(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】機能性壁紙
(51)【国際特許分類】
D06N 7/06 20060101AFI20240214BHJP
B32B 5/00 20060101ALI20240214BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240214BHJP
B32B 27/04 20060101ALI20240214BHJP
D04H 1/26 20120101ALI20240214BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20240214BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20240214BHJP
D21H 13/24 20060101ALI20240214BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20240214BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20240214BHJP
E04F 13/077 20060101ALI20240214BHJP
D21H 27/20 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
D06N7/06
B32B5/00 Z
B32B27/00 E
B32B27/04 A
D04H1/26
D04H1/435
D04H1/4382
D21H13/24
D21H19/20 A
E04F13/07 B
E04F13/077
D21H27/20 A
(21)【出願番号】P 2023559986
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2022042654
(87)【国際公開番号】W WO2023106059
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2021201286
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500203592
【氏名又は名称】株式会社ナガイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003650
【氏名又は名称】弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】松島 慎吾
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-206973(JP,A)
【文献】特開2015-048541(JP,A)
【文献】特開昭58-208497(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1246736(KR,B1)
【文献】特開2004-107827(JP,A)
【文献】特開平10-264283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00 - 7/00
B32B 1/00 - 43/00
D21H 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材の一方面に、水性塗料が含浸した含浸層を有する機能性壁紙であって、
前記シート基材は、5~55重量%のポリエステル繊維と、45~95重量%のパルプとを含む不織布であり、
前記含浸層に含浸した水性塗料の乾燥時の重量が、20g/m
2~150g/m
2であり、
前記シート基材の表面におけるポリエステル繊維の結晶化度が、前記シート基材の内部におけるポリエステル繊維の結晶化度よりも低い、
ことを特徴とする機能性壁紙。
【請求項2】
前記シート基材は、5~40重量%の前記ポリエステル繊維と、60~95重量%の前記パルプを含むことを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項3】
前記シート基材の一方面の表面の十点平均粗さが、8μm~14μmであることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項4】
前記シート基材の一方面の表面の十点平均粗さが、9μm~13μmであることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項5】
前記シート基材は、20~35重量%のポリエステルと、65~80重量%のパルプとを含む不織布であることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項6】
前記シート基材は、10~30重量%のポリエステルと、60~85重量%のパルプと、1~5重量%のポリオレフィン繊維とを含む不織布であることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項7】
前記含浸層に含浸した水性塗料の乾燥時の重量が、27g/m
2~137g/m
2であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の機能性壁紙。
【請求項8】
