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特許7436020ガス濃度測定装置およびガス濃度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ガス濃度測定装置およびガス濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01N21/33
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020079976
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021173717
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 幸代
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-009844(JP,A)
【文献】特開昭52-130689(JP,A)
【文献】特開2000-039394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0287418(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108287141(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の紫外波長帯域において互いに干渉する第1ガスと第2ガスとが混在する測定対象空間に、前記特定の紫外波長帯域を含む波長の紫外線光を照射する照射装置と、
前記測定対象空間を通過した紫外線光を受光する受光装置と、
前記受光装置により受光した紫外線光の光強度に基づいて、前記第1ガスおよび前記第2ガスの濃度を算出する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、前記第2ガスが干渉しない第1の紫外波長帯域における第1の光強度に基づいて、前記第2ガスが干渉する第2の紫外波長帯域における、前記第2ガスが干渉しない場合の光強度を補間するための補間線を作成して前記第2の紫外波長帯域における前記第2ガスが干渉しない場合の第2の光強度を算出し、前記第2の光強度と、前記第2の紫外波長帯域における前記第2ガスが干渉する場合の第3の光強度とに基づいて、前記第2ガスの濃度を算出すること、
前記第1ガスおよび前記第2ガスに干渉しない参照ガスを充填したセルを通過した前記紫外線光の前記第2の紫外波長帯域における光強度と、前記第2の光強度とに基づいて、前記第1ガスの濃度を算出することを特徴とする、ガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記第1の紫外波長帯域が前記第2の紫外波長帯域よりも短波長側および長波長側の両側に存在する場合に、前記第2の紫外波長帯域よりも短波長側の前記第1の紫外波長帯域における光強度と、前記第2の紫外波長帯域よりも長波長側の前記第1の紫外波長帯域における光強度とに基づいて前記補間線を作成し、前記第2の紫外波長帯域における前記補間線上の光強度を、前記第2の光強度として特定する、請求項1に記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記第1の紫外波長帯域の波長のうち、前記第2の紫外波長帯域よりも短波長側の波長であって、前記第2の紫外波長帯域から一定の帯域幅以上を隔てた波長における光強度、または、前記第2の紫外波長帯域よりも長波長側の波長であって、前記第2の紫外波長帯域から一定の帯域幅以上を隔てた波長における光強度に基づいて、前記補間線を作成する、請求項1または2に記載のガス濃度測定装置。
【請求項4】
さらに、所定の濃度の校正ガスが継続して充填される校正セルを有し、
前記演算装置は、前記校正セルを通過した紫外線光の光強度の経時変化量に基づいて、前記第1ガスの濃度を校正する、請求項1ないし3のいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【請求項5】
前記第1ガスは煙道中のSOガスであり、
前記第2ガスは煙道中のNOガスであり、
前記第2の紫外波長帯域は225~229nmの範囲内の波長帯域である、請求項1ないしのいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【請求項6】
前記受光装置は、前記第1ガスが吸収する紫外波長帯域の紫外線光、および、前記第2ガスが吸収する紫外波長帯域の紫外線光を分光する分光器を有する、請求項1ないしのいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【請求項7】
前記照射装置は、紫外波長帯域の紫外線光を前記測定対象空間に照射する重水素ランプを有する、請求項1ないしのいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【請求項8】
特定の紫外波長帯域において互いに干渉する第1ガスと第2ガスとが混在する測定対象空間に、前記特定の紫外波長帯域を含む波長の紫外線光を照射し、
