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  • 特許-長下肢装具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】長下肢装具
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61H3/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020046192
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021145766
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594140786
【氏名又は名称】株式会社徳田義肢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100169133
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】徳田 和彦
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-007311(JP,A)
【文献】特開2014-54526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リハビリに用いる長下肢装具に於いて、
該長下肢装具は、下腿部を含む短下肢装具と大腿部との間の長さを調節及び調節した状態で固定が可能な固定器具を備え、
該固定器具は、平面状或いは曲面状の部材上に凸部を有する第一の部材と、
平面状或いは曲面状の部材に前記第一の部材の該凸部と嵌合する凹部或いは穿孔部を有する第二の部材と、
前記第一の部材及び前記第二の部材を所定位置で該凸部と該凹部或いは該穿孔部とを嵌合した状態で、前記第一の部材と前記第二の部材とを締付固定する固定部材とを備え、
前記第一の部材と前記第二の部材のいずれかの一方は、該大腿部を支える支柱であり、前記いずれかの他方は、短下肢装具に設けられた下腿部を支える支柱であることを特徴とする、
長下肢装具。
【請求項2】
該凸部は、略半球状、略楕円半球状、略円柱状或いは略角柱状であることを特徴とする、
請求項1記載の長下肢装具。
【請求項3】
該凸部は、前記第一の部材が平面状或いは曲面状のいずれの場合にも、該凸部の設置面に対して略垂直方向に設置されることを特徴とする、
請求項1又は2記載の長下肢装具。
【請求項4】
該凸部は、高さが0.25mm以上2mm以下であることを特徴とする、
請求項1乃至3の何れか一に記載の長下肢装具。
【請求項5】
該凸部及び、該凹部或いは該穿孔部は、該支柱が装着される方向に沿って、等間隔に複数設置されることを特徴とする、
請求項1乃至4の何れか一に記載の長下肢装具。
【請求項6】
該固定部材は、レバー操作により第一及び第二の部材を締め付けることにより固定を行う構造であることを特徴とする、
請求項1乃至5の何れか一に記載の長下肢装具。
【請求項7】
該固定部材は、該凸部が形成された部分を挟むように2カ所に設置されていること特徴とする、
請求項1乃至6の何れか一に記載の長下肢装具。
【請求項8】
該第一の部材上及び該第二の部材は、アルミニウム、アルミニウム合金或いはマグネシウム合金で形成されることを特徴とする、
請求項1乃至7の何れか一に記載の長下肢装具。
【請求項9】
該大腿部を支える支柱は、膝継手を備えていることを特徴とする、
請求項1乃至8の何れか一に記載の長下肢装具。
【請求項10】
該大腿部又は、該短下肢装具を構成する下腿部には、装着者の身体に合わせて周径方向の調節及び調節した状態で固定が可能な別の固定器具を備え、
前記別の固定器具は、二つの曲面状の部材を備え、一方の曲面状の部材には凸部を、他方の曲面状の部材には凹部又は穿孔部を有し、
さらに、前記二つの曲面状の部材の該凸部と該凹部或いは該穿孔部とを嵌合した状態で、前記二つの曲面状の部材を締付固定する別の固定部材を備えることを特徴とする、
請求項1乃至の何れか一に記載の長下肢装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具等を用いることなく装用者の身体に合わせて調節可能な、リハビリ等に用いる長下肢装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳卒中の急性期リハビリテーションをはじめとして、長下肢装具を用いることによりリハビリテーション効率を向上させ、治療効率の向上を図る取り組みがなされている。
