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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】穿刺針ガイド器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240214BHJP
   A61B 90/11 20160101ALI20240214BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20240214BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B90/11
A61B6/12
A61B6/03 577
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020087934
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021180785
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】高僧 剛義
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-116664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0289901(US,A1)
【文献】登録実用新案第3211603(JP,U)
【文献】国際公開第2013/003738(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 90/11
A61B 6/12
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の特定位置に穿刺針を刺入するさいのガイド器具であって、穿刺針を刺入位置に誘導する通路を備えたガイド部と、該ガイド部と所定の間隔を開けて平行に設けた、器具の把持部となる支柱と、前記ガイド部と支柱を繋ぐビームと、前記支柱と同軸に設け、該支柱からの突出の長さを可変可能な、体表当接部を含むアジャスターとを備えて構成し、前記支柱からのアジャスターの突出長を調整する手段として、前記支柱とアジャスターの周方向の相対位置により、前記支柱とアジャスターが該支柱の軸方向に平行にスライド可能なスライド位置、前記スライドを許容せず周方向へ回動して前記突出長を固定する回動位置とを備え、前記周方向への回動を止める手段として、前記支柱の軸方向に沿って一列に延びる突条のストッパーを備えることを特徴とする穿刺針ガイド器具。
【請求項2】
前記支柱の内周面とアジャスターの外周面には、互いに螺合するネジ状の凹凸部、あるいは、周方向に平行し連続して並ぶ凹凸部が形成され、支柱、あるいは、アジャスターのいずれか一方に形成する凹凸部は、前記外周面あるいは内周面の一部分であって、周囲から区画された区画部位にのみ形成されており、他方側の周面には、前記区画部位の周方向の幅より長い円弧幅で軸方向に一列設ける非凹凸部を設けて形成される請求項の穿刺針ガイド器具。
【請求項3】
前記突条のストッパーは、前記他方側の面に形成された凹凸部と非凹凸部の一方側の境界部に形成される請求項の穿刺ガイド器具。
【請求項4】
前記区画部位は、周囲面より突起して形成されてなり、かつ、該区画部位を備える周面には、該区画部位に形成した凹凸部の凹部の高さと同等の高さとなる、周囲面から突出し軸方向へ延びる突条を複数列形成してなり、該区画部位と複数の突条により形成される外径あるいは内径が、他方側の面に形成する凹凸部の内径あるいは外径と適合する請求項乃至のいずれかの穿刺針ガイド器具。
【請求項5】
