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特許7435993誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/468 20060101AFI20240214BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C04B35/468
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019084712
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020132512
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0016745
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハム、テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チャ、キョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ミン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ベク、スン イン
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/097678(WO,A1)
【文献】特開平11-092220(JP,A)
【文献】特開2009-184841(JP,A)
【文献】特開2001-039765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/468
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiO系母材主成分と副成分を含み、前記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であり、
前記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する前記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であり、
前記母材主成分100モルに対して、前記ガドリニウム(Gd)は0.75モル以上含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分は4.0モル以下含まれ
前記母材主成分100モルに対して、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である第2副成分を0.1~2.0モル含む、
誘電体磁器組成物。
【請求項2】
BaTiO 系母材主成分と副成分を含み、前記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であり、
前記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する前記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であり、
前記母材主成分100モルに対して、前記ガドリニウム(Gd)は0.75モル以上含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分は4.0モル以下含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、Baを含む酸化物又は炭酸塩である第4副成分を0.0~4.15モル含む
誘電体磁器組成物。
【請求項3】
BaTiO 系母材主成分と副成分を含み、前記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であり、
前記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する前記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であり、
前記母材主成分100モルに対して、前記ガドリニウム(Gd)は0.75モル以上含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分は4.0モル以下含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、Ca及びZrのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である第5副成分を0.0~20.0モル含む、
誘電体磁器組成物。
【請求項4】
BaTiO 系母材主成分と副成分を含み、前記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であり、
前記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する前記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であり、
前記母材主成分100モルに対して、前記ガドリニウム(Gd)は0.75モル以上含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分は4.0モル以下含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも一つを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物である第6副成分を0.0~4.0モル含む、
誘電体磁器組成物。
【請求項5】
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が50%以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項6】
前記誘電体磁器組成物は、前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分としてY、Ho、Er、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu、及びSmのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項7】
前記誘電体磁器組成物は、前記母材主成分100モルに対して原子価固定アクセプタ元素のMgを含む酸化物又は炭酸塩である第3副成分を0.0~0.5モル含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項8】
誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極、及び前記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は誘電体磁器組成物を含み、
前記誘電体磁器組成物は、BaTiO系母材主成分と副成分を含み、前記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であり、
前記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する前記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であり、
前記母材主成分100モルに対して、前記ガドリニウム(Gd)は0.75モル以上含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分は4.0モル以下含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分としてY、Ho、Er、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu、及びSmのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩を含む、