【0003】
しかし、装用者の体格、下肢各部位のサイズは様々であり、従来長下肢装具はほとんどオーダーメードに近い形で作成されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015ー217124号公報
【文献】特表2012ー525226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、工具等を用いることなく装用者の身体に合わせて調節可能であり、且つ、十分な強度と安全性を確保することができ、リハビリテーションの現場における医療従事者の負担を軽減するとともにリハビリテーション効率を向上させることのできる長下肢装具を実現することである。
【0006】
かかる課題への対応として、特許文献1に於いては下肢装具の長さを調節するために用いるスライドとレバーによる固定器具が開示されている。また、特許文献2に於いては義肢の装着のために残肢を受けて固定するためのソケットの構造が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される固定器具は直線的な形状の部分にしか適用できず、大腿部などの曲面部における調節固定器具としては用いることができなかった。また、特許文献2に開示される固定器具は非常に複雑な構造であり、コスト的に大きな課題がある。
【0008】
これらの課題を解決するため、発明者は、簡便な構成で大腿部などの曲面部にも適用可能であり、且つ、十分な強度と安全性を確保することができる固定器具を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、リハビリに用いる長下肢装具に於いて、該長下肢装具は、下腿部を含む短下肢装具と大腿部との間の長さを調節及び調節した状態で固定が可能な固定器具を備え、該固定器具は、平面状或いは曲面状の部材上に凸部を有する第一の部材と、平面状或いは曲面状の部材に前記第一の部材の該凸部と嵌合する凹部或いは穿孔部を有する第二の部材と、前記第一の部材及び前記第二の部材を所定位置で該凸部と該凹部或いは該穿孔部とを嵌合した状態で、前記第一の部材と前記第二の部材とを締付固定する固定部材とを備え、前記第一の部材と前記第二の部材のいずれかの一方は、該大腿部を支える支柱であり、前記いずれかの他方は、短下肢装具に設けられた下腿部を支える支柱であることを特徴とする、長下肢装具である。
【0010】
また本発明は、該凸部は略半球状、略楕円半球状、略円柱状或いは略角柱状であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、該凸は、前記第一の部材が平面状或いは曲面状のいずれの場合にも、該凸部の設置面に対して略垂直方向に設置されることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、該凸部が高さが0.25mm以上2mm以下であることを特徴とする。さらに、該第一の部材上に設けられる凸部は、高さが0.5mm以上1mm以下であることが望ましい。
【0013】
また本発明は、該凸部及び、該凹部或いは穿孔部は、該支柱が装着される方向に沿って、等間隔に複数設置されることを特徴とする。
また本発明は、該固定部材は、レバー操作により第一及び第二の部材を締め付けることにより固定を行う構造であることを特徴とする。
また本発明は、該固定部材は、該凸部が形成された部分を挟むように2カ所に設置されていること特徴とする。
【0014】
また本発明は、該第一の部材上及び該第二の部材が金属で形成されることを特徴とする。さらに、該該第一の部材上及び該第二の部材は、アルミニウム、アルミニウム合金或いはマグネシウム合金で形成されることが望ましい。
【0018】
また本発明は、該大腿部を支える支柱は、膝継手を備えてることを特徴とする。
【0019】
た本発明は、該大腿部又は、該短下肢装具を構成する下腿部には、装着者の身体に合わせて周径方向の調節及び調節した状態で固定が可能な別の固定器具を備え、前記別の固定器具は、二つの曲面状の部材を備え、一方の曲面状の部材には凸部を、他方の曲面状の部材には凹部又は穿孔部を有し、さらに、前記二つの曲面状の部材の該凸部と該凹部或いは該穿孔部とを嵌合した状態で、前記二つの曲面状の部材を締付固定する別の固定部材を備えることを特徴とする。