前記水性塗料に光触媒機能を有する材料が含まれている、または前記含浸層上に光触媒機能を有する材料が含まれるコーティング層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項9】
前記水性塗料に、5~20重量%の水酸化カルシウムが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項10】
前記水性塗料に、前記水性塗料の固形分を100重量部としたときの0.05~50重量部の銀が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項11】
前記シート基材の他方面に接着剤が塗布された接着層を有することを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項12】
前記含浸層上に、顔料を含むインク層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【請求項13】
前記シート基材の一方面にエンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の機能性壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性を有する壁紙に関し、特に透湿性、通気性、高い耐久性および高い強度を有し、水中伸度(浸水伸度)が低く、かつ美観が損なわれ難く、さらに施工性に優れた壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から吸湿材や活性炭等の機能性物質を有する壁紙が知られている。例えば、特許文献1には、基材層と表面層からなる壁紙において、表面層の上側に、多孔質無機物質とアミン化合物と金属酸化物からなる消臭剤と、撥水樹脂化合物と、層状珪酸塩鉱物とが、バインダー樹脂により浸透剤とともに固着されていることを特徴とする防汚消臭壁紙が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、パルプ繊維と合成繊維とを含んだ不織布であって、前記合成繊維として異型断面を有する合成繊維を含み、前記パルプ繊維と円型断面を有する合成繊維と前記異型断面を有する合成繊維の含有質量比率が80~50:40~0:50~10であることを特徴とする不織布であって、壁紙にも利用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-117222号公報
【文献】特開2018-3218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の防汚消臭壁紙は、消臭性を有するが、透湿性、抗菌性および抗ウイルス性を有さないという問題点があった。その結果、壁紙の表面に結露やカビが発生してしまう可能性があるという問題点があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載の不織布は、透湿性・放湿性が低い可能性が高いという問題点や耐久性が低いという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑み、透湿性(吸湿性・放湿性)、通気性(透気性)等の多機能性、高い耐久性および高い強度を有し、水中伸度(浸水伸度)が低く、かつ美観が損なわれ難く、さらに施工性に優れた機能性壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究・開発を続けた結果、以下のような画期的な機能性壁紙を見出した。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、シート基材の一方面に、水性塗料が含浸した含浸層を有する機能性壁紙であって、シート基材は、5~55重量%のポリエステル繊維と、45~95重量%のパルプとを含む不織布であり、含浸層に含浸した水性塗料の乾燥時の重量が、20g/m2~150g/m2である、ことを特徴とする機能性壁紙にある。
【0010】
ここで、ポリエステル繊維とは、ポリエステルで構成された繊維をいう。また、「含浸」とは、水性塗料が不織布の微細な穴や溝等に浸み込んだ状態だけでなく、不織布の表面に水性塗料の一部が表出している状態を含む概念である。
【0011】
かかる第1の態様によれば、高い引張強度と低い水中伸度とを兼ね備えており、躯体の移動や水分の吸収による割れや破れの発生をより防ぐことができる機能性壁紙を提供することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、シート基材は、5~40重量%のポリエステル繊維と、60~95重量%のパルプを含むことを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0013】
かかる第2の態様によれば、より高い引張強度とより低い水中伸度とを兼ね備えており、躯体の移動や水分の吸収による割れや破れの発生をさらに防ぐことができる機能性壁紙を提供することができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、シート基材の一方面の表面の十点平均粗さが、8μm~14μmであることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0015】