積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極、及び前記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は誘電体磁器組成物を含み、
前記誘電体磁器組成物は、BaTiO 系母材主成分と副成分を含み、前記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であり、
前記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する前記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であり、
前記母材主成分100モルに対して、前記ガドリニウム(Gd)は0.75モル以上含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分は4.0モル以下含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である第2副成分を0.1~2.0モル含む、
積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極、及び前記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は誘電体磁器組成物を含み、
前記誘電体磁器組成物は、BaTiO 系母材主成分と副成分を含み、前記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であり、
前記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する前記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であり、
前記母材主成分100モルに対して、前記ガドリニウム(Gd)は0.75モル以上含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分は4.0モル以下含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、Baを含む酸化物又は炭酸塩である第4副成分を0.0~4.15モル、Ca及びZrのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である第5副成分を0.0~20.0モル含む、
積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極、及び前記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は誘電体磁器組成物を含み、
前記誘電体磁器組成物は、BaTiO 系母材主成分と副成分を含み、前記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であり、
前記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する前記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であり、
前記母材主成分100モルに対して、前記ガドリニウム(Gd)は0.75モル以上含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、前記第1副成分は4.0モル以下含まれ、
前記母材主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも一つを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物である第6副成分を0.0~4.0モル含む、
積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
前記第1副成分の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が50%以上である、請求項8から11のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
前記誘電体磁器組成物は原子価固定アクセプタ元素のMgを含む酸化物又は炭酸塩である第3副成分を0.0~0.5モル含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項14】
前記誘電体層の厚さは0.4μm以下であり、前記第1内部電極及び前記第2内部電極の厚さは0.4μm以下である、請求項8から13のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性を向上させることができる誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ又はサーミスタなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなるセラミック本体と、本体内部に形成された内部電極と、上記内部電極と接続されるように、セラミック本体の表面に設置された外部電極と、を備える。
【0003】
最近では、電子製品の小型化や多機能化に伴い、チップ部品も小型化及び高機能化しつつあるため、積層セラミックキャパシタに対してもサイズが小さく、容量が大きい高容量製品が求められている。
【0004】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化をともに達成する方法としては、内部の誘電体層及び電極層の厚さを薄くして、多くの数を積層する方法が挙げられる。また、現在の誘電体層の厚さは0.6μm程度のレベルであって、引き続き薄いレベルへの開発が進められている。
【0005】
このような状況下では、誘電体層の耐電圧特性の確保が誘電材料において重要な問題となっており、併せて誘電体の絶縁抵抗劣化に伴う不良率が増加し、収率管理が難しいことが問題として浮上している。
【0006】
かかる問題を解決するためには、積層セラミックキャパシタの構造的な側面だけでなく、誘電体組成の側面でも高信頼性を確保することができる新たな方法が必要な実情である。
【0007】
現在のレベルで、耐電圧特性及び信頼性を一段高めることができる誘電体組成が確保されれば、さらに薄層化された積層セラミックキャパシタを作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第1999-0075846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、信頼性を向上させることができる誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、BaTiO系母材主成分と副成分を含み、上記副成分は、第1副成分元素としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上である誘電体磁器組成物を提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記セラミック本体の外側に配置され、且つ第1内部電極と電気的に連結される第1外部電極、及び上記第2内部電極と電気的に連結される第2外部電極と、を含み、上記誘電体層は誘電体磁器組成物を含み、上記誘電体磁器組成物はBaTiO系母材主成分と副成分を含み、上記副成分は、第1副成分元素としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上である積層セラミックキャパシタを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によると、セラミック本体内の誘電体層に含まれる誘電体磁器組成物が、副成分として新規の希土類元素であるガドリニウム(Gd)を含み、且つその含有量を制御することにより、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
