(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】誘導加熱溶着装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/06 20060101AFI20240214BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H05B6/06 393
H05B6/10 331
(21)【出願番号】P 2020123093
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】庄司 博之
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200847(JP,A)
【文献】実開昭51-156550(JP,U)
【文献】国際公開第2013/108820(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/06
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートによって覆われた固定部材を前記シート上から電磁誘導によって加熱して、前記固定部材に前記シートを溶着する誘導加熱溶着装置であって、
前記固定部材を誘導加熱する加熱コイルと、
前記加熱コイルを収納するハウジングと、
前記ハウジングの下端部に設けられ、前記シートに接当する接当面を有する押圧パッドと、
前記接当面の温度を調整する温度調整装置と、を備え、
前記加熱コイルによる誘導加熱開始前に、前記温度調整装置は前記接当面の温度を上昇させる加熱モードで動作する誘導加熱溶着装置。
【請求項2】
前記シートの加熱溶着に不適当な高温度状態が自動判定されるように構成され、前記高温度状態が判定された場合、前記温度調整装置は、前記接当面の温度を低下させる冷却モードで動作する請求項
1に記載の誘導加熱溶着装置。
【請求項3】
前記シートの加熱溶着に不適当な低温度状態が自動判定されるように構成され、前記低温度状態が判定された場合、前記温度調整装置は、前記接当面の温度を上昇させる加熱モードで動作する請求項1
または2に記載の誘導加熱溶着装置。
【請求項4】
前記シートまたは前記押圧パッドの温度を検出する温度センサが備えられ、前記温度調整装置は、前記温度センサによる検出信号に基づいて、前記接当面の温度を調整する請求項1から
3のいずれか一項に記載の誘導加熱溶着装置。
【請求項5】
前記温度調整装置は、前記加熱コイルによる誘導加熱時間に依存して前記接当面の温度を調整する請求項1から
4のいずれか一項に記載の誘導加熱溶着装置。
【請求項6】
前記温度調整装置は、前記押圧パッドに形成された流体ジャケットに熱媒体を供給する熱媒体供給ユニットを備え、前記熱媒体供給ユニットは前記熱媒体を加熱または冷却する熱交換ユニットを有する請求項1から
5のいずれか一項に記載の誘導加熱溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに覆われた固定部材を前記シート上から電磁誘導によって加熱して、固定部材にシートを溶着する誘導加熱溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事又は土木工事の防水作業、例えば屋上等の防水工事において、屋上面に固定された導電性の固定部材に、屋上に張られた防水シートが固定される。この固定部材の表面には熱溶着層が形成されている。誘導加熱溶着装置を用いて、防水シートの表面側から固定部材が誘導加熱されるとともに防水シートが固定部材に押し付けられることで防水シートは固定部材に溶着され、結果的に防水シートは屋上に固定される。
【0003】
特許文献1による誘導加熱溶着装置は、加熱コイルを備えた電磁加熱コイルユニットと、電磁加熱コイルユニットに電流を供給する電源部と、防水シートを押し付ける押圧パッドとを備えている。誘導加熱溶着作業においては、誘導加熱が終了すると、押圧パッドを用いて、防水シートと固定部材との溶着箇所が押し付けられる。その際、冷却機構によって生成される冷却風によって押圧パッドが冷却される。具体的には、冷却制御部が、誘導加熱の終了後、冷却ファンユニットに冷却制御信号を与え、冷却ファンが駆動することで、加熱コイルと押圧パッドとが冷却される。押圧パッドが冷却されることで、溶着箇所が速やかな固着され、熱変形も抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-110824号公報(段落番号0040)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋上等の防水工事においては、誘導加熱溶着作業は、炎天下や寒冷下での作業になり易い。炎天下での作業では、作業前のシートや固定部材が高温となっており、誘導加熱時においてシートの温度がさらに高くなると、シートのてかり症状などの不都合が生じる。また、誘導加熱後の押圧作業においても押圧パッドの温度が高くなっていると、シートの押圧作業時のシート冷却による溶着箇所の固着に不都合が生じる。逆に、寒冷下での作業では、作業前のシートや固定部材が低温となっており、誘導加熱での固定部材の温度の立ち上がり時間が長くなり、誘導加熱作業の効率が低下するという不都合が生じる。