かかる第3の態様によれば、十分な厚みの含浸層を形成することができるので、美観が損なわれ難い機能性壁紙を提供することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、シート基材の一方面の表面の十点平均粗さが、9μm~13μmであることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0017】
かかる第4の態様によれば、十分な厚みを有する含浸層を容易に形成することができる。
本発明の第5の態様は、シート基材は、20~35重量%のポリエステルと、65~80重量%のパルプとを含む不織布であることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0018】
かかる第5の態様によれば、高い引張強度と低い水中伸度とを兼ね備え、躯体の移動や水分の吸収による割れや破れの発生をより防ぐことができる機能性壁紙を提供することができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、シート基材は、10~35重量%のポリエステルと、60~85重量%のパルプと、1~5重量%のポリオレフィン繊維とを含む不織布であることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0020】
ここで、ポリオレフィン繊維とは、ポリオレフィンで構成された繊維をいう。
【0021】
かかる第6の態様によれば、引張強度がより高く、水中伸度がより低く、かつ毛羽立ちを防ぐことができる機能性壁紙を提供することができる。
【0022】
本発明の第7の態様は、シート基材の表面におけるポリエステル繊維の結晶化度が、シート基材の内部におけるポリエステル繊維の結晶化度よりも低いことを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0023】
かかる第7の態様によれば、引張強度や水中伸度を変えることなく、シート基材の柔軟性を向上させることができる。その結果、後述するエンボスを容易に形成することができる。また、ポリエステル繊維の製造に純度の高い(結晶化度の低い)材料を用いる必要がなく、例えばリサイクル樹脂を用いたポリエステル繊維を利用することができる。
【0024】
本発明の第8の態様は、含浸層に含浸した水性塗料の乾燥時の重量が、27g/m2~137g/m2であることを特徴とする第1~第7の態様の何れか1つに記載の機能性壁紙にある。
【0025】
かかる第8の態様によれば、含浸層の厚みが十分で削れにくく、かつ割れ難いので、より美観が損なわれ難く、より扱いやすい機能性壁紙を提供することができる。
【0026】
本発明の第9の態様は、水性塗料に光触媒機能を有する材料が含まれている、または含浸層上に光触媒機能を有する材料が含まれるコーティング層が設けられていることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0027】
かかる第9の態様によれば、光触媒機能を発揮させることができるので、消臭機能、殺菌機能等の機能を有する機能性壁紙を提供することができる。
【0028】
本発明の第10の態様は、水性塗料に、5~20重量%の水酸化カルシウムが含まれていることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0029】
かかる第10の態様によれば、より高い吸湿性および、より高い放湿性、抗菌機能、抗ウイルス機能、消臭機能、揮発性有機化合物(VOC)吸着機能、二酸化炭素吸着機能を有する機能性壁紙を提供することができる。
【0030】
本発明の第11の態様は、水性塗料の固形分を100重量部としたときの0.05~50重量部の銀が含まれていることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0031】
ここで、「固形分」とは、塗料が乾燥した後、塗膜として残る成分の割合をいう。
【0032】
かかる第11の態様によれば、高い抗菌性を有する機能性壁紙を提供することができる。
【0033】
本発明の第12の態様は、含浸層に含浸させる前の水性塗料の粘度が、0.26pa・s~1.7pa・sの範囲にあることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0034】
かかる第12の態様によれば、適切な量の水性塗料を不織布に均一含浸させることができるので、優れた美観の機能性壁紙を製造することができる。
【0035】
本発明の第13の態様は、シート基材の他方面に接着剤が塗布された接着層を有することを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0036】
かかる第13の態様によれば、建物の壁等に、機能性壁紙を容易に貼付することができる。
【0037】
本発明の第14の態様は、含浸層上に、顔料を含むインク層が設けられていることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0038】
かかる第14の態様によれば、精細な文字や色彩等が印刷された機能性壁紙を提供することができる。
【0039】
本発明の第15の態様は、シート基材の一方面にエンボス加工が施されていることを特徴とする第1の態様に記載の機能性壁紙にある。
【0040】
かかる第15の態様によれば、美観を向上させ、かつ美観が損なわれ難い機能性壁紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は実施形態1に係る機能性壁紙の概略側面図である。
