(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】固液分離システム
(51)【国際特許分類】
B01D 21/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B01D21/02 J
B01D21/02 E
(21)【出願番号】P 2020092275
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019221790
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002451
【氏名又は名称】積水アクアシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】木曽 忠幸
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-048954(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173773(JP,U)
【文献】特開昭49-008860(JP,A)
【文献】特開2002-58908(JP,A)
【文献】特開2014-18742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/02
B01D 21/18
B01D 21/24
B01D 21/30
E03F 5/14
F16F 15/08
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水処理場に用いられる沈殿池と、
前記沈殿池に被処理水が流入する流入部と、
前記沈殿池から処理水が流出する流出部と、
複数の傾斜板を有し、前記沈殿池の底面から所定の下側空間を開けて前記流入部と前記流出部の間に配置された傾斜板装置と、
前記傾斜板装置の上側に配置された阻流板と、を備え、
前記被処理水の水面を超える位置から前記傾斜板装置の底面まで、前記傾斜板の一部と対向する水流案内面が備えられて
おり、
前記水流案内面は、前記流入部側に配置された最端の前記傾斜板と前記阻流板との前記流入部側の面と兼ねられており、
前記阻流板と前記最端の傾斜板とは、分離されている、
固液分離システム。
【請求項2】
前記水流案内面の傾斜部分の長さは、100~2000mmであり、前記水流案内面と水平方向が形成する角度が20°~70°である、
請求項
1に記載の固液分離システム。
【請求項3】
前記傾斜板装置を前記沈殿池に支持する第1支持部と、
前記阻流板を前記沈殿池に支持する第2支持部を、少なくとも1以上備え、
前記第1支持部と前記第2支持部は、別々に前記沈殿池の側壁に固定されている、
請求項
1に記載の固液分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の上水処理仕様の沈殿池には沈降面積を向上させるため複数の傾斜板が用いられており、当該傾斜板によりフロック(微粒子が会合して、より大きな集合体を生成する集塊)が堆積し、水を浄化するシステムが開発されていた。
【0003】
これらの技術が下水処理に転用されているが、その背景として、近年、下水処理場では、環境負荷の軽減などの観点から既存施設の高度処理化が求められており、それに伴って最終沈殿池の能力増強が求められていることが挙げられる。
【0004】
「下水道施設計画・設計指針と解説-2009年版-」(社団法人日本下水道協会)によれば、最終沈殿池の処理能力は、汚泥の沈降面積に対する1日当たりの流入水量(水面積負荷)で定められる。汚泥の沈降面積は、最終的に汚泥を捕捉する部分の面積であり、沈降した汚泥が行き着く最終沈殿池の底面の面積、通常は、最終沈殿池そのものの面積に相当する。
【0005】
従って、より大きな最終沈殿池を新設すれば、時間変動や日間変動などによる影響により流入水量が増加した場合でも処理水の水質への影響は小さくなると考えられるが、最終沈殿池は前述の設計指針により日最大水量に対して設計されるのが通常であるため、仮に流入変動におけるピークの水量に対して施設設計をすれば、過大な設備投資が必要になるという問題がある。そこで、既存の最終沈殿池の効率を向上させるために、小規模な設備投資で処理能力を向上させる傾斜板を用いる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、傾斜板装置の上流側に配置された流入部阻流板によって流路断面が急縮(水流が通過する流路の断面が急激に狭小化すること)することから、水流が傾斜板装置の下側の空間に流れ込む際に水流の速度が増加し、傾斜板装置の下側の空間における流速分布が前段と後段で不均衡になっていた。
【0008】
本発明は、傾斜板装置の下側の空間における流速分布の不均衡を抑制することが可能な固液分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る固液分離システムは、沈殿池と、流入部と、流出部と、傾斜板装置と、を備える。沈殿池は、下水処理場に用いられる。流入部は、沈殿池に被処理水が流入する。流出部は、沈殿池から処理水が流出する。傾斜板装置は、複数の傾斜板を有し、沈殿池の底面から所定の下側空間を開けて流入部と流出部の間に配置されている。被処理水の水面を超える位置から傾斜板装置の底面まで、傾斜板の一部と対向する水流案内面が備えられている。
【0010】
