニカム状の活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナなどを用いることができる。特に活性炭素繊維(ACF)が用いることが好ましい。たとえば、ACFを支持体に固定し、または自己支持にて円筒状に構成し、芯材内に縦型に配設することで、吸脱着素子52,54を形成することができる。
【0038】
吸脱着処理装置50には、第5流路F5が接続されている。吸脱着素子52,54から有機溶剤を脱着する処理をした後の脱着用ガスは、戻りガスとして吸脱着処理装置50から排出される。第5流路F5は、第1流路F1に接続されている。戻りガスは、第5流路F5を経由して、第1流路F1に戻され、被処理ガスに混合される。
【0039】
有機溶剤回収システム1はさらに、ガスパージ装置100を備えている。ガスパージ装置100は、有機溶剤回収システム1への被処理ガスの供給が停止している間に、凝縮回収装置10に不活性ガスを供給するための装置である。具体的に、ガスパージ装置100は、凝縮部20と、回収タンク30の気層部31と、に不活性ガスを供給する。ガスパージ装置100は、凝縮部20内に液体として存在している有機溶剤を、加圧気体である不活性ガスで押し出す。またガスパージ装置100は、凝縮部20および気層部31内の被処理ガスおよび空気を不活性ガスで置換して、凝縮部20および気層部31内を不活性ガス雰囲気にする。不活性ガスは、たとえば窒素ガスである。
【0040】
ガスパージ装置100は、第1開閉弁101を有している。第1開閉弁101は、第1流路F1に設けられている。第1開閉弁101は、第1流路F1を開閉する弁である。ガスパージ装置100は、第2開閉弁102を有している。第2開閉弁102は、第2流路F2に設けられている。第2開閉弁102は、第2流路F2を開閉する弁である。
【0041】
凝縮回収装置10を通過する被処理ガスの流れ方向において、第1開閉弁101は凝縮回収装置10の上流側に設けられ、第2開閉弁102は凝縮回収装置10の下流側に設けられている。
【0042】
ガスパージ装置100は、ガス供給経路110を有している。ガス供給経路110は、第1開閉弁101と凝縮部20との間の、第1流路F1に接続されている。ガス供給経路110は、凝縮回収装置10に不活性ガスG11を供給する経路である。ガス供給経路110に、ガス供給弁111が設けられている。ガス供給弁111は、ガス供給経路110を開閉する弁である。ガス供給弁111が開路状態にしたガス供給経路110を経由して、凝縮回収装置10に不活性ガスG11が供給される。
【0043】
ガス供給経路110に、不活性ガスG11の発生源が接続されている。発生源は、たとえば窒素ボンベまたは窒素発生装置である。発生源から、大気圧よりも高い圧力の不活性ガスG11が、ガス供給経路110に供給される。
【0044】
ガスパージ装置100は、ガス排出経路120を有している。ガス排出経路120は、凝縮部20と第2開閉弁102との間の、第2流路F2に接続されている。ガス排出経路120は、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスG12の経路となる。ガス排出経路120に、ガス排出弁121が設けられている。ガス排出弁121は、ガス排出経路120を開閉する弁である。凝縮回収装置10から排出される不活性ガスG12は、ガス排出弁121が開路状態にしたガス排出経路120を通過して流れる。
【0045】
ガス排出経路120から、大気中に不活性ガスG12が排出される。ガス排出経路120からの不活性ガスG12の排出口に、不活性ガスG12中に含有される有機溶剤を回収する回収装置が設けられてもよい。ガス排出経路120からの不活性ガスG12の排出口に、不活性ガスG12中に含有される有機溶剤を吸着する交換式の吸着素子が設けられてもよい。このようにすれば、大気中に放出される不活性ガスG12中の有機溶剤の濃度を下げることができる。
【0046】
第1開閉弁101、第2開閉弁102、ガス供給弁111およびガス排出弁121は、電磁石の電磁力によって弁体を開閉する電磁弁、電動機で操作する電動弁などの、電気的駆動弁であってもよい。または、第1開閉弁101、第2開閉弁102、ガス供給弁111およびガス排出弁121は、手動で開度を調整する弁であってもよい。第1開閉弁101、第2開閉弁102、ガス供給弁111およびガス排出弁121は、開閉弁に限られない。たとえば、ガス供給弁111として、不活性ガスの発生源から第1流路F1へ向かう流れを許容し、逆方向の流れを閉じる逆止弁を用いてもよい。
【0047】
