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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】有機溶剤回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20240214BHJP
   C07B 63/00 20060101ALI20240214BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B01D53/04 230
C07B63/00 G
B01D5/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023570452
(86)(22)【出願日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2023026042
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2022115757
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 武将
(72)【発明者】
【氏名】林 敏明
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/054733(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/014013(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/132071(WO,A1)
【文献】特開平09-173758(JP,A)
【文献】特開昭61-082825(JP,A)
【文献】特開2012-005956(JP,A)
【文献】特開2014-193422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 5/00、53/02-12
C07B 63/00
C07C 7/00-13
D06F 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する被処理ガスから前記有機溶剤を分離して回収する有機溶剤回収システムであって、
前記被処理ガスは、第一被処理ガスと、含有する前記有機溶剤の濃度が前記第一被処理ガスよりも低い第二被処理ガスとを含み、
前記第一被処理ガスを冷却することで、前記第一被処理ガスに含有される前記有機溶剤を凝縮させて、含有する前記有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスとして排出する、凝縮回収装置と、
前記冷却処理ガスと前記第二被処理ガスとを合流させて第三被処理ガスとする合流部と、
前記第三被処理ガスに含有される前記有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子を有し、前記第三被処理ガスの導入による前記吸脱着素子への前記有機溶剤の吸着と、脱着用ガスの導入による前記吸脱着素子からの前記有機溶剤の脱着と、を交互に行なう吸脱着処理装置と、を備える、有機溶剤回収システム。
【請求項2】
前記第二被処理ガスの風量を前記第一被処理ガスの風量で除した商をAとし、前記第一被処理ガスに含有される前記有機溶剤の濃度を前記第二被処理ガスに含有される前記有機溶剤の濃度で除した商をBとし、前記凝縮回収装置における前記第一被処理ガスに含有される前記有機溶剤の回収率をC(%)とした場合に、
0<(A÷B÷C)≦0.033
を満たす、請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項3】
前記吸脱着処理装置から排出された前記脱着用ガスを冷却することで、前記脱着用ガスに含有される前記有機溶剤を凝縮させて回収する、第二凝縮回収装置を備える、請求項1または請求項2に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項4】
前記脱着用ガスは水蒸気である、請求項3に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項5】
前記脱着用ガスは不活性ガスである、請求項1または請求項2に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項6】
前記脱着用ガスが循環する循環経路をさらに備え、前記吸脱着処理装置および前記第二凝縮回収装置は前記循環経路に設けられる、請求項3に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項7】
前記循環経路に設けられ、前記第二凝縮回収装置から排出された前記脱着用ガスを加熱する加熱部をさらに備える、請求項6に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項8】
前記第三被処理ガスの温度を検出して伝送する温度伝送器をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機溶剤回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開2021/132071号(特許文献1)には、被処理ガスに含まれる有機溶剤の一部を凝縮回収装置で凝縮させた後、未凝縮の有機溶剤を吸脱着素子で吸着して、被処理ガスから有機溶剤を回収する、有機溶剤回収システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2021/132071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被処理ガスに含有される有機溶剤を吸脱着素子を用いて回収する場合、吸脱着素子から有機溶剤を脱着するときの熱によって、回収する有機溶剤の品質が低下することがある。
