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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】非生物学的皮膚モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20240214BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240214BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G09B23/28
G01N33/15 Z
G09B9/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021536160
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019073194
(87)【国際公開番号】W WO2020043873
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】18306149.8
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521083588
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ル・アーヴル・ノルマンディー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE LE HAVRE NORMANDIE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】フロリーヌ・ウディエ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・グリセル
(72)【発明者】
【氏名】セリーヌ・ピカール
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ・サヴァリー
【審査官】佐々木 祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-022522(JP,A)
【文献】特開2009-062309(JP,A)
【文献】特開2001-174392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00 - 29/14
G01N 33/15
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質組成物で被覆された皮膚表面トポグラフィを再現するポリマー材料を含む非生物学的皮膚モデルであって、
該ポリマー材料は14~60mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する材料であり、
該脂質組成物は、脂質組成物の総重量に対して、14重量%~60重量%のトリグリセリド、2重量%~40重量%の遊離脂肪酸、4重量%~30重量%のワックスエステル、3重量%~20重量%のスクアレン、及び1重量%~10重量%のコレステロールを含み、
かつ、ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度は500μg/cm~2500μg/cmである、
非生物学的皮膚モデル
【請求項2】
24mJ/m~45mJ/m 表面自由エネルギー(γ)を有する、請求項1に記載の非生物学的皮膚モデル。
【請求項3】
0.0~-2.5の歪度係数を有する、請求項1又は2に記載の非生物学的皮膚モデル。
【請求項4】
脂質は結晶化されていない、請求項1~3のいずれかに記載の非生物学的皮膚モデル。
【請求項5】
以下のステップ:
a)皮膚のネガティブレリーフを備えたスキンプリントを調製するステップ;
b)14~60mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する材料であるポリマー材料を用いて、スキンプリントを成形し直すステップ;
c)硬化ステップ;
d)14%~60%のトリグリセリド、2%~40%の遊離脂肪酸、4%~30%のワックスエステル、3%~20%のスクアレン、及び1%~10%のコレステロールを含み、溶媒不含である脂質組成物を調製するステップ;及び
f)液状の脂質組成物をポリマー材料上に塗布するステッ
含む、非生物学的皮膚モデルの調製方法。
【請求項6】
脂質組成物を調製するステップd)は、脂質を溶媒中に溶解させるステップd1)及び全ての溶媒を蒸発させるステップd2)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップe):
e)脂質組成物を完全に液状化するまで加熱するステップ
を、前記ステップd)とステップf)の間に行う、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ステップg):
g)均質化のために加熱するステップ
を、前記ステップf)の後に行う、請求項5~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ステップe):
e)脂質組成物を完全に液状化するまで加熱するステップ
を、前記ステップd)とステップf)の間に行い、
ステップg):
g)均質化のために加熱するステップ
を、前記ステップf)の後に行い、
ここで、ステップe)及びg)の加熱温度は、互いに独立に、少なくとも25℃である、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
ステップe):
e)脂質組成物を完全に液状化するまで加熱するステップ
を、前記ステップd)とステップf)の間に行い、
ステップf)の前に、ポリマー材料をステップe)における脂質組成物と同じ温度にする、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ポリマー材料上に液状の脂質組成物を塗布するステップf)は、ハケ塗り、スピンコーティング又はディップコーティングによって行われる、請求項5~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度は500μg/cm~2500μg/cmである、請求項5~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
得られる非生物学的皮膚モデルは、24mJ/m~45mJ/m 表面自由エネルギー(γ)を有する、請求項5~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
得られる非生物学的皮膚モデルは、0.0~-2.5の歪度係数を有する、請求項5~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
化粧品性能を評価するための、又は、皮膚表面特性における汚染の効果を評価するための、請求項1~4のいずれかに記載の非生物学的皮膚モデル。
【請求項16】
皮膚の物理化学を評価するための、又は、皮膚の表面自由エネルギー(γ)への脂質組成物又は皮膚トポグラフィの影響を評価するための、請求項1~4のいずれかに記載の非生物学的皮膚モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面特性を模倣する非生物学的皮膚モデル及びその調製方法に関する。特に、本発明は、皮膚表面自由エネルギーを再現するために、脂質組成物で被覆された皮膚表面トポグラフィを再現するポリマー材料を含む非生物学的皮膚モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、最も広範にわたり最も重い人間の器官である。皮膚は、我々の全身の基本的な保護の役割を果たしている。その最も重要な機能の1つは、外部化合物や微生物の人体への侵入を制御すること、及び、過剰な水分損失を制限することである。かかる皮膚バリア特性は主に角質層に関係しており、その外層は、角質層「セメント」として作用する角質細胞間脂質のおかげで互いにくっつき合っている、死んだ細胞である角質層からなる。この外層の死んだ層は、外部環境及び皮膚表面に適用されるあらゆる製品と直接接触する。角質細胞及び角質細胞間脂質完全性の両方が、皮膚バリア機能の有効性、及び皮膚とその環境との間の相互作用を調整する。
【0003】
したがって、皮膚表面特性の研究は、角質細胞及び脂質の役割をより理解するに非常に興味深く、脂質は浸透現象又は侵入現象における役割を有する。これらの現象は、受動拡散及び皮膚と外部化合物との接触領域に関連しており、これらはいずれも皮膚物理化学に関連する。この重要な特性は、皮膚がその外部環境とどのように相互作用するか、及び、局所的に適用された化合物又は製品が皮膚とどのように相互作用するかを説明する。
【0004】
表面自由エネルギーの決定にVan Ossアプローチを用いて、以前のインビボ研究は、皮膚の物理化学が、皮脂脂質がその表面に存在することによって大きく影響されることを示した:皮脂が少ない前腕皮膚は、弱い単極性の塩基性(疎水性)表面のように作用するのに対し、皮脂が多い額の皮膚は、強い単極性の塩基性(親水性)表面のように作用する。これらの観察結果は、脂質量及び組成の両方によって説明され、皮脂は両親媒性脂質、特に遊離脂肪酸が豊富であり、これが、皮脂が多い皮膚の単極性の塩基性挙動を増加させる[1、2]。
【0005】