【0006】
このことから、炎天下や寒冷下での作業現場であっても、良好な加熱溶着結果が得られる誘導加熱溶着装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による、シートによって覆われた固定部材を前記シート上から電磁誘導によって加熱して、前記固定部材に前記シートを溶着する誘導加熱溶着装置は、前記固定部材を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルを収納するハウジングと、前記ハウジングの下端部に設けられ、前記固定部材に接当する接当面を有する押圧パッドと、前記接当面の温度を調整する温度調整装置と、を備え、前記加熱コイルによる誘導加熱開始前に、前記温度調整装置は前記接当面の温度を上昇させる加熱モードで動作する。
さらなる、本発明による、シートによって覆われた固定部材を前記シート上から電磁誘導によって加熱して、前記固定部材に前記シートを溶着する誘導加熱溶着装置は、前記固定部材を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルを収納するハウジングと、前記ハウジングの下端部に設けられ、前記固定部材に接当する接当面を有する押圧パッドと、前記接当面の温度を調整する温度調整装置と、を備え、前記加熱コイルによる誘導加熱の終了後に、前記温度調整装置は前記接当面の温度を低下させる冷却モードで動作する。
【0008】
この構成では、加熱コイルによる誘導加熱時に、シートに接当する押圧パッドの接当面の温度が調整可能であり、これにより、シートの温度を調整することが可能となる。例えば、炎天下の現場などにおいてシートの温度が高過ぎる場合には、加熱によってシートの温度が直ぐに上昇することで、過剰加熱によるシートのてかりが発生しやすいが、本発明によれば、押圧パッドの温度を低くして、接当面を通じてシートから熱を奪うことで、そのようなてかりなどの症状が回避される。また、寒冷下の現場などにおいてシートの温度が低過ぎる場合には、押圧パッドの温度を高くして、接当面を通じてシートに熱を与えることで、シートや固定部材の加熱温度の立ち上がり不足による溶着不良を回避することができる。温度調整装置は、押圧パッドを冷却するだけの構成であってもよいし、押圧パッドを加熱するだけの構成であってもよい。もちろん、誘導加熱が終了した後に行われる押圧パッドによる押し付け作業においても、押圧パッドの接当面の温度を適正にすることも可能である。
【0009】
温度調整装置の動作モードとして、接当面の温度を低下させる冷却モード、または接当面の温度を上昇させる加熱モード、あるいはその両方のモードが用意され、この動作モードが自動的に切り替えられると、作業者の判断に頼らずに、上述したような環境温度などに起因する加熱溶着不良が抑制される。このための、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記シートの加熱溶着に不適当な高温度状態が自動判定されるように構成され、前記高温度状態が判定された場合、前記温度調整装置は前記接当面の温度を低下させる冷却モードで動作するように構成されている。他の1つの本発明の好適な実施形態では、前記シートの加熱溶着に不適当な低温度状態が自動判定されるように構成され、前記低温度状態が判定された場合、前記温度調整装置は前記接当面の温度を上昇させる加熱モードで動作するように構成されている。
【0010】
平穏な環境状況での誘導加熱溶着作業では、誘導加熱前からシートに熱エネルギーを与えることで(必要な場合、誘導加熱後も熱エネルギーを与えてもよい)、誘導加熱による温度上昇の立ち上がりを支援することができる。また、誘導加熱後にはシートから熱エネルギーを奪って(必要な場合誘導加熱の終了前から熱エネルギーを奪ってもよい)、溶融状態から固着状態への移行を支援することができる。このような支援により、効率の良い加熱溶着作業が実現する。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記加熱コイルによる誘導加熱開始前に、前記温度調整装置は前記接当面の温度を上昇させる加熱モードで動作し、前記加熱コイルによる誘導加熱の終了後に、前記温度調整装置は前記接当面の温度を低下させる冷却モードで動作するように構成されている。
【0011】
シートの温度や押圧パッドの温度は、場所、季節、日時から推測することは可能であるが、より正確に検知するためには、シートの温度を温度センサなどで直接検出すことが好ましい。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記シートまたは前記押圧パッドの温度を検出する温度センサが備えられ、前記温度調整装置は、前記温度センサによる検出信号に基づいて、前記接当面の温度を調整する。
【0012】
また、シートの温度は、加熱コイルによる誘導加熱により急激に上昇していく。このことから、温度調整装置によるシートに対する温度調整は、加熱コイルによる誘導加熱の進行を考慮することが重要である。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記温度調整装置は、前記加熱コイルによる誘導加熱時間に依存して前記接当面の温度を調整する。
【0013】