【
図2】
図2は引張強さ、引張破断伸びおよび湿潤引張強さの実験結果を示す表である。
【
図3】
図3は引張強度試験の試験結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は透湿性試験の試験結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は結露試験の実験装置の概略斜視図である。
【
図7】
図7は結露試験の実験装置の様子を示す写真である。
【
図8】
図8は抗菌力試験の試験条件を示す表である。
【
図10】
図10は実施形態3に係る機能性壁紙の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る機能性壁紙の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
【0043】
図1は、実施形態1に係る機能性壁紙の概略側面図である。この図に示すように、本実施形態に係る機能性壁紙1は、一方面(上面)に、水性塗料が含浸した含浸層15を有するシート基材である不織布10で構成されている。
【0044】
まず、不織布10について説明する。不織布10は、5~55重量%のポリエステル繊維と、45~95重量%のパルプを含むものであればその構造は特に限定されないが、5~40重量%のポリエステル繊維と、60~95重量%のパルプを含むものが好ましい。
【0045】
パルプとしては、針葉樹さらし化学パルプ(NBCP)、広葉樹さらし化学パルプ(LBCP)やこれらの混合物を用いることができる。そして、パルプの断面形状は、特に限定されないが、円形状や楕円形状のもの(異形断面のものを含まない)が、パルプ同士が適度に絡み合うことで引張強度が向上するので好ましい。また、パルプおよびポリエステル繊維の径としては、5μm~20μmのものが好ましく、10μm~15μmのものがより好ましい。
【0046】
ポリエステル繊維としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の繊維が好ましい。
【0047】
このような構成の不織布は、引張強度が高い(例えば100N/15mm以上)ので、構造物の乾燥や地殻の揺れ等による躯体の移動に伴う機能性壁紙1の割れや破れを防ぐことができる。引張強度が100N/15mmより小さいと、躯体の移動に伴って機能性壁紙の割れや破れが発生する可能性がある。
【0048】
また、このような構成の不織布10は水中伸度(浸水伸度)が低い(例えば0.5%以下、好ましくは0.3%以下)ので、水分(湿気)を吸収しても膨張し難い。その結果、水分の吸収による機能性壁紙1の破れを防ぐことができる。水中伸度が1%より大きいと、水分の吸収による機能性壁紙の破れが発生する可能性がある。なお、水中伸度は、J.TAPPI No.27-Bに規定されている試験方法より測定することができる。
【0049】
さらに、このような構成の不織布10は、十分な吸湿性(例えば105g/m2以上)や放湿性(例えば77g/m2以上)を有する。ここで、吸湿性とは空気中の水分(湿気)を吸い取る性質をいい、放湿性とは吸収した水分を放出する性質をいう。
【0050】
なお、ポリエステル繊維およびパルプの重量比率は、20~35重量%および65~80重量%が好ましい。このような構成の不織布10は、高い引張強度と低い水中伸度とを兼ね備えており、躯体の移動や水分の吸収による機能性壁紙1の割れや破れの発生をより防ぐことができる。なお、不織布10には、ポリエステル繊維およびパルプ以外に、ガラス繊維を含むように不織布10を構成してもよい。ガラス繊維を含めることにより、不織布10の強度や耐久性を向上させることができる。
【0051】
さらに、不織布10には、これらの繊維以外に、安定剤として酸化チタン等が含まれていてもよいし、合成ゴム系・アクリル系・酢酸ビニル系・塩化ビニル系・ウレタン系のバインダー等が含まれていてもよい。なお、不織布10には、ポリエステル繊維およびパルプ以外のものが含まれていなくてもよいのは言うまでもない。
【0052】
加えて、不織布10の一方面(含浸層15が形成される面)の表面の十点平均粗さ(Rz)は、8μm~14μmであるものが好ましい。十点平均粗さが8μmより小さいと、水性塗料が不織布10に含浸し難く、十分な厚みの含浸層15を形成することができない。一方、十点平均粗さが14μmより大きいと、含浸層15が剥がれ易くなってしまう。その結果、機能性壁紙1の美観が損なわれ易くなってしまう。なお、不織布10の一方面(含浸層15が形成される面)の表面の十点平均粗さは、9μm~13μmであるものが特に好ましい。このような構造の不織布10は、十分な厚みを有し、剥がれ難い含浸層15を容易に形成することができる。なお、十点平均粗さ(Rz)は、例えばZygo製白色干渉計NEXVIEW等を用いて測定することができる。
【0053】
さらに、不織布10の表面におけるポリエステル繊維の結晶化度が、不織布10の内部におけるポリエステル繊維の結晶化度よりも低いことが好ましい。このような構造の不織布は、引張強度や水中伸度を変えることなく、シート基材の柔軟性を向上させることができる。ポリエステル繊維の結晶化度については、例えば、ポリエステル繊維の融点を比較すること等によって把握することができる(融点の低いポリエステル繊維の方が、融点の高いポリエステル繊維よりも結晶化度が低いと判断できる)。なお、このような不織布は、加熱した後に、急速に冷却すること等によって製造することができる。