前記区画部位は、筒状に形成された支柱の内面に形成される請求項乃至のいずれかの穿刺ガイド器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CTスキャナ(コンピューター断層撮影装置)等の画像データを指標として、被検者体内の目的部位へ経皮的に正確な針穿刺をするための穿刺針ガイド器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CT等の画像データを指標として、被検者の胸部あるいは腹部の目的部位に経皮的に針穿刺を行う場合、検者は、目標部位を確認し、穿刺針の刺入位置、深度、方向(穿刺ルート)を決定し、画像下に穿刺針の針先を確認しながら、表皮から目的部位に到達するように、また、CT画像横断面から針先が外れないように該横断面に平行に針を保持しつつ穿刺するものである。特に、検者には、画像上で決定した穿刺ルートを再現し、穿刺することが要求されるもので、いかに正確に穿刺するかが手技上重要なポイントとなる。
【0003】
そして、現在は、断面を連続的にスキャンしながらリアルタイムで画像を観察できるCT装置があり、CT透視下で常に針先を確認しながら手技を進めることで、比較的容易に精度の高い穿刺が可能となっている。しかし、一方で、連続的なCT装置のガントリー内には、継続的にX線が曝射されているため、手技中の検者への直接被曝の管理が問題となる。
【0004】
そこで、この被曝の問題を解決するため、ガントリー内のX線が曝射される位置(X線放射域)を避け、その外側から針の穿刺操作ができるように、穿刺針の刺入位置と該穿刺針の刺入操作位置とに一定の距離を設けた穿刺針のガイド器具が提案されている。その穿刺針ガイド器具は、X線放射域となるCT装置のガントリー内に配置される穿刺針の挿入通路となる挿通孔を有するガイド筒と、X線照射域の外部に配置されるガイド筒と平行に直立している支柱と、ガイド筒と支柱を繋ぐ一定の長さをもったビーム、及び、該支柱と同軸に設け、軸方向に支柱からの出の長さを可変調節可能な脚部より構成された器具となっている。(特許文献1)この器具によると、穿刺針の刺入位置となるガイド筒はガントリー内のX線放射域に位置させ、ガイド器具の操作把持部となる支柱はX線に曝射されない位置に配置させて、穿刺針の針管を長めに設定し、該穿刺針の刺入操作をX線曝射域の外部から針を湾曲させて行うことで、目標部位への針穿刺が正確にできるCT透視下の穿刺であっても、検者への被爆のおそれがなく、また、穿刺手技中に被検者をガントリーから外す必要がない器具となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-116664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の穿刺針ガイド器具は、穿刺目的部位への正確な針穿刺のため(例えば、CT画像横断面から針先が外れないように、該横断面に平行に針を保持するため)、該器具を体表にセットする位置や角度を調整する手段のひとつとして、支柱と脚部の長さを軸方向に変化させる機能を有しており、その具体的な手段として、同心上のスライド筒による構成、ヘリカルネジによる構成、上下にスライドできる脚部をネジの締め付けにより止められる構成、ハンドルにより上下にスライドできる脚部を支柱に取り付ける構成といった手段が挙げられている。しかし、前記同心上のスライド筒による構成の具体的な提案の記載はなく、ヘリカルネジによる構成やネジの締め付けによるものでは、長さ調整に時間が掛かったり、操作が面倒となったりすることが懸念され、また、ハンドルを取り付けるものでは構造が複雑になる懸念があるなど、従来の器具では、支柱と脚部との長さ調整が面倒であった。
【0007】
そこで本発明は、CT等の画像データを指標として体内の特定部位に穿刺針を刺入するさいに、検者がX線に被爆することなく、また、目的部位に正確に刺入するために用いられる穿刺針のガイド器具において、器具の体表への設定を迅速かつ容易に調整できる穿刺針ガイド器具を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、CT等の画像データを指標とした針穿刺を、被検者の目標部位に経皮的に行う際の穿刺ガイド器具で、穿刺針を体表の刺入位置に誘導する通路を備えたガイド部と、該ガイド部と所定の間隔を開けて平行に設ける、器具の把持部となる支柱と、前記ガイド部と支柱を繋ぐビームと、前記支柱と同軸に設け、該支柱からの突出の長さを可変可能な、体表当接部を含むアジャスターとを備えて構成しており、前記支柱からのアジャスターの突出長を調整する手段として、前記支柱とアジャスターの周方向の相対位置により、前記支柱とアジャスターが該支柱の軸方向に平行にスライド可能なスライド位置、前記スライドを許容せず周方向へ回動して前記突出長を固定する回動位置とを備え、前記周方向への回動を止める手段として、前記支柱の軸方向に沿って一列に延びる突条のストッパーを備えて構成した。
