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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】固液分離システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20240214BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B01D21/02 E
B01D21/02 J
F16F15/08 B
F16F15/08 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020075982
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021090945
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019223685
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002451
【氏名又は名称】積水アクアシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】木曽 忠幸
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-008860(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173773(JP,U)
【文献】特開2017-202444(JP,A)
【文献】特開2020-104025(JP,A)
【文献】特開昭60-166011(JP,A)
【文献】実開昭59-93706(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/02
B01D 21/18
B01D 21/24
B01D 21/30
E03F 5/14
F16F 15/08
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流に対して交差する幅方向において対向する第1側面および第2側面を有する沈殿池と、
複数の傾斜板を有し、前記沈殿池に懸架され、配置された傾斜板装置と、
前記第1側面と前記傾斜板装置の間および前記第2側面と前記傾斜板装置の間の各々の間であって前記水流に対して交差するように配置され、弾性部材によって形成された阻流板と、を備え、
前記阻流板は、
前記第1側面または前記第2側面に固定される固定部と、
前記固定部から前記傾斜板装置に向かって突出する突出部と、を有する、
固液分離システム。
【請求項2】
前記突出部は、前記傾斜板装置に接触している、
請求項に記載の固液分離システム。
【請求項3】
前記第1側面と前記傾斜板装置の間の距離および前記第2側面と前記傾斜板装置の間の距離は、50cm以下である、
請求項1または2に記載の固液分離システム。
【請求項4】
前記突出部は、曲部を有している、
請求項1または2に記載の固液分離システム。
【請求項5】
前記阻流板は、板状の弾性部材で形成されており、
前記突出部は、前記板状の部材がループ状に形成された部分であり、
前記弾性部材の厚みは、1cm~3cmである、
請求項1または2に記載の固液分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水処理施設や下水処理施設において、水処理プロセスの一つである固液分離を促進するために、沈殿池(主としてコンクリート水槽、浄水処理施設においては薬品沈殿池、凝集沈殿池、下水処理施設においては、最初沈殿池、最終沈殿池と呼ばれる)には傾斜板装置が設置されている。傾斜板装置は、その内部に懸濁物を含む水流を通過させることにより固液分離を促進させるものである。
【0003】
傾斜板装置を沈殿池へ設置する際には、設置工事上の制約から傾斜板装置の両端部(側面部)と沈殿池の内壁との間には隙間が発生する。
【0004】
この隙間が存在すると、水流は傾斜板装置の内部に流入することなく、流動抵抗の少ない隙間を短絡(迂回)するため固液分離能力が低下する。
【0005】
このため、上述した隙間を塞ぐ手法として水流に対して直角に突き出た阻流板を設けることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、当該阻流板の素材としては、ゴム製などの軟質合成樹脂が用いられ、流速によって変形することが好適であることが記載されている。
【0006】
一方、上下水道事業においても施設耐震化の動きが加速しており、新規採用される資機材や機械装置についても耐震性が求められる。
【0007】
しかしながら、上述したように傾斜板装置と沈殿池内壁の間には隙間が生じているため、隙間により傾斜板装置が振動する領域が確保され、この状態で地震が発生した場合、水面揺動に従って傾斜板装置が揺動し、沈殿池の内壁と接触して破損するおそれがある。
【0008】
このような地震による破損の防止のため、傾斜板装置と沈殿池の内壁に緩衝装置を設けた構成が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実用新案登録第3173772号公報
【文献】特開2016-159199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1では、傾斜板装置と沈殿池の内壁の隙間によって地震時に生じる揺動については何ら考慮されておらず、また、上記特許文献2では、この隙間を水流が通る短絡については何ら考慮されていなかった。
【0011】
本発明は、傾斜板装置と沈殿池の内壁の間の隙間による短絡を抑制するとともに、地震時の傾斜板装置の揺動による破損を防止することが可能な固液分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明にかかる固液分離システムは、沈殿池と、傾斜板装置と、阻流板と、を備える。沈殿池は、水流に対して交差する幅方向において対向する第1側面および第2側面を有する。傾斜板装置は、複数の傾斜板を有し、沈殿池に配置されている。阻流板は、第1側面と傾斜板装置の間および第2側面と傾斜板装置の間の各々の間であって水流に対して交差するように配置され、弾性部材によって形成されている。
【0013】
これにより、スロッシングの際に水とともに傾斜板装置も揺動するが、弾性部材で形成された阻流板が設けられていることにより、傾斜板装置と沈殿池の側面との衝突を回避することができる。
【0014】
また、水流に対して交差するように阻流板が設けられていることにより、傾斜板装置と沈殿池の内壁との間に生じる隙間を通る水流の短絡を抑制することができる。
【0015】
このように、傾斜板装置と沈殿池の内壁の間の隙間による水流の短絡を抑制するとともに、地震時の傾斜板装置の揺動を抑制することができる。
【0016】