【0005】
本開示では、回収する有機溶剤の品質を向上できる、有機溶剤回収システムが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、以下の有機溶剤回収システムが提案される。
(第1項)有機溶剤を含有する被処理ガスは、第一被処理ガスと、含有する有機溶剤の濃度が第一被処理ガスよりも低い第二被処理ガスとを含んでいる。被処理ガスから有機溶剤を分離して回収する有機溶剤回収システムは、凝縮回収装置と、合流部と、吸脱着処理装置と、を備えている。凝縮回収装置は、第一被処理ガスを冷却することで、第一被処理ガスに含有される有機溶剤を凝縮させて、含有する有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスとして排出する。合流部は、冷却処理ガスと第二被処理ガスとを合流させて第三被処理ガスとする。吸脱着処理装置は、第三被処理ガスに含有される有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子を有している。吸脱着処理装置は、第三被処理ガスの導入による吸脱着素子への有機溶剤の吸着と、脱着用ガスの導入による吸脱着素子からの有機溶剤の脱着と、を交互に行なう。
【0007】
(第2項)第1項に記載の有機溶剤回収システムにおいて、第二被処理ガスの風量を第一被処理ガスの風量で除した商をAとし、第一被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度を第二被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度で除した商をBとし、凝縮回収装置における第一被処理ガスに含有される有機溶剤の回収率をC(%)とした場合に、0<(A÷B÷C)≦0.033を満たしてもよい。
【0008】
(第3項)第1項または第2項に記載の有機溶剤回収システムは、第二凝縮回収装置を備え、第二凝縮回収装置は、吸脱着処理装置から排出された脱着用ガスを冷却することで、脱着用ガスに含有される有機溶剤を凝縮させて回収してもよい。
【0009】
(第4項)第3項に記載の有機溶剤回収システムにおいて、脱着用ガスは水蒸気であってもよい。
【0010】
(第5項)第1項から第3項のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システムにおいて、脱着用ガスは不活性ガスであってもよい。
【0011】
(第6項)第3項、第4項、または第3項を引用する第5項のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システムは、脱着用ガスが循環する循環経路をさらに備え、吸脱着処理装置および第二凝縮回収装置は循環経路に設けられてもよい。
【0012】
(第7項)第6項に記載の有機溶剤回収システムは、循環経路に設けられ、第二凝縮回収装置から排出された脱着用ガスを加熱する加熱部をさらに備えてもよい。
【0013】
(第8項)第1項から第7項のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システムは、第三被処理ガスの温度を検出して伝送する温度伝送器をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の有機溶剤回収システムによれば、回収する有機溶剤の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。
図2】第2実施形態の有機溶剤回収システムの構成を概略的に示す図である。
図3】本開示の有機溶剤回収システムによるエネルギー削減率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の有機溶剤回収システム1の構成を概略的に示す図である。有機溶剤回収システム1は、有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を分離して回収するシステムである。
【0018】
本開示の有機溶剤回収システムは、熱履歴によって分解する可能性のある有機溶剤の処理に対して好適である。より具体的には、有機溶剤は、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジクロロプロパン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ブロモプロパン、臭化メチル、フロン-112、フロン-113、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ヨウ化メチル等のハロゲン系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ビニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、炭酸ジエチル等のエステル系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセチル等のケトン系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、エポキシド等のエーテル系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、アクリロニトリル等のニトリル系有機溶剤であってもよい。