【0009】
前記アジャスターの突出長を調整する手段を備えるガイド器具の具体的な構成として、前記支柱の内周面とアジャスターの外周面には、互いに螺合するネジ状の凹凸部、あるいは、周方向に平行し連続して並ぶ凹凸部が形成されるが、支柱またはアジャスターのいずれか一方側の凹凸部は、前記外周面あるいは内周面の一部分であって、周囲から区画される区画部位にのみに形成されており、他方側の周面は、前記区画部位の周方向の幅よりい円弧幅で軸方向に一列設ける平滑面となる非凹凸部を設けて形成される。
【0010】
また、前記ストッパーの構成としては、前記他方側の面に形成された凹凸部と非凹凸部の片側の境界部に形成されることが好ましい。
【0011】
更に、前記区画部位は、周囲面より突起して形成されてなり、かつ、該区画部位を備える周面には、該区画部位に形成した凹凸部の凹部の高さと同等の高さとなる、周囲面から突出して軸方向へ延びる突条を複数列形成してなり、該区画部位と複数の突条により形成される外径あるいは内径が、他方側の面に形成する凹凸部の内径あるいは外径と適合するものとすることが好ましい。
【0012】
更に、前記区画部位は、筒状に形成された支柱の内面に形成されることが好ましい。
【0013】
前記手段によると、ガイド器具の支柱の高さ調整を、支柱からのアジャスターの突出長さを調整する手段により行うさい、操作手段として軸方向への迅速なスライド手段と、調整位置固定のための周方向への回動手段を備えることにより、長さをスライド手段により迅速に合わせて、回動手段によりその位置で固定するといった調整をすることができる。
【0014】
支柱とアジャスターの周方向の相対位置により軸方向へのスライド許容位置と非許容位置を設けることで、アジャスターの回動操作によりスライド許容位置と固定位置(スライド非許容位置)が選択可能となる。例えば、凹凸部を形成した区画部位に対して、他方側の面に該区画部位と係合する凹凸部と、係合されない非凹凸部(平滑面)を設けることで、該係合する凹凸部がスライド非許容位置となり位置固定可能で、前記係合されない非凹凸部はスライド許容位置となりアジャスターの伸縮が可能となる。更に、前記区画部位の周方向の幅より非凹凸部の周方向への幅を僅かに長く形成することで、スライド操作のさい互いの凹凸部が意図せずに引っ掛かる可能性を小さくしている。
【0015】
また、アジャスターの支柱に対する周方向への回動を規制するストッパーを備えることで、該アジャスターを設定位置で確実に保持することができる。また、ストッパーを凹凸部と非凹凸部の境界部に設けることにより、スライド操作の際に境界部にあるストッパーと突起してなる区画部位の一側面を軸方向に沿わせてスライド操作することで、該スライド操作をスムーズにすることができる。
【0016】
区画部位を形成する側の周面が、該区画部位と複数列の突条が突出した構成としていることで、他方側の周面となるネジ部との接触面が区画部位のネジ部と突条部分と小さくなることで、スライド時の抵抗を小さく、操作をスムーズなものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
CT等の画像データを指標として体内の特定部位に穿刺針を刺入するさい、検者がX線に被爆することなく、また、目標部位に正確に刺入するために用いる穿刺針ガイド器具において、該穿刺針ガイド器具を体表に設定するのに、支柱とアジャスターによる高さ調整が容易に短時間で設定可能な器具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態による穿刺針ガイド器具の全体構成図。
図2】前記形態のガイド器具本体の上面図、正面図、及び、一部(丸囲み部)拡大図。
図3】前記形態のガイド器具本体の右側面からの支柱部分の断面図、及び、一部(丸囲み部)拡大断面図。
図4】前記形態の穿刺針ガイド器具のアジャスターの構成図。
図5】前記形態の穿刺針ガイド器具の支柱とアジャスターとを接続し、スライド可動を許容した状態を示す断面図、及び、その一部(丸囲み部)拡大図。
