(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】道路補修用接着防水組成物
(51)【国際特許分類】
E01C 23/00 20060101AFI20240214BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240214BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240214BHJP
C09D 109/00 20060101ALI20240214BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240214BHJP
C09D 177/00 20060101ALI20240214BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240214BHJP
E01C 11/24 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
E01C23/00 A
C09D163/00
C09D7/61
C09D109/00
C09D7/63
C09D177/00
C09K3/10 L
E01C11/24
(21)【出願番号】P 2022150168
(22)【出願日】2022-09-21
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】509274407
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593228003
【氏名又は名称】株式会社近代化成
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 岳
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕太
(72)【発明者】
【氏名】林 昭一
(72)【発明者】
【氏名】松下 忠男
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-241211(JP,A)
【文献】特開2015-059195(JP,A)
【文献】特開2019-085460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/00
C09D 163/00
C09D 7/61
C09D 109/00
C09D 7/63
C09D 177/00
C09K 3/10
E01C 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と硬化剤とからなる道路補修用接着防水組成物であって、
主剤は、ジエポキシ化合物にシリカ微粉末と希釈剤を添加したものであり、硬化剤は、
炭素数C
12
以上の直鎖アルキル基を有するモノアミン化合物
:50-70質量%、
両端末にアミノ基、水酸基、カルボキシル基の何れかを有する液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体
:20-35質量%、ポリアミドアミン
3-5質量%、硬化促進剤
:5-10質量%を
含有することを特徴とする道路補修用接着防水組成物。
【請求項2】
主剤は、ジエポキシ化合物:80-90質量%、モノエポキシ化合物の反応性希釈剤と非反応性希釈剤の合計:4-10質量%、シリカ微粉末:3-7質量%を含有することを特徴とする請求項
1に記載の道路補修用接着防水組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路や国道等の補修に用いられる道路補修用接着防水組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路や国道等においては、コンクリート床版の劣化が原因で補修を行う件数が増加している。補修の際には、脆弱化したコンクリートを部分的に撤去し、床版補修用コンクリートを打設後に床版防水工法を施工し、加熱アスファルト混合物を転圧する工事が行われている。
【0003】
床版コンクリート打設後の床版防水工法の施工には、溶剤タイプのプライマーを床版に塗布後、その上に加熱溶融した塗膜系防水材をローラー刷毛等で塗布する工法が採用されてきた。しかし冬季の施工では、プライマーに含まれる有機溶剤が完全に気化するまでの作業時間を確保できずに次の工程に入ることが多いため、残留した有機溶剤による舗装の軟化(カットバック)が発生し易かった。プライマーを用いたコンクリート床版の補修については、例えば特許文献1、特許文献2等に記載されている。
【0004】