UV照射、都市汚染物質、新しい化粧品又は医薬品などのその毒性データが得られない有害な要因の皮膚物理化学への影響を研究する際、原料の潜在毒性及び規制のために、インビボ測定は実施不可能である。さらに、表面自由エネルギー測定は、皮膚と接触した際に有害なジヨードメタンなどの有害化合物の使用を必要とする。したがって、皮膚モデルを開発し、使用する必要がある。
【0006】
豚皮膚及びラットの皮膚などの動物モデルが入手可能である。これらはヒトの皮膚との類似性を示すが、とりわけその物理化学性に影響し得る脂質組成物に関して、違いも示す[3]。さらに、化粧品研究の枠組みにおいて、倫理的及び法的問題が提起されている:欧州連合は全ての動物試験製品を2013年以降禁止している。
【0007】
化粧品研究のための動物の使用を減らすために、いくつかの代替皮膚モデルが開発された。再構築されたヒトの皮膚及びヒトの皮膚の外植片は、その挙動、構造、及び組成がインビボの皮膚に類似しているため、最も強力なモデルである。しかし、これらの2つのモデルは非常に高価であり、使用に際して厳しい条件を必要とし、限られた寿命を示す。したがって、皮膚表面特性を模倣し、摩擦及び機械特性又は接着特性を研究するに、単純な非生物学的表面が好ましくは使用され得る[4-7]。したがって、皮膚表面特性(pH、イオン強度、物理化学)を模倣するために特別に開発された例えばVitroskin(登録商標)などの非生物学的皮膚モデルが市販されている。これらの市販製品の主な欠点は、その組成が不明であり、変更できないままであることであり、したがって、これらは「ブラックボックス」であるとみなされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、新規な、非常に単純で、信頼性があり、安価で取り扱いが容易な、インビボのヒトの皮膚と同等の特性を有する、合成表面を提供することに対する要求が存在する。特に、皮膚表面特性、化学的組成及びトポグラフィを模倣し、したがって、その物理化学性を模倣する、制御された、調整可能な組成の非生物学的皮膚モデル(non-biological skin model、NBSM)を提供することに対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の要求を満たす。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、500μg/cm~2500μg/cmのポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度で、特定の制御された脂質組成物で被覆された、皮膚表面トポグラフィを再現するポリマー材料を含む非生物学的皮膚モデルが、皮膚表面特性、化学的組成及びトポグラフィを模倣するのに適当であり、したがって、その物理化学性を模倣するに適当であることを見出した。
【0011】
既存のモデルと比較した場合、本発明の非生物学的皮膚モデル(NBSM)は、実際のヒトの皮膚トポグラフィを再現するという利点を有する。現在のNBSM技術は、さらに完全に多用途であり、その物理化学並びに化粧品相互作用及び皮膚への拡散挙動への皮膚のマイクロレリーフの影響についての理解を深める方法として、高い可能性を示す。
【0012】
したがって、本発明の主題は、脂質組成物で被覆された皮膚表面トポグラフィを再現するポリマー材料を含む非生物学的皮膚モデル(NBSM)であり、ここで、該ポリマー材料は14~60mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する材料であり、ここで、該脂質組成物は14%~60%のトリグリセリド、2%~40%の遊離脂肪酸、4%~30%のワックスエステル、3%~20%のスクアレン、及び1%~10%のコレステロールを含み;ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度は、500μg/cm~2500μg/cmである。
【0013】
本発明の第2の主題は、以下のステップを含む、非生物学的皮膚モデルの製造方法である:
a)皮膚のネガティブレリーフを備えたスキンプリントを調製するステップ;
b)14~60mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する材料であるポリマー材料を用いて、スキンプリントを成形し直す(molding back)ステップ;
c)硬化ステップ;
d)14%~60%のトリグリセリド、2%~40%の遊離脂肪酸、4%~30%のワックスエステル、3%~20%のスクアレン、及び1%~10%のコレステロールを含み、溶媒不含である脂質組成物を調製するステップ;
e)任意に、脂質組成物を完全に液状化するまで加熱するステップ、
f)液状の脂質組成物をポリマー材料上に塗布するステップ;
g)任意に、均質化のために加熱するステップ;及び
h)任意に、過剰の脂質組成物を拭き取り、均質化のために再度加熱するステップ。
【0014】
本発明の第3の主題は、化粧品性能を評価するための、又は、皮膚表面特性における汚染の効果を評価するための、本発明の非生物学的皮膚モデルの使用である。
【0015】
本発明の第4の主題は、皮膚の物理化学を評価するための、又は、皮膚の表面自由エネルギー(γ)への脂質組成物又は皮膚トポグラフィの影響を評価するための、本発明の非生物学的皮膚モデルの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、固体表面上の液滴によって形成される接触角θを表す。
図2図2は、NBSMの概念を表す:人工脂質組成物で被覆されたシリコーンで作られた人工皮膚。
図3図3は、皮膚表面トポグラフィを模倣するポリマー支持体の調製を表すスキームである。
図4図4は、シリコーン支持体(図4A)、プロトコル1を用いて堆積された脂質薄層(図4B)、及び本発明のプロトコル2を用いて堆積された脂質薄層(図4C)の顕微鏡画像を表す(倍率×50、透過、非偏光NPL及び偏光PL)。
図5図5は、本発明のプロトコル2を用いる皮脂コーティングの前/後に記録された赤外スペクトルを表す。
図6図6は、比較例VS及び本発明のNBSMについて、インビボで記録された赤外スペクトルを表す。
図7図7は、本発明のNBSM(図7A)及び比較例VS(図7B)の3D顕微鏡画像(倍率×300)を表す。
図8図8は、本発明のNBSM(図8A)及び比較例VS(図8B)の粗さ特性を表す。
図9図9は、異なる表面(それぞれ、シリコーン表面、人工皮脂、プロトコル1を用いて調製したNBSM、本発明のプロトコル2を用いて調製したNBSM及びヒトの生きている皮膚の外植片)について測定した表面自由エネルギーパラメータを表す。
図10図10は、本発明のNBSM(濃い灰色)、比較例VS(明るい灰色)、及びインビボ(黒)上の、AO、IHD、PDC、及びCPSについて測定した接触角値を表す。
図11図11は、製品塗布の1分後(図11A)及び3分後(図11B)に測定した水接触角を表す。3つの表面が比較される:インビボ皮膚(濃い)、本発明のNBSM(濃い灰色)及び比較例VS(明るい灰色)。
図12図12は、NBSM上にNCを塗布前及び塗布から3分後の、本発明のNBSM上で記録されたIRスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本発明において使用される用語「非生物学的皮膚モデル」は、皮膚表面トポグラフィ、化学、物理化学の側面を再現する、健康な又はダメージを受けた皮膚を表す、非生物学的実験システムを表す。
【0018】
本発明において使用される用語「皮膚表面トポグラフィ」は、皮膚の線及び/又は溝の深さ、密度、及び配置を表す。
【0019】
本発明において使用される用語「ポリマー材料」は、皮膚表面トポグラフィを再現する材料を表し、コーティング層が安定に取り付けられていてよく、除去可能であり得る材料を表す。本明細書において、用語「ポリマー材料」、「ポリマー支持体」及び「基材」は、同義語として使用される。
【0020】
本発明において使用される用語「脂質組成物」は、皮膚表面脂質組成物を模倣する組成物を表す。該組成物は、皮脂及び表皮脂質の組成に化学的に近く、すなわち、該脂質組成物は、適当な種類の脂質をヒトでの値に合うレベルで含む。本明細書において、用語「脂質組成物」、「人口皮膚脂質」、「コーティング層」、「脂質コーティング」、「皮膚脂質層」は、同義語として使用される。本発明の態様の全てにおいて、脂質組成物中の材料の全てのパーセントは、そうでないことが特記されない限り、脂質組成物の総重量に対する重量パーセントによって表現される。
【0021】
本発明において使用される用語「皮膚のネガティブレリーフを備えたスキンプリント」は、対象のケラチン性組織又は身体部分に適当な材料を置き、該組織から該材料を取り除くことによって作られるモールドを表す。得られる、ネガティブレリーフを有するスキンプリントは、「ネガティブモールド」とも称され、ケラチン性組織又は身体部分の跡を含有するため、ポジティブモールドを作るのに使用することができる。
【0022】
本発明において使用される用語「表面自由エネルギー」は、材料の物理化学特性を表す。これは、単相表面のサイズを単位面積で増やすために必要なエネルギーに対応する。微視的スケールから、これは、ファンデルワールス力又は水素結合などの、材料完全性に関係する力を特徴づける。巨視的スケールから、表面自由エネルギーは表面の濡れ性に関係する。表面自由エネルギーは、液滴法を用いる、当業者に既知のいくつかの方法(例えば接触角計算)によって測定することができる。本発明において用いられる方法は、特に実施例2.Cに記載されている。
【0023】
