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特許7436083信頼関係推定装置、信頼関係推定方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】信頼関係推定装置、信頼関係推定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/20 20120101AFI20240214BHJP
【FI】
G06Q50/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023180763
(22)【出願日】2023-10-20
【審査請求日】2023-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513025598
【氏名又は名称】株式会社フレアリンク
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】中山 清喬
【審査官】阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-32299(JP,A)
【文献】特開2002-132133(JP,A)
【文献】特許第6069506(JP,B2)
【文献】特開2005-352620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
講師と受講者との間に構築される信頼関係を推定する信頼関係推定装置であって、
前記講師および前記受講者による発信を取得する情報取得部と、
前記発信を参照し、前記講師および前記受講者により、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に前記発信が行われた事象を検出すると、前記発信を通じて前記講師と前記受講者の間に前記信頼関係が構築されたものと推定して、前記信頼関係に関する情報として記憶部に格納する信頼関係分析部と、
を備える、
信頼関係推定装置。
【請求項2】
前記信頼関係分析部は、前記講師および前記受講者による前記発信を音声データ又はテキストデータにより取得し、前記発信の内容を分析することで、前記講師および前記受講者による前記発信が同一の話題に関するものであると推定する、
請求項1記載の信頼関係推定装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記信頼関係推定装置と接続される端末を介して、前記講師および前記受講者による発信をテキストデータにより取得し、
前記信頼関係分析部は、あらかじめ紐づけられて入力されている前記発信は、互いに同一の話題に関するものであると推定する、
請求項1記載の信頼関係推定装置。
【請求項4】
前記記憶部は、所定の技術分野に関する前記講師の技術レベルおよび前記受講者の技術レベルを格納しており、
前記信頼関係分析部は、前記事象が発生した前記受講者の前記技術レベル、前記講師の前記技術レベル、又は前記受講者と前記講師の前記技術レベルの差に応じて、当該事象において前記講師および前記受講者の間で増大したものと推定する前記信頼関係の度合いを異ならせる、
請求項1記載の信頼関係推定装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記講師および前記受講者が参加する研修の情報を格納しており、
前記信頼関係分析部は、前記記憶部を参照して前記事象が発生した前記研修の識別情報を特定し、当該研修に同時に参加している人数に応じて、当該事象において前記講師および前記受講者の間で増大したものと推定する前記信頼関係の度合いを異ならせる、
請求項1記載の信頼関係推定装置。
【請求項6】
前記信頼関係分析部は、前記講師と前記受講者との間の前記信頼関係が構築された事象からの時間が経過するほど、当該講師と当該受講者との間の前記信頼関係の度合いを減少させる、
請求項1記載の信頼関係推定装置。
【請求項7】
前記記憶部に格納された前記信頼関係に関する情報を、前記受講者ごとに発行する、
請求項1記載の信頼関係推定装置。
【請求項8】
講師と受講者との間に構築される信頼関係を推定する信頼関係推定方法であって、
前記講師および前記受講者による発信を取得する情報取得ステップと、
前記発信を参照し、前記講師および前記受講者により、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に前記発信が行われた事象を検出すると、前記発信を通じて前記講師と前記受講者の間に前記信頼関係が構築されたものと推定して、前記信頼関係に関する情報として記憶部に格納する信頼関係分析ステップと、
をコンピュータにより実行する、
信頼関係推定方法。
【請求項9】
講師と受講者との間に構築される信頼関係を推定するコンピュータプログラムであって、
コンピュータに対し、
前記講師および前記受講者による発信を取得する情報取得ステップと、
前記発信を参照し、前記講師および前記受講者により、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に前記発信が行われた事象を検出すると、前記発信を通じて前記講師と前記受講者の間に前記信頼関係が構築されたものと推定して、前記信頼関係に関する情報として記憶部に格納する信頼関係分析ステップと、
を実行させるための、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼関係推定装置、信頼関係推定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
講師が受講者に対し研修を行うことが、通常行われている。講師と受講者は、コミュニケーションを通して信頼関係を構築する。この信頼関係が強固になるほど、受講者は講師の人となりや教え方を把握し、講師からの指導を充分に吸収できるようになる一方、心を閉ざした受講者には如何に優れた指導も受け取られない。また、講師は、強固な信頼関係が構築された受講者ほど、受講者に則した効果的な指導が可能になり、受講者に対する研修効果は一層増大する。このように、仮に同じ内容・講師・受講者の研修であったとしても、講師と受講者間の信頼関係の状態によって研修効果は大きく変化する。つまり、本質的な研修効果の測定や推定のためには、信頼関係の考慮は不可欠であり、講師と受講者との間に構築される信頼関係の強さを推定する技術が必要とされている。
【0003】
