(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】チェアリフト搬器のセフティーバーロック装置
(51)【国際特許分類】
B61B 11/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B61B11/00 B
(21)【出願番号】P 2020032717
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】戸奈 久之
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501749(JP,A)
【文献】特開2009-057040(JP,A)
【文献】特開2012-030781(JP,A)
【文献】特開2003-072538(JP,A)
【文献】特開2004-034970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セフティーバーを備えたチェアリフトの搬器において、前記セフティーバーが閉状態のときに該セフティーバー
の一部と掛止して
前記閉状態を保持する保持装置と、該保持装置に一端を接続したコントロールケーブルと、該コントロールケーブルの他端に接続された操作装置と、を備え
、
前記保持装置は、前記セフティーバーと掛止する掛止部が形成され、かつ、前記コントロールケーブルの前記一端が接続されると共に、回動自在に設けられた掛止ブロックを有し、
前記操作装置は、前記搬器の上部に転動、かつ、上下動自在に設けられ、前記コントロールケーブルの前記他端が接続されたローラーを有し、
停留場の前記搬器が到着する側で、ガイドレールが固設され、前記ローラーが転動することで、前記ローラーが上昇して、前記コントロールケーブルが押し上げられ、前記掛止ブロックが回動し、前記セフティーバーが前記掛止ブロックの前記掛止部から離脱し前記閉状態が解除され、
前記停留場の前記搬器が出発する側で、前記ガイドレールが固設され、前記ローラーが転動することで、前記ローラーが下降して、前記コントロールケーブルが押し下げられ、前記掛止ブロックが回動し、前記掛止ブロックの前記掛止部に前記セフティーバーの一部が掛止されることにより、前記閉状態となるように構成されたことを特徴とするチェアリフト搬器のセフティーバーロック装置。
【請求項2】
前記保持装置は、前記セフティーバーに掛合する
前記掛止ブロックと、該掛止ブロックにバネ力を付勢するバネと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のチェアリフト搬器のセフティーバーロック装置。
【請求項3】
前記停留場の前記搬器が出発する側において、前記保持装置が前記セフティーバーを保持可能な状態であることを検出する、ロック準備検出器を乗車位置の手前側に備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェアリフト搬器のセフティーバーロック装置。
【請求項4】
前記停留場の前記搬器が出発する側において、前記セフティーバーが
前記閉状態になっていることを検出する、ロック検出器を乗車位置の前方の位置に備えたことを特徴とする請求項3に記載のチェアリフト搬器のセフティーバーロック装置。
【請求項5】
前記停留場の前記搬器が到着する側において、前記保持装置が前記セフティーバーを保持しない状態であることを検出する、ロック解除検出器を降車位置の手前側に備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のチェアリフト搬器のセフティーバーロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェアリフトの搬器に備えたセフティーバーが、線路中において開くことのないようにするためのセフティーバーロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チェアリフトは、山麓側の停留場と山頂側の停留場とに設けた滑車間に索条を無端状に張架し、この索条に椅子式の搬器を定間隔で懸垂して両停留場間を循環して運行する輸送設備であって、スキー場等の傾斜地において多く利用されている。このチェアリフトに用いられる搬器は、乗車人員が1~8人乗りの搬器が実用化されている。このうち1~2人乗りの搬器では、座席シートの側端に備えた肘掛けを掴むことにより、乗客は体を安定させることができるが、それ以上の乗車人員の搬器においては、両端の乗客以外の乗客は掴まるところがないので不安定であり転落してしまう虞がある。
【0003】
このようなことから大型の搬器には、乗客の転落を防止するためにセフティーバーを備えている。このセフティーバーは、コの字状またはロの字状に座席シートの前面を囲むように丸鋼管等で形成されており、略垂直位置と略水平位置との間で回動自在に備えられている。セフティーバーは、乗客が乗車する前には略垂直状態にあって乗車に支障のない位置にあり、乗客が乗車した後には、水平状態へと回動して乗客を囲んだ状態となる。このようにして、乗車中の乗客の前方にはセフティーバーが横方向に延びて位置し、乗客はこれを掴むことにより体を安定させることができる。
【0004】
