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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電流センサ構成及び較正
(51)【国際特許分類】
   G01R 21/06 20060101AFI20240214BHJP
   G01R 21/133 20060101ALI20240214BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20240214BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01R21/06 E
G01R21/133 C
G01R19/00 A
G01R19/00 M
G01R35/00 E
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021505673
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019044057
(87)【国際公開番号】W WO2020028314
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】16/522,446
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/712,123
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】エリック マシアス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ダニエル エヴァンス
(72)【発明者】
【氏名】クリパサゲル カイ ヴェンカット
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-206161(JP,A)
【文献】特開平3-108674(JP,A)
【文献】特開平7-325115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0269134(US,A1)
【文献】特開平10-104285(JP,A)
【文献】特開平5-333067(JP,A)
【文献】米国特許第6377037(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 21/06
G01R 21/133
G01R 19/00
G01R 35/00
G01R 15/18
H02H 3/02
H02H 3/05
H02H 3/36
H02H 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流センサの位相較正のための方法であって、
テストソースからの測定電流を表す第1の信号を第1のアナログデジタルコンバータを用いて第1のデジタル信号に変換すること
前記テストソースからの測定電圧を表す第2の信号を第2のアナログデジタルコンバータを用いて第2のデジタル信号に変換すること
前記第1のデジタル信号と前記第2のデジタル信号との間の計算された位相角度を計算すること
前記計算された位相角度からテストソース位相角度を減じることにより位相差を計算すること
前記第1のアナログデジタルコンバータのプリロードパラメータが1ユニット変化することに基づいて前記第1のデジタル信号の位相がシフトする角度を表す部分サンプル解像度で位相差を除算して前記第1のデジタル信号と前記第2のデジタル信号との間の総サンプル遅延を計算することであって、前記プリロードパラメータが前記第1のアナログデジタルコンバータがサンプリングを開始するまでの遅延を表す、前記総サンプル遅延を計算すること
更新されたプリロードパラメータを前記第1のアナログデジタルコンバータのオーバーサンプリングレートを法(mod)とした総サンプル遅延として計算すること
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記テストソースの周波数を前記第1のアナログデジタルコンバータのサンプリング周波数で除算して度数に変換することによって全体サンプル解像度を計算することと、
前記全体サンプル解像度を前記オーバーサンプリングレートで除算することによって前記部分サンプル解像度を計算することと、
を更に含、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
下記数式を用いて或る数の全体サンプル遅延を計算することであって、