特許文献1には、複数の生徒間の相互発言の傾向の分析を行い、生徒のコミュニティを示す発言マップを提示する情報処理装置が記載されている。特許文献2には、メール解析部110から受け取った送信電子メール数、サイズ等に基づいてユーザ間の関係性を算出して出力するユーザ間関係算出装置が開示されている。特許文献3には、予定表などのメタデータを利用することで、人物同士の関連強度に重みづけを行う人脈情報表示装置が記載されている。特許文献4には、各ユーザがどの程度の頻度でコミュニケーションを行いどのエリアに同時に存在していたかに基づいて、ユーザ同士の人間関係を推定する、人間関係推定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-116607号
【文献】特開2006-260099号
【文献】特開2007-193685号
【文献】特開2010-165097号
【0005】
しかしながら、いずれの文献においても研修を実施する講師と受講者といった師弟関係において指導が行き届くための信頼関係を適切に推定できるとはいえなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、講師と受講者との間に構築される信頼関係の強さを推定することができる信頼関係推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る信頼関係推定装置は、講師と受講者との間に構築される信頼関係を推定する信頼関係推定装置であって、前記講師および前記受講者による発信を取得する情報取得部と、前記発信を参照し、前記講師および前記受講者により、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に前記発信が行われた事象を検出すると、前記発信を通じて前記講師と前記受講者の間に前記信頼関係が構築されたものと推定して、前記信頼関係に関する情報として記憶部に格納する信頼関係分析部と、を備える。
【0008】
前記信頼関係分析部は、前記講師および前記受講者による前記発信を音声データ又はテキストデータにより取得し、前記発信の内容を分析することで、前記講師および前記受講者による前記発信が同一の話題に関するものであると推定するものとしてもよい。
【0009】
前記情報取得部は、前記信頼関係推定装置と接続される端末を介して、前記講師および前記受講者による発信をテキストデータにより取得し、前記信頼関係分析部は、あらかじめ紐づけられて入力されている前記発信は、互いに同一の話題に関するものであると推定するものとしてもよい。
【0010】
前記記憶部は、所定の技術分野に関する前記講師の技術レベルおよび前記受講者の技術レベルを格納しており、前記信頼関係分析部は、前記事象が発生した前記受講者の前記技術レベル、前記講師の前記技術レベル、又は前記受講者と前記講師の前記技術レベルの差に応じて、当該事象において前記講師および前記受講者の間で増大したものと推定する前記信頼関係の度合いを異ならせるものとしてもよい。
【0011】
前記記憶部は、前記講師および前記受講者が参加する研修の情報を格納しており、前記信頼関係分析部は、前記記憶部を参照して前記事象が発生した前記研修の識別情報を特定し、当該研修に同時に参加している人数に応じて、当該事象において前記講師および前記受講者の間で増大したものと推定する前記信頼関係の度合いを異ならせるものとしてもよい。
【0012】
前記信頼関係分析部は、前記講師と前記受講者との間の前記信頼関係が構築された事象からの時間が経過するほど、当該講師と当該受講者との間の前記信頼関係の度合いを減少させるものとしてもよい。
【0013】
前記記憶部に格納された前記信頼関係に関する情報を、前記受講者ごとに発行するものとしてもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係る信頼関係推定方法は、講師と受講者との間に構築される信頼関係を推定する信頼関係推定方法であって、前記講師および前記受講者による発信を取得する情報取得ステップと、前記発信を参照し、前記講師および前記受講者により、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に前記発信が行われた事象を検出すると、前記発信を通じて前記講師と前記受講者の間に前記信頼関係が構築されたものと推定して、前記信頼関係に関する情報として記憶部に格納する信頼関係分析ステップと、をコンピュータにより実行する。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係るコンピュータプログラムは、講師と受講者との間に構築される信頼関係を推定するコンピュータプログラムであって、コンピュータに対し、前記講師および前記受講者による発信を取得する情報取得ステップと、前記発信を参照し、前記講師および前記受講者により、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に前記発信が行われた事象を検出すると、前記発信を通じて前記講師と前記受講者の間に前記信頼関係が構築されたものと推定して、前記信頼関係に関する情報として記憶部に格納する信頼関係分析ステップと、を実行させる。
【0016】
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、コンピュータ読み取り可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、講師と受講者との間に構築される信頼関係の強さを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態にかかる信頼関係推定装置、信頼関係推定装置およびネットワークを通じて接続される各構成が備える機能を示す機能ブロック図である。
図2】上記信頼関係推定装置に記憶されるデータテーブルの例であって、(a)受講者に関する情報を格納する受講者テーブル、(b)受講者の技術レベルに関する情報を格納する受講者レベルテーブル、(c)講師に関する情報を格納する講師テーブル、(d)講師の技術レベルに関する情報を格納する講師レベルテーブル、を示す図である。
図3】上記信頼関係推定装置に記憶されるデータテーブルの例であって、(a)研修メニューに関する情報を格納する研修メニューテーブル、(b)実施される研修に関する情報を格納する研修テーブルの例を示す図である。
図4】上記信頼関係推定装置に記憶されるデータテーブルの例であって、(a)信頼関係が構築される事象の情報を格納する信頼関係事象テーブル、(b)受講者と講師との間で構築された信頼関係を示す信頼関係指数が格納される信頼関係指数テーブル、を示す図である。
図5】上記信頼関係推定装置に接続される端末に表示される画面の1例である。