ガスパージ装置100は、戻りガス経路130をさらに有している。戻りガス経路130は、回収タンク30内に貯留された有機溶剤上の気層部31と、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスG12の経路である第2流路F2と、を接続している。戻りガス経路130は、ガス排出経路120が第2流路F2に接続される位置よりも、被処理ガスの流れ方向における上流側において、第2流路F2に接続されている。凝縮部20から、第6流路F6を経由して、不活性ガスの一部が回収タンク30の気層部31に導入される。不活性ガスは、気層部31から、戻りガス経路130を経由して、第2流路F2に戻される。
【0048】
戻りガス経路130の接続先は、第2流路F2に限られない。戻りガス経路130は、不活性ガスG12の経路であるガス排出経路120に接続されていてもよい。戻りガス経路130は、ガス排出経路120に接続される場合には、ガス排出弁121よりも上流側(凝縮回収装置10に近い側)のガス排出経路120に接続される。
【0049】
有機溶剤回収システム1へ被処理ガスが供給されている間は、第1開閉弁101と第2開閉弁102とは開状態に維持される。凝縮回収装置10が生産設備90と連通しており、かつ、凝縮回収装置10が吸脱着処理装置50と連通している状態が維持される。生産設備90から排出される被処理ガスは、第1流路F1を経由して凝縮回収装置10に導入される。凝縮回収装置10で一部の有機溶剤が凝縮回収された後の冷却処理ガスは、第2流路F2を経由して、吸脱着処理装置50に導入される。このとき、ガス供給弁111とガス排出弁121とは、閉状態に維持される。
【0050】
有機溶剤回収システム1への被処理ガスの供給が停止している間に、第1開閉弁101が閉じられて、生産設備90と凝縮回収装置10とが非連通になる。第2開閉弁102が閉じられて、凝縮回収装置10と吸脱着処理装置50とが非連通になる。この状態で、ガス供給弁111が開かれる。ガス供給経路110から、凝縮回収装置10に、不活性ガスG11が供給される。不活性ガスG11は、ガス供給経路110、第1流路F1を順に経由して、凝縮部20に導入される。
【0051】
不活性ガスの一部は、凝縮部20内の冷却部21、分離部22およびチャンバ23を順に通過して流れ、凝縮部20から第2流路F2に排出される。不活性ガスの一部は、凝縮部20の分離部22から、第6流路F6を経由して、回収タンク30の気層部31に導入される。不活性ガスは、回収タンク30の気層部31から、戻りガス経路130を通過して第2流路F2に戻される。
【0052】
凝縮部20および気層部31に不活性ガスを充満させた状態で、ガス排出弁121が開かれる。不活性ガスG12は、ガス排出経路120から系外へ排出される。このようにして、凝縮回収装置10の、有機溶剤が液体として存在している箇所、具体的には、気体状の有機溶剤を凝縮して液状にする凝縮部20と、液体状の有機溶剤を貯留する回収タンク30との両方が、不活性ガスでパージされる。凝縮部20および気層部31内の被処理ガスおよび空気が、不活性ガスで置換される。
【0053】
凝縮回収装置10が十分にパージできたら、不活性ガスG11の流れを止めて、有機溶剤回収システム1を停止させる。不活性ガスG11の供給を開始してからの経過時間をタイマーで計測して、所定時間が経過したと判断された時点で、ガス供給弁111とガス排出弁121とを閉じて、不活性ガスG11の供給を停止してもよい。または、ガス排出経路120内を流れるもしくはガス排出経路120から排出される不活性ガスG12に含有される有機溶剤の濃度を計測して、有機溶剤の濃度が十分に低下したと判断された時点で、ガス供給弁111とガス排出弁121とを閉じて、不活性ガスG11の供給を停止してもよい。
【0054】
有機溶剤回収システム1では、凝縮回収装置10の下流側に吸脱着処理装置50が配置されているので、凝縮回収装置10を不活性ガスでパージすることで、吸脱着処理装置50の性能低下を抑制できる効果が得られる。
【0055】
図1に示される例では、第1開閉弁101が第1流路F1に設けられており、ガス供給弁111がガス供給経路110に設けられている。第1開閉弁101とガス供給弁111とは、別々の弁として構成されている。この例に限られず、第1流路F1とガス供給経路110との接続箇所に三方弁が設けられて、この三方弁が、第1流路F1を開閉する第1開閉弁101とガス供給経路110を開閉するガス供給弁111との両方の機能を併せ持つように構成してもよい。三方弁を用いることにより、第1開閉弁101とガス供給弁111とを別々の開閉弁で実現する場合と比べて、弁の配置に必要なスペースを低減できる。