ここで、TSDがサンプル遅延であり、OSRが第1のアナログデジタルコンバータのオーバーサンプリングレートである、前記或る数の全体サンプル遅延を計算すること
前記計算された位相角度を計算するように構成されエネルギー測定構成要素を前記或る数の全体サンプル遅延で構成すること、
を更に含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記更新されたプリロードパラメータで前記第1のアナログデジタルコンバータを構成することを更に含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のアナログデジタルコンバータが第1のシグマ・デルタ・アナログデジタルコンバータを含み、前記第2のアナログデジタルコンバータが第2のシグマ・デルタ・アナログデジタルコンバータを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のデジタル信号と前記第2のデジタル信号との間の計算された位相角度を計算することが、
有効電力を計算するために前記第1及び第2のデジタル信号を用いること
前記有効電力に基づいて力率を算出すること
前記力率を前記計算された位相角度に変換すること
を含む、方法。
【請求項7】
有効電力の利得較正のための方法であって、
測定された電流を表す第1の信号を第1のデジタル信号に変換することと、
測定された電圧を表す第2の信号を第2のデジタル信号に変換することと、
前記第1のデジタル信号から得られるサンプルと前記第2のデジタル信号から得られるサンプルと既存の有効電力スケールファクタとサンプルの数とを用いて有効電力を計算することと、
前記第1及び第2のデジタル信号間の位相角度を計算することと、
前記既存の有効電力スケールファクタとテストソース信号の電圧値と前記テストソース信号の電流値と前記位相角度と前記有効電力とを用いて更新された有効電力スケールファクタを計算することと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記更新された有効電力スケールファクタを用いてマイクロコントローラを構成することを更に含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記更新された有効電力スケールファクタに基づいてコードを生成すること
前記生成されたコードを前記マイクロコントローラ内のメモリに提供すること
を更に含む、方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、
前記有効電力が、下記数式を用いて計算され、
ここで、KACT,phが既存の有効電力スケールファクタであり、Sample Countが前記第1及び第2のデジタル信号を生成するときに前記第1及び第2の信号の取られたサンプル数であり、v(n)及びi(n)が、それぞれ、サンプルnで測定された電圧及び電流である、方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、
前記更新された有効電力スケールファクタが、下記数式を用いて計算され、
ここで、KACT,phが既存の有効電力スケールファクタであり、Videal及びIidealが、それぞれテストソース信号に基づく前記第2及び第1のデジタル信号の電圧及び電流値であり、θcalculated,phが前記第1及び第2のデジタル信号の間の位相角度であり、PACT,phが有効電力である、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、
前記第1及び第2のデジタル信号の間の位相角度計算することが、
力率を計算することと、
前記力率を前記位相角度に変換することと、
を含む、方法。
【請求項13】
電流センサを較正するためのシステムであって、
エネルギー測定構成要素であって、
テストソースからの測定された電流を表す第1の信号とテストソースからの測定された電圧を表す第2の信号にそれぞれ対応する第1のアナログデジタルコンバータからの第1のデジタル信号と第2のアナログデジタルコンバータからの第2のデジタル信号とを受信し、
前記第1及び第2のデジタル信号と既存の有効電力スケールファクタとに基づいて有効電力を計算し、
前記有効電力に基づいて力率を計算する
ように構成される、前記エネルギー測定構成要素
較正コンピュータであって
前記エネルギー測定構成要素から前記有効電力と前記力率を受け取り、
前記力率を変換位相角度に変換し、
前記変換された位相角度前記有効電力を用いて更新された有効電力スケールファクタを計算し、
