(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】集積回路装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G05F1/56 310V
(21)【出願番号】P 2019137128
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 康介
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-133800(JP,A)
【文献】特開2006-133935(JP,A)
【文献】特開平06-168038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レギュレート電圧を生成する第1レギュレータ回路と、
第2レギュレート電圧を生成する第2レギュレータ回路と、
前記第1レギュレータ回路と前記第2レギュレータ回路とを択一的に選択して一方をオン状態、他方をオフ状態とする制御回路と、
前記第1レギュレータ回路に接続された電圧監視回路と、を有し、
前記制御回路は、負荷が所定の負荷電流以上である場合に前記第2レギュレータ回路をオフ状態からオン状態へ遷移させ、前記電圧監視回路により前記第2レギュレート電圧が基準値に達したことが検出された場合に、前記第1レギュレータ回路がオフ状態となり、前記負荷に前記第2レギュレート電圧を供給することを特徴とする集積回路装置。
【請求項2】
前記第2レギュレータ回路は、前記第1レギュレータ回路よりも消費電力が大きく、
前記第2レギュレート電圧は、前記第1レギュレート電圧と比較して、重負荷時の電圧変動率が低いことを特徴とする請求項1に記載の集積回路装置。
【請求項3】
前記負荷が前記所定の負荷電流未満である場合に前記第1レギュレータ回路をオン状態とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の集積回路装置。
【請求項4】
前記第1レギュレータ回路は、第1回路部と第1出力段とを有し、
前記制御回路は、前記第1レギュレータ回路をオフ状態とする場合に、前記第1レギュレータ回路の前記第1出力段のみをオフ状態とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集積回路装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第2レギュレータ回路をオン状態からオフ状態へ遷移させる際に、
前記第1レギュレータ回路の前記第1出力段をオン状態とすることを特徴とする請求項4に記載の集積回路装置。
【請求項6】
外部より電源電圧が印加され、内部において電源電圧の立ち上りが完了した後、前記制御回路は、前記第1レギュレータ回路をオフ状態からオン状態へと遷移させ、かつ前記第2レギュレータ回路をオフ状態とし、前記第1レギュレート電圧が所定の電圧に到達するまでは起動状態とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の集積回路装置。
【請求項7】
前記第1レギュレータ回路及び前記第2レギュレータ回路は、それぞれリニアレギュレータであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の集積回路装置。
【請求項8】
センサが接続され、前記センサを駆動してセンサ値を取得するアナログ回路を有することを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の集積回路装置。
【請求項9】
前記センサ値を取得するアクティブ時は前記所定の負荷電流以上である場合に相当し、前記センサ値を取得しないスリープ時は前記所定の負荷電流未満である場合に相当することを特徴とする請求項8に記載の集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体集積回路装置は、当該装置の微細化に伴ってトランジスタの耐性が低下することから、電源電圧からトランジスタの耐性に応じた内部電圧を生成するためにレギュレータ回路が内蔵している。また、レギュレータ回路は、当該装置内での内部電圧の変動を抑える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなレギュレータ回路を内蔵した集積回路装置は、例えば、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)センサを駆動し、当該センサからの出力信号を信号処理するセンサ用集積回路装置として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の集積回路装置では、レギュレータ回路は、内部電圧を供給する負荷回路の負荷に応じた電流能力を有する必要がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の集積回路装置の構成では、レギュレータ回路が内部電圧を供給する負荷回路の負荷は、当該装置の動作状態に応じて異なり、アクティブ時の負荷はスリープ時よりも重負荷になることから、レギュレータ回路を、アクティブ時の負荷に耐え得る電流能力を有するように設計する必要がある。