前記測定対象空間を通過した紫外線光を受光し、
前記受光した紫外線光の光強度に基づいて、前記第1ガスおよび前記第2ガスの濃度を算出するガス濃度測定方法であって、
前記第2ガスが干渉しない第1の紫外波長帯域における第1の光強度に基づいて、前記第2ガスが干渉する第2の紫外波長帯域における、前記第2ガスが干渉しない場合の光強度を補間するための補間線を作成して前記第2の紫外波長帯域における前記第2ガスが干渉しない場合の第2の光強度を算出し、前記第2の光強度と、前記第2の紫外波長帯域における前記第2ガスが干渉する場合の光強度とに基づいて、前記第2ガスの濃度を算出する、ガス濃度測定方法であって、
前記第1ガスおよび前記第2ガスに干渉しない参照ガスを充填したセルを通過した前記紫外線光の前記第2の紫外波長帯域における光強度と、前記第2の光強度とに基づいて、前記第1ガスの濃度を算出することを特徴とする、ガス濃度測定方法。
【請求項9】
前記第1ガスは煙道中のSOガスであり、
前記第2ガスは煙道中のNOガスであり、
前記第2の紫外波長帯域は225~229nmの範囲内の波長帯域である、請求項に記載のガス濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外吸収分光法を用いて非接触により測定対象空間に存在するガスの濃度を測定することが可能なガス濃度測定装置およびガス濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外吸収分光法を用いて非接触により測定対象空間に存在する測定対象ガスの濃度を測定する技術が知られている(たとえば非特許文献1)。たとえば非特許文献1では、紫外吸収分光法を用いて非接触により測定対象空間に存在するSOガス、NOガス、NHガスの濃度を測定することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「紫外吸収分光法を用いた高温ガス濃度計測装置の開発」、四国電力、四国総合研究所 研究期報102(2015年6月)19-27 (URL:http://www.ssken.co.jp/research/pdf/102/102_04.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、NOガスが紫外線光を吸収する紫外波長帯域と、SOガスが紫外線光を吸収する紫外波長帯域とが重複するため、SOガスが混在する測定対象空間において、NOガスの濃度を測定しようとする場合、SOガスとNOガスとの干渉により、NOガスまたはSOガスの濃度を適切に測定できないという問題があった。
【0005】
本発明は、紫外線光を吸収する紫外波長帯域が重複する2以上のガスが混在する場合でも、ガスの濃度を非接触により適切に測定することが可能なガス濃度測定装置およびガス濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガス濃度測定装置は、特定の紫外波長帯域において互いに干渉する第1ガスと第2ガスとが混在する測定対象空間に、前記特定の紫外波長帯域を含む波長の紫外線光を照射する照射装置と、前記測定対象空間を通過した紫外線光を受光する受光装置と、前記受光装置により受光した紫外線光の光強度に基づいて、前記第1ガスおよび前記第2ガスの濃度を算出する演算装置と、を備え、前記演算装置は、前記第2ガスが干渉しない第1の紫外波長帯域における第1の光強度に基づいて、前記第2ガスが干渉する第2の紫外波長帯域における、前記第2ガスが干渉しない場合の光強度を補間するための補間線を作成して前記第2の紫外波長帯域における前記第2ガスが干渉しない場合の第2の光強度を算出し、前記第2の光強度と、前記第2の紫外波長帯域における前記第2ガスが干渉する場合の第3の光強度とに基づいて、前記第2ガスの濃度を算出すること、前記第1ガスおよび前記第2ガスに干渉しない参照ガスを充填したセルを通過した前記紫外線光の前記第2の紫外波長帯域における光強度と、前記第2の光強度とに基づいて、前記第1ガスの濃度を算出することを特徴とする
上記ガス濃度測定装置において、前記演算装置は、前記第1の紫外波長帯域が前記第2の紫外波長帯域よりも短波長側および長波長側の両側に存在する場合に、前記第2の紫外波長帯域よりも短波長側の前記第1の紫外波長帯域における光強度と、前記第2の紫外波長帯域よりも長波長側の前記第1の紫外波長帯域における光強度とに基づいて前記補間線を作成し、前記第2の紫外波長帯域における前記補間線上の光強度を、前記第2の光強度として特定するように構成することができる。
上記ガス濃度測定装置において、前記演算装置は、前記第1の紫外波長帯域の波長のうち、前記第2の紫外波長帯域よりも短波長側の波長であって、前記第2の紫外波長帯域から一定の帯域幅以上を隔てた波長における光強度、または、前記第2の紫外波長帯域よりも長波長側の波長であって、前記第2の紫外波長帯域から一定の帯域幅以上を隔てた波長における光強度に基づいて、前記補間線を作成するように構成することができる。
上記ガス濃度測定装置において、さらに、所定の濃度の校正ガスが継続して充填される校正セルを有し、前記演算装置は、前記校正セルを通過した紫外線光の光強度の経時変化量に基づいて、前記第1ガスの濃度を校正するように構成することができる。