図6】前記形態の穿刺針ガイド器具の支柱とアジャスターとを接続し、スライド可動を非許容とした状態を示す断面図、及び、その一部(丸囲み部)拡大図。
図7】前記形態の穿刺針ガイド器具を被検者に用いるときの状況で、ガイド器具の位置調整段階(アジャスターのスライド段階)を示す説明図。
図8】前記形態の穿刺針ガイド器具を被検者に用いるときの状況で、ガイド器具の位置調整後に、穿刺針を目標部位まで穿刺した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態の穿刺針ガイド器具について、図面を参照して詳細に説明する。本形態の器具は、被検者体内の目的部位に穿刺針を正確に刺入するためのガイド器具で、CT画像をリアルタイムに確認しながらの穿刺操作であっても、穿刺針の刺入操作部をX線放射域の外側に設定することで、検者へのX線の曝射を防止することのできるガイド器具である。
【0020】
図1は、本形態の穿刺針ガイド器具の全体構成図を示している。本穿刺針ガイド器具は、穿刺針9をあらかじめ設定した刺入位置に誘導する通路となる挿通孔111を設けるガイド部11と、ガイド部11と所定の間隔を備えてほぼ平行に直立する器具の把持部となる支柱13と、前記ガイド部11と支柱13を繋ぐビーム14から構成するガイド器具本体10と、前記支柱13と同軸に配置され、該支柱13からの突出長を変えることのできるアジャスター20から基本構成される。尚、本形態では、ガイド部11は挿通孔111を軸方向に2分割するように分離可能な保持板12が止めネジ122により着脱可能に構成されており、これにより、本ガイド器具を用いての穿刺針の穿刺後に、挿着された針管を残し該ガイド器具を体表から外すことができ、また、穿刺針を両側から挟持して固定することで、外径サイズの異なる針管に幅広く対応可能となっている。また、本形態では、ガイド部11の本体、支柱13、ビーム14はガイド器具本体10として、ABS樹脂により一体成型されている。
【0021】
図2は、前記形態のガイド器具本体の上面図(A)、正面図(B)、及び、該正面図の丸囲み部分の拡大図(C)を示しており、図3は右側面図の断面図(A)、及び、該断面図の丸囲み部分の拡大図(B)を示している。
ガイド器具本体10は、前記の通り一体成型されたガイド部11本体、支柱13、ビーム14、及び、ガイド部11本体に着脱自在な保持板12より構成さている。
【0022】
ガイド部11は、CT装置のガントリー内のX線照射域7に設定される部位で、穿刺針9、あるいは、該穿刺針9の挿入通路をガイドする誘導針8を挿通するための挿通孔111を備えた柱状として形成され、該挿通孔111を軸方向に2分割する態様でガイド部11本体と保持板12を着脱自在に構成してなる。そして、該保持板12に設ける止めネジ122をガイド部11本体に設けるネジ穴112に締め付け、挿通孔111に挿着した穿刺針9、あるいは、誘導針8両側から挟み特定位置に保持する。このように、着脱自在な構成により、穿刺針刺入後に針管のみを残して、ガイド器具を取り外すということができる。また、本例においては、挿通孔111に挿通した針管とCTのX線断層面が平行な位置にあるかを外部から確認可能な針穿刺の穿刺ライン121を、保持板12外面の挿通孔111の通路に沿う位置に設けて形成した。
【0023】
支柱13は、CT装置のガントリー外のX線非照射域に設定される部位で、後記するビーム14の長さを間隔として、前記ガイド部11と平行に設けられる柱状に形成され、本器具を体表の所定位置に固定するさいの把持部となる。また、本器具を手指により把持する位置には、滑り止めとなる凹凸の把持加工部131を備えて形成した。尚、本例においては、支柱13は筒状の四角形に形成され、把持加工部131は器具外周面の対向する側面の下方位置(アジャスター20を接続する側に近い位置)に設けた。
【0024】