第2の発明にかかる固液分離システムは、第1の発明にかかる固液分離システムであって、阻流板は、固定部と、突出部と、を有する。固定部は、第1側面または第2側面に固定される。突出部は、固定部から傾斜板装置に向かって突出する。
【0017】
これにより、弾性部材を沈殿池の側面に固定することができ、突出部によって傾斜板装置の揺動に対する緩衝を行うことができる。
【0018】
第3の発明にかかる固液分離システムは、第2の発明にかかる固液分離システムであって、突出部は、傾斜板装置に接触している。
【0019】
これにより、傾斜板装置の揺動に対する緩衝機能をより発揮することができる。
第4の発明にかかる固液分離システムは、第1~3のいずれかの発明にかかる固液分離システムであって、第1側面と傾斜板装置の間の距離および第2側面と傾斜板装置の間の距離は、50cm以下である。
【0020】
一般的に傾斜板装置と沈殿池の側面との間の隙間は50cm以下に設定されており、この50cm以下の隙間に対して弾性部材を配置することにより、傾斜板装置の揺動を適切に緩衝することができる。
【0021】
第5の発明にかかる固液分離システムは、第2または第3の発明にかかる固液分離システムであって、突出部は、曲部を有している。
【0022】
このような曲部で傾斜板装置の揺動を受け止めることができる。
第6の発明にかかる固液分離システムは、第2または第3の発明にかかる固液分離システムであって、阻流板は、板状の弾性部材で形成されている。突出部は、ループ状に形成されている。弾性部材の厚みは、1cm~3cmである。
【0023】
これにより、ループ状の突出部で傾斜板装置の揺動を緩衝することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、傾斜板装置と沈殿池の内壁の間の隙間による短絡を抑制するとともに、地震時の傾斜板装置の揺動による破損を抑制することが可能な固液分離システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明にかかる実施の形態1における固液分離システムを示す側面図。
図2図1の傾斜板装置の一部を示す斜視図。
図3図1のAA´間の矢視断面図。
図4図3の側方阻流板を説明するための水流方向Dに沿って固液分離システムを視た模式図。
図5図3の側方阻流板の近傍の構成を示す模式平面図。
図6A】側方阻流板が上下フレーム部材に固定された状態を示す模式図。
図6B図6Aの上下フレーム部材と固定治具と側方阻流板を示す平面模式図。
図6C図6Bの固定治具の平鋼の平面図。
図6D図6Cの平鋼の正面図。
図7】本発明にかかる実施の形態1の変形例における側方阻流板を示す模式平面図。
図8】本発明にかかる実施の形態2における固液分離システムを示す側面図。
図9図8の傾斜板装置の一部を示す斜視図。
図10図8の傾斜板装置および流入部阻流板を示す側面図。
図11図8のXX´間の矢視断面図。
図12図11のV部拡大図。
図13図8の最終沈殿池および側方阻流板を示す平面模式図。
図14】本発明にかかる実施の形態2の変形例における側方阻流板を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による実施の形態の固液分離システムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
(実施の形態1)
(固液分離システム1)
図1は、横向流式の固液分離システム1の側面図である。
【0028】
本実施の形態の固液分離システム1は、一例として浄水処理施設に用いられる。
固液分離システム1は、流入部11、沈殿池12、流出部13と、中間整流壁14と、傾斜板装置15と、下方阻流板16と、側方阻流板17(阻流板の一例)と、ホッパー18と、を備える。
【0029】
着水井において、薬品が原水に注入され、被処理水と薬品がフローキュレータ2においてかき混ぜられる。
【0030】
流入部11は、フローキュレータ2においてかき混ぜられた原水および薬品が沈殿池12に流入する。
【0031】
流出部13は、沈殿池12からトラフ3へと処理水が流出する。流出部13は、流入部11の反対側に設けられている。流入部11から流出部13に向かって水が流れる。この水流方向を矢印Dで示す。
【0032】
中間整流壁14は、沈殿池12の略中央に配置されている。中間整流壁14には、例えば、複数の開口が形成されており、偏流の発生を抑制する。
【0033】
傾斜板装置15は、中間整流壁14の下流側に配置されている。傾斜板装置15は、後述するように複数の傾斜板20を有している。傾斜板20の間に流れ込んだ被処理水に含まれる汚泥が傾斜板装置15を通過する間に沈降し傾斜板20上に沈殿し、被処理水が浄化される。傾斜板20上に沈殿した汚泥は堆積に伴って自重で落下する。
【0034】
下方阻流板16は、傾斜板装置15と沈殿池12の底面12cの間に配置されている。下方阻流板16は、傾斜板装置15に吊り下げられて支持されている。
【0035】
側方阻流板17は、詳しくは後述するが、沈殿池12の内側の側面12a、12b(図3参照)と傾斜板装置15の間に配置されている。側方阻流板17によって、側面12a(第1側面の一例)と傾斜板装置15の間および側面12b(第2側面の一例)と傾斜板装置15の間を通って短絡する水の流れを防ぐ。
【0036】
ホッパー18は、沈殿池12の底面であって流入部11の近傍に設けられており、汚泥が集められて沈殿池12外に排出される。
【0037】
(傾斜板装置15)
図2は、傾斜板装置15の一部を示す斜視図である。図3は、図1のAA´間の矢視断面図である。
【0038】
本実施の形態の傾斜板装置15は、横向流方式の沈降装置である。
図2に示すように傾斜板装置15は、複数の傾斜板20と、支持フレーム21と、を有する。
【0039】
(傾斜板20)
傾斜板20は、四角形の板状部材であって、その主面(面20a、20b)が水流方向Dと平行になるように配置されている。傾斜板20は、鉛直方向Gにおける上端20iの位置が下端20jの位置に対して幅方向Fのいずれか一方側に位置するように傾斜して幅フレーム部材22に支持されている。幅方向Fは、水流方向Dに交差している。
【0040】
傾斜板20は、例えば図2および図3に示すように鉛直方向Gにおいて4段設けられている。各段における複数の傾斜板20は、互いに平行に配置されている。図3において、沈殿池12の幅方向Fにおいて対向する内側面のうち左方向の側面を12aとし、右方向の側面を12bとする。
【0041】
例えば、上方から1段目における複数の傾斜板20の各々は、上端20iが下端20jよりも側面12a側に位置するように傾斜している。また、上方から2段目における複数の傾斜板20の各々は、上端20iが下端20jよりも側面12b側に位置するように傾斜している。上方から3段目における複数の傾斜板20の各々は、上端20iが下端20jよりも側面12a側に位置するように傾斜している。また、上方から4段目における複数の傾斜板20の各々は、上端20iが下端20jよりも側面12b側に位置するように傾斜している。
【0042】
このように、鉛直方向Gにおいて隣り合う段の傾斜板20の傾斜方向が逆になるように傾斜板20が配置されている。