【0019】
また、上記した有機溶剤以外に、比較的分解しにくい有機溶剤が被処理ガスの一部に含まれてもよい。より具体的には、有機溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール等のフェノール系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、イソノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、テトラデカン、デカリン等の炭化水素系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、ベンゼン、トルエン、m-キシレン、p-キシレン、o-キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン等の芳香族系有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどであってもよい。
【0020】
図1に示されるように、有機溶剤を含有する被処理ガスは、第一被処理ガスと、第二被処理ガスとを含む。第一被処理ガスは、比較的高濃度の有機溶剤を含有する。第一被処理ガスは、第一被処理ガス排出設備91から排出される。第二被処理ガスは、比較的低濃度の有機溶剤を含有する。第二被処理ガスが含有する有機溶剤の濃度は、第一被処理ガスが含有する有機溶剤の濃度よりも低い。第二被処理ガスは、第二被処理ガス排出設備92から排出される。
【0021】
第一被処理ガス排出設備91と第二被処理ガス排出設備92とは、たとえば生産設備である。生産設備は、たとえばフィルム塗工機である。第一被処理ガスはたとえば、フィルム塗工機の上流側からの排気ガスである。第二被処理ガスはたとえば、フィルム塗工機の下流側からの排気ガスである。第一被処理ガスに含まれる有機溶剤と、第二被処理ガスに含まれる有機溶剤とは、同じであってもよく、異なってもよい。第一被処理ガスに含まれる有機溶剤と、第二被処理ガスに含まれる有機溶剤とは、混合しても危険のない物質である。
【0022】
図1に示されるように、有機溶剤回収システム1は、凝縮回収装置10と、吸脱着処理装置50とを主に備えている。
【0023】
第一被処理ガス排出設備91から排出される第一被処理ガスは、第1流路F1を経由して凝縮回収装置10に導入される。第1流路F1は、第一被処理ガスを凝縮回収装置10に導入する経路である。凝縮回収装置10は、凝縮部20を有している。凝縮部20は、冷却部21と、分離部22と、チャンバ23を有している。
【0024】
冷却部21は、冷却部21を通過する第一被処理ガスを冷却する。冷却部21は、第一被処理ガスを冷却することによって、第一被処理ガスに含有される有機溶剤の一部を凝縮させる。好ましくは冷却部21は、第一被処理ガスに含有される有機溶剤の半分以上を凝縮させる。分離部22は、第一被処理ガスから、凝縮された液体状の有機溶剤を分離する。
【0025】
冷却部21が第一被処理ガスを冷却する手段は、特に限定されない。冷却部21はたとえば、冷却水、冷水、ブラインなどの冷媒と、第一被処理ガスと、の熱交換によって第一被処理ガスを冷却する熱交換器であってもよい。冷媒の流量および温度などの冷却条件は、第一被処理ガスに含有される有機溶剤に応じて、適宜決めることができる。
【0026】
分離部22が液体状の有機溶剤を分離する手段は、特に限定されない。分離部22はたとえば、デミスター、フィルタ、メッシュなどの液滴を接触して捕捉する網目状構造体を用いてもよい。
【0027】
チャンバ23は、一定容量の空間を有する構造体である。分離部22において有機溶剤が分離された第一被処理ガスは、中空空間であるチャンバ23を通過する。チャンバ23から、含有する有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスが排出される。冷却処理ガスには、未凝縮の有機溶剤が含まれている。凝縮回収装置10から排出された冷却処理ガスは、第3流路F3を経由して流れる。第3流路F3は、凝縮回収装置10から合流部100への冷却処理ガスの経路である。
【0028】
凝縮回収装置10は、回収タンク30を有している。回収タンク30は、分離部22の下方に配置されている。分離部22と回収タンク30とは、第8流路F8によって接続されている。冷却部21で凝縮され分離部22で捕捉された液体状の有機溶剤は、重力の作用によって、第8流路F8を経由して、回収タンク30に集液される。回収タンク30内には、液体状の有機溶剤が貯留する液貯留部32と、液貯留部32の上方の気層部31とが形成されている。第8流路F8の径は、第3流路F3の径よりも小さくてもよい。
【0029】
液貯留部32に貯留されている液体状の有機溶剤が、回収液L3として回収される。回収液L3の流路に、図示しないポンプが設けられていてもよい。回収タンク30には、図示しない液面計が設けられていてもよい。回収タンク30内の有機溶剤の液面レベルが上限に到達したことを液面計が検知すると、ポンプを起動させて回収液L3の回収が開始されてもよい。液体状の有機溶剤が回収タンク30から流出すると、回収タンク30内の有機溶剤の液面レベルが低下する。有機溶剤の液面レベルが下限に到達したことを液面計が検知すると、ポンプを停止させて回収液L3の回収を停止してもよい。
【0030】
第3流路F3には、冷却処理ガス送風機40が設けられている。冷却処理ガスは、冷却処理ガス送風機40で送り出されて、合流部100に送り込まれる。
【0031】