前記変換された位相角度から前記テストソースの位相角度を減じることによって位相差を計算し、
前記第1のアナログデジタルコンバータがサンプリングを開始する前の遅延を表す前記第1のアナログデジタルコンバータのプリロードパラメータが1ユニット変化することに基づいて前記第1のデジタル信号の位相の角度を表す部分サンプル解像度で前記位相差を除算することによって前記第1のアナログデジタルコンバータのための前記第1及び第2のデジタル信号の間のサンプル遅延を計算し、
前記第1のアナログデジタルコンバータのオーバーサンプリングレートを法(mod)とした前記サンプル遅延として更新されたプリロード角度を計算する
ように構成される、前記較正コンピュータと
を含む、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、
前記較正コンピュータが、
前記テストソースの周波数を前記第1のアナログデジタルコンバータのサンプリング周波数で除算し度数に変換することによって全体サンプル解像度を計算し、
前記全体サンプル解像度を前記オーバーサンプリングレートで除算することによって前記部分サンプル解像度を計算する
ように更に構成される、システム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムであって、
前記較正コンピュータが、下記数式を用いて或る数の全体サンプル遅延を計算するように更に構成され、
ここで、TSDが総サンプル遅延であり、OSRが前記第1のアナログデジタルコンバータのオーバーサンプリングレートである、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記較正コンピュータが、前記第1のアナログデジタルコンバータを前記更新されたプリロードパラメータで再構成し、前記エネルギー測定構成要素を前記全体サンプル遅延で再構成するために、前記更新されたプリロードパラメータと前記全体サンプル遅延とをセンサシステムに提供するように更に構成される、システム。
【請求項17】
請求項13に記載のシステムであって、
前記第1のアナログデジタルコンバータが第1のシグマ・デルタ・アナログデジタルコンバータを含み、前記第2のアナログデジタルコンバータが第2のシグマ・デルタ・アナログデジタルコンバータを含む、システム。
【請求項18】
請求項13に記載のシステムであって、
前記較正コンピュータが、前記エネルギー測定構成要素を再構成するために前記更新された有効電力スケールファクタを前記エネルギー測定構成要素に提供するように更に構成される、システム。
【請求項19】
請求項13に記載のシステムであって、
前記エネルギー測定構成要素が、下記数式を用いて前記有効電力を計算するように構成され、
ここで、KACT,phが既存の有効電力スケールファクタであり、Sample Countが前記第1及び第2のデジタル信号を生成するときに前記電圧及び電流の信号から取られたサンプルの数であり、v(n)及びi(n)が、それぞれ、サンプルnで測定された電圧及び電流である、システム。
【請求項20】
請求項13に記載のシステムであって、
前記較正コンピュータが、下記数式を用いて前記更新された有効電力スケールファクタを計算するように更に構成され、
ここで、Videal及びIidealが、それぞれテストソース信号に基づく前記第2及び第1のデジタル信号の電圧及び電流値であり、θcalculated,phが前記第1及び前記第2のデジタル信号間の計算された位相角度であり、PACT,phが前記有効電力である、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電力及びエネルギー測定は、ロゴスキーコイルを含む、デジタルプロセッサ及びセンサを用いて実施され得る。ロゴスキーコイルは、ロゴスキーコイルを流れる電流の変化率に比例する差動電圧を生成する。そのため、ロゴスキーコイルは、電流を測定し、その電流の値を表す電圧として測定値を出力する。ロゴスキーコイルセンサシステムは概して、例えば、ロゴスキーコイル測定値を処理するセンサシステムが正確であることを保証するために較正される。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載される例は、電流センサの位相較正のための方法を含む。この方法は、第1のアナログデジタルコンバータを用いて、測定電流を表す第1の信号を第1のデジタル信号に変換することと、第2のアナログデジタルコンバータを用いて、測定電圧を表す第2の信号を第2のデジタル信号に変換することとを含む。