このように水流案内面を設けることにより、被処理水が傾斜板の下側に流れ込む際における流路の急縮を低減することができるため、傾斜板装置の下側の空間に流れ込む水流の速度増加を抑制することが可能となる。そのため、傾斜板装置の下側の空間における流速分布の不均衡を抑制することができる。
【0011】
なお、本明細書において「対向する」とは、別部材を介して対向することも含む。
第2の発明に係る固液分離システムは、第1の発明に係る固液分離システムであって、水流案内面は、流入部側に配置された最端の傾斜板の流入部側の面、更に設けられた阻流板の流入部側の面、または最端の傾斜板と更に設けられた阻流板との流入部側の面、の何れか一つと兼ねられている。
【0012】
これにより、傾斜板および阻流板の少なくとも一方の流入部側の面を利用して水流案内面を形成できるため、部品点数を増加させず簡易な構成で流路の急縮を低減することができる。
【0013】
第3の発明に係る固液分離システムは、第1または第2の発明に係る固液分離システムであって、水流案内面の傾斜部分の長さは、100~2000mmであり、水流案内面と水平方向が形成する角度が20°~70°である。
【0014】
これにより、水流案内面が形成された部材上に沈殿した汚泥を適切に沈殿池の底面に落下させることができる。
【0015】
第4の発明に係る固液分離システムは、第2の発明に係る固液分離システムであって、第1支持部と、第2支持部を、少なくとも1以上備える。第1支持部は、傾斜板装置を沈殿池に支持する。第2支持部は、阻流板を沈殿池に支持する。第1支持部と第2支持部は、別々に沈殿池の側壁に固定されている。
【0016】
これにより、地震等で振動が加わった際に双方が影響を与え合わないため、耐震性を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、傾斜板装置の下側の空間における流速分布の不均衡を抑制することが可能な固液分離システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明にかかる実施の形態1における固液分離システムを示す側面図。
【
図2】
図1の固液分離システムの傾斜板装置の構成を模式的に示す斜視図。
【
図5】
図4から阻流板、並びに阻流板に接続された吊りボルトおよび桁材を省略した状態を示す図。
【
図6】(a)
図1の下水用傾斜板の第2面を示す平面図、(b)
図1の下水用傾斜板の第1面を示す平面図。
【
図7A】本発明にかかる実施の形態における流入部阻流板および下水用傾斜板の近傍における水流を示す側面図。
【
図7B】従来の流入部阻流板および下水用傾斜板の近傍における水流を示す側面図。
【
図7C】従来の流入部阻流板および下水用傾斜板の近傍における水流を示す側面図。
【
図8】本発明にかかる実施の形態2における固液分離システムを示す部分側面図。
【
図9】本発明にかかる実施の形態3における固液分離システムを示す部分側面図。
【
図10】本発明にかかる実施の形態の変形例における傾斜板を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による実施の形態の固液分離システムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(実施の形態1)
本発明に係る実施の形態1の固液分離システム100について以下に説明する。
【0021】
<構成>
(固液分離システム100)
図1は、本実施の形態の固液分離システム100を示す図である。本実施の形態の固液分離システム100は、下水処理場の最終沈殿池Pにおける被処理水Wの固液分離に適用される。
【0022】
図1に示すように、固液分離システム100は、最終沈殿池P(沈殿池の一例)と、傾斜板装置10と、流入部阻流板11(阻流板の一例)と、越流堰12と、水路13と、流入部14と、流出部15と、汚泥掻き寄せ機16と、汚泥ホッパー17と、を備える。
【0023】
流入部14は、原水(被処理水W)が最終沈殿池Pに流入する。流出部15は、最終沈殿池Pにおいて流入部14の反対側に設けられており、最終沈殿池Pから浄化された被処理水Wが流出する。
【0024】
傾斜板装置10は、最終沈殿池Pの略中央部から下流側(流出部15側)の部分に配置されている。傾斜板装置10は、複数の下水用傾斜板20を有している。複数の下水用傾斜板20は、水面側を流入部14側に傾けて、上流側から下流側に向かって並んで配置されている。
【0025】
傾斜板装置10は、被処理水Wの水面WSから所定の深さまで沈み、かつ、最終沈殿池Pの底面PBとの間に所定の下側空間42が確保されるように支持されている。この支持は、桁材などから吊り下げられてもよいし、たとえば図示しない支持体上に載置されてもよい。傾斜板装置10の詳細については後段にて詳述する。
【0026】
流入部阻流板11は、水面から所定の深さまでの領域内の被処理水Wの下流側(流出部15側)への流れを阻む。
【0027】
越流堰12は、流入部阻流板11よりも下流側(流出部15側)の被処理水Wの水面付近に配置されている。越流堰12は、上流側から下流側に向かう方向に沿って形成されている。
【0028】
水路(トラフ)13は、越流堰12に囲まれて形成されており、流出部15に繋がっている。なお、越流堰12に限らず、管に穴が形成された構成であってもよい。
【0029】
ここで、最終沈殿池Pにおいて流入部14から流入部阻流板11までの空間を上流側空間41とし、傾斜板装置10の下側の空間を下側空間42とし、上流側空間41から下側空間42に水が流入する空間を流入路43とする。流入路43は、後述するが、下水用傾斜板20Pの第2面2b(後述する)と底面PBの間に形成される。