第二被処理ガス排出設備92から排出される第二被処理ガスは、第2流路F2を経由して合流部100に導入される。第2流路F2は、第二被処理ガスを、冷却処理ガスとの合流点である合流部100に導入する経路である。合流部100は、第一被処理ガスに含有される有機溶剤の一部が凝縮回収された後の冷却処理ガスと、第二被処理ガスと、を合流させて、第三被処理ガスとする。
【0032】
合流部100の出口に、フィルタ101が配置されている。フィルタ101は、後述する第三被処理ガス送風機42に導入される前に、ガスに含まれる比較的粗い塵埃を捕集するためのフィルタである。フィルタ101を収容する筐体が、合流部100として用いられてもよい。合流部100は、箱状の形状を有していてもよい。箱状の合流部100の第一面(たとえば、端面)に第3流路F3が接続され、箱状の合流部の第二面(たとえば、天井面)に第2流路F2が接続されてもよい。ガスの流れ方向におけるフィルタ101の上流側で、冷却処理ガスと第二被処理ガスとが合流してもよい。箱状の筐体に第2流路F2と第3流路F3とを繋げて合流部100にすることで、合流部100を容易に加工可能である。
【0033】
合流部100から、冷却処理ガスと第二被処理ガスとを混合させたガスである第三被処理ガスが排出される。合流部100から排出された第三被処理ガスは、第4流路F4を経由して流れる。第4流路F4は、合流部100から吸脱着処理装置50への第三被処理ガスの経路である。
【0034】
第4流路F4に、第三被処理ガスを加温するガスヒーター41が設けられている。第三被処理ガスの湿度が高すぎると、吸脱着処理装置50が十分な性能を発揮できないことがある。ガスヒーター41によって第三被処理ガスの温度を上げることで、第三被処理ガスの湿度を下げて、吸脱着処理装置50の性能向上が図れる。第4流路F4には、第三被処理ガス送風機42が設けられている。第三被処理ガスは、第三被処理ガス送風機42で送り出されて、吸脱着処理装置50に送り込まれる。
【0035】
温度伝送器70は、第4流路F4を流れる第三被処理ガスの温度を検出する。温度伝送器70は、ガスヒーター41よりも上流側(合流部100に近い側)の、第三被処理ガスの温度を検出する。温度伝送器70は、検出した第三被処理ガスの温度を、図示しない制御装置に伝送する。温度伝送器70が検出し伝送する第三被処理ガスの温度に基づいて、冷却部21に供給される冷媒の流量および温度を調整するフィードバック制御が行なわれる。
【0036】
ガス中に含有される有機溶剤の飽和濃度は、そのガスの温度で決まる。ガスの温度が低いほど、ガス中に含有され得る有機溶剤の濃度が低くなる。第三被処理ガスの温度をモニタリングすることで、第三被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度が爆発下限界温度以下であるかどうかを判断できる。第三被処理ガスの温度に基づいて、第三被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度が爆発下限界温度以下となるように、冷却部21における第一被処理ガスの冷却を制御することができる。これにより、爆発下限界濃度を超える濃度の有機溶剤を含む第三被処理ガスが第三被処理ガス送風機42に送られて、空気雰囲気下で第三被処理ガスが発火する可能性を、低減できる。
【0037】
吸脱着処理装置50は、第1処理槽51を有している。第1処理槽51には、中空円筒形状の吸脱着素子52が収容されている。第1処理槽51の下部に、ダンパ55が設けられている。第1処理槽51の、吸脱着素子52の上方に、ダンパ56が設けられている。吸脱着処理装置50は、第2処理槽53を有している。第2処理槽53には、中空円筒形状の吸脱着素子54が収容されている。第2処理槽53の下部に、ダンパ57が設けられている。第2処理槽53の、吸脱着素子54の上方に、ダンパ58が設けられている。
【0038】
吸脱着素子52,54に対して径方向外側から内側へ向けて第三被処理ガスが通過することにより、吸脱着素子52,54に第三被処理ガスが接触する。このとき、第三被処理ガスに含有される有機溶剤が吸脱着素子52,54に吸着される。これにより第三被処理ガスが清浄化される。清浄化された清浄ガスG9は、第5流路F5から外部に排出される。第5流路F5は、吸脱着処理装置50で有機溶剤の吸着処理が行なわれ清浄化された後の清浄ガスG9を、有機溶剤回収システム1の外部に排出する経路である。
【0039】
系外から吸脱着処理装置50に、脱着用ガスG8が導入される。第6流路F6は、加熱気体である脱着用ガスを吸脱着処理装置50に供給する経路である。脱着用ガスG8は、水蒸気であってもよい。または、脱着用ガスG8は、不活性ガスであってもよく、加熱空気であってもよい。
【0040】
切換弁63,64は、第1処理槽51への脱着用ガスの供給および停止と、第2処理槽53への脱着用ガスの供給および停止とを切り換える。切換弁63は、第1処理槽51への脱着用ガスの経路に設けられている。切換弁63は、第1処理槽51への脱着用ガスの経路の開閉を切り換える。切換弁64は、第2処理槽53への脱着用ガスの経路に設けられている。切換弁64は、第2処理槽53への脱着用ガスの経路の開閉を切り換える。切換弁63,64は、開閉弁である。切換弁63,64は、電磁弁または電動弁であってもよい。
【0041】
吸脱着素子52,54に対して径方向内側から外側へ向けて脱着用ガスが通過することにより、吸脱着素子52,54に吸着された有機溶剤が吸脱着素子52,54から脱着する。
【0042】