【0007】
しかし、レギュレータ回路は、電流能力が大きいほど消費電力が大きくなるため、アクティブ時の負荷に耐える電流能力を有するようにレギュレータ回路を設計した場合には、スリープ時には電力が無駄に消費されてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、レギュレータ回路を内蔵した集積回路装置において、無駄な電力の消費を抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の技術は、第1レギュレート電圧を生成する第1レギュレータ回路と、第2レギュレート電圧を生成する第2レギュレータ回路と、前記第1レギュレータ回路と前記第2レギュレータ回路とを択一的に選択して一方をオン状態、他方をオフ状態とする制御回路と、を有し、前記制御回路は、負荷が所定の負荷電流以上である場合に前記第2レギュレータ回路をオン状態とし、負荷が前記所定の負荷電流未満である場合に前記第1レギュレータ回路をオン状態とすることを特徴とする集積回路装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レギュレータ回路を内蔵した集積回路装置において、無駄な電力の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る集積回路装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第2アナログ回路、第1デジタル回路、第2デジタル回路、及びセンサの詳細を例示する図である。
【
図3】第1レギュレータ回路及び第2レギュレータ回路の構成を示すブロック図である。
【
図4】第1レギュレータ回路及び第2レギュレータ回路を構成するリニアレギュレータを示す回路図である。
【
図5】消費電力が小さい第1レギュレータ回路の動作を例示する図である。
【
図6】消費電力が大きい第2レギュレータ回路の動作を例示する図である。
【
図7】第1レギュレータ回路及び第2レギュレータ回路の動作タイミングを説明するタイミング図である。
【
図8】アクティブ時における動作の詳細を説明する図である。
【
図9】各動作状態における各回路の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る集積回路装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、集積回路装置100は、センサ200の駆動と、センサ200からのアナログのセンサ信号を調整するアナログフロントエンド(AFE)である。集積回路装置100は、マイコンなどのデジタル信号処理装置(図示せず)とセンサ200との間に接続される。集積回路装置100は、半導体チップにより形成された半導体集積回路である。
【0014】
集積回路装置100は、第1レギュレータ回路110と、第2レギュレータ回路120と、第1アナログ回路130と、第2アナログ回路140と、第1デジタル回路150と、第2デジタル回路160とを有する。
【0015】
第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120は、集積回路装置100に外部(マイコン等)から端子P1を介して供給される電源電圧VDDを降圧してレギュレート電圧VRGを生成し、これ内部電圧として集積回路装置100内の各部へ供給する。
【0016】
詳しくは後述するが、第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120は、リニアレギュレータである。第1レギュレータ回路110の消費電力は、第2レギュレータ回路120の消費電力よりも小さい。第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120は、択一的に選択されて、一方がオン状態、他方がオフ状態となる。負荷が所定の負荷電流以上である場合に第2レギュレータ回路120がオン状態となり、負荷が所定の負荷電流未満である場合に第1レギュレータ回路110がオン状態となる。なお、電流検出回路で検出した負荷電流値によりレギュレータを切り替えても良い。または、動作状態による負荷の変化が事前にわかっている場合は、負荷を監視せずに負荷の動作状態に応じて制御回路によりレギュレータを切り替えても良い。