【0054】
次に、含浸層15について説明する。含浸層15は、不織布10の一方面に水性塗料が含浸している層であればその厚みは限定されないが、含浸層15に含浸した水性塗料の乾燥時の重量は20g/m2~150g/m2である必要がある。ここで、「乾燥時」とは、建築材料の含水率測定方法(JIS A 1476:2016)を用いた場合に、水性塗料の含水率が8%の状態をいう。
【0055】
含浸層15に含浸した水性塗料の乾燥時の重量が20g/m2より少ないと、含浸層15の厚みが不十分で削れやすくなる。その結果、機能性壁紙1の美観が損なわれ易くなってしまう。一方、含浸層15に含浸した水性塗料の乾燥時の重量が150g/m2より多いと、含浸層15の重量が重くなるので機能性壁紙1の重量も重くなる。その結果、機能性壁紙1が扱いにくくなる。同時に、水性塗料が含浸した含浸層15の厚みが厚くなるので、含浸層15が割れやすくなる。その結果、機能性壁紙1の美観が損なわれ易くなってしまう。
【0056】
なお、含浸層15に含浸した水性塗料の乾燥時の重量は、27g/m2~137g/m2であることが好ましい。水性塗料の乾燥時の重量がこの範囲の含浸層15は、厚みが十分で削れにくく、かつ割れ難い。その結果、美観が損なわれ難く、扱いやすい機能性壁紙1となる。
【0057】
ここで、水性塗料は、不織布10に含浸することができるものであれば特に限定されないが、塗料の主成分である油や樹脂を水に分散させた水性エマルション塗料が好ましく、水が蒸発する際にエマルション粒子が凝集・融着して連続した塗膜を形成する合成樹脂エマルション塗料が特に好ましい。水性塗料としては、例えば、水性ケンエース(日本ペイント社株式会社製)、エコフラット100等のエコフラット(登録商標)シリーズ(日本ペイント株式会社製)、アレス(登録商標)ダイナミックシリーズ(関西ペイント株式会社製)、カンペ内装エマルションV(関西ペイント株式会社製)、ケリーモア(ブライトン株式会社製)や、Jカラー(ターナー色彩株式会社)等が挙げられる。
【0058】
水性塗料を不織布10に含浸させることにより、不織布の透湿性を阻害することなく、含浸層15を形成することができる。その結果、十分な透湿性を有する機能性壁紙1を提供することができる。また、水性塗料として水性エマルション塗料を用いると、各微粒子が均一に分散しているので、均一な含浸層を形成することができる。その結果、優れた美観の機能性壁紙を提供することができる。さらに、水性塗料として合成樹脂エマルションペイントを用いると、優れた美観を有し、かつ環境負荷の少ない機能性壁紙を提供することができる。
【0059】
また、水性塗料には、光触媒機能を有する材料(光触媒材料)、水酸化カルシウム、銀(銀イオン)等が1種類以上含まれていてもよい。例えば、光触媒を含む水性塗料を用いることにより、機能性壁紙1に、光触媒機能を持たせることができる。すなわち、機能性壁紙1に、消臭機能、殺菌機能、抗ウイルス機能、防藻機能、防カビ機能等を付与することができる。なお、不織布10に含浸させる前の水性塗料に対する光触媒材料の割合は、0.1~15重量%が好ましい。光触媒材料が0.1重量%よりも少ないと、十分な光触媒機能を発揮することができない。一方、光触媒材料が15重量%よりも多いと、塗料としての機能(保護、美観等)を発揮することができない。また、不織布10に含浸させる前の水性塗料に対する光触媒材料の割合は、光触媒機能と、塗料としての機能を両立させることができる5~10重量%が特に好ましい。
【0060】
ここで、光触媒材料は、光触媒機能を有するものであれば特に限定されないが、可視光応答型光触媒を含むものが好ましい。光触媒材料としては、例えば、光触媒機能を有する二酸化チタン、可視光応答型光触媒機能を有する二酸化チタン等が挙げられる。
【0061】
光触媒材料としては、具体的には、特許第7080593号公報に記載されている塗料組成物が挙げられる。この塗料組成物を含む水性塗料を用いることにより、機能性壁紙1が変色し難く、かつ機能性壁紙1に抗菌性、抗ウイルス性等を付与することができる。
【0062】
また、水酸化カルシウムを含む水性塗料を用いることにより、機能性壁紙1に、より高い吸湿性および高い放湿性、抗菌機能、抗ウイルス機能、消臭機能、揮発性有機化合物(VOC)吸着機能、二酸化炭素吸着機能等を付与することができる。なお、不織布10に含浸させる前の水性塗料に対する水酸化カルシウムの割合は、5~20重量%が好ましい。水酸化カルシウムの割合が5重量%よりも少ないと、上述した高い吸湿性および高い放湿性等を発揮することができない。一方、水酸化カルシウムの割合が20重量%よりも多いと、塗料としての機能(保護、美観等)を発揮することができない。また、不織布10に含浸させる前の水性塗料に対する水酸化カルシウムの割合は、塗料としての機能(保護、美観等)をより発揮させることができる10~15重量%が特に好ましい。
【0063】
なお、水酸化カルシウムを含む水性塗料としては、壁紙に含浸させる前の水性塗料に対する水酸化カルシウムの割合が5~20重量%であるものであれば特に限定されないが、例えば、漆喰と同様の成分が含まれている水性塗料等が挙げられる。漆喰と同様の成分が含まれている水性塗料としては、例えば、関西ペイント株式会社が製造・販売しているアレスシックイ等が挙げられる。
【0064】