第1処理槽51と第2処理槽53とのいずれか一方に、第三被処理ガスが供給されて、第三被処理ガスに含有される有機溶剤を吸着する処理が行なわれる。このとき、第1処理槽51と第2処理槽53とのいずれか他方には、脱着用ガスが供給されて、吸脱着素子52,54に吸着した有機溶剤を脱着する処理が行なわれる。吸脱着素子52,54への有機溶剤の吸着と、吸脱着素子52,54からの有機溶剤の脱着と、が交互に行なわれる。
【0043】
具体的に、ダンパ55は、第1処理槽51への第三被処理ガスの経路の開閉を切り換える。ダンパ56は、第1処理槽51から排出される清浄ガスの経路の開閉を切り換える。ダンパ57は、第2処理槽53への第三被処理ガスの経路の開閉を切り換える。ダンパ58は、第2処理槽53から排出される清浄ガスの経路の開閉を切り換える。ダンパ55~58による経路の開閉の切り換えと、切換弁63,64の開閉とが、互いに連動している。
【0044】
ダンパ55で第1処理槽51への第三被処理ガスの経路を開放するとともに、ダンパ56で第1処理槽51からの清浄ガスの経路を開放する。このとき、ダンパ57で第2処理槽53への第三被処理ガスの経路を閉塞させるとともに、ダンパ58で第2処理槽53からの清浄ガスの経路を閉塞させる。かつ、切換弁63を閉状態にして第1処理槽51への脱着用ガスの経路を閉塞させ、切換弁64を開状態にして第2処理槽53への脱着用ガスの経路を開放する。これにより、第1処理槽51に第三被処理ガスを通過させて、第三被処理ガスに含有される有機溶剤を吸脱着素子52で吸着する処理と、第2処理槽53に脱着用ガスを通過させて、吸脱着素子54から有機溶剤を脱着する処理と、が同時に行なわれる。
【0045】
ダンパ57で第2処理槽53への第三被処理ガスの経路を開放するとともに、ダンパ58で第2処理槽53からの清浄ガスの経路を開放する。このとき、ダンパ55で第1処理槽51への第三被処理ガスの経路を閉塞させるとともに、ダンパ56で第1処理槽51への脱着用ガスの経路を閉塞させる。かつ、切換弁64を閉状態にして第2処理槽53への脱着用ガスの経路を閉塞させ、切換弁63を開状態にして第1処理槽51への脱着用ガスの経路を開放する。これにより、第2処理槽53に第三被処理ガスを通過させて、第三被処理ガスに含有される有機溶剤を吸脱着素子54で吸着する処理と、第1処理槽51に脱着用ガスを通過させて、吸脱着素子52から有機溶剤を脱着する処理と、が同時に行なわれる。
【0046】
吸脱着素子52,54に含まれる吸着材としては、たとえば、粒状、粉体状、繊維状、ハニカム状の活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナなどを用いることができる。特に活性炭素繊維(ACF)が用いることが好ましい。たとえば、ACFを支持体に固定し、または自己支持にて円筒状に構成し、芯材内に縦型に配設することで、吸脱着素子52,54を形成することができる。
【0047】
吸脱着処理装置50には、第7流路F7が接続されている。吸脱着素子52,54から有機溶剤を脱着する処理をした後の脱着用ガスは、第7流路F7を経由して吸脱着処理装置50から排出される。第7流路F7に、第二凝縮回収装置80が設けられている。脱着用ガスの流れ方向において、第二凝縮回収装置80は、吸脱着処理装置50の下流側に設けられている。第二凝縮回収装置80は、脱着用ガスに含有される有機溶剤の一部を凝縮させて回収する。第二凝縮回収装置80は、第二凝縮部81と、第二回収タンク82とを有している。
【0048】
第二凝縮回収装置80に導入される脱着用ガスには、吸脱着素子52,54から脱着した有機溶剤が含まれている。第二凝縮部81は、吸脱着処理装置50から排出された脱着用ガスを冷却することによって、脱着用ガスに含まれる有機溶剤の一部を凝縮させる。凝縮した液体状の有機溶剤は、第二回収タンク82に集液される。第二回収タンク82に貯留される液体状の有機溶剤が、回収液L4として回収される。
【0049】
上記では吸脱着処理装置50は中空円筒形状の吸脱着素子が収容された処理槽を2つ備えている構成を説明したが、吸脱着処理装置50が備える処理槽の数に限定はない。また、吸脱着処理装置50として、例えば特開昭61-167430に示されるようなディスク型の吸脱着処理装置、例えば特開昭63-84616に示されるような縦置きシリンダー型の吸脱着処理装置、または、例えばWO2016/189958、WO2017/170207に示されるような横置きシリンダー型の吸脱着処理装置、を備えたシステムとしてもよい。
【0050】
第二凝縮回収装置80から、含有する有機溶剤の濃度が低減された戻りガスが排出される。第7流路F7は、第4流路F4に接続されている。戻りガスは、第7流路F7を経由して、第4流路F4に戻され、第三被処理ガスに混合される。
【0051】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態の有機溶剤回収システム1の構成を概略的に示す図である。第1実施形態では、脱着用ガスを、含有する有機溶剤を凝縮回収した後に戻りガスとして第4流路F4に戻す例について説明した。この例に替えて、図2に示されるように、有機溶剤回収システム1は、脱着用ガスG8が循環する循環経路C1を備えてもよい。
【0052】
吸脱着処理装置50および第二凝縮回収装置80(具体的には、第二凝縮部81)は、循環経路C1に設けられている。循環経路C1を流れる脱着用ガスG8の流れ方向において、第二凝縮回収装置80は、吸脱着処理装置50の下流側に設けられている。この場合、脱着用ガスG8は、不活性ガスであってもよい。たとえば脱着用ガスG8は、窒素ガスであってもよい。
【0053】