【0043】
また、図2に示すように、水流方向Dにおいて、同じ段の傾斜板20は、同じ向きに傾斜している。例えば、図2に示す上方から1段目であって上流側から2列目の傾斜板20は、上方から1段目であって上流側から1列目の傾斜板20と同様に、上端20iが下端20jよりも側面12a側に位置するように傾斜している。
【0044】
また、例えば、上方から2段目および4段目に配置されている傾斜板20について、図3に示すように矢印D方向に沿って視て傾斜板20の延伸線をLとし、延伸線Lと幅方向Fの成す角度をθaとし、延伸線Lと鉛直方向Gの成す角度をθbとする。この場合、角度θaは、10度以上70度以下であることが好ましく、60度が特に好ましい。角度θbは、20度以上80度以下に設定されていることが好ましく、30度が特に好ましい。
【0045】
なお、上方から1段目および3段目に配置されている傾斜板20は、2段目および4段面に配置されている傾斜板20と図3において線対称に配置されている。
【0046】
また、傾斜板20は、概ね四角形状の部材で形成されている。傾斜板20の材質としては、PVC(polyvinyl chloride)、特に硬質塩化ビニルが好ましいが、これに限るものではない。傾斜板の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0047】
なお、傾斜板20は、異形押出成形、射出成形などで作成することができるが、押出成形により平板を真空成形で補強リブ等を賦形して作成したり、異形押出成形で汚泥捕捉処理を傾斜板裏面に施すことが好ましい。
【0048】
また、傾斜板20の沈殿池12の底面12cに向いている面20bには、汚泥の捕捉処理が施された仕様がある。ここで、汚泥の捕捉処理とは、被処理水中の汚泥が沈殿池12から流出しないように、傾斜板20の面20bを汚泥の滞留し易い状態にする処理である。例えば、傾斜板の表面の粗さを強くすることや、表面に沿った汚泥の動きに沿った方向または直交する方向に凹凸を形成することにより傾斜板の表面に汚泥が付着し易い状態にすることができるが、これに限定されるものではない。表面の粗面化の方法は特に限定されるものではないが、たとえばサンドブラストなどで機械的に加工されていてもよく、或いは、所定の薬剤による微細なエッチング加工または所定の面粗度の型によるプレス加工などであってもよい。また、捕捉処理は、面20bの全体に施されていなくてもよい。
【0049】
面20bの反対側の面20aは、汚泥が滑落し易いように平坦な面であるほうが好ましい。面20aは鉛直方向Gの上方を向いている面ともいえる。
【0050】
(支持フレーム21)
支持フレーム21は、複数の傾斜板20を上述したように傾斜した状態で支持する。支持フレーム21は、図2に示すように複数の幅フレーム部材22と、複数の上下フレーム部材23と、複数のフレーム材吊材24と、複数の傾斜板固定具25と、複数の端板受材26と、を有する。
【0051】
幅フレーム部材22および上下フレーム部材23は、上述した傾斜板20の鉛直方向Gにおける各段および水流方向Dにおける各列を形成するように組み合わされている。幅フレーム部材22および上下フレーム部材23は、幅方向Fに沿って配置された複数の傾斜板20を囲むように組み合わされる。
【0052】
幅フレーム部材22は、幅方向Fに沿って配置されている。また、幅フレーム部材22は、幅方向Fに沿って配置された複数の傾斜板20の水流方向Dにおける両端側において上下に配置されている。
【0053】
上下フレーム部材23は、鉛直方向Gに沿って配置されている。上下フレーム部材23は、幅方向Fに沿って配置された複数の傾斜板20の幅方向Fにおける両端側において上流側および下流側に配置されている。
【0054】
フレーム材吊材24は、鉛直方向Gにおいて隣り合って配置されている幅フレーム部材22において等間隔に配置された傾斜板固定具25の間に接続する。
【0055】
傾斜板固定具25は、各々の幅フレーム部材22に複数配置されている。傾斜板20は、傾斜板固定具25にピン等で固定することができる。
【0056】
端板受材26は、幅方向Fの両端において、隣り合う上下フレーム部材23を接続するように配置されている。各々の端板受材26は、水流方向Dに沿って配置されている。端板受材26は、幅方向Fの両端に配置されている傾斜板20を支持するために配置されている。
【0057】
本実施の形態の傾斜板装置15は横向流式の沈殿装置のため、隣り合う傾斜板20の間隔が水流方向Dに沿って形成されるように複数の傾斜板20が配置されている。
【0058】
傾斜板装置15は、複数の桁材31および複数の吊りボルト32によって沈殿池12に懸架されている。桁材31は、図3に示すように、幅方向Fに沿って配置されている。桁材31は、沈殿池12の側面12aと側面12bに固定されている。図2では省略されているが、桁材31は、水流方向Dに沿って複数設けられている。
【0059】
吊りボルト32は、桁材31に支持されており、最も上方に位置する幅フレーム部材22を係止する。
【0060】
このような構成によって、傾斜板装置15は沈殿池12において懸架されている。
(下方阻流板16)
下方阻流板16は、図3に示すように傾斜板装置15の下部に鉛直方向Gに沿って配置されている。下方阻流板16は、水流方向Dに対向するように配置されている。下方阻流板16は、その主面が幅方向Fと平行になるように配置されている。下方阻流板16は、その上部が傾斜板装置15の最も下側、上流側(流入部11側)および下流側(流出部13側)の幅フレーム部材22に固定されている。
【0061】
これによって、傾斜板装置15の下側を通って流出部13に短絡する水の流れを抑制することができる。
【0062】
(側方阻流板17)
図3に示すように、側方阻流板17は、傾斜板装置15と側面12aの間と、傾斜板装置15と側面12bの間に配置されている。
【0063】
図4は、側方阻流板17を説明するための水流方向Dに沿って視た模式図である。図4では、側方阻流板17の構成を分かり易くするために、傾斜板装置15を簡略化して示す。図4では、側面12bと傾斜板装置15の間の側方阻流板17を示す。
【0064】
側方阻流板17は、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15の間隔Bを埋めるように配置されている。図5は、側方阻流板17の近傍の構成を示す模式平面図である。
【0065】
側方阻流板17は、鉛直方向Gに沿って設けられている。また、側方阻流板17は、水流方向Dに対向するように配置されている。
【0066】
図5に示すように側方阻流板17は、側面12bに固定されており、傾斜板装置15に接触している。
【0067】