さらに、銀(銀イオン)を含む水性塗料を用いることにより、機能性壁紙1に、高い抗菌性を付与することができる。なお、、銀(銀イオン)を含む水性塗料は、銀(銀イオン)を含むものであれば特に限定されないが、銀イオンが担持された無機系抗菌剤が好ましい。銀イオンが担持された無機系抗菌剤の具体例としては、例えばノバロン(登録商標)(東亞合成株式会社製)が挙げられる。また、水性塗料における銀(銀イオン)の含有割合は、水性塗料の固形分を100重量部としたときの0.05~50重量部が好ましく、0.5~10重量部が特に好ましい。
【0065】
加えて、水性塗料としては、含浸層15に含浸させる前の粘度が0.26pa・s~1.7pa・sであるものが好ましい。水性塗料の粘度が0.26pa・sより小さいと、水性塗料を不織布10の表面に十分に塗布することができず、適切な量の水性塗料を不織布10に均一含浸させることができなくなる。その結果、美観が良くない機能性壁紙1となる。一方、水性塗料の粘度が1.7pa・sより大きいと、適切な量の水性塗料を均一含浸させることができなくなる。なお、粘度は、水性塗料の温度を20℃とし、ザーンカップ5番を用いて測定することができる。
【0066】
次に、本実施形態に係る機能性壁紙1の製造方法について説明する。本実施形態に係る機能性壁紙1は、次のようにして製造することができる。まず、不織布10の一方面に、ロールコータ―等のコーター機を用いて、水性塗料を塗布する。次に、水性塗料が塗布された不織布を乾燥させる。その後、所定の形状に裁断することによって、機能性壁紙1製造することができる。
〔実施例1〕
【0067】
47重量%のポリエステル繊維と、53重量%のパルプで構成され、表面におけるポリエステル繊維の結晶化度が、内部におけるポリエステル繊維の結晶化度よりも低い不織布に関し、引張強さ、引張破断伸びおよび湿潤引張強さを測定した。その結果を
図2に示す。
【0068】
この図から分かるように、この不織布は、寸法があまり変化せず、かつ十分な強度の引張強さおよび湿潤引張強さを有することが分かった。
(実施形態2)
【0069】
上述した実施形態では、ポリエステル繊維と、パルプとで不織布を構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、10~35重量%のポリエステルと、60~85重量%のパルプと、1~5重量%のポリオレフィン繊維とで不織布を構成してもよい。
【0070】
このような構造の不織布は、ポリオレフィン繊維を含むことにより耐水性・密着性が向上するので、引張強度がより高く、水中伸度がより低く、かつ毛羽立ちを防ぐことができるものとなる。その結果、高い引張強度と低い水中伸度とを兼ね備えており、躯体の移動や水分の吸収による割れや破れの発生をより防ぐことができる機能性壁紙を提供することができる。
【0071】
ここで、ポリオレフィン繊維は特に限定されないが、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)で構成されたものが好ましい。ポリエチレンまたはポリプロピレンからなるポリオレフィン繊維を用いることにより、引張強度がさらに高く、水中伸度がさらに低い不織布となる。
【0072】
また、ポリエステルは20~35重量%で、パルプは60~70重量%で、ポリオレフィン繊維は3~5重量%のものが、引張強度がさらに高く、水中伸度がさらに低いものとなるので、好ましい。
【0073】
なお、不織布には、ポリエステル繊維、パルプおよびポリオレフィン繊維以外に、上述したガラス繊維、安定剤またはバインダー等が含まれていてもよいが、それらが含まれていなくてもよいのは言うまでもない。
<引張強度試験>
【0074】
次の本発明に係る不織布〔実施例2〕と、従来のビニールクロス〔比較例1〕に関し、引張強度試験を行った。
〔実施例2〕
【0075】
不織布:30重量%のポリエステル繊維(PETおよびPBT)と67重量%のパルプ、3%のポリオレフィン繊維(PEおよびPP)で構成された不織布
〔比較例1〕
ビニールクロス:SP2350(株式会社サンゲツ社製)
【0076】
これらのシート基材に対し、JIS P 8113に準拠して、引張強度を測定した。その結果を
図3に示す。この図に示すように、本実施形態に係る不織布(a1)は、従来のビニールクロス(b1)と比較して、縦方向の引張強度および横方向の引張強度の何れも高い値を示したことが分かった。なお、この試験において、縦方向とは、裁断前のロール状に製造された不織布の長手方向をいい、横方向とは、裁断前のロール状に製造された不織布の短手方向のことをいう。
<透湿係数・透湿抵抗試験>
【0077】
実施例2の不織布に関し、JIS L 1099:2012に準拠して透湿性、透湿係数および透湿抵抗を測定した。その結果、実施例2の不織布の透湿性は36g/m2・hであり、透湿係数は1506.1ng/(m2・s・Pa)であり、透湿抵抗は0.000664(m2・s・Pa)/ngであった。すなわち、実施例2の不織布は、透湿性および透湿係数は高い数値を示し、透湿抵抗は低い値を示すことが分かった。
<水中伸度試験>
【0078】
実施例2の不織布に関し、次のようにして、水中伸度(30分浸漬、24時間放置)を測定した。まず、水に浸漬する前の不織布の所定の寸法(縦横の寸法)をそれぞれ測定した。次に、不織布を精製水(蒸留水)に30分浸漬した後取り出して、浸漬前と同様に、縦横の寸法をそれぞれ測定した。この動作を5回繰り返した後、縦横の寸法の平均値(浸漬前の寸法の平均値L0、30分浸漬後の寸法の平均値L1)を算出した。そして、30分浸漬の水中伸度RをR=(L1―L0)/L0にそれぞれ代入して算出した。