循環経路C1にはまた、脱着用ガス送風機61と、脱着ヒーター62とが設けられている。循環経路C1を流れる脱着用ガスG8の流れ方向において、脱着用ガス送風機61は、吸脱着処理装置50の上流側に設けられている。脱着用ガスG8は、脱着用ガス送風機61で送り出されて、吸脱着処理装置50に送り込まれる。脱着用ガスG8の流れ方向において、脱着ヒーター62は、脱着用ガス送風機61の下流側かつ吸脱着処理装置50の上流側に設けられている。脱着ヒーター62は、吸脱着処理装置50に導入される前の脱着用ガスG8を加熱する。脱着ヒーター62は、第二凝縮回収装置80から排出された低温状態の脱着用ガスG8を加熱する。
【0054】
第2実施形態の吸脱着処理装置50には、ダンパは設けられていない。吸脱着処理装置50に導入される第三被処理ガスの経路である第4流路F4に、切換弁65A,66Aが設けられている。第三被処理ガスから有機溶剤が除去された清浄ガスG9の経路である第5流路F5に、切換弁65B,66Bが設けられている。吸脱着処理装置50に導入される脱着用ガスG8の経路に、切換弁63A,64Aが設けられている。吸脱着処理装置50から排出された脱着用ガスG8の経路に、切換弁63B,64Bが設けられている。各切換弁の開閉による経路の開閉の切換が、連動している。
【0055】
切換弁66Aを開にして第2処理槽53への第三被処理ガスの経路を開放するとともに、切換弁66Bを開にして第2処理槽53からの清浄ガスの経路を開放する。このとき、切換弁65Aを閉にして第1処理槽51への第三被処理ガスの経路を閉塞させるとともに、切換弁65Bを閉にして第1処理槽51からの清浄ガスの経路を閉塞させる。かつ、切換弁63Aを開にして第1処理槽51へ脱着用ガスを導入する経路を開放し、切換弁63Bを開にして第1処理槽51から脱着用ガスを排出する経路を開放する。切換弁64Aを閉にして第2処理槽53へ脱着用ガスを導入する経路を閉塞させ、切換弁64Bを閉にして第2処理槽53から脱着用ガスを排出する経路を閉塞させる。
【0056】
これにより、第2処理槽53に第三被処理ガスを通過させて、第三被処理ガスに含有される有機溶剤を吸脱着素子54で吸着する処理と、第1処理槽51に脱着用ガスを通過させて、吸脱着素子52から有機溶剤を脱着する処理と、が同時に行なわれる。
【0057】
切換弁65Aを開にして第1処理槽51への第三被処理ガスの経路を開放するとともに、切換弁65Bを開にして第1処理槽51からの清浄ガスの経路を開放する。このとき、切換弁66Aを閉にして第2処理槽53への第三被処理ガスの経路を閉塞させるとともに、切換弁66Bを閉にして第2処理槽53からの清浄ガスの経路を閉塞させる。かつ、切換弁64Aを開にして第2処理槽53へ脱着用ガスを導入する経路を開放し、切換弁64Bを開にして第2処理槽53から脱着用ガスを排出する経路を開放する。切換弁63Aを閉にして第1処理槽51へ脱着用ガスを導入する経路を閉塞させ、切換弁63Bを閉にして第1処理槽51から脱着用ガスを排出する経路を閉塞させる。
【0058】
これにより、第1処理槽51に第三被処理ガスを通過させて、第三被処理ガスに含有される有機溶媒を吸脱着素子52で吸着する処理と、第2処理槽53に脱着用ガスを通過させて、吸脱着素子54から有機溶剤を脱着する処理と、が同時に行なわれる。
【0059】
凝縮回収装置10は、冷却部21から分離部22へ第一被処理ガスが流れる方向と、分離部22からチャンバ23へ第一被処理ガスが流れる方向と、が交差する、L字状の構造を有してもよい。このとき分離部22の下方に、凝縮した有機溶剤を受ける漏斗状の受け部が設けられてもよい。これにより、凝縮した有機溶剤の液滴が凝縮部20から第2流路F2へ流出して吸脱着処理装置50へ到達することを抑制できる。
【0060】
[作用および効果]
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0061】
図1,2に示されるように、有機溶剤回収システム1によって処理される被処理ガスは、第一被処理ガス排出設備91から排出される第一被処理ガスと、第二被処理ガス排出設備92から排出される第二被処理ガスとを含んでいる。第一被処理ガスが含有する有機溶剤の濃度よりも、第二被処理ガスが含有する有機溶剤の濃度の方が低い。高濃度の有機溶剤を含有する第一被処理ガスを凝縮回収装置10に供給して、凝縮回収装置10で第一被処理ガスに含有される有機溶剤の大半を凝縮させて回収する。未凝縮の有機溶剤を含む冷却処理ガスを、凝縮回収装置10から排出する。合流部100は、冷却処理ガスと、低濃度の有機溶剤を含有する第二被処理ガスとを合流させて、第三被処理ガスとする。第三被処理ガスを吸脱着処理装置50に供給して、第三被処理ガスから、第三被処理ガスが含有する有機溶剤を吸脱着素子52,54で吸着除去し、清浄ガスを排出する。
【0062】
高濃度の有機溶剤を含有する第一被処理ガスから、有機溶剤を凝縮させることによって回収する。凝縮回収装置10で回収される有機溶剤は、加熱されることがないため、分解しない。熱履歴によって分解する可能性のある有機溶剤が第一被処理ガスに多く含まれている場合に、回収される有機溶剤の着色、物性変化などが生じることを抑制できるので、回収される有機溶剤の品質を向上することができる。したがって、回収した有機溶剤を有効に再利用することができる。
【0063】
また、第一被処理ガスから有機溶剤の一部を除去した後に第二被処理ガスと合流させることで、吸脱着処理装置50に供給される第三被処理ガスに含まれる有機溶剤の濃度が低減される。そのため、吸脱着処理装置50に充填される吸脱着素子52,54の重量を低減でき、吸脱着処理装置50が小型化する。さらに第二凝縮回収装置80も小型化することから、有機溶剤回収システム1全体として省スペース化を達成できる。
【0064】