押圧パッドを急速に冷却または加熱するための好適な方法は、押圧パッドに、熱媒体(冷媒体または温媒体)を流通させる流路を形成すること、つまり流体ジャケットを形成することである。加熱のための熱媒体は、電気ヒータやペルチェ素子を用いた熱交換ユニットにより作り出すことができ、冷却のための熱媒体は、冷却ファンやペルチェ素子を用いた熱交換ユニットにより作り出すことができる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記温度調整装置は、前記押圧パッドに形成された流体ジャケットに熱媒体を供給する熱媒体供給ユニットを備え、前記熱媒体供給ユニットは前記熱媒体を加熱または冷却する熱交換ユニットを有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】加熱溶着管理装置と誘導加熱溶着装置と防水シートと固定部材とを示す斜視図である。
【
図3】押圧パッド領域での誘導加熱溶着装置の縦断面図である。
【
図4】加熱コイルと位置ずれ検出コイルとの位置関係を示す平面図である。
【
図5】押圧パッドに形成された流体ジャケットを示す横断面図である。
【
図6】温度調整装置の機能を示す機能ブロック図である。
【
図7】加熱溶着管理装置と誘導加熱溶着装置との機能を示す機能ブロック図である。
【
図8】誘導加熱溶着処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】サブルーチンとしての温調処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】別実施形態における加熱溶着管理装置と誘導加熱溶着装置との機能を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書では、「上、上部、天」または「下、下部、底」は、装置本体の縦軸心方向(鉛直方向)での位置関係であり、シートからの高さにおける関係を示している。
【0016】
図1に、固定部材FXを電磁誘導によって加熱するとともに防水シートSH(シートの一例)を固定部材FXに押し付けることで、防水シートSHを固定部材FXに溶着させる誘導加熱溶着装置2が示されている。この実施形態による誘導加熱溶着装置2では、加熱溶着作業を管理する機能部が加熱溶着管理装置1として別体で構成されており、加熱溶着管理装置1と誘導加熱溶着装置2とが動力線と制御線とを含む接続ケーブルCAで接続されている。もちろん、加熱溶着管理装置1が有する機能を誘導加熱溶着装置2に組み込んで、誘導加熱溶着装置2単体で、加熱溶着作業が行えるようにしてもよい。
【0017】
加熱溶着管理装置1には、電源ユニット11、GNSSユニット12、データロガーユニット13、環境温度検出ユニット14と、操作パネル15、表示パネル16などが備えられている。電源ユニット11は、商用電源または自家発電を入力として、誘導加熱のために必要な電力を誘導加熱溶着装置2に出力する電力変換部11aを備えている。GNSSユニット12は、衛星測位システムを用いて加熱溶着場所の位置座標を算出する。これによって算出される位置座標はアンテナ(非図示)の位置であることから、加熱溶着管理装置1と誘導加熱溶着装置2との間隔が長くなる可能性がある場合には、アンテナだけは加熱溶着管理装置1に設けられる。データロガーユニット13は、各加熱溶着場所の位置座標とともに、そこで行われた加熱溶着作業のデータを記録する。環境温度検出ユニット14は、作業環境温度を検出する。操作パネル15には、各種操作ボタンや操作スイッチ、さらには各種報知ランプが配置されている。表示パネル16は、作業者に対する情報を視覚的に報知するための液晶ディスプレイである。
【0018】
図1では、誘導加熱溶着装置2は、屋上などにおけるコンクリート製の防水下地にアンカー等によって固定されている固定部材FXに、防水シートSHを溶着する作業の様子が示されている。この実施形態での固定部材FXは、円形状の導電体であり、例えば、鋼板によって構成されている。固定部材FXの上面には、防水シートSHに対する熱溶着層として、例えばポリエステル樹脂等の熱可塑性合成樹脂からなる面状のホットメルト接着層が形成されている。固定部材FXは、スラブ本体上に、縦横に所定の間隔を開けた多数の固定箇所に配置されている。作業者は、誘導加熱溶着装置2を用いて、防水シートSHを挟んで固定部材FXの上面を押え付けながら固定部材FXを誘導加熱することで、防水シートSHを固定部材FXに溶着し、さらに誘導加熱の停止後に、防水シートSHを固定部材FXに押し付けることで、防水シートSHを固定部材FXに固着する。固定部材FXの形状はその他の形状、矩形や多角形などであってもよいし、固定部材FXの材料は、導電体であれば、鋼以外の金属等であってもよい。さらには、防水シートSHに代えて、その他の目的を持つシート、例えば、耐火シートや耐摩耗シートが用いられてもよい。
【0019】
図2と
図3とに示すように、誘導加熱溶着装置2は、電源ユニット11の電力変換部11aから送られてきた電流によって固定部材FXを誘導加熱する加熱コイル6を収納するハウジング20とを備えている。電力変換部11aは、電源ユニット11を入力した交流電力を、インバータ回路等を通じて電力変換して、所定のタイミングで加熱コイル6に給電する。
【0020】