【0017】
また、第1レギュレータ回路110又は第2レギュレータ回路120により生成されるレギュレート電圧VRGは、端子P2に供給される。端子P2には、外付けの負荷容量170が接続されている。
【0018】
第1アナログ回路130は、電圧監視回路としてのパワーオンリセット(POR)回路やタイマーなどを有する。電圧監視回路は、電源電圧レベルが安定するまで、集積回路装置100の全体をリセット状態のまま維持する制御を行う。電圧監視回路は、後述するアクティブ時及びスリープ時の両方において動作する。タイマーは、アクティブ時に、第2レギュレータ回路120に含まれるA/D変換回路143(
図2参照)を間欠動作させる際に動作し、スリープ時には動作を停止する。
【0019】
第2アナログ回路140は、センサ200から端子P3を介して入力されるアナログのセンサ信号を変換する処理を行う。
【0020】
図2は、第2アナログ回路140、第1デジタル回路150、第2デジタル回路160、及びセンサ200の詳細を例示する図である。
【0021】
図2に示すように、センサ200は、例えば、MEMSセンサの一種であり、ここでは、相対湿度を計測する湿度センサとする。本実施形態では、センサ200は、例えば、湿度に応じて静電容量が変化する湿度検出用キャパシタ201と、静電容量が湿度に依存せず一定である参照用キャパシタ202とを有する。湿度検出用キャパシタ201は、端子P3aと端子P4との間に接続されている。参照用キャパシタ202は、端子P3bと端子P4との間に接続されている。端子P3a及び端子P3bは、
図1に示す端子P3に対応する。
【0022】
第2アナログ回路140は、駆動回路141、CV変換回路142、A/D変換回路143などを有する。駆動回路141は、矩形波の交流駆動信号である第1駆動信号DRV1と、矩形波の交流駆動信号であって第1駆動信号DRV1とは逆位相の第2駆動信号DRV2とを生成する。駆動回路141は、第1駆動信号DRV1を、端子P3aを介して湿度検出用キャパシタ201に印加し、第2駆動信号DRV2を、端子P3bを介して参照用キャパシタ202に印加する。
【0023】
以下、第1駆動信号DRV1がハイレベルで、第2駆動信号DRV2がローレベルである期間を第1電荷転送期間とし、第1駆動信号DRV1がローレベルで、第2駆動信号DRV2がハイレベルである期間を第2電荷転送期間とする。
【0024】
CV変換回路142は、スイッチトキャパシタ方式の電荷電圧変換回路である。CV変換回路142は、第1電荷転送期間にセンサ200から出力される信号電荷と、第2電荷転送期間にセンサ200から出力される信号電荷とをそれぞれ端子P4を介して取得する。CV変換回路142は、取得した各信号電荷を電圧に変換してA/D変換回路143に入力する。
【0025】
A/D変換回路143は、差動入力方式のADコンバータであって、CV変換回路142から入力された2つの電圧値の差分値をデジタル信号に変換して出力する。この差分値が相対湿度の測定値に相当する。A/D変換回路143から出力されたデジタル信号は、第2デジタル回路160に入力される。
【0026】
第2デジタル回路160は、補正演算回路161、不揮発性記憶部162などを有する。補正演算回路161は、第2アナログ回路140から入力されるデジタル信号に対して補正演算を行うデジタルフィルタである。不揮発性記憶部162は、フラッシュメモリ等の半導体メモリであり、補正演算回路161により補正演算が行われたデジタル信号(センサ値)を記憶する。
【0027】
また、第2デジタル回路160は、第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120に接続されている(
図1参照)。
図1に示すスイッチSWは、第1デジタル回路150から出力される後述するイネーブル信号EN2に応じて、オン状態又はオフ状態となる。スイッチSWは、後述するアクティブ時にオン状態となる。スイッチSWは、スリープ時におけるリーク電流を低減するために設けられている。
【0028】
第1デジタル回路150は、制御回路151、レジスタ152、通信回路153などを有する。制御回路151は、集積回路装置100内の各部を制御する。第2アナログ回路140及び第2デジタル回路160は、動作が制御回路151により制御され、センサ値を取得するアクティブ時に動作を行い、センサ値を取得しないスリープ時には動作しない。
