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特許7436021把持具の緩衝装置、およびその緩衝装置を備える把持具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】把持具の緩衝装置、およびその緩衝装置を備える把持具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20240214BHJP
   B25B 7/12 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02G1/02
B25B7/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020080162
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021175344
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207311
【氏名又は名称】大東電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】西村 次郎
(72)【発明者】
【氏名】柳原 正
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-82780(JP,A)
【文献】実開平3-94012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00- 1/10
B25B 1/00-11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材とを備えており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材のいずれか一方は、他方の少なくとも一部に被さる被覆部が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の一方における前記被覆部には前記弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の他方には、前記長孔に嵌挿される突部が突設されている
把持具の緩衝装置。
【請求項2】
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材とを備えており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材のいずれか一方は、他方の少なくとも一部に被さる被覆部が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の他方における前記被覆部に対応する位置には前記弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の一方には、前記長孔に嵌挿される突部が突設されている
把持具の緩衝装置。
【請求項3】
前記補助操作棒側弾性部材保持部材は、筒状の部材であり、前記弾性部材の一端部が収容固定される他端には第1収容穴が形成されており、
前記レバー側弾性部材保持部材は、筒状の部材であり、前記弾性部材の他端部が収容固定される他端には第2収容穴が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材のいずれか一方は、他方の少なくとも一部を収容するようになっており、前記補助操作棒側弾性部材保持部材と前記レバー側弾性部材保持部材とが重複する部分が前記被覆部となっている
請求項1または2に記載の緩衝装置。
【請求項4】
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材と、
一端部が前記補助操作棒側弾性部材保持部材の一部を覆うとともに、他端部が前記レバー側弾性部材保持部材の一部を覆う被覆部材とを備えており、
前記被覆部材は、前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材のいずれか一方に固定されているとともに、前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の他方に対応する位置において前記弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔を有しており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の他方には、前記長孔に嵌挿される突部が突設されている
把持具の緩衝装置。
【請求項5】
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材と、
一端部が前記補助操作棒側弾性部材保持部材の一部を覆うとともに、他端部が前記レバー側弾性部材保持部材の一部を覆う被覆部材とを備えており、
前記被覆部材は、前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材にそれぞれ対応する位置において前記弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔をそれぞれ有しており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材には、一方の前記長孔に嵌挿される突部が突設されており、
前記レバー側弾性部材保持部材には、他方の前記長孔に嵌挿される突部が突設されている
把持具の緩衝装置。
【請求項6】
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材と、
一端が前記補助操作棒側弾性部材保持部材に取り付けられているとともに、他端が前記レバー側弾性部材保持部材に取り付けられており、前記補助操作棒側弾性部材保持部材と前記レバー側弾性部材保持部材との間を所定の距離以下に制限する制限部材とを備える
把持具の緩衝装置。
【請求項7】
前記補助操作棒側弾性部材保持部材は、筒状の部材であり、前記弾性部材の一端部が収容固定される他端には第1収容穴が形成されており、
