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  • 特許-液晶ポリエステル加工品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】液晶ポリエステル加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20240214BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20240214BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20240214BHJP
   D06M 10/02 20060101ALI20240214BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08J7/00 A CFD
B32B27/36
B32B37/14 A
B32B15/09 Z
D06M10/00 J
D06M10/00 K
D06M10/02 C
D06M10/02 D
C08G63/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021504099
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008833
(87)【国際公開番号】W WO2020179767
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019040439
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000243272
【氏名又は名称】本州化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】今井 涼太
(72)【発明者】
【氏名】金重 勝彦
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-096471(JP,A)
【文献】特開2011-141535(JP,A)
【文献】特開平01-216824(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090270(WO,A1)
【文献】特開2007-302740(JP,A)
【文献】特開平06-200057(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131219(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00-7/02;7/12-7/18
B32B 1/00-43/00
D06M 10/00-11/84;16/00
D06M 19/00-23/18
C08G 63/00-64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に、酸化処理を施す工程(I)を有し、
前記液晶ポリエステル樹脂が、一般式(1’)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体(A)、及びその他の芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)を重縮合することにより得られるものであり、前記成分(A)の含有量が、前記成分(A)と前記成分(B)の合計量に対して1モル%以上50モル%以下の範囲であることを特徴とする、液晶ポリエステル加工品の製造方法。
【化1】
(式中、Arはフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表し、Rは炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素原子数が5~6である環状のアルキル基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【化2】
(式中、Ar、R 、nは一般式(1)のそれと同じであり、R は水素原子又は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基を表し、R は水素原子又は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に、酸化処理を施す工程(I)を有し、
前記液晶ポリエステル樹脂が、一般式(1’)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体(A)、及びその他の芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)、さらにジヒドロキシ化合物(C)、ジカルボン酸化合物(D)、脂肪族ジオール(E)、脂肪族ジカルボン酸(F)を併用して重縮合することにより得られるものであり、前記成分(A)の含有量が、前記成分(A)~(F)の合計量に対して1モル%以上50モル%以下の範囲であることを特徴とする、液晶ポリエステル加工品の製造方法。
【化3】
(式中、Arはフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表し、R は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素原子数が5~6である環状のアルキル基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【化4】
(式中、Ar、R 、nは一般式(1)のそれと同じであり、R は水素原子又は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基を表し、R は水素原子又は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記工程における酸化処理が、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線(UV)照射処理、フレーム処理、電子線処理、酸化剤による化学的処理、酸素存在下による熱処理の何れかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル加工品の製造方法。
【請求項4】
さらに、酸化処理を施した面に樹脂層若しくは金属層を積層し積層体を製造する工程(II)を有することを特徴とする、請求項1~3何れかに記載の液晶ポリエステル加工品の製造方法。
【請求項5】
さらに、酸化処理を施した面を着色し有色液晶ポリエステル繊維を製造する工程(III)を有することを特徴とする、請求項1~3何れかに記載の液晶ポリエステル加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難接着性樹脂である液晶ポリエステル樹脂の接着性を改良した、液晶ポリエステル加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステル樹脂を使用した液晶ポリエステル加工品の1つとして、例えば、液晶ポリエステル成形体と金属箔を接着させるフレキシブルプリントサーキット(FPC)等の積層体が挙げられるが、液晶ポリエステルは接着性が低く、接着剤を用いたとしても十分な接着強度を保つことができない。そのため、一般的には金属箔表面を物理的・化学的に粗化することにより、接着強度を上げていた。しかしながら、接着性の改善のために表面粗化を施すと、伝送損失が大きくなり、高速・大容量伝送用途では実用化できないという課題がある。そのため、より低粗度な、好ましくは平滑な金属箔に対して、高い接着性を有する液晶ポリエステル樹脂が望まれている。
他方、接着性を高めるために、液晶ポリエステル樹脂の表面改質処理を行う技術も種々報告されている。液晶ポリエステルフィルム表面をコロナ処理、プラズマ処理等することにより、表面ぬれ張力が向上し、金属箔との接着性が向上することが知られている(例えば、特許文献1等)。また、下記非特許文献1には、プラズマ処理では、分解反応及びNorrishI型反応による高分子鎖の切断やフリース転移反応により、極性基が導入され密着性が向上すること、その他の処理方法として紫外線照射処理によっても分子鎖が切断されることで極性基が導入され、ぬれ性及び密着性が向上することが記載されている。
しかしながら、接着性を高めるために行う表面処理工程の導入は処理時間が長過ぎると高分子鎖の切断が生じることから、フィルムの耐久性劣化の原因ともなるため、積層体の接着性向上の効率的な手法が望まれている。
