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  • 特許-使用電力量の計測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】使用電力量の計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 11/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01R11/02 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023140833
(22)【出願日】2023-08-31
【審査請求日】2023-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514266378
【氏名又は名称】東京ファシリティーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151390
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 淨宗
(72)【発明者】
【氏名】中谷 博宜
(72)【発明者】
【氏名】井上 正義
(72)【発明者】
【氏名】中谷 寿子
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106018901(CN,A)
【文献】特開2017-032414(JP,A)
【文献】国際公開第2015/197911(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122230(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107478875(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0271314(US,A1)
【文献】特開2005-210202(JP,A)
【文献】特開2013-190208(JP,A)
【文献】特開2009-188320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 11/00-11/66、
21/00-22/10、
35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力量計が設置されている需要家が使用した電力量を該電力量計において正確に計測するための方法であ、電気を供給する供給者と該電気を消費する需要家とをつなぐ電線に連結されている該電力量計又はその近傍にノイズフィルタを設置し、該電力量計による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを除去ないし削減する使用電力量の計測方法であって、該電線が複数本ある場合に、該複数本の電線に対して一括的に該ノイズフィルタを設置することを特徴とする使用電力量の計測方法
【請求項2】
電力量計が設置されている需要家が使用した電力量を該電力量計において正確に計測するための方法であり、電気を供給する供給者と該電気を消費する需要家とをつなぐ電線に連結されている該電力量計又はその近傍にノイズフィルタを設置し、該電力量計による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを除去ないし削減する使用電力量の計測方法であって、該電力量計を境にして該供給者側と該需要家側の双方に該ノイズフィルタを設置することを特徴とする使用電力量の計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した使用電力量の計測方法であって、前記ノイズフィルタとしてフェライトコアを用いることを特徴とする使用電力量の計測方法。
【請求項4】
請求項3に記載した使用電力量の計測方法であって、前記フェライトコアとして分割型のフェライトコアを用いることを特徴とする使用電力量の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電力量計(積算電力量計・ワットメータ)が設置されている需要家が使用した電力量(使用電力量・消費電力量)を当該電力量計において正確に計測するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力量計には機械式電力量計、電子式電力量計、スマートメータといった各種のものがあるが、いずれにしても電気を供給する電力会社等の供給者と電気を消費する家庭、オフィス、工場等の需要家とをつなぐ電線に連結されている。
【0003】
上記のような電力量計は、各種電気製品の稼働により生じた電磁波等によるノイズの影響を受け、使用電力量を正確に計測することができないという問題があった。特に、電力量計は屋外に設置されることが多いところ、その近傍に室外機が設置されていると、冷暖房装置を稼働させることにより室外機から生じる電磁波により電力量計による計測に誤差が生じてしまうという問題があった。
【0004】
ここで、上記のノイズにはノーマルモードノイズとコモンモードノイズの二種類が存在する。まず、ノーマルモードノイズとは、電源のプラス側とマイナス側とで反対方向に進むノイズのことであって、負荷を介して電源まで回帰するモードのことである。これに対して、コモンモードノイズとは、電源のプラス側とマイナス側とで同一方向に進むノイズのことであって、漏出したノイズが大地を介して電源まで回帰するモードのことである。
【0005】
そこで、上記のような電力量計に生じるノイズを除去すべく、入力電流をシャント抵抗によって電圧に変換して出力する電流入力装置において、該シャント抵抗によって電圧信号に変換される前の入力電流が流れる経路の固定部品に、該入力電流に含まれるコモンモードノイズを除去するためのフェライトコアを設けた電流入力装置を電力量計における電流の入力部分に用いることが提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0006】
また、電磁波を吸収する軟磁性体と、該軟磁性体より高い周波数帯の電磁波をシールドする積層部材と、粘着材とが積層されている電磁波吸収体を配電盤や分電盤に設置することにより、住宅や事業所における消費電力を抑制することも提案されている(例えば、下記の特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-188320号公報