本実施の形態では、側方阻流板17は、弾性材料によって形成されている。弾性材とは、弾性性能を有するもののことであり、ゴムやばね状部材を挙げることができる。本実施の形態で用いられる弾性材としては、ゴム製の弾性材が好ましい。ゴム製の材料とは、天然ゴムや合成ゴムのような有機高分子を主成分とする一連の弾性限界が高いエラストマー樹脂のことである。本実施の形態で用いられる弾性材は、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)等の熱硬化性エラストマーであってもよいし、オリフィン系、ポリブタジエン系、およびスチレン・ブタジエン系等の熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0068】
本実施の形態では、図5に示すように側方阻流板17は、固定部41と、突出部42と、を有する。固定部41は、側面12bに固定される。突出部42は、固定部41から傾斜板装置15に向かって突出している。側方阻流板17は、ループ形状の1枚の板状部材によって形成されている。突出部42は、ループ状の部分である。固定部41は、板状部材の両端を重ねた部分である。
【0069】
図5に示すように、側面12bには、長手方向に対して垂直な断面がL字状の金属製のアングルである取付部材43が固定されている。L字状の取付部材43は、例えば1枚の板状部材が折り曲げられて形成されている。取付部材43は、略直角に配置された板状の第1部分43aと板状の第2部分43bを有する。第1部分43aは、アンカーボルトによって側面12bに固定されている。これにより、第2部分43bは側面12aに対して垂直に配置されている。この第2部分43bに固定部41が金属製のボルト44によって固定されている。なお、固定部41は、1枚の板状部材の両端が重なっている部分であるため、ボルト44は、重なった両端および第2部分43bを貫くように配置されている。
【0070】
突出部42は、傾斜板装置15に接触している。突出部42の傾斜板装置15における接触位置は上下フレーム部材23などに当接する。
【0071】
側方阻流板17は、鉛直方向Gにおいて、傾斜板装置15より上下方向に長く設けられている方が好ましい。
【0072】
側方阻流板17は、図6Aに示すように、上下フレーム部材23に固定されていてもよい。図6Aは、上下フレーム部材23に側方阻流板17が固定された状態を示す模式図である。
【0073】
この場合、側方阻流板17は図6Bに示す固定治具50を用いて、上下フレーム部材23に固定される。図6Bは、上下フレーム部材23と固定治具50と側方阻流板17とを示す平面模式図である。固定治具50は二枚の平鋼51から構成されている。図6Cは、平鋼51の平面図である。図6Dは、平鋼51の正面図である。
【0074】
平鋼51の片端部51aには、上下フレーム部材23を挟み込んで取り付けられるように曲面の加工がなされている。側方阻流板17の固定部41は金属製のボルト44によって固定治具50に固定されている。なお、側方阻流板17の固定部41は、1枚の板状部材の両端が重なっている部分であるため、ボルト44は、重なった両端および二枚の平鋼51の端部51bを貫くように配置されている。
【0075】
片端部51aの端には、二枚の平鋼51を貫くようにボルト52が配置されている。ボルト52とボルト44で二枚の平鋼51を締結することによって各々の平鋼51の曲面に加工された部分が上下フレーム部材23を挟み込んで、固定治具50は上下フレーム部材23に固定される。
【0076】
当該構成にすることで、側方阻流板17の固定位置を任意の位置に固定できる。従って、側面12b側が、取付部材43を固定し難い構造になっている場合でも適宜、側方阻流板17を固定できるため、良好な耐震性を確保することができる。
【0077】
本実施形態では、上下フレーム部材23の形状が管状の場合について示しており、当該部材の形状に適合した形状で固定治具50の形状を定めている。上下フレーム部材23が平板状、多角形状、異形状の場合、これらの形状に適合する形状を有する固定治具を用いることができる。
【0078】
なお、傾斜板装置15と側面12bとの間隔Bは、50cm以下であればよく、40cmであることが好ましく、30cm以下であることが更に好ましい。また、側方阻流板17を形成する板状部材の厚みTは、1cm~3cmに設定することが好ましい。
【0079】
また、上記説明では、傾斜板装置15と側面12bとの間に配置された側方阻流板17について説明したが、傾斜板装置15と側面12aとの間に配置された側方阻流板17も同様の構成であり、傾斜板装置15と側面12bとの間に配置された側方阻流板17に対して線対称に設けられる。すなわち、傾斜板装置15と側面12aとの間に配置された側方阻流板17は、取付部材43によって側面12aに固定され、傾斜板装置15に当接している。
【0080】
本実施の形態では、側方阻流板17を弾性部材とすることにより、水流の短絡の抑制に加えて、地震の際に傾斜板装置15が揺動する際の緩衝機能を発揮できる。
【0081】
また、側方阻流板17に弾性部材を用いることにより、スロッシングの際に傾斜板装置15を適度に揺動させることができ、動水圧を受け流すことができるため、傾斜板装置15にかかる負荷を低減することができる。
【0082】
本実施の形態では、側方阻流板17は、ループ形状であるが、これに限られるものではなく、板状部材であってもよい。図7は、板状の側方阻流板17´を示す平面図である。側方阻流板17´は、板状部材であって、その主面17a´が水流方向Dに対して略垂直になるように配置されている。側方阻流板17´の先端17b´が傾斜板装置15に当接している。側方阻流板17´の厚みTは、2cm~5cmに設定すればよく、3cm~5cmに設定することが好ましい。
【0083】
(作用効果)
側方阻流板17、17´(阻流板の一例)を側面12aと傾斜板装置15の間および側面12bと傾斜板装置15の間の各々の間であって水流方向Dに対して交差するように配置され、側方阻流板17、17´を弾性部材によって形成することにより、スロッシングの際に水とともに傾斜板装置15も揺動するが、傾斜板装置15と沈殿池12の側面12a、12bとの衝突を回避することができる。
【0084】
また、側方阻流板17、17´は水流に対して交差するように配置されているため、傾斜板装置15と沈殿池12の側面12a、12bとの間に生じる隙間を通る水流の短絡を抑制することができる。
【0085】
このように、傾斜板装置15と沈殿池12の側面12a、12bの間の隙間による水流の短絡を抑制するとともに、地震時の傾斜板装置15の揺動を抑制することができる。
【0086】
なお、スロッシングの際には傾斜板装置15を適度に揺動させる方が好ましい。これは、スロッシングによる動水圧を傾斜板装置15で受けるよりも受け流す方が傾斜板装置15にかかる負荷を低減できるためである。
【0087】
また、側方阻流板17が固定部41と突出部42を有し、固定部41は、側面12aまたは側面12bに固定される。突出部42は、固定部41から傾斜板装置15に向かって突出する。これにより、側方阻流板17、17´を沈殿池12の側面12a、12bに固定することができ、突出部42によって傾斜板装置15の揺動に対する緩衝を行うことができる。
【0088】
また、突出部42が傾斜板装置15に接触していることにより、傾斜板装置15の揺動に対する緩衝機能をより発揮することができる。
【0089】