そして、支柱13内周面の一部には、該周面から突出した区画部位を設け、該区画部位の表面は、後記するアジャスター20の外周面に設ける雄ネジと螺合する雌ネジである凸部ネジ132として形成される。また、該内周面には、前記凸部ネジ132の谷の高さとほぼ同等な高さで周面から突出し、軸方向に延びる突条133を複数列(本例では、筒状四角形に形成した各角部、及び、各辺の中間部で凸部ネジ132のある辺を除く3辺の計7列)形成し、該凸部ネジ132と複数の突条133で形成する径と、前記アジャスター20の外径(ネジの山部)が適合して、ネジの螺合により支柱13とアジャスター20が保持され、また、回動される。尚、本例では、該区画部位は、四角形に形成された支柱13内周面の一つの面(側面の一方側)の下方位置(アジャスター20が接続される側に近い位置)であって、前記把持加工部131の裏面にあたる位置に設けられる。区画部位を、この様に把持加工部131の裏面に設けることにより、把持したときにネジの螺合部分を外部より押圧することになり、支柱13とアジャスター20の位置ずれの防止となる。また、本例においては、区画部位の大きさを周方向への幅9mm、軸方向への長さ20mmとしているが、本ガイド器具の操作に不都合にならない大きさであれば特定するものではない。
【0025】
また、前記支柱13の区画部位に形成する凸部ネジ132は、前記の通り内周面から内面側に突出して区画されるが、該区画部位を区切る周囲は、軸方向の上部を除いた、下部及び両側部は切欠き部134として隙間が設けられており、該区画部位のみが僅かに内外方に撓むように形成されている。そして、この撓み変形により、前記把持による押圧効果が増し、前記した支柱13とアジャスター20の設定位置からのずれ防止が一層向上される。
【0026】
ビーム14は、CT装置ガントリー内のX線照射域からガントリー外のX線非照射域に設定される部位で、検者のX線曝射を防止するため前記ガイド部11と支柱13との間隔を開けて繋げる梁状の連結部となる。本例においてビーム14は、ガイド部11の上部側と支柱13の下部側を接続しており、被爆防止と操作性を考慮して約100mmの長さに設定される。
【0027】
図4は、本形態のアジャスターの構成図で、図(A)と図(B)は90度の角度で位置をずらしたものを示している。図5図6は、支柱とアジャスターを接続した状態で、図5がスライド可動を許容とした場合の断面図(A)、及び、該断面図の丸囲み部分の拡大断面図(B)を示し、図6は、スライド可動を非許容とした場合(位置固定状態)の断面図(A)、及び、該断面図の丸囲み部分の拡大断面図(B)を示している。
アジャスター20は、前記ガイド器具本体10の支柱13と同軸に、該支柱13から突出の長さを可変可能に取り付けられる円柱体で、突出長調整のさいの該アジャスター20の操作把持部であり、体表当接部241を備えた脚部24と、前記支柱13との接続部であり、前記凸部ネジ132との螺合部となる雄ネジ形状の調整ネジ21区域と、ネジ等の凹凸部を形成しない平滑面22区域とを外周面に設けた円筒状のアジャスター本体より構成される。
【0028】
脚部24は、体表に設定したさいの該体表との滑り防止の観点と、器具の高さ及び傾き調整のための操作性の観点から体表当接部241を先端部とした円錐部と、前記支柱13との回動操作の把持部となる円柱部からなり、該円柱部が前記アジャスター本体より大きな外径を有する独楽形状に形成した。
【0029】
円筒体のアジャスター20本体は、前記の通り外周面を調整ネジ21と平滑面22で構成するが、本例では周の3/4(270度の範囲)を調整ネジ21設定区域とし、残りの1/4(90度の範囲)を平滑面22設定区域として周面を2分した。該調整ネジ21は、支柱13の凸部ネジ132に螺合すると共に、支柱13の内周面に設けた突条133に適合する外径(ネジの山部の径)に設定される雄ネジとして形成され、一方、平滑面22は調整ネジ21の谷部の径(支柱の凸部ネジ132の山部の径)に適合する外径の周面として形成される。また、前記調整ネジ21と平滑面22の一方側の境界部には、該調整ネジ21の山部と同等な高さの突条となる回動ストッパー23を軸方向に一列設けて形成した。尚、本例においては、アジャスター20本体は円筒状としたが、充実円柱体であっても良い。
【0030】
そして、前記支柱13とアジャスター20は、該支柱13に対するアジャスター20の周方向への位置により、突出長の調整のために軸方向へスライド許容する位置と、調整した長さを保持するためスライドを止める非許容な位置を選択することができる。図5に示すように、アジャスター20の平滑面22が支柱13の区画部位の凸部ネジ132の位置に設定されたとき、支柱13内面とアジャスター20の外面に螺合する部位がないことで軸方向へのスライドが許容され所望の突出長に調整できる。また、この位置でアジャスター20を回動して、図6に示すように、アジャスター20の調整ネジ21が支柱13の区画部位の凸部ネジ132の位置に設定されたとき、該凸部ネジ132と調整ネジ21が螺合することで、調整した長さでアジャスター20を保持することができる。このような支柱13とアジャスター20のスライド、及び、回動操作により、支柱13からのアジャスター20の突出長を迅速に設定することができ、また、設定した位置を維持することができる。