【0030】
流入部14から最終沈殿池Pに流入してきた被処理水Wは上流側空間41を通って、流入部阻流板11に水流方向(矢印D方向(所定方向の一例))を阻まれて水流が下降し、流入路43を通って下側空間42へ流入する。下側空間42に流入した被処理水Wは、水路13に向かう上向流Jとなり、傾斜板装置10の底面10aから下水用傾斜板20の間に流入し上昇する。
【0031】
そして、被処理水Wの汚泥が、傾斜板装置10内を通過する間に下水用傾斜板20の第2面20bにぶつかって捕捉され、もしくは沈降し、下水用傾斜板20の第1面20a上に沈殿することにより被処理水Wが浄化される。下水用傾斜板20の第1面20aに沈殿した汚泥は、堆積に伴って自重で落下する。
【0032】
汚泥掻き寄せ機16は、最終沈殿池Pの底面付近に配置されている。最終沈殿池Pの底面付近には沈降した汚泥Mが堆積している。堆積した汚泥Mは、汚泥掻き寄せ機16が、
図1上時計回りに回転することにより汚泥ホッパー17に集められ、排泥される。汚泥掻き寄せ機16は、流入部阻流板11より上流側において、水面付近を通過し、浮遊物も掻き寄せる。
【0033】
汚泥ホッパー17は、最終沈殿池Pの流入部14付近の底面に形成されている。
(傾斜板装置10)
図2は、傾斜板装置10の一部の構成を模式的に示す斜視図である。
図3は、傾斜板装置10および流入部阻流板11を示す側面図である。
図2および
図3に示すように、傾斜板装置10は、複数の下水用傾斜板20と、一対の上側フレーム21と、一対の下側フレーム22と、複数の支持棒23と、複数のフック24と、複数の上下フレーム25と、を有している。
【0034】
一対の上側フレーム21は、流入部14から流出部15に向かう方向D(所定方向の一例)に沿って配置されている。一対の上側フレーム21は、互いに平行に配置されている。
【0035】
一対の下側フレーム22は、流入部14から流出部15に向かう方向Dに沿って配置されている。一対の下側フレーム22は、互いに平行に配置されている。一対の上側フレーム21は、一対の下側フレーム22よりも水面側に配置される。幅方向Fの一方側および他方側の各々において上下に配置された上側フレーム21と下側フレーム22は、その上流側の端と下流側の端において鉛直方向Gに沿って配置された複数の上下フレーム25(
図3参照)によって接続されている。なお、鉛直方向Gは、鉛直上方向および鉛直下方向を含む。鉛直上方向は、後述する
図7A~
図7CにおいてGuと示され、鉛直下方向は、Gdと示されている。
【0036】
複数の支持棒23は、一対の上側フレーム21の間に互いに平行に架設されており、一対の下側フレーム22の間にも互いに平行に架設されている。
【0037】
下水用傾斜板20は、一対の上側フレーム21および一対の下側フレーム22に対して傾斜して、上下一対の支持棒23に取り付けられている。
図4は、
図1のAA´間の模式的な矢視断面図である。
図5は、
図4から流入部阻流板11、吊りボルト33および桁材34を取り除いた状態を示す図である。
下水用傾斜板20は、
図4および
図5に示すように、最終沈殿池Pの幅方向Fに沿って複数枚(図では3枚)配置されている。この場合、例えば、
図4および
図5において最も左側に配置されている下水用傾斜板20の右側に位置する上側フレーム21および下側フレーム22は、真ん中の下水用傾斜板20の左側に位置する上側フレーム21および下側フレーム22と兼ねられていてもよい。また、
図4および
図5において最も右側に配置されている下水用傾斜板20の左側に位置する上側フレーム21および下側フレーム22は、真ん中の下水用傾斜板20の右側に位置する上側フレーム21および下側フレーム22と兼ねられていてもよい。
【0038】
図5に示すように、上側フレーム21が、上方から吊りボルト31によって支持されており、吊りボルト31は、幅方向Fに沿って配置された桁材32に固定されている。桁材32は、最終沈殿池Pの対向する壁面Psに固定されている。また、桁材32は、
図1に示すように方向Dに沿って複数配置されている。このような構成によって、傾斜板装置10は、被処理水Wの水面から所定の深さまで沈み、かつ、最終沈殿池Pの底面PBとの間に所定の空間が確保されるように支持されている。これら吊りボルト31および桁材32が、第1支持部の一例に相当する。
【0039】
(下水用傾斜板20)
下水用傾斜板20は、概ね四角形状の部材で形成されている。下水用傾斜板20の材質としては、PVC(polyvinyl chloride)、特に硬質塩化ビニルが好ましいが、これに限るものではない。傾斜板の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0040】
なお、下水用傾斜板20は、異形押出成形、射出成形などで作成することができるが、押出成形が好ましい。
【0041】
下水用傾斜板20は、上側フレーム21と下側フレーム22の長さ方向(方向D)に沿って傾斜して複数個並んで配置されている。傾斜板装置10は、下水処理場の最終沈殿池P内において、下側フレーム22を最終沈殿池Pの底面PB側に向けて設置される。下水用傾斜板20の第2面20b(後述する)が最終沈殿池Pの底面PB側に向けられる。
【0042】
下水用傾斜板20は、複数のフック24によって、上下に配置されている支持棒23に係止されて取り付けられる。
図6(a)は、下水用傾斜板20の第2面20b側を示す平面図である。