また、側面12aと傾斜板装置15の間の距離Bおよび側面12bと傾斜板装置15の間の距離Bは、50cm以下が好ましい。一般的に傾斜板装置15と沈殿池12の側面12a、12bとの間の隙間は50cm以下に設定されており、この50cm以下の隙間に対して弾性部材である側方阻流板17、17´を配置することにより、傾斜板装置15の揺動を適切に緩衝することができる。
【0090】
また、側方阻流板17は、突出部42(曲部の一例)を有している。
このような曲がった突出部42で傾斜板装置15の揺動を受け止めることができる。
【0091】
また、側方阻流板17は板状の部材で形成されており、突出部42は、板状の部材がループ状に形成された部分である。弾性部材の厚みは、1cm~3cmが好ましい。
【0092】
これにより、ループ状の突出部42で傾斜板装置15の揺動を緩衝することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2である上向流式の固液分離システム100について説明する。
【0093】
(固液分離システム100)
図8は、本実施の形態の固液分離システム100を示す図である。本実施の形態の固液分離システム100は、下水処理場の最終沈殿池101における被処理水Wの固液分離に適用される。
【0094】
図8に示すように、固液分離システム100は、最終沈殿池101(沈殿池の一例)と、傾斜板装置110と、流入部阻流板111と、越流堰112と、水路113と、流入部114と、流出部115と、汚泥掻き寄せ機116と、汚泥ホッパー117と、側方阻流板118(図11参照)と、を備える。
【0095】
流入部114は、原水(被処理水W)が最終沈殿池101に流入する。流出部115は、最終沈殿池101において流入部114の反対側に設けられており、最終沈殿池101から浄化された被処理水Wが流出する。
【0096】
傾斜板装置110は、最終沈殿池101の略中央部から下流側(流出部115側)の部分に配置されている。傾斜板装置110は、複数の傾斜板120を有している。複数の傾斜板120は、水面側を流入部114側に傾けて、上流側から下流側に向かって並んで配置されている。
【0097】
傾斜板装置110は、被処理水Wの水面から所定の深さまで沈み、かつ、最終沈殿池101の底面101sとの間に所定の空間が確保されるように支持されている。傾斜板120は、桁材から吊り下げられて支持されている。傾斜板装置110の詳細については後段にて詳述する。
【0098】
流入部阻流板111は、傾斜板装置110の上流側(流入部114側)であって最終沈殿池101の略中央部分に設けられている。流入部阻流板111は、水面から所定の深さまでの領域内の被処理水Wの下流側(流出部115側)への流れを阻む。流入部阻流板111は、流入部114から流入した水流方向に対して主面が略垂直になるように配置されている。
【0099】
越流堰112は、流入部阻流板111よりも下流側(流出部115側)の被処理水Wの水面付近に配置されている。越流堰112は、上流側から下流側に向かう方向に沿って形成されている。
【0100】
水路(トラフ)113は、越流堰112に囲まれて形成されており、流出部115に繋がっている。なお、越流堰112に限らず、管に穴が形成された構成であってもよい。
【0101】
流入部114から最終沈殿池101に流入してきた被処理水Wは、流入部阻流板111に水流方向(矢印D方向(所定方向の一例))を阻まれ、流入部阻流板111の下端111eと最終沈殿池101の底面101sとの間の部分に向かって下降する。最終沈殿池101の底面101sと流入部阻流板111の下端111eとの間を通り抜けた被処理水Wは、水路113に向かう上向流Jとなり、傾斜板装置110の下部110aから傾斜板120の間に流入し上昇する。
【0102】
そして、被処理水Wの汚泥が、傾斜板装置110内を通過する間に沈降し、傾斜板120の第1面120a上に沈殿することにより被処理水Wが浄化される。傾斜板120の第1面120aに沈殿した汚泥は、堆積に伴って自重で落下する。
【0103】
汚泥掻き寄せ機116は、最終沈殿池101の底面付近に配置されている。最終沈殿池101の底面付近には沈降した汚泥Mが堆積している。堆積した汚泥Mは、汚泥掻き寄せ機116が、図8上時計回りに回転することにより汚泥ホッパー117に集められ、排泥される。汚泥掻き寄せ機116は、流入部阻流板111より上流側において、水面付近を通過し、浮遊物も掻き寄せる。
【0104】
汚泥ホッパー117は、最終沈殿池101の流入部114付近の底面に形成されている。
【0105】
(傾斜板装置110)
図9は、傾斜板装置110の一部の構成を模式的に示す斜視図である。図10は、傾斜板装置110および流入部阻流板111を示す側面図である。図11は、図8のXX´間の矢視断面図である。
【0106】
図9に示すように、傾斜板装置110は、複数の傾斜板120と、一対の上側フレーム121と、一対の下側フレーム122と、複数の支持棒123と、複数のフック124と、複数の上下フレーム125(図10参照)と、を有している。
【0107】
一対の上側フレーム121は、流入部114から流出部115に向かう方向Dに沿って配置されている。一対の上側フレーム121は、互いに平行に配置されている。
【0108】
一対の下側フレーム122は、流入部114から流出部115に向かう方向Dに沿って配置されている。一対の下側フレーム122は、互いに平行に配置されている。一対の上側フレーム121は、一対の下側フレーム122よりも水面側に配置される。幅方向Fの一方側および他方側の各々において上下に配置された上側フレーム121と下側フレーム122は、鉛直方向Gに沿って配置された複数の上下フレーム125(図10参照)によって接続されている。
【0109】
複数の支持棒123は、一対の上側フレーム121の間に互いに平行に架設されており、一対の下側フレーム122の間にも互いに平行に架設されている。
【0110】
傾斜板120は、一対の上側フレーム121および一対の下側フレーム122に対して傾斜して、上下一対の支持棒123に取り付けられている。
【0111】
傾斜板120は、図11に示すように、最終沈殿池101の幅方向Fに沿って複数枚(図では3枚)配置されている。この場合、例えば、図11において最も左側に配置されている傾斜板20の右側に位置する上側フレーム121および下側フレーム122は、真ん中の傾斜板20の左側に位置する上側フレーム121および下側フレーム122と兼ねられていてもよい。このように、隣り合う傾斜板120についてフレームが兼ねられていてもよい。
【0112】
上側フレーム121が、上方から吊りボルト131によって支持されており、吊りボルト131は、幅方向Fに沿って配置された桁材132に固定されている。桁材132は、最終沈殿池101の対向する側面101a、101bに固定されている。また、桁材132は、図8に示すように方向Dに沿って複数配置されている。このような構成によって、傾斜板装置110は、被処理水Wの水面から所定の深さまで沈み、かつ、最終沈殿池101の底面101sとの間に所定の空間が確保されるように支持されている。