図2図1のI-I'線に沿った断面図である。
図3】本発明の実施例及び比較例による、過酷な条件下で行われる信頼性試験(HALT)の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0015】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図であり、図2図1のI-I'線に沿った断面図である。
【0016】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111、及び上記誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含むセラミック本体110と、上記セラミック本体110の外側に配置され、且つ第1内部電極121と電気的に連結される第1外部電極131、及び上記第2内部電極122と電気的に連結される第2外部電極132と、を含む。
【0017】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100において、「長さ方向」とは図1の「L」方向、「幅方向」とは「W」方向、及び「厚さ方向」とは「T」方向と定義する。ここで、「厚さ方向」は、誘電体層を積み上げる方向、すなわち、「積層方向」と同一の概念で用いることができる。
【0018】
上記セラミック本体110の形状に特に制限はないが、図面に示すように、六面体形状であることができる。
【0019】
上記セラミック本体110の内部に形成された複数の内部電極121、122は、上記セラミック本体の一面、又は上記一面と向かい合う他面に一端が露出する。
【0020】
上記内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する第1内部電極121及び第2内部電極122を一対にすることができる。
【0021】
第1内部電極121の一端はセラミック本体の一面に露出し、第2内部電極122の一端は上記一面と向かい合う他面に露出することができる。
【0022】
上記セラミック本体110の一面及び上記一面と向かい合う他面には、第1及び第2外部電極131、132が形成されて上記内部電極と電気的に連結されることができる。
【0023】
上記第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、上記第1及び第2内部電極121、122は、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)のうち一つ以上の物質を含む導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0024】
上記第1及び第2外部電極131、132は、静電容量を形成するために、上記第1及び第2内部電極121、122と電気的に連結されることができ、上記第2外部電極132は、上記第1外部電極131とは異なる電位に連結されることができる。
【0025】
上記第1及び第2外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、又はこれらの合金を用いることができる。
【0026】
上記第1及び第2外部電極131、132の厚さは、用途などに応じて、適宜決定することができ、特に制限されないが、例えば、10~50μmであってもよい。
【0027】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り特に限定されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末であってもよい。
【0028】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて、様々な添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0029】
上記誘電体層111は、焼結された状態であって、隣接する誘電体層同士の境界は確認できないほど一体化していることができる。
【0030】
上記誘電体層111上に第1及び第2内部電極121、122が形成されることができ、内部電極121、122は、焼結によって一誘電体層を間に挟んで上記セラミック本体の内部に形成されることができる。
【0031】
誘電体層111の厚さは、キャパシタの容量設計に応じて任意に変更することができる。本発明の一実施例において、焼成後の誘電体層の厚さは、好ましくは1層当たり0.4μm以下であってもよい。
【0032】
また、焼成後の上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは、好ましくは1層当たり0.4μm以下であってもよい。
【0033】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111は誘電体磁器組成物を含み、上記誘電体磁器組成物はBaTiO系母材主成分と副成分を含み、上記副成分は、第1副成分元素としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を含み、上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であることを特徴とする。
【0034】
一般に、積層セラミックキャパシタの内部の誘電体の信頼性を確保するために希土類系元素が多く添加される。
【0035】
かかる希土類系元素は、主にドナー(Donor)として母材主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO)のA-siteを置換して酸素空孔の濃度を減らすことでシェル領域を構成するとともに、粒界において電子の流れを妨げる障壁として作用してリーク電流の増加を防ぐ役割を果たす。
【0036】
従来の代表的な希土類元素としてジスプロシウム(Dy)が挙げられる。しかし、本発明の一実施形態では、信頼性をより効果的に向上させるために、上記ジスプロシウム(Dy)に比べてイオン半径が大きいガドリニウム(Gd)を添加した。
【0037】
ガドリニウム(Gd)はジスプロシウム(Dy)よりもイオン半径が大きいため、Ba-siteにさらに効果的に置換されることができ、これにより、さらにドナー(Donor)化する傾向を示すことができる。
【0038】
このようにガドリニウム(Gd)が添加される場合には、酸素空孔の濃度を効果的に低下させ、リーク電流の障壁として作用することができるため、本発明の一実施形態では、希土類元素のうちガドリニウム(Gd)を添加する。
【0039】
従来、誘電体磁器組成物に、希土類元素としてジスプロシウム(Dy)に加えてガドリニウム(Gd)を添加する試みがあった。
【0040】
また、従来、誘電体組成を設計するにあたり、信頼性を向上させるために添加される元素の役割については、ある程度研究がなされた状態である。
【0041】
上述のように、ジスプロシウム(Dy)のような希土類系元素は、主にチタン酸バリウム(BaTiO)のA-siteを置換して酸素空孔の濃度を低減させ、粒界において一種の障壁としての役割を果たすことで信頼性の向上に寄与すると言われている。特に、ガドリニウム(Gd)を添加する場合には、ジスプロシウム(Dy)を添加する場合に比べて信頼性がより改善されるという内容が含まれる文献もある。
【0042】
しかし、上記の従来の場合、ガドリニウム(Gd)が奏する上記の効果について認識することなく、単に希土類元素として記載したり、少量添加した程度に過ぎず、信頼性の向上のために添加されるガドリニウム(Gd)の含有量についての研究はなされていないのが実情である。
【0043】
一方、本発明の一実施形態では、ジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)の添加量についての、信頼性の改善に優れた効果を奏する最適な比を提案する。
【0044】