【0020】
かかる構成とすることにより、工具等を用いることなく装用者の身体に合わせて調節可能であり、且つ、十分な強度と安全性を確保することができ、リハビリテーションの現場における医療従事者の負担を軽減するとともにリハビリテーション効率を向上させることのできる長下肢装具を実現することができた。
【発明の効果】
【0021】
本発明の長下肢装具は、工具等を用いることなく装用者の身体に合わせて調節可能であり、且つ、十分な強度と安全性を確保することができ、リハビリテーションの現場における医療従事者の負担を軽減するとともにリハビリテーション効率を向上させることのできる長下肢装具を実現することが出来、我が国の保健衛生の向上に有効であるとともに、我が国産業の発展に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明に係る長下肢装具の構成例を示す概念図である。
図2図2は本発明に係る長下肢装具の実際の構成例を示す図面代用写真である。
図3図3は本発明に係る長下肢装具の固定器具部の構成を示す図面代用写真である。
図4図4は本発明に係る長下肢装具の固定器具部の構成と噛み合わせ部品を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、リハビリ等に用いる長下肢装具に於いて、装用者の身体形状に合わせて調節及び固定が可能な固定器具を備え、該固定器具は、平面状或いは曲面状の部材上に凸部を有する第一の部材と、平面状或いは曲面状の部材に第一の部材の凸部と嵌合する凹部或いは穿孔部を有する第二の部材と、第一の部材及び第二の部材を所定位置で嵌合した状態で締付固定する固定部材とを備え、第一及び第二の部材を装用者の身体に合わせて調節した後に固定部材で固定することにより、工具等を用いることなく装用者の身体に合わせて調節可能であることを特徴とする、長下肢装具である。
【0024】
本発明の長下肢装具は、上記の構成とすることによって、工具等を用いることなく装用者の身体に合わせて調節可能であり、且つ、十分な強度と安全性を確保することができ、リハビリテーションの現場における医療従事者の負担を軽減するとともにリハビリテーション効率を向上させることのできる長下肢装具を実現することが出来る。
【0025】
また本発明は、該第一の部材上に設けられる凸部が略半球状、略楕円半球状、略円柱状或いは略角柱状であることを特徴とする。かかる構成とすることによって、該第一の部材と該第二の部材を調節のためにスライドすることが容易になるとともに、固定時には凸部が該第二の部材に設けられた凹部或いは穿孔部に嵌合し該固定部材で締め付けられることで強固に嵌合固定され、強度と安全性を確保することができた。
【0026】
また本発明は、該第一の部材上に設けられる凸部が平面状或いは曲面状のいずれの場合にも設置面に対して略垂直方向に設置されることを特徴とする。かかる構成とすることによって、特に第一及び第二の部材が曲面状の場合であっても、嵌合が緩くなり固定強度が損なわれるリスクがなくなり、安全性の向上に寄与する。
【0027】
また本発明は、該第一の部材上に設けられる凸部が高さが0.25mm以上2mm以下であることを特徴とする。さらに、該第一の部材上に設けられる凸部は、高さが0.5mm以上1mm以下であることが望ましい。これにより、嵌合が緩くなり固定強度が損なわれるリスクがなくなり、安全性の向上に寄与する。
【0028】
また本発明は、該第一の部材上に設けられる凸部及び該第二の部材に設けられる凹部或いは穿孔部が等間隔に複数設置されることを特徴とする。これは、多段階での調整を可能とするためである。
【0029】
また本発明は、該第一の部材上及び該第二の部材が金属で形成されることを特徴とする。さらに、該該第一の部材上及び該第二の部材は、アルミニウム、アルミニウム合金或いはマグネシウム合金で形成されることが望ましい。本発明の長下肢装具は人間が装着するものであるから、部材には必要な強度を満たした上である程度の可撓性をも有することが望ましい。これらの材料はそのために望ましく、さらにコスト面からも推奨されるものである。
【0030】
また本発明は、曲面状の部材を用いた第一及び第二の部材を備えた該固定器具が大腿部及び/又は下腿部及び/又は足部に設置され、工具等を用いることなく装用者の身体に合わせて調節可能であることを特徴とする。これらの部位は特に直線的な部材でもって調節固定することが困難であり、本発明に係る固定器具が有効に機能する。
【0031】