【0056】
同様に、第2流路F2とガス排出経路120との接続箇所に三方弁が設けられて、この三方弁が、第2流路F2を開閉する第2開閉弁102とガス排出経路120を開閉するガス排出弁121との両方の機能を併せ持つように構成してもよい。
【0057】
図1に示される例では、凝縮回収装置10に不活性ガスを供給する経路となるガス供給経路110が第1流路F1に接続され、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスの経路となるガス排出経路120が第2流路F2に接続されている。この例に限られず、凝縮回収装置10に不活性ガスを供給する経路となるガス供給経路110が第2流路F2に接続され、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスの経路となるガス排出経路120が第1流路F1に接続されてもよい。この場合、戻りガス経路130は、ガス排出経路120と第1流路F1との接続箇所と凝縮部20との間の第1流路F1に接続されてもよく、ガス排出経路120に接続されてもよい。
【0058】
図1に示される例では、第2流路F2にガス排出経路120が接続され、かつ第2流路F2に戻りガス経路130が接続されている。気層部31から流出する不活性ガスは、戻りガス経路130、第2流路F2およびガス排出経路120を順に経由して、大気中に排出される。この例に限られず、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスG12の経路となるガス排出経路120が、回収タンク30の気層部31に接続されていてもよい。この場合、気層部31から流出する不活性ガスは、ガス排出経路120に直接流入することになるので、戻りガス経路130を省略することが可能である。
【0059】
凝縮回収装置10は、冷却部21から分離部22へ被処理ガス(または不活性ガス)が流れる方向と、分離部22からチャンバ23へ被処理ガス(または不活性ガス)が流れる方向と、が交差する、L字状の構造を有してもよい。このとき分離部22の下方に、凝縮した有機溶剤を受ける漏斗状の受け部が設けられてもよい。これにより、凝縮した有機溶剤の液滴が凝縮部20から第2流路F2へ流出して吸脱着処理装置50へ到達することを抑制できる。
【0060】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態の有機溶剤回収システム1の構成を概略的に示す図である。第1実施形態では、吸脱着処理装置50で有機溶剤の吸着処理が行なわれた後のガスの一部を脱着用ガスとして使用する例について説明した。この例に替えて、
図2に示されるように、脱着用ガスG8を、系外から吸脱着処理装置50に導入する構成としてもよい。この場合、脱着用ガスG8は、水蒸気であってもよい。または、脱着用ガスG8は、不活性ガスであってもよく、加熱空気であってもよい。
【0061】
また、第5流路F5が第1流路F1に接続される第1実施形態の例に替えて、第2実施形態では、第5流路F5に、第二凝縮回収装置80が設けられている。第二凝縮回収装置80は、脱着用ガスに含有される有機溶剤の一部を凝縮させて回収する。第二凝縮回収装置80は、第二凝縮部81と、第二回収タンク82とを有している。
【0062】
第二凝縮回収装置80に導入される脱着用ガスには、吸脱着素子52,54から脱着した有機溶剤が含まれている。第二凝縮部81は、吸脱着処理装置50から排出された脱着用ガスを冷却することによって、脱着用ガスに含まれる有機溶剤の一部を凝縮させる。凝縮した液体状の有機溶剤は、第二回収タンク82に集液される。第二回収タンク82に貯留される液体状の有機溶剤が、回収液L4として回収される。
【0063】
第二凝縮回収装置80から、含有する有機溶剤の濃度が低減された戻りガスが排出される。第5流路F5は、第2流路F2に接続されている。戻りガスは、第5流路F5を経由して、第2流路F2に戻され、冷却処理ガスに混合される。
【0064】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態の有機溶剤回収システム1の構成を概略的に示す図である。第1および第2実施形態と異なり、第3実施形態の有機溶剤回収システム1は、ディスク型の吸脱着処理装置50を備えている。吸脱着処理装置50は、第1処理槽51と、第2処理槽53とを有している。
【0065】