前記レバー側弾性部材保持部材は、筒状の部材であり、前記弾性部材の他端部が収容固定される他端には第2収容穴が形成されている
請求項4から6のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に係る緩衝装置を備える把持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、様々な架線工事において電線カバー等の被把持物を所定の位置で保持するのに使用される把持具の緩衝装置、およびその緩衝装置を備える把持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、様々な架線工事において被把持物を高所の所定位置で保持する等の用途に使用される把持具(いわゆる「ヤットコ」)が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この把持具は、長尺の操作棒の先端に固定把持部と可動把持部とが取り付けられており、操作棒の根元部に設けられたレバーを回動させて操作棒に沿って延びる補助操作棒を引っ張ることにより、固定把持部に可動把持部が近づくようになっている。
【0004】
これにより、補助操作棒を引っ張ることにより、固定把持部と可動把持部との間で被把持部を把持できるようになっている。
【0005】
ところで、このような把持具において、固定把持部と可動把持部との間で被把持物を把持した状態でさらにレバーを強く握って回動させてしまい、被把持物を破損させてしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、近年の把持具1では、図7から図9に示すような、緩衝装置2をさらに備えるものが開発されている。
【0007】
この把持具1は、緩衝装置2に加えて、従前のものと同様、操作棒3と、当該操作棒3の先端に取り付けられた固定把持部4および可動把持部5と、レバー6と、補助操作棒7とを備えている。
【0008】
この緩衝装置2は、補助操作棒7の端とレバー6との間に配置されており、補助操作棒側筒状部材8と、レバー側筒状部材9と、巻きバネAとで構成されている。
【0009】
補助操作棒側筒状部材8は、その一端が補助操作棒7の端に取り付けられており、他端側に設けられバネ収容孔の底部に巻きバネAの一端が固定されている。
【0010】
レバー側筒状部材9は、その一端がレバー6の端に取り付けられており、他端側に設けられたバネ収容孔の底部に巻きバネAの他端が固定されている。
【0011】
これにより、レバー6を回動させていったとき、当該レバー6と補助操作棒7との間に巻きバネAが介在しているので、レバー6が補助操作棒7を引く力の一部が巻きバネAを伸ばす力に使用され、補助操作棒7を介して可動把持部5が固定把持部4との間で被把持物に過度の力が加わるのを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2008-86137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した、巻きバネAを備える把持具1でも、レバー6を過度に握っていくと、当該レバー6が操作棒3に当接するまで巻きバネAを伸ばし続けることができてしまうので、今度は巻きバネAが破損するおそれがあるという問題があった。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レバーを過度に握ったとしても、巻きバネに代表される弾性部材が破損するのを回避できる、安全性と耐久性に優れた、把持具の緩衝装置、およびそれを備える把持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面によれば、
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材とを備えており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材のいずれか一方は、他方の少なくとも一部に被さる被覆部が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の一方における前記被覆部には前記弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の他方には、前記長孔に嵌挿される突部が突設されている
把持具の緩衝装置が提供される。
【0016】
本発明の他の局面によれば、
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材とを備えており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材のいずれか一方は、他方の少なくとも一部に被さる被覆部が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の他方における前記被覆部に対応する位置には前記弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の一方には、前記長孔に嵌挿される突部が突設されている
把持具の緩衝装置が提供される。
【0017】
好適には、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材は、筒状の部材であり、前記弾性部材の一端部が収容固定される他端には第1収容穴が形成されており、
前記レバー側弾性部材保持部材は、筒状の部材であり、前記弾性部材の他端部が収容固定される他端には第2収容穴が形成されており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材のいずれか一方は、他方の少なくとも一部を収容するようになっており、前記補助操作棒側弾性部材保持部材と前記レバー側弾性部材保持部材とが重複する部分が前記被覆部となっている。
【0018】
本発明の他の局面によれば、
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材と、