また本発明は、該固定器具がさらに大腿部及び/又は下腿部の支柱に設置され、大腿部及び/又は下腿部の長さに合わせた調整を行うことを特徴とする。装用者はそれぞれ身長や下肢長が異なり、これに合わせて支柱の長さも調節できることは実用面で有効である。さらに、一般の直線状の支柱だけでなく、身体の形状に沿った曲線状の支柱を用いた場合であっても、本発明に係る固定器具であれば問題なく応用が可能である。
【0032】
また本発明は、該固定器具の固定部材がレバー操作により第一及び第二の部材を締め付けることにより固定を行う構造であることを特徴とする。これにより、ワンタッチでの調整と固定が可能となり、現場での調整作業が格段に容易になった。
【0033】
また本発明は、該長下肢装具が膝継手を備えてなることを特徴とする。また本発明は、該長下肢装具は大腿部及び膝継手を取り外すことが可能であり、短下肢装具としても用いることが可能であることを特徴とする。これにより、より広範な用途に対応が可能となる。
【実施例
【0034】
以下、本発明に係る長下肢装具を、実施例に基づいて説明する。図1は本発明に係る長下肢装具の構成例を示す概念図である。また、図2は本発明に係る長下肢装具の実際の構成例を示す図面代用写真である。図2に於いては、実施例の図面代用写真を3方向から撮影し掲載している。
【0035】
本実施例に於いては、大腿部2箇所と下腿部1箇所に本発明に係る固定器具を用い、現場での調整を可能とした。
【0036】
本実施例に於いては、足部1、足継手付支柱2、膝継手付支柱3からなる長下肢装具を装用者が装着するために、本発明に係る固定器具を備えた大腿上部固定器具付カフバンド4、本発明に係る固定器具を備えた大腿下部固定器具付カフバンド5及び本発明に係る固定器具を備えた下腿部固定器具付カフバンド6を備えた。
【0037】
足継手付支柱2及び膝継手付支柱3は、継手を含めてステンレスにて構成した。足部1は革製、プラスチック製などが好適に採用される。
【0038】
図3は本発明に係る長下肢装具の固定器具部の構成を示す図面代用写真である。ここでは、構成を説明するため第二の部材は除いた状態を示す。第一の部材8はアルミニウム製で、凸部9を有している。ここで、第一の部材及び第二の部材はアルミニウム、アルミニウム合金或いはマグネシウム合金が好適に用いられるが、その他の金属材料で構成しても良い。
【0039】
凸部9は、本実施例では略半球状に形成した。ここで、凸部9は略半球状以外に略楕円半球状、略円柱状或いは略角柱状に形成することも有効である。凸部9は、設置面に対して垂直方向に設置されている。かかる構成とすることによって、特に第一及び第二の部材が曲面状の場合であっても、嵌合が緩くなり固定強度が損なわれるリスクがなくなり、安全性の向上に寄与する。
【0040】
また本実施例では、凸部9の高さを0.75mmとした。凸部は高さが0.25mm以上2mm以下であることが望ましく、0.5mm以上1mm以下であることがさらに望ましい。これにより、嵌合が緩くなり固定強度が損なわれるリスクがなくなり、安全性の向上に寄与する。図中12は、固定部材である。本実施例では固定部材がレバー操作により第一及び第二の部材を締め付けることにより固定を行う構造とした。
【0041】
図4は本発明に係る長下肢装具の固定器具部の構成と噛み合わせ部品(第一の部材8及び第二の部材10)を示す図面代用写真である。ここで、第二の部材10は穿孔部11を有し、これが第一の部材8の凸部9と嵌合した状態で固定部材12により締め付けることにより調整、固定が行われる。
【0042】
なお、実施例では示していないが、本発明に係る長下肢装具は、大腿部及び膝継手を取り外すことが可能であり、短下肢装具としても用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る長下肢装具は、工具等を用いることなく装用者の身体に合わせて調節可能であり、且つ、十分な強度と安全性を確保することができ、リハビリテーションの現場における医療従事者の負担を軽減するとともにリハビリテーション効率を向上させることのできる長下肢装具を実現することが出来、我が国の保健衛生の向上に有効であるとともに、産業上の利用可能性は大であると言える。
【符号の説明】
【0044】
1 足部
2 足継手付支柱
3 膝継手付支柱
4 大腿上部固定器具付カフバンド
5 大腿下部固定器具付カフバンド
6 下腿部固定器具付カフバンド
7 膝当て
8 第一の部材
9 凸部
10 第二の部材
11 穿孔部
12 固定部材
図1
図2
図3
図4