本発明の一実施形態において、上記誘電体磁器組成物は、母材主成分と副成分を含み、上記副成分は、第1副成分元素としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を必ず含み、上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であることを特徴とする。
【0045】
上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比を25%以上に調節することにより、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性を改善することができる。
【0046】
上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%未満の場合には、ガドリニウム(Gd)の添加量が少なく、従来の誘電体磁器組成物と同様であるため、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性の改善効果が大きくない。
【0047】
特に、本発明の一実施形態によると、上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が50%以上であることができる。
【0048】
上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が50%以上の場合には、従来に比べて不良率を4倍以上低減させることができ、結果、信頼性の改善効果に優れる。
【0049】
上記誘電体磁器組成物は、上記第1副成分元素としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を必ず含むとともに、第1副成分元素としてY、Ho、Er、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu、及びSmのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩を上記母材主成分100モルに対して0.0~4.0モルの含有量でさらに含むことができる。
【0050】
特に、本発明の一実施形態では、セラミック本体内の誘電体層に含まれる誘電体磁器組成物において、副成分として新規の希土類元素であるガドリニウム(Gd)を含み、且つジスプロシウム(Dy)に対するガドリニウム(Gd)の含有量を制御することにより、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性を改善することができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であることができる。
【0052】
上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)を100%以上に調節することにより、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性を改善することができる。
【0053】
特に、上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)が100%以上の場合、すなわち、上記ガドリニウム(Gd)の添加量が上記ジスプロシウム(Dy)の添加量と同一であるか又はそれ以上の場合には、過酷な条件下で行われる信頼性試験(以下、HALT試験とする)での不良率が著しく低くなるという効果を奏する。
【0054】
上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)が100%未満の場合、特に50%未満の場合には、HALT試験での不良率が増加し、上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比が0の場合、すなわち、従来のようにガドリニウム(Gd)を添加しなかった場合には、HALT試験での不良率が増加することが確認できる。
【0055】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、上述のように、超小型高容量製品であって、上記誘電体層111の厚さは0.4μm以下、上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは0.4μm以下であることを特徴とするが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0056】
すなわち、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、超小型高容量製品であるため、誘電体層111ならびに第1及び第2内部電極121、122の厚さが従来の製品に比べて薄膜で構成されており、このように薄膜の誘電体層及び内部電極が適用された製品の場合、耐電圧特性及び絶縁抵抗などの信頼性向上のための研究は非常に重要なイシューとなっている。
【0057】
つまり、従来の積層セラミックキャパシタの場合には、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタに含まれる誘電体層及び内部電極よりも比較的厚い厚さを有するため、誘電体磁器組成物の組成が従来と同一の場合であっても、信頼性が大きく問題とされていなかった。
【0058】
しかし、本発明の一実施形態のように薄膜の誘電体層及び内部電極が適用される製品においては、積層セラミックキャパシタの信頼性が重要である。そのため、誘電体磁器組成物の組成を調節する必要がある。
【0059】
すなわち、本発明の一実施形態では、上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比を25%以上に調節することにより、誘電体層111ならびに第1及び第2内部電極121、122の厚さが0.4μm以下の薄膜の場合にも、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性を改善することができる。
【0060】
但し、上記薄膜とは、誘電体層111ならびに第1及び第2内部電極121、122の厚さが0.4μm以下であることを意味するものではなく、従来の製品よりも薄い厚さの誘電体層及び内部電極を含む概念として理解するとよい。
【0061】
以下、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0062】
a)母材主成分
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物はBaTiOで示される母材主成分を含むことができる。
【0063】
本発明の一実施形態によると、上記母材主成分は、BaTiO、(Ba1-xCa)(Ti1-yCa)O(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5)、及びBa(Ti1-yZr)O(ここで、0<y≦0.5)からなる群より選択される一つ以上を含むが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0064】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は常温誘電率が2000以上であることができる。
【0065】
上記母材主成分は、特に制限されないが、主成分粉末の平均粒径が40nm以上150nm以下であってもよい。
【0066】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第1副成分元素としてジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)を必ず含むとともに、上記母材主成分100モルに対して、Y、Ho、Er、Ce、Nd、Pm、Eu、Tb、Tm、Yb、Lu、及びSmのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である第1副成分を0.0~4.0モルさらに含むことができる。