この方法は更に、第1のデジタル信号と第2のデジタル信号との間の計算された位相角度を計算することと、計算された位相角度からテストソース位相角度を減じることによって位相差を計算することとを含む。また、この方法は、第1のアナログデジタルコンバータのプリロードパラメータが1ユニット変化することに基づいて第1のデジタル信号の位相がシフトし得る角度を表す部分サンプル解像度で位相差を除算することによって、第1のデジタル信号と第2のデジタル信号との間の総サンプル遅延を計算することを含み、プリロードパラメータは、第1のアナログデジタルコンバータがサンプリングを開始するまでの遅延を表す。この方法は更に、更新されたプリロードパラメータを、第1のアナログデジタルコンバータのオーバーサンプリングレートを法とした(mod)総サンプル遅延として計算することを含む。
【0003】
本明細書において記載される別の例が、有効電力(active power)の利得較正のための方法を含む。この方法は、測定電流を表す第1の信号を第1のデジタル信号に変換するためにマイクロコントローラを用いることと、測定電圧を表す第2の信号を第2のデジタル信号に変換するためにマイクロコントローラを用いることとを含む。この方法は更に、第1及び第2のデジタル信号を用いて、既存のスケールファクタに基づいて有効電力を計算することを含む。また、この方法は、第1のデジタル信号と第2のデジタル信号との間の位相角度を計算することと、更新されたスケールファクタを計算するために位相角度及び有効電力を用いることとを含む。
【0004】
有効電力及び位相較正の利得較正のための方法は、コンピュータによって開始され得、「ワンタッチ」方式で自動的に行なわれてもよい。
【0005】
本明細書に記載される別の例は、電流センサを較正するためのシステムである。このシステムは、それぞれ、テストソースからの測定された電流を表す第1の信号とテストソースからの測定された電圧を表す第2の信号に対応する、第1のアナログデジタルコンバータからの第1のデジタル信号、第2のアナログデジタルコンバータからの第2のデジタル信号を受信し、第1及び第2のデジタル信号と既存のスケールファクタとに基づいて有効電力を計算し、有効電力に基づいて力率を計算するように構成されるエネルギー測定構成要素を含む。このシステムは較正コンピュータも含む。較正コンピュータは、エネルギー測定構成要素から有効電力及び力率を受け取り、力率を変換位相角度に変換するように構成される。較正コンピュータは更に、変換された位相角度及び有効電力を用いて、更新されたスケールファクタを計算し、変換された位相角度からテストソースの位相角度を減じることによって位相差を計算するように構成される。また、この較正コンピュータは、第1のアナログデジタルコンバータのプリロードパラメータが1ユニット変化することに基づいて、第1のデジタル信号の位相の角度を表す部分サンプル解像度で位相差を除算することによって、第1のアナログデジタルコンバータのための第1及び第2のデジタル信号の間の総サンプル計算するように、及び、第1のアナログデジタルコンバータのオーバーサンプリングレートを法とした総サンプル遅延として更新されたプリロード角度を計算するように構成され、ここで、プリロードパラメータは、第1のアナログデジタルコンバータがサンプリングを開始する前の遅延を表す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本明細書に記載される較正システムの一例を図示する。
【0007】
図2図1の例示の較正システムを用いて利得を較正するための方法の例を図示する。
【0008】
図3図1の例示の較正システムを用いて位相を較正するための方法の例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例えば、ロゴスキーコイルセンサシステムなどのセンサシステムの較正にはいくつかの課題がある。例えば、ロゴスキーコイルと校正すべきセンサ回路要素の特徴付け(すなわち、その出力特性の測定)には、かなりの時間と労力がかかる可能性がある。例えば、位相に関する特徴付けには、ロゴスキーコイルに電流を流すこと、及び、入力と出力との間の位相角のシフトを測定するためにオシロスコープを用いることが含まれ得る。特徴付けには、ロゴスキーコイル及び関連回路要素における危険な電流及び電圧への曝露も必要となる場合がある。
【0010】
一旦特徴付けされると、入力と出力との間に固有の位相シフトがあり、小さい出力振幅をスケーリングするため、ロゴスキーコイルセンサの較正は困難である可能性がある。更に、較正は手動である場合もあり、これには時間がかかり、スケーラブルでない。例えば、位相及び/又は利得の手動較正は、小さな振幅及び入力と出力との間の位相シフトをスケーリングするために適用される場合、不正確な電力及びエネルギー測定値をもたらす可能性がある、多数の手動工程及び/又は試行誤差を含み得る。