本発明において使用される用語「表面濃度」は、単位面積当たりのポリマー材料表面上に被覆された脂質の量を表す。表面濃度は当業者に既知のいくつかの方法によって測定することができ、例えば脂質コーティング前後のポリマー材料の計量によって、又は、sebumeter(登録商標)を用いて、測定することができる。
【0024】
本発明において使用される用語「歪度係数」又は「Ssk」は、表面形態を説明するパラメータを表す:正のSsk値は、平均高さよりも上に突出するピーク及び隆起を示す表面に対応し、一方、負のSsk値は、深い傷及び毛穴を有するトレイ表面に対応する。歪度係数は当業者に既知のいくつかの方法で測定することができ、例えばISO 25178基準による表面の3D画像から、Mountains Map(登録商標)ソフトウェア(Digital Surf SARL、ブザンソン、フランス)を用いて測定することができる。
【0025】
本発明において使用される用語「接触角」は、固体表面上に一度堆積された液滴によって形成される角度θを表す(図1)。接触角は、例えばゴニオメーター及び液滴法を用いることによって測定することができる。
【0026】
本発明において使用される用語「粘弾性材料」は、その機械的特性が、変形を受けた際に、一方では弾性成分を有し、他方では粘性成分を有する材料を表す。純粋な弾性材料は応力下で変形し、その後、応力が停止されるとその元の形状に戻る。純粋な粘性材料は、応力に対して直線的に変形し、応力が停止されても元の形状に戻らない。したがって、粘弾性材料は、これらの2つの機械的特性の中間の挙動を有する。
【0027】
用語「結晶化されていない脂質」は、脂質コーティングの幾何学的形状結晶が、偏光顕微鏡画像において測定して、10μm未満、好ましくは5μm未満の寸法を有することを意味する。
【0028】
詳細な説明
本発明の第1の主題は、脂質組成物で被覆された、皮膚表面トポグラフィを再現するポリマー材料を含む、非生物学的皮膚モデル(NBSM)であり、ここで、該ポリマー材料は、14~60mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する物質であり;該脂質組成物は、14%~60%のトリグリセリド、2%~40%の遊離脂肪酸、4%~30%のワックスエステル、3%~20%のスクアレン、及び1%~10%のコレステロールを含み、ここで、ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度は500μg/cm~2500μg/cmである。
【0029】
したがって、本発明の非生物学的皮膚モデル(NBSM)は、一緒に組み合せられた2つの別個の部分を含み(図2参照):第1部分は皮膚表面トポグラフィを再現するポリマー材料であり、第2部分は皮膚の脂質組成物を模倣する人工皮膚脂質混合物である。有利には、ポリマー材料の少なくとも1つの表面が脂質組成物で被覆されている。
【0030】
したがって、本発明の非生物学的皮膚モデルにおいて、ポリマー材料は基材として有利に作用する。ポリマー材料は、製品の塗布に適した、及び、物質及び/又はその脂質コーティングの解析に適した、任意の形状又は形態であってよい。例えば該ポリマー材料は、2つの実質的に平面である平行な表面を有し、かつ、実質的に均一な厚さを有するシートの形態であってよい。有利には、ポリマー材料の厚さは約1mm~約1cmである。有利には、該ポリマー材料は、身体部分、例えば腕、脚、手、足、指、つま先、上半身、下半身等の形態であり得る。
【0031】
本発明に関して、ポリマー材料は14~60mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する材料である。このようなポリマー材料は、皮膚の粗さ特性又は皮膚の表面エネルギーなどの皮膚表面トポグラフィ及び皮膚表面特性をよりよく再現することを可能にする。本発明で使用されるポリマー材料は特に粘弾性ポリマー材料である。有利には、本発明で使用されるポリマー材料は、以下を含む又は以下からなる材料の群から選択される:ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリサッカリド、プロテイン、シリコーン又はそれらの混合物。より有利には、本発明で使用されるポリマー材料は、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン又はそれらの混合物を含む又はからなる材料の群から選択される。特に、ポリマー材料は、14~60mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有するシリコーン材料である。例えば、本発明で使用されるポリマー材料は、シリコーンDragonSkin(登録商標)20などの市販のシリコーンゴムであってよい。
【0032】
ポリマー材料は当業者に既知の方法によって、例えば中に材料を注ぎ硬化させる皮膚のネガティブレリーフを備えたスキンプリントを用いて、形成することができる。これに関して、スキンプリントは有利には生体適合性のシリコンスキンプリント、例えば生体適合性のシリコンBody Double(登録商標)又はSilflo(登録商標)、アルギン酸スキンプリント、又は石膏スキンプリントである。より有利には、スキンプリントは、生体適合性のシリコンBody Double(登録商標)又はSilflo(登録商標)などの生体適合性のシリコンスキンプリントである。
【0033】
本発明によれば、脂質組成物は皮膚表面脂質組成物を模倣する。脂質組成物は、14%~60%のトリグリセリド、2%~40%の遊離脂肪酸、4%~30%のワックスエステル、3%~20%のスクアレン、及び1%~10%のコレステロールを含む。
【0034】
有利には、該脂質組成物は14重量%~60重量%、より有利には25重量%~40重量%、より有利には28重量%~35重量%、特に32重量%の含量でトリグリセリドを含む。
【0035】
有利には、該脂質組成物は2重量%~40重量%、より有利には20重量%~35重量%、より有利には25重量%~30重量%、特に28重量%の含量で遊離脂肪酸を含む。
【0036】
有利には、該脂質組成物は4重量%~30重量%、より有利には15重量%~26重量%、より有利には20重量%~26重量%、特に25重量%の含量でワックスエステルを含む。
【0037】
有利には、該脂質組成物は3重量%~20重量%、より有利には5重量%~15重量%、より有利には8重量%~20重量%、特に10重量%の含量でスクアレンを含む。
【0038】
有利には、該脂質組成物は1重量%~10重量%、より有利には1重量%~6重量%、より有利には2重量%~6重量%、特に4重量%の含量でコレステロールを含む。
【0039】
有利には、該脂質組成物は、0重量%~9.5重量%、より有利には1重量%~9.5重量%、より有利には1~5重量%、より有利には1~重量%、特に2重量%の含量でオレイン酸コレステリルも含む。
【0040】
有利には、該脂質組成物は、0%~2%、より有利には0%~1.8%、特に0~1.5%の含量でコレステロール硫酸も含む。
【0041】
有利には、該脂質組成物は、0%~9%、より有利には0%~7%、特に0~6%の含量で直鎖状アルカンも含む。
【0042】
有利には、該脂質組成物は、0%~20%、より有利には0%~19%、特に0~18%の含量でスフィンゴ脂質も含む。
【0043】
該脂質組成物は有利には、組成物の安定性を確保するために、脂質組成物の総重量に対して有利には0重量%~1重量%の含量、より有利には0.01重量%~1重量%の含量で、ビタミンEを含む。
【0044】
したがって、本発明の脂質組成物は、生理学的に適切な割合、すなわち人に合った中央値で脂質を含み、飽和及びモノ不飽和ワックスエステル、トリグリセリド及び遊離脂肪酸成分の両方を含有し、コレステロール及び有利にはコレステロールエステル成分及びビタミンEを包含する。
【0045】
脂質組成物の利点は、脂質の含量を適応させることによって、皮膚の異なるタイプ(ノーマル肌、乾燥肌、オイリー肌、混合肌・・・)又は体領域に適応できることである。脂質組成物は、アトピー性皮膚炎又は乾燥肌の症状などの皮膚脂質の変化に関連する皮膚障害を模倣するように調整することもできる。
【0046】
有利には、脂質組成物は、脂質組成物の総重量に対して25重量%~40重量%のトリグリセリド、20重量%~35重量%の遊離脂肪酸、15重量%~26重量%のワックスエステル、5重量%~15重量%のスクアレン、1重量%~6重量%のコレステロール、1重量%~5重量%のオレイン酸コレステリル、0.01~1重量%のビタミンE、0重量%~1.8重量%のコレステロール硫酸、0重量%~7重量%の直鎖状アルカン、及び0重量%~19重量%のスフィンゴ脂質を含む。
【0047】
より有利には、脂質組成物は、脂質組成物の総重量に対して28重量%~35重量%のトリグリセリド、25重量%~30重量%の遊離脂肪酸、20重量%~26重量%のワックスエステル、8重量%~12重量%のスクアレン、2重量%~6重量%のコレステロール、及び1重量%~3重量%のオレイン酸コレステリル、0.01~1重量%のビタミンE、0重量%~1.5重量%のコレステロール硫酸、0重量%~6重量%の直鎖状アルカン、及び0重量%~18重量%のスフィンゴ脂質を含む。
【0048】
さらにより有利には、脂質組成物は、脂質組成物の総重量に対して32重量%のトリグリセリド、28重量%の遊離脂肪酸、25重量%のワックスエステル、10重量%のスクアレン、4重量%のコレステロール、及び2重量%のオレイン酸コレステリル、0.01のビタミンE、0重量%のコレステロール硫酸、0重量%の直鎖状アルカン、及び0重量%のスフィンゴ脂質を含む。
【0049】