ハウジング20は、中心軸CLを有する円筒状の胴体部21と、胴体部21の上端に接続している上端部22と、胴体部21の下端に接続している下端部23とを有する。胴体部21の側壁には、接続ケーブルCAが接続される第2コネクターボックス19bが形成されている。第2コネクターボックス19bの上面には位置ずれ表示パネル66が設けられている。上端部22はハウジング20の上部を閉鎖する天壁である。上端部22の下面側には上収容室22aが形成され、上端部22の上面側には上方に環状突起22bが形成されている。下端部23はハウジング20の下部を閉鎖する底壁である。下端部23の上面側には下収容室23aが形成され、下端部23の下面側には円形の底凹部23bが形成されている。底凹部23bに加熱コイル6が収納されている。上端部22の周壁には、回動式の取っ手24が設けられている。
【0021】
図4に示されているように、加熱コイル6は、中心軸CLを中心として薄く平坦状に巻かれたコイルである。加熱コイル6は、
図3に示されているように、下端部23の端面23cに設けられた薄い樹脂プレート64によって保持されている。樹脂プレート64は端面23cと面一となるように設けられており、その面にシリコンゴム製の押圧パッド5が設けられている。つまり、押圧パッド5の下面は、この誘導加熱溶着装置2の下面でもあり、固定部材FXの上に位置する防水シートSHに接当可能な接当面50となる。押圧パッド5の上に樹脂プレート64を挟んで加熱コイル6、さらに上にフェライト65が配置されている。また、加熱コイル6と押圧パッド5との間には、
図4に示されているように、90度の円周角で分布した4つの位置ずれ検出コイル63が配置されている。
【0022】
図2に示されているように、ハウジング20の胴体部21の内部には、位置ずれ算出部62が収容されている。位置ずれ算出部62は、4つの位置ずれ検出コイル63からの検出信号を用いて、誘導加熱溶着装置2の中心軸CLが固定部材FXの中心に一致しているかどうか、つまり加熱コイル6の固定部材FXに対するずれ具合を算出する。位置ずれ算出部62による判定結果は、第2コネクターボックス19bの上面に設けられた位置ずれ表示パネル66に表示される。加熱コイル6が固定部材FXに対して位置ずれしていれば、その位置ずれ方向を示すエラーが表示され、加熱コイル6が固定部材FXに対して位置ずれしていなければ、位置ずれなしが表示される。
【0023】
図2に示されているように、ハウジング20の上端部22には、押圧操作具3が取り付けられている。押圧操作具3は、押圧キャップ31と、スライドロッド32と、スイッチ作動体33とを備えている。スライドロッド32は、中心軸CLと同軸状に、上端部22を形成している天壁を貫通している。押圧キャップ31は、スライドロッド32の上端に固定されている。
【0024】
押圧キャップ31の下面と上端部22を形成している天壁との間に、押圧バネ30が配置されている。この構成により、作業者が、押圧キャップ31を下方へ変位させて、所定の変位位置で押圧キャップ31を保持した場合、圧縮された押圧バネ30は、そのバネ変位に応じて規定されるバネ力で押圧パッド5を防水シートSHに押し付ける。
【0025】
上収容室22aの内部には、加熱スイッチ34が設けられている。加熱スイッチ34は、接続ケーブルCAを介して、電力変換部11aに接続されている。押圧キャップ31の第1位置から第2位置へのスライド変位により、スイッチ作動体33が加熱スイッチ34のレバーと接触し、加熱スイッチ34がON操作される。これに応答して、電力変換部11aが加熱コイル6に給電することで、加熱コイル6による固定部材FXの誘導加熱が開始される。
【0026】
この誘導加熱溶着装置2には、温度センサとして、非接触式の第1温度センサ7a(例えば、赤外線方式)と、この第1温度センサ7aの検出信号に基づいて、防水シートSHの表面温度を算出する温度測定回路70とが備えられている。第1温度センサ7a及び温度測定回路70は、加熱コイル6の励起による信号妨害をできるだけ受けないように、加熱コイル6からできるだけ離れた位置に配置する必要がある。このため、第1温度センサ7aと防水シートSHとの間に形成される赤外線通過路は長くなる。この赤外線通過路を確保するため、ハウジング20の下端部23に第1貫通孔23d(
図2参照)が設けられ、樹脂プレート64や押圧パッド5にも第2貫通孔51が設けられている。さらに加熱コイル6は、
図4に示されているように、内側コイル部と外側コイル部とに分けられ、内側コイル部の最外周の巻き線と外側コイル部の最内周の巻き線との間隔が広げられていることにより、内側コイル部と外側コイル部との間に、隙間SPが形成されている。この構造により、第1温度センサ7aの赤外線通過路が作り出される。
【0027】
さらに、この誘導加熱溶着装置2には、温度センサとして、接触式の第2温度センサ7bが押圧パッド5の表面に設けられている。第2温度センサ7bの検出信号に基づいて、温度測定回路70は、押圧パッド5の表面温度を算出する。もちろん、第2温度センサ7bも第1温度センサ7aと同様な非接触式の温度センサとして構成されてもよい。さらには、第1温度センサ7aが非接触式の温度センサでなく、接触式の温度センサで構成されてもよい。
【0028】