上記ガス濃度測定装置において、前記第1ガスは煙道中のSOガスであり、前記第2ガスは煙道中のNOガスであり、前記第2の紫外波長帯域は225~229nmの範囲内の波長帯域であるように構成することができる。
上記ガス濃度測定装置において、前記受光装置は、前記第1ガスが吸収する紫外波長帯域の紫外線光、および、前記第2ガスが吸収する紫外波長帯域の紫外線光を分光する分光器を有するように構成することができる。
上記ガス濃度測定装置において、紫外波長帯域の紫外線光を前記測定対象空間に照射する重水素ランプを有するように構成することができる。
【0007】
本発明に係るガス濃度測定方法は、特定の紫外波長帯域において互いに干渉する第1ガスと第2ガスとが混在する測定対象空間に、前記特定の紫外波長帯域を含む波長の紫外線光を照射し、前記測定対象空間を通過した紫外線光を受光し、前記受光した紫外線光の光強度に基づいて、前記第1ガスおよび前記第2ガスの濃度を算出するガス濃度測定方法であって、前記第2ガスが干渉しない第1の紫外波長帯域における第1の光強度に基づいて、前記第2ガスが干渉する第2の紫外波長帯域における、前記第2ガスが干渉しない場合の光強度を補間するための補間線を作成して前記第2の紫外波長帯域における前記第2ガスが干渉しない場合の第2の光強度を算出し、前記第2の光強度と、前記第2の紫外波長帯域における前記第2ガスが干渉する場合の光強度とに基づいて、前記第2ガスの濃度を算出する、ガス濃度測定方法であって、前記第1ガスおよび前記第2ガスに干渉しない参照ガスを充填したセルを通過した前記紫外線光の前記第2の紫外波長帯域における光強度と、前記第2の光強度とに基づいて、前記第1ガスの濃度を算出することを特徴とする
上記濃度測定方法において、前記第1ガスは煙道中のSOガスであり、前記第2ガスは煙道中のNOガスであり、前記第2の紫外波長帯域は225~229nmの範囲内の波長帯域であるように構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紫外線光を吸収する紫外波長帯域が重複する2以上のガスが混在する場合でも、ガスの濃度を非接触により適切に測定することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るガス濃度測定装置の構成図である。
図2】NOガス、SOガス、NHガスの単体での吸収断面積(cm)と紫外波長帯域における波長との関係を示すグラフである。
図3】NOガスとSOガスとが混在する混在ガスの紫外分光光度分析の測定結果の一例を示すグラフである。
図4】SOガス単体での紫外分光光度分析の測定結果の一例を示すグラフである。
図5】NOガス濃度の測定方法を説明するためのグラフである。
図6】SOガス濃度の測定方法を説明するためのグラフである。
図7】NOガスおよびSOガスのガス濃度の校正方法を説明するためのグラフである。
図8】実施例1におけるNOガスの濃度の測定結果を示すグラフである。
図9】実施例2におけるNOガスの濃度の測定結果を示すグラフである
図10】実施例3におけるNOガスの濃度の測定結果を示すグラフである
図11】本実施形態に係るガス濃度測定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図に基づいて、本実施形態に係るガス濃度測定装置を説明する。なお、本実施形態では、火力発電所などの煙道の排ガス中に含まれるNOxガス(たとえばNOガスやNOガス)およびSOガスの濃度を測定するガス濃度測定装置を例示して、本発明を説明するが、本発明に係るガス濃度測定装置はこの用途に限定されるものではなく、たとえば、紫外線光を吸収する紫外波長帯域が重複する2以上のガス、具体的には、紫外波長帯域におけるガスの紫外線吸収帯域が連続的な第1ガス(たとえばCO,O,CO,HS,NH,Cl,HCl,COS)と、紫外波長帯域におけるガスの紫外線吸収帯域が断続的な第2ガス(たとえばNOガス)が存在する場合に、いずれかの1以上のガスの濃度を測定するガス濃度測定装置にも適用することができる。また、本発明において、測定対象空間は、たとえば、煙道の排出口付近などの開放空間でもよいし、煙道内に紫外線透過性の窓を設けた、煙道内の閉鎖空間としてもよい。さらに、火力発電所の煙道に限定されず、ごみ処理場の排ガスの測定、工業用のプロセス管理や排ガスの測定などにも利用することができる。なお、本実施形態においては、NO/NOコンバータによりNOをNOに変換して測定する。
【0011】
また、以下の本実施形態では、本発明における「第1ガス」としてSOガスを、「第2ガス」としてNOガスを例示して説明する。なお、本発明において、第2ガスが「干渉しない」紫外波長帯域(「第1の紫外波長帯域」)とは、第2ガスが紫外線光を全く吸収しない紫外波長帯域に加えて、第2ガスが「干渉する」紫外波長帯域(「第2の紫外波長帯域」)と比べて、第2ガスの吸収特性(吸収断面積)が1/10以下である紫外波長帯域も含むものとする。
【0012】
図1は、本実施形態に係るガス濃度測定装置1を示す構成図である。ガス濃度測定装置1は、図1に示すように、照射装置10と、レンズ11と、ビームスプリッタ12,13と、反射鏡14,15と、サンプルセル20と、調温装置30と、校正セル40と、遮光板51,52と、分光器60と、演算装置70とを有する。