図6(b)は、下水用傾斜板20の第1面20a側を示す平面図である。
【0043】
下水用傾斜板20は、
図6(a)および
図6(b)に示すように、第1面20aと、第2面20bと、上端20iと、下端20jと、第1端20cと、第2端20dと、を有する。
【0044】
下水用傾斜板20が、上述した一対の上側フレーム21、一対の下側フレーム22、および支持棒23に取り付けられた際に、
図2に示すように、上端20iおよび下端20jは、支持棒23と略平行に配置される。また、上端20iは、上側フレーム21よりも上方に配置され、下端20jは、下側フレーム22よりも下方に配置される。
第1端20cと第2端20dは、上側フレーム21から下側フレーム22に向かって傾斜して配置される。
【0045】
複数の下水用傾斜板20は、流入部14から最終沈殿池Pに被処理水が流入する方向Dに沿って並んで配置されている。複数の下水用傾斜板20は、隣り合う下水用傾斜板20が互いに対向して平行になるように配置されている。
【0046】
詳細には、複数の下水用傾斜板20は、
図3に示すように、隣り合う下水用傾斜板20のうち一方の下水用傾斜板20の第1面20aと、他方の下水用傾斜板20の第2面20bが対向するように配置されている。また、複数の下水用傾斜板20の下端20jの鉛直方向Gにおける位置は、略一致している。
【0047】
ここで、下端20jを結ぶ仮想的な面を傾斜板装置10の底面10aとする。
図3では、底面10aは、二点鎖線で示している。本実施の形態では、複数の下水用傾斜板20の下端20jの鉛直方向における位置は略一致しているため、底面10aは、略水平に形成されているが、これに限られるものではない。複数の下水用傾斜板20の下端20jの鉛直方向における位置が異なっている場合には、最も下に位置する20jの位置に合わせて底面10aが設定される。
【0048】
各々の下水用傾斜板20は、
図1~
図3に示すように、上方に向かうに従って流入部14側に位置するように傾斜して、一対の上側フレーム21、一対の下側フレーム22、複数の支持棒23、および複数の上下フレーム25に支持されている。下水用傾斜板20は、
図3に示すように上端20iが下端20jよりも流入部14側に位置するように、配置されている。
【0049】
また、
図3に示すように、最も上流側に配置されている(流入部阻流板11側に配置されている)下水用傾斜板20(20Pと示す)は、上下フレーム25の間に配置された支持棒23と下側フレーム22の間に配置された支持棒23にフック24で係止されて支持されている。
【0050】
図6(a)に示す下水用傾斜板20の第2面20bには、汚泥の捕捉処理が行われている。ここで、汚泥の捕捉処理とは、被処理水中の汚泥が最終沈殿池Pから流出しないように、下水用傾斜板20の第2面20bを汚泥の滞留し易い状態にする処理である。例えば、傾斜板の表面の粗さを強くすることや、表面に沿った汚泥の動きに沿った方向または直交する方向に凹凸を形成することにより傾斜板の表面に汚泥が付着し易い状態にすることができるが、これに限定されるものではない。表面の粗面化の方法は特に限定されるものではないが、たとえばサンドブラストなどで機械的に加工されていてもよく、或いは、所定の薬剤による微細なエッチング加工または所定の面粗度の型によるプレス加工などであってもよい。また、捕捉処理は、第2面20bの全体に施されていなくてもよい。
【0051】
第2面20bの反対側の第1面20aは、汚泥が滑落し易いように平坦な面であるほうが好ましい。
【0052】
また、下水用傾斜板20の第2面20bには、第1端20cと第2端20dのそれぞれに沿って溝部20eが設けられている。溝部20e内には、フック孔20ebが形成されており、フック孔20ebには、上述したフック24が装着される。フック孔20ebに装着されたフック24によって、傾斜板装置10の支持棒23に下水用傾斜板20が取り付けられる。また、第1面20aには、溝部20eに対向する突条部20fが形成されている。
【0053】
なお、
図3に示すように最も流入部阻流板11側に配置された下水用傾斜板20Pの上端20i側のフック孔20ebの位置は、他の下水用傾斜板20Pの位置とは異なっており、他の下水用傾斜板20よりも下方に設けられている。
図6(a)および
図6(b)では下水用傾斜板20Pにおける上端20i側のフック孔20eb´が二点鎖線の引き出し線で示されている。
【0054】
図3の側面視において、少なくとも下水用傾斜板20Pと矢印D方向(本実施の形態では水平方向と一致する)の成す角度θaは、20度以上70度以下であることが好ましく、60度が特に好ましい。なお、本実施の形態では、すべての下水用傾斜板20が互いに平行に配置されている。当該範囲内であることで、固液分離システムの有効沈降面積を確保できる。
【0055】
また、下水用傾斜板20Pの上端20iと下端20jの間の長さLは、100~2000mmに設定することができる。なお、本実施の形態では、下水用傾斜板20Pと他の下水用傾斜板20は同じ大きさに形成されているが、異なっていてもよい。この下水用傾斜板20Pの第2面20bが、水流案内面の傾斜部分の一例に相当する。
【0056】
(流入部阻流板11)
流入部阻流板11は、
図3に示すように、傾斜板装置10の上流側(流入部14側)であって最終沈殿池Pの略中央部分に設けられている。流入部阻流板11は、流入部14から流入した水流方向に対して主面が略垂直になるように配置されている。流入部阻流板11の流入部14側の面を11aとする。流入部阻流板11の面11aに流れを阻まれた水流は下降流となり、傾斜板装置10の下側に導かれる。