また従来の防水剤は、ローラー刷毛による塗布の作業性を考慮して低粘度であるため、鉛直部や縦目地、勾配部などでは流れ落ち易く、一定の膜厚を確保できなかった。また加熱アスファルト混合物の舗設も人力舗設であるため、ダンプトラックからスコップにてアスファルト混合物を敷きならす際に温度低下が発生し、防水材とアスファルト混合物の付着力の低下を招くことがあった。更に、防水材は作業現場において直火による加熱溶融を行っているため適切な温度管理ができないこと、防水材が熱による劣化で粗悪化すること、直火を扱うため作業場の安全性に問題があること、等の多くの課題が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-241211号公報
【文献】特開2018-145593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は上記した従来の問題点を解決して、プライマーを必要とせず、確実な防水性を実現することができる道路補修用接着防水組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、主剤と硬化剤とからなる道路補修用接着防水組成物であって、主剤は、ジエポキシ化合物にシリカ微粉末と希釈剤を添加したものであり、硬化剤は、炭素数C
12
以上の直鎖アルキル基を有するモノアミン化合物:50-70質量%、両端末にアミノ基、水酸基、カルボキシル基の何れかを有する液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体:20-35質量%、ポリアミドアミン3-5質量%、硬化促進剤:5-10質量%を含有することを特徴とする。
【0008】
なお主剤は、ジエポキシ化合物:80-90質量%、モノエポキシ化合物の反応性希釈剤と非反応性希釈剤の合計:4-10質量%、シリカ微粉末:3-7質量%を含有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の道路補修用接着防水組成物は、プライマーを使用せず、アスファルトの合材打設直前に塗布し、合材の熱で密着硬化を促進させることができるものである。このため、冬季の道路補修においても、従来よりも作業性を向上させることができる。
【0010】
また本発明の道路補修用接着防水組成物は、主剤にシリカ微粉末を配合し、硬化剤にはポリアミドアミンを配合したことにより、混合時に瞬時に増粘作用が生じ、鉛直部等の縦面に塗布しても垂れてこない高チキソ性を発揮する。このため一定膜厚を確保することができ、優れた付着強度、防水性を得ることができる。また、硬化剤に炭素数12以上の直鎖アルキル基を有するモノアミン化合物を用いることにより、エポキシ樹脂の硬化重合反応を直鎖状主体とし、液状ゴムの官能基による柔軟な架橋構造を有するため、低温度域においても可撓性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。
本発明の道路補修用接着防水組成物は、主剤と硬化剤とからなり、両者を混合して用いるものである。本発明の道路補修用接着防水組成物は、コンクリート床版の補修部分のコンクリートに塗布され、加熱アスファルト混合物の熱により硬化して防水効果を発揮するものである。
【0013】
(主剤)
発明の道路補修用接着防水組成物の主剤は、ジエポキシ化合物にシリカ微粉末と希釈剤を添加したものである。ジエポキシ化合物の最も代表的なものとしては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物であるジグリシジルエーテルを挙げることができる。この他、ビスフェノールF、フェノール、あるいはクレゾールノボラック樹脂等のジグリシジルエーテル、ダイマー酸等のジカルボン酸から得られたジグリシジルエーテル、ウレタンまたはCTBN変性されたビスフェノールA系ジグリシジルエーテルで、これらのジグリシジルエーテル化合物を1種又は2種以上混合したものであってもよい。
【0014】
主剤に添加される希釈剤としては、ブチルグリシジルエーテル、フェニルまたはクレジルグリシジルエーテル等のモノエポキシ反応性希釈剤と、ニカノール(フドー株式会社)やハイゾール(新日本石油化学)、ベンジルアルコール等の非反応性希釈剤が用いられる。
【0015】
主剤に添加されるシリカ微粉末の粒子径は特に限定されるものではないが、一次粒子の平均径が100nm以下であることが好ましく、10nm以下であれば更に好ましい。後述するように、シリカ微粉末の添加により、垂れ落ちない増粘性を得ることができる。
【0016】
これらのジエポキシ化合物にシリカ微粉末と希釈剤の混合割合は、ジエポキシ化合物:80-90質量%、モノエポキシ化合物の反応性希釈剤と非反応性希釈剤の双方:4-10質量%、シリカ微粉末:3-7質量%とすることが好ましい。
【0017】
(硬化剤)