有利には、ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度は、800μg/cm~1800μg/cmである。ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度が2500μg/cm より大きい、又は、500μg/cmより小さい場合、非生物学的皮膚モデルは、ヒトの生きている皮膚外植片で算出される表面自由エネルギー(これは約28.4±2.8mJ/mである)によく一致しない表面自由エネルギーを有するであろう。
【0050】
有利には、本発明の非生物学的皮膚モデルは、24mJ/m~45mJ/m、より有利には26mJ/m~33mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する。
【0051】
有利には、ポリマー材料を被覆する脂質組成物は結晶化されていない脂質から構成される。「結晶化されていない」とは、脂質コーティングの幾何学的形状結晶が偏光顕微鏡画像で測定して10μm未満、好ましくは5μm未満の寸法を有することを意味する。したがって、本発明の非生物学的皮膚モデルは、その全表面にわたり、見かけ上均一な脂質コーティングを示す(図4C参照)。
【0052】
本発明に関して、脂質組成物の表面濃度及び非結晶化脂質コーティングは、特にポリマー材料上での脂質組成物の特定の被覆方法のおかげで得られうる。かかる特定の被覆方法を以下に記載する。
【0053】
さらに、ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度及び均一な脂質コーティングにより、既存の非生物学的皮膚モデルよりもはるかに正確に皮膚レリーフを模倣する、非生物学的皮膚モデルを得ることができる。NBSMの表面レリーフは、その粗さ特性及び特に歪度係数を分析することにより決定され得る。
【0054】
粗さパラメータは表1に挙げられており、Mountains Map(登録商標)ソフトウェア(Digital Surf SARL、ブザンソン、フランス)を用いて、ISO 25178基準に従い、表面の3D画像から測定してよい。計算は、倍率x300倍のVH- Z100Rレンズを備えたKeyence Microscope VHX-1000(Keyence Corporation TSE、大阪、日本)を用いて得た3D画像において行った。3D画像は伝送モードで記録され、1600×1200ピクセルサイズが得られるように組み立てられた。
【0055】
【表1】
【0056】
有利には、本発明の非生物学的皮膚モデルは0.0~-2.5、より有利には-0.2~-1.70、さらにより有利には-0.5~-0.9の歪度係数を有する。これらの値は、インビボの文献データ[8]とよく一致する。
【0057】
有利には、本発明の非生物学的皮膚モデルは、10μm~80μm、より有利には15μm~50μm、より有利には17~25μmの算術平均高さ(Sa)を有する。これらの値は、インビボの文献データ[5、9]とよく一致する。
【0058】
有利には、本発明の非生物学的皮膚モデルは、75μm~2000μm、より有利には100μm~300μm、より有利には120~175μmの最大高さ(Sz)を有する。これらの値も、インビボの文献データ[5、9]とよく一致する。
【0059】
さらに、本発明の非生物学的皮膚モデルは、4.0~7.0、より有利には4.2~6.8、より有利には4.8~5.9の表面pHを有する。これらの値は、4.2~6.8であるインビボの文献データ[10]とよく一致する。このpH値は、Skin-pH-Meter(登録商標)(Courage + Khazaka Electronic GmbH、ケルン、ドイツ)を用いて、周囲温度(すなわち18℃~25℃)及び50%湿度で測定した。
【0060】
本発明の第2の主題は、以下のステップを含む、非生物学的皮膚モデルの調製方法である:
a)皮膚のネガティブレリーフを備えたスキンプリントを調製するステップ;
b)14~60mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する材料であるポリマー材料を用いて、スキンプリントを成形し直すステップ;
c)硬化ステップ;
d)14%~60%のトリグリセリド、2%~40%の遊離脂肪酸、4%~30%のワックスエステル、3%~20%のスクアレン、及び1%~10%のコレステロールを含み、溶媒不含である脂質組成物を調製するステップ;
e)任意に、脂質組成物を完全に液状化するまで加熱するステップ、
f)液状の脂質組成物をポリマー材料上に塗布するステップ;
g)任意に、均質化のために加熱するステップ;及び
h)任意に、過剰の脂質組成物を拭き取り、均質化のために再度加熱するステップ。
【0061】
本発明の方法において、皮膚のネガティブレリーフを備えたスキンプリント、ポリマー材料及び脂質組成物は、本記載において上記に定義した通りである。
【0062】
本発明の方法のステップa)及びb)は、当業者に既知の方法によって、例えば中に材料を注ぎ硬化させる皮膚のネガティブレリーフを備えたスキンプリントを用いて、容易に実施可能なステップである。これに関して、該スキンプリントは、生体適合性のシリコンBody Double(登録商標)などの生体適合性のシリコンスキンプリントである。
【0063】
ステップc)も当業者に既知の方法によって容易に行うことが可能なステップである。特に、当業者は、期待される物理的及び機械的特性を有するポリマー材料を得るために硬化の時間及び条件をどのように調整するかを知っているであろう。例えばシリコーンDragonSkin(登録商標)20をポリマー材料として使用する際、硬化は周囲温度(すなわち18℃~25℃)で少なくとも4時間続く。
【0064】
本発明の方法の特別性は、ステップd)~g)及び任意にd)~h)にある。実際に、本発明の方法の特別性は、コーティング中にポリマー材料上に塗布される脂質組成物が溶媒不含であることである。対照的に、当技術分野において既知のコーティング方法においては、脂質組成物は溶媒に溶解した脂質を含み、該溶媒がコーティング後に蒸発する。かかる方法は、結晶化された脂質コーティングをもたらし、皮膚表面特性と合致しない表面特性をもたらす。
【0065】
本発明に関して、脂質組成物を調製するステップd)は、有利には、脂質を溶媒中に溶解させるステップd1)及び全ての溶媒を蒸発させるステップd2)を含む。
【0066】
有利には、ステップd1)において、脂質が溶媒中に溶解し、1~20g/L、より有利には5~15g/Lの脂質の濃度に達する。
【0067】
有利には、ステップd1)において、溶媒は、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、アセトン、ジメチルスルホキシド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。有利には、該溶媒はクロロホルム及びメタノールの混合物であり、特に2:1の割合の混合物である。
【0068】
溶媒不含の脂質組成物が準備できたら、該組成物は周囲温度で既に液状であるか、又は、該組成物を完全に液化するまで加熱する(ステップe))かのいずれかである。このステップは、ポリマー材料上に 液状脂質組成物の均質なコーティングを可能にするために重要である。有利には、ステップe)の加熱温度は、少なくとも25℃、有利には65℃~200℃、より有利には65℃~100℃である。加熱温度は液状組成物を得るに十分高くあるべきであるが、脂質の分解を避けるためには高すぎてはいけない。
【0069】
有利には、コーティングステップf)の前に、ポリマー材料をステップe)における脂質組成物と同じ温度にする。このようなステップにより、コーティング中の温度差を回避することができるため、より均質なコーティングを得ることができる。
【0070】
本発明の方法は次いで、液状脂質組成物をポリマー材料上に塗布するステップを含む。有利には、このステップは、ハケ塗り、スピンコーティング又はディップコーティングによって、有利にはハケ塗り又はスピンコーティングによって行ってよい。
【0071】
コーティングステップの後、得られた被覆されたポリマー材料を、有利には少なくとも25℃で、有利には65℃~200℃で、より有利には65℃~100℃で、均質化のために場合により加熱する(ステップg))。有利には、ステップg)はステップe)で用いた温度と同じ温度で行われる。
【0072】
本発明の方法において、加熱の全てのステップは、当業者に既知の手段によって、例えば該材料をオーブン中に置くことによって、行うことができる。例えばホットプレート、ウォーターバス又はペルチェ素子などの他の加熱手段を用いることもできる。
【0073】
有利には、本発明の方法は、500μg/cm~2500μg/cm、より有利には800μg/cm~1800μg/cmのポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度を得ることができる。
【0074】
このような表面濃度を得るために、本発明の方法は過剰の脂質組成物拭き取るステップh)を任意に含む。有利には、過剰の脂質組成物拭き取るステップは吸収によって行われる。このステップの後で、得られた被覆されたポリマー材料は、少なくとも25℃の温度で、有利には65℃~200℃で、より有利には65℃~100℃で、より有利にはステップe)及びg)で用いた温度と同じ温度で、均質化のために任意に加熱される。
【0075】
有利には、このようにして得た非生物学的皮膚モデルを次いで周囲温度(すなわち18~25℃)まで冷却する。
【0076】
したがって、本発明の方法は、ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度の制御を可能にし、そのため、得られる非生物学的皮膚モデルの表面特性の制御を可能にする。