【0113】
なお、上述した流入部阻流板111の幅方向の長さは、最終沈殿池101の幅方向Fと概ね同じ大きさで設けられている。また、鉛直方向Gにおいて、流入部阻流板111の下端111eの位置は傾斜板120の下端120jの位置以下である方が好ましい。流入部阻流板111は、図10に示すように、吊りボルト133によって支持されており、吊りボルト133は、幅方向Fに沿って配置された桁材132に固定されている。
【0114】
(傾斜板120)
傾斜板120は、概ね四角形状の部材で形成されている。傾斜板120の材質としては、硬質塩化ビニルが好ましいが、これに限るものではない。傾斜板の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0115】
傾斜板120は、上側フレーム121と下側フレーム122の長さ方向(方向D)に沿って傾斜して複数個並んで配置されている。傾斜板装置110は、下水処理場の最終沈殿池101内において、下側フレーム122を最終沈殿池101の底面101s側に向けて設置される。傾斜板20の第2面120b(後述する)が最終沈殿池101の底面101s側に向けられる。
【0116】
傾斜板120は、複数のフック124によって、上下に配置されている支持棒123に係止されて取り付けられる。
【0117】
傾斜板120が、上述した一対の上側フレーム121、一対の下側フレーム122、および支持棒123に取り付けられた際に、図9に示すように、上端120iおよび下端120jは、支持棒123と略平行
に配置される。また、上端120iは、上側フレーム121よりも上方に配置され、下端120jは、下側フレーム122よりも下方に配置される。
【0118】
傾斜板120の両側端は、上側フレーム121から下側フレーム122に向かって傾斜して配置される。
【0119】
複数の傾斜板120は、流入部114から最終沈殿池101に被処理水が流入する方向Dに沿って並んで配置されている。複数の傾斜板120は、隣り合う傾斜板120が互いに対向して平行になるように配置されている。
【0120】
詳細には、複数の傾斜板20は、図10に示すように、隣り合う傾斜板120のうち一方の傾斜板120の第1面120aと、他方の傾斜板120の第2面120bが対向するように配置されている。また、複数の傾斜板120の下端120jの鉛直方向Gにおける位置は、略一致している。
【0121】
各々の傾斜板120は、図8図10に示すように、上方に向かうに従って流入部114側に位置するように傾斜して、一対の上側フレーム121、一対の下側フレーム122、および複数の支持棒123に支持されている。傾斜板120は、図10に示すように上端120iが下端120jよりも流入部114側に位置するように、配置されている。
【0122】
また、側面視において傾斜板120と矢印D方向(本実施の形態では水平方向と一致する)の成す角度θcは、10度以上70度以下であることが好ましく、60度が特に好ましい。傾斜板20と鉛直方向Gのなす角度θdは、20度以上80度以下に設定されていることが好ましく、30度が特に好ましい。当該範囲内であることで、固液分離システムの有効沈降面積を確保できる。
【0123】
傾斜板120の第2面120bには、汚泥の捕捉処理が行われている。ここで、汚泥の捕捉処理とは、被処理水中の汚泥が最終沈殿池101から流出しないように、傾斜板120の第2面120bを汚泥の滞留し易い状態にする処理である。例えば、傾斜板の表面の粗さを強くすることや、表面に沿った汚泥の動きに沿った方向または直交する方向に凹凸を形成することにより傾斜板の表面に汚泥が付着し易い状態にすることができるが、これに限定されるものではない。表面の粗面化の方法は特に限定されるものではないが、たとえばサンドブラストなどで機械的に加工されていてもよく、或いは、所定の薬剤による微細なエッチング加工または所定の面粗度の型によるプレス加工などであってもよい。また、捕捉処理は、第2面120bの全体に施されていなくてもよい。
【0124】
第2面120bの反対側の第1面120aは、汚泥が滑落し易いように平坦な面であるほうが好ましい。
【0125】
なお、傾斜板120は、異形押出成形、射出成形などで作成することができるが、押出成形が好ましい。
【0126】
傾斜板120には、フック孔が形成されており、フック孔にフック124が装着され、図9に示すようにフック124によって傾斜板装置110の支持棒123に傾斜板120が取り付けられる。
【0127】
(側方阻流板118)
最終沈殿池101の対向する内側面のうち図11における左側の側面を101aとし、右側の側面を101bとする。
【0128】
側方阻流板118は、傾斜板装置110と側面101a(第1側面の一例)との間および傾斜板装置110と側面101b(第2側面の一例)との間に配置されている。側方阻流板118は、上向流Jと交差するようにD方向に沿って配置されている。
【0129】
図12は、図11のV部拡大図である。
側方阻流板118は、実施の形態1の側方阻流板17と同様に弾性材料によって形成されている。弾性材とは、弾性性能を有するもののことであり、ゴムやばね状部材を挙げることができる。本実施の形態で用いられる弾性材としては、ゴム製の弾性材が好ましい。
【0130】
ゴム製の材料とは、天然ゴムや合成ゴムのような有機高分子を主成分とする一連の弾性限界が高いエラストマー樹脂のことである。本実施の形態で用いられる弾性材は、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)等の熱硬化性エラストマーであってもよいし、オリフィン系、ポリブタジエン系、およびスチレン・ブタジエン系等の熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0131】
側方阻流板118は、固定部141と、突出部142と、を有する。固定部141は、側面101bに固定される。突出部142は、固定部141から傾斜板装置110に向かって突出している。側方阻流板118は、ループ形状の1枚の板状部材によって形成されている。突出部142は、ループ状の部分である。固定部141は、板状部材の両端を重ねた部分である。
【0132】
図12に示すように、側面101bには、長手方向に対して垂直な断面がL字状の金属製のアングルである取付部材143が固定されている。L字状の取付部材143は、例えば1枚の板状部材が折り曲げられて形成されている。取付部材143は、略直角に配置された板状の第1部分143aと板状の第2部分143bを有する。第1部分143aは、アンカーボルトによって側面101bに固定されている。これにより、第2部分143bは側面101bに対して垂直に配置されている。この第2部分143bに固定部141が金属製のボルト144によって固定されている。なお、固定部141は、1枚の板状部材の両端が重なっている部分であるため、ボルト144は、重なった両端および第2部分143bを貫くように配置されている。
【0133】