【0067】
上記第1副成分は、本発明の一実施形態において、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの信頼性の低下を防ぐ役割を果たす。
【0068】
上記第1副成分の含有量が4.0モルを超えると、信頼性が低下したり、又は誘電体磁器組成物の誘電率が低くなって高温耐電圧特性が悪くなるという問題が発生することがある。
【0069】
また、上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%以上であることを特徴とする。
【0070】
上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比を25%以上に調節することにより、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性を改善することができる。
【0071】
上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が25%未満の場合には、ガドリニウム(Gd)の添加量が少なく、従来の誘電体磁器組成物と同様であるため、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性の改善効果が大きくない。
【0072】
特に、本発明の一実施形態によると、上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が50%以上であることができる。
【0073】
上記第1副成分元素の合計含有量に対するガドリニウム(Gd)の含有量の比が50%以上の場合、従来に比べて不良率を4倍以上低減させることができ、結果、信頼性の改善効果に優れる。
【0074】
また、本発明の一実施形態によると、上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)は100%以上であることができる。
【0075】
上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)を100%以上に調節することにより、耐電圧特性の改善や絶縁抵抗の向上などという信頼性を改善することができる。
【0076】
特に、上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)が100%以上の場合、すなわち、上記ガドリニウム(Gd)の添加量が上記ジスプロシウム(Dy)の添加量と同一であるか又はそれ以上の場合には、過酷な条件下で行われる信頼性試験(以下、HALT試験とする)での不良率が著しく低くなるという効果を奏する。
【0077】
上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)が100%未満の場合、特に50%未満の場合には、HALT試験での不良率が増加し、上記ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比が0の場合、すなわち、従来のようにガドリニウム(Gd)を添加しなかった場合には、HALT試験での不良率が増加することが確認できる。
【0078】
本発明の一実施形態において、添加される希土類元素の合計含有量がチタン酸バリウム100モルに対して1.5モルであり、添加されるガドリニウム(Gd)の含有量が0.75モル以上であるとき、従来に比べて信頼性の改善効果が4倍以上と優れていることが分かる。
【0079】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第2副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物又は炭酸塩を含むことができる。
【0080】
上記第2副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物又は炭酸塩は、上記母材粉末100モルに対して0.1~2.0モルの含有量で含まれることができる。
【0081】
上記第2副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0082】
上記第2副成分の含有量、及び後述する第3から第6副成分の含有量は、母材粉末100モルに対して含まれる量のことであって、特に各副成分が含む金属イオンのモルと定義することができる。
【0083】
上記第2副成分の含有量が0.1モル未満の場合には、焼成温度が高くなって高温耐電圧特性がやや低下することがある。
【0084】
また、上記第2副成分の含有量が2.0モル以上の場合には、高温耐電圧特性及び常温比抵抗が低下することがある。
【0085】
特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、母材主成分100モルに対して0.1~2.0モルの含有量を有する第2副成分を含むことができる。これにより、低温焼成が可能であり、高い高温耐電圧特性を得ることができる。
【0086】
d)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、原子価固定アクセプタ(fixed-valence acceptor)元素のMgを含む酸化物又は炭酸塩である第3副成分を含むことができる。
【0087】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材主成分100モルに対して、原子価固定アクセプタ元素のMgを含む酸化物又は炭酸塩である第3副成分を0.0~0.5モル含むことができる。
【0088】
上記第3副成分は、原子価固定アクセプタ元素及びこれを含む化合物であって、誘電体磁器組成物内で微細構造を調節(異常粒成長を抑制)して、耐還元性を付与することができる。
【0089】
上記第3副成分の含有量が上記母材粉末100モルに対して0.5モルを超えると、誘電率が低くなるという問題があるため好ましくない。
【0090】
特に、本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物が原子価固定アクセプタ元素のMgを0.5モル以下の含有量で含むことにより粒成長を均一に制御することができる。結果、耐電圧特性の向上及び信頼性の改善という効果を奏するとともに、DC-bias特性も改善することができる。
【0091】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Baを含む酸化物又は炭酸塩である第4副成分を含むことができる。
【0092】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材主成分100モルに対して、Baを含む酸化物又は炭酸塩である第4副成分を0.0~4.15モル含むことができる。
【0093】
上記第4副成分の含有量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区別せず、第4副成分に含まれるBa元素の含有量を基準とすることができる。
【0094】
上記第4副成分は、誘電体磁器組成物内で焼結を促進したり、誘電率を調節したりするなどの役割を果たすことができ、その含有量が、上記母材主成分100モルに対して4.15モルを超えると、誘電率が低くなったり、焼成温度が高くなるという問題を有することがある。
【0095】
f)第5副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Ca及びZrのいずれか一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群より選択される一つ以上を含む第5副成分を含むことができる。
【0096】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材主成分100モルに対して、Ca及びZrのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である第5副成分を0.0~20.0モル%含むことができる。