【0031】
前記ガイド器具本体10の支柱13とアジャスター20が、凸部ネジ132と調整ネジ21により螺合して支柱13からのアジャスター20の突出長を自在な長さに調整できることで、平面ではない体表においてガイド器具本体10のガイド部11、即ち、該ガイド部11に挿通される穿刺針をCT画像横断面に平行に、例えば、体表に対して垂直な位置に設定することでき、結果、該穿刺針を穿刺目標部位に正確に穿刺することができる。
【0032】
また、前記のとおり、アジャスター20の調整ネジ21には軸方向に一列形成さる突条の回動ストッパー23を備えていることで、スライド操作による突出長の調整後、回動操作で位置を保持するさいに、該回動ストッパー23により確実に回動を止めることで過剰な回動操作を防止でき、また、該回動ストッパー23の位置(止まる位置)まで回動操作することで、回動操作不足による意図しない調整ネジ21と凸部ネジ132との螺合の外れを防止することができる。また、本形態のように、アジャスター20の調整ネジ21と平滑面22との境界部の一方側に回動ストッパー23を設けると、該回動ストッパー23は、平滑面22の一方端に位置することになるため、支柱13とアジャスター20のスライド操作のさい、支柱13の凸部ネジ132の一方の側面を回動ストッパー23に当て、沿うようにスライドすることで、凸部ネジ132が調整ネジ21に引っ掛かることなくスムーズなスライド可動ができる。
【0033】
また、本器具において、ガイド部11の高さは、該ガイド部11と平行して直立している支柱13とアジャスター20の高さよりも低くなるように構成されている。これにより、ガイド器具をCTのガントリー内で用いたときに、被検者の体表との空間の距離が大きく確保できるので、検者による視野が広くなり、被検者への体表の観察と、手技が行い易くなるという特徴がある。
【0034】
図7図8は、本発明の穿刺針ガイド器具を被検者に用いるときの状況を示しており、図7は、針穿刺に先立つ体表での本器具の位置合わせの段階で、支柱に対してアジャスターの突出の長さを調整するさいの状態を示し、図8は、該突出の長さを調整・固定し、本ガイド器具の設定位置を設定した後、目標部位に穿刺針を刺入した状態を示している。
CTの断層面(スライス面、スキャナ面)の画像データを得るために、被検者3は、CT装置のテーブル4に載せられる。被検者3の胸部あるいは腹部の表皮31から、検者(図示省略)によって目標部位6に向けて経皮的に針穿刺が行われる。穿刺針ガイド器具は、この穿刺針9を目標部位6に正確に経皮的に行うために使用される。穿刺針ガイド器具は、ガントリー5のX線放射部7に位置する被検者3の胸部あるいは腹部の表皮31に載せられる。検者は、目標部位6を確認し、穿刺針9の刺入位置、深度、方向(穿刺ルート)を決定し、穿刺針ガイド器具を穿刺ラインに合わせて固定する。直ちに、画像下に穿刺針9の針先を確認しながら、表皮31より目標部位6に正確に到達するように刺入し、しかも、CT画像横断面に平行に保持しつつ穿刺する。針穿刺は、穿刺針ガイド器具を用いて、最初に誘導針8を表皮31の刺入れ位置に設定する場合と、表皮31に浅く穿刺する場合がある。つぎに誘導針8を通して穿刺針9を目標部位6に向けて刺入する。検者は、刺入した穿刺針9を用いて、所定の手技、例えば、薬剤注入、生検等を実施する。この場合、特に検者には、画像上で決定した穿刺ルートを再現することが要求されるが、本発明の実施の形態の穿刺針ガイド器具を使用することにより、目標部位に正確に穿刺することができる。
【0035】
図7の状態において、支柱13に設けた凸部ネジ132は、アジャスター20の平滑部(非凹凸部)22の区域に位置しており、前記のとおり軸方向へのスライドが許容されて、支柱13からのアジャスター20の突出長の調整により、ガイド器具の体表31との角度(穿刺方向)が設定される。突出長(穿刺方向)が設定されたら、図7の状態からアジャスター20を時計回り回動にストッパー23に当たるまで回動して、支柱13とアジャスター20の設定位置を固定する。