図6】上記信頼関係推定装置が処理の流れを示すシーケンス図であって、(a)第1例、(b)第2例、を示す図である。
図7】上記信頼関係推定装置が処理の流れを示すシーケンス図であって、(a)第3例、(b)第4例、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる信頼関係推定装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。信頼関係推定装置は、講師と受講者とでやり取りされる情報を参照し、講師と受講者との間に構築される信頼関係を推定する装置である。信頼関係推定装置は、信頼関係に関する情報を、ネットワーク等で接続された適宜の端末に表示する。
【0020】
図1に示すように、信頼関係推定装置1は、ネットワークNWを介して複数の端末2と通信可能に構成されている。信頼関係推定装置1は、例えばサーバである。信頼関係推定装置1および各端末2の相互の通信は、本実施形態においては無線であるが、一部または全部の接続が有線であってもよい。また、図1において端末2は2個であるが、任意の個数あってよい。信頼関係推定装置1と1又は複数の端末2により、信頼関係推定システム100を構成してもよい。
【0021】
●端末2
端末2は、研修を行う講師、および研修をうける受講者に関する情報の入力を受け付ける端末である。講師端末2aおよび受講者端末2bは、端末2の一例であり、講師端末2aと受講者端末2bとを区別することなく説明する場合には、これらをまとめて単に端末2と呼ぶことがある。なお、以降の説明においては、一例として、講師端末2aは、研修を開催する講師が操作する端末である。受講者端末2bは、研修の受講者が操作する端末であるものとして説明する。講師端末2aおよび受講者端末2bは、便宜上機能を分けて説明しているに過ぎず、講師端末2aから研修を受講することもできるし、受講者端末2bから研修や指導を行うこともできる。
【0022】
端末2は、例えばスマートホンやタブレット端末、又はコンピュータである。また、端末2は、いわゆるスマートグラスやヘッドセット、スマートウォッチ等、携帯者が身に着ける態様の装置であってよい。端末2は、CPU(Central Processing Unit)、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより、入力部21、出力部22および通信処理部23からなる機能ブロックを構成する。入力部21aおよび21b、出力部22aおよび22b、通信処理部23aおよび23bは、それぞれ、入力部21、出力部22および通信処理部23の一例であり、それぞれ区別することなく説明する場合には、これらをそれぞれまとめて単に入力部21、出力部22および通信処理部23と呼ぶことがある。
【0023】
入力部21は、データを入力するための構成であり、タッチパネル等によって実現される他、キーボード等の物理キーを有していてもよい。また、入力部21は、音声を取得するマイクロホン、および静止画又は動画を取得するカメラを有している。講師端末2aにおいては、例えば講師から、受講者に対する指導等に関する入力を、テキストデータや音声、動画等の形式で受け付ける。受講者端末2bにおいては、例えば講師に対するメッセージや、講師からの指導等に対する反応等を、テキストデータや音声、動画等の形式で受け付ける。
【0024】
さらに、入力部21は、信頼関係に関する、より直接的な情報の入力を受け付けてもよい。例えば、入力部21aは、講師による、受講者との信頼関係が構築された事象の記録を受け付けてもよい。また、入力部21aは、講師からの、受講者との信頼関係が構築された旨の入力や、受講者の返答等に対する評価情報等を受け付けてもよい。受講者端末2bの入力部21bは、受講者から、講師の回答内容等に対する評価情報等を受け付けてもよい。評価情報の入力は、選択肢が端末2の画面上に表示され、受講者又は講師が選択的に入力してもよい。これらの情報は例えば、他の端末2には送信されず、信頼関係推定装置1による信頼関係の推定に参照される。
【0025】
入力部21は、端末の携帯者の情報を検出する適宜のセンサを備えていてもよい。また、入力部21は、位置情報を取得してもよい。入力部21は、近接する他の端末の情報を取得するビーコン機能を有していてもよい。
【0026】
出力部22は、研修に関する情報等を出力する構成であり、例えば映像を出力するディスプレイ、および音声を出力するスピーカにより実現されている。ディスプレイは、入力部21のタッチパネルと共にタッチパネルディスプレイを構成していてもよい。出力部22は例えば、講師または受講者の映像を表示し、講師又は受講者の声を再生する。
【0027】
講師および受講者は、各端末2a、2bの入力部21a、21bおよび出力部22a、22bを用いて遠隔でも相互に会話をしたり、テキストデータをやり取りしたりすることができる。
【0028】
なお、各人がそれぞれ異なる端末2a、2bを使用する態様に代えて、1個の端末2により講師および受講者双方の録画又は収音を行ってもよい。この場合、1個の入力部で取得したデータを、信頼関係分析部12により講師による発信と受講者による発信に分離する処理を行ってもよい。また、1個の端末2に、講師および受講者の発信をそれぞれ取得する複数の入力部が配設されていてもよい。
【0029】
通信処理部23は、インターネット等のネットワークNWを介し、信頼関係推定装置1と所定のプロトコルに従ったデータの送受信処理を実行可能とする処理部であって、アプリまたは、Webブラウザ等により実現される。講師端末2aの通信処理部23aは、講師端末2aの入力部21aに入力された講師の音声や動画を受講者端末2bに送信するとともに、受講者端末2bに入力された受講者の音声や動画を受信する。受講者端末2bの通信処理部23bは、受講者端末2bの入力部21bに入力された情報を講師端末2aに送信するとともに、講師端末2aに入力された受講者の音声や動画を受信する。
【0030】
また、通信処理部23は、信頼関係推定装置1や適宜の外部装置から、発信としての情報入力が可能な入力フォーム等を受信してもよい。また、通信処理部23は、入力フォームに入力された情報を、信頼関係推定装置1又は他の端末2に送信してもよい。
【0031】