図3に示されているように、ハウジング20の下端部23に、スカートユニット8が備えられている。スカートユニット8の内周形状は、防水シートSHを含む固定部材FXの外周寸法にほぼ一致している。スカートユニット8の先端が防水シートSHで覆われた固定部材FXに嵌め合わされると、押圧パッド5の接当面50が固定部材FXの上方に適切に位置決めされる。この実施形態では接当面50及び固定部材FXの外形輪郭は実質的に同じサイズの円である。
【0029】
スカートユニット8は、スカート体81を有する。スカート体81は、接当面50の中心を通る鉛直線(中心軸CLに一致する)に沿って摺動可能なように下端部23の外周面に装着される円筒体である。下端部23とスカート体81との間にスカート体81を下方に付勢するバネ80が配置されている。スカート体81の下方移動は、係止ピン83により制限されている。スカート体81、押圧パッド5、加熱コイル6が中心軸CLに対して同軸配置されている。これにより、スカート体81の先端が防水シートSHを挟んで固定部材FXに嵌め合わされると、固定部材FXの中心と、スカート体81の中心、さらに押圧パッド5及び加熱コイル6中心が実質的に一致する。この時の誘導加熱溶着装置2姿勢が、固定部材FXを誘導加熱するための適切な位置である。
【0030】
図2に示されているように、下端部23の下収容室23aには、温度調整装置9が備えられている。温度調整装置9は、加熱コイル6による誘導加熱時に、押圧パッド5の接当面50の温度を調整する。このため、押圧パッド5の内部には、
図5で示すように、流体ジャケット95が形成されており、温度調整装置9は、
図6に示すように、流体ジャケット95に熱媒体を供給する熱媒体供給ユニット90を備えている。流体ジャケット95は、押圧パッド5の接当面50の温度を効率よく調整するため、熱媒体が接当面50に沿って一様に流れるように押圧パッド5に形成されている。その際、第1貫通孔23dと第2貫通孔51とによって、第1温度センサ7aの赤外線通過路が確保されている。流体ジャケット95は、押圧パッド5に設けられた流入口52と流出口53とを介して、押圧パッド5の外に延びて、熱交換ユニット91に接続している。温度調整装置9は、押圧パッド5を冷却する冷却モードと押圧パッド5を冷却する加熱モードとを有する。第2コネクターボックス19bの上面に温調スイッチ35が設けられており、この温調スイッチ35により、温度調整装置9の起動及び停止が可能である。
【0031】
熱交換ユニット91は、温調器92と熱交換器93とを備える。温調器92は熱交換器93を冷却または加熱するため、ペルチェ素子を有する。ペルチェ素子に代えて、冷却ファンやヒータを用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。熱交換器93は、流体ジャケット95と接続されており、ポンプ94により循環される熱媒体を加熱または冷却する。
【0032】
温調器92及びポンプ94の動作は、温度状態判定部71による判定結果に基づいて、温度制御部72によって制御される。この実施形態では、温度状態判定部71は、第2温度センサ7bの検出信号から温度測定回路70が算出する押圧パッド5の温度に基づいて、誘導加熱溶着のための温度状態を自動判定する。なお、温度制御部72は、第1温度センサ7aの検出信号から温度測定回路70が算出する防水シートSHの温度に基づいて、誘導加熱溶着のための温度状態を自動判定することも可能である。さらには、温度制御部72は、押圧パッド5の温度と防水シートSHの温度との両方に基づいて自動判定することも可能である。
【0033】
誘導加熱前では、押圧パッド5の温度は、環境温度にほぼ等しくなるので、環境温度が低い場合、予め押圧パッド5を温めておくことが好ましい。誘導加熱中は、誘導加熱される固定部材FXからの熱エネルギーが防水シートSHを介して押圧パッド5に伝達されるので、押圧パッド5の温度は、上昇する。したがって、押圧パッド5の温度が高過ぎるようになった場合には、冷却することが好ましい。誘導加熱の終了近く、及び誘導加熱の終了後では、押圧パッド5を用いて防水シートSHを押し付けるとともに、防水シートSHを冷却する必要があるので、この押圧パッド5を冷却することが好ましい。したがって、温度調整装置9による押圧パッド5の温度調整が、作業段階が誘導加熱前または誘導加熱中または誘導加熱後であるかによって、変更されることが好ましい。このため、作業段階に応じて、異なる温度状態の判定条件が温度状態判定部71に設定できるように構成されている。
【0034】
この実施形態では、温度状態判定部71が防水シートSHの加熱溶着に不適当な高温度状態を判定した場合、温度制御部72は、押圧パッド5の接当面50の温度を低下させるべく、温度調整装置9が冷却モードで動作するように、温調器92及びポンプ94を制御する。逆に、温度状態判定部71が防水シートSHの加熱溶着に不適当な低温度状態を判定した場合、温度制御部72は、押圧パッド5の接当面50の温度を上昇させるべく、温度調整装置9が加熱モードで動作するように、温調器92及びポンプ94を制御する。もちろん、適温状態と判定された場合には、温度調整装置9による押圧パッド5の温度調整が不要であるので、熱媒体供給ユニット90は停止される。
【0035】