また、液晶ポリエステル樹脂は、染色が困難であるという問題を有している。当該樹脂と染料、顔料、カーボン等の着色剤を混合することによる着色では、樹脂成形体の強度を大きく低下させる。このため、高強度な有色液晶ポリエステル加工品を得る手法も強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平03-188135号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】岡本敏、日本接着学会誌、45、290-298、(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情を背景としてなされたものであって、難接着性樹脂である液晶ポリエステル樹脂の接着性や、染色困難な液晶ポリエステル樹脂の着色性等、液晶ポリエステル樹脂の表面性能を改良した、液晶ポリエステル加工品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来技術の問題点に鑑み鋭意検討した結果、ベンゼン環等の芳香環にアルキル基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位を含有する液晶ポリエステル樹脂を使用することによって、短時間の表面処理により、ぬれ張力が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に、酸化処理を施す工程(I)を有することを特徴とする、液晶ポリエステル加工品の製造方法。
【化1】
(式中、Arはフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表し、Rは炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素原子数が5~6である環状のアルキル基を表し、nは1~4の整数を表す。)
2.前記工程における酸化処理が、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線(UV)照射処理、フレーム処理、電子線処理、酸化剤による化学的処理、酸素存在下による熱処理の何れかであることを特徴とする、1.に記載の液晶ポリエステル加工品の製造方法。
3.さらに、酸化処理を施した面に樹脂層若しくは金属層を積層し積層体を製造する工程(II)を有することを特徴とする、1.又は2.に記載の液晶ポリエステル加工品の製造方法。
4.さらに、酸化処理を施した面を着色し有色液晶ポリエステル繊維を製造する工程(III)を有することを特徴とする、1.又は2.に記載の液晶ポリエステル加工品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明による液晶ポリエステル加工品の製造方法は、従来公知の方法に比べて、性能劣化を抑え、ぬれ張力の高い液晶ポリエステル加工品が得られるため、非常に有用である。
従来、難接着性樹脂とされてきた液晶ポリエステル樹脂の接着性能を向上できるため、平滑な金属箔に対して、高い接着性を有する積層体を得ることができる。
また、従来、染色することが出来なかった液晶ポリエステル樹脂に対して、色素との結合性を高めることにより、多彩な色相の液晶ポリエステル加工品を得ることができるため、例えば、繊維製品に応用できる等、非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1、2及び比較例1それぞれの表面処理を施した樹脂表面のぬれ張力評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
<本発明により得られる液晶ポリエステル加工品について>
本発明に関する液晶ポリエステル加工品は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル成形体の表面に酸化処理を施す工程(I)を経た物品や、これらをさらに加工した製品、具体的には、例えば、積層体や有色液晶ポリエステル繊維等を意味する。その1つである積層体について、以下説明する。
本発明により得られる積層体は、少なくとも1つの層は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂による層を含んでいる。
【化2】
(式中、Arはフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表し、Rは炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素原子数が5~6である環状のアルキル基を表し、nは1~4の整数を表す。)
また、その他の層として、樹脂層若しくは金属層又は、樹脂層及び金属層を含んでいる。この積層体は、2層であっても、それより多い層であってもよい。
積層体を得るために、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂による層は、当該樹脂の成形板や成形膜の片面のみに後述する酸化処理を施す工程(I)を施し、酸化処理を施した面に樹脂層若しくは金属層を積層して積層体を製造する工程(II)を施してもよいし、当該樹脂の成形板や成形膜の両面に後述する酸化処理を施す工程(I)を施し、酸化処理を施した両面に樹脂層若しくは金属層を積層する工程(II)を施してもよい。
【0011】
次いで、本発明に関する液晶ポリエステル加工品の1つである有色液晶ポリエステル繊維について、以下説明する。
本発明により得られる有色液晶ポリエステル繊維は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂を、従来公知の方法、例えば、溶融紡糸して得られる繊維状の液晶ポリエステル成形体の表面を、後述する酸化処理を施す工程(I)後に着色し、有色液晶ポリエステル繊維を製造する工程(III)を施してもよい。また、溶融紡糸により得られた繊維を紡績したフィラメント糸、繊維や糸で織った織物、繊維を堆積した不織布等の液晶ポリエステル成形体の表面を、後述する酸化処理を施す工程(I)後に、カチオン性染料等により着色する工程(III)を施してもよい。
紡糸後の繊維状の成形体はより高強度、高弾性率の繊維を得るために、不活性気体中や真空中で熱処理をしてもよく、熱処理を行うことが好ましい。
従来、ポリエステル樹脂製繊維は、「原着」という紡糸工程前の段階で着色剤を添加してマスターバッチを作成する等により着色されているため、添加した着色剤により、繊維強度が落ちることが問題であった。これに対して、本発明により得られる繊維は、溶融紡糸して得られる繊維の表面や、溶融紡糸により得られた繊維を紡績、紡織、堆積等した繊維の成形体の表面を着色や染色するため、液晶ポリエステル樹脂が本来有する高い機械特性(高強度・高耐熱性等)を保持することができ、有用である。
【0012】
<本発明に関する液晶ポリエステル樹脂について>
本発明において使用する一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂は、後述する一般式(1’)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体(A)、及びその他の芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と重縮合をすることによって得られる。
一般式(1)中、Arはフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表し、中でも、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
一般式(1)中、Arがフェニレン基である場合、下記一般式(2)のように表すことができる。
【化3】
(式中、R、nは一般式(1)のそれと同じである。)
中でも、下記一般式(3)で表す構造であることが好ましい。
【化4】
一般式(1)中、Arがナフチレン基である場合、下記一般式(4)のように表すことができる。
【化5】
(式中、R、nは一般式(1)のそれと同じである。)
中でも、下記一般式(5)で表す構造であることが好ましい。
【化6】
(式中、R、nは一般式(1)のそれと同じである。)
一般式(1)中、Arがビフェニレン基である場合、下記一般式(6)のように表すことができる。
【化7】
(式中、Rは一般式(1)のそれと同じであり、m及びlは0~4の整数であり、かつ、m+lは1~4の整数である。)
中でも、下記一般式(7)で表す構造であることが好ましい。
【化8】
(式中、Rは一般式(1)の、m、lは一般式(6)のそれと同じである。)
上記一般式(1)~(7)中のRは、炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素原子数が5~6である環状のアルキル基を表す。n又はm+lが2~4である場合、Rは全て同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。中でも、Rは、炭素原子数が1~4である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1であるアルキル基すなわちメチル基又は炭素原子数が4である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記一般式(1)~(5)中のnは1~4の整数である。中でも、1~2であることが好ましく、1が特に好ましい。
