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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】微生物燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20240214BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20240214BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240214BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20240214BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M8/16
H01M4/90 Y
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/02
H01M8/04 J
H01M8/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020052084
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021150266
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】浅井 靖史
(72)【発明者】
【氏名】窪田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智秀
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0069806(US,A1)
【文献】特開2020-009586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む水が貯留されている第1の槽と、
前記第1の槽に配置されているアノード電極と、
前記アノード電極と電気的に接続されており、前記第1の槽に配置されている第1のカソード電極と、
二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜を介して前記第1の槽と隣接している第2の槽と、
前記アノード電極と電気的に接続されており、前記第2の槽に配置されている第2のカソード電極と、
を備えた微生物燃料電池であって、
前記アノード電極には、前記有機物を分解して電子を産生する第1の微生物が付着しており、
前記第2のカソード電極には、電子を受け取って前記二酸化炭素を他の化合物に変換する第2の微生物が付着しており、
前記第1の微生物が前記有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、前記第1のカソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、前記第2のカソード電極において前記アノード電極からの電子を前記第2の微生物が受け取り、前記二酸化炭素を還元する反応とが行われるように構成されており、
前記アノード電極と前記第1のカソード電極を電気的に接続する態様と、前記アノード電極と前記第2のカソード電極を電気的に接続する態様との切り替えを行う切替スイッチと、
前記第1のカソード電極側で発電された電気を充電する機能と、前記第2のカソード電極側で前記二酸化炭素を還元する際の電子の供給源としての機能を有している蓄電部と、
を備え、
前記第1のカソード電極側で発電された電気を用いて、前記第2のカソード電極側で前記二酸化炭素を還元するように構成されていることを特徴とする微生物燃料電池。
【請求項2】
有機物を含む水が貯留されている第1の槽と、
前記第1の槽に配置されているアノード電極と、
前記アノード電極と電気的に接続されており、前記第1の槽に配置されている第1のカソード電極と、
二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜を介して前記第1の槽と隣接している第2の槽と、
前記アノード電極と電気的に接続されており、前記第2の槽に配置されている第2のカソード電極と、
を備えた微生物燃料電池であって、
前記アノード電極には、前記有機物を分解して電子を産生する第1の微生物が付着しており、
前記第2のカソード電極には、電子を受け取って前記二酸化炭素を他の化合物に変換する第2の微生物が付着しており、
前記第1の微生物が前記有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、前記第1のカソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、前記第2のカソード電極において前記アノード電極からの電子を前記第2の微生物が受け取り、前記二酸化炭素を還元する反応とが行われるように構成されており、
前記アノード電極と前記第1のカソード電極の間には第1の外部抵抗が接続されており、
前記アノード電極と前記第2のカソード電極の間には第2の外部抵抗が接続されており、