セフティーバーは、搬器に乗客が乗車しているときには線路中において常時閉じていることが望ましいが、時にはセフティーバーを閉じずに出発したり、線路中で乗客自らがセフティーバーを開けてしまうことがある。このようなことを防止するために、セフティーバーの回動中心付近にセフティーバーのロック装置を備え、このロック装置にロッドないしケーブル及びローラーを連結し、停留場内に備えたレールを通過することによりローラーが移動し、この結果セフティーバーのロック及び解除をする技術が従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術は、確実にセフティーバーの開閉が行われるとともにロック及び解放も自動で行われるので好ましいが、構成する要素が多いため高価になってしまう難点があった。また、自動でセフティーバーの開閉を行う場合には、乗客が所定の位置で着座しないと自動でセフティーバーが閉となって着座できなくなるので、セフティーバーの開閉は乗客や係員による手動操作が良いという要望もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、セフティーバーを手動で閉状態にしたときに容易にセフティーバーを保持でき、また、少ない部品で構成され組み付けも容易であり、したがって安価に構成することのできるチェアリフト搬器のセフティーバーロック装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、セフティーバーを備えたチェアリフトの搬器において、前記セフティーバーが閉状態のときに該セフティーバーの一部と掛止して前記閉状態を保持する保持装置と、該保持装置に一端を接続したコントロールケーブルと、該コントロールケーブルの他端に接続された操作装置と、を備え、前記保持装置は、前記セフティーバーと掛合する掛止部が形成され、かつ、前記コントロールケーブルの前記一端が接続されると共に、回動自在に設けられた掛止ブロックを有し、前記操作装置は、前記搬器の上部に転動、かつ、上下動自在に設けられ、前記コントロールケーブルの前記他端が接続されたローラーを有し、停留場の前記搬器が到着する側で、ガイドレールが固設され、前記ローラーが転動することで、前記ローラーが上昇して、前記コントロールケーブルが押し上げられ、前記掛止ブロックが回動し、前記セフティーバーが前記掛止ブロックの前記掛止部から離脱し前記閉状態が解除され、前記停留場の前記搬器が出発する側で、前記ガイドレールが固設され、前記ローラーが転動することで、前記ローラーが下降して、前記コントロールケーブルが押し下げられ、前記掛止ブロックが回動し、前記掛止ブロックの前記掛止部に前記セフティーバーの一部が掛止されることにより、前記閉状態となるように構成されたことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記保持装置は、前記セフティーバーに掛合する前記掛止ブロックと、該掛止ブロックにバネ力を付勢するバネと、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記停留場の前記搬器が出発する側において、前記保持装置が前記セフティーバーを保持可能な状態であることを検出する、ロック準備検出器を乗車位置の手前側に備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、前記停留場の前記搬器が出発する側において、前記セフティーバーが前記閉状態になっていることを検出する、ロック検出器を乗車位置の前方の位置に備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明において、前記停留場の前記搬器が到着する側において、前記保持装置が前記セフティーバーを保持しない状態であることを検出する、ロック解除検出器を降車位置の手前側に備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セフティーバーを手動で閉状態にしたときに容易にセフティーバーを保持でき、また、部品点数が少なく取付も容易であるので、安価にセフティーバーのロック装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、チェアリフトの搬器10の正面図及び側面図である。搬器10は、索条を握索する握索機12と、この握索機12に進行方向前後へ回動自在に枢着したサスペンダー13と、サスペンダー13の下部に緩衝材を介して懸垂されたシートフレーム14とを備えており、シートフレーム14の下部において、左右の部材間に座板15bと背板15aとを備えている。図に示した搬器10は、4人乗り用の搬器10であって、4席の座席を備えている。
【0016】
背板15aの左右両側面の上部には、フランジ部17を上方へ延出して形成し、このフランジ部17にセフティーバー16が回動自在に取り付けられている。セフティーバー16は、鋼管を円環状に形成したものであって、図において実線で示した閉状態と、2点鎖線で示した開状態との間で回動するように構成されている。このセフティーバー16は、停留場内の乗降時には開状態となっており、乗客が乗車した線路中においては手動にて閉状態にすることによって、フロントバー19が乗客の腹部付近に位置し、乗客が座席から落下するのを防止する。
【0017】
シートフレーム14の両側部には、セフティーバー16が閉状態となったときに閉状態を保持するロック装置20を備えている。ロック装置20は、セフティーバー16を掛止する保持装置21と、保持装置21を動作させる操作装置22と、保持装置21と操作装置22とを連結するコントロールケーブル23を有している。コントロールケーブル23は、中空の樹脂からなる長尺のアウターケーシングにワイヤーを摺動可能に貫通させて構成したものであって、操作装置22の動作を伝達して保持装置21を動作させる。
【0018】