硬化剤は、主体となるモノアミン化合物に、液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体と、ポリアミドアミンとを添加したものである。モノアミン化合物としては、炭素数C12以上の直鎖アルキル基を有するものが用いられる。このような炭素数C12以上の直鎖アルキル基を有するモノアミン化合物とは、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、オレインアミン、ステアリルアミン等であり、アルキル基が飽和又は不飽和結合を1個以上有する直鎖または分岐のモノアミンである。アスファルトの相溶性若しくは製品の取り扱い性から、炭素数12-18の液状モノアミン化合物が望ましい。
【0018】
液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体として、両端末にアミノ基、水酸基、カルボキシル基の何れかを有する液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体が用いられる。例えば、両端末が水酸基であるPoly bd R-45HT、Poly bd R-15HT(出光株式会社)、またアクリロニトリルの共重合で両末端がカルボキシル基のCTBN、アミノ基のATBN(ハンツマン・ジャパン株式会社)等が用いられる。これらとモノアミン化合物との組み合わせ、配合等によって、低温においても脆くなくしなやかな可撓性、ひび割れ追随性を実現することができる。
【0019】
ポリアミドアミンは高分子量のポリアミドであり、例えばアンカマイド260A(蝶理GLEX株式会社)を用いることができる。これは粘度40000mPa・s、25℃でアミン価350程度のものである。主剤に添加したシリカ微粉末のシラノール基が比較的長い分子ポリアミドのアミンと水素結合作用を起こし、作業現場で主剤と硬化剤を混合すると瞬時に増粘作用を生ずる。このため本発明の道路補修用接着防水組成物は、鉛直部等の縦面に塗布しても垂れ落ちることなく、一定の膜厚を確保することができる。またポリアミドアミンは最終的には主剤のジエポキシ化合物と硬化反応をともに起こすので、樹脂の添加成分として好適である。このほかに硬化速度を制御するための、公知の硬化促進剤を添加することが好ましい。
【0020】
硬化剤は、直鎖アルキル基を有するモノアミン化合物:50~70質量%、液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体:20-35質量%、硬化促進剤:5-10質量%、ポリアミドアミン3-5質量%を含有することが好ましい。
【0021】
(作用)
このように、硬化剤成分として炭素数C12以上の長鎖アルキルモノアミン化合物50~70質量%を主体とすることで、初期の段階では反応は直鎖状に進み、熱硬化性と熱可塑性の両方の性質を具備させることができる。従来の道路補修剤に用いられていたエポキシは、2個以上のアミノ基と3個以上の活性水素を持つため硬化が網目構造となり、アスファルト混合物と一体となった密着性が得られなかった。これに対して本発明では、伸縮性のある直鎖状を主体とした架橋構造が得られるため、高粘度であっても-10℃の低温下でもしなやかさを確保することができ、アスファルト混合物と一体となった密着性を得ることができる。
【0022】
また、両末端にアミノ基、水酸基、カルボキシル基の何れかを有する液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体は、中間がオリゴマーのブタジエンゴムであり、両末端に官能基を有するので、20-35%配合することで、徐々にクロスリンク(橋架け)が起こりタフネスを付与し、低温での可撓性、ひび割れ追随性に貢献する。さらに比較的粘度の高いポリアミドアミンを3-5%添加することによって、主剤成分のシリカ微粉末とのアミンとシラノールの相互作用が起こり、現場で主剤、硬化剤を混合すると直ちに増粘し、垂れずに一定の膜厚に塗布できる効果を確認した。
【0023】
本発明の道路補修用接着防水組成物を用いて道路補修を行うには、先ず脆弱化したコンクリートを部分的に撤去し、床版補修用コンクリートを打設する。次に現場にて主剤と硬化剤とを混合し、打設されたコンクリートに塗布する。主剤と硬化剤とを混合すると直ちに粘度が増加するため、本発明の道路補修用接着防水組成物は垂れ落ちることなく一定の膜厚を確保することができる。その後に加熱アスファルト混合物を舗設すれば、その熱により硬化が促進され、アスファルト混合物と一体となった密着性が得られるので、完全な防水効果を発揮することができる。
【0024】
従来の防水工法においては、防水剤の溶解に30分程度を要し、これを塗布した後にさらにプライマーの有機溶剤の気化に20分程度(気温20℃の場合)を必要としていたため、この間の作業時間は50-60分となる。これに対して本発明の道路補修用接着防水組成物を用いれば、混合して塗布するだけで済むため、床版防水工法に要する時間を僅か5分にまで大幅に短縮することができる。作業時間の短縮は交通規制時間の短縮につながるため、その効果は非常に大きいものである。以下に本発明の好ましい実施例とその試験結果を示す。