【0013】
照射装置10は、少なくとも紫外波長帯域の波長を含む光(以下、紫外線光ともいう)を射出する光源を有している。このような光源として、重水素ランプを用いることができる。照射装置10から照射された紫外線光は、レンズ11により拡径され平行光とされた後に、ビームスプリッタ12により、2つの光束に分割され、一方はサンプルセル20へと導かれ、他方は校正セル40へと導かれる。なお、ビームスプリッタ12は、紫外線光を分割できるものであれば、特に限定されないが、本実施形態では、透過率が約50%のポルカドットビームスプリッタを用いる。
【0014】
サンプルセル20は、測定対象の混在ガス(少なくとも一部の紫外波長帯域において干渉する2以上のガスを含有する混在ガス)をサンプルセル20内に導入するための導入口21と、測定対象の混在ガスをサンプルセル20から排出するための排出口22とを有する。ビームスプリッタ12により分割された一方の紫外線光は、サンプルセル20の一端からサンプルセル20内に入力され、サンプルセル20内の光路23を通過して、サンプルセル20の他端から外部へと出力される。なお、本実施形態に係るサンプルセル20は、光路長が400mmであり、窓材を合成石英から構成しているが、この構成に限定されるものではない。
【0015】
調温装置30は、サンプルセル20の導入口21および排出口22の近傍を一定の温度に調温する。本実施形態では、調温装置30により、サンプルセル20の導入口21および排出口22の近傍を50℃程度まで加熱保温している。このようにサンプルセル20の導入口21および排出口22の近傍を調温することで、混合ガス中に含まれる水分が窓に付着し、ガス濃度の検出精度が低下してしまうことを有効に防止することができる。なお、調温温度は、50℃に限定されず、たとえば45~55℃の範囲における任意の温度とすることができる。
【0016】
サンプルセル20から出力された紫外線光は、反射鏡14により反射された後、ビームスプリッタ13でも反射され、分光器60へと入力される。なお、反射鏡14は、特に限定されないが、反射率が80%以上のアルミ増反射ミラーを用いることができる。また、ガス濃度測定装置1では、サンプルセル20から出力された紫外線光、および、後述する校正セル40から出力される紫外線光を、同一の光路により分光器60に入力するために、ビームスプリッタ13を用いている。すなわち、ビームスプリッタ13を用いることで、サンプルセル20から出力され、反射鏡14により反射された紫外線光が、ビームスプリッタ13でも反射され、分光器60へと入力されるとともに、校正セル40から出力される紫外線光は、ビームスプリッタ13を通過して分光器60に入力される。なお、ビームスプリッタ13は、特に限定されないが、本実施形態では、透過率が約30%のポルカドットビームスプリッタを用いている。
【0017】
また、本実施形態に係るガス濃度測定装置1では、照射装置10の光源の劣化による、サンプルセル20内を通過する紫外線光の光量の低下を検出するために、校正セル40を有している。ここで、本実施形態にガス濃度測定装置1では、混在ガスの濃度を測定する場合、紫外線光がサンプルセル20を通過するように、遮光板51を光路上に配置するとともに遮光板52を光路上から回避させることで、校正セル40への紫外線光の入力を防止するとともに、サンプルセル20から出力された紫外線光が分光器60に入力されるようにしている。これに対して、照射装置10の光源の劣化を検出する場合、遮光板51を光路から回避させるとともに遮光板52を光路上に配置することで、紫外線光に校正セル40を通過させるとともにサンプルセル20から出力された紫外線光が分光器60に入力されることを防止している。これにより、校正セル40を通過した紫外線光だけを分光器60に入力させることができる。なお、遮光板51,52は、手動により位置を変える構成としてもよいし、使用者がボタンなど操作することで位置を自動で変える構成としてもよい。
【0018】
校正セル40には、約100%の割合でNガスが継続的に充填されており、充填圧力も継続的に1気圧(1atm)とされている。また、本実施形態では、使用前(光源が劣化する前)の状態で、校正セル40を通過させた紫外線光のスペクトルを予め測定しており、使用前の状態のスペクトルと、現時点で校正セル40を通過させた場合の紫外線光のスペクトルとを比較することで、光源の劣化による、紫外線光の光量の減少量を検出することができる。なお、校正セル40での測定結果を用いて、サンプルセル20において測定した紫外線光の光強度を校正する方法の詳細については後述する。
【0019】
分光器60は、紫外線光を波長ごとに分光し、波長ごとの強度(スペクトル)を測定する。なお、分光器60は、レンズ61を有し、分光器60に入力される紫外線光の光束を収斂して測定することができる。そして、分光器60による測定結果は、演算装置70へと出力される。
【0020】