【文献】特開2018-156981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本願発明の発明者が得た知見によれば、上記のようなノイズが生じることで使用電力量が増大しているのでなく、上記のようなノイズが生じることで電力量計が使用電力量を正確に計測することを妨げているのである。
【0009】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、電力量計によって使用電力量を正確に計測することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記の課題を解決するために提案されたものであり、以下の構成を有するものである。以下では、本願発明の構成を理解することを補助するために、本願に添付した図面に表示した番号及び符号をあわせて記載する。
【0011】
請求項1に係る使用電力量の計測方法は、電力量計(1)が設置されている需要家が使用した電力量を電力量計(1)において正確に計測するための方法であ、電気を供給する供給者と該電気を消費する需要家とをつなぐ電線(2)に連結されている電力量計(1)又はその近傍にノイズフィルタ(3)を設置し、電力量計(1)による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを除去ないし削減する使用電力量の計測方法であって、電線(2)が複数本ある場合に、複数本の電線に対して一括的にノイズフィルタ(3)を設置することを特徴とする使用電力量の計測方法である
【0012】
請求項2に係る使用電力量の計測方法は、電力量計(1)が設置されている需要家が使用した電力量を電力量計(1)において正確に計測するための方法であり、電気を供給する供給者と該電気を消費する需要家とをつなぐ電線(2)に連結されている電力量計(1)又はその近傍にノイズフィルタ(3)を設置し、電力量計(1)による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを除去ないし削減する使用電力量の計測方法であって、電力量計(1)を境にして該供給者側該需要家側の両方にノイズフィルタ(3)を設置する方法である。
【0013】
請求項に係る使用電力量の計測方法は、請求項1又は2の何れかに記載した使用電力量の計測方法であって、ノイズフィルタ(3)としてフェライトコア(3)を用いる方法である。
【0014】
請求項に係る使用電力量の計測方法は、請求項に記載した使用電力量の計測方法であって、フェライトコア(3)として分割型のフェライトコア(3)を用いる方法である。
【発明の効果】
【0015】
本願発明に係る使用電力量の計測方法は、前記の通りの構成であるから、以下のような効果を奏することができる。
【0016】
前記のように、本願発明の発明者が得た知見によれば、電磁波等によるノイズが生じることで電力量計が使用電力量を正確に計測することを妨げているところ、請求項1に記載した使用電力量の計測方法は、電力量計(1)又はその近傍にノイズフィルタ(3)を設置することによって、電力量計(1)による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを除去ないし削減することができる。従って、請求項1に記載した使用電力量の計測方法は、電力量計によって使用電力量を正確に測定することができる方法を提供するという本願発明が解決しようとする課題を解決することができる。
【0017】
電力量計(1)に影響を与えるノイズは電線(2)を伝わって来ることが多いため、請求項に記載した使用電力量の計測方法のように、電線(2)にノイズフィルタ(3)を設置することで電力量計(1)による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを効果的に除去ないし削減することができる。
【0018】
また、本願発明の発明者が得た知見によれば、電線(2)が複数本ある場合には、請求項に記載した使用電力量の計測方法のように、該複数本の電線(2)に対して個別的にノイズフィルタ(3)を設置することにより、特にノーマルモードノイズを効果的に除去ないし削減することができた。
【0019】
また、本願発明の発明者が得た知見によれば、電線(2)が複数本ある場合には、請求項に記載した使用電力量の計測方法のように、該複数本の電線(2)に対して一括的にノイズフィルタ(3)を設置することにより、特にコモンモードノイズを効果的に除去ないし削減することができた。
【0020】
ここで、電力量計(1)を境にして電気を供給する供給者側と該電気を消費する需要家側の片方にのみノイズフィルタ(3)を設置しても、電力量計(1)に生じるノイズをある程度除去ないし削減することはできるが、請求項に記載した使用電力量の計測方法のように、その両方にノイズフィルタ(3)を設置した方が確実に除去ないし多く削減することができるとの知見を得ている。
【0021】
一般にノイズフィルタ(3)として用いられる部材としてはコイル、コンデンサ、フェライトコアといった種々の公知の部材があるが、電線への取り付けが容易であるといった観点から、請求項又はに記載した使用電力量の計測方法のように、フェライトコア、特に分割型のフェライトコアを用いるのが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本願発明に係る使用電力量の計測方法の一実施形態を示した概略構成図である。
図2】本願発明に係る使用電力量の計測方法の一実施形態を示した概略構成図である。
図3図1の部分拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明の一実施形態に係る使用電力量の計測方法につき、添付図面に基づいて、これを説明する。
【0024】
電力量計には機械式電力量計、電子式電力量計、スマートメータといった各種のものがあるが、図1及び2に図示するように、いずれにしても電気を供給する電力会社等の供給者と電気を消費する家庭、オフィス、工場等の需要家とをつなぐ電線(2)に連結されている。尚、本願発明に係る使用電力量の計測方法は、上記のような電力量計の種類を問わず、実施することができる。
【0025】