【0057】
図4に示すように、流入部阻流板11は、その幅方向Fの長さが最終沈殿池Pの幅方向Fの長さと略同じになるように形成されている。
【0058】
流入部阻流板11の下端11eは、最も上流側(流入部14側ともいえる)に配置された下水用傾斜板20Pの上端20iの上方に位置する。水流を滑らかに傾斜板装置10の下側に導くためには、流入部阻流板11の下端11eと、最も上流側(流入部14側ともいえる)に配置された下水用傾斜板20Pの上端20iとの間隔は狭い方が好ましい。
【0059】
なお、流入部阻流板11の下端11eと下水用傾斜板20Pの上端20iは機械的に連結されていない。当該構成が連結されていないことで、震動が来た際のエネルギーを下水用傾斜板20Pが直接受けにくくなるため、破損を回避できる。
【0060】
流入部阻流板11は、
図4に示すように、吊りボルト33によって支持されており、吊りボルト33は、幅方向Fに沿って配置された桁材34に固定されている。桁材34は、最終沈殿池Pの対向する壁面Psに固定されている。このような構成によって、下水用傾斜板20Pの上端20iの上側に鉛直方向に流入部阻流板11を支持することができる。また、吊りボルト33および桁材34が、第2支持部の一例に相当する。
なお、流入部阻流板11の材質は、PVC(polyvinyl chloride)が最も好ましいが、これに限られるものでない。流入部阻流板11の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0061】
本実施の第1の形態では、流入部阻流板11と上述した下水用傾斜板20Pによって、流入部14から流入した被処理水Wが傾斜板装置10の下側空間42に案内される。
【0062】
(被処理水の下側空間への流入)
図7Aは、流入部阻流板11および下水用傾斜板20Pの近傍における水流を示す側面図である。
本実施の第1の形態では、流入部14から流入した被処理水Wは上流側空間41を通って流れ、その流れを流入部阻流板11の面11aに阻まれて下降する。下降した被処理水Wは、最端の下水用傾斜板20Pの第2面20bの傾斜に沿って底面PBに向かって流れ、傾斜板装置10の下側の下側空間42に流れ込む。流入部阻流板11の流入部14側の面11aと、流入部14側の最端の下水用傾斜板20Pの第2面20bが、水流案内面の一例に相当する。
【0063】
なお、本発明における水流案内面とは、横向流式の沈殿池に用いられる阻流板、傾斜板の一部、その他の部品で構成されるものである。当該水流案内面は、傾斜板装置の下側から上側に流動する水流が傾斜板装置10の下側に流入するための流路を形成する。そして、水流案内面により水流の抵抗を軽減し、短絡流の発生を抑制することができる。水流案内面は、水流の抵抗を軽減し、短絡流の発生を抑制できる面のことである。
図7Aに示すように、上流側空間41から被処理水Wが下側空間42に流れ込む空間である流入路43は、底面PBと最も上流側の下水用傾斜板20Pの第2面20bと、両壁面Psによって形成されている。
図7Aでは分かり易くするために汚泥掻き寄せ機16は図示を省略する。
【0064】
図7Aの側面図において、流入部阻流板11から鉛直方向Gに底面PBまで下した面をS1とし、下水用傾斜板20Pの下端20jから鉛直方向Gに底面PBまで下した面をS2とすると、上述した上流側空間41は面S1よりも上流側の空間(流入部14側の空間ともいえる)に相当する。また、上述した下側空間42は、面S2よりも下流側の空間(流出部15側の空間ともいえる)に相当する。流入路43は、面S1と面S2の間の空間に相当する。
【0065】
下水用傾斜板20Pの上端20iが流入部阻流板11の下端11e近傍に配置され、下水用傾斜板20Pの上端20iが下端20jよりも流入部阻流板11側に位置するように傾斜されている。このため、流入路43は、上流側空間41から下側空間42に向かう(矢印D方向)に従って上下方向の高さが徐々に狭くなり、流路面積が徐々に小さくなる。
【0066】
<作用効果>
図7Bは、従来の流入部阻流板1011と傾斜板装置1010の位置関係を示す図である。
図7Bでは、鉛直方向Gに沿って配置された流入部阻流板1011と、流入部阻流板1011の下端1011eから下流側に向けて水平に設置された流入部下部阻流板1012ならびに流入部阻流板1011の下流側に配置された傾斜板装置1010が図示されている。
流入部下部阻流板1012は、流入口1043を水流が通過する際、流入部阻流板1011と傾斜板装置1010との間の空間に流れ込むことを阻害するための部材である。流入部下部阻流板1012の長さは、下端1011eから最も近傍に配置された傾斜板1020Pまでとする。詳細には、流入部下部阻流板1012の長さは、流入部下部阻流板1012の下流側の端の水平方向の位置が、傾斜板1020Pの下端1020jの水平方向の位置と一致するまでの長さに設定されている。
なお、
図7Bでは流入部下部阻流板1012が下端1011eから下流側に向けて水平に設置されるため、流入部下部阻流板1012の鉛直上方向Gu側となる面に、沈降分離された懸濁物質が堆積する。
図7Cに示すような従来の構成では、流入部下部阻流板1013は、下端1011eから鉛直上方向Gu側に100mm~500mmの範囲における流入部阻流板1011の部分から下流側に向かって設置されている。流入部下部阻流板1013は、下流側に向かうに従って底面PBに近づくように傾斜して配置されている。流入部阻流板1011と流入部下部阻流板1013が形成する角度は、50°~80°に設定されている。このため、流入部下部阻流板1013の鉛直上方向Gu側となる面に、沈降分離された懸濁物質が堆積することなく滑落を促すことができる。