前記第1の外部抵抗と前記第2の外部抵抗は、抵抗値を切り替えることが可能な可変抵抗であり、
前記第1の外部抵抗の抵抗値を前記第2の外部抵抗の抵抗値よりも下げるように切り替えられて、前記第1のカソード電極側で発電が行われ、前記第1の外部抵抗の抵抗値を前記第2の外部抵抗の抵抗値よりも上げるように切り替えられて、前記第2のカソード電極側で前記二酸化炭素を還元する反応が行われるように構成されていることを特徴とする微生物燃料電池。
【請求項3】
前記第2の槽中に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の微生物燃料電池。
【請求項4】
前記第1のカソード電極は、一方の面側が前記有機物を含む水と接し、他方の面側が外気と接して配置されているエアカソードであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
【請求項5】
前記第1の槽には底質が堆積しており、前記アノード電極は前記底質に少なくとも一部が埋め込まれていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を炭化水素や有機酸などに変換することで、二酸化炭素の排出を抑える微生物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素の排出を抑えるようにした微生物燃料電池が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この微生物燃料電池は、有機物を分解して二酸化炭素とプロトンと電子とを生成する微生物を収容する第1の槽と、第1のプロトン透過膜を介して第1の槽に隣接する第2の槽と、第1の槽に配設された第1の電極と、第2の槽に配設されるとともに第1の電極と電気的に接続され水を生成する第2の電極とを備え、さらに、受光することにより水を分解する光触媒電極を備える第3の槽と、第2のプロトン透過膜を介して第3の槽に隣接し、光触媒電極と電気的に接続された対極を備える第4の槽などを備えて構成されている。
この微生物燃料電池では、所定の光線を受光した光触媒電極が光触媒の触媒作用によって水を分解して酸素とプロトンと電子を生成する反応を利用しており、光触媒電極を備える第3の槽に所定の光線を照射するようにしている。
そして、第4の槽において、第3の槽から第2のプロトン透過膜を介して供給されたプロトンが対極にて電子を受け取るとともに第1の槽から供給される二酸化炭素と反応し、その二酸化炭素が還元されて有機酸(ギ酸)を生成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-93200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の微生物燃料電池の場合、第3の槽に照射する光線として太陽光を利用するとなるとその稼働は日中に限られ、天候によっても稼働が制限されることがあるという問題があった。
また、第3の槽に所定の光線を照射するために外部エネルギー由来の光源を用いるとなると、微生物燃料電池による発電のために外部電源が必要になるという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、光エネルギーを利用することなく、好適に二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる微生物燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
有機物を含む水が貯留されている第1の槽と、
前記第1の槽に配置されているアノード電極と、
前記アノード電極と電気的に接続されており、前記第1の槽に配置されている第1のカソード電極と、
二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜を介して前記第1の槽と隣接している第2の槽と、
前記アノード電極と電気的に接続されており、前記第2の槽に配置されている第2のカソード電極と、
を備えた微生物燃料電池であって、
前記アノード電極には、前記有機物を分解して電子を産生する第1の微生物が付着しており、
前記第2のカソード電極には、電子を受け取って前記二酸化炭素を他の化合物に変換する第2の微生物が付着しており、
前記第1の微生物が前記有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、前記第1のカソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、前記第2のカソード電極において前記アノード電極からの電子を前記第2の微生物が受け取り、前記二酸化炭素を還元する反応とが行われるように構成されており、
前記アノード電極と前記第1のカソード電極を電気的に接続する態様と、前記アノード電極と前記第2のカソード電極を電気的に接続する態様との切り替えを行う切替スイッチと、
前記第1のカソード電極側で発電された電気を充電する機能と、前記第2のカソード電極側で前記二酸化炭素を還元する際の電子の供給源としての機能を有している蓄電部と、
を備え、