【0097】
上記第5副成分の含有量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区別せず、第5副成分に含まれたCa及びZrのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準にすることができる。
【0098】
上記第5副成分は、誘電体磁器組成物内においてコア-シェル(core-shell)の構造を形成して誘電率及び信頼性を向上させる役割を果たすことにより、上記母材主成分100モルに対して20.0モル以下含まれる場合、高誘電率が実現され、高温耐電圧特性が良好な誘電体磁器組成物を提供することができる。
【0099】
上記第5副成分の含有量が、上記母材主成分100モルに対して20.0モルを超えると、常温誘電率が低くなり、高温耐電圧特性も低下する。
【0100】
g)第6副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第6副成分として、Si及びAlのうち少なくとも一つを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物を含むことができる。
【0101】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも一つを含む酸化物又はSiを含むガラス(Glass)化合物である第6副成分を0.0~4.0モルさらに含むことができる。
【0102】
上記第6副成分の含有量は、ガラス、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区別せず、第6副成分に含まれたSi及びAlのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準にすることができる。
【0103】
上記第6副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0104】
上記第6副成分の含有量が、上記母材主成分100モルに対して4.0モルを超えると、焼結性及び緻密度を低下させ、2次相生成などの問題があるため好ましくない。
【0105】
特に、本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物が4.0モル以下の含有量でAlを含むことにより、粒成長を均一に制御することができ、耐電圧特性及び信頼性の向上に効果があり、DC-bias特性も改善することができる。
【0106】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例により限定されるものではない。
【実施例
【0107】
(実施例)
本発明の実施例は、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末を含む誘電体原料粉末に、Dy、Gd、Al、Mg、Mnなどの添加剤、バインダー及びエタノールなどの有機溶媒を添加し、湿式混合して誘電体スラリーを設けた後、以下の誘電体スラリーをキャリアフィルム上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けることで誘電体層を形成することができる。
【0108】
この際、チタン酸バリウムに対して、すべての元素の添加剤のサイズが40%以下となるように単分散して投入した。
【0109】
特に、添加される希土類元素は、合計含有量がチタン酸バリウム100モルに対して1.5モルとなるように含ませ、ガドリニウム(Gd)の場合には0.75モル(実施例1)及び1.0モル(実施例2)含ませた。
【0110】
特に、実施例1は、ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)が100%、実施例2は、ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)が300%となるように調節した。
【0111】
上記セラミックグリーンシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することができる。
【0112】
次に、粒子平均サイズが0.1~0.2μmのニッケル粉末を40~50重量部含む内部電極用の導電性ペーストを設けることができる。
【0113】
上記グリーンシート上に上記内部電極用の導電性ペーストをスクリーン印刷工法で塗布して内部電極を形成し、内部電極パターンが配置されたグリーンシートを積層して積層体を形成した後、上記積層体を圧着及び切断した。
【0114】
次に、切断された積層体を加熱してバインダーを除去した後、高温の還元雰囲気で焼成してセラミック本体を形成した。
【0115】
上記焼成過程では、還元雰囲気(0.1% H/99.9% N、HO/H/N雰囲気)で1100~1200℃の温度で2時間焼成した後、1000℃の窒素(N)雰囲気下で3時間酸化して熱処理した。
【0116】
次に、焼成されたセラミック本体に対して、銅(Cu)ペーストでターミネーション工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。
【0117】
また、セラミック本体110の内部の誘電体層111ならびに第1及び第2内部電極121、122は、焼成後の厚さが0.4μm以下となるように作製した。
【0118】
(比較例1)
比較例1は、従来の誘電体磁器組成物の組成と同一であり、希土類元素としてガドリニウム(Gd)を含むことなくジスプロシウム(Dy)だけを含ませたものである。その他の制作過程は上述した実施例の場合と同様である。
【0119】
(比較例2)
比較例2は、上記実施例と同様に、添加される希土類元素の合計含有量がチタン酸バリウム100モルに対して1.5モルであるが、ガドリニウム(Gd)の場合には0.375モルであった。その他の制作過程は上述した実施例の同様である。
【0120】
特に、比較例2は、ジスプロシウム(Dy)の含有量に対する上記ガドリニウム(Gd)の含有量の比(Gd/Dy)が33%と、50%未満の場合に該当する。
【0121】
上記のように完成された試作型積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)試料の実施例1及び2、比較例1及び2に対して、HALT試験を行って不良率を評価した。
【0122】
上記HALT試験では、各サンプルごとに積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップ40個を基板上に実装し、125℃、20V(DC)の印加条件で12時間測定した。
【0123】
図3は本発明の実施例及び比較例によるHALT試験の評価結果を示すグラフである。
【0124】
下記表1は、実験例(実施例1、2及び比較例1、2)による試作型積層セラミックキャパシタチップの上記電気的特性を示すものである。
【0125】
【表1】
【0126】
図3及び上記表1を参照すると、本発明の比較例1による場合(a)には、従来の誘電体磁器組成物の組成と同一で、希土類元素としてガドリニウム(Gd)を含むことなくジスプロシウム(Dy)だけを含ませたものであって、HALT試験後の不良個数が9個と、不良率が高いことが分かる。
【0127】
本発明の比較例2による場合(b)には、希土類元素の合計含有量がチタン酸バリウム100モルに対して1.5モル、ガドリニウム(Gd)は0.375モルであって、HALT試験後の不良個数が8個と、不良率が高いことが分かる。
【0128】
これに対し、本発明の実施例1(c)及び実施例2(d)の場合には、ガドリニウム(Gd)の含有量が本発明の一実施形態による数値範囲内の場合であって、HALT試験後の不良個数が2個又は0個と、不良率が約4倍程度低下し、信頼性改善に優れることが確認できる。
【0129】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0130】
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極
図1
図2
図3