演算装置70は、分光器60による測定結果に基づいて、NOガスの濃度を測定する。ここで、図2は、NOガス、SOガス、NHガスそれぞれの単体での吸収断面積(cm)と紫外波長帯域との関係を示すグラフである。図2に示すように、NOガス、SOガス、NHガスは、それぞれ紫外線光を吸収する波長や、紫外線光を吸収する吸収断面積が異なるが、特定の紫外波長帯域においては、2種以上のガスが重複して吸収されることが分かる。たとえば、図2に示すように、SOガスは200~250nmの紫外波長帯域の全体において紫外線光を吸収する一方、NOガスは200~250nmの紫外波長帯域のうち一部の波長帯域(たとえば226.0nm~227.5nmなど)のみにおいて紫外線光を吸収する特性であることが分かる。そして、SOガスは200~250nmの波長帯域全体において紫外線光を吸収するため、NOガスが紫外線光を吸収する波長帯域(たとえば226.0nm~227.5nmなど)では、NOガスおよびSOガスが共に紫外線光を吸収することとなり、受光装置60により検出される紫外線光の光強度に干渉が生じることとなる。
【0021】
そのため、ガス濃度測定装置1において、NOガスとSOガスとが混在する混合ガスをサンプルセル20に流して紫外線光を測定した場合、NOガスおよびSOガスが干渉する紫外波長帯域を含む220~230nmにおける紫外線光のスペクトルは、図3に示すように、NOガスが紫外線光を吸収する紫外波長帯域(たとえば226.0nm~227.5nm)において光強度が大きく低下する。なお、図3は、NOガスとSOガスとの混合ガスをサンプルセル20に流して紫外線光の光強度を測定した結果の一例を示す図であり、SOガスの濃度を100ppmとした場面を示している。
【0022】
これに対して、図4は、SOガス単体での紫外線光の光強度を測定した結果の一例を示す図であり、図3と同様に、SOガスの濃度を100ppmとした場面を示している。図4に示すように、NOガスが存在しない場合には、NOガスが紫外線光を吸収する紫外波長帯域(たとえば226.0nm~227.5nm)において光強度が低下していないことがわかる。このことからも、図3において、NOガスが紫外線光を吸収する紫外波長帯域(たとえば226.0nm~227.5nm)において光強度が低下していることは、NOガスが紫外線光を吸収するためであると想定することができる。
【0023】
このように、NOガスが紫外線光を吸収する紫外波長帯域(以下、第2の紫外波長帯域ともいう)において低下した光強度の変化量は、NOガスが吸収した紫外線光に応じた光強度の変化量と想定される。そこで、本実施形態において、演算装置70は、図5に示すように、第2の紫外波長帯域において低下した光強度の変化量に基づいて、NOガスの濃度を算出する。なお、図5は、NOガスの濃度を測定する方法を説明するための図である。
【0024】
具体的には、演算装置70は、まず、図5に示すように、NOガスが干渉しない紫外波長帯域(以下、第1の紫外波長帯域W1ともいう)における所定の波長の光強度C1,C2を特定する。なお、上記所定の波長としては、図5に示すように、第1の紫外波長帯域W1,W3の波長のうち、第2の紫外波長帯域W2から比較的近い波長とすることが好ましく、第2の紫外波長帯域W2から所定の帯域幅(余裕代)を隔てた波長とすることが好ましい。たとえば、図5に示す例では、第2の紫外波長帯域(226.0nm~227.5m)から、NOガスの半値幅である1.5nmの帯域幅(余裕代)を隔てた224.5nmおよび229.0nmにおける波長を所定の波長として特定している。
【0025】
そして、演算装置70は、第1の紫外波長帯域W1,W3における所定の波長の光強度C1,C2に基づいて、第2の紫外波長帯域W2においてNOガスが干渉しない場合の紫外線光の光強度を補間する。たとえば、図5に示す例において、演算装置70は、第2の紫外波長帯域(226.0nm~227.5m)から1.5nmの帯域幅(余裕代)を隔てた224.5nmおよび229.0nmの波長を所定の波長C1,C2として特定しており、紫外線光のスペクトルにおいて、224.5nmにおける光強度C1と、229.0nmにおける光強度C2とを結ぶ直線を、第2の紫外波長帯域W2においてNOガスが干渉しない場合の紫外線光のスペクトルを示す補間線として作成する。
【0026】
さらに、演算装置70は、第2の紫外波長帯域W2の補間線上における光強度C4(すなわち、第2の紫外波長帯域W2においてNOガスが干渉しない場合の光強度C4)と、第2の紫外波長帯域W2において実際に測定された光強度C3(すなわち、第2の紫外波長帯域W2においてNOガスが干渉する場合の光強度C3)とに基づいて、NOガスの濃度を算出する。なお、NOガスの濃度は、下記式1により算出することができる。
【数1】
上記式1において、I(λ)は第2の紫外波長帯域W2の補間線上における光強度C4、I(λ)は第2の紫外波長帯域W2において実際に測定された光強度C3、nはNOガスの分子密度(濃度)、σ(λ)は吸収断面積、Lは光路長となる。
【0027】
また、本実施形態においては、NOガスに加えて、SOガスのガス濃度を測定する構成とすることもできる。SOガスのガス濃度は、NOガスにより干渉を受けない第1の紫外波長帯域W1,W3における光強度を用いて算出してもよいし、NOガスが干渉する第2の紫外波長帯域W2における補間線上の光強度に基づいて算出してもよい。
【0028】