【0077】
有利には、本発明の方法により得られうる非生物学的皮膚モデルは、24mJ/m~45mJ/m、より有利には26mJ/m~33mJ/mの表面自由エネルギー(γ)を有する。
【0078】
有利には、本発明の方法は、結晶化されていない脂質からなる脂質コーティングを得ることを可能にする。そのため、本発明の方法は、その表面全体にわたって見かけ上均質な脂質コーティングを示す本発明の非生物学的皮膚モデル得ることを可能にする(図4C参照)。
【0079】
有利には、本発明の非生物学的皮膚モデルは0.0~-2.5、より有利には-0.2~-1.70、さらにより有利には-0.5~-0.9の歪度係数を有する。これらの値は、インビボの文献データ[8]とよく一致する。
【0080】
有利には、本発明の非生物学的皮膚モデルは、10μm~80μm、より有利には15μm~50μm、より有利には17~25μmの算術平均高さ(Sa)を有する。これらの値はインビボの文献データ[5、9]とよく一致する。
【0081】
有利には、本発明の非生物学的皮膚モデルは、75μm~2000μm、より有利には100μm~300μm、より有利には120~175μmの最大高さ(Sz)を有する。これらの値もインビボの文献データ[5、9]とよく一致する。さらに、本発明の非生物学的皮膚モデルは、4.0~7.0、より有利には4.2~6.8、より有利には4.8~5.9の表面pHを有する。これらの値は、4.2~6.8であるインビボの文献データ[10]とよく一致する。
【0082】
したがって、本発明の別の主題は、本発明の方法によって得ることができ、有利には上記に述べた特性/特徴を有する、非生物学的皮膚モデルである。
【0083】
以下において、用語「本発明の非生物学的皮膚モデル(NBSM)」は、上記に述べた本発明のNBSM及び上記に述べた本発明の方法により得られるNBSMを包含する。
【0084】
本発明者は、本発明のNBSMが、局所的塗布後に皮膚に存在する残留フィルムを特徴付けるための潜在的な使用を提供することも見出した。物理化学的研究は、化粧品原料及びエマルションとの接触におけるインビボの皮膚とNBSM挙動の類似性を強調する。これは、原料又はゲル又はエマルションなどの製品を塗布後の残留化粧品フィルムの知見を深めるのに非常に興味深くあり得る。これは感覚の特性評価のためだけでなく、有効性評価のためにも重要な領域である。
【0085】
本発明のNBSMはまた、新規の化粧品の皮膚表面での有効性を研究するだけでなく、より基礎的な研究のためにも非常に興味深い。脂質組成物は、アトピー性皮膚炎又は乾燥肌の症状などの皮膚脂質の変化に関連する皮膚障害を模倣するように調整することができる。これは、これらの皮膚障害及びその物理化学的結果を特徴づけるための新規な方法を明らかに構成し得る。
【0086】
本発明のNBSMはまた、UV照射、オゾン又は都市汚染物質などの多くの外部要因の皮膚表面物理化学への影響を研究するため、及び、粒子又は微生物の付着を理解するためにも使用され得る。NBSMは、何も変更することなく、ひっそりと(under obscurity)数日または数週間保存することができる。必要に応じて、脂質コーティングを再均質化するために、脂質混合物を液化するに十分な温度でオーブンに入れる必要がある。本発明のNBSMの再使用の可能性は、初期使用後に保持することができない既存のNBSMに勝る大きな利点である。例えば、市販の非生物学的皮膚モデル:Vitroskin(登録商標)(IMS、Inc.、Milford、CT)は一度水和させると保持することができない。
【0087】
したがって、本発明の第3の主題は、化粧品性能を評価するための、本発明の非生物学的皮膚モデルの使用である。このような使用は、消費者製品からの化学物質、工業用化学物質及び医薬品の、人間の皮膚との直接かつ長期間の接触の相互作用(有害又は有益)の理解を可能にし得る。
【0088】
本発明の別の主題は、皮膚表面特性における汚染の効果を評価するための、本発明の非生物学的皮膚モデルの使用である。
【0089】
本発明の別の主題は、皮膚の物理化学を評価するための、又は、皮膚の表面自由エネル
ギー(γ)への脂質組成物又は皮膚トポグラフィの影響を評価するための、本発明の非生
物学的皮膚モデルの使用である。
本明細書の当初の開示は、少なくとも下記の態様を包含する。
〔1〕脂質組成物で被覆された皮膚表面トポグラフィを再現するポリマー材料を含む非生物学的皮膚モデルであって、
該ポリマー材料は14~60mJ/m の表面自由エネルギー(γ)を有する材料であり、
該脂質組成物は、脂質組成物の総重量に対して、14重量%~60重量%のトリグリセリド、2重量%~40重量%の遊離脂肪酸、4重量%~30重量%のワックスエステル、3重量%~20重量%のスクアレン、及び1重量%~10重量%のコレステロールを含み、
かつ、ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度は500μg/cm ~2500μg/cm である、
非生物学的皮膚モデル。
〔2〕24mJ/m ~45mJ/m 、有利には26mJ/m ~33mJ/m の表面自由エネルギー(γ)を有する、〔1〕に記載の非生物学的皮膚モデル。
〔3〕0.0~-2.5、有利には-0.2~-1.7、より有利には-0.5~-0.9の歪度係数を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の非生物学的皮膚モデル。
〔4〕脂質は結晶化されていない、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の非生物学的皮膚モデル。
〔5〕以下のステップ:
a)皮膚のネガティブレリーフを備えたスキンプリントを調製するステップ;
b)14~60mJ/m の表面自由エネルギー(γ)を有する材料であるポリマー材料を用いて、スキンプリントを成形し直すステップ;
c)硬化ステップ;
d)14%~60%のトリグリセリド、2%~40%の遊離脂肪酸、4%~30%のワックスエステル、3%~20%のスクアレン、及び1%~10%のコレステロールを含み、溶媒不含である脂質組成物を調製するステップ;
e)任意に、脂質組成物を完全に液状化するまで加熱するステップ、
f)液状の脂質組成物をポリマー材料上に塗布するステップ;
g)任意に、均質化のために加熱するステップ;及び
h)任意に、過剰の脂質組成物を拭き取り、均質化のために再度加熱するステップ
を含む、非生物学的皮膚モデルの調製方法。
〔6〕脂質組成物を調製するステップd)は、脂質を溶媒中に溶解させるステップd1)及び全ての溶媒を蒸発させるステップd2)を含む、〔5〕に記載の方法。
〔7〕ステップe)、g)及びh)の加熱温度は、互いに独立に、少なくとも25℃、有利には65℃~200℃、より有利には65℃~100℃である、〔5〕又は〔6〕に記載の方法。
〔8〕ステップf)の前に、ポリマー材料をステップe)における脂質組成物と同じ温度にする、〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕過剰の脂質組成物を拭き取るステップh)は吸収によって行われる、〔5〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕ポリマー材料上に液状の脂質組成物を塗布するステップf)は、ハケ塗り、スピンコーティング又はディップコーティングによって行われる、有利にはハケ塗り又はスピンコーティングによって行われる、〔5〕~〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕ポリマー材料上の脂質組成物の表面濃度は500μg/cm ~2500μg/cm である、〔5〕~〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕得られる非生物学的皮膚モデルは、24mJ/m ~45mJ/m 、有利には26mJ/m ~33mJ/m の表面自由エネルギー(γ)を有する、〔5〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕得られる非生物学的皮膚モデルは、0.0~-2.5、有利には-0.2~-1.7、より有利には-0.5~-0.9の歪度係数を有する、〔5〕~〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕化粧品性能を評価するための、又は、皮膚表面特性における汚染の効果を評価するための、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の非生物学的皮膚モデル、又は、〔5〕~〔13〕のいずれかに記載の方法で得られる非生物学的皮膚モデルの使用。
〔15〕皮膚の物理化学を評価するための、又は、皮膚の表面自由エネルギー(γ)への脂質組成物又は皮膚トポグラフィの影響を評価するための、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の非生物学的皮膚モデル、又は、〔5〕~〔13〕のいずれかに記載の方法で得られる非生物学的皮膚モデルの使用。
【0090】
以下の実験例は、本発明の範囲を何ら限定することなく、本発明を説明する。
【実施例
【0091】
実験例1:本発明の非生物学的皮膚モデルの製造
本発明による非生物学的皮膚モデル(NBSM)が開発された。これは、2つの異なる部分で構成される(図2参照)。第1部分は皮膚表面トポグラフィを再現するポリマー材料である。このポリマー材料は、皮膚表面の脂質組成物を模倣する人工皮脂で被覆されている。このNBSMは以下のパラグラフに記載されるようにして調製された。