なお、温度状態判定部71における判定条件となる、加熱溶着に不適当な高温度状態、または加熱溶着に不適当な低温度状態は、誘導加熱前、誘導加熱中、誘導加熱後によって、変えることができる。基本的には、誘導加熱前では、押圧パッド5の温度(結果的には接当面50の温度)は環境温度よりも高い方が好ましく、誘導加熱後では、接当面50の温度は環境温度よりも低い方が好ましい。したがって、誘導加熱前と誘導加熱後との判定条件は、これを満たすことが好ましい。誘導加熱中では、押圧パッド5は、加熱される固定部材FXにより温度上昇する防水シートSHから熱を受けるので、誘導加熱終了間際に、押圧パッド5の温度が防水シートSHより低い温度となるように、調整されることが好ましい。このことから、誘導加熱中の判定条件は、誘導加熱時間によって変化するような条件とするか、または防水シートSHと押圧パッド5との温度差によって変化するような条件とするとよい。
【0036】
温度調整装置9による押圧パッド5の接当面50の温度調整は、加熱コイル6による誘導加熱時に限定されるわけではなく、誘導加熱の前後にも行われる。冬場などの寒い環境下での誘導加熱溶着作業では、加熱コイル6による誘導加熱の前に、押圧パッド5を加熱し、押圧パッド5と接触している防水シートSHを温かくしておくことは誘導加熱時の温度上昇のスムーズな立ち上がりに貢献する。また、誘導加熱後に、冷たい押圧パッド5を用いて防水シートSHを固定部材FXに押し付けることで、ホットメルト接着層がスムーズに固まるので、冷却された押圧パッド5は固定部材FXと防水シートSHとの固着に貢献する。このため、加熱コイル6による誘導加熱開始前に、温度調整装置9が接当面50の温度を上昇させる加熱モードで動作し、加熱コイル6による誘導加熱の終了前に、及び誘導加熱の終了後に、温度調整装置9が接当面50の温度を低下させる冷却モードで動作することは、押圧パッド5に対する好適な温度調整制御の一例である。
【0037】
図7に示されているように、加熱溶着管理装置1には、加熱溶着管理装置1側における加熱溶着処理を制御する第1制御ユニット10aが備えられている。第1制御ユニット10aは、上述した、電源ユニット11、GNSSユニット12、データロガーユニット13、環境温度検出ユニット14、操作パネル15、表示パネル16と接続されている。
【0038】
誘導加熱溶着装置2には、誘導加熱溶着装置2側における加熱溶着処理を制御する第2制御ユニット10bが備えられている。第2制御ユニット10bは、上述した、加熱スイッチ34、位置ずれ算出部62、位置ずれ表示パネル66、温度測定回路70、温度調整装置9と接続されている。
【0039】
加熱溶着管理装置1から誘導加熱溶着装置2へは、誘導加熱用の電力が送られ、誘導加熱溶着装置2から加熱溶着管理装置1へは、誘導加熱データや各種信号が送られる。このような電力、データ、信号の入出力のために、加熱溶着管理装置1には第1コネクターボックス19aが設けられ、誘導加熱溶着装置2には第2コネクターボックス19bが設けられている。第1コネクターボックス19aは、第1制御ユニット10a及び電源ユニット11と接続しており、第2コネクターボックス19bは、第2制御ユニット10b及び加熱コイル6と接続している。第1コネクターボックス19aと第2コネクターボックス19bとの間は接続ケーブルCAで接続されている。
【0040】
固定部材FXに対する誘導加熱は、電源ユニット11の電力変換部11aで生成された電力が加熱コイル6に供給されることで行われる。電源ユニット11は、第1制御ユニット10aからの制御指令に基づいて、商用電源の交流電力を誘導加熱用電力に変換する。誘導加熱用電力仕様は、操作パネル15を通じて入力された、防水シートSHの厚さや環境温度検出ユニット14によって検出された環境温度などに基づいて算出される。
【0041】
誘導加熱用電力は、第1コネクターボックス19a、接続ケーブルCA、第2コネクターボックス19bを介して加熱コイル6に送られる。電源ユニット11は、加熱スイッチ34のON操作に応答して、誘導加熱用電力を加熱コイル6に供給するとともに、温度調整装置9にも必要電力を供給する。誘導加熱の停止タイミング、つまり加熱コイル6への給電停止タイミングは、予め設定されている加熱時間で決定されるが、その給電停止タイミングは温度測定回路70によって測定された防水シートSHの表面温度によって調整されてもよい。
【0042】
給電停止タイミングの決定を作業者に委ねる場合は、加熱スイッチ34がONからOFFに切り替わるタイミングが利用される。作業者が押圧キャップ31への力を抜いて、押圧キャップ31を第1位置へ戻しスライド変位させ、スイッチ作動体33と加熱スイッチ34のレバーとの接触が解除されることで、加熱スイッチ34はONからOFFに切り替わる。
【0043】
第2制御ユニット10bは、誘導加熱用電力の供給時間データ、加熱スイッチ34の状態を示すデータ、温度測定回路70の測定結果データなどを、データロガーユニット13に送る。第1制御ユニット10aは、GNSSユニット12からの測位データ、環境温度検出ユニット14による環境温度データ、電源ユニット11によって生成された誘導加熱用電力の仕様データなどを、データロガーユニット13に送る。第2制御ユニット10bでは、加熱コイル6の動作状態、温度測定回路70の測定結果、位置ずれ算出部62の算出データ、温度調整装置9の動作状態などが生成される。これらの生成データは、第1制御ユニット10aに送られ、データロガーユニット13に転送される。データロガーユニット13は、受け取ったデータを所定のフォーマットで、誘導加熱ポイント毎に測位データとともに格納する。