具体的には、演算装置70は、測定対象の混合ガスをサンプルセル20に導入する前に、200nm以上の紫外波長帯域において紫外線光を吸収しないNガスなどの参照ガスをサンプルセル20に導入し、図6に示すように、サンプルセル20におけるNガス存在時の紫外線光の光強度を参照光強度として測定する。その後、演算装置70は、測定対象の混合ガスをサンプルセル20に導入し、混合ガス存在時の紫外線光の光強度を測定する。Nガス存在時の紫外線光の参考光強度は、他のガスにより吸収されていない場合の紫外線光の光強度とみなすことができ、図6に示すように、Nガス存在時の紫外線光の参考光強度C5と第2の紫外波長帯域W2における補間線上の光強度C4との差が、SOガスが紫外線光を吸収することにより低下した光強度の変化量と考えることができる。よって、演算装置70は、上記式1において、I(λ)に紫外線光の参考光強度C5(NOガスおよびSOガスが存在しない場合の光強度C5)を代入し、I(λ)に第2の紫外波長帯域W2の補間線上における光強度C4(NOガスが干渉しない場合の光強度C4)を代入することで、SOガスの濃度nを算出することができる。なお、図6は、サンプルセル20にNを導入した際の紫外線光のスペクトルを図5に示すグラフに重畳したグラフである。
【0029】
また、本実施形態においては、校正セル40を用いて、SOガスの濃度を校正する構成とすることもできる。ここで、図7は、校正セル40を用いたSOガスのガス濃度の校正方法を説明するためのグラフである。校正セル40には一定の濃度のNガスが充填されているため、演算装置70は、測定対象である混合ガスのガス濃度測定時(今回測定時)において測定した校正セル40における紫外線光のスペクトルと、使用前(照射装置10の光源が劣化する前)に測定した紫外線光のスペクトルとを比較することで、光源が劣化しているか否かを判断する。たとえば、演算装置70は、校正セル40を用いて、図7に示すように、今回測定したスペクトルの光強度C7と使用前のスペクトルの光強度C6とを比較して、その比(使用前の参照光強度C6/今回測定時の参照光強度C7)を校正率(変化率)αとして算出する。そして、演算装置70は、図6に示すように、Nガス存在時の紫外線光の参照光強度C5に校正率αを乗じることで、参考光強度C5を校正する。校正した参考光強度C5’と第2の紫外波長帯域W2における補間線上の光強度C4との差は、光源の劣化を加味した、SOガスが紫外線光を吸収することにより低下した光強度の変化量(C5’-C4)に応じたものと考えられ、演算装置70は、校正した参考光強度C5’と、補間線上の光強度C4とに基づいて、光源の劣化を加味したSOガスのガス濃度を算出することができる。たとえば、校正セル40において今回測定した紫外線光のスペクトルの参照光強度C7が使用前のスペクトルの参照光強度C6と比べて10%低い場合には(校正率αが1.1である場合には)、光源から照射される紫外線光の光量が10%低下したものとして、サンプルセル20を通過した紫外線光の光強度C5を10%上昇させる校正を行うことで、校正後の光強度を用いて、SOガスの適切な濃度を求めることができる。
【実施例
【0030】
(実施例1)
実施例1では、本実施形態に係るガス濃度測定装置1を用い、サンプルセル20に所定の濃度のNOガスを連続して導入し、NOガスの濃度を測定することで、NOガスが適切に測定できるかを検証した。また、実施例1においては、NOガスの濃度を0ppmから5分ごとに100ppmずつ増加するように調整し、NOガスの濃度を測定した。実施例1におけるNOガスの濃度の測定結果を図8に示す。図8に示すように、ガス濃度測定装置1での混合ガスを対象とするNOガスの濃度の測定結果と、サンプルセル20に実際に導入したNOガスの濃度とはほぼ一致し、良好な測定結果が得られることが分かった。
【0031】
(実施例2)
また、実施例2では、NOガスの濃度を固定する一方、SOガスの濃度を変えて、NOガスの濃度を測定した。また、実施例2では、NOガスの濃度をそれぞれ200ppm、400ppm、600ppmに固定し、またそれぞれの濃度についてNO/NOコンバータを用いた場合と用いていない場合とで測定を行った。その結果、図9に示すように、SOガスの濃度を変更しても、NOガスの濃度を適切に測定することができることがわかった。また、NO/NOコンバータを用いた場合、用いていない場合ともに、NOガスの濃度を適切に測定することもできることがわかった。なお、図9は、実施例2におけるNOガスの濃度の測定結果を示すグラフである。
【0032】
(実施例3)
さらに、実施例3では、本実施形態に係るガス濃度測定装置1において、NOガスの濃度を固定したまま、照射装置10の光源の光量を変化させて、NOガスの濃度を測定した。具体的には、実施例3では、NOガスとSOガスの混合ガスが充填されたサンプルセル20で検出した紫外線光のスペクトルに基づいて、補間線を作成し、サンプルセル20における紫外線光の光強度C3と補間線上の光強度C4とに基づいて、NOガスの濃度を算出した。実施例3における、NOガスの濃度の測定結果を図10に示す。図10に示すように、本実施形態に係るガス濃度測定装置1では、サンプルセル20における紫外線光のスペクトルに基づいて補間線を作成し、サンプルセル20における紫外線光の光強度C3と補間線上の光強度C4との差に基づいてNOガスの濃度を算出する構成のため、光源の光量が変化する場合でも、NOガスの濃度を適切に測定できることが分かった。