【0092】
〔A.皮膚表面トポグラフィを模倣するポリマー支持体の調製〕
スキンプリントを、インビボで、生体適合性のシリコンBody Double(登録商標)(Creation Silicone、ジュイ-アン-ジョザ、フランス)を用いて調製し、皮膚のネガティブレリーフを備えたシリコン表面を得た。このスキンプリントを、シリコーンDragonSkin(登録商標)(DragonSkin 20、Creation-Silicone、ジュイ-アン-ジョザ、フランス)を用いて成形し直した(図3参照):キットの2つの成分を等しい量で共に混合した後、Dragonskin(登録商標)を高真空下で10分間かけて脱ガスした。次いで、粘性混合部をBody Double(登録商標)スキンプリントに注ぎ、少なくとも4時間硬化させた。
【0093】
〔B.人工皮脂の調製〕
人工皮脂を表2に記載の組成に従い調製した[11]。全ての計量した脂質をクロロホルム/メタノール(CHCl/MeOH)2:1中に溶解させ、10g/Lの皮脂濃度にした。該溶液を使用するまで冷蔵庫(T=2-4°C)に保管した。溶媒の蒸発が必要あ場合、ロータリーエバポレーターを使用した(Rotavapor(登録商標)R-300、BUECHI Labortechnik AG、フラヴィル、スイス)。
【0094】
【表2】
【0095】
次いで、前記したポリマー材料上に人工皮脂を被覆した。2つのコーティングプロトコルを試験した:1つは本発明によるものであり、もう1つは比較プロトコルである。
【0096】
〔C.コーティングプロトコル〕
C1.プロトコル1(比較)
第1のプロトコル(「プロトコル1」と称する)は、20g/Lの濃度でのCHCl/MeOH 3:7の皮脂溶液を用いた。皮脂溶液をポリマー材料上に、スプレーポンプを介して噴霧(pulverize)した[5,12]。1cm×7cmの表面に、室温で、5cmの距離で、10回の噴霧を行った。調製した表面を、閉じたプラスチックチューブに入れ、溶媒の蒸発速度を遅くし、脂質コーティングの良好な均質性を得た。
【0097】
得られた平均表面濃度は、脂質コーティング前後の質量差を用いて測定して、460μg/cmであった。
【0098】
C2.プロトコル2(発明)
第2のプロトコル(「プロトコル2」又は本発明のプロトコルと称する)は、いずれの溶媒も使用しない純粋な皮脂を使用した。人工皮脂溶液から溶媒を蒸発させた。得られた脂質混合物を、完全に液化するまで、70℃のオーブンに入れた。堆積中の温度差を避けるために、ポリマー材料も70℃のオーブンに15分間入れた。細い鉛筆を使用して、液状の脂質フィルムをシリコーン支持体上に塗布した。次いで、被覆された支持体を、70℃で均質化させるために、オーブン中に5分間戻した。吸収紙を使用して過剰の脂質を拭き取り、被覆されたシリコーンを、再び、オーブン中に70℃で5分間入れた。上記のようにして調製された人工皮膚モデルを、室温まで数分で冷却させた。
【0099】
得られた平均表面濃度は、脂質コーティング前後の質量差を用いて測定して、1500μg/cmであった。
【0100】
実験例2.本発明の非生物学的皮膚モデルの特徴付け
実験例1においてコーティングプロトコル2(=NBSMプロトコル2)を用いて調製された、本発明の非生物学的皮膚モデルは、ここで特徴づけられ、以下と比較される:
・ヒトの生きている外植片;
・インビボ測定;
・市販の非生物学的皮膚モデル:Vitroskin(登録商標)(IMS、Inc.、Milford、CT)(=VS);及び
・実験例1でコーティングプロトコル1(=NBSMプロトコル1)を用いて調製した比較NBSM
【0101】
〔A.研究モデル〕
A1.エクスビボ皮膚(ヒトの生きている皮膚外植片):
ヒトの生きている皮膚の外植片は、BIO-EC(ロンジュモー、フランス)から提供され、これは、29歳の白人女性の腹部領域の形成外科から、彼女の同意を得て得られた。皮膚外植片を調製するために、まず、メスを用いて皮下脂肪を除去し、次いで、皮膚(真皮及び表皮)を直径約2cmの円に切断した。調製した外植片を、BIO-ECの外植片培地(BEM)を用いて生存条件に置き、37℃で、5%COのインキュベータ内に保持した。BEMの半分を、2日ごとに、新しいものに取り換えた。8つの外植片を表面自由エネルギーの測定に使用した。これらを接触角の測定まで、インキュベータ中に保持した。表面上に存在する残留BEMを除去するために、測定前にこれらを静かに拭いた。
【0102】
A2.インビボ測定:
21歳の白人女性の前腕にて、同意を得て、インビボ測定を行った。分析された皮膚は、洗浄せずに2時間保持し、測定前に処理を行わなかった。
【0103】
A3.市販の非生物学的(NB)皮膚モデル:
市販のVitroskin(登録商標)(IMS, Inc.、ミルフォード、CT)を特徴付け、研究に使用した。これは、物理化学研究のための非生物学的皮膚モデルに関する参考である。Vitroskin(登録商標)(VS)は、プロテイン及び脂質で作られた合成皮膚モデルであり、イオン強度、pH、トポグラフィ及び臨界表面張力などの皮膚表面特性を模倣する。このNB皮膚モデルは、インビトロSPF(Sun Protection Factor、紫外線防御指数)測定のために、又は、エモリエント拡散の研究のために、皮膚置換物として使用される。これは使用前に、IMSにより開発された標準化プロトコルに従い水和させる必要があった。VSの断片を、下部に注入された350gの水/グリセリン85:15混合物を含有する標準的な密閉水和チャンバー内に入れ、16~24時間、室温で置いた[13]。
【0104】
〔B.本発明の非生物学的皮膚モデルの表面特徴付け〕
B1.光学顕微鏡法:
表面観察は、カメラを備え、Leica Application Suiteソフトウェアによって制御された光学顕微鏡(DMLP/DC 300、Leica Microsystems、ウェッツラー、ドイツ)を用いて行った。全ての写真は、50倍の倍率で、透過モードを用いて得た。
【0105】
光学顕微鏡を、NBSMプロトコル1及びNBSMプロトコル2の表面を比較するために使用する。2つのモデルの皮脂薄層を、光学顕微鏡を透過モードで使用して視覚化した(図4参照)。図4は、シリコーン支持体(図4A)、プロトコル1(図4B)及びプロトコル2(図4C)を用いて堆積させた皮脂薄層の顕微鏡画像を示す(倍率×50、透過、非偏光NPL及び偏光PL)。
【0106】
ポリマー支持体上の脂質の存在は、レリーフ上に粒状の外観を与える(図4B及び4C)。プロトコル1を用いると、図4Bに示されるように、脂質が明確に結晶化する:ダイヤモンド形状の結晶が偏光下で視認される。この結晶化はおそらく溶媒の蒸発によるものであり、脂質コーティング外観として適当ではない、表面のきらきらとした外観をもたらす。この結晶化は、表面全体にわたって見かけ上均質な皮脂層を示すプロトコル2では観察されない(図4C)。
【0107】
B2.赤外分光法:
Spectrumソフトウェアに接続されたFT-IR分光計スペクトル(PerkinElmer, Inc.、Waltham、Massachusetts、USA)を使用した。ATRモード(ZnSe結晶)を使用して、各測定ごとに4つのスペクトルを測定した。振動の範囲は、4000~650cm-1であった。
【0108】
NBSMプロトコル2のポリマー材料上に被覆された脂質を、赤外分光法によって特徴づけ、シリコーン支持体及び人工皮脂と比較した(図5参照)。人工皮脂に関する振動は、NBSM赤外スペクトルにおいて確認できる。図5に黒い矢印で示され、それに関する波数が表3に報告され、インビボデータと比較される。
【0109】
【表3】
【0110】
CH対称伸縮に関連する波数(表3)は、脂質鎖のコンフォメーションパッキングについての情報を与える。Mendelsohnらによれば[14]、脂質鎖パッキングは角質層の深さに発展する。最外の表面(0~4μm)を通って、CH対称伸縮波数は2853~2849cm-1に発展し、これは無秩序な六角形の鎖パッキングに対応する。これは、皮膚を覆う不飽和脂質が豊富な特定の脂質組成のためである。角質層の奥深くになるにつれ、飽和脂質が主となり、2849~2847cm-1の関連波数を有する、高度に秩序化された斜方晶系のパッキングを示す。この高度に秩序化されたパッキングは、角質層に水分バリア機能を与える。額について記録されたインビボFTIRスペクトルデータは、液体状態に対応する無秩序な鎖パッキングを示す[14]。人工皮脂及びNBSMのFTIRスペクトルは、使用される飽和及び不飽和脂質鎖の混合物によって説明される、六角形タイプの鎖パッキングを示す。したがってこれは、液状の脂質状態と、高度に秩序化された脂質組織との間の中間的なパッキングである(波数<2849cm-1)。したがって、この構造は、Mendelsohn[14]によって記載された、2853~2859cm-1の間の最外表面脂質鎖パッキングと一致する。
【0111】
NBSMプロトコル2とVSモデルとを比較するために、赤外分光法も行った。両方のモデルについて得たスペクトルを、額について記録したインビボスペクトルと重ねた(図6)。予想されたように、図6は、表面組成における大きな違いを反映する3つの異なるスペクトルを示す。NBSMプロトコル2は皮脂脂質に富んでいるが、これはVSには存在しない。VSはセラミドに関連する振動を示す(1631cm-1及び1553cm-1)。これらの脂質は、角質層脂質組織に関与し、したがって、皮膚バリア機能に関与する。セラミドが存在しないNBSMプロトコル2について、我々は、皮脂脂質のみを使用して、エクスビボ皮膚に非常に近い物理化学に到達できることを示した。皮膚物理化学に対するセラミドの影響は、皮脂脂質と比較して、無視できるものである。そのため、現在の物理化学研究のためにセラミドを添加することは重要ではない。VSはまた、-OH構造に関連する重要な振動(ν=3286cm-1)によって強調されるように、十分に水和されている。この水和状態は、インビボスペクトルにおいてはあまり明らかではない。これは、VS及びインビボ皮膚の物理化学挙動に関する相違の原因となり得る。