前記第1のカソード電極側で発電された電気を用いて、前記第2のカソード電極側で前記二酸化炭素を還元するように構成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、
有機物を含む水が貯留されている第1の槽と、
前記第1の槽に配置されているアノード電極と、
前記アノード電極と電気的に接続されており、前記第1の槽に配置されている第1のカソード電極と、
二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜を介して前記第1の槽と隣接している第2の槽と、
前記アノード電極と電気的に接続されており、前記第2の槽に配置されている第2のカソード電極と、
を備えた微生物燃料電池であって、
前記アノード電極には、前記有機物を分解して電子を産生する第1の微生物が付着しており、
前記第2のカソード電極には、電子を受け取って前記二酸化炭素を他の化合物に変換する第2の微生物が付着しており、
前記第1の微生物が前記有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、前記第1のカソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電と、前記第2のカソード電極において前記アノード電極からの電子を前記第2の微生物が受け取り、前記二酸化炭素を還元する反応とが行われるように構成されており、
前記アノード電極と前記第1のカソード電極の間には第1の外部抵抗が接続されており、
前記アノード電極と前記第2のカソード電極の間には第2の外部抵抗が接続されており、
前記第1の外部抵抗と前記第2の外部抵抗は、抵抗値を切り替えることが可能な可変抵抗であり、
前記第1の外部抵抗の抵抗値を前記第2の外部抵抗の抵抗値よりも下げるように切り替えられて、前記第1のカソード電極側で発電が行われ、前記第1の外部抵抗の抵抗値を前記第2の外部抵抗の抵抗値よりも上げるように切り替えられて、前記第2のカソード電極側で前記二酸化炭素を還元する反応が行われるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の微生物燃料電池において、
前記第2の槽中に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物燃料電池において、
前記第1のカソード電極は、一方の面側が前記有機物を含む水と接し、他方の面側が外気と接して配置されているエアカソードであることを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載の微生物燃料電池において、
前記第1の槽には底質が堆積しており、前記アノード電極は前記底質に少なくとも一部が埋め込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光エネルギーを利用することなく、好適に二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる微生物燃料電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の微生物燃料電池を示す概略図である。
図2】実施形態1の微生物燃料電池の変形例を示す概略図である。
図3】実施形態2の微生物燃料電池を示す概略図である。
図4】実施形態2の微生物燃料電池の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る微生物燃料電池の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
(実施形態1)
実施形態1の微生物燃料電池100は、例えば、図1に示すように、有機物を含む水が貯留されている第1の槽10と、第1の槽10に配置されているアノード電極11と、アノード電極11と電気的に接続されており、第1の槽10に配置されている第1のカソード電極12と、二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜21を介して第1の槽10と隣接している第2の槽20と、アノード電極11と電気的に接続されており、第2の槽20に配置されている第2のカソード電極22等を備えている。
【0014】
実施形態1では、微生物燃料電池100の第1の槽10として屋外の貯水槽を利用している。この貯水槽には有機物を含む水が貯留されているとともに底質Bが堆積している。
なお、第1の槽10は貯水槽であることに限らず、有機物を含む水が貯留されている大きな水槽(例えばプール)などであってもよい。
また、溜池や人造湖のような貯水槽に限らず天然の湖沼にも有機物を含む水が貯留されているので、そのような湖沼を第1の槽10と見立てて微生物燃料電池100を設計してもよい。
【0015】
第2の槽20は、例えばタンク状の容器であり、その一部に隔膜21が配設されている。
この第2の槽20は、例えば、図示しない支持部材に支えられた状態で第1の槽10の中に設置されており、第2の槽20の隔膜21が第1の槽10の水に浸けられている。
つまり、第2の槽20の水と第1の槽10の水はそれぞれ隔膜21に接触しており、その隔膜21によって第2の槽20の水と第1の槽10の水が隔てられた状態になっている。