また、通信処理部23は、入力部21により取得した講師および受講者による発信を、信頼関係推定装置1に送信する。すなわち例えば、通信処理部23aは、講師端末2aの入力部21aにより取得した講師の発信を、講師端末2aの識別情報と共に信頼関係推定装置1に送信する。通信処理部23aは、講師の発信と共に、当該発信の受信が許可されている受講者端末2bの識別情報を信頼関係推定装置1に送信してもよい。通信処理部23bは、受講者端末2bの入力部21bにより取得した講師の発信を、講師端末2aの識別情報と共に信頼関係推定装置1に送信する。通信処理部23bは、受講者の発信と共に、当該受講者の発信を受信した講師端末2aの識別情報を信頼関係推定装置1に送信してもよい。その結果、信頼関係推定装置1は、相互に発信を行った講師と受講者の識別情報と発信内容を取得する。
【0032】
●信頼関係推定装置1
信頼関係推定装置1は、CPU(Central Processing Unit)、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより、図1に示すように、主として、記憶部50、情報取得部11、信頼関係分析部12、および通信処理部13、からなる各機能ブロックを構成する。
【0033】
なお、信頼関係推定装置1の機能部は、複数のハードウェア構成により実現していてもよいし、一部または全部がクラウドコンピューティングにより構成されていてもよい。また、信頼関係推定装置1が備える機能部の一部は講師端末2a又は受講者端末2bが備えていてもよい。
【0034】
記憶部50は、研修に関わる講師および受講者に関する情報を格納する機能部である。記憶部50は例えば、受講者に関する情報を格納する受講者情報データベース(以降の説明において、「データベース」を「DB」という。)51、講師に関する情報を格納する講師情報DB52、研修に関する情報を格納する研修情報DB53、および講師と受講者との間に構築される信頼関係に関する情報を格納する信頼関係情報DB54を記憶する。
【0035】
図2図4を用いて、記憶部50の各DBに含まれるテーブルの1例について説明する。なお、テーブル構成は1例であり、以下に説明するテーブルのいくつかが1個のテーブルに統合されていてもよいし、1個のテーブルが複数のテーブルにより構成されていてもよい。また、本明細書においては表形式のいわゆるリレーショナルデータベースを例に説明しているが、本発明の技術的範囲はこれに限られず、例えばグラフデータベース等、他の形式によるものであってもよい。グラフデータベースにより格納する構成によれば、同一の人物がある研修については受講者である一方、別の研修については講師となるような態様においても正確かつ簡潔に情報を格納することができ、ソーシャルネットワークサービス(SNS)のような網目状の関係構造を容易に管理することができる。
【0036】
図2(a)は、受講者情報DB51に含まれる受講者テーブルT1の1例である。受講者テーブルT1には、例えば、受講者の識別情報と対応付けて、氏名、所属企業、および連絡先等が格納されている。また、図2(b)は、受講者情報DB51に含まれる、受講者の技術レベルを格納する受講者レベルテーブルT2の1例である。受講者レベルテーブルT2には、例えば、受講者の識別情報と対応付けて、当該受講者の技術レベルが、技術分野ごとに格納されている。
【0037】
図2(c)は、講師情報DB52に含まれる講師テーブルT3の1例である。講師テーブルT3は、例えば、講師の識別情報と対応付けて、講師の氏名や連絡先、講師の指導可能な研修メニュー等が格納されている。図2(d)は、講師情報DB52に含まれる、講師の技術レベルを格納する講師レベルテーブルT4の1例である。講師レベルテーブルT4には、例えば、講師の識別情報と対応付けて、当該講師の技術レベルが、技術分野ごとに格納されている。
【0038】
図3(a)は、研修情報DB53に含まれる研修メニュー情報テーブルT5の例である。研修メニューは、研修の技術分野や所要日数等、研修自体の性質を示す情報である。研修メニュー情報テーブルT5には例えば、研修メニューの識別情報、技術分野、技術レベル、および研修日数等が対応付けられて格納されている。
【0039】
図3(b)は、ある研修メニューに従い実施される、個々の研修の開催に関する情報を格納する研修開催情報テーブルT6の例である。研修開催情報テーブルT6は、研修メニューの識別情報、担当する講師の識別情報、実施日程、および参加受講者数等が対応付けられて格納されている。参加受講者数は、予定人数が格納されていてもよいし、研修の開催後に実績値が格納されてもよい。また、参加受講者数は、予定人数が格納された後、研修の開催後に実績値に修正されてもよい。研修が複数日又は複数時間に渡って開催される場合、日又は時間ごとの参加受講者数の実績値が格納されてもよい。また、研修開催情報テーブルT6には、参加していた受講者の識別情報が、研修の識別情報と対応付けて記憶されている。
【0040】
図4(a)は、信頼関係情報DB54に格納されるテーブルの例であって、受講者と講師との間で発生した、信頼関係の構築に関する事象を蓄積して格納する信頼関係事象テーブルT7の例である。信頼関係事象テーブルT7は例えば、信頼関係を構築した受講者および講師の識別情報、事象の発生時点、事象が発生した、開催された研修の識別情報、受講者から講師又は講師から受講者に対して発信された発信経路の態様が格納されている。発信経路の態様は、例えば、オンライン講義、日報、メール、チャット、対面講義といった情報を含む。また、発信経路の態様は、受講者と講師のいずれからの発信であるかの情報も併せて含んでいる。
【0041】
信頼関係事象テーブルT7は、同一の話題に関する複数の発信を、1個の事象として統合して格納している。以降の説明において、ある話題について最初に発信した発信者を第1発信者、その話題について第1発信者に返答した発信者を第2発信者として説明する。第1発信者および第2発信者はいずれも、講師と受講者の双方がなり得る。
【0042】
例えば、事象No.001においては、オンライン講義において受講者S01が第1発信者として質問をし(第1経路)、同講義内で講師T01が第2発信者として当該質問に対して回答をし(第2経路)、直後に第1発信者の受講者S01が反応している(第3経路)。また、事象No.002は、研修のあった日の日報を入力する運用において、日報上に入力されたテキストデータによる発信を、1個の事象として統合して格納している例である。事象No.003は、オンライン講義において発信された受講者の質問に、講師が講義後にメールで回答し、受講者が別の日にチャットにて反応を送信した場合の例である。本発明では、このように、同一の話題について行われたやり取りを、信頼関係が構築される1の事象と推定して格納している。発信の話題が同一であることを推定する処理については後述する。
なお、同図においては第3経路までが記載されているが、検出された経路は4個以上格納されてもよい。本件発明で3回以上をもって信頼関係構築を検出する理由については、別途後述する。