【0036】
一方、図8の状態において、支柱13に設けた凸部ネジ132は、アジャスター20の調整ネジ21を設けた区域に位置しており、前記のとおり軸方向へのスライドが規制され、設定した位置で固定されている。この状態で、ガイド器具10全体が体表の設定位置から動かないように保持して、穿刺針9を目標部位6まで穿刺する。
【0037】
次に、本発明の実施の形態の穿刺針ガイド器具を被検者に用いるときの手順の例を説明する。なお、本例は、リアルタイムのCT透視下画像における針穿刺手技を指標としている。
【0038】
手順1.針穿刺に先立ち、CT透視下に目標部位6及び刺入ルートを確認し、穿刺に最適な断面を決定し、刺入点をマーキングする。
手順2.誘導針8と穿刺針9をガイド部11の挿通孔111にマウントし、予め計測した距離分穿刺針9を進めたときの該穿刺針9の刺入位置をマーキングする。
手順3.局所麻酔・皮膚切開終了後、ガイド器具を体表31に置き、CTに標準装備のレーザーマーカーを参照し、レーザーマーカーがガイド器具の保持板12に設ける穿刺ライン121全体に当たるように、アジャスター20の支柱13からの突出の長さを前記スライド及び回動操作により調整する。この様にレーザーマーカーと穿刺ライン121を合わせることにより穿刺針9全体は常にCT断面内(X線照射域7)に保つことができる。
手順4.被験者に息止めをしてもらいCT透視をスタートし、目標部位6がCT透視断面内にあることを確認し、CT透視画像を見ながらゆっくりとガイド器具10全体の傾きを調整し穿刺針9を目標部位6に向ける。この際、針先82、あるいは、92から黒い線状のアーチファクトが見られるので、これが目標部位6に重なるようにすることでより正確な穿刺が可能になる。
手順5.CT透視のスイッチを切り、穿刺針9を予め計測した距離分進める。
手順6.CT透視を再スタートし、針先92が目標部位6手前まで達していることを確認する。針先92がCT断面内から外れてしまったときは、CT透視下でテーブル4を動かし、針先92と目標部位6の位置関係を確認する。
手順7.穿刺針9の針先92の確認ができたらCT透視を切り、目的とする手技(生検等)を行う。
手順8.針先92が目標部位6にあることをCT透視にて確認し、針9を抜去する。
【0039】
本発明の実施の形態において、穿刺針ガイド器具を体表31に設定する際は、先ず、つぎのいずれかの操作、または組み合わせの操作による調整が行われる。
1.CT透視画像により予め設定した穿刺位置および穿刺ルートに合わせて、ガイド部11にセットした誘導針8の刃先82を刺入位置に整合させる。
2.穿刺ルートをCTの断層面(スライス面、スキャン面)に合わせるため、支柱13から突出するアジャスター20の突出量を調整する。
3.予め想定した穿刺ルートに沿って目標位置6に到達可能な角度に合わせるため、CT断層面の範囲で、ガイド器具全体を左右に傾けて整合させる。
以上の1~3の位置合せにより非常に容易に正確な穿刺ルートの設定ができる。
【0040】
本発明の実施の形態のガイド器具によると、穿刺針9の刺入は、誘導針8を利用しているので穿刺針9の穿刺方向が規制され、穿刺針9も誘導針8により保護されていることから、目標部位6への正確な穿刺を可能とし、細い針管であっても穿刺中の曲がりを少なくすることが可能となるため穿刺精度を高く確保できる。
【符号の説明】
【0041】
10 ガイド器具本体
11 ガイド部
111 挿通孔
112 ネジ穴
12 保持板
121 穿刺ライン
122 止ネジ
13 支柱
131 把持加工部
132 凸部ネジ
133 突条
134 切欠き部(隙間)
135 接続部
14 ビーム
20 アジャスター
21 連続凹凸部(調整ネジ、非スライド部)
22 非凹凸部(平滑部、スライド部)
23 回動ストッパー
24 脚部
241 体表当接部
3 人体
31 体表
4 テーブル
5 ガントリー
6 目標部位
7 X線放射域
8 誘導針
81 誘導針基
82 誘導針針先
9 穿刺針
91 穿刺針基
92 穿刺針針先
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8