隔膜21は、例えば、イオン交換膜であり、本実施形態では水素イオン(プロトン)が透過可能なプロトン交換膜を用いている。
なお、第2の槽20は、第2の槽20に第1の槽10の水が流入したり、第2の槽20の水が第1の槽10に流出したりしない構造を有している。
【0016】
また、微生物燃料電池100は、第2の槽20に二酸化炭素を供給するための二酸化炭素供給手段30を備えている。この二酸化炭素供給手段30によって、第2の槽20の水に二酸化炭素が溶存している状態を維持できる。
二酸化炭素供給手段30は、第2の槽20中の水に二酸化炭素を供給できるものであればその構成は任意である。
例えば、二酸化炭素ボンベと送気管とエアポンプなどを有している二酸化炭素供給手段30であれば、二酸化炭素を第2の槽20に供給することができる。また、二酸化炭素ボンベを用いることなく、二酸化炭素を含んでいる燃焼ガスを送気管とエアポンプを用いて第2の槽20に供給する二酸化炭素供給手段30であってもよい。
【0017】
アノード電極11と第1のカソード電極12、およびアノード電極11と第2のカソード電極22は、電線1によって接続されている。
また、アノード電極11と第1のカソード電極12の間の電線1には外部抵抗2aが接続されている。
また、アノード電極11と第2のカソード電極22の間の電線1には外部抵抗2bが接続されている。
この外部抵抗2a,2bは、抵抗値を切り替えることが可能な可変抵抗である。例えば、外部抵抗2aの抵抗値を外部抵抗2bの抵抗値よりも下げるように切り替えれば、アノード電極11から第1のカソード電極12に電子が移動し易くなり、また、外部抵抗2aの抵抗値を外部抵抗2bの抵抗値よりも上げるように切り替えれば、アノード電極11から第2のカソード電極22に電子が移動し易くなる。
なお、外部抵抗2a,2bの抵抗値の切り替えは、電線1に流れる電流量に応じて切り替えられる自動式の切り替えであっても、この電池の管理者による手動式の切り替えであってもよい。
【0018】
アノード電極11には、有機物を分解して電子を産生する第1の微生物が付着している。なお、アノード電極11に付着している第1の微生物は、バイオフィルムなどを用いて植種したものでも、アノード電極11に自然に付着して定着したものでもよい。
このアノード電極11は、第1の微生物による有機物の分解で生じる電子と水素イオンのうち、電子を受け取るための電極である。
つまり、アノード電極11の材質は、第1の微生物が有機物を分解して産生された電子を受け取ることができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属材料、炭素材料等の導電材料を挙げることができる。金属材料としては、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、白金等を挙げることができ、炭素材料としては、グラファイト、炭素繊維、カーボンクロス、カーボンマット、カーボンフェルト、カーボンペーパー等を挙げることができる。
また、アノード電極11の形状は、特に限定されないが、シート状、板状、メッシュ状、格子状、ブロック状、多孔質状等を挙げることができる。
【0019】
なお、実施形態1の微生物燃料電池100におけるアノード電極11は、第1の槽10(貯水槽や湖沼)の底に堆積している底質Bに少なくとも一部が埋め込まれて設置されている。
こうすることで、底質B中の第1の微生物がアノード電極11に付着し易くなるので好ましい。
【0020】
第1のカソード電極12は、アノード電極11から電線1を通じて移動してきた電子と、水中を移動してきた水素イオン(例えば、アノード電極11側から水中を移動してきた水素イオン)を、その電極周辺の酸素と反応させて、酸素を還元するための電極である。
つまり、第1のカソード電極12の材質は、アノード電極11からの電子と水素イオンとにより酸素を還元することができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属材料、炭素材料等の導電材料を挙げることができる。金属材料としては、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、白金等を挙げることができ、炭素材料としては、グラファイト、炭素繊維、カーボンクロス、カーボンマット、カーボンフェルト、カーボンペーパー等を挙げることができる。
また、第1のカソード電極12の形状は、特に限定されないが、シート状、板状、メッシュ状、格子状、ブロック状、多孔質状等を挙げることができる。
なお、第1のカソード電極12は、第1の槽10の水面寄りの水深に配置されている。水面近くの表層では溶存酸素が多く、溶存酸素が飽和していると見なすこともできるので、酸素を還元するための電極である第1のカソード電極12を第1の槽10の表層側に配置するようにした。
【0021】
第2のカソード電極22には、電子を受け取って二酸化炭素を炭化水素に変換する第2の微生物が付着している。なお、第2のカソード電極22に付着している第2の微生物は、バイオフィルムなどを用いて植種したものでも、第2のカソード電極22に自然に付着して定着したものでもよい。