【0043】
図4(b)は、信頼関係情報DB54に格納されるテーブルの例であって、受講者と講師との間で構築された信頼関係を示す信頼関係指数が格納される信頼関係指数テーブルT8の例である。信頼関係指数テーブルT8は、受講者および講師の識別情報と、当該受講者と講師との間の信頼関係指数とが対応付けられて格納されている。信頼関係指数テーブルT8は、受講者と講師との信頼関係に寄与する信頼関係事象テーブルT7の事象No.が紐づけられていてもよい。
【0044】
図1に戻る。情報取得部11は、講師および受講者による発信を取得する機能部である。情報取得部11は、端末2の入力部21からの入力情報を取得する。入力情報は、例えば他の端末2に送信される情報であり、音声、動画又はテキストデータであってよい。テキストデータは、メールやチャット、Webベースのアンケートや日報等の入力フォームに記載されたデータの他、JIRA(登録商標)等のタスク管理ツールで共有されるタスク、または当該タスクに関するコメント、GitHub(登録商標)等のソフトウェア開発プラットフォームにより共有されたプログラムコード、又は当該プログラムコードのプルリクエスト又はコメントであってもよい。動画には例えば、発信者の反応、例えば頷いたり首をかしげる仕草や表情等が含まれている。また、入力情報は端末2から選択的に入力された情報等であってもよい。選択的に入力された情報とは、例えば絵文字や、あらかじめ登録されているイラスト、いわゆるスタンプであってよい。
【0045】
入力情報は、上述したような他の端末2に送信される情報の他、信頼関係推定装置1により取得され、他の端末2には送信されない情報を含んでいてもよい。この情報は例えば、講師端末2aから入力される、受講者に対する評価情報、又は、受講者端末2bから入力される、講師に対する評価情報である。評価情報は例えば、信頼関係が向上又は下落した旨の情報、およびその程度を、講師又は受講者が入力する。評価情報は、端末2の画面上に表示されたアイコンの選択や、数値入力により入力されてよい。この構成によれば、信頼関係の推定結果に、講師又は受講者の実際の心証をより正確に反映できる。
【0046】
信頼関係分析部12は、講師と受講者の間に構築される信頼関係を推定する機能部である。
【0047】
信頼関係分析部12は、情報取得部11により取得した情報を分析し、発信した講師又は受講者の識別情報を特定する。
例えば、信頼関係分析部12は、入力を受け付けた端末2の識別情報を参照し、発信した講師又は受講者の識別情報を抽出してもよい。例えば、オンライン講義のような、1人1台の端末2から発信する前提の態様においては、この方法により講師又は受講者の識別情報を特定できる。また、チャット、メール又は日報等のWebベースの入力フォーム等、テキストデータを送受信する態様においても、各人が自身の識別情報と紐づけられた端末2から発信するため、講師又は受講者の識別情報を特定できる。
【0048】
信頼関係分析部12は、複数人の音声を1個の端末2で収音する態様の場合には、音声データに含まれる声を分析することで、講師又は受講者を特定してもよい。この場合例えば、講師および受講者の声紋データが予め記憶部50や外部装置に記憶されていて、当該声紋データと照合することで講師又は受講者を特定してもよい。
【0049】
また、信頼関係分析部12は、情報取得部11により取得される情報を参照し、各発信を受信した端末2を特定する。この処理により、信頼関係分析部12は、講師と受講者がお互いに対し発信を行っていることが推定できる。
【0050】
さらに、信頼関係分析部12は、お互いに対し発信を行っている講師と受講者とが、同一の話題に関して交互に発信を行っていることを検出する。
信頼関係分析部12は、講師および受講者による発信を音声データ又はテキストデータにより取得し、発信の内容を分析することで、講師および受講者による発信が同一の話題に関するものであると推定してもよい。
【0051】
信頼関係分析部12は例えば、分析の1態様として、情報取得部11により取得した情報を参照し、発信内容に付随して含まれている情報に基づいて同一の話題の発信かを判定してもよい。例えば、オンライン講義においては、信頼関係分析部12は、発信の時刻情報を参照し、所定時間以内に互いに発信を行っている場合に、同一の話題を発信しているものと推定してもよい。また、日報形式の入力フォームにおいては、同日に紐づけられる発信は、同一の話題に関するものであると推定してもよい。また、日付に限らず、あらかじめ紐づけられて入力されている発信、例えばチャット画面において、特定の投稿に対して「返信」のボタンを選択して投稿されていたり、投稿に対してスレッド式に投稿されている発信は、同一の話題に関するものであると推定してもよい。また、電子メールにおいても、メールソフトにおいて「返信」操作により送信された発信は、返信元のメールと同一の話題として推定してもよい。信頼関係分析部12は例えば、発信の態様に応じて、同一話題の発信か否かの判定方法を異ならせてもよい。
【0052】
信頼関係分析部12による同一の話題か否かの分析は、適宜の機械学習技術を採用してよい。信頼関係分析部12は、例えば、音声データの音声解析を行って、受講者が発話する発話区間における質問内容を特定すると共に、当該発話区間に続いて講師が発話する発話区間における回答内容を特定する。また、信頼関係分析部12は、入力層の入力データとして、動画データ、音声データ又はテキストデータの内容、発信態様、およびデータの発信時刻を含むニューラルネットワークを実現してもよい。このような構成によれば、互いに異なる態様で発信されたものであっても、同一の話題についてやり取りしていることが推定でき、例えば図4(a)の信頼関係事象テーブルT7における事象No.003のようなケースであっても信頼関係が構築された事象として検出することができる。
【0053】
このような構成によれば、信頼関係分析部12は、講師と受講者が同一の話題に関し交互の発信を行った回数を算出できる。信頼関係分析部12は、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に発信が行われたことを検出すると、発信を通じて講師と受講者の間に信頼関係が構築されたものと推定する。
【0054】