上記一般式(6)、(7)中のm及びlは0~4の整数であり、かつ、m+lは1~4の整数である。m及びlは0~2の整数であり、かつ、m+lは1~2であることが好ましく、m及びlは0又は1の整数であり、かつ、m+lが1であることが特に好ましい。
【0013】
<本発明に関する一般式(1’)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体(A)について>
本発明に関する芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体(A)は、下記一般式(1’)で表される化合物である。
【化9】
(式中、Ar、R、nは一般式(1)のそれと同じであり、Rは水素原子又は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。)
一般式(1’)中、好適なArは一般式(1)と同様である。
一般式(1’)中、Arがフェニレン基である場合、下記一般式(2’)のように表すことができ、これを使用すると、前記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂となる。
【化10】
(式中、R、R、R、nは一般式(1’)のそれと同じである。)
中でも、下記一般式(3’)で表す構造であることが好ましく、これを使用すると、前記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂となる。
【化11】
(式中、R、R、R、nは一般式(1’)のそれと同じである。)
一般式(1’)中、Arがナフチレン基である場合、下記一般式(4’)のように表すことができ、これを使用すると、前記一般式(4)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂となる。
【化12】
(式中、R、R、R、nは一般式(1’)のそれと同じである。)
中でも、下記一般式(5’)で表す構造であることが好ましく、これを使用すると、前記一般式(5)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂となる。
【化13】
(式中、R、R、R、nは一般式(1’)のそれと同じである。)
一般式(1’)中、Arがビフェニレン基である場合、下記一般式(6’)のように表すことができ、これを使用すると、前記一般式(6)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂となる。
【化14】
(式中、R、R、Rは一般式(1’)のそれと同じであり、m及びlは0~4の整数であり、かつ、m+lは1~4の整数である。)
中でも、下記一般式(7’)で表す構造であることが好ましく、これを使用すると、前記一般式(7)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂となる。
【化15】
(式中、R、R、Rは一般式(1’)の、m、lは一般式(6’)のそれと同じである。)
上記一般式(1’)~(7’)中の好適なRは一般式(1)と同様である。
上記一般式(1’)~(7’)中のRは水素原子又は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基を表す。中でも、Rは、水素原子又は炭素原子数が1~4である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基であることが好ましく、炭素原子数が1であるアルキルカルボニル基すなわちアセチル基又は炭素原子数が4である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基であることがより好ましく、アセチル基が特に好ましい。
上記一般式(1’)~(7’)中のRは水素原子又は炭素原子数が1~6である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。中でも、Rは、水素原子又は炭素原子数が1~4である直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数が1~2であるアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数が1であるアルキル基すなわちメチル基が特に好ましい。
上記一般式(1’)~(5’)中の好適なnは一般式(1)~(5)と同様である。上記一般式(6’)、(7’)中の好適なm及びlは一般式(6)、(7)と同様である。
【0014】
一般式(1’)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸は、具体的には、例えば、2-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3,6-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、2,3,5-トリメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、2,3,6-トリメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、2,3,5,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、5-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸、5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸、2-メチル-3-ヒドロキシ安息香酸、4-メチル-3-ヒドロキシ安息香酸、5-メチル-3-ヒドロキシ安息香酸、6-メチル-3-ヒドロキシ安息香酸、2,4-ジメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、2,5-ジメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、4,6-ジメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、5,6-ジメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、2,4,5-トリメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、2,5,6-トリメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、4,5,6-トリメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、2,4,5,6-テトラメチル-3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-3-メチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4-メチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-5-メチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-7-メチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-8-メチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,3-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,4-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,5-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,7-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,8-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,4-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,5-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,7-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,8-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4,7-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-5,7-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-5,8-ジメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,3,4-