流入部下部阻流板1013の長さは、流入部阻流板1011に対して最も近傍に配置された傾斜板1020Pまでとする。詳細には、流入部下部阻流板1013の長さは、流入部下部阻流板1013の下流側の端の水平方向の位置が、傾斜板1020Pの下端1020jの水平方向の位置と一致するまでの長さに設定されている。
図7Bおよび
図7Cに示すように、水平方向において流入部阻流板1011は傾斜板装置1010を概ね覆うように配置されている。流入部阻流板1011の下端1011eの鉛直方向Gにおける位置が、傾斜板装置1010の傾斜板1020の下端1020j以下に設定されている。
【0067】
流入部阻流板1011の上流側の上流側空間1041から傾斜板装置1010の下側空間1042に被処理水が流入する際に通過する流入口1043は、流入部阻流板1011の下端1011eと底面PBとの間に形成される。
【0068】
図7Bおよび
図7Cに示すような構成では、上流側空間1041から下側空間1042に被処理水が流入する際に、流入口1043において、水流が通過する流路の断面が急激に狭小化するため、流速が増加することになる。
【0069】
対して、
図7Aに示すような本実施の形態の固液分離システム100では、下水用傾斜板20Pの第2面20bと底面PBの間で流路面積が徐々に小さくように、第2面20bが、上流側空間41から下側空間42に向かって底面PBに近づくように設けられているため、下側空間42に流れ込む(潜り込む)水流の速度増加を抑制することができる。なお、CFD(computational fluid dynamics)解析を用いて、流速の低減効果が得られることが確認できた。
【0070】
また、
図7Aに示す固液分離システム100では、
図7Bおよび
図7Cに示す流入部阻流板1011の機能(沈殿池に流入した横向流を傾斜板装置1010の下部に流れ込ませる(潜り込ませる))を保持しつつ、傾斜板装置10の最前列(最も沈殿池の流入部14に近い最初の一列)の下水用傾斜板20Pに流入部阻流板の機能を代替させる事により、流入部阻流板11の鉛直方向長さを短縮し、流入部阻流板11の下部における空間(
図7Aの空間Q、
図7Bの空間Q´、
図7Cの空間Q´参照)を確保することができる。
【0071】
これにより、本実施の形態の固液分離システム100では、
図7Bおよび
図7Cに示すような流入部阻流板1011の下部における流路断面の急縮(水流が通過する流路の断面が急激に狭小化すること)の発生が防止され、流入路43に示すように流路断面を傾斜板装置10の下側空間42に向かって漸減させることで、傾斜板装置10の下側空間42に流れ込む(潜り込む)水流の速度増加を抑制することが可能となる。この水流の速度増加の抑制は、傾斜板装置10の下側空間42における流速分布の均等化に繋がり、懸濁物質の沈降分離する条件を有利側に増強することができる。
【0072】
また、本実施の形態の固液分離システム100では、被処理水Wの水面WSを超える位置から傾斜板装置10の底面10aまで、下水用傾斜板20の一部と対向する水流案内面が備えられている。なお、当該水流案内面は、下水用傾斜板20と略平行に対向している。
【0073】
本実施の形態1では、水流案内面は、流入部14側に配置された最端の下水用傾斜板20Pの流入部14側の第2面20bと兼ねられている。
【0074】
当該構成にすることで、空間Qを広く保ちながら、各構成部品の流入部14側の面を利用して流入路43を形成することができるため、部品点数を増加させず簡易な構成で流路の急縮を低減することができる。
また、本実施の形態の固液分離システム100では、流入部阻流板11と傾斜板装置10が分離されており、別々に最終沈殿池Pに固定されている。これにより、地震等で振動が加わった際に双方が影響を与え合わないため、耐震性を向上することができる。
また、本実施の形態の固液分離システム100では、流入部阻流板11の下端11eは、下水用傾斜板20Pの上端20iよりも上方に配置されている。これにより、流入部阻流板11の下側における流路の急縮を低減することができる。
【0075】
また、本実施の形態の固液分離システム100では、下水用傾斜板20Pの上端20iは、流入部阻流板11の下端11eの下方に配置されている。
図7Bおよび
図7Cに示す構成では、接触を回避させるために流入部阻流板1011と傾斜板装置1010の間に離隔距離dを設ける必要があるが、本実施の形態の
図7Aに示す構成では、傾斜板装置10の上流側の端の上方に流入部阻流板11が設けられているため、離隔距離を設ける必要がなく、流入部14と流出部15の間の長さを短くすることができる。
また、本実施の形態の固液分離システム100では、最も流入部阻流板11側に配置された最端の下水用傾斜板20Pの長さは、100~2000mmである。水流案内面(例えば流入部側に配置された最端の下水用傾斜板20)と水平方向Dが形成する角度が20°~70°である。
【0076】
これにより、水流案内面を兼ねた下水用傾斜板20P上に沈殿した汚泥を適切に沈殿池の底面に落下させることができる。
【0077】
(実施の形態2)
本発明に係る実施の形態2における固液分離システムについて説明する。
【0078】
<構成>