【0029】
レジスタ152は各種情報を記憶する。通信回路153は、I2C通信等のシリアル伝送方式の通信を行う通信回路である。通信回路153は、不揮発性記憶部162や、外部のマイコンとの間でデータ通信を行う。このように通信回路153が外部のマイコンとの間でと常時データ通信を行うため、第1デジタル回路150をスリープ時にも動作させる構成としている。
【0030】
図3は、第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120の構成を示すブロック図である。以下、第1レギュレータ回路110により生成されるレギュレート電圧を第1レギュレート電圧VRG1といい、第2レギュレータ回路120により生成されるレギュレート電圧を第2レギュレート電圧VRG2という。第1レギュレート電圧VRG1と第2レギュレート電圧VRG2とは同一の電圧レベルである。
【0031】
図3に示すように、第1レギュレータ回路110は、第1回路部111と、第1出力段112とを有する。第1レギュレータ回路110は、リニアレギュレータである。第1レギュレータ回路110により生成される第1レギュレート電圧VRG1の電圧レベルは、第1回路部111に接続された第1アナログ回路130に含まれる電圧監視回路により監視される。
【0032】
第1回路部111は、集積回路装置100の動作時には常にオン状態とされる。第1出力段112は、第2レギュレータ回路120から入力されるイネーブル信号EN1に応じて、オン状態又はオフ状態となる。
【0033】
第2レギュレータ回路120は、第2回路部121と、第2出力段122と、NAND回路123とを有する。第2レギュレータ回路120は、リニアレギュレータである。
【0034】
第2回路部121及び第2出力段122は、第1デジタル回路150に含まれる制御回路151から入力されるイネーブル信号EN2に応じて、オン状態又はオフ状態となる。
【0035】
第2回路部121に接続された第1アナログ回路130に含まれる電圧監視回路は、第2レギュレータ回路120により生成される第2レギュレート電圧VRG2の電圧レベルを監視し、電圧監視回路の当該電圧レベルおよびレギュレータに供給される電流レベルに応じてパワーグッド信号生成部がパワーグッド信号PGを出力する。具体的には、電圧監視回路は、第2回路部121及び第2出力段122がオン状態となり、第2レギュレート電圧VRG2が基準値に達するまでは、パワーグッド信号PGをローレベルとし、第2レギュレート電圧VRG2が基準値に達した場合にパワーグッド信号PGをハイレベルとする。
【0036】
NAND回路123には、イネーブル信号EN2及びパワーグッド信号PGが入力される。NAND回路123は、イネーブル信号EN2とパワーグッド信号PGとの否定論理積により得られるレベルのイネーブル信号EN1を出力する。
【0037】
具体的には、NAND回路123は、イネーブル信号EN2がローレベルである場合には、パワーグッド信号PGのレベルによらず、ハイレベルのイネーブル信号EN1を出力する。また、NAND回路123は、イネーブル信号EN2がハイレベルである場合には、パワーグッド信号PGがハイレベルとなるまではハイレベルのイネーブル信号EN1を出力し、パワーグッド信号PGがハイレベルとなった場合にローレベルのイネーブル信号EN1を出力する。
【0038】
第1レギュレータ回路110の第1出力段112は、このローレベルのイネーブル信号EN1の入力を受けてオフ状態となる。
【0039】
図4は、第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120を構成するリニアレギュレータを示す回路図である。リニアレギュレータは、出力トランジスタTRと、帰還抵抗R1,R2と、誤差増幅器としてのオペアンプOPとにより構成されている。
【0040】
出力トランジスタTRは、例えば、PチャネルMOS型トランジスタであり、ソース・ドレインが、電源電圧VDDの入力元である端子P1と、レギュレート電圧VRGが出力される端子P2との間に接続されている。出力トランジスタTRのゲートは、オペアンプOPの出力端子に接続されている。
【0041】
帰還抵抗R1,R2は、端子P2とグランドとの間に直列に接続されており、レギュレート電圧VRGを分圧した帰還電圧VfbをオペアンプOPの+端子に入力する。オペアンプOPの-端子には、基準電圧源から基準電圧Vrefが入力される。
【0042】
オペアンプOPは、2つの入力端子(+端子と-端子)の電圧差を増幅した電圧Voを出力する。出力トランジスタTRのゲートには、出力電圧Voが印加される。オペアンプOPは、基準電圧Vrefより帰還電圧Vfbが高い場合は出力電圧Voを下げ、基準電圧Vrefより帰還電圧Vfbが低い場合は出力電圧Voを上げる。
【0043】
出力電圧Voにより出力トランジスタTRのオン抵抗が調整されることにより、レギュレート電圧が一定の電圧レベル(目標電圧)に維持される。
【0044】
なお、出力トランジスタTRは、上述の第1出力段112及び第2出力段122に含まれる。オペアンプOPは、第1回路部111及び第2回路部121に含まれる。
【0045】
第1レギュレータ回路110と第2レギュレータ回路120とは、出力トランジスタTR及びオペアンプOPの電流能力が異なる。第2レギュレータ回路120の出力トランジスタTRは、第1レギュレータ回路110の出力トランジスタTRよりも駆動能力が大きい。また、第2レギュレータ回路120のオペアンプOPは、第1レギュレータ回路110のオペアンプOPよりも電流が大きい。
【0046】
図5は、消費電力が小さい第1レギュレータ回路110の動作を例示する図である。
図5(A)は、オペアンプOPの出力電圧Voの時間変化を示している。
図5(B)は、第1レギュレータ回路110により生成される第1レギュレート電圧VRG1の時間変化を示している。
【0047】
第1レギュレータ回路110は、オペアンプOPの電流が小さく、かつ出力トランジスタTRの駆動能力が小さいことから、電源電圧VDDや負荷の変動により第1レギュレート電圧VRG1が変動した場合に、帰還に要する時間が長い。このため、第1レギュレータ回路110では、出力トランジスタTRのゲートに印加される出力電圧Voは、
図5(A)に示すように、ハイレベル(H)とローレベル(L)との間で電圧レベルが大きく変化する。したがって、第1レギュレータ回路110は、実質的にコンパレータのような動作を行い、第1レギュレート電圧VRG1は、
図5(B)に示すように、目標電圧の間で大きく変化する。
【0048】
このように、第1レギュレータ回路110は、消費電力が小さいという利点を有するが、第1レギュレート電圧VRG1の目標電圧に対する精度は低い。
【0049】
なお、第1レギュレータ回路110は、応答性が高くないため、端子P2に重負荷がかかると、出力トランジスタTRがオンする前に、第1レギュレート電圧VRG1がリセット電圧以下まで低下してしまう可能性がある。
【0050】
図6は、消費電力が大きい第2レギュレータ回路120の動作を例示する図である。
図6(A)は、オペアンプOPの出力電圧Voの時間変化を示している。
図6(B)は、第2レギュレータ回路120により生成される第2レギュレート電圧VRG2の時間変化を示している。
【0051】
第2レギュレータ回路120は、第1レギュレータ回路110と比べて、オペアンプOPの電流が大きく、かつ出力トランジスタTRの駆動能力が大きいことから、電源電圧VDDや負荷の変動により第2レギュレート電圧VRG2が変動した場合に帰還に要する時間が短い。このため、第2レギュレータ回路120では、
図6(A)に示すように、出力トランジスタTRのゲートに印加される出力電圧Voは、一定の電圧からほとんど変化しない。このため、第2レギュレート電圧VRG2は、
図6(B)に示すように、目標電圧からの変化量が小さい。すなわち、第2レギュレート電圧VRG2は、第1レギュレート電圧VRG1と比較して、重負荷時の電圧変動率が低い。
【0052】
このように、第2レギュレータ回路120は、消費電力が大きいが、第2レギュレート電圧VRG2の目標電圧に対する精度が高く、低ノイズであるという利点がある。
【0053】
次に、第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120の動作について説明する。
図7は、第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120の動作タイミングを説明するタイミング図である。
【0054】
図7(A)は、電源電圧VDDの時間変化を例示する図である。
図7(B)は、第1レギュレータ回路110により生成される第1レギュレート電圧VRG1の時間変化を例示する図である。
図7(C)は、第2レギュレータ回路120により生成される第2レギュレート電圧VRG2の時間変化を例示する図である。
図7(D)は、第1及び第2レギュレート電圧VRG1,VRG2が択一的に選択された結果、内部電圧として生成されるレギュレート電圧VRGの時間変化を例示する図である。
【0055】