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,3,5-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,3,7-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,3,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,4,5-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,4,7-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,4,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,5,7-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,5,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,7,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,4,5-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,4,7-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,4,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,5,7-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,5,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,7,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4,5,7-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4,5,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4,7,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-5,7,8-トリメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,3,4,5-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,3,4,7-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,3,4,8-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,4,5,7-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,4,5,8-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,4,7,8-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1,5,7,8-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,4,5,7-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,4,5,8-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3,5,7,8-テトラメチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4,5,7,8-テトラメチル-2-ナフトエ酸、4-(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸、4-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸、4-(5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸、4-(6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸、2-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸、3-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸、5-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸、6-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸等が挙げられる。
【0015】
一般式(1’)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、具体的には、例えば、2-メチル-4-アセトキシ安息香酸、3-メチル-4-アセトキシ安息香酸、2,3-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸、2,5-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸、2,6-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸、3,5-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸、3,6-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸、2,3,5-トリメチル-4-アセトキシ安息香酸、2,3,6-トリメチル-4-アセトキシ安息香酸、2,3,5,6-テトラメチル-4-アセトキシ安息香酸、2,6-ジブチル-4-アセトキシ安息香酸、5-ブチル-4-アセトキシ-2-メチル安息香酸、5-シクロヘキシル-4-アセトキシ-2-メチル安息香酸、2-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、3-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、2,3-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、3,6-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、2,3,5-トリメチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、2,3,6-トリメチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、2,3,5,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、2,6-ジブチル-4-ヒドロキシ安息香酸メチル、5-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチル、5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチル、2,6-ジブチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、5-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸エチル、5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸エチル、2-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、3-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、2,3-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、3,6-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、2,3,5-トリメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、2,3,6-トリメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、2,3,5,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エチル、2-メチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、3-メチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、2,3-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、2,5-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、2,6-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、3,5-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、3,6-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、2,3,5-トリメチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、2,3,6-トリメチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、2,3,5,6-テトラメチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、2,6-ジブチル-4-アセトキシ安息香酸メチル、5-ブチル-4-アセトキシ-2-メチル安息香酸メチル、5-シクロヘキシル-4-アセトキシ-2-メチル安息香酸メチル、2-メチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、3-メチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、2,3-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、2,5-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、2,6-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、3,5-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、3,6-ジメチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、2,3,5-トリメチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、2,3,6-トリメチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、2,3,5,6-テトラメチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、2,6-ジブチル-4-アセトキシ安息香酸エチル、5-ブチル-4-アセトキシ-2-メチル安息香酸エチル、5-シクロヘキシル-4-アセトキシ-2-メチル安息香酸エチル、6-アセトキシ-3-メチル-2-ナフトエ酸、6-アセトキシ-4-メチル-2-ナフトエ酸、6-アセトキシ-5-メチル-2-ナフトエ酸、6-アセトキシ-7-メチル-2-ナフトエ酸、6-アセトキシ-8-メチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-3-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-ヒドロキシ-4-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-ヒドロキシ-5-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-ヒドロキシ-7-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-ヒドロキシ-8-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-ヒドロキシ-3-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-ヒドロキシ-4-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-ヒドロキシ-5-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-ヒドロキシ-7-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-ヒドロキシ-8-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-アセトキシ-3-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-アセトキシ-4-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-アセトキシ-5-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-アセトキシ-7-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-アセトキシ-8-メチル-2-ナフトエ酸メチル、6-アセトキシ-3-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-アセトキシ-4-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-アセトキシ-5-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-アセトキシ-7-メチル-2-ナフトエ酸エチル、6-アセトキシ-8-メチル-2-ナフトエ酸エチル、2-メチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、3-メチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、2,5-ジブチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、2,2’-ジメチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、2-メチル-4-アセトキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、3-メチル-4-アセトキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、2,5-ジメチル-4-アセトキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、2,5-ジブチル-4-アセトキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、2,2’-ジメチル-4-アセトキシ-4’-カルボン酸ビフェニル、2-メチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニルメチルエステル、3-メチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニルメチルエステル、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニルメチルエステル、2,5-ジブチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニルメチルエステル、2,2’-ジメチル-4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニルメチルエステル、4-(2-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸、4-(3-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸、4-(5-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸、4-(6-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸、2-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸、3-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸、5-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸、6-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸、4-(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル、4-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル、4