この第2のカソード電極22は、アノード電極11から電線1を通じて移動してきた電子を第2の微生物に受け渡すための電極である。
そして、第2のカソード電極22において、アノード電極11から電線1を通じて移動してきた電子を第2の微生物が受け取り、その第2の微生物が受け取った電子と、隔膜21を透過して水中を移動してきた水素イオン(例えば、アノード電極11側から水中を移動してきた水素イオン)と、電極周辺の二酸化炭素とを反応させている。具体的には、第2のカソード電極22において、第2の微生物が電子と水素イオンと二酸化炭素とを反応させて、二酸化炭素を還元して炭化水素(例えばメタン)に変換している。
つまり、第2のカソード電極22の材質は、アノード電極11からの電子を第2の微生物に受け渡すことができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属材料、炭素材料等の導電材料を挙げることができる。金属材料としては、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、白金等を挙げることができ、炭素材料としては、グラファイト、炭素繊維、カーボンクロス、カーボンマット、カーボンフェルト、カーボンペーパー等を挙げることができる。
また、第2のカソード電極22の形状は、特に限定されないが、シート状、板状、メッシュ状、格子状、ブロック状、多孔質状等を挙げることができる。
【0022】
このような構成の微生物燃料電池100において、第1の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極11が受け取り、第1のカソード電極12においてアノード電極11からの電子により酸素を還元することによる発電と、第2のカソード電極22においてアノード電極11からの電子を第2の微生物が受け取り、二酸化炭素を還元して炭化水素を生成する反応とが行われるようになっている。
つまり、この微生物燃料電池100では、第1のカソード電極12側で発電が行われ、第2のカソード電極22側で二酸化炭素を炭化水素に還元することが行われるように構成されており、発電と二酸化炭素の変換がともに行われている。
それにより、第1のカソード電極12側での発電に際して二酸化炭素が発生する場合でも、第2のカソード電極22側で二酸化炭素が他の化合物に変換されるので、この反応系での二酸化炭素の排出を抑えることができる。
例えば、上記特許文献1の技術では、二酸化炭素の排出を抑えるために、外部電源(外部エネルギー由来の光源)を用いる必要があったが、本実施形態の微生物燃料電池100では外部電源は不要である。
このように、本実施形態の微生物燃料電池100であれば、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図2に示すように、アノード電極11と第1のカソード電極12と第2のカソード電極22とを接続している電線1の分岐部分に、切替スイッチ40と蓄電部50を設けるようにしてもよい。
【0024】
切替スイッチ40は、アノード電極11と第1のカソード電極12を電気的に接続する態様と、アノード電極11と第2のカソード電極22を電気的に接続する態様との切り替えを行う素子である。
また、切替スイッチ40は、アノード電極11と第1のカソード電極12と第2のカソード電極22とを電気的に接続する切り替えを行うこともできる。
つまり、切替スイッチ40は、第1のカソード電極12と第2のカソード電極22の少なくとも一方にアノード電極11を電気的に接続するための切り替えを行うものである。
この切替スイッチ40の切り替えは、電線1に流れる電流量に応じて切り替えられる自動式であっても、この電池の管理者による手動式であってもよい。
【0025】
蓄電部50は、所謂充電式電池であり、微生物燃料電池100の第1のカソード電極12側で発電された電気を充電する機能と、微生物燃料電池100の第2のカソード電極22側で二酸化炭素を炭化水素に還元する際の電子の供給源としての機能を有している。
なお、切替スイッチ40によってアノード電極11と第1のカソード電極12が電気的に接続されている状態で、蓄電部50に電気が充電され、切替スイッチ40によってアノード電極11と第2のカソード電極22が電気的に接続されている状態で、蓄電部50から第2のカソード電極22に電子が供給されるようになっている。
【0026】
また、切替スイッチ40によってアノード電極11と第1のカソード電極12と第2のカソード電極22とが電気的に接続されている状態で、蓄電部50に電気を充電しつつ、蓄電部50から第2のカソード電極22に電子を供給するようにして、第2のカソード電極22側にて二酸化炭素を炭化水素に還元するのをアシストするようにしてもよい。
【0027】
このような構成の微生物燃料電池100であっても、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる。
【0028】
(実施形態2)
次に、本発明に係る微生物燃料電池の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0029】