突出部142は、傾斜板装置110に接触している。突出部142の傾斜板装置110における接触位置は幅方向Fの両端に配置された下側フレーム122に当接する。
【0134】
側方阻流板118は、D方向において傾斜板装置15の長さ以上に設けられている方が好ましい。
【0135】
図13は、最終沈殿池101および側方阻流板118を示す平面模式図である。図13に示すように、側面101bには、柱状に凸部101cが形成されている。そのため、側方阻流板118の突出長さは凸部101cの部分と凸部101c以外の部分で変更されている。なお、側方阻流板118はD方向に沿って繋がっていなくてもよく、例えば凸部101cの部分と凸部101c以外の部分で分割されていてもよい。なお、図13では、傾斜板装置110の位置をハッチング部分で示す。
【0136】
また、本実施の形態2では、側方阻流板118は、ループ形状であるが、これに限られるものではなく、板状部材であってもよい。図14は、板状の側方阻流板118´を示す断面図である。側方阻流板118´は、板状部材であって、その主面118a´が上向流方向Jに対向するように配置されている。側方阻流板118´の先端118b´が傾斜板装置110に当接している。
【0137】
(作用効果)
側方阻流板118、118´(阻流板弾性部材の一例)を側面101aと傾斜板装置110の間および側面101bと傾斜板装置110の間の各々の間であって水流方向Jに対して交差するように配置され、側方阻流板118、118´を弾性部材によって形成することにより、スロッシングの際に水とともに傾斜板装置110も揺動するが、傾斜板装置110と最終沈殿池101の側面101a、101bとの衝突を回避することができる。
【0138】
このように、傾斜板装置110を揺動させることにより、動水圧を受け流すことができるため、傾斜板装置110にかかる負荷を低減することが可能となる。
【0139】
また、弾性部材で形成された側方阻流板118、118´が上向流J水流に対して交差するように配置されているためた阻流板を兼ねることにより、傾斜板装置110と最終沈殿池101の側面101a、101bとの間に生じる隙間を通る水流の短絡を抑制することができる。
【0140】
このように、傾斜板装置110と最終沈殿池101の側面101a、101bの間の隙間による水流の短絡を抑制するとともに、地震時の傾斜板装置110の揺動を抑制することができる。
【0141】
なお、スロッシングの際には傾斜板装置110を適度に揺動させる方が好ましい。これは、スロッシングによる動水圧を傾斜板装置110で受けるよりも受け流す方が傾斜板装置110にかかる負荷を低減できるためである。
【0142】
水流の短絡を抑制できるとともに、スロッシングの際には傾斜板装置110の最終沈殿池101の側面101a、101bとの衝突を回避することができる。
【0143】
また、側方阻流板118が固定部141と突出部142を有し、固定部141は、側面101aまたは側面101bに固定される。突出部142は、固定部141から傾斜板装置110に向かって突出する。これにより、側方阻流板118を最終沈殿池101の側面101a、101bに固定することができ、突出部142によって傾斜板装置110の揺動に対する緩衝を行うことができる。
【0144】
また、突出部142が傾斜板装置110に接触していることにより、傾斜板装置110の揺動に対する緩衝機能をより発揮することができる。
【0145】
また、側面101aと傾斜板装置110の間の距離および側面101bと傾斜板装置1110の間の距離は、50cm以下であればよく、40cm以下が好ましく、30cm以下が更に好ましい。一般的に傾斜板装置110と最終沈殿池101の側面101a、101bとの間の隙間は50cm以下に設定されており、この50cm以下の隙間に対して弾性部材である側方阻流板118、118´を配置することにより、傾斜板装置110の揺動を適切に緩衝することができる。
【0146】
また、側方阻流板118は、突出部142(曲部の一例)を有している。
このような曲がった突出部142で傾斜板装置110の揺動を受け止めることができる。
【0147】
また、側方阻流板118は板状の部材で形成されており、突出部142は、板状の部材がループ状に形成された部分である。弾性部材の厚みは、1cm~3cmが好ましいである。
【0148】
これにより、ループ状の突出部142で傾斜板装置110の揺動を緩衝することができる。
【0149】
(他の実施の形態)
以上、本発明による実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0150】
(A)
上記実施の形態1、2では、側方阻流板17、17´、118、118´が、弾性部材で形成され、傾斜板装置15、110の揺動を抑制しているが、側方阻流板17とは別に揺動を抑制するための弾性部材が設けられていてもよい。
【0151】
この場合、実施の形態1では、傾斜板装置15の上流側および下流側に側面12a、12bに固定された側方阻流板を配置し、傾斜板装置15と側面12a、12bの間に上述した側方阻流板17、17´のように弾性部材を配置すればよい。この弾性部材は阻流板と兼ねられていないため、鉛直方向Gに限らずD方向(水平方向)に沿って配置してもよい。また、傾斜板装置15の上流側に配置される側方阻流板は弾性部材でなくてもよい。
【0152】
また、実施の形態2では、傾斜板装置110の下側に側方阻流板を配置し、傾斜板装置110と側面101a、101bの間に上述した側方阻流板118、118´のように弾性部材を配置すればよい。側面101bでは、凸部101cに弾性部材を配置すればよい。この弾性部材は阻流板と兼ねられていないため、D方向(略水平方向)に限らず鉛直方向Gに沿って配置してもよい。また、傾斜板装置110の下側に配置される側方阻流板は弾性部材でなくてもよい。
【0153】
(B)
上記実施の形態1では、側方阻流板17、17´は、傾斜板装置15と側面12aとの間に1枚、傾斜板装置15と側面12bとの間に1枚しか示していないが、これに限られるものではなく、それぞれの間に水流方向Dに沿って複数枚ずつ側方阻流板17、17´が設けられていてもよい。
【0154】
また、上記実施の形態2では、側方阻流板118、118´は、傾斜板装置110と側面101aとの間に1枚、傾斜板装置110と側面101bとの間に1枚しか示していないが、これに限られるものではなく、それぞれの間に鉛直方向Gに沿って複数枚ずつ側方阻流板118、118´が設けられていてもよい。
【0155】
(C)
上記実施の形態1,2では、側方阻流板17、118は、曲部の一例としてループ状に形成されているが、これに限らなくてもよい。ただし傾斜板装置15、110に接触させる観点からは接触面積が増えるため曲部が形成されている方が好ましい。
【0156】
(D)
上記実施の形態1、2では、傾斜板固定具25、フック124によって傾斜板20、120をフレームに支持しているが、これらに限定されるものではなく、複数の傾斜板20、120を並んで配置することができさえすれば支持方法は限定されるものではない。
【0157】
(E)