実施の形態1では、水流案内面が流入部14側の最端の下水用傾斜板20Pの第2面20bと流入部阻流板11の流入部14側の面11aに兼ねられているが、本実施の形態2の固液分離システムでは、水流案内面が下水用傾斜板にのみ兼ねられている。
【0079】
図8は、本発明に係る実施の形態2における固液分離システム200の一部の構成を示す側面図である。
【0080】
図8に示すように、本実施の形態2の固液分離システム200では、実施の形態1の固液分離システム100と異なり、流入部阻流板11を設けずとも、被処理水Wの水面WSを超える位置までの長さを有する最端の下水用傾斜板220Pを用いることで、同様に流入部14から流入した被処理水Wが傾斜板装置210の下側空間42に案内される。
【0081】
傾斜板装置210の流入部14側の最端の下水用傾斜板220Pは、他の下水用傾斜板20と比較して、上端220iが水面WSを超える位置まで伸びて形成されている。なお、下水用傾斜板220Pの流入部14側の面が第2面220bとして示され、第2面220bの反対側の面が第1面220aとして示されている。流入部14側の最端の下水用傾斜板220Pの第2面220bが、水流案内面の一例に相当する。
【0082】
下水用傾斜板220Pの下端220jは、他の下水用傾斜板20の下端20jと概ね同じ高さに設定されていてもよい。
図8では、傾斜板装置210の底面として、下端220jおよび下端20jを結ぶ仮想的な底面210aが示されている。
【0083】
また、下水用傾斜板220Pと水面WSの交わる線から鉛直方向Gに底面PBまで下した面をS1とし、下水用傾斜板220の下端220jから鉛直方向Gに底面PBまでおろした面をS2とする。面S1よりも上流側の空間を上流側空間41と設定し、面S2よりも下流側の空間を下側空間42と設定し、面S1と面S2の間を流入路43と設定することができる。
【0084】
<作用効果等>
本実施の形態2では、流入部14から流入した被処理水Wは上流側空間41を通って流れ、その流れを最端の下水用傾斜板220Pの第2面220bに阻まれて下降する。下降した被処理水Wは、最端の下水用傾斜板220Pの第2面220bの傾斜に沿って底面PBに向かって流れ、傾斜板装置210の下側の下側空間42に流れ込む。
【0085】
このとき、下水用傾斜板220Pは、掻き寄せ機など、他の部品と干渉しないような位置に配置される。
本実施の形態の固液分離システム200では、被処理水Wの水面WSを超える位置から傾斜板装置210の底面210aまで、下水用傾斜板20の一部と対向する水流案内面が備えられている。当該水流案内面は、下水用傾斜板20と略平行に対向している。
【0086】
本実施の形態2では、水流案内面は、流入部14側に配置された最端の下水用傾斜板220Pの流入部14側の第2面220bと兼ねられている。
【0087】
当該構成にすることで、上流側空間41から流入路43に水が流入する空間を広く保ちながら、各構成部品の流入部14側の面を利用して流入路43を形成することができるため、部品点数を増加させず簡易な構成で流路の急縮を低減することができる。
また、水流案内面(例えば流入部側に配置された最端の下水用傾斜板220P)と水平方向Dが形成する角度が20°~70°である。
【0088】
これにより、水流案内面を兼ねた下水用傾斜板220P上に沈殿した汚泥を適切に沈殿池の底面に落下させることができる。
【0089】
(実施の形態3)
本発明に係る実施の形態3における固液分離システムについて説明する。
【0090】
<構成>
実施の形態1では、水流案内面が流入部14側の最端の下水用傾斜板20Pの第2面20bと流入部阻流板11の流入部14側の面11aに兼ねられているが、本実施の形態3の固液分離システムでは、水流案内面が流入部阻流板にのみ兼ねられている。
【0091】
図9は、本実施の形態の固液分離システム300の構成を示す部分側面図である。固液分離システム300の流入部阻流板311は、略鉛直に配置された第1部分311aと、上流側空間41から下側空間42に向かうに従って底面PBに近づくように傾斜した傾斜部311bとを有する。流入部阻流板311の第1部分311aの流入部14側の面311dおよび傾斜部311bの底面PB側(流入部14側)の面311cが水流案内面の一例に相当する。
図9では、傾斜板装置310の底面として、下端20jを結ぶ仮想的な底面310aが示されている。
【0092】
また、傾斜板装置310は、傾斜部311bに干渉しないように、実施の形態1の傾斜板装置10と比較して上側フレーム321、下側フレーム322および上下フレーム325の形状が変更されている。なお、流入部阻流板311と傾斜板装置310が機械的に接続されていない。当該構成が連結されていないことで、震動がきた際のエネルギーを下水用傾斜板320が直接受けにくくなるため、破損を回避することができる。
【0093】
また、流入部阻流板311の第1部分311aから鉛直方向Gに底面PBまで下した面をS1とし、流入部阻流板311の下端311eから鉛直方向Gに底面PBまでおろした面をS2とする。面S1よりも上流側の空間を上流側空間41と設定し、面S2よりも下流側の空間を下側空間42と設定し、面S1と面S2の間を流入路43と設定することができる。
【0094】
本実施の形態3では、流入部14から流入した被処理水Wは上流側空間41を通って流れ、その流れを流入部阻流板311の面311dに阻まれて下降する。下降した被処理水Wは、流入部阻流板311の面311cの傾斜に沿って底面PBに向かって流れ、傾斜板装置310の下側の下側空間42に流れ込む。
<作用効果等>