従来のシステムでは、第一被処理ガスと第二被処理ガスとを合流させた後に、吸脱着素子で有機溶剤を吸着回収してから排気する。従来のシステムでは、第一被処理ガスと第二被処理ガスとの混合ガスに含まれる有機溶剤の濃度が、有機溶剤を効率的に凝縮回収できる所定の濃度よりも低くなるので、混合ガスから有機溶剤を凝縮回収できない。従来のシステムでは、第一被処理ガスと第二被処理ガスとに含まれる有機溶剤の全量を、吸脱着素子で吸着除去する必要がある。そのため、吸脱着素子の重量が大きくなる。
【0065】
実施形態の有機溶剤回収システム1では、第一被処理ガスに含まれる有機溶剤の一部を凝縮回収装置10で凝縮回収した後の、未凝縮の有機溶剤を、吸脱着素子52,54で吸着除去することになる。従来のシステムに比べて、実施形態の有機溶剤回収システム1では、吸脱着素子52,54の重量が大幅に削減されている。そのため、吸脱着素子52,54から有機溶剤を脱着するためのエネルギーが大幅に削減されるので、省エネルギー化を達成できる。
【0066】
ここで、従来のシステムと比較したエネルギー削減を実現するための有機溶剤回収システム1の運転条件について説明する。図3は、本開示の有機溶剤回収システム1によるエネルギー削減率を示すグラフである。第二被処理ガスの風量を第一被処理ガスの風量で除した商をAとする。第一被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度を、第二被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度で除した商を、Bとする。凝縮回収装置10における、第一被処理ガスに含有される有機溶剤の回収率をC(単位:%)とする。回収率Cは、第一被処理ガスに含有される有機溶剤のうち、凝縮回収装置10において回収される有機溶剤の割合を示す。
【0067】
図3のグラフにおける横軸は、対数表示した(A÷B÷C)の値を示す。図3のグラフにおける縦軸は、エネルギー削減率(単位:%)を示す。第一被処理ガス中の有機溶剤を凝縮回収した後に第二被処理ガスと合流させて第三被処理ガスとし、第三被処理ガス中の有機溶剤を吸着除去する、実施形態の有機溶剤回収システム1に、有機溶剤を回収する処理のために投入されるエネルギー量をEとする。第一被処理ガスと第二被処理ガスとを合流させて吸脱着処理装置で有機溶剤を回収する従来の有機溶剤回収システムに、有機溶剤を回収する処理のために投入されるエネルギー量をE0とする。この場合、エネルギー削減率は、(1-E/E0)×100で表される。
【0068】
エネルギー削減率が0%より大きければ、従来のシステムと比較して投入されるエネルギー量が削減されており、省エネルギー化を達成できるので従来のシステムよりも有利であるということになる。図3のグラフに示されるように、(A÷B÷C)の値が0より大きく0.033以下の範囲で、省エネルギー化を達成できる。
【0069】
つまり、図3に示されるように、第一被処理ガスと第二被処理ガスとを含む被処理ガスから、実施形態の有機溶剤回収システム1によって有機溶剤を回収する場合には、計算式0<(A÷B÷C)≦0.033を満たす運転条件とすることで、エネルギー使用量を削減でき、従来のシステムよりもエネルギー使用を抑えることができる。なお、従来のシステムは、凝縮回収装置10を備えておらず、凝縮回収装置10における回収率Cは0%であるので、上記の計算式を使うことはできない。
【0070】
図1,2に示されるように、有機溶剤回収システム1は、吸脱着処理装置50から排出された脱着用ガスを冷却することで、脱着用ガスに含有される有機溶剤を凝縮させて回収する、第二凝縮回収装置80を備えてもよい。第三被処理ガスが含有する有機溶剤を吸脱着素子52,54で吸着除去し、吸脱着処理装置50に脱着用ガスを導入して吸脱着素子52,54から有機溶剤を脱着させる。吸脱着処理装置50から排出された脱着用ガスに含有する有機溶剤を、第二凝縮回収装置80で凝縮させて回収する。これにより、有機溶剤回収システム1による有機溶剤の回収率を向上することができる。
【0071】
被処理ガスに含有される有機溶剤が熱履歴によって分解しやすい成分を含んでいる場合に、第二凝縮回収装置80を備える構成とすることで、吸脱着素子52,54から脱着した有機溶剤をそのまま凝縮回収することができる。分解しやすい成分をシステム入口の第1流路F1に戻すことなく、第二凝縮回収装置80で凝縮回収することができる。
【0072】
脱着用ガスは、水蒸気であってもよい。高温の水蒸気を吸脱着処理装置50に導入することで、吸脱着素子52,54に吸着された有機溶剤を、確実に吸脱着素子52,54から脱着させることができる。被処理ガスに含有される有機溶剤が熱履歴によって分解しやすい成分を含んでいる場合に、第二凝縮回収装置80を備える構成とするとともに脱着用ガスとして水蒸気を用いることで、水蒸気で吸脱着素子52,54から脱着した有機溶剤をそのまま凝縮回収することができる。分解しやすい成分をシステム入口の第1流路F1に戻すことなく、第二凝縮回収装置80で凝縮回収することができる。
【0073】
脱着用ガスは、不活性ガスであってもよい。図2に示されるように、不活性ガスを脱着ヒーター62で加熱して吸脱着処理装置50に導入することで、吸脱着素子52,54に吸着された有機溶剤を、確実に吸脱着素子52,54から脱着させることができる。比較的熱分解しにくい成分の有機溶剤が被処理ガスに含有されている場合には、脱着用ガスとして不活性ガスを用いることで、吸脱着処理装置50から排出された脱着用ガスを、システム入口の第1流路F1に戻して、脱着用ガスに含まれる有機溶剤を凝縮回収装置10で凝縮回収することが可能である。
【0074】