【0033】
このように、本実施形態に係るガス濃度測定装置1では、SOガスとNOガスとが混在する場合でも、また、光源の劣化などにより紫外線光の光量が低下する場合でも、NOガスを高い精度で測定することができた。
【0034】
次に、本実施形態に係るガス濃度測定装置1の測定処理について説明する。図11は、本実施形態に係るガス濃度測定装置1の測定処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、NOガスおよびSOガスの濃度を繰り返し測定する方法を例示して説明するが、NOガスの濃度だけを繰り返し測定する構成とすることもでき、この場合、ステップS112の処理を省略することができる。また、図11に示す例では、使用前(照射装置10の光源が劣化する前)において、校正セル40に参照ガス(Nガス)を導入した状態で紫外線光のスペクトルが測定され記憶されているものとする。
【0035】
まず、ステップS101では、今回測定時において校正セル40を通過する紫外線光の参照光強度C6の検出が行われる。具体的には、照射装置10により紫外線光が校正セル40に照射され、校正セル40を通過した紫外線光が分光器60において受光され、校正セル40を通過した紫外線光のスペクトルが測定される。なお、演算装置70は、当該スペクトルのうち、たとえば測定対象ガスの濃度を測定する周波数(たとえば226.7nm)における光強度C6を検出する。また、ステップS101においては、遮光板51を光路上から回避するとともに、遮光板52を光路上に配置することで、サンプルセル20への紫外線光の入力を防止するとともに、校正セル40に紫外線光を入力し、校正セル40を通過した紫外線光が分光器60に入力されるようにしている。
【0036】
ステップS102では、演算装置70により、校正率αの算出が行われる。具体的には、演算装置70は、図11に示すガス濃度測定処理を開始する前から記憶している使用前における校正セル40の紫外線光のスペクトルから、測定対象ガスの濃度を測定する周波数(たとえば226.7nm)における光強度を使用前の参照光強度C7として検出する。そして、演算装置70は、ステップS101で取得した現時点での校正セル40における紫外線光の参考光強度C6と、使用前の紫外線光の参考光強度C7との比(C6/C7)を、校正率αとして算出する。
【0037】
ステップS103では、サンプルセル20に参照ガス(Nガスなど)が導入される。そして、ステップS104では、演算装置70により、サンプルセル20における参照ガス存在時の紫外線光の参照光強度C5の検出が行われる。具体的には、照射装置10により紫外線光が参照ガスの導入されたサンプルセル20に照射され、分光器60により参照ガス存在時における紫外線光のスペクトルが測定される。演算装置70は、測定したスペクトルのうち測定対象ガスの濃度を測定する周波数(たとえば226.7nm)における光強度を、サンプルセル20における参照ガス存在時の紫外線光の参照光強度C5として検出する。なお、ステップS104以降においては、遮光板51を光路上に配置するとともに、遮光板52を光路から回避させることで、校正セル40への紫外線光の入力を防止するとともに、サンプルセル20から出力された紫外線光が分光器60に入力されるようにしている。
【0038】
ステップS105では、サンプルセル20に測定対象の混合ガスが導入される。そして、ステップS106では、演算装置70により、サンプルセル20における測定対象ガス存在時の紫外線光の参照光強度C3の検出が行われる。なお、演算装置70は、測定した紫外線光のスペクトルのうち、ステップS101やステップS104で光強度C6,C5を検出した周波数(たとえば226.7nm)における光強度を、サンプルセル20における測定対象ガス存在時の紫外線光の光強度C3として検出する。
【0039】
ステップS107では、演算装置70により、NOガスが干渉しない第1の紫外波長帯域W1,W3の所定の波長における光強度C1,C2が特定される。なお、図5に示す例では、第2の紫外波長帯域(226.0nm~227.5m)から1.5nmの帯域幅を隔てた224.5nmおよび229.0nmの波長における光強度C1,C2を、所定の波長における光強度として特定する。そして、ステップ108では、演算装置70により、サンプルセル20を通過した紫外線光のスペクトルにおいて、ステップS107で抽出した波長の光強度C1,C2を結んだ直線が補間線として作成される。
【0040】
ステップS109では、演算装置70により、ステップS108で作成した補間線上の光強度C4が検出される。たとえば、演算装置70は、ステップS108で作成した補間線上の光強度であって、測定対象ガスの濃度を測定する周波数(たとえば226.7nm)における光強度を、補間線上の光強度C4として検出する。
【0041】
ステップS110では、演算装置70により、NOガスの濃度の算出が行われる。具体的には、演算装置70は、上記式1に基づいて、補間線上における光強度C4と、第2の紫外波長帯域W2における紫外線光の実際の光強度C3とに基づいて、サンプルセル20に導入された混合ガスのうちNOガスの濃度を算出することができる。