本実施の形態3の固液分離システム300では、被処理水Wの水面WSを超える位置から傾斜板装置310の底面310aまで、下水用傾斜板20の一部と対向する水流案内面が備えられている。なお、当該水流案内面は、下水用傾斜板20と略平行に対向している。本実施の形態3では、水流案内面は、流入部阻流板311の流入部14側の面311c、311dと兼ねられている。
【0095】
当該構成にすることで、上流側空間41から流入路43に水が流入する空間を広く保ちながら、各構成部品の流入部14側の面を利用して流入路43を形成することができるため、部品点数を増加させず簡易な構成で流路の急縮を低減することができる。
また、本実施の形態3の固液分離システム300では、流入部阻流板311と傾斜板装置310が分離されており、別々に最終沈殿池Pに固定されている。これにより、地震等で振動が加わった際に双方が影響を与え合わないため、耐震性を向上することができる。
【0096】
以上のように、実施の形態1~3の固液分離システム100、200、300では、被処理水Wの水面WSを超える位置から傾斜板装置10、210、310の底面10a、210a、310aまで、下水用傾斜板20の一部と対向する水流案内面が備えられている。なお、水流案内面の少なくとも一部は、下水用傾斜板20に対向している。また、本明細書において「対向」とは、別部材を介して対向することも含む。
【0097】
当該水流案内面の具体的構成は上記実施の形態1~3に示したように以下に挙げられる何れか1つの構成である。
(1)水流案内面は、流入部14側の最端の下水用傾斜板20Pの第2面20bと流入部阻流板11の流入部14側の面11aと兼ねられている。
(2)水流案内面は、流入部14側に配置された最端の下水用傾斜板220Pの流入部14側の第2面220bと兼ねられている。
(3)水流案内面は、流入部阻流板311の流入部14側の面311c、311dと兼ねられている。
【0098】
当該構成にすることで、上流側空間41から流入路43に水が流入する空間を広く保ちながら、各構成部品の流入部14側の面を利用して流入路43を形成することができるため、部品点数を増加させず簡易な構成で流路の急縮を低減することができる。
(他の実施の形態)
以上、本発明による実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0099】
(A)
上記実施の形態1~3では、水流案内面は下水用傾斜板20Pおよび流入部阻流板11の少なくとも一方に形成されているが、これに限らなくてもよく、下水用傾斜板20Pおよび流入部阻流板211とは別に、水流案内面が形成された部材が設けられていてもよい。この部材は、流入部阻流板11または傾斜板装置10とともに支持されてもよいし、最終沈殿池Pの壁面Psに支持されてもよい。
【0100】
(B)
上記実施の形態では、水流案内面の一例である下水用傾斜板20Pの第2面20bの上端20iは、流入部阻流板11の下端11eの下側に配置されているが、下端11eよりも上側に配置されていてもよい。ただし、流入部阻流板11の下端11eは、下水用傾斜板20Pの第2面20bの下端20jよりも上方に位置している方が好ましい。
【0101】
(C)
上記実施の形態では、水流案内面の一部を形成する下水用傾斜板20Pの第2面20b、もしくは流入部阻流板311の面311c、または水流案内面を形成する下水用傾斜板220Pの第2面220bは1つの平面で形成されているため側面視において直線状であるが、上流側空間41から下側空間42に向かって底面PBに近づけばよく、複数の平面で形成され側面視において折れ線状であってもよい。
【0102】
また、水流案内面は平面に限らず全部または一部が曲面で形成されていてもよい。
(D)
また、上記実施の形態では、流入部阻流板11は鉛直方向Gに沿って配置されているが、これに限らなくてもよく、例えば、上端が下端よりも流入部14側に位置するように傾斜していてもよい。
【0103】
(E)
上記実施の形態の下水用傾斜板20は、幅方向Fに沿って複数枚の傾斜板に分割されていてもよい。
図10は、複数の傾斜板に分割された下水用傾斜板20´を示す斜視図である。下水用傾斜板20´は、複数の傾斜板60と、隣り合う傾斜板60の間に配置された接続部材61と、を有する。
図10に示す例では、3枚の傾斜板60と、2つの接続部材61が設けられている。3枚の傾斜板60は、主面が同一面上に位置するように幅方向Fに沿って並んで配置されている。T部拡大図に示すように、接続部材61には、各々の傾斜板60の端が差し込まれる挿入部61aが設けられている。挿入部61aに傾斜板60の端を差し込むことによって、下水用傾斜板20´を構成することができる。なお、接続部材61と傾斜板60の間の固定は、いずれの方法であってもよいが、例えば挿入部61aに傾斜板60の端を差し込んだ状態で接続部材61および傾斜板60を貫くようにピン等を差し込めばよい。
【0104】
(F)
上記実施の形態では、フック24によって下水用傾斜板20を支持棒23に支持されているが、フックに限らなくてもよく、複数の下水用傾斜板20を並んで配置することができさえすれば支持方法は限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の固液分離システムは、傾斜板装置の下側の空間における流速分布の不均衡を抑制することが可能な効果を発揮し、下水処理施設の最終沈殿池などとして有用である。
【符号の説明】
【0106】
10 :傾斜板装置
11 :流入部阻流板
20 :下水用傾斜板
20P :下水用傾斜板
20b :第2面
100 :固液分離システム