図7(E)は、制御回路151から第1レギュレータ回路110に入力されるイネーブル信号EN2の時間変化を例示する図である。
図7(F)は、第1レギュレータ回路110の電圧監視回路により生成されるパワーグッド信号PGの時間変化を例示する図である。
図7(G)は、第2レギュレータ回路120から第1レギュレータ回路110に入力されるイネーブル信号EN1の時間変化を例示する図である。
図7(H)は、端子P2に接続された負荷に流れる負荷電流(VRG負荷電流)を例示する図である。
【0056】
第1レギュレータ回路110及び第2レギュレータ回路120は、制御回路151により制御される。外部装置から集積回路装置100に電源電圧VDDが印加されると、制御回路151は、第2レギュレータ回路120にローレベルのイネーブル信号EN2を供給する。制御回路151は、電源電圧VDDの立ち上がりが完了した後、第1レギュレータ回路110をオフ状態からオン状態へと遷移させ、かつ第2レギュレータ回路120をオフ状態とし、第1レギュレート電圧VRG1が所定の電圧に到達するまでは起動状態とする。
【0057】
この起動状態では、イネーブル信号EN2がローレベルであるので、第2レギュレータ回路120は起動せずオフ状態であるが、第2レギュレータ回路120内のNAND回路123は、ローレベルのイネーブル信号EN2を受けて、イネーブル信号EN1をハイレベルとし、このイネーブル信号EN1を第1レギュレータ回路110に入力する。第1レギュレータ回路110は、このハイレベルのイネーブル信号EN1の入力を受けて起動する(t=t2)。なお、第1レギュレータ回路110の第1回路部111は常時オン状態とされる。
【0058】
この時点で、第1レギュレータ回路110と第2レギュレータ回路120とのうち第1レギュレータ回路110のみが起動しているので、第1レギュレータ回路110により生成された第1レギュレート電圧VRG1が内部電圧として用いられる。このとき、集積回路装置100は、スリープ状態であり、センサ値の取得は行われない。すなわち、センサ値の取得に係る第2アナログ回路140及び第2デジタル回路160は動作しない。
【0059】
この後、スリープ状態において、制御回路151によりイネーブル信号EN2がハイレベルとされる(t=t3)。このとき、NAND回路123に入力されているパワーグッド信号PGはローレベルであるので、NAND回路123から出力されるイネーブル信号EN1はハイレベルのまま変化しない。
【0060】
イネーブル信号EN2がハイレベルとなることにより、第2レギュレータ回路120が起動する。第1アナログ回路130に含まれる電圧監視回路は、第2レギュレート電圧VRG2の電圧レベルを監視し、基準電圧に達した場合にパワーグッド信号PGをハイレベルとする(t=t4)。パワーグッド信号PGがハイレベルになると、イネーブル信号EN2がハイレベルであるので、NAND回路123から出力されるイネーブル信号EN1はローレベルに変化する。
【0061】
第1レギュレータ回路110に入力されるイネーブル信号EN1がローレベルとなることにより、第1レギュレータ回路110の第1出力段112がオフ状態となる。これにより、第2レギュレータ回路120により生成された第2レギュレート電圧VRG2が内部電圧として用いられる。このとき、集積回路装置100は、アクティブ状態となり、制御回路151により、第2アナログ回路140及び第2デジタル回路160がオン状態とされて、センサ値の取得が行われる。
【0062】
この後、イネーブル信号EN2がローレベルとなることにより(t=t5)、第2レギュレータ回路120の動作が停止するとともに、NAND回路123から出力されるイネーブル信号EN1がハイレベルとなって、第1レギュレータ回路110の第1出力段112がオン状態となる。これにより、集積回路装置100は、再びスリープ状態となって、第1レギュレータ回路110により生成された第1レギュレート電圧VRG1が内部電圧として用いられる。
【0063】
図8は、アクティブ時における動作の詳細を説明する図である。
図8(A)は、アクティブ時にVRG負荷電流の変動を例示する図である。
【0064】
図8に示すように、
図7で示したアクティブ期間(t4からt5までの期間)は、A/D変換回路143が動作を行うアクティブ期間と、A/D変換回路143が動作を停止するスタンバイ期間とに分けられる。スタンバイ期間は、第1アナログ回路130に含まれるタイマーによって計時が行われる。スタンバイ期間の長さやアクティブ期間の数は、設定により適宜変更される。
【0065】