【0011】
本明細書に記載されるセンサ較正システムの例は、較正の精度を改善することによって、位相シフト及び振幅変動を低減する。また、本明細書に記載されるセンサ較正システムの例は、特徴付け中に高電圧及び電流への曝露をなくすことによって、安全を向上させる。また、本明細書に記載されるロゴスキーコイルセンサ較正システムの例は、例えば、手動の特徴付け要件の大部分をなくすことによって、及び/又は、センサの異なる態様(例えば、利得及び位相)を「ワンタッチ」方式で較正することによって、較正に必要とされる時間を低減する。すなわち、利得及び位相較正のための工程を手動で個別に実施するのではなく、較正コンピュータを用いて較正方法を開始し得、その較正方法は、利得及び位相較正の両方を実施し得、特徴付け及び較正は自動化され得る。
【0012】
図1は、本明細書に記載される例示の較正システム13のブロック図を示す。較正システム13は、テストソース10と、較正センサシステム11と、較正コンピュータ12とを含む。一般に、テストソース10及び較正コンピュータ12は、センサシステム11に結合され、センサシステム11を較正するように構成される。テストソース10は、ニュートラル15と負荷14に提供されるライン16とを含む単一位相ローディング構成を生成する。他の例において、マルチ位相構成(例えば、3位相実装)が実装され得る。
【0013】
センサシステム11は、ライン16に結合され、ライン16から電流を受け取るロゴスキーコイル17を含む。ロゴスキーコイル17は、ライン16上の電流の(例えば、交流電流の固有変動に基づく)変化率に比例する電圧を出力する。受動回路20は、例えば、より高い周波数のローパスフィルタリングを実施し、ロゴスキーコイルによって測定された電流を表す信号27を出力し、受動回路20によって出力された信号は、以後「電流信号」と呼ばれる。センサシステム11は更に、ニュートラル15及びライン16に結合される分圧器18を含む。分圧器18は、ニュートラル15に関してライン16上の電圧の縮小された形態である出力電圧信号25を生成する。一例において、分圧器18は抵抗器除算器を含む。
【0014】
センサシステム11はまた、アナログデジタルコンバータ(ADC)19及び21を有するマイクロコントローラ22と、エネルギー測定構成要素23とを含む。ADC19、21は、例えば、シグマデルタ(ΣΔ)ADCとし得る。ADC19は、分圧器18から出力された電圧信号25をサンプリングし、ADC21は、受動20から出力された電流信号27をサンプリングする。ADC19及び21は、ADCがサンプリングを開始する前に遅延を構成することを可能にするプリロードパラメータを格納するレジスタ28及び29をそれぞれ有する。例えば、ロゴスキーコイル17及び受動回路20における固有の位相シフトが、テストソース10の位相角度、及びセンサシステム11によって測定される電流及び電圧の差異となり得る。プリロードパラメータは、ADC19及び21の一方又は両方に遅延を構成して、その位相差を低減し得る。一例において、ADC19のプリロードは、電圧信号25の電圧サンプリングに遅延が追加されないようにゼロに設定され、ADC21のためのプリロードパラメータは、電圧に関して電流信号27の電流サンプリングを遅延するために、ゼロよりも高い整数に設定され得る。ADC19及び21は、変換されたデジタル信号をエネルギー測定構成要素23に提供する。
【0015】
エネルギー測定構成要素23はマイクロコントローラ22のメモリに格納されており、マイクロコントローラのコアによって実施される。エネルギー測定構成要素23は、例えば、サンプリングされたデータに対して計算を実施するように構成されたソフトウェアライブラリを含み得る。また、マイクロコントローラ22は、エネルギー測定構成要素23によって実施され、較正システム13によって較正される計算において用いられる構成パラメータを格納するメモリ26も有する。例えば、ADC19及び21から出力される電圧及び電流デジタル信号はアナログデジタル変換プロセス、メモリ26の結果として値を低下させたため、エネルギー測定構成要素23によって用いられるスケールファクタを格納して、ADC19及び21からのデジタル信号を実世界値(例えば、ワット、ボルト)にスケーリングしてもよい。メモリ26は、例えば、フラッシュメモリとし得る。
【0016】