一端部が前記補助操作棒側弾性部材保持部材の一部を覆うとともに、他端部が前記レバー側弾性部材保持部材の一部を覆う被覆部材とを備えており、
前記被覆部材は、前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材のいずれか一方に固定されているとともに、前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の他方に対応する位置において前記弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔を有しており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材の他方には、前記長孔に嵌挿される突部が突設されている
把持具の緩衝装置が提供される。
【0019】
本発明の他の局面によれば、
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材と、
一端部が前記補助操作棒側弾性部材保持部材の一部を覆うとともに、他端部が前記レバー側弾性部材保持部材の一部を覆う被覆部材とを備えており、
前記被覆部材は、前記補助操作棒側弾性部材保持部材および前記レバー側弾性部材保持部材にそれぞれ対応する位置において前記弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔をそれぞれ有しており、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材には、一方の前記長孔に嵌挿される突部が突設されており、
前記レバー側弾性部材保持部材には、他方の前記長孔に嵌挿される突部が突設されている
把持具の緩衝装置が提供される。
【0020】
本発明の別の局面によれば、
把持具における操作棒の先端に固定把持部および可動把持部が取り付けられており、前記可動把持部に一端が取り付けられた補助操作棒と操作棒の根元部に配設されたレバーとの間に配設される緩衝装置であって、
弾性部材と、
一端が前記補助操作棒に取り付けられ、他端に前記弾性部材の一端部が固定される補助操作棒側弾性部材保持部材と、
一端が前記レバーに取り付けられ、他端に前記弾性部材の他端部が固定されるレバー側弾性部材保持部材と、
一端が前記補助操作棒側弾性部材保持部材に取り付けられているとともに、他端が前記レバー側弾性部材保持部材に取り付けられており、前記補助操作棒側弾性部材保持部材と前記レバー側弾性部材保持部材との間を所定の距離以下に制限する制限部材とを備える
把持具の緩衝装置が提供される。
【0021】
好適には、
前記補助操作棒側弾性部材保持部材は、筒状の部材であり、前記弾性部材の一端部が収容固定される他端には第1収容穴が形成されており、
前記レバー側弾性部材保持部材は、筒状の部材であり、前記弾性部材の他端部が収容固定される他端には第2収容穴が形成されている。
【0022】
本発明の他の局面によれば、
上述した緩衝装置を備える把持具が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る把持具の緩衝装置によれば、補助操作棒側弾性部材保持部材およびレバー側弾性部材保持部材の一方における被覆部に形成された、弾性部材が伸縮する方向に延びる長孔に対して、補助操作棒側弾性部材保持部材およびレバー側弾性部材保持部材の他方に形成された当該長孔に嵌挿する突部が突設されている。このため、レバーを回動させることによって弾性部材が伸びていったとき、長孔の端に突部が当接して補助操作棒側弾性部材保持部材とレバー側弾性部材保持部材との間の距離がそれ以上伸びるのを回避できるようになっている。これにより、弾性部材が伸びすぎて破損するのを回避できる、安全性と耐久性に優れた、把持具の緩衝装置を提供することができた。
【0024】
また、一端が補助操作棒側弾性部材保持部材に取り付けられているとともに、他端がレバー側弾性部材保持部材に取り付けられており、補助操作棒側弾性部材保持部材とレバー側弾性部材保持部材との間を所定の距離以下に制限する制限部材を設けることによっても、弾性部材が伸びすぎて破損するのを回避できる、安全性と耐久性に優れた、把持具の緩衝装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明が適用された実施形態に係る把持具10を示す正面図である。
図2】緩衝装置100を中心とした把持具10の拡大図である。
図3】緩衝装置100を中心とした把持具10の断面図である。
図4】変形例1に係る緩衝装置100を中心とした把持具10の拡大図である。
図5】変形例1に係る緩衝装置100を中心とした把持具10の断面図である。
図6】変形例2に係る緩衝装置100を中心とした把持具10の断面図である。
図7】従来の把持具1を示す正面図である。
図8】従来の緩衝装置2を中心とした把持具1の拡大図である。
図9】従来の緩衝装置2を中心とした把持具1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(把持具10および緩衝装置100の構成)
本発明が適用された実施形態に係る緩衝装置100について説明する。図1は緩衝装置100を備える把持具10の全体外観図であり、図2は緩衝装置100を中心とした拡大外観図である。さらに、図3は緩衝装置100を中心とした拡大断面図である。
【0027】
本実施形態に係る把持具10は、大略、操作棒12と、固定把持部材14と、可動把持部材16と、レバー18と、補助操作棒20と、緩衝装置100とで構成されている。
【0028】
操作棒12は、所定の長さを有する長尺の棒状材であり、作業者が操作する手元側には、レバー18が回動可能に保持されるレバー保持部材22が取り付けられている。
【0029】
レバー保持部材22は、上述のように操作棒12に取り付けられる略L字状の部材であり、レバー18を回動可能に軸支するレバー回動軸24が嵌め込まれる回動軸孔26が形成されている。
【0030】
固定把持部材14は、操作棒12の先端に取り付けられた部材であり、把持具10を用いて把持する被把持物に当接する湾曲した第1当接部28と、当該操作棒12の先端が嵌挿される操作棒挿設穴30とを有している。