-(5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル、4-(6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル、2-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル、3-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル、5-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル、6-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル、4-(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル、4-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル、4-(5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル、4-(6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル、2-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル、3-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル、5-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル、6-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル、4-(2-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸メチル、4-(3-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸メチル、4-(5-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸メチル、4-(6-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸メチル、2-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸メチル、3-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸メチル、5-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸メチル、6-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸メチル、4-(2-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸エチル、4-(3-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸エチル、4-(5-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸エチル、4-(6-メチル-4-アセトキシフェニル)安息香酸エチル、2-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸エチル、3-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸エチル、5-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸エチル、6-メチル-4-(4-アセトキシフェニル)安息香酸エチル等が挙げられる。
【0016】
<その他の芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)について>
その他の芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)として使用できる化合物は、具体的には、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-ヒドロキシ-4’-カルボン酸ビフェニル等が挙げられる。
<その他の重縮合成分について>
本発明の製造方法に係る液晶ポリエステル樹脂は、一般式(1’)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体(A)、及びその他の芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と重縮合をする際に、さらに、ジヒドロキシ化合物(C)、ジカルボン酸化合物(D)、脂肪族ジオール(E)、脂肪族ジカルボン酸(F)の成分を併用することができる。
ジヒドロキシ化合物として使用できる化合物(C)として使用できる化合物は、具体的には、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル、2,7-ジヒドロキシアントラキノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン及びこれらのカルボン酸エステル誘導体等が挙げられる。
ジカルボン酸化合物(D)として使用できる化合物は、具体的には、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシジフェニルスルフィド、1,2-ビス(4-カルボキシフェノキシ)エチレン等及びこれらのエステル誘導体等が挙げられる。
脂肪族ジオール(E)として使用できる化合物は、具体的には、下記一般式(8)で表される脂肪族ジオールを使用することができる。
【化16】
(式中、Rは、炭素原子数2~12のアルキレン基を表し、Rは一般式(1’)のそれと同じである。)
具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール及びこれらのカルボン酸エステル誘導体等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸(F)として使用できる化合物は、具体的には、下記一般式(9)で表される脂肪族ジカルボン酸類を使用することができる。
【化17】
(式中、Rは、炭素原子数2~12のアルキレン基を表し、Rは一般式(1’)のそれと同じである。)
具体的には、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びこれらのエステル誘導体等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂において、成分(A)の含有量は、成分(A)と、その他の芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)の合計量に対して、下限値が1モル%以上、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上であり、上限値が50モル%以下、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下の範囲である。成分(A)の含有量が1モル%より小さくなると、液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に酸化処理を施すことにより得られる表面ぬれ張力向上の効果が不十分となり好ましくない。また、成分(A)の含有量が50モル%より大きくなると、液晶ポリエステルの有する耐熱性や機械強度等の物性が低下するので好ましくない。
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂において、成分(A)及び成分(B)、さらに成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(F)を併用する場合は、成分(A)の含有量は、成分(A)~(F)の合計量に対して、下限値が1モル%以上、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上であり、上限値が50モル%以下、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下の範囲である。この場合も、成分(A)の含有量が1モル%より小さくなると、液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に、酸化処理を施すことにより得られる効果が不十分となる。また、成分(A)の含有量が50モル%より大きくなると、液晶ポリエステル樹脂の有する耐熱性や機械強度等の物性が低下するので好ましくない。
【0018】
<液晶ポリエステル樹脂の製造方法について>