講師と受講者との間の信頼関係は、指導・被指導の中におけるコミュニケーションで構築される。コミュニケーションである以上、信頼関係は、第1発信者が一方的に話しかける(図4(a)の信頼関係事象テーブルT7における「第1経路」)のみでは構築されず、少なくとも第2発信者からの反応(図4(a)の信頼関係事象テーブルT7における「第2経路」に相当。なお、「単なる受理や閲覧の事実」も反応に含むものとする。)が必要条件である。しかし、単なる親睦などではなく、指導およびそれに伴う信頼関係の発生という観点においては、2回の相互発信は、成立の十分条件とはならない。例えば、講師が第1発信者として受講者に指導を行い、受講者が第2発信者として返答を行った後、さらに講師が受講者に対し「自分が行った指導が、想定通りに理解されたか、受け取られたか」をさらに確認する(図4(a)の信頼関係事象テーブルT7における「第3経路」)ことで、指導は成立するためである。
【0055】
別の言い方をすれば、指導活動におけるコミュニケーションとは、一種の「フィードバック」である。フィードバックとは、制御工学において「ある入力に基づいて得られる出力を、さらに次の入力に適用すること」であることが知られている。すなわち、制御工学におけるフィードバックの定義を指導活動に適用すると、第2発信者の発信の後に第1発信者がさらなる発信を行い、この発信が第2発信者に入力されることで、フィードバックループが成立するといえる。信頼関係分析部12によれば、このフィードバックループの成立により、講師と受講者の信頼関係が構築されるものと推定して、3回以上交互の発信が行われたことを検出することで、信頼関係の構築有無を適切に推定することができる。
【0056】
なお、受講者が第1発信者として講師に質問を発信する場合についても、第2発信者としての講師から単に回答を得るだけではなく、その回答を受領し、講師に対して自身の理解を表出すること、例えば受講者なりに理解を自分の言葉で言い換えて講師に伝えることを通して、講師・受講者ともに相互の指導が成立したことを実感し、信頼関係が結ばれる。
【0057】
信頼関係分析部12は、情報取得部11により取得した情報を参照し、構築された信頼関係の度合いを推定してもよい。信頼関係の度合いは、例えば信頼関係指数により表され、算出された信頼関係指数が従前の信頼関係指数に加算されて蓄積されていく。
【0058】
信頼関係の度合いは例えば、第2経路における第2発信者の返答、又は第3経路における第1発信者の反応により推定される。例えば、第1経路において第1発信者が質問をし、第2経路において第2発信者が回答した場合に、第3経路で第1発信者が肯定的な反応、すなわち納得した様子の反応を見せた場合には、否定的な反応、すなわち納得しなかった様子の反応を見せた場合に比べて大きな信頼関係が構築されたと推定してもよい。また、第3経路において、具体的なメッセージではなく既読の旨の情報のみが送信された場合であっても信頼関係がある程度構築されたものとしてもよい。この場合、具体的なメッセージが送信された場合に比べて、増大させる信頼関係指数を小さくしてもよい。
【0059】
信頼関係分析部12は、同一の話題と推定された発信の論理的なつながりの強さを、適宜の人工知能技術等により分析して推定し、論理的な繋がりが弱い場合には増大させる信頼関係指数を小さくしてもよい。論理的な繋がりの弱い会話、すなわち意味がかみ合っていない会話では、信頼関係が構築されづらいためである。
【0060】
信頼関係分析部12は、同一の話題について交互に発信が行われた回数に応じて、構築される信頼関係の度合いを異ならせてもよい。例えば、信頼関係分析部12は、発信回数が多いほど信頼関係の度合いを大きくしてもよい。
【0061】
なお、ある事象に起因して構築されたと推定される信頼関係の度合いは、受講者の技術レベル、講師の技術レベル、又は受講者と講師の技術レベルの差に応じて異なっていてもよい。例えば、受講者が否定的な反応をした状況において、受講者の技術レベルが十分低い場合には、信頼関係は構築されていない可能性が高い一方、受講者の技術レベルが所定以上である場合、又は講師の技術レベルとの差異が所定以内である場合には、表面上は否定的な反応であっても建設的な対話となり、信頼関係が増大する可能性がある。そこで、信頼関係分析部12は、受講者が否定的な反応をした場合に、受講者の技術レベルが高いほど、又は受講者と講師の技術レベルの差が小さいほど、信頼関係が増大したものと推定してもよい。なお、受講者および講師の技術レベルは技術分野により異なるため、信頼関係分析部12は、交互に発信が行われた事象が発生した研修の技術分野における技術レベルを参照してよい。また、信頼関係分析部12は、発信内容を分析して、技術分野を推定してもよい。
【0062】
また、ある事象に起因して構築されたと推定される信頼関係の度合いは、当該事象以前に構築されていた信頼関係に応じて異なっていてもよい。ある事象以前に大きな信頼関係が構築されていた場合には、比較的信頼関係がない場合とは異なる反応を表出する蓋然性が高い。例えば、大きな信頼関係が構築されている相手には、信頼関係のない相手に比べて素直な反応を表出するとも考えられるためである。すなわち例えば、大きな信頼関係が構築されている間柄では、否定的な反応であっても、比較的信頼関係の小さい間柄の場合に比べて大きな信頼関係が構築されたものと推定してもよい。
【0063】
また、信頼関係分析部12は、研修情報DB53を参照し、特定の講師と受講者との間で信頼関係が構築された事象が発生した場合に、当該事象が発生した研修に参加していた別の受講者の情報を抽出してもよい。この場合、信頼関係分析部12は、当該別の受講者と当該講師との間の信頼関係も増大させてもよい。別の受講者は、講師の指導を間接的に聞くことで、講師への信頼を強めている場合があるためである。なお、別の受講者において増大する信頼関係は、講師から直接指導を受けている受講者において増大する信頼関係よりも小さくなっていてよい。また、当該研修に同時に参加している人数に応じて、当該別の受講者において増大する信頼関係指数を異ならせてよい。すなわち、同時に参加している人数が少ないほど、増大する信頼関係指数を大きくしてよい。少人数の環境であるほど、別の受講者に対する指導も耳に入りやすく、信頼関係の増大に貢献するものと考えられるためである。
【0064】
信頼関係分析部12は、講師が受講者の集団に対して一斉にアドバイスを声掛けする場合、研修情報DB53を参照して研修の情報を抽出し、当該研修に同時に参加している人数に応じて、当該事象における信頼関係の構築度合いを異ならせて信頼関係指数に加算してもよい。例えば、研修の参加人数が多いほど、当該事象において構築される信頼関係の度合いが小さいものと推定し、参加人数が少ないほど、構築される信頼関係の度合いが大きいものと推定してよい。より具体的には、増大する信頼関係指数を、1人で指導を受けた場合の指数を研修の参加人数で除することで算出してもよい。例えば、少人数の環境で対話を行うほど、相手の発信をより真剣に受け取り、信頼関係も濃密になるものと考えられるところ、本構成によれば、実態に則した信頼関係の推定が可能になる。