吸脱着処理装置50は、回転軸と、回転軸の周りに設けられた図示しない吸脱着素子とを有している。回転軸まわりに吸脱着素子を回転させることにより、吸脱着素子は、第1処理槽51と第2処理槽53とに交互に移動する。
【0066】
第1処理槽51に、第2流路F2と第3流路F3とが接続されている。第2流路F2から第1処理槽51に冷却処理ガスが導入されることにより、吸脱着素子に冷却処理ガスが接触する。このとき、冷却処理ガスに含有される有機溶剤が吸脱着素子に吸着される。これにより冷却処理ガスが清浄化される。清浄化された清浄ガスG9は、第3流路F3から外部に排出される。
【0067】
吸脱着処理装置50で有機溶剤の吸着処理が行なわれた後のガスの一部が、脱着用ガスとして使用される。第1処理槽51において有機溶剤を吸着した吸脱着素子が、連続的に第2処理槽53に移動する。第2処理槽53に、第4流路F4と第5流路F5とが接続されている。第4流路F4から第2処理槽53に脱着用ガスが導入されることにより、吸脱着素子に脱着用ガスが接触して、吸脱着素子に吸着した有機溶剤を脱着する処理が行なわれる。吸脱着素子から有機溶剤を脱着する処理をした後の戻りガスは、第5流路F5を経由して、第1流路F1に戻され、被処理ガスに混合される。
【0068】
以上説明したディスク型の吸脱着処理装置50に替えて、公知のシリンダー型の吸脱着処理装置が、有機溶剤回収システム1に適用されてもよい。
【0069】
[作用および効果]
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0070】
図1~
図3に示されるように、第1流路F1は、被処理ガスを凝縮回収装置10に導入する経路である。第2流路F2は、凝縮回収装置10から吸脱着処理装置50への冷却処理ガスの経路である。第1開閉弁101は、第1流路F1に設けられており、第1流路F1を開閉する。第2開閉弁102は、第2流路F2に設けられており、第2流路F2を開閉する。ガス供給経路110は、第1開閉弁101と凝縮回収装置10との間に接続されている。ガス供給経路110は、凝縮回収装置10に不活性ガスを供給する経路となる。ガス排出経路120は、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスの経路となる。
【0071】
凝縮回収装置10の上流側に第1開閉弁101を設け、凝縮回収装置10の下流側に第2開閉弁102を設ける。有機溶剤回収システム1の停止時に、第1開閉弁101と第2開閉弁102との両方を閉める。下流側の第2開閉弁102を閉じた状態で有機溶剤回収システム1を停止することで、凝縮回収装置10内に残存する液体状の有機溶剤が再揮発しても、再揮発した有機溶剤が吸脱着処理装置50に導入されることがない。有機溶剤回収システムの停止中に再揮発した有機溶剤が吸脱着素子52,54に吸着することを、抑制することができる。したがって、有機溶剤回収システムの停止中に吸脱着素子52,54が吸着熱によって発熱することを防止できる。また、次回の有機溶剤回収システム1の起動時に、吸脱着処理装置50の性能を確保できる。
【0072】
有機溶剤が再揮発する可能性のある凝縮回収装置10に不活性ガスを供給して、凝縮部20内および回収タンク30内に不活性ガスを充満させる。凝縮部20内および回収タンク30内を空気雰囲気ではなくし不活性ガス雰囲気にすることで、凝縮部20または回収タンク30に残存する有機溶剤の温度が上昇して再揮発しても、周囲に不活性ガスしかないので、有機溶剤の濃度が爆発下限界温度を超えても引火しなくなる。したがって、有機溶剤回収システム1の停止中の安全性を向上することができる。
【0073】
図1~
図3に示されるように、ガス供給弁111が開路状態にしたガス供給経路110を経由して、凝縮回収装置10に不活性ガスが供給されてもよい。凝縮回収装置10に被処理ガスが供給されている間は、ガス供給弁111を閉じることにより、凝縮回収装置10への不活性ガスの供給を確実に停止することができる。凝縮回収装置10への被処理ガスの供給が停止したときに、第1開閉弁101を閉じ、ガス供給弁111を開くことにより、ガス供給経路110に接続された不活性ガスの発生源から凝縮回収装置10に、容易に不活性ガスを供給することができる。
【0074】
図1~
図3に示されるように、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスは、ガス排出弁121が開路状態にしたガス排出経路120を通過してもよい。ガス排出弁121を開くことにより、凝縮回収装置10から、ガス排出経路120を経由させて、系外に不活性ガスを容易に排出することができる。
【0075】