【0031】
また、固定把持部材14には、可動把持部材16を回動可能に軸支する可動把持部材回動軸32が嵌め込まれる可動把持部材回動軸孔34が形成されている。
【0032】
可動把持部材16は、上述した可動把持部材回動軸32によって固定把持部材14に対して回動可能に軸支された部材であり、被把持物に当接する湾曲した第2当接部36と、補助操作棒20の先端が補助操作棒回動軸38によって回動可能に取り付けられる補助操作棒取付軸孔40が形成されている。この補助操作棒回動軸38により、補助操作棒20の先端が可動把持部材16に対して回動可能に取り付けられている。
【0033】
レバー18は、被把持物を把持する際に動作させる部材であり、略直線状の操作部42と、これに略直交する方向に延びる梃子部44と略L字状に形成されている。操作部42と梃子部44との接合位置には、レバー回動軸24が嵌め込まれるレバー回動軸嵌込孔46が形成されており、このレバー回動軸24によってレバー18がレバー保持部材22に対して回動可能に取り付けられている。
【0034】
また、梃子部44の先端部には、緩衝装置100の後端が緩衝装置回動軸48によって回動可能に取り付けられる緩衝装置取付軸孔50が形成されている。この緩衝装置回動軸48により、緩衝装置100の後端がレバー18に対して回動可能に取り付けられている。
【0035】
補助操作棒20は、レバー18の動きを可動把持部材16に伝達するための略直線棒状部材であり、その先端には、補助操作棒回動軸38が取り付けられる可動把持部材取付軸孔52が形成されている。また、補助操作棒20の後端は、緩衝装置100の先端に取り付けられている。
【0036】
緩衝装置100は、大略、弾性部材102と、補助操作棒側弾性部材保持部材104と、レバー側弾性部材保持部材106とを備えている。
【0037】
弾性部材102は、レバー18が回動して補助操作棒20を引く力の一部を受け入れ、補助操作棒20を介して可動把持部材16が固定把持部材14との間で被把持物に過度の力を加えてしまうのを回避する役割を有している。
【0038】
本実施形態では、弾性部材102として巻きバネが使用されている。もちろん、弾性部材102は巻きバネに限定されるものではなく、例えば、他の種類のバネやエラストマーを使用することが考えられる。
【0039】
補助操作棒側弾性部材保持部材104は、有底筒状の部材であり、底のある一端が補助操作棒20に取り付けられており、弾性部材102の一端部が収容固定される他端には第1収容穴108が形成されている。補助操作棒側弾性部材保持部材104には、第1収容穴108が存在する位置に第1弾性部材取付ピン110が貫挿されており、この第1弾性部材取付ピン110に弾性部材102の一端が取り付けられている。
【0040】
また、本実施形態では、補助操作棒側弾性部材保持部材104がレバー側弾性部材保持部材106の少なくとも一部を収容するようになっており、補助操作棒側弾性部材保持部材104とレバー側弾性部材保持部材106とが重複する部分が被覆部111となっている。そして、この被覆部111には、弾性部材102が伸縮する方向に延びる長孔118が形成されている。
【0041】
レバー側弾性部材保持部材106は、有底筒状の部材であり、底のある一端がレバー18に取り付けられており、弾性部材102の他端部が収容固定される他端には第2収容穴112が形成されている。レバー側弾性部材保持部材106には、第2収容穴112が存在する位置に第2弾性部材取付ピン114が貫挿されており、この第2弾性部材取付ピン114に弾性部材102の他端が取り付けられている。
【0042】
また、第2弾性部材取付ピン114の長さは、レバー側弾性部材保持部材106の径よりも長く設定されており、当該第2弾性部材取付ピン114の少なくとも一方の端部は、レバー側弾性部材保持部材106の側周面から突設された突部116を形成するようになっている。そして、この突部116は、補助操作棒側弾性部材保持部材104に形成された長孔118に嵌挿される位置に形成されている。
【0043】
なお、本実施形態では、上述のように、レバー側弾性部材保持部材106に被さる被覆部111を有する補助操作棒側弾性部材保持部材104に長孔118が形成されており、外向きに突出する突部116がレバー側弾性部材保持部材106の側周面に形成されているが、これとは逆に、レバー側弾性部材保持部材106に被さる被覆部111を有する補助操作棒側弾性部材保持部材104から内向きに突出する突部116を形成し、レバー側弾性部材保持部材106のこれに対応する位置に長孔118を形成してもよい。
【0044】
さらに言えば、本実施形態では、上述のように、レバー側弾性部材保持部材106に補助操作棒側弾性部材保持部材104が被さるようになっていたが、これとは逆に、補助操作棒側弾性部材保持部材104にレバー側弾性部材保持部材106が被さるようにしてもよい。
【0045】
また、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の形状は、上述した有底円筒状に限定されるものではなく、角筒状であってもよいし、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106のいずれか一方に、他方の少なくとも一部に被さる被覆部111が形成されていればどのような形状であってもよい。
【0046】
(把持具10および緩衝装置100の特徴)
本実施形態に係る把持具10によれば、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の一方における被覆部111に形成された、弾性部材102が伸縮する方向に延びる長孔118に対して、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の他方に形成された当該長孔118に嵌挿する突部116が突設されている。このため、レバー18を回動させることによって弾性部材102が伸びていったとき、長孔118の端に突部116が当接して補助操作棒側弾性部材保持部材104とレバー側弾性部材保持部材106との間の距離がそれ以上伸びるのを回避できるようになっている。これにより、弾性部材102が伸びすぎて破損するのを回避できる、安全性と耐久性に優れた、把持具10の緩衝装置100を提供することができる。