【0044】
次に
図8と
図9とを用いて、温度調整装置9を用いた押圧パッド5の温度調整処理と、加熱コイル6を用いた誘導加熱溶着処理とにおける制御の流れを簡素化して説明する。
【0045】
この処理がスタートすると、初期操作として、温度調整装置9の起動、防水シートSHの厚さ入力、などを行う(#01)。
【0046】
作業者は、誘導加熱溶着装置2を固定部材FXの真上となるように、防水シートSHの上に置き、さらに、位置ずれ表示パネル66に表示される位置ずれ判定結果を見ながら、加熱コイル6と固定部材FXとの位置ずれを微調整する(#02)。位置ずれ算出部62による判定結果が適正位置となるまで、微調整が繰り返される(#03)。加熱コイル6が固定部材FXに対して正確に位置決めされると(#03でYes分岐)、温調スイッチ35がON操作されることで、温度調整装置9が起動される(#04)。なお、温調スイッチ35を省略して、位置ずれ算出部62により適正位置と判定されると、温度調整装置9が起動されるように構成してもよい。さらには、位置ずれ算出部62により不適正位置と判定されると、温度調整装置9が停止するように構成してもよい。
【0047】
温度調整装置9が起動すると、温調処理が実行される(#05、#A)。
図9に示されているように、温調処理(#A)では、まず、作業段階が、誘導加熱前であるか、誘導加熱中であるか、誘導加熱後であるか、がチェックされる(#51)。作業段階が誘導加熱前であれば、温度状態判定部71で用いられる判定条件として、誘導加熱前判定条件が設定される(#52a)。作業段階が誘導加熱中であれば、温度状態判定部71で用いられる判定条件として、誘導加熱中判定条件が設定される(#52b)。作業段階が誘導加熱後であれば、温度状態判定部71で用いられる判定条件として、誘導加熱後判定条件が設定される(#52c)。
【0048】
判定条件が設定されると、第2温度センサ7bによって、押圧パッド5の表面温度が検出される(#53)。検出された押圧パッド5の表面温度から、温度状態判定部71により、温度状態がチェックされる(#54)。判定された温度状態が、高温状態であれば、温度制御部72が低温モードで熱媒体供給ユニット90を動作させる(#55a)。判定された温度状態が、低温状態であれば、温度制御部72が高温モードで熱媒体供給ユニット90を動作させる(#55b)。判定された温度状態が、適温状態であれば、温度制御部72が熱媒体供給ユニット90の動作を停止させる(#55c)。
【0049】
温調処理から戻ると、加熱スイッチ34がON操作され、誘導加熱が開始かどうか、チェックされる(#06)。誘導加熱が開始されていない場合(#06でNo分岐)、ステップ#5にジャンプして、温調処理#Aを実行する。誘導加熱が開始された場合(#06でYes分岐)、加熱コイル6への給電が開始され、固定部材FXに対する誘導加熱が行われる(#07)。さらに、誘導加熱中の温調処理が行われる(#08、#A)。
【0050】
温調処理から戻ると、加熱スイッチ34がOFF操作されたかどうか、チェックされる(#09)。加熱スイッチ34がOFF操作されていない場合(#09でNo分岐)、ステップ#07にジャンプして、誘導加熱が続行される。加熱スイッチ34がOFF操作された場合(#09でYes分岐)、加熱コイル6への給電が停止され、誘導加熱が終了する(#10)。さらに、誘導加熱後の温調処理が行われる(#11、#A)。
【0051】
温調処理から戻ると、温調スイッチ35がOFF操作されたかどうかチェックされる(#12)。温調スイッチ35がOFF操作されていない場合(#12でNo分岐)、誘導加熱後の温調処理が行われる(#A)。温調スイッチ35がOFF操作された場合(#12でYes分岐)、温度調整装置9が停止する(#13)。最後に、データロガーユニット13は、この加熱溶着場所の位置座標とともに、そこで行われた加熱溶着作業のデータ(作業環境温度、作業日時、加熱強度、加熱時間、誘導加熱溶着装置2と固定部材FXとの位置ずれ、防水シートSHの温度、温度調整装置9による温度調整処理データなど)を記録する(#14)。
【0052】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、温度調整装置9は、誘導加熱中において加熱モードと冷却モードとの2つの動作モードで動作するように構成されていたが、加熱モードだけで、または冷却モードだけで動作するように構成されてもよい。
【0053】
(2)上述した実施形態では、加熱スイッチ34のON操作で誘導加熱が開始され、加熱スイッチ34のOFF操作で誘導加熱が停止されている。これに代えて、誘導加熱の開始だけが、加熱スイッチ34のON操作で行われ、誘導加熱の停止をタイマーによる時間制御、または防水シートSHの温度と時間とによる熱エネルギー制御で自動停止させてもよい。加熱スイッチ34は、誘導加熱溶着装置2の外から指操作できるスイッチでもよい。
【0054】
(3)上述した実施形態では、温度調整装置9のON・OFF動作は、温調スイッチ35の操作によって行われるように構成されていたが、自動制御することも可能である。例えば、誘導加熱溶着装置2の固定部材FXに対する位置合わせが完了した時点で、温度調整装置9をON動作し、誘導加熱溶着装置2が固定部材FXから離れた時点(位置ずれ算出部62で検知可能)で、温度調整装置9をOFF動作してもよい。