図1~
図3に示されるように、戻りガス経路130は、回収タンク30内に貯留された有機溶剤上の気層部31と、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスの経路である第2流路F2と、を接続してもよい。凝縮部20に導入される不活性ガスの一部は、冷却部21、分離部22およびチャンバ23を順に通過して、第2流路F2からガス排出経路120へ流れる。凝縮部20に導入される導入される不活性ガスの一部は、分離部22から第6流路F6を通過して回収タンク30の気層部31に導入され、回収タンク30から流出して戻りガス経路130、第2流路F2を順に経由してガス排出経路120へ流れる。
【0076】
戻りガス経路130を設けることにより、凝縮部20の全体と回収タンク30の気層部31とに不活性ガスを確実に流通させることができる。凝縮部20の内部に不活性ガスが十分に供給されないデッドスペースが形成されることを回避でき、凝縮部20内と回収タンク30内とを効率よく不活性ガスで置換することができる。
【0077】
図1~
図3に示されるように、温度伝送器70は、冷却処理ガスの温度を検出して伝送してもよい。冷却処理ガスの温度に基づいて、冷却部21に供給される冷媒の流量および温度を調整するフィードバック制御をすることで、冷却処理ガスに含有される有機溶剤の濃度を、爆発下限界温度以下に確実に維持することができる。
【0078】
凝縮回収装置10に不活性ガスを供給する経路となるガス供給経路110を、第2流路F2に接続し、凝縮回収装置10から排出される不活性ガスの経路となるガス排出経路120を、第1流路F1に接続しても構わない。
図1~
図3に示されるように、ガス供給経路110を第1流路F1に接続しガス排出経路120を第2流路F2に接続すれば、不活性ガスは、第1流路F1から凝縮部20に流入し、凝縮部20を経由して、凝縮部20から第2流路F2に流出するように流れることになる。不活性ガスの流れ方向を、凝縮回収装置10に被処理ガスを供給するときの被処理ガスの流れ方向に、揃えることができる。冷却部21に液体状の有機溶剤が残存している場合に、その液体状の有機溶剤を、不活性ガスの流れに乗せて冷却部21から分離部22に移動させて、分離部22で捕捉して回収タンク30に回収することができる。これにより、排出される不活性ガスに含有される有機溶剤の濃度を、低くすることができる。
【0079】
図1~
図3に示されるように、有機溶剤回収システム1への被処理ガスの供給が停止している間に、第1開閉弁101と第2開閉弁102とを閉じ、ガス供給経路110から凝縮回収装置10に不活性ガスを供給することにより、凝縮回収装置10内の被処理ガスを不活性ガスで置換することができる。これにより、再揮発した有機溶剤が吸脱着処理装置50に供給されることを確実に回避でき、再揮発した有機溶剤の引火を確実に回避することができる。
【0080】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 有機溶剤回収システム、10 凝縮回収装置、20 凝縮部、21 冷却部、22 分離部、23 チャンバ、30 回収タンク、31 気層部、32 液貯留部、40 冷却処理ガス送風機、50 吸脱着処理装置、51 第1処理槽、52,54 吸脱着素子、53 第2処理槽、55~58 ダンパ、61 脱着用ガス送風機、62 脱着ヒーター、63,64 切換弁、70 温度伝送器、80 第二凝縮回収装置、81 第二凝縮部、82 第二回収タンク、90 生産設備、100 ガスパージ装置、101 第1開閉弁、102 第2開閉弁、110 ガス供給経路、111 ガス供給弁、120 ガス排出経路、121 ガス排出弁、130 戻りガス経路、F1 第1流路、F2 第2流路、F6 第6流路、G11,G12 不活性ガス。
【要約】
有機溶剤回収システムの停止中に再揮発した有機溶剤が吸脱着素子に吸着することを抑制する。第1流路(F1)は、被処理ガスを凝縮回収装置(10)に導入する経路である。第2流路(F2)は、凝縮回収装置(10)から吸脱着処理装置(50)への冷却処理ガスの経路である。第1開閉弁(101)は、第1流路(F1)に設けられており、第1流路(F1)を開閉する。第2開閉弁(102)は、第2流路(F2)に設けられており、第2流路(F2)を開閉する。ガス供給経路(110)は、第1開閉弁(101)と凝縮回収装置(10)との間に接続されている。ガス供給経路(110)は、凝縮回収装置(10)に不活性ガスを供給する経路となる。ガス排出経路(120)は、凝縮回収装置(10)から排出される不活性ガスの経路となる。