実施形態2の微生物燃料電池200は、例えば、図3に示すように、有機物を含む水が貯留されている第1の槽10と、第1の槽10に配置されているアノード電極11と、アノード電極11と電気的に接続されており、第1の槽10に配置されている第1のカソード電極12と、二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜21を介して第1の槽10と隣接している第2の槽20と、アノード電極11と電気的に接続されており、第2の槽20に配置されている第2のカソード電極22等を備えている。
また、アノード電極11と第1のカソード電極12、およびアノード電極11と第2のカソード電極22は、電線1によって接続されている。
また、アノード電極11と第1のカソード電極12の間の電線1には外部抵抗2aが接続されており、アノード電極11と第2のカソード電極22の間の電線1には外部抵抗2bが接続されている。
【0030】
実施形態2の微生物燃料電池200は、例えば、第1の槽10と第2の槽20が一体的に形成された槽を用いた場合、第1の槽10と第2の槽20を区画するように隔膜21を配設した構造を有している。
また、実施形態2の微生物燃料電池200は、例えば、第1の槽10と第2の槽20が別体として形成された槽を用いた場合、隔膜21を介して第1の槽10と第2の槽20を隣接させた構造を有している。
いずれの構造であっても、第1の槽10の水と第2の槽20の水はそれぞれ隔膜21に接触しており、その隔膜21によって第1の槽10の水と第2の槽20の水が隔てられた状態になっている。
【0031】
また、この微生物燃料電池200の第1のカソード電極12はエアカソードであり、一方の面側が有機物を含む水と接し、他方の面側が外気と接するように第1の槽10に配置されている。
第1のカソード電極12がエアカソードであれば、空気中の酸素を効率よく取り込むようにして、その第1のカソード電極12においてアノード電極11からの電子により酸素を還元することによる発電を良好に行うことができる。
勿論、微生物燃料電池200の第1のカソード電極12がエアカソードであることに限らず、上記実施形態1の第1のカソード電極12と同様に水中に配置されたカソード電極であってもよい。
【0032】
このような微生物燃料電池200であっても、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる。
【0033】
そして、この微生物燃料電池200は、例えば、工場の設備として使用することができる。
実施形態2の微生物燃料電池200を工場の設備として設けた場合、工場における有機物を含む排水を第1の槽10に供給し、工場における二酸化炭素を含む排気を第2の槽30に供給するようにする。
こうすることで、工場排水に含まれている有機物を使った発電を行うことができ、また、工場排気に含まれている二酸化炭素を他の化合物に変換することで、二酸化炭素の排出を抑えることができる。
つまり、工場の排気や排水を利用した発電を行うことができ、発電した電気を工場にて使うことも可能になる。
また、微生物燃料電池200を工場の設備とし、工場における二酸化炭素を含む排気が第2の槽20に供給される場合には、二酸化炭素供給手段30を設けなくてもよい。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図4に示すように、微生物燃料電池200において、アノード電極11と第1のカソード電極12と第2のカソード電極22とを接続している電線1の分岐部分に、切替スイッチ40と蓄電部50を設けるようにしてもよい。
このような構成の微生物燃料電池200であっても、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる。
【0035】
なお、以上の実施の形態の微生物燃料電池(100,200)においては、第2のカソード電極22側で二酸化炭素を還元して炭化水素(例えばメタン)を生成するとしていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第2のカソード電極22側で二酸化炭素を還元して有機酸(例えばギ酸)を生成するようにしてもよい。
つまり、第2のカソード電極22側で二酸化炭素を還元して他の化合物に変換できればよい。
例えば、第2のカソード電極22に付着させる第2の微生物に応じて、その還元反応をコントロールすることができる。
【0036】
また、上記実施形態1の微生物燃料電池100において、第1の槽10として屋外の貯水槽を利用するとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、勿論、屋内の水槽を利用するようにしてもよい。そして、その水槽(第1の槽10)に底質Bが堆積していなければ、第1のカソード電極12は第1の槽10の水中に設置されていればよい。
【0037】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 電線
2a、2b 外部抵抗
10 第1の槽
11 アノード電極
12 第1のカソード電極
20 第2の槽
21 隔膜
22 第2のカソード電極
30 二酸化炭素供給手段
40 切替スイッチ
50 蓄電部
100 微生物燃料電池
200 微生物燃料電池
B 底質
図1
図2
図3
図4