図2に示されるように、脱着用ガスG8が循環する循環経路C1に、吸脱着処理装置50および第二凝縮回収装置80が設けられてもよい。循環経路C1を循環する脱着用ガスG8で、有機溶剤を吸脱着素子52,54から脱着させ、脱着用ガスG8をシステム入口には戻さずに、第二凝縮回収装置80で凝縮回収することができる。
【0075】
図2に示されるように、第二凝縮回収装置80から排出された脱着用ガスG8を加熱する脱着ヒーター62が、循環経路C1に設けられてもよい。脱着用ガスG8を脱着ヒーター62で加熱して吸脱着処理装置50に導入することで、吸脱着素子52,54に吸着された有機溶剤を、確実に吸脱着素子52,54から脱着させることができる。
【0076】
図1,2に示されるように、温度伝送器70は、第三被処理ガスの温度を検出して伝送してもよい。第三被処理ガスの温度に基づいて、冷却部21に供給される冷媒の流量および温度を調整するフィードバック制御をすることで、第三被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度を、爆発下限界温度以下に確実に維持することができる。
【実施例
【0077】
以下、実施例について説明する。まず、高濃度の有機溶剤を含む第一被処理ガスと、第一被処理ガスよりも低濃度の有機溶剤を含む第二被処理ガスとを準備した。実施例および比較例の有機溶剤回収システムで処理される第一被処理ガスおよび第二被処理ガスの条件は、表1の通りとした。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例の有機溶剤回収システムは、上述した実施形態の通りとした。すなわち、第一被処理ガスに含有される有機溶剤を凝縮回収装置で凝縮させて回収し、未凝縮の有機溶剤を含む冷却処理ガスと低濃度の有機溶剤を含有する第二被処理ガスとを合流させて吸脱着処理装置に供給して有機溶剤を吸脱着素子で吸着除去し、吸脱着処理装置から排出された脱着用ガスに含有される有機溶剤を第二凝縮回収装置で回収する態様とした。
【0080】
一方、比較例の有機溶剤回収システムは、従来のシステムに従った、第一被処理ガスと第二被処理ガスとを混合した後に、実施例と同じ吸脱着処理装置と第二凝縮回収装置とで有機溶剤を回収する態様とした。
【0081】
凝縮回収装置における、有機溶剤を凝縮させるための設定温度は、-19℃とした。吸脱着処理装置における、吸脱着素子から有機溶剤を脱着させるための脱着用ガスとして、水蒸気を用いた。水蒸気の温度は常圧で120℃、水蒸気の使用量は34kg/minとした。第二凝縮回収装置における、有機溶剤を凝縮させるための設定温度は、32℃とした。この条件下で、実施例および比較例の有機溶剤回収システムを用いて有機溶媒を回収する処理を実行するときに、各機器で消費されるエネルギー量を、表2に示した。
【0082】
なお、本実施例では第二被処理ガスの風量を第一被処理ガスの風量で除した商A=30、第一被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度を第二被処理ガスに含有される有機溶剤の濃度で除した商B=100、凝縮回収装置10における第一被処理ガスに含有される有機溶剤の回収率C=90であり、A÷B÷C=0.003であった。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示されるように、実施例の有機溶剤回収システムにおいて各機器で消費されるエネルギー量の合計値に対して、比較例の有機溶剤回収システムにおいて各機器で消費されるエネルギー量の合計値は、2.5倍以上であった。したがって、実施例の有機溶剤回収システムによって、従来のシステムに従った比較例よりもエネルギー使用を大幅に抑えながら高品質な有機溶剤を回収できることが示された。
【0085】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 有機溶剤回収システム、10 冷却凝縮装置、20 凝縮部、21 冷却部、22 分離部、23 チャンバ、30 回収タンク、31 気層部、32 液貯留部、40 冷却処理ガス送風機、41 ガスヒーター、42 第三被処理ガス送風機、50 吸脱着処理装置、51 第1処理槽、52,54 吸脱着素子、53 第2処理槽、55~58 ダンパ、61 脱着用ガス送風機、62 脱着ヒータ-、63,63A,63B,64,64A,64B,65A,65B,66A,66B 切換弁、70 温度伝送器、80 第二凝縮回収装置、81 第二凝縮部、82 第二回収タンク、91 第一被処理ガス排出設備、92 第二被処理ガス排出設備、100 合流部、101 フィルタ、C1 循環流路、F1 第1流路、F2 第2流路、F3 第3流路、F4 第4流路。
【要約】
回収する有機溶剤の品質を向上できる有機溶剤回収システムを提供する。有機溶剤を含有する被処理ガスは、第一被処理ガスと、含有する有機溶剤の濃度が第一被処理ガスよりも低い第二被処理ガスとを含んでいる。凝縮回収装置(10)は、第一被処理ガスを冷却することで、第一被処理ガスに含有される有機溶剤を凝縮させて、含有する有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスとして排出する。合流部(100)は、冷却処理ガスと第二被処理ガスとを合流させて第三被処理ガスとする。吸脱着処理装置(50)は、第三被処理ガスに含有される有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子(52,54)を有している。吸脱着処理装置(50)は、第三被処理ガスの導入による吸脱着素子(52,54)への有機溶剤の吸着と、脱着用ガスの導入による吸脱着素子(52,54)からの有機溶剤の脱着と、を交互に行なう。
図1
図2
図3