本願発明に係る使用電力量の計測方法は、電力量計(1)が設置されている需要家が使用した電力量を該電力量計において正確に計測するための方法であって、図1及び2に図示するように、電気を供給する供給者と該電気を消費する需要家とをつなぐ電線(2)に連結されている電力量計(1)又はその近傍にノイズフィルタ(3)を設置し、電力量計(1)による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを除去ないし削減する方法である。
【0026】
本願発明の発明者が得た知見によれば、各種電気製品の稼働により生じた電磁波等によるノイズの影響を受け、電力量計(1)が使用電力量を正確に計測することを妨げているところ、本願発明に係る使用電力量の計測方法によれば、電力量計(1)又はその近傍にノイズフィルタ(3)を設置することによって、電力量計(1)による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを除去ないし削減することができる。
【0027】
電力量計(1)に影響を与えるノイズは電線(2)を伝わって来ることが多いため、図1に図示するように、電線(2)にノイズフィルタ(3)を設置することで電力量計(1)による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを効果的に除去ないし削減することができる。また、その際はなるべく電力量計(1)の近くにノイズフィルタ(3)を設置することが好適である。即ち、電力量計(1)から離れた場所にノイズフィルタ(3)を設置しても、ノイズフィルタ(3)と電力量計(1)の間の電線(2)にノイズが侵入して電力量計(1)に伝わって影響を与えてしまうためである。
【0028】
本願発明の発明者が得た知見によれば、図1に図示するように、電線(2)が複数本ある場合には、該複数本の電線(2)に対して個別的にノイズフィルタ(3)を設置することにより、特にノーマルモードノイズを効果的に除去ないし削減することができた。具体的には、一般家庭において現在主流になっている単相三線式による配電方式であれば、電線(2)が両側にある二本の電圧線(2a)とそれらの間に挟み込まれた一本の中性線(2b)とからなるところ、該三本の電線に対して個別的にノイズフィルタ(3)を設置するのである。もちろん、単相二線式による配電方式であれば、電線が一本の電圧線と一本の中性線とからなるところ、該二本の電線に対して個別的にノイズフィルタを設置することになる。
【0029】
また、本願発明の発明者が得た知見によれば、図2に図示するように、電線(2)が複数本ある場合には、該複数本の電線(2)に対して一括的にノイズフィルタ(3)を設置することにより、特にコモンモードノイズを効果的に除去ないし削減することができた。具体的には、単相三線式による配電方式であれば、上記の通り電線(2)が二本の電圧線(2a)と一本の中性線(2b)とからなるところ、三本の電線に対して一括的にノイズフィルタ(3)を設置するのである。もちろん、単相二線式による配電方式であれば、電線が一本の電圧線と一本の中性線とからなるところ、該二本の電線に対して一括的にノイズフィルタを設置することになる。
【0030】
もちろん、図1及び2に図示するように、電線(2)が複数本ある場合には、該複数本の電線(2)に対して、個別的にノイズフィルタ(3)を設置するとともに、一括的にノイズフィルタ(3)を設置してもよい。そうすると、ノーマルモードノイズ及びコモンモードノイズを双方とも効果的に除去ないし削減することができ、好適である。
【0031】
本願発明の発明者が得た知見によれば、電力量計(1)を境にして電気を供給する供給者側と該電気を消費する需要家側の片方にのみノイズフィルタ(3)を設置しても、電力量計(1)に生じるノイズをある程度除去ないし削減することは可能であるが、図1及び2に図示するように、その両方にノイズフィルタ(3)を設置した方が確実に除去ないし多く削減することができるとの知見を得ている。また、ノイズフィルタ(3)を設置する個数が多い方が一般に電力量計(1)に生じるノイズをより確実に除去ないしより多く削減することができる。図1では三本の電線(2)のそれぞれに対して電力量計(1)を境にして供給者側と需要家側の両方に1つずつノイズフィルタ(3)を設置しており、図2では電力量計(1)を境にして供給者側と需要家側の両方に4つずつノイズフィルタ(3)を設置しているが、その個数は特に限定されない。
【0032】
一般にノイズフィルタとして用いられる部材としてはコイル、コンデンサ、フェライトコアといった種々の公知の部材があるが、電線(2)への取り付けが容易であるといった観点から、本願発明に係る使用電力量の計測方法に用いるノイズフィルタ(3)としては、図1及び2に図示するように、フェライトコア(3)を用いるのが好適である。
【0033】
ここで、フェライトコアには様々な形態のものが提供されているが、電線に密着するサイズの内径を有するリング状のフェライトコアを用いることにより、磁束の発生を抑制してノイズをより確実に除去ないしより多く削減することができる。しかしながら、このような形態のフェライトコアは電線に設置することが困難である。そこで、図3に図示するような、分割型のフェライトコア(3)を用いると、電線(2)に設置することが容易である。また、電線(2)とフェライトコア(3)との間に隙間が生じるような場合は、電線(2)をフェライトコア(3)に巻き回して密着させればよい。
【0034】
本願発明の発明者が、同一施設における同一季節に係る使用電力量として、電力量計が指し示す数値を比較したところ、本願発明に係る使用電力量の計測方法を実施する前と実施している場合とでは、以下の表1に記載した通り、使用電力量の計測結果について有意な差異を生じている。
【0035】
【表1】
【符号の説明】
【0036】
1 電力量計
2 電線
2a 電圧線
2b 中性線
3 ノイズフィルタ(フェライトコア)
【要約】
【課題】電力量計が設置されている需要家が使用した電力量を該電力量計において正確に計測するための方法を提供する。
【解決手段】電気を供給する供給者と該電気を消費する需要家とをつなぐ電線2に連結されている電力量計1又はその近傍にノイズフィルタ3を設置し、電力量計1による使用電力量の計測に影響を与えるノイズを除去ないし削減する。特に、電線2にフェライトコア3を設置するのが好適である。
【選択図】 図1
図1
図2
図3