上記実施の形態1、2では、側方阻流板17、17´、118、118´が、弾性部材で形成され、傾斜板装置15、110の揺動を抑制しているが、側方阻流板17とは別に揺動を抑制するための弾性部材が設けられていてもよい。
【0158】
この場合、実施の形態1では、傾斜板装置15の上流側に側面12a、12bに固定された側方阻流板を配置し、傾斜板装置15と側面12a、12bの間に上述した側方阻流板17、17´のように弾性部材を配置すればよい。この弾性部材は阻流板と兼ねられていないため、鉛直方向Gに限らずD方向(水平方向)に沿って配置してもよい。また、傾斜板装置15の上流側に配置される側方阻流板は弾性部材でなくてもよい。
【0159】
また、実施の形態2では、傾斜板装置110の下側に側方阻流板を配置し、傾斜板装置110と側面101a、101bの間に上述した側方阻流板118、118´のように弾性部材を配置すればよい。側面101bでは、凸部101cに弾性部材を配置すればよい。この弾性部材は阻流板と兼ねられていないため、D方向(略水平方向)に限らず鉛直方向Gに沿って配置してもよい。また、傾斜板装置110の下側に配置される側方阻流板は弾性部材でなくてもよい。
【0160】
(実施例)
以下に実施例を用いて本実施の形態の固液分離システム1について説明する。
【0161】
実施例1~12および比較例1の条件で沈殿池を模した水槽内に傾斜板装置の実験モデルを設置し、過去に発生した地震の地震波を入力して振動実験を実施し、各例における耐震性能を確認した。
(傾斜板装置の評価)
傾斜板装置の欠損状況を把握した結果を評価結果とした。
評価の方法は以下の通りである。
傾斜板の欠損数:0~10枚の場合に良好(〇)
傾斜板の欠損数:10~30枚の場合に許容範囲(△)
傾斜板の欠損数:30枚以上であり破壊された場合に不良(×)

実施例1では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを10cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを1cmに設定した。表1にその結果を示す。表1に示すように実施例1の場合、欠損枚数が10枚以下であり、良好であった。
【0162】
実施例2では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを20cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを1cmに設定した。この場合、欠損枚数が10枚以下であり、良好であった。
【0163】
実施例3では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを30cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを1cmに設定した。この場合、欠損枚数が10枚以下であり、良好であった。
【0164】
実施例4では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを10cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを1.2cmに設定した。この場合、欠損枚数が10枚以下であり、良好であった。
【0165】
実施例5では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを20cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを1.2cmに設定した。この場合、欠損枚数が10枚以下であり、良好であった。
【0166】
実施例6では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを30cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを1.2cmに設定した。この場合、欠損枚数が10枚以下であり、良好であった。
【0167】
実施例7では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを20cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを0.8cmに設定した。この場合、欠損枚数が10~30枚の間であり、許容範囲であった。
【0168】
実施例8では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを35cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを1cmに設定した。この場合、欠損枚数が10~30枚の間であり、許容範囲であった。
【0169】
実施例9では、先端がループ形状の側方阻流板17をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを35cmに設定し、側方阻流板17の厚みTを1.2cmに設定した。この場合、欠損枚数が10~30枚の間であり、許容範囲であった。
【0170】
実施例10では、板状の側方阻流板17´をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを10cmに設定し、側方阻流板17´の厚みTを3cmに設定した。この場合、欠損枚数が10枚以下であり、良好であった。
【0171】
実施例11では、板状の側方阻流板17´をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを15cmに設定し、側方阻流板17´の厚みTを3cmに設定した。この場合、欠損枚数が10枚以下であり、良好であった。
【0172】
実施例12では、板状の側方阻流板17´をSBRまたは塩ビで形成し、沈殿池12の側面12a、12bと傾斜板装置15までの離隔Bを10cmに設定し、側方阻流板17´の厚みTを2cmに設定した。この場合、欠損枚数が10~30枚の間であり、許容範囲であった。
【0173】
比較例1では、側方阻流板を配置しなかった。この場合、傾斜板の欠損数が30枚以上であり破壊されたため不良(×)とした。
【0174】
以上のように、側方阻流板17を設けることにより、耐震性が向上することがわかる。
【0175】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の固液分離システムは、傾斜板装置と沈殿池の内壁の間の隙間による短絡を抑制するとともに、地震時の傾斜板装置の揺動を抑制することが可能な効果を発揮し、浄水処理施設や下水処理施設の沈殿池などとして有用である。
【符号の説明】
【0177】
1 :固液分離システム
12 :沈殿池
12a、12b:側面
15 :傾斜板装置
17 :側方阻流板
20 :傾斜板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
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図12
図13
図14