【0047】
(変形例1)
上述した実施形態に係る緩衝装置100では、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の一方における被覆部111に長孔118を形成するとともに、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の他方に当該長孔118に嵌挿する突部116を突設することにより、補助操作棒側弾性部材保持部材104とレバー側弾性部材保持部材106との間の距離が必要以上に伸びるのを回避していたが、これに変えて、図4および図5に示すように、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106とは別体の被覆部材150を設けてもよい。
【0048】
この被覆部材150は、その上端部が補助操作棒側弾性部材保持部材104の一部を覆うとともに、その下端部がレバー側弾性部材保持部材106の一部を覆うようになっている。つまり、補助操作棒側弾性部材保持部材104やレバー側弾性部材保持部材106が円筒状に形成されている場合には、被覆部材150も同様に円筒状に形成されており、角筒状に形成されている場合には、被覆部材150も角筒状に形成されている。
【0049】
また、この変形例1の場合、被覆部材150の下端部は、レバー側弾性部材保持部材106に対して固定ピン152によって固定されており、被覆部材150の上端部の側周面には、弾性部材102が伸縮する方向に延びる長孔154が形成されている。なお、固定ピン152は、図示するように上述した第2弾性部材取付ピン114を兼ねてもよいし、互いに別部材としてもよい。
【0050】
さらに、補助操作棒側弾性部材保持部材104の側周面からは、上記長孔154に嵌挿される突部156が突設されている。なお、突部156は、図示するように上述した第1弾性部材取付ピン110を兼ねてもよいし、互いに別部材としてもよい。
【0051】
変形例1に係る把持具10によれば、下端部がレバー側弾性部材保持部材106に固定され、上端部が補助操作棒側弾性部材保持部材104の一部を覆う被覆部材150に形成された、弾性部材102が伸縮する方向に延びる長孔154に対して、補助操作棒側弾性部材保持部材104には当該長孔154に嵌挿する突部156が突設されている。このため、レバー18を回動させることによって弾性部材102が伸びていったとき、長孔154の端に突部156が当接して補助操作棒側弾性部材保持部材104とレバー側弾性部材保持部材106との間の距離がそれ以上伸びるのを回避できるようになっている。これにより、弾性部材102が伸びすぎて破損するのを回避できる、安全性と耐久性に優れた、把持具10の緩衝装置100を提供することができる。
【0052】
なお、上述した被覆部材150では、その下端部がレバー側弾性部材保持部材106に固定され、上端部に長孔154が形成されていたが、これとは逆に、その上端部を補助操作棒側弾性部材保持部材104に固定し、下端部に長孔154を形成するとともに、レバー側弾性部材保持部材106の側周面から突部156を突設してもよい。また、被覆部材150の上端部および下端部の両方に長孔154を形成するとともに、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の両方から突部156を突設してもよい
【0053】
さらに言えば、被覆部材150から内向きに突部156を突設し、これに対応する位置において補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の一方あるいは両方に長孔154を形成してもよい。
【0054】
(変形例2)
上述した実施形態に係る緩衝装置100では、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の一方における被覆部111に長孔118を形成するとともに、補助操作棒側弾性部材保持部材104およびレバー側弾性部材保持部材106の他方に当該長孔118に嵌挿する突部116を突設することにより、補助操作棒側弾性部材保持部材104とレバー側弾性部材保持部材106との間の距離が必要以上に伸びるのを回避していたが、これに変えて、図6に示すように、被覆部111を設けることなく、一端が補助操作棒側弾性部材保持部材104に取り付けられているとともに、他端がレバー側弾性部材保持部材106に取り付けられており、補助操作棒側弾性部材保持部材104とレバー側弾性部材保持部材106との間を所定の距離以下に制限する制限部材200を設けてもよい。
【0055】
この変形例2に係る緩衝装置100によれば、補助操作棒側弾性部材保持部材104とレバー側弾性部材保持部材106との間を所定の距離以下に制限する制限部材200を設けることで、弾性部材102が伸びすぎて破損するのを回避できる、安全性と耐久性に優れた、把持具の緩衝装置を提供することができる。
【0056】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
10…把持具、12…操作棒、14…固定把持部材、16…可動把持部材、18…レバー、20…補助操作棒、22…レバー保持部材、24…レバー回動軸、26…回動軸孔、28…第1当接部、30…操作棒挿設穴、32…可動把持部材回動軸、34…可動把持部材回動軸孔、36…第2当接部、38…補助操作棒回動軸、40…補助操作棒取付軸孔、42…操作部、44…梃子部、46…レバー回動軸嵌込孔、48…緩衝装置回動軸、50…緩衝装置取付軸孔、52…可動把持部材取付軸
100…緩衝装置、102…弾性部材、104…補助操作棒側弾性部材保持部材、106…レバー側弾性部材保持部材、108…第1収容穴、110…第1弾性部材取付ピン、111…被覆部、112…第2収容穴、114…第2弾性部材取付ピン、116…突部、118…長孔
150…被覆部材、152…固定ピン、154…長孔、156…突部
200…制限部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9