【0112】
B3.デジタル顕微鏡法
VH-Z100Rレンズを用いるキーエンスマイクロスコープVHX-1000(Keyence Corporation TSE、大阪、日本)を300倍の倍率で使用した。3D画像を透過モードで記録し、1600×1200ピクセルサイズを得るように編集した。
【0113】
粗さプロファイル及びパラメータを、ISO 25178基準に従い、Mountains Map(登録商標)ソフトウェア(Digital Surf SARL、ブザンソン、フランス)を用いて、表面の3D画像から計算した。得られた、異なる粗さパラメータを、表1に示す。
【0114】
3D顕微鏡法は、NBSMプロトコル2及びVSモデルの表面トポグラフィへのアクセスを与え、それらの粗さの研究に役立つ。得られた3D画像を図7に示し(NBSMプロトコル2については7A、及び、VSモデルについては7B)、粗さプロファイルを図8にまとめる(NBSMプロトコル2については8A、及び、VSモデルについては8B)。
【0115】
粗さパラメータを表1にまとめる。結果は、両方のモデルがインビボ皮膚の大きさのオーダーで、Sa及びSzを示すことを強調する[5,8]。NBSMプロトコル2とVSとの重要な違いは、歪度係数Sskに関し、SskVS=0.648であるのに対し、SskNBSM=-0.739である。この重要なパラメータは、表面の形態を表し、正のSsk値は、平均高さより上に突出するピーク及び隆起を示す表面に対応し、負のSsk値は、深い傷と細孔を有するトレイ表面に対応する。これらの値は、図7Aおよび7Bでなされた目視観察と一致する。したがって、パラメータSskは、両方の非生物学的モデルを明確に判別する。さらに、インビボの文献データでは、-0.46~-0.91の負のSsk値が報告されている。NBSMプロトコル2の歪度係数は、インビボのパラメータと非常によく一致している。
【0116】
【表4】
【0117】
NBSMプロトコル2は、VSよりもずっと正確に前腕皮膚レリーフを模倣する。結果として、インビボの手の平側の前腕(volar forearm)において行われた接触角測定を比較する目的で、NBSMプロトコル2は、接触角測定に表面粗さは顕著な影響を与えるため、より適当であると思われる。
【0118】
〔C.表面自由エネルギー測定〕
C1.前進接触角測定:
接触角測定は、PGPlusソフトウェアに接続された携帯型ゴニオメーターPGX+(ScanGaule、Gravigny、フランス)を用いて行った。このゴニオメーターは、画像を得るための高解像度カメラ、液滴を視覚化するためのミラーに関連した特定の照明システムを備える。液滴を堆積させるために使用するシリンジは、0.77mmの内部直径を有する。測定は室温(20±1.5℃)で行った。前進接触角θは、液滴堆積が増加する際に、液滴ベースライン変位の前に測定される、接触角の最大値である。小さい液滴が表面に堆積し、5回の連続した液滴の追加によってその体積が増加した。最終的な液滴は約7μlの体積に達した。各滴下の追加後に5枚の画像を撮影した。実験の合計時間は、約20秒であるため、蒸発又は浸透は無視される。ソフトウェアプログラムを使用して、滴の両側から接触角を算出した。その場合、θは、これら5枚の画像のうち、滴の両側の平均から得た最大値であった。各液体の前進接触角測定を、各研究モデルについて少なくとも3回行った。
【0119】
C2.接触角測定用の液体:
表面自由エネルギー計算を行うために、次の3つの参照液体を使用した:超純水(25℃で18MΩ.cm-1の抵抗率)、ジヨードメタン(分析グレート、99%純分)及びホルムアミド(分析グレート、99%純分)(Sigma Aldrich、Saint-Louis、Missouri)。これらの表面自由エネルギー成分値を表5に報告する。
【0120】
【表5】
【0121】
C3.表面自由エネルギー測定
固体表面の表面自由エネルギーを測定するために、最新のアプローチの1つがVan Oss及び協力者らによって開発された[1,16]。彼らは、固体及び液体表面自由エネルギーは2つの成分に分けられることを提案する:ファンデルワールス相互作用(Keesom、Debye、London)に対応する、Lifschitz-ファンデルワールス成分(γLW)、及び、ルイス概念:
【数1】
による、酸塩基相互作用に対応する、酸-塩基成分(γAB)。
【0122】
この酸-塩基成分は、2つのパラメータの幾何平均で表すことができる:γ(電子受容体)及びγ(電子供与体):
【数2】
【0123】
この最後の成分は、水素結合及びπ電子相互作用を含む。表面自由エネルギーは、接触角測定からヤング式を用いて計算することができる:
【数3】
ここで、γは液体表面張力、θは接触角、γは固体表面自由エネルギー、πは液体のフィルム圧、及び、γSLは界面表面自由エネルギーである。「L」及び「S」はそれぞれ液体及び固体を表す。πは皮膚のような低エネルギー固体の場合、無視することができる[4]。
Van Ossによれば、界面表面自由エネルギーは次のように表される:
【数4】
したがって、ヤング式は次のように記載できる:
【数5】
【0124】
この式に従い、固体表面の表面自由エネルギーを、既知の成分値の3つの参照液体を用いて決定することができる。
【0125】
Van Ossモデルは、滑らかで均質な表面について定義された。粗い表面について、Wenzelら[17]によって定義された粗さ係数を接触角値の調整に使用すべきである:
【数6】
ここで、r=(実際の表面積)/(見かけの表面積)≧1粗さ係数、θ測定された接触角、θ実際の接触角。
【0126】
それにもかかわらず、皮膚のようなランダムな表面の濡れ性における粗さの影響を扱う、実際のいくつかの研究は、この関係は実際の接触角を正しく記載していないことを示す[1,18,19]。さらに我々は、同等のトポグラフィの表面を用いて、我々の結果に対する粗さの影響を低減するようにしている。このため、この研究において皮膚の粗さは考慮していない。
【0127】
堆積プロトコル信頼性を確認するために、プロトコル1及びプロトコル2を用いるシリコーン表面上での皮脂コーティングの前後に、表面自由エネルギーを測定した。結果を図9にまとめる。このグラフは、ヒトの生きている皮膚外植片の測定から得た追加のデータを含む。
【0128】
当然に、シリコーンポリマーの表面張力が低いことを知っており、得られたシリコーン表面は、エクスビボ皮膚と比較して低い表面自由エネルギー(γ)を示す:エクスビボ皮膚について31.5±3.6mJ/mであるのに対し、シリコーンについて19.7±5.0mJ/m。人工皮脂特性は、このコーティングが、与えられた表面に塗布されると、LW成分値を高めることを示している。その高いLW成分値(γLWsebum=41.1±2.4mJ/m)は、この脂質混合物の組成によって説明され得る。確かに、トリグリセリド及び他の長い炭素鎖を有する構成脂質は、互いに高度に相互作用し、表面凝集性を高めるであろう。この凝集が、無極性相互作用を通じて、表面エネルギーを増加させる。したがって、シリコーンに皮脂薄層を追加することで、プロトコル2を用いて調製されたNBSMのLW成分について、26.7±2.2mJ/mの値に達することが可能となり、これはヒトの生きている皮膚外植片について算出された28.4±2.8mJ/mの値とよく一致する。注目すべきこれらの結果は、インビボ測定から算出された文献データに一致する[1]。
【0129】
したがって、皮脂堆積について、プロトコル2に従うNBSMについて得られる値は、ヒトの生きている皮膚外植片について行った測定と一致する。被覆されたNBSMについての塩基成分(γ)は、ヒトの生きている皮膚外植片と比較すると、僅かに低いことに着目することは興味深い。それにもかかわらず、この成分は皮膚のタイプに依存する:Mavonら[1,2]によれば、皮脂が多い皮膚は、皮脂が少ない領域よりも高い表面自由エネルギー値を示す。表面自由エネルギーについてのこの違いは、皮脂が多い皮膚の塩基性成分値がより高いためである。彼らは、この高い塩基性成分は、皮脂脂質レベルとその両親媒性脂質含量、特に遊離脂肪酸に関係し得ると想定した。しかし、ここで研究された人工皮脂は、特に高い塩基性成分を示さなかった:γ 皮脂=5.8±1.2mJ/m。その結果、NBSMは、インビボ皮膚における豊富な皮脂に見られるような高いγに達しなかった。両方のプロトコルが低い塩基性成分値を示す:プロトコル1について1.9±0.8mJ/m、及び、プロトコル2について0.7±0.4mJ/m。したがって、NBSM物理化学は、額の皮膚ではなく前腕のような皮脂が少ない皮膚領域にずっと近い。
【0130】
〔D.結論〕
結果は、プロトコル1は、プロトコル2よりも、エクスビボヒト皮膚に近い特性に達するにより効率的でないことを明らかに示す。確かに、プロトコル1を用いて調製した表面は、エクスビボ皮膚(0.5±0.5mJ/m)と比較して、より高い酸成分(3.1±2.0mJ/m)を示すことが観察できる。その場合、プロトコル1について決定したLW成分(19.8±3.1)はエクスビボで得たものよりも低い。プロトコル2は、皮膚物理化学を模倣するのに非常に適している。さらに、プロトコル2に溶媒が含まれていないことは、環境への配慮に間違いなく有利であり、また、皮脂で被覆されたポリマー材料の溶解のリスクを防止する。さらに、光学顕微鏡は、皮脂の分布がより均質であり、プロトコル2で、脂質の結晶化が制限されたことを示す。これらの全ての理由から、第2のプロトコルが選択され、残りの研究に適用された。