【0079】
同様にして、まず、水に浸漬する前の不織布の所定の寸法(縦横の寸法)をそれぞれ測定した。次に、不織布を精製水(蒸留水)に30分浸漬した後、23℃、湿度50%の環境下で24時間放置した。その後、不織布を取り出して、縦横の寸法をそれぞれ測定した。この動作を5回繰り返した後、縦横の寸法の平均値(浸漬前の寸法の平均値L0、24時間放置後の寸法の平均値L2)を算出した。そして、30分浸漬の水中伸度RをR=(L2―L0)/L0にそれぞれ代入して算出した。
【0080】
これらの結果を、
図4に示す。この表から分かるように、実施例2の不織布は、精製水に浸漬させてもほとんど伸縮せず、低い値を示すことが分かった。
<透湿性試験>
【0081】
次の機能性壁紙〔実施例3〕と、従来の壁紙〔比較例2〕および〔比較例3〕を作製し、それぞれの壁紙を711-405(ヤヨイ化学工業株式会社製)を介して、石膏ボード:せっこうボード12.5mm(チヨダウーテ株式会社)に貼り付けた。そして、各壁紙に対して、透湿性試験を行った。
〔実施例3〕
不織布:実施例2に用いたものと同じ構成の不織布
水性塗料:アクリル樹脂系塗料
含浸層に含浸した水性塗料の乾燥時の重量:51(±5.0)~61(±5.0)g/m2
〔比較例2〕
ビニールクロス(一般ビニールクロス):SP2350(株式会社サンゲツ社製)
〔比較例3〕
ビニールクロス(一般通気性ビニールクロスAA級):FE4476(株式会社サンゲツ社製)
【0082】
これらの壁紙に関し、JIS A 6901に準拠して、吸湿量および放湿量を測定した。具体的には、100mm×100mmサイズの試験体(各壁紙)に澱粉系接着剤で壁紙を貼付した。その後、温度を23℃に固定した上で、湿度が53%→93%→53%となるように操作した。そして、各湿度状態を24時間保持し、各壁紙の重量を測定し、最終的に吸湿量および放湿量を算出した。その結果を
図5に示す。
【0083】
この図に示すように、実施例3(a2)の方が、比較例2(b2)および比較例3(b3)と比較して、吸湿量および放湿量の何れも高い値を示したことが分かった。
<結露試験>
【0084】
次の機能性壁紙〔実施例3〕と、従来の壁紙〔比較例2〕に対して結露試験を行った。具体的には、温度が25℃で一定の空間内に、360mm×250mm×400mmの密閉型の直方体状実験装置を2つ設置した。
図6に示すように、各実験装置100の正面には、矩形状の透明アクリル板からなる窓部150が形成されており、外部から実験装置100の内部の状態を観察できるようなっている。また、左右側面の内部壁には、接着剤を介して、205mm×360mmの実施例3の壁紙(エコフリース)または比較例2の壁紙(一般ビニールクロス)200a、200bがそれぞれ貼付されている。さらに、各実験装置100の中央部には、40Wの電球110と、水が入った容器(図示しない)とが配置されている。なお、各実験装置100の枠体は木製である。
【0085】
そして、この電球110を6時間点灯させて、各実験装置100内の湿度・結露状態を調べた。その際の実験装置の様子を
図7に示す。この図に示すように、実施例2の壁紙が貼付された実験装置では結露は生じなかったが、比較例2の壁紙が貼付された実験装置では結露が生じたことが分かった。
【0086】
なお、実施例3の壁紙が貼付された実験装置では、装置内の温度が40.2℃のとき、湿度は56%だった。一方、比較例2の壁紙が貼付された実験装置では、装置内の温度が37.8度のとき、湿度は90%だった。
<抗菌力試験>
【0087】
次の機能性壁紙〔実施例4〕に対して、抗菌力試験を行った。
〔実施例4〕
不織布:実施例2に用いたものと同じ構成の不織布
水性塗料:アクリル樹脂系塗料
含浸層に含浸した水性塗料の乾燥時の重量:51.5(±5.0)g/m2~63.5(±5.0)g/m2
【0088】
この壁紙に対し、JIS R 1752に準拠して、
図8に示す試験条件における抗菌力試験(試験片1個当たりの生菌数の測定については、各段階において試験片毎に3回)を行った。その結果を
図9に示す。
【0089】
この結果から分かるように、実施例4に係る壁紙(検体1および2)は、十分な抗菌力を有することが分かった。
<透気度測定試験>
【0090】
実施例4および比較例2の壁紙に関し、JIS P 8117:2009に準拠して、透気度を測定しところ、実施例4の透気度は0.78μm/(Pa・s)であり、比較例2の透気度は0.10μm/(Pa・s)であった。
【0091】
このことから、実施例4の壁紙は、比較例2と比較して、高い透気度を有することが分かった。なお、このような高い透気度を有する実施例4の壁紙は、この壁紙が貼付される壁等が有する吸湿性や放湿性等の機能を遮ることはなく、壁等が有する機能を十分に発揮させることができる。
(実施形態3)
【0092】
実施形態1では、基材である不織布の他方面の表面に何も設けなかったが、接着剤を含浸させた接着層を設けてもよい。
図10は、本実施形態に係る機能性壁紙の概略側面図である。この図に示すように、不織布10の他方面(下面)に接着層20が設けられている。
【0093】
接着層20は、不織布10の他方面に、接着剤が含浸して形成されていてもよいし、不織布10の他方面の表面に接着剤が塗布されていてもよいし、不織布10の他方面に接着剤の一部が含浸し、その他の接着剤が不織布10の他方面の表面に塗布された状態で形成されていてもよい。接着層20を形成することにより、建物の壁等に、機能性壁紙1Aを容易に貼付することができる。