本発明に関する一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限がなく、公知の液晶ポリエステル樹脂の重縮合法に準じて製造することができ、工業的には、例えば、エステル交換法による重縮合反応により製造することができる。
例えば、一般式(1’)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体(A)と、その他芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)から液晶ポリエステル樹脂を製造する場合は、脂肪酸無水物を使用してフェノール性水酸基をアシル化した後、脱脂肪酸重縮合反応により液晶ポリエステル樹脂を製造する方法が挙げられる。液晶ポリエステル樹脂の分子量を高め、融点や機械強度を高めたい場合は、減圧下、不活性ガス雰囲気中で固相重合してもよい。
上記アシル化の反応温度は、100~160℃の範囲で反応を行うことが好ましく、140℃以上であるとより好ましい。この反応温度が低すぎると、アシル化が十分に進行せず、重合物にモノマーが残存する可能性があるため好ましくない。
上記脱脂肪酸重縮合反応は、100~350℃の範囲で反応を行うことが好ましく、150~310℃の範囲がより好ましい。この反応温度が低いと重合が十分進行しないため好ましくない。反応圧力は、常圧、減圧何れでもよいが、副生する揮発物(例えば酢酸、水、アルコール)を反応系外に留出させるために、減圧下(10.0kPa程度)が好ましい。
液晶ポリエステル樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸金属塩、チタンアルコキシド、酸化マグネシウム等を使用することができる。
【0019】
本発明に関する一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂は、融点が200℃以上であることが好ましく、210℃以上であるとより好ましく、220℃以上であるとさらに好ましい。この液晶ポリエステル樹脂の融点は、例えば、示差走査熱量測定法により測定することができる。
【0020】
<液晶ポリエステル樹脂成形体について>
本発明に関する一般式(1)で表される繰り返し単位を有する液晶ポリエステル樹脂成形体を得る方法は、特に制限は無く、公知の方法を用いることができる。
積層体を製造する場合は、例えば、重縮合反応終了後の溶融状態の液晶ポリエステルを押出成形法や射出成形法により成形することや、溶媒に溶解した液晶ポリエステル樹脂を溶液キャスト法により成形すること、粉末化した液晶ポリエステル樹脂をプレス成形すること等により、ブロック状又は板状、シート状、フィルム状等の液晶ポリエステル成形体を得ることができる。
繊維を製造する場合は、例えば、重縮合反応終了後の溶融状態の液晶ポリエステル樹脂を、そのまま又は板状若しくはシート状等に成形した後に粉砕した粉状物を溶融させて、溶融紡糸して得ることができる。紡糸後の繊維はより高強度、高弾性率の繊維を得るために、不活性気体中や真空中で熱処理をしてもよく、熱処理を行うことが好ましい。
溶融紡糸により得られた繊維を紡績したフィラメント糸、繊維や糸で織った織物、繊維を堆積した不織布等として液晶ポリエステル成形体を得ることもできる。
本発明に関する液晶ポリエステル樹脂成形体は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂単独の成形体であってもよいし、当該液晶ポリエステル樹脂を主成分としてその他の熱可塑性樹脂を合わせてアロイとして成形体としてもよい。使用できるその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、本発明に関する液晶ポリエステル樹脂以外の液晶ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0021】
<酸化処理を施す工程(I)について>
本発明の製造方法は、前記液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に、酸化処理を施す工程(I)を含むものである。本発明の工程(I)における酸化処理は、本発明の効果が発揮できる方法であれば特に制限は無く、公知の方法を用いることができる。例えば、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線(UV)照射処理、フレーム処理、電子線処理、酸化剤による化学的処理、酸素存在下による熱処理等が挙げられる。
【0022】
プラズマ処理は、大気下又は減圧下において、平行平板電極や同軸円筒電極等の電極表面に設けた誘電体によるバリア放電や、印加した高周波やマイクロ波により、装置に導入した気体をプラズマ状態とし、それによって発生したプラズマを成形体に照射することにより、成形体表面の酸化処理を施すことができる。大気圧中で行うプラズマ処理は、減圧する時間や、真空チャンバー等の大掛かりな設備が不要となる事や、連続処理に向いている等、本発明の酸化処理として好ましい。
コロナ処理は、絶縁された電極と対面電極との間に成形体を配置し、高周波高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、このコロナ放電により励起や解離された気体成分を成形体に照射することにより、成形体表面の酸化処理を施すことができる。
紫外線(UV)照射処理は、短波長紫外線(例えば、波長:100~290nm程度)を照射できる紫外線照射装置を用いて、成形体表面に紫外線を照射することにより、成形体表面の酸化処理を施すことができる。紫外線照射装置としては、例えば低圧水銀灯、KrClエキシマランプ、Xeエキシマランプ等を用いることができる。
フレーム処理は、炎の熱と温度によって気体分子をプラズマ化させるものであり、プラズマ処理と同様な作用により、成形体表面の酸化処理を施すことができる。
電子線処理は、成形体表面に、電子線加速器により発生させた電子線を照射することにより行われる。電子線照射処理の雰囲気は、大気下であってもよく、また、不活性ガス(例えば窒素)等で酸素濃度を調整された雰囲気下であってもよい。電子線の照射は、100keV~400keVのエネルギーで電子線を照射する高エネルギー型電子線照射装置や、100keV以下のエネルギーで電子線を照射する低エネルギー型電子線照射装置のいずれを用いてもよく、また、照射方式も、走査型やカーテン型いずれの方式の照射装置であってもよい。例えばカーテン型電子照射装置(LB1023、株式会社アイ・エレクトロンビーム社製)やライン照射型低エネルギー電子線照射装置(EB-ENGINE(登録商標)、浜松ホトニクス株式会社製)等を使用することができる。
酸化剤による化学的処理は、成形体表面に、酸化剤を含む薬液を接触させることにより、成形体表面の酸化処理を施すことができる。使用できる酸化剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸塩や、重クロム酸カリウムと硫酸によるクロム硫酸などのクロム酸類等が挙げられる。
酸素存在下による熱処理は、酸素含有雰囲気、例えば大気中で、液晶ポリエステル成形体に熱を加えることにより、成形体表面の酸化処理を施すことができる。
【0023】
本発明に関する液晶ポリエステル樹脂を使用した成形体の表面に酸化処理を行うことにより、従来の液晶ポリエステルと比べて、工程(I)の酸化処理時間を短くしても、良好な表面ぬれ性を得ることができるため、積層体を効率よく製造することができるし、染色困難な液晶ポリエステル樹脂の着色性を向上することができるので、本発明は有用である。
ここで、本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を有する液晶ポリエステル樹脂のうち、一般式(1)中のArに結合しているアルキル基(R)が、工程(I)における酸化処理により、酸化された極性基に変換され、液晶ポリエステル樹脂成形体表面のぬれ性を向上させているものと考えている。
【0024】
<酸化処理を施した面に樹脂層若しくは金属層を積層し積層体を製造する工程(II)について>
本発明の製造方法は、さらに、工程(I)における酸化処理後に、酸化処理を施した面に樹脂層若しくは金属層を積層し積層体を製造する工程(II)を行ってもよい。
工程(II)において積層する樹脂層としては、具体的には、例えば、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマ、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、BTレジン、シリコーン樹脂等による樹脂層が挙げられる。また、使用するこれら樹脂は、所望の添加剤、充填材を含有した樹脂組成物である場合も用いることができる。
工程(II)における樹脂層の積層方法は、特に制限は無く、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明における液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に、酸化処理を施す工程(I)により処理された成形体表面に対して、キャスト法によって樹脂層を形成してもよいし、フィルム状の樹脂と熱圧着して樹脂層を形成してもよいし、硬化前の熱硬化性樹脂液を塗布して熱硬化することにより樹脂層を形成してもよい。