【0131】
要約すると、本発明で開発されたNBSMプロトコル2は、エクスビボ皮膚に近い化学組成及びトポグラフィ特性を示す。さらに、前の段落に示したように、皮脂コーティングは、皮膚物理化学にできるだけ近くなるように最適化されている。これらの全ての結果は、NBSMは広い範囲の皮膚表面特性を模倣するための適切な皮膚であることを示す。NBSMの関心を示すために、化粧品原料との相互作用及び化粧品塗布後のその物理化学挙動を評価するために、補完的な測定を行った。
【0132】
実験3.化粧品原料及びエマルションの物理化学的研究:
物理化学的研究に使用した化粧品原料及びエマルション:
この研究に使用した化粧品グレード原料をその物理化学特性と共に表6に示す。シリコーンはEvonik Goldschmidt(Essen、ドイツ)から供給された;エステルはStearinerie Dubois(Boulogne-Billancourt、フランス)から提供された;イソヘキサデカンはIMCD Group(Cologne、ドイツ)から提供された;アラガン油はOlvea Group(Saint-Leonard、フランス)から供給された。
【0133】
【表6】
【0134】
表7に挙げた3つのエマルションも使用した:2つの市販品と、[20]に記載のプロトコルにしたがいラボスケールで具体的に開発された標準エマルション。
【0135】
【表7】
【0136】
B1.前進接触角測定:
接触角測定を実験例2パートC1及びC2に記載されるように行った。
【0137】
B2.製品塗布後の水接触角:
50μLのそれぞれの化粧品原料及びエマルション(表6及び7)を、40回転で10cmの表面積に手動で広げた。水接触角測定は、塗布の1分後及び3分後に3回行った。
【0138】
B3.未処理の表面への成分接触角:
AO、IHD、CPS及びPDCの接触角(表6)を、各研究モデルについて、3回測定した。滴下堆積プロトコルは、前述のものと同じであった。
【0139】
C.結果:
エモリエント拡散の研究:
接触角測定は、皮膚上のエモリエントの拡散特性の研究に使用した機器方法の一部である。エモリエントの拡散は、化粧品の感覚的品質だけでなく、その有効性、とりわけサンスクリーンについて、重要な目的である。確かに、日焼け止め防止係数は、一方はエマルション中に存在するソーラーフィルターによるものであり、他方では、皮膚表面に製品が拡散された後の残留フィルムの均質性によるものである。したがって、フィルム形成及び均質性に影響する他のパラメータの中で、拡散が最も重要であるように思われる[21,22]。化粧品原料の拡散特性を評価するために、4つの原料:CPS、PDC、AO及びIHDを用いて、ここで研究される異なる表面上で、接触角測定を行った。NBSMプロトコル2、VS及びインビボで得られた結果を、図10に示す。一般的な観点から、4つの異なる原料を使用して測定された接触角は、NBSMプロトコル2及びインビボ皮膚との間で、非常に類似しているように見える。反対に、VSにおける異なるエモリエントについて測定された前進接触角は、インビボ及びNBSMプロトコル2表面の両方と比較して、より低い。これらの結果は、本研究において特別に開発されたNBSM表面が、インビボ皮膚と同様に、製品と相互作用することを意味する。唯一の違いは、NBSMプロトコル2よりも、インビボ皮膚とより親和性を示すIHDに関する。これは、NBSMと比較してより高い皮膚LW成分であるため、無極性IHDとのより高い相互作用を引き起こすことで説明できる。しかし、このNBSMは、VSと比較した場合に、エモリエント拡散を評価するに効果的なサポートを構成することは間違いない。確かに、VSについて測定したより低い接触角は、各原料が、インビボ皮膚よりもVSと、より親和性であることを示す。使用した参照液体の毒性のために、インビボ皮膚の表面自由エネルギーを測定することができないため、得られたデータを、エクスビボ値と比較することにした。さらに、文献データは、個人間の差に内在する大きな変動を示す。その結果、化粧品原料の拡散は、エクスビボ皮膚及びNBSMプロトコル2と比較したとき、VSについての表面自由エネルギー(γVS=35.8mJ/m)がより高いために、高められる。水の存在は、慣行的に表面自由エネルギー値を高くする傾向があるため、VSの水和状態がこの結果の原因であり得る。これらの結果によれば、NBSMプロトコル2は、局所塗布後の皮膚表面に存在する残留フィルムを研究するための適切なツールとして興味深く思われる。化粧品残留フィルムの物理化学特性を以下に示す。
【0140】
化粧品塗布後の残留フィルムの特徴付け:
皮膚上の原料またはエマルションの残留フィルムの特徴付けは、その均質性、組成及び安定性が皮膚表面特性に大きく影響し、その結果、化粧品活性成分及び製品の有効性に大きく影響するため、非常に興味深いトピックである。残留フィルムの物理化学を研究するために、VS、NBSMプロトコル2及びインビボで、上記のプロトコルに従い一連の化粧品を塗布後、2つの異なる時間(1分及び3分)で水接触角を測定した。結果を図11に示す。化粧品原料で表面処理した1分後に測定した水接触角は、次のように分類される:インビボ皮膚及びNBSMプロトコル2の両方について、θ/PDC<θ/AO<θ/IHD<θ/CPSであり、一方、VSについて、θ/IHD<θ/PDC≒θ/AO θ /CPSである。製品塗布前、θ インビボ=93,2±7.8°、θ NBSM=114,2±5.8°及びθ VS=104.2±11.8°。
【0141】
世界的に原料は各表面の水接触角値を低下させる。NBSM及びインビボ皮膚について得られた結果は、各原料の表面張力値(表6)に従っており、原料表面張力が低くなるにつれて水接触角が高くなる。確かに、原料残留フィルムは皮膚組成と表面張力を変える。例として、低い表面張力を有するCPSは皮膚表面エネルギーを低下させる。
【0142】
エマルションに関しては、3つの表面、すなわちインビボ、NBSMプロトコル2及びVSの違いはあまり目立たないように見える。NCは最も高い水接触角の値を示し、次にハイドロアルコールゲルが続き、一方、SEは最も低い値を与えた(図11)。それらの組成は、得られた値を説明することができる:SE及びGHAは、70%より多くの水及びイソプロピルアルコールを含有し、これらはそれぞれ、塗布後の皮膚をより親水性にするが、逆エマルションNCについては、その連続油相がより重要であり、これは皮膚をより疎水性にする。
【0143】
皮膚モデルVSは、驚くべきことに、SEについて水接触角ゼロを示す。VSについて見られた、エマルション塗布後の測定における違いは、前記に説明したように、その吸収能力及び高い水和に起因し得る。堆積した滴からの水は、接触角値を低くするVSに含有される多量の水と相互作用し得る。
【0144】
処理の3分後に測定された水接触角は、より長い時間での皮膚の残留フィルムの進展を評価するのに有用であり得る。例えば、GHAは、塗布後1分及び3分で水接触角の重要な増加を示す。これはおそらく、イソプロピルアルコールの蒸発の結果である。この場合、塗布の3分後で製品の不揮発性及び非浸透性の原料のみが皮膚に残る。反対に、SE残留フィルムは3分後に有意に進展せず、これは、化合物の浸透及び蒸発のいずれもが達成されなかったことを意味する。
【0145】
使用する原料(極性又は無極性油、エステル、シリコン)又はエマルションの種類にかかわらず、NBSM及びインビボで測定した前進水接触角は非常に近いままである。VSも実行したが、インビボ測定との違いがほとんどないため、比較的小さい頻度である。VSはまた、特に塗布の3分後に、製品間での少ない違いを示す。要約すると、このセクションにおいてNBSMについて得られた結果は、化粧品の残留フィルムを研究し、それらの皮膚物理化学特性への影響を明らかにするという目的において非常に有望である。
【0146】
塗布の最後の例は、皮膚へのNC塗布の前後に、図12の赤外スペクトルにみられるような、化学組成に関する、製品塗布後の残留フィルムの特徴化のためのNBSMの使用に関する。塗布された原料に応じて、そのオリジナルスペクトルに関連する1つ又はそれ以上の振動を追跡することによって、NBSM表面での存在を明らかにすることができる。この例において、1639cm-1における振動は、NCエマルションが表面に存在することの特徴である。このような図は、塗布後の残留フィルムの化学組成、及び、NBSMの表面を用いるその経時的な進展の研究に、非常に興味深いものであることを強調する。別の視点は、例えばIR顕微鏡法又はラマン顕微鏡法を用いる、残留フィルムの均質性の調査をカバーする。化粧品の塗布後に皮膚上に存在する残留フィルムの研究は、おそらく一方では皮膚表面のインビボ特性を研究することが困難であるため、他方ではエクスビボ研究のコストのために、文献ではそれほど多くない。この新規なNBSMは、取り扱いやすさと利用しやすさ、低いコスト、そして皮膚表面特性の研究にうまく設計されているために、この情報の不足を満たすのに効果的に役立ち得る。さらに、その毒性が評価されていない新しい化粧品原料を研究する目的において、NBSMのような非生物学的皮膚モデルの使用は、何らの安全性トラブルもなく、特別な技術的困難もなく、化粧品原料特性の研究が可能になるため、非常に興味深い。
【0147】
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図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12