【0055】
(4)上述した実施形態では、第2温度センサ7bによって検出された押圧パッド5の温度に基づいて判定される温度状態により、押圧パッド5に対する温度調整の制御が行われた。これに代えて、加熱コイル6による誘導加熱時間に依存して押圧パッド5、詳しくは接当面50の温度を調整する制御を採用してもよい。この場合、誘導加熱時間と熱媒体供給ユニット90に対する制御量とがテーブル化されて、温度制御部72に設定され、温度制御部72には、誘導加熱時間が入力される。
【0056】
(5)上述した実施形態では、加熱溶着状態を判定するために、第1温度センサ7aによる防水シートSHの表面温度の測定結果が用いられていたが、固定部材FXの温度を直接測定する温度センサ(固定部材FXからの放射光を検知する温度センサなど)による測定結果が用いられてもよい。
【0057】
(6)
図5で示された、押圧パッド5に設けられた流体ジャケット95の形状、つまり流入口52から流出口53まで熱媒体が流れる流路の形状は一例であり、蛇行状の流路や階層状の流路など種々の流路形状が採用可能である。押圧パッド5の温度調整に用いられる熱媒体としては、水や油などの液体、あるいは空気や二酸化炭素などの気体が用いられる。流体ジャケット95の形状は、熱媒体の種類、特に流れ特性に応じて適正に選択される。
【0058】
(7)上述した実施形態では、熱媒体供給ユニット90は、誘導加熱溶着装置2に組み込まれていたが、加熱溶着管理装置1に組み込まれてもよい。その場合、熱媒体供給ユニット90からの熱媒体は、接続ケーブルCAに纏められたホース(もちろん、接続ケーブルCAとは別体で接続されてもよい)を介して、押圧パッド5に供給される。また、熱媒体供給ユニット90は、加熱溶着管理装置1及び誘導加熱溶着装置2以外の別装置として、ホースを介して誘導加熱溶着装置2に接続される構成でもよい。さらに、加熱溶着管理装置1と誘導加熱溶着装置2とは、信号線によって接続されているので、温度状態判定部71や温度制御部72は、加熱溶着管理装置1に組み込まれてもよい。
【0059】
(8)押圧パッド5に対する温度調整を行う熱媒体供給ユニット90は、流体ジャケット95を用いる方法以外に、直接押圧パッド5に温風または冷却風を吹きかける方法を採用してもよい。
【0060】
(9)上述した実施形態では、作業者は、押圧キャップ31と上端部22との間に配置された押圧バネ30を介して、誘導加熱溶着装置2の底部である押圧パッド5を防水シートSHに押し付けていた。この構成は、一定圧力で防水シートSHを固定部材FXに押し付けるには好都合であるが、押圧力を大きくするには、大きなバネ係数を有する押圧バネ30が必要となる。このことから、押圧バネ30を省略し、押圧キャップ31と上端部22とを剛性構造とする構成を採用してもよい。その場合、誘導加熱溶着装置2の外からON/OFF操作される加熱スイッチ34が適している。
【0061】
(10)上述した実施形態では、誘導加熱溶着装置2は、加熱溶着管理装置1の電源ユニット11から接続ケーブルCAを介して、給電されたが、誘導加熱溶着装置2にバッテリを備えて、自己給電できる構成を採用してもよい。その際、加熱溶着管理装置1との間のデータ交換が無線通信で行われると、誘導加熱溶着装置2はコードレスとして構成できる。もちろん、GNSSユニット12やデータロガーユニット13なども、誘導加熱溶着装置2に組み込むと、誘導加熱溶着装置2は単独で、誘導加熱溶着作業を行うことができる。
【0062】
(11)上述した実施形態では、温度測定回路70は、誘導加熱溶着装置2に組み込まれていたが、これに代えて、温度測定回路70は、加熱溶着管理装置1に組み込まれてもよい。
【0063】
(12)
図10で示された別実施形態では、電力変換部11aが誘導加熱溶着装置2に組み込まれている。この実施形態では、電力変換部11aは、電源ユニット11から接続ケーブルCAを介して送られてくる電力を変換して、加熱コイル6に供給する。電力変換部11aは、その他の誘導加熱溶着装置2に組み込まれている機器に適正な電力を供給することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、押圧パッドを用いた誘導加熱溶着装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 :加熱溶着管理装置
2 :誘導加熱溶着装置
10a :第1制御ユニット
10b :第2制御ユニット
11 :電源ユニット
11a :電力変換部
12 :GNSSユニット
13 :データロガーユニット
14 :環境温度検出ユニット
15 :操作パネル
16 :表示パネル
35 :温調スイッチ
5 :押圧パッド
50 :接当面
52 :流入口
6 :加熱コイル
62 :位置ずれ算出部
63 :位置ずれ検出コイル
7a :第1温度センサ
7b :第2温度センサ
70 :温度測定回路
71 :温度状態判定部
72 :温度制御部
9 :温度調整装置
90 :熱媒体供給ユニット
91 :熱交換ユニット
92 :温調器
93 :熱交換器
94 :ポンプ
95 :流体ジャケット
FX :固定部材
SH :防水シート
SP :隙間