工程(II)において積層する金属層としては、具体的には、例えば、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム等を挙げることができるが、中でも銅が好適である。
工程(II)における金属層の積層方法は、特に制限は無く、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明に関する液晶ポリエステル樹脂成形体表面に酸化処理を施す工程(I)により処理された成形体表面に金属箔を熱圧着することにより積層してもよいし、金属層を蒸着して積層してもよく、無電解めっき、電解めっきにより金属層を積層してもよい。
また、液晶ポリエステル成形体の表面に積層した接着樹脂層の上に金属層を積層してもよいが、接着樹脂層を設けることなく液晶ポリエステル成形体の表面に金属層を積層することが好ましい。
【0025】
<酸化処理を施した面を着色し有色液晶ポリエステル繊維を製造する工程(III)について>
本発明の製造方法は、酸化処理を施した面を着色し有色液晶ポリエステル繊維を製造する工程(III)を有してもよい。特に、カチオン性基を有する色素を使用して着色することにより、液晶ポリエステル樹脂成形体の酸化処理後の改質した表面との結合が得られるため、有色液晶ポリエステル加工品を得ることが出来る。
カチオン性基を有する色素としては、少なくとも1つのカチオン性基を有する色素であれば、公知の色素化合物から選択する事ができる。一例としては、C.I.ベーシックレッド1(ローダミン6GCP)、8(ローダミンG)、C.I.ベーシックバイオレット10(ローダミンB)、C.I.ベーシックバイオレット11、C.I.ベーシックブルー1(ベーシックシアニン6G)、同5(ベーシックシアニンEX)、同7(ビクトリアピュアブルーBO)、同25(ベーシックブルーGO)、同26(ビクトリアブルーBconc.)、C.I.ベーシックグリーン1(ブリリアントグリーンGX)、同4(マラカイトグリーン)、C.I.ベーシックバイオレット1(メチルバイオレット)、同3(クリスタルバイオレット)、同14(Magenta)、Lauth’s Violet、メチレンブルー、メチレングリーンB、C.I.ベーシックブルー9、同17、同24、C.I.ベーシックイエロー1、C.I.ベーシックバイオレット44、同46、C.I.ベーシックブルー116、C.I.ベーシックイエロー11、12、13、14、21、22、23、24、28、29、33、35、40、43、44、45、48、49、51、52、53、C.I.ベーシックレッド12、13、14、15、27、35、36、37、45、48、49、52、53、66、68、C.I.ベーシックバイオレット7、15、16、20、21、39、40、C.I.ベーシックオレンジ27、42、44、46、C.I.ベーシックブルー62、63等が挙げられる。
【実施例
【0026】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、融点、ぬれ張力の測定は以下の方法により測定した。
[分析方法]
1.融点の測定(示差走査熱量測定:DSC)
結晶体約10mgをアルミパンに秤量し、示差走査熱量測定装置((株)島津製作所製:DSC-60)を用いて、酸化アルミニウムを対照として下記操作条件により測定した。
(操作条件)
昇温速度:20℃/min
測定温度範囲:40~320℃
測定雰囲気:窒素50mL/min
2.ぬれ張力の測定
表面処理を施した樹脂表面のぬれ張力をJIS K6768に従って測定した。試験液はぬれ張力試験用混合液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用い、綿棒によって試験片に塗布し、表面のぬれ性を目視にて確認することでぬれ張力を測定した。試験は複数回実施し、再現性を確認した。
【0027】
<実施例1>
p-ヒドロキシ安息香酸65.6g、4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸72.3g、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸65.9g及び無水酢酸135.5gを、撹拌翼と留出管を備えた反応容器に仕込み、150℃、3時間でアセチル化反応を行った。次いで、4時間かけて310℃まで昇温し、310℃で10kPaまで15分で減圧し、1時間重合を行った。これにより、融点246℃(示差走査熱量測定法による)の液晶ポリエステル樹脂を得た。反応式を以下に示す。
【化18】
(式中、x、y、zはそれぞれ、0.270、0.365、0.365である。)
合成して得られた液晶ポリエステル樹脂を粉砕し、プレス成形機(東洋精機ミニテストプレス 型式:MP-2FH)及びSUS304製樹脂プレス用金型、ポリイミドフィルム(宇部興産製)を用いて、厚さ1mmでかつ一様に平滑な液晶ポリエステル樹脂シートを作成した。この樹脂シ-トを所定の大きさに切り出し、試験片とした。
作成した試験片に、プラズマ処理試験機(アルファ株式会社製、型式:PTM-100-9kVS-V2、周波数:20kHz、出力電圧:9kV、定格容量:80W、処理距離:2.5mm)を用いて、誘電体バリア放電により生成させた大気圧プラズマを一定時間照射することで表面処理を施した。
次いで表面処理を施した樹脂表面のぬれ張力をJIS K6768に従って測定した。試験液はぬれ張力試験用混合液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用い、綿棒によって試験片に塗布し、表面のぬれ性を目視にて確認することでぬれ張力を測定した。
【0028】
<実施例2>
p-ヒドロキシ安息香酸を117.4g、4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸を14.5g、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を65.9g及び無水酢酸を135.7gとする以外は実施例1と同様にして液晶ポリエステル樹脂の合成を行い、融点256℃(示差走査熱量測定法による)の液晶ポリエステル樹脂を得た。そして、実施例1と同様の成形、処理、評価を行った。
【化19】
(式中、x、y、zはそれぞれ、0.270、0.656、0.074である。)
【0029】
<比較例1>
p-ヒドロキシ安息香酸を131.1g、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を66.1g、無水酢酸を135.4gとし、4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸を使用しない事以外は実施例1と同様にして液晶ポリエステル樹脂の合成を行い、融点279℃(示差走査熱量測定法による)の液晶ポリエステル樹脂を得た。そして、実施例1と同様の成形、処理、評価を行った。反応式を以下に示す。
【化20】
(式中、x、yはそれぞれ、0.270、0.730である。)
【0030】
実施例1、2及び比較例1それぞれの表面処理を施した樹脂表面のぬれ張力評価結果を下記表1と図1に示す。
【表1】
【0031】
表1の結果から、本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に酸化処理を施した実施例1、2は、処理時間が0.2秒と非常に短い処理で、表面のぬれ張力が飛躍的に向上することが確認できた。
これに対して、従来のアルキル基を有さないp-ヒドロキシ安息香酸に由来する液晶ポリエステル樹脂成形体の表面に酸化処理を施した比較例1は、処理時間を2秒としても、実施例1、2の表面のぬれ張力には及ばないことも確認された。
液晶ポリエステル樹脂成形体表面の酸化処理時間が長くなると、液晶ポリエステル樹脂の分子鎖が傷つき成形体として弱体化するため、長期信頼性が失われ、好ましい液晶ポリエステル加工品を得ることはできない。短期的に表面が改質され接着性が向上したとしても、弱体化した材料の表面は使用中の熱や冷却などにより劣化が起こりやすく、接着性や着色性を維持することができなくなると考えられる。
上記結果より、本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む液晶ポリエステル樹脂成形体を使用することにより、従来と比べて短時間で表面のぬれ張力が飛躍的に向上し、例えば、液晶ポリエステル加工品として積層体とする場合には、導電性を有する金属層との接着強度をより高めることができる。
なお、実施例1、2の液晶ポリエステル樹脂成形体は、表面処理を行う前の表面のぬれ張力は44mN/mであり、比較例1の表面処理を行う前の表面のぬれ張力37mN/mよりも高いぬれ張力である。この明確な理由は不明であるものの、液晶ポリエステル樹脂成形時の加熱により、一般式(1)中のRで示されるアルキル基が酸化されて、カルボキシル基等の極性基に変換されることにより、表面のぬれ張力が向上したと推測される。
図1