【0094】
なお、接着剤としては、機能性壁紙1Aを、建物の壁等に接着することができるものであれば特に限定されない。接着剤としては、澱粉を主成分とする接澱粉系接着剤が好ましく、例えばウォールボンド(登録商標)100(ウォールボンド工業株式会社製)やルーアマイルド(登録商標)(ヤヨイ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0095】
また、接着層が設けられる不織布10の表面の十点平均粗さ(Rz)は、8μm~14μmであるものが好ましい。十点平均粗さが8μmより小さいと、接着剤が不織布10に含浸し難く、十分な厚みを有する接着層20を形成することができない。一方、十点平均粗さが14μmより大きいと、接着層20が剥がれ易くなってしまう。その結果、機能性壁紙1Aが壁等から剥がれ易くなってしまう。なお、不織布10の他方面(接着層20が形成される面)の表面の十点平均粗さは、9μm~13μmであるものが特に好ましい。このような構造の不織布10は、十分な厚みを有し、剥がれ難い接着層20を容易に形成することができる。
(実施形態4)
【0096】
実施形態1では、水性塗料中に光触媒材料を含むように機能性壁紙を構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、含浸層上に、顔料を含むインク層を設けてもよい。インク層を設けることによって、精細な文字や色彩等が印刷された機能性壁紙を提供することができる。
【0097】
インク層は、顔料を含むものであれば特に限定されない。なお、インク層は、例えばインクジェット式印刷機によって含浸層上にポリマー等の塗料を塗布し、その塗料を乾燥させることによって形成することができる。また、インク層は、一層構造でも、二層以上の多層構造でもよい。
【0098】
インク層の厚みは特に限定されないが、0.01mm~0.03mmの範囲が好ましい。0.01mmより薄いと十分に発色せず、0.03mmより厚いとインク層が剥がれ易くなる。
【0099】
次に、インク層を形成する際に用いるインクについて説明する。インクは特に限定されず、溶剤インク、水性インク、ラテックスインク、紫外線硬化インク(UVインク)等を用いることができるが、ラテックスインクまたはUVインクが好ましい。なお、インクに含まれる顔料は特に限定されない。
【0100】
インクとしてラテックスインクを用いた場合は、機能性壁紙に塗布する際に加熱し、機能性壁紙の表層(含浸層上)でラテックスインクを固化させてインク層を形成するので、機能性壁紙の強度を向上させることができる。
【0101】
また、インクとしてUVインクを用いた場合は、機能性壁紙の表層(含浸層上)にUVインクを塗布した後、紫外線を照射して、機能性壁紙の表層(含浸層上)でUVインクを固化させてインク層を形成するので、ラテックスインクと同様に、機能性壁紙の強度を向上させることができる。
【0102】
なお、含浸層上に形成されるインク層の厚みは、0.01mm~0.015mmがより好ましい。
【0103】
さらに、水性インクを用いる場合には、含浸層上にラミネートフィルム等を貼付してもよい。また、インク層は、いわゆるオプティマイザーを塗布した後に、インクを塗布することで形成してもよい。
(実施形態5)
【0104】
実施形態1では、水性塗料中に光触媒材料を含むように機能性壁紙を構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、含浸層上に光触媒材料を含むコーティング層を設けてもよいし、実施形態4のインク層上に光触媒材料を含むコーティング層を設けてもよい。
【0105】
コーティング層の厚みは特に限定されないが、5μm~15μmの範囲が透気性および透湿性を低下させることなく、光触媒機能を十分に発揮させることができるので好ましく、8μm~13μmの範囲が透気性および透湿性をより低下させることなく、光触媒機能を十分に発揮させることができるのでより好ましい。
【0106】
なお、コーティング層は、光触媒材料を含んだ光触媒塗料を含浸層上に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。光触媒塗料は、特に限定されないが、例えば、光触媒酸化チタン(石原産業株式会社製)、ヒカリアクター(登録商標)(株式会社カタライズ製)およびサガンコート(日本光触媒センター株式会社 サガンコート)等が挙げられる。
(他の実施形態)
【0107】
上述した実施形態では、機能性壁紙の表面(一方面、他方面)にエンボス加工を施していないが、エンボス加工を施してもよい。エンボス加工は、従来の壁紙にエンボス加工を施す方法と同様の方法を用いることができる。機能性壁紙の表面にエンボス加工を施すことによって、建物の壁等の下地の凹凸が機能性壁紙の表面に現れにくくなるので、機能性壁紙の美観を向上させることができる。また、エンボス加工を施すことによって、機能性壁紙と下地との間に空気層が形成されるので、機能性壁紙が水等で濡れてしまっても、エンボス加工を施していない機能性壁紙と比較して、乾き易いという効果を有する。
【符号の説明】
【0108】
1、1A 機能性壁紙
10 不織布(シート基材)
15 含浸層
20 接着層
100 実験装置
110 電球
150 窓部
200a、200b 壁紙