図3は、操作装置22の側面図である。操作装置22は、サスペンダー13に固定した操作ブラケット24にレバー25を垂直方向へ回動自在に枢着し、レバー25の先端部にローラー26を回転自在に備えて構成されており、このローラー26の近傍にコントロールケーブル23の一端部が接続されている。停留場内には、搬器10の進行方向に沿って傾斜した形状のガイドレールが固設されており、このガイドレールに当接してローラー26が移動することによりレバー25が回動し、コントロールケーブル23のワイヤーが摺動する。
【0019】
図4は、保持装置21の側面図である。保持装置21は、シートフレーム14に固定された保持ブラケット27に掛止ブロック28を回動可能に枢着している。この掛止ブロック28と保持ブラケット27との間にはバネ29が掛止されており、掛止ブロック28が矢印A方向へ回動するようにバネ力が付勢されている。掛止ブロック28は、下端部の片面が傾斜した形状になっており、この傾斜面の上部にはセフティーバー16の部材に略合致する円弧状の溝が形成されている。掛止ブロック28には、コントロールケーブル23の他端部が接続されており、コントロールケーブル23のワイヤーが摺動することにより掛止ブロック28が回動する。
【0020】
以上の構成によりロック装置20は次のように動作する。
図5から
図8は、ロック装置20の動作図である。まず、
図5は、乗客が搬器10へ乗車する前の状態を示している。この状態においては、操作装置22のローラー26が上昇した位置にあり、保持装置21の掛止ブロック28は、コントロールケーブル23のワイヤーに引き上げられて、後方上方向に回動した状態である。また、セフティーバー16は、開状態になっている。
図6は、搬器10が停留場内を移動して乗客の乗車位置35に近づいた状態である。この状態においては、停留場内に固設されたガイドレールによりローラー26が押し下げられており、掛止ブロック28が前方下方向へ回動し、略垂直な状態になってセフティーバー16をロック可能な状態になっている。
【0021】
図7は、乗客が搬器10に着座して乗客自ら、または係員によってセフティーバー16を閉状態にするときの状態である。セフティーバー16が閉状態となるように回動すると、セフティーバー16の後部部材が掛止ブロック28の傾斜面に当接し上方へ摺動する。これにより掛止ブロック28は、バネ29のバネ力に抗して後方上方向へ回動させられる。次に、
図8は、セフティーバー16が閉状態になったときの状態である。この状態においては、掛止ブロック28が垂直状態に復帰し、セフティーバー16の後部部材が掛止ブロック28の溝に掛合するとともに、バネ29のバネ力により溝と後部部材が圧接してセフティーバー16がロックされる。
【0022】
図9は、出発側停留場の側面図である。停留場内には、搬器10のロック装置20をロック可能な状態にするためのロックガイドレール30が固設されている。ロックガイドレール30は、搬器10の進行方向に向けて最初に下り勾配が形成され、次いで水平区間を形成した後上り勾配が形成されている。このロックガイドレール30の下面にロック装置20のローラー26が当接して移動することにより、ローラー26が押し下げられて前記説明した
図5の状態からロック可能な
図6の状態へと移行する。
【0023】
ロックガイドレール30の前方位置には、ロック装置20がロック可能かどうかを検出するロック準備検出器32を備えている。ロック準備検出器32は、例えば、ローラー26の高さ位置を検出する装置であって、ローラー26が上昇した状態であってロック装置20がロック不能な場合には、これを検出して運転を停止し、当該搬器10に乗客を搭乗させないようにする。次いで、乗客の乗車位置35の前方には、セフティーバー16が閉状態であることを検出するロック検出器33を備えている。ロック検出器33は、例えば、所定の位置でのセフティーバー16の画像をカメラにより撮像し、あらかじめ記憶されているセフティーバー16の画像と比較して解析し、セフティーバー16の開閉状態を判断するようにした構成等を採用することができる。これにより、セフティーバー16の閉状態が検出されない場合は、運転を停止して乗客にセフティーバー16を閉にするように促すか、または係員が当該搬器10のセフティーバー16を閉にする。
【0024】
図10は、到着側停留場の側面図である。停留場内には、搬器10のロック装置20をロック解除するためのロック解除ガイドレール31が固設されている。ロック解除ガイドレール31は、搬器10の進行方向に向けて最初に上り勾配が形成され、次いで水平区間を形成した後下り勾配が形成されている。このロック解除ガイドレール31の上面にロック装置20のローラー26が当接して移動することにより、ローラー26が押し上げられて前記説明した
図5の状態となり、ロックが解除されてセフティーバー16が回動可能になる。
【0025】
ロック解除ガイドレール31の前方位置であって降車位置36の手前の位置には、ロック装置20が解除されたかどうかを検出するロック解除検出器34を備えている。ロック解除検出器34は、前記と同様に例えばローラー26の高さ位置を検出する装置であって、ロック装置20がロックしたままの状態で、ローラー26が下降した状態の場合には、これを検出して運転を停止し、係員が手動でロックを解除して乗客を降車させる。
【符号の説明】
【0026】
10 搬器
12 握索機
13 サスペンダー
14 シートフレーム
15a 背板
15b 座板
16 セフティーバー
17 フランジ部
19 フロントバー
20 ロック装置
21 保持装置
22 操作装置
23 コントロールケーブル
24 操作ブラケット
25 レバー
26 ローラー
27 保持ブラケット
28 掛止ブロック
29 バネ
30 ロックガイドレール
31 ロック解除ガイドレール
32 ロック準備検出器
33 ロック検出器
34 ロック解除検出器
35 乗車位置
36 降車位置
A 矢印