較正コンピュータ12は、例えば、コンピュータモニタ30上に表示され得るグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)を任意に含み得る較正アプリケーション24を含む。テストソース10のライン16上の電圧及び電流のパラメータ(例えば、電流、電圧、及び位相)は、例えば、較正アプリケーション24のGUIへの手動入力によって、又はテストソース10からデジタル通信プロトコルを介して較正コンピュータ12にパラメータ値を送ることによって、較正コンピュータ12上の較正アプリケーション24に提供される。後続の図においてより詳細に記載されるように、較正アプリケーション24は、概して、テストソース10を測定するときにセンサシステム11によって計算されたパラメータを、テストソース10によって提供される実際のパラメータと比較し、センサシステム11についての新たな構成パラメータ(例えば、スケールファクタ、プリロード)を生成し、それらをマイクロコントローラ22に提供して、センサシステム11の精度を最大化するためにADC21及び/又はエネルギー測定構成要素23の構成を更新する。
【0017】
上述したように、電流センサを較正することは、例えば、利得及び位相較正を含み得る。図2は、センサシステム11の位相当たりの有効電力の利得較正のための例示の方法を示しており、これは、ADC19及び21から受け取ったデジタル電圧及び電流信号に基づいて、エネルギー測定構成要素23が有効電力をより正確に計算することを可能にするための新しい有効電力スケールファクタを計算することを含む。テストソースが負荷14に単一位相電力を提供する例において、位相あたりの有効電力の利得較正は、その単一位相に対するものとなり得る。図3は、センサシステム11の位相較正のための例示的方法を示し、これは、位相にインパクトを与える新しいプリロードパラメータ及び他のパラメータ(後述)の計算を含む。「ワンタッチ」の例において、図2の方法と図3の方法とが順次行われ、いずれかの方法が先に行われる。
【0018】
図2を参照すると、工程201において、ADC19及び21は、それぞれ、電圧信号25及び電流信号27をサンプリングし、それによって、電圧を表すデジタル信号(以下、「デジタル電圧信号」)及び電流を表すデジタル信号(以下、「デジタル電流信号」)を生成する。デジタル電圧信号は電圧サンプルのセットを含み、デジタル電流信号は電流サンプルのセットを含む。工程202において、マイクロコントローラは、エネルギー測定構成要素23のソフトウェアを実行して、例えば、下記数式を用いて位相当たりの有効電力(PACT,ph)を計算する。
ここで、KACT,phはメモリ26に格納された位相当たりの有効電力スケールファクタを含み、Sample CountはADC19及び21によって取られたサンプルの数を含み、v(n)及びi(n)は、それぞれ、サンプルnで測定された電圧及び電流を含む。サンプルの数は、例えば、測定値がどれくらいの頻度で取られるかに依存し得る。この例において、ADC(例えば、ADC19、ADC21)は、新しい測定が開始されると、測定のためのサンプリングを終了し、それによって、Sample Countのための値を生成する。有効電力(PACT,ph)は回路の抵抗性部分(例えば、負荷14)によって消費される電力である。
【0019】
工程203で、マイクロコントローラは、エネルギー測定構成要素23のソフトウェアを実行して、テストソース10によって生成される位相当たりの力率を計算する。力率は、回路に印加される見掛け電力に対する有効電力(PACT,pt)の比である(見掛け電力は、有効電力及び無効電力(reactive power)を含む)。次いで、工程204で、位相当たりの有効電力及び位相当たりの力率の計算値が、マイクロコントローラ22によって、較正コンピュータ12に提供される。工程205において、較正アプリケーション24は、例えば、力率の逆コサインを計算し、無効電力の符号に基づいて角度の符号を決定することによって、位相当たりのデジタル電圧と電流信号との間の位相角度(Θcalculated,ph)に力率を変換する。工程206において、較正コンピュータ12上の較正アプリケーション24は、例えば、下記数式を用いて、位相当たりの理想有効電力スケールファクタK’ACT,phを計算する。
ここで、KACT,phは位相あたりの既存の有効電力スケールファクタ、VidealとIidealは、それぞれ、テストソース10の電圧及び電流値、Θcalculated,phは工程205での変換から生じる位相あたりの電圧と電流との位相角度、PACT,phは、工程202で計算された位相あたりの有効電力である。ここで、「理想」とは、既存のスケールファクタ(KACT,ph)よりも、エネルギー測定構成要素23による一層正確な計算をもたらし得るスケールファクタをいう。