【0042】
ステップS111では、演算装置70により、ステップS104で検出したサンプルセル20における参照ガスN存在時の紫外線光の参照光強度C5を、校正率αに基づいて校正する処理が行われる。なお、以下においては、校正された光強度C5をC5’として説明する。
【0043】
ステップS112では、演算装置70により、SOガスの濃度の算出が行われる。具体的には、演算装置70は、上記式1において、I(λ)に、ステップS111で校正した第2の紫外波長帯域W2における紫外線光の参照光強度C5’を代入し、I(λ)に、第2の紫外波長帯域W2の補間線上における光強度C4を代入することで、SOガスの濃度nを算出することができる。
【0044】
そして、ステップS113では、演算装置70により、測定対象ガスの測定を終了するか否かの判断が行われる。ユーザが測定対象ガスの測定の終了を指示するまでは、ステップS106~S113の処理を繰り返すことで、ガス濃度測定装置1は周期的に測定対象ガスの濃度の測定を繰り返し、対象測定ガスの監視を行うことができる。そして、ユーザが測定対象ガスの測定の終了を指示することで、図11に示すガス濃度測定処理を終了する。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るガス濃度測定装置1は、NOガスが干渉しない第1の紫外波長帯域における光強度に基づいて、NOガスが干渉する第2の紫外波長帯域における、NOが干渉しない場合の光強度を補間し、第2の紫外波長帯域におけるNOガスが干渉しない場合の光強度と、第2の紫外波長帯域におけるNOガスが干渉する場合の光強度とに基づいて、NOガスの濃度を算出する。これにより、互いに干渉するNOガスとSOガスとが混在する場合でも、NOガスの濃度を適切に算出することができる。
【0046】
また、本実施形態では、NOガスが干渉しない第1の紫外波長帯域における波長の光強度C1,C2を結ぶ直線を補間線として作成することで、第2の紫外波長帯域においてNOガスが干渉しない場合の光強度を容易に補間することができる。さらに、本実施形態では、NOガスが干渉しない第1の紫外波長帯域における波長の光強度C1,C2、第2の紫外波長帯域から所定の帯域幅(余裕代)だけ隔てた波長の光強度とすることで、第2の紫外波長帯域においてNOガスが干渉しない場合の光強度を適切に特定することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、NOガスの濃度だけではなく、校正セル40を通過した紫外線光の光強度に基づいて、SOガスの濃度nを算出することもできる。すなわち、校正セル40には、200nm以上の紫外波長帯域では紫外線光を吸収しないNガスが略100%の割合で充填されており、校正セル40を通過した紫外線光の光強度は、他のガスにより吸収されていない場合の紫外線光の光強度とみなすことができる。そのため、演算装置70は、上記式1において、I(λ)に校正セル40を通過した紫外線光の光強度C5を代入し、I(λ)に第2の紫外波長帯域W2の補間線上における光強度C4を代入することで、SOガスの濃度nを算出することができる。
【0048】
加えて、本実施形態に係るガス濃度測定装置1では、サンプルセル20における紫外線光のスペクトルに基づいて補間線を作成し、サンプルセル20における紫外線光の光強度C3と補間線上の光強度C4との差(C4-C3)に基づいてNOガスの濃度を算出する構成のため、照射装置10の光源が劣化した場合でも、NOガスの濃度を適切に測定できる。また、校正セル40における使用前の紫外線光のスペクトルと現在の紫外線光のスペクトルとの比較結果に基づいて、サンプルセル20または校正セル40を通過した紫外線光のスペクトルを校正する構成とすることで、照射装置10の光源が劣化した場合でも、SOガスの濃度も適切に測定することができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
たとえば、上述した実施形態では、NOガスの濃度を測定する場合に、図5に示すように、第2の紫外波長帯域W2よりも短波長側の第1の紫外波長帯域W1の波長の光強度C1と、第2の紫外波長帯域W2よりも長波長側の第1の紫外波長帯域W3の波長の光強度C2とに基づいて、補間線を作成する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、第1の紫外波長帯域W1の2つの波長の光強度C1,C2に基づいて、あるいは、第1の紫外波長帯域W3の2つの波長の光強度C1,C2に基づいて、補間線を作成する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1…ガス濃度測定装置
10…照射装置
11…レンズ
12,13…ビームスプリッタ
14,15…反射鏡
20…サンプルセル
21…導入口
22…排出口
23…光路
30…調温装置
40…校正セル
51,52…遮光板
60…分光器
61…レンズ
70…演算装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11