VRG負荷電流は、A/D変換回路143が動作を行うアクティブ期間に増大し、スタンバイ期間には低下することから、タイマーを用いてA/D変換回路143を間欠動作させることにより、消費電力の低減を図っている。
【0066】
図9は、各動作状態における各回路の状態を示す図である。スリープ状態では、第1レギュレータ回路110、第1アナログ回路130の電圧監視回路(POR回路)、及び第1デジタル回路150のみがオン状態となる。スリープ状態では、高精度で低ノイズの内部電圧は要求されないので、消費電力が低い第1レギュレータ回路110がオン状態とされて第1レギュレート電圧VRG1が内部電圧として用いられる。
【0067】
アクティブ状態では、第2レギュレータ回路120、第1アナログ回路130の電圧監視回路(POR回路)、第2アナログ回路140、第1デジタル回路150、及び第2デジタル回路160がオン状態となる。アクティブ状態は、主にセンサ値を取得する期間であって、高精度で低ノイズの内部電圧が要求されるので、第2レギュレータ回路120がオン状態とされて、高精度で低ノイズの第2レギュレート電圧VRG2が内部電圧として用いられる。
【0068】
また、スタンバイ状態では、第2レギュレータ回路120、第1アナログ回路130の電圧監視回路(POR回路)、第1アナログ回路130のタイマー、及び第1デジタル回路150がオン状態となる。スタンバイ状態においても第2レギュレート電圧VRG2が内部電圧として用いられる。
【0069】
このように、本実施形態に係る集積回路装置100では、アクティブ時(アクティブ時及びスタンバイ時)には高精度で低ノイズの第2レギュレート電圧VRG2を生成する第2レギュレータ回路120が選択され、スリープ時には消費電力が低い第1レギュレータ回路110が選択されるので、無駄な電力の消費が抑えられる。
【0070】
以上のように、第1レギュレータ回路110と第2レギュレータ回路120とは、排他的にいずれか一方が選択されるが、
図7に示すように、スリープ状態からアクティブ状態に遷移する期間(t3からt4までの期間)には、イネーブル信号EN1,EN2が共にハイレベルとされ、第1レギュレータ回路110と第2レギュレータ回路120が共に動作している。
【0071】
これは、第2レギュレータ回路120をオンとすると同時に第1レギュレータ回路110をオフとすると、負荷電流が増大することにより第1レギュレート電圧VRG1が低下し、内部電圧がリセット電圧以下まで降下してしまう可能性があるためである。このため、本実施形態では、第2レギュレート電圧VRG2が立ち上がった後に、第1レギュレータ回路110をオフ状態とするように、スリープ状態からアクティブ状態に遷移する際に、第1レギュレータ回路110と第2レギュレータ回路120が共に動作させている。
【0072】
なお、アクティブ状態からスリープ状態に遷移する際には(t=t5)、第2レギュレータ回路120をオフとすると同時に第1レギュレータ回路110をオンとしている。これは、この場合には負荷電流が瞬時に減少し、内部電圧がリセット電圧以下まで降下することがないためである。また、第1レギュレータ回路110は、アクティブ期間(t4からt5までの期間)では第1出力段112のみがオフとされているので、オンとされた場合に復帰に要する時間が短いことも一つの理由である。
【0073】
なお、上記実施形態では、
図1に示すように、制御回路151が第2レギュレータ回路120にイネーブル信号EN2を供給し、第2レギュレータ回路120が第1レギュレータ回路110にイネーブル信号EN1を供給しているが、制御回路151が第1レギュレータ回路110と第2レギュレータ回路120とのそれぞれに、
図7に示すタイミングでイネーブル信号EN1及びイネーブル信号EN2を供給してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、センサ200を湿度センサとしているが、センサ200は湿度センサに限られず、圧力センサ、温度センサ、気流センサなどであってもよい。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0076】
100 集積回路装置、110 第1レギュレータ回路、111 第1回路部、112 第1出力段、120 第2レギュレータ回路、121 第2回路部、122 第2出力段、123 NAND回路、130 第1アナログ回路、140 第2アナログ回路、143 A/D変換回路、150 第1デジタル回路、151 制御回路、152 レジスタ、153 通信回路、160 第2デジタル回路、161 補正演算回路、162 不揮発性記憶部、170 負荷容量、200 センサ、201 湿度検出用キャパシタ、202 参照用キャパシタ