【0020】
工程207において、較正アプリケーション24は、理想スケールファクタ(K’ACT,ph)をマイクロコントローラ22に提供し、マイクロコントローラ22は、理想スケールファクタ(K’ACT,ph)でエネルギー測定構成要素23を更新し、それによって有効電力の利得較正を増大させる。理想スケールファクタは、任意の既知の方式でマイクロ制御装置22に提供され、既存のスケールファクタ(KACT,ph)を置き換えるためにメモリ26に格納される。例えば、較正アプリケーション24は、マイクロコントローラ22内のメモリ26に提供されるコードを生成し得、あるいは、較正アプリケーション24は、理想スケールファクタをエネルギー測定構成要素23に提供し得、エネルギー管理構成要素23は、マイクロコントローラ22上で走るソフトウェアを更新するために理想スケールファクタを用いる。
【0021】
図3は、センサシステム11の位相較正のための例示の方法を示す。工程301において、ADC19及び21は、それぞれ、電圧信号25及び電流信号27をサンプリングする。工程302において、マイクロコントローラは、
エネルギー測定構成要素23のソフトウェアを実行して、例えば、下記数式を用いて、位相当たりの有効電力(PACT,ph)を計算する。
ここで、PACT,phは位相当たりの既存の有効電力スケールファクタであり、Sample CountはADC19及び21によって取られたサンプルの数であり、v(n)及びi(n)は、それぞれ、サンプルnで測定された電圧及び電流である。
【0022】
工程303において、マイクロコントローラは、エネルギー測定構成要素23のソフトウェアを実行して、テストソース10によって生成される位相当たりの力率を計算する。次いで、工程304において、位相当たりの有効電力及び位相当たりの力率の計算値が較正コンピュータ12に提供される。工程305において、較正アプリケーション24は、力率を、位相当たりのデジタル電圧電流信号とデジタル電流信号との間の位相角度(Θcalculated,ph)に変換する。
【0023】
図2の利得較正がすでに実施されており、そのため、力率がすでに計算及び変換されている場合(例えば、「ワンタッチ」の例において)、工程301~305は再度実施する必要はなく、その代わりに、利得較正の工程201~205からの値が、図3の以下の工程において用いられてもよい。あるいは、図3の位相較正がまず、例えば「ワンタッチ」方法の一部として実施される場合、工程201~205をスキップし得、位相較正の工程301~305からの値を図2の工程206及び207で用いることができる。
【0024】
工程306において、較正コンピュータ12上の較正アプリケーション24は、電流信号の1期間におけるADC21サンプル間の角度である全体サンプル解像度(WSR(whole sample resolution))を計算する。全体サンプル解像度は、例えば、下記数式を用いて計算し得る。
WSR=(Fsignal/Fsampling)×360°
ここで、Fsignalは、テストソース10からの信号(例えば、50又は60Hzの交流主電源)の周波数であり、Fsamplingは、ADC19及び21のサンプリング周波数(例えば、4kHz又は8kHz)であり、その結果を360°を乗算することによって度に変換する。この値は、360°ではなく2πを乗算することを強い得る他の測定ユニット、例えばラジアンとしてもよい。
【0025】
工程307において、較正コンピュータ12上の較正アプリケーション24は、例えば下記数式を用いて、部分サンプル解像度(FSR(fractional sample resolution))を計算する。
FSR=WSR/OSR
ここで、WSRは、工程306で計算された全体サンプル解像度であり、OSRは、ADC21のオーバーサンプリングレートである。一例において、オーバーサンプリングレートが2の累乗である数(例えば、64、128、256など)を含む。ADC19のオーバーサンプリングレートは、ADC21のオーバーサンプリングレートと同じであっても異なっていてもよい。部分サンプル解像度は、ADC21のプリロードパラメータを1ユニット変更することに基づいて、電流信号の位相がシフトする角度を表す。全体サンプル解像度が度ではなくラジアンで計算される場合、部分サンプル解像度はラジアンの数を表し、電流信号の位相は、ADC21のプリロードパラメータが1ユニット変化することに基づいてシフトする。ADCのプリロードパラメータは、対応する入力信号をADCがサンプリングするまでの部分遅延である。