【0065】
信頼関係分析部12は、講師と受講者との間ごとに、信頼関係に関する情報として、信頼関係指数を蓄積する。信頼関係分析部12は、推定された信頼関係に基づいて、信頼関係に関する情報、すなわち例えば信頼関係指数を記憶部50の信頼関係指数テーブルT8に格納する。
【0066】
信頼関係分析部12は、信頼関係が構築される事象からの経過時間に基づいて、講師と受講者との間の信頼関係を減少させてもよい。すなわち、信頼関係分析部12は、事象からの時間が経つほど、信頼関係を減少させてもよい。信頼関係は、交流した期間から時を経るに従い減衰していくためである。この構成によれば、より実態に近い信頼関係の推定が可能になる。
【0067】
信頼関係分析部12は、講師と受講者との間の発信状況に応じて、講師と受講者との間の信頼関係を小さくしてもよい。例えば、一方からの発信に対して、他方が否定的な反応をした場合に、当該講師と当該受講者との間の信頼関係指数を減少させてもよい。なお、信頼関係指数を減少させる度合いは、当該事象以前の信頼関係指数に応じて異ならせてもよい。例えば、従前の信頼関係指数が大きい場合には、減少する信頼関係指数を小さくしてよい。比較的充分な信頼関係が構築されている間柄の場合、1回の反応で信頼関係が瓦解することはなく、相手を信頼しているからこそ正直に意見を言えている可能性があるし、誤解があってもすぐに訂正できる可能性が高い。その点、この構成によれば、人の感覚に合致した信頼関係推定が可能になる。
【0068】
なお、増大又は減少させる信頼関係の度合いは、ルールベースの推定処理に限らず、例えば上述した返答や反応の様子、発信回数、受講者の技術レベル、講師の技術レベル、又は受講者と講師の技術レベルの差、事象以前の信頼関係指数、研修参加人数等を入力層とするニューラルネットワークを参照する、適宜の人工知能技術により推定されてよい。
【0069】
通信処理部13は、インターネット等のネットワークNWを介し、信頼関係推定装置1と所定のプロトコルに従ったデータの送受信処理を実行可能とする処理部であって、アプリまたは、Webブラウザ等により実現される。通信処理部13は特に、講師および受講者による発信を端末2から受信する。また、通信処理部13は、講師による発信を講師端末2aから受信し、通信処理部13は、受講者による発信を受講者端末2bから受信する。さらに、通信処理部13は、推定された講師と受講者との信頼関係、又は受講者の技術分野ごとの技術レベル等を、講師端末2a又は受講者端末2bに送信してもよい。さらにまた、通信処理部13は、ネットワークNWを介して接続された適宜の管理装置に、講師と受講者との信頼関係や受講者の技術レベルに関する情報を送信してもよい。
【0070】
また、通信処理部13は、講師端末2a又は受講者端末2bとは異なる適宜の端末と通信を行ってもよい。この端末は、例えば受講者の上司もしくは受講者の所属企業、講師の上司もしくは講師の所属企業、又は研修を企画する研修会社の担当者等が使用する端末である。この端末は、講師端末2aや受講者端末2bと同様の構成になっていてよく、入力部、出力部および通信処理部を有する。
【0071】
講師端末2aもしくは受講者端末2b、又は上記した適宜の端末は、通信処理部13により受信した情報を適宜の態様で出力部22a又は出力部22bに表示する。
図5は、識別情報がS01である受講者(以降、受講者S01という。)における、研修に関する情報等を表示する画面G10の例である。画面G10は例えば、講師端末2aおよび受講者S01の受講者端末2bに表示されうる。画面G10には、受講者S01による研修の受講履歴が表示される。受講履歴は、例えば研修内容、受講日程および担当講師の情報が含まれる。また、画面G10には、技術分野ごとに、当該技術分野における受講者S01の技術レベルと、研修を担当した講師との信頼関係と、が対応付けられて表示される。同図の例では、技術レベルと信頼関係とが互いに直交する指標として2軸に表された散布図が表示されている。また、同図においては、技術分野G01と技術分野G02についての散布図が表示されている。技術分野G01では、講師との信頼関係が良好に築けており、技術レベルも高くなっている一方、技術分野G02では、講師との信頼関係が低く、技術レベルも比較的低くなっていることがわかる。
【0072】
受講者による研修の受講履歴に関する表示態様は、講師端末2a、受講者端末2bおよびその他の端末において同一でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。例えば、その他の端末のうち、研修会社の担当者が使用する端末においては、1人の受講者における複数の講師の信頼関係を一覧可能に表示させてもよい。この構成によれば、研修会社の担当者は、講師との信頼関係を鑑みて受講者を参加させる研修を容易に決定することができる。また、研修会社の担当者が使用する端末において、開催する研修、講師および参加する受講者といった開催態様を自動で決定するシステムを実行する場合に、当該システムは、信頼関係を参照し、開催される研修における受講者と講師との信頼関係が大きくなるように開催態様を決定してもよい。
【0073】
さらに、その他の端末は、講師もしくは受講者又はそれらの所属企業、又は研修会社とは異なる外部企業により使用される端末であってもよい。外部企業は、例えば受講者が就職又は転職を希望している企業である。この構成により、受講者は、外部企業に対し、研修の受講履歴を、講師との信頼関係と共に示すことができる。ひいては、受講者は、研修に漫然と参加したのではなく、講師との信頼関係を構築しながら受講したという、研修への積極的な姿勢を、就職又は転職希望の外部企業にアピールすることができる。
なお、外部企業により使用される端末においては、例えば、研修を管理する研修会社の端末から当該端末に対する閲覧許可が入力された場合にのみ、所定の受講者の受講履歴が表示されるようになっていてもよい。また、研修会社の端末において、外部企業に閲覧させるために、受講履歴を受講者ごとに証明書として発行可能となっていてもよい。この構成によれば、研修会社は、自身が管理する研修に参加した受講者の受講履歴を、講師の信頼関係とともに経歴情報として、外部企業に提示することができる。
【0074】
●信頼関係推定装置1および各端末2の処理にかかるシーケンス図
図6~7を用いて、信頼関係推定における信頼関係推定装置1および各端末2の情報の流れについて説明する。