【実施例】
【0025】
ジエポキシ化合物であるJER828(三菱化学:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ等量190)88%に、希釈剤である2エチルヘキシルグリシジルエーテル5%、ベンジルアルコール3%と、シリカ微粉末(EVONIK日本アエロジル)アエロジル300を4%加え、ホモジナイザーで2時間分散させて主剤を得た。また、C18長鎖アルキルモノアミン(ファーミンOV 花王製)58%と、アミノ基末端ブタジエンアクリロニトリル共重合体(Hypro ATBN1300×16 ハンツマン・ジャパン製)29%と、硬化促進剤2.2′(4ヒドロキシフェニル)プロパン9%と、ポリアミド(アンカマイド260A 蝶理GLEX)4%とを混合して硬化剤を得た。これらの主剤50部と硬化剤50部とを混合して、本発明の道路補修用接着防水材組成物を得た。
【0026】
(比較例1)
ジエポキシ化合物のJER828を92%と希釈剤2エチルヘキシルグリシジルエーテル8%からなる主剤50部と、C18長鎖アルキルモノアミン(ファーミンOV 花王製)60%、アミノ基末端ブタジエンアクリロニトリル共重合体(Hypro ATBN1300×16 ハンツマン・ジャパン製)30%、(4ヒドロキシフェニル)プロパン10%からなる硬化剤50部とを混合して比較例1の樹脂組成物を得た。
【0027】
(比較例2)
ジエポキシ化合物のJER828を90%と希釈剤2エチルグリシジルエーテル10%からなる主剤60部と、C18長鎖アルキルモノアミン(ファーミンOV 花王製)25%、イソフォロンジアミンの変性物(ハードナーPH-875蝶理GLEX)47%、アミノ基末端ブタジエンアクリロニトリル共重合体(Hypro ATBN1300×16 ハンツマン・ジャパン製)20%、
(4ヒドロキシフェニル)プロパン8%からなる硬化剤40部を混合して比較例2の樹脂組成物を得た。
【0028】
上記3種類の樹脂組成物を用いて本防水接着剤の課題である道路橋便覧(日本道路協会)が規定する低温可撓性試験および防水性試験IIの試験を試みた。
【0029】
低温可撓性試験は、30×150mm厚み0.5の鋼板を脱脂した後、サンドペーパー#100で目粗しし、上記3種類の樹脂組成物を3枚ずつ1kg/m
2で塗布して試験片とした。室温で7日養生し硬化させた後、試験片を-10±2℃で4時間静置させてから
図1に示す折曲げ試験を行った。折曲げ試験は、あらかじめ-10±2℃に冷却しておいた直径10mmの丸棒に試験片を押し当て3秒以内に巻き付けるように180°折り曲げて、折損の有無を確認する。判定基準は防水材3個共に折損がないことである。
【0030】
防水試験IIは、コンクリートJIS平板300×300厚み60mmをサンダーで磨いた後、上記3種類の樹脂組成物をそれぞれ1kg/m
2で塗布し、30分後にアスファルト混合物密粒を厚み40 mmで打設し、室温で7日間養生させ後、
図2に示したコアカッターで切り抜き、防水II試験の試験体(
図3)を作成した。その後防水II試験(
図4)を行った。
【0031】
なお、
図2に示すコアカッタ―は、300mm×300mmの平板に、直径100mmの孔を4個形成したものである。
図3に示す試験体は、ゴム板1の上に直径125~140mmの塩化ビニルパイプ2を置いてシリコーンシーリング3でシールし、その内部に離型紙4、舗装5、床版防水剤6、コンクリート7を積層した円柱体を入れ、周囲を2液硬化型エポキシ樹脂8で固めたものである。
【0032】
防水II試験は、
図3に示す試験体を
図4に示すように上下反転させた状態で、ゴムパッキン9を介して本体10でシールし、本体10に形成された空間11に注水塔12から注水しつつ、空間11をコンプレッサ13で加圧する方法で行われる。14は圧力計、15は目盛り、16は圧力調整弁である。加圧条件は0.5MPa 24時間、判定基準は3個共に漏水がないことである。
以上の結果を表1に示す。
【0033】
【0034】
以上の結果より、本発明の実施例の配合により防水接着剤の均一な塗布が得られ、確実な防水効果が得られることを確認した。
【0035】
本発明の接着防水剤、実施例のさらなる評価を行うに当たって、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社「舗装管理要綱(令和2年7月)」III補修工事関係 3.床版防水3-6性能照査(グレード1)に従って行った。
(防水試験II)
300mm×300mm×60mmのコンクリート下地に本発明の接着防水材を1kg/m2塗布し、下記の舗装負荷Iおよび舗装負荷IIの条件で舗装した。室温で7日養生後、コアカッターで直径100mm×長さ100mmに採取し、道路橋防水便覧(日本道路協会)防水性試験II供試体作成方法に従って供試体をそれぞれ3個作成した後、23℃で加圧透水試験0.5MPa×24時間を実施した。その結果を表2に示す。