【0026】
工程308において、較正コンピュータ12上の較正アプリケーション24は、例えば下記数式を用いて、電圧サンプルと電流サンプルとの間のプリロードのユニットでの全体遅延及び部分遅延を含む総サンプル遅延(TSD)を計算する。
ここで、Θcalculated,phは、工程305における変換から得られた位相当たりの位相角度であり、Θtest sourceはテストソース10内に構成された(テストソース10によってエネルギー測定構成要素23に提供された)位相角度であり、FSRは、工程307で計算された部分サンプル解像度である。
【0027】
次いで、工程309において、較正アプリケーション24は、ADC21を更新するためのプリロードパラメータを計算する。プリロードパラメータは、TSD及びOSRとして計算され得、0からOSRユニットまでの範囲内である。プリロードパラメータの値を用いると、ADC21は、1全体サンプルを含むのではなく、1全体サンプルまでサンプリングを遅延させることのみが可能となり得る。そのため、更新されたプリロードパラメータを用いてADC21を再構成することは、1全体サンプル又はそれ以上の遅延が必要とされる全位相差を完全に較正することはできない可能性がある。この場合、一つ又はそれ以上の全体サンプル遅延を補償し、それらの全体サンプル遅延によって電圧及び電流ADCサンプルを整合させるためにエネルギー測定構成要素23を用いることができる。工程310において、較正アプリケーション24は、例えば下記数式を用いて、全体サンプル遅延の数を計算する。
ここで、TSDは工程308で計算された総サンプル遅延であり、OSRはADC21のオーバーサンプリングレートである。
【0028】
工程311において、較正コンピュータ12は、プリロードパラメータ及び/又は全体サンプル遅延をマイクロコントローラ22に提供し、マイクロコントローラ22は、プリロードパラメータを用いてADC21及び/又は全体サンプル遅延を再構成して、電圧及び電流サンプルの位相を整合させ(例えば、位相差を0に近づけ)、電力測定精度を改善するように、エネルギー測定構成要素23を再構成する。
【0029】
本明細書に記載される較正コンピュータ12及び較正アプリケーション24の例は、異なる構成を有するセンサシステムの較正を可能にする。また、本明細書に記載される較正コンピュータ12及び較正アプリケーション24の例は、TIのMSP430(例えば、モデルF67xxA又はi20xx)を含む集積ADC(例えば、ΣΔ ADC)及び/又はスタンドアロンADC(例えば、ΣΔ ADC)を有するホストマイクロコントローラを有する異なるマイクロコントローラとともに用いるように構成され得る。較正コンピュータ12は、パーソナルコンピュータ(PC)又はホストマイクロコントローラとし得る。
【0030】
本明細書に記載される例示の較正システム及び方法は、ロゴスキーコイルの形状又はサイズに依存せず、異なる形状及びサイズのロゴスキーコイルと共に用いられ得る。また、本明細書に記載の例示の較正システム及び方法は、ロゴスキーコイルの代わりにシャント又は変流器と共に用いることもできる。
【0031】
較正アプリケーション24は(例えば、グラフィックユーザーインタフェースを介して)センサシステムのための構成情報を入力するために用いられ得る。例えば、較正アプリケーション24を用いて、センサのタイプ(例えば、ロゴスキーコイル)を選択し、利得、プリロード、サンプリング周波数、OSR又はシステムクロックを設定することによってADC19及び/又は21を構成し、又は位相又は機能パラメータの数(例えば、電圧、電流、電力、エネルギー、周波数、力率)を設定することによってエネルギー測定構成要素23を構成してもよい。較正アプリケーション24は、マイクロコントローラ22がプログラムされる前に構成を検証し得る。エネルギー測定構成要素23によって実施されるものとして上述された工程のうちの任意の一つ又はそれ以上は、エネルギー測定構成要素23内のソフトウェアライブラリを実行するマイクロコントローラ22によって実施され得る。
【0032】
本明細書に記載される実施例において、エネルギー測定構成要素23上に実装される論理が代わりに、較正アプリケーション24上に実装されてもよく、またその逆もまた同様である。例えば、力率は、較正アプリケーション24ではなくエネルギー測定構成要素23内の位相角度に変換され得る。
【0033】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
図1
図2
図3