図6(a)は、講師および受講者がそれぞれの端末2a、2bを介して発信を行う態様の例であり、例えばオンライン講義を想定したシーケンス図である。同図の例においては、まず、受講者端末2bは、受講者が発信する講師への質問を音声および動画で取得し、信頼関係推定装置1に送信する(ステップS101)。受講者の質問音声および動画は、信頼関係推定装置1を介して、又は受講者端末2bから直接講師端末2aに送信される。次いで、講師端末2aは、返答を音声又は動画等で取得し、信頼関係推定装置1に送信する(ステップS102)。次いで、受講者端末2bは、受講者からの反応を、音声又は動画で取得し、信頼関係推定装置1に送信する(ステップS103)。受講者の反応は、信頼関係推定装置1を介して、又は受講者端末2bから直接、講師端末2aに送信される。
【0075】
信頼関係推定装置1は、信頼関係分析部12により、ステップS101~ステップS103において収集した情報を分析する(ステップS104)。講師および受講者により、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に前記発信が行われたことを検出すると(ステップS105でY)、信頼関係指数を増加させる(ステップS106)。
【0076】
図6(b)は、講師および受講者がそれぞれの端末2a、2bを介してデータの発信を行う態様を想定したシーケンス図である。発信されるデータは、講師端末2aを介して講師から送信される、例えばメール又はチャットにおけるメッセージであり、例えばテキストデータであるが、音声、画像又は動画データでもよい。また、ステップS111~S113において発信されるデータは、互いに異なる種類のデータであってもよい。なお、ステップS111~S113のいずれかにおいて発信されるデータは、図6(a)で示したようなオンライン講義における発信であってもよい。
なお、以降の説明において、既出のシーケンス図と同様の処理については同じ符号を付した。
【0077】
図6(b)の例においては、まず、受講者端末2bはデータの内容入力を受け付け、信頼関係推定装置1を介して、又は受講者端末2bから直接、講師端末2aにデータを送信する(ステップS111)。次いで、講師端末2aは受講者端末2bからデータを受信した後に、返信としてのデータの内容入力を受け付け、信頼関係推定装置1を介して、又は講師端末2aから直接、受講者端末2bにメールを送信する(ステップS112)。次いで、受講者端末2bは講師端末2aからデータを受信した後に、反応としてのデータの内容入力を受け付け、信頼関係推定装置1を介して、又は受講者端末2bから直接、講師端末2aにデータを送信する(ステップS113)。ステップS113においては、講師に伝える具体的なメッセージを送信する構成に代えて、又は加えて、受講者端末2bにおいて講師からのデータが表示又は閲覧されると、既読の旨の情報が信頼関係推定装置1又は講師端末2aに送信されてもよい。
【0078】
図7(a)は、Webベース又は所定のアプリケーションにより実現される入力フォームにデータが入力される態様を想定したシーケンス図である。入力フォームは、例えば日報やアンケートであってよい。また、入力フォームは、講師が受講者に対して実施するテストであってもよい。入力フォームは、ソフトウェア開発プラットフォームにより実現されていてもよく、この場合に入力されるデータは、講師および受講者間で共有されたプログラムコード、又は当該プログラムコードのプルリクエストでもよい。
【0079】
図7(a)の例においては、まず、受講者に対して入力フォームの情報が配信され、受講者端末2bの画面に入力フォームが表示される(ステップS121)。なお、入力フォームの配信は、信頼関係推定装置1から行ってもよいし、適宜の外部装置から行ってもよい。受講者端末2bから、発信として入力フォームへの入力を受け付けると(ステップS122)、信頼関係推定装置1は入力された情報を受信し、講師端末2aに送信する。講師端末2aは、受講者端末2bから発信された情報を表示するとともに、発信としての入力を受け付ける(ステップS123)。この発信は、例えば受講者からの発信に対するコメント、アドバイス又は指導等を含んだテキストデータである。信頼関係推定装置1は入力された情報を受信し、受講者端末2bに送信する。受講者端末2bは、講師端末2aから発信された情報を表示するとともに、発信としての入力を受け付ける(ステップS124)。
【0080】
なお、ステップS122~S124において取得されるデータは、端末2から入力される構成に代えて、発信者の情報と共に信頼関係推定装置1に直接入力されてもよい。この態様は、例えば紙等に記載されたデータを信頼関係推定装置1に接続されているスキャナやキーボード等の適宜の入力装置を介して読み取らせる場合が考えられる。
また、上述の例では、すべての発信が入力フォームを介して行われるものとしたが、一部がメールやチャット等、異なる形式で行われてもよいことは勿論である。
【0081】
図7(b)は、1個の端末2から複数人の発信を受け付け、信頼関係推定装置1により発信者を分離して信頼関係を分析する態様を想定したシーケンス図である。この態様は例えば、教室に備えられた1個の端末2により、講師および受講者の声を広く収音する場合が考えられる。まず、端末2は、講師又は受講者からの発信を複数取得し(ステップS131~S133)、信頼関係推定装置1はこれを受信する。発信は、例えば音声又は動画データである。次いで、信頼関係推定装置1は、適宜の声紋認証技術又は顔識別技術等を用いてステップS131~S133で取得した発信の発信者を特定する(ステップS134)。また、信頼関係推定装置1は、講師および受講者が話している話題を分析し、同一の話題について3回以上交互に発信しているかを分析する。
【0082】
上述の通り、本発明にかかる信頼関係推定装置によれば、講師と受講者との間に構築される信頼関係の強さを推定することができる。
【0083】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 信頼関係推定装置
11 入力取得部
12 信頼関係分析部
13 通信処理部
50 記憶部
2 端末
2a 講師端末
2b 受講者端末
【要約】
【課題】 講師と受講者との間に構築される信頼関係の強さを推定する。
【解決手段】 講師と受講者との間に構築される信頼関係を推定する信頼関係推定装置1であって、講師および受講者による発信を取得する情報取得部11と、発信を参照し、講師および受講者により、同一の話題に関し、少なくとも3回以上交互に発信が行われたことを検出すると、発信を通じて講師と受講者の間に信頼関係が構築されたものと推定して、信頼関係に関する情報として記憶部50に格納する信頼関係分析部12と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7