*舗装負荷I 供試体温度60℃ アスファルト混合物SMA(13) 180℃ アスファルト:改質II型
*舗装負荷II 供試体温度 室温 アスファルト混合物SMA(13) 140℃ アスファルト:ストレートアスファルト
【0036】
【0037】
(引張接着試験)
300mm×300mm×60mmのコンクリート下地に本発明の接着防水材を1kg/m2塗布し、下記の舗装負荷IIおよび舗装負荷IIIの条件で舗装した。室温で7日養生後、道路橋防水便覧(日本道路協会)引張接着試験に従って、コアカッターで直径100mmの切り込みをそれぞれ3個入れた後、直径100mmの鋼製の治具を接着後、23℃で試験した。その結果を表3に示す。
*舗装負荷II 供試体温度 室温 アスファルト混合物SMA(13) 140℃ アスファルト:ストレートアスファルト
*舗装負荷III 供試体温度5℃ アスファルト混合物SMA(13) 110℃ アスファルト:改質II型
【0038】
【0039】
(せん断試験)
引張接着試験と同様に300mm×300mm×60mmのコンクリート下地に本発明の接着防水材を1kg/m3塗布し、舗装負荷IIおよび舗装負荷IIIの条件で舗装した。
室温で7日養生後、道路橋防水便覧(日本道路協会)せん断試験に従って、試験片をそれぞれ3個採取した後、23℃でせん断試験を行った。その結果を表4に示す。
【0040】
【0041】
(水浸接着試験)
300mm×300mm×60mmのコンクリート下地に本発明の接着防水材を1kg/m2塗布し、舗装負荷IIの条件で舗装した。室温で7日養生後、道路橋防水便覧(日本道路協会)水浸接着試験の供試体作成方法に従って直径100mmの切り込みを3個入れ、直径100mmの鋼製の治具を接着後、温度23±2℃の水槽に7日間浸漬させた。その後、水槽から取り出し、直ちに引張試験を行った。その結果を表5に示す。
【0042】
【0043】
(ひび割れ追随性試験)
床版防水便覧 日本道路協会のひび割れ防水性試験IIに規定する120mm×70mmのモルタル下地の6mm×40mmの部分に本発明の防水接着剤を施工したものを3個作成し、室温で7日養生した後-10℃±2℃の恒温槽に6時間以上放置した後、毎秒0.1N/mm2で鉛直方向に剤材料が破壊するまで載荷した。その結果を表6に示す。
【0044】
【0045】
(耐薬品性試験)
150mm×70mmの鋼板下地に本発明の防水接着剤を施工したものを6枚作製し、床版防水便覧 日本道路協会の耐薬品性試験に従って、それぞれ2枚ずつ飽和水酸化カルシウム溶液、3%塩化ナトリウム溶液、3%塩化カルシウム溶液に15日間浸漬した。その結果を表7に示す。
【0046】
【0047】
以上の通り、本発明の道路補修用接着防水組成物は、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社「舗装管理要綱(令和2年7月)」III補修工事関係 3.床版防水3-6性能照査(グレード1)の要求する防水性能の項目、防水II試験(舗装負荷I、舗装負荷II)、引張接試験(舗装負荷II、舗装負荷III)、せん断試験(舗装負荷II、舗装負荷III)、水浸引張試験(舗装負荷II)、ひび割れ追随性試験II、および耐薬品性試験で要求性能の基準をすべて満足する結果が得られた。
なお、以上の説明はコンクリート床版の補修を中心としたが、本発明の道路補修用接着防水組成物は粘着性が高く、鋼床版の補修にも用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ゴム板
2 塩化ビニルパイプ
3 シリコーンシーリング
4 離型紙
5 舗装
6 床版防水剤
7 コンクリート
8 2液硬化型エポキシ樹脂
9 ゴムパッキン
10 本体
11 空間
12 注水塔
13 圧力計
14 目盛り
15 圧力調整弁
【要約】
【課題】プライマーを使用することなく、確実な防水性を実現することができる道路補修用接着防水組成物を提供する。
【解決手段】主剤と硬化剤とからなる道路補修用接着防水組成物であって、主剤は、ジエポキシ化合物にシリカ微粉末と希釈剤を添加したものであり、硬化剤は、モノアミン化合物に、液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体と、ポリアミドアミンと、硬化促進剤を添加したものである。モノアミン化合物は、炭素数C
12以上の直鎖アルキル基を有するモノアミン化合物であり、液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体は、両端末にアミノ基、水酸基、カルボキシル基の何れかを有する液状ブタジエンゴムあるいはその誘導体であることが好ましい。
【選択図】
図4