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特許7436109特定の超分岐コポリマー及び有機UVフィルターを含む化粧品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】特定の超分岐コポリマー及び有機UVフィルターを含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/88 20060101AFI20240214BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20240214BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240214BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20240214BHJP
   C08G 69/48 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K8/88
A61K8/35
A61K8/37
A61K8/40
A61K8/895
A61Q17/04
C08G69/26
C08G69/48
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021525598
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2019082490
(87)【国際公開番号】W WO2020109263
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】18208232.1
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メンドロク-エディンガー, クリスティーン
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529674(JP,A)
【文献】特表2015-529737(JP,A)
【文献】特表2011-524883(JP,A)
【文献】国際公開第2017/174214(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/013200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08G 69/00-69/50
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー
(i)ドデセニルコハク酸無水物
(ii)ジイソプロパノールアミン
(iii)ビスジメチルアミノプロピルアミン
超分岐コポリマーであって、

【化1】

の末端基を有し、
かつ、1200~4000g/molの分子量Mnを有する超分岐コポリマーと、
少なくとも1つの液体有機UVフィルター及び/又は少なくとも1つの固体有機UVフィルターと
を含む化粧品組成物。
【請求項2】
前記モノマー(i)対モノマー(ii)のモル比が、5:1~0.5:1であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
前記モノマー(i)対モノマー(iii)のモル比が、5:1~0.5:1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
前記超分岐コポリマーが、1400~3000g/molの数平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
前記超分岐コポリマーがポリクオタニウム-110であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
体有機UV(A)フィルターの量が、0.1~6重量%の範囲で選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
体有機UV(B)フィルターの量が、0.1~6重量%の範囲で選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
体有機UV(B)フィルターの量が、0.1~10重量%の範囲で選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも1つが固体又は液体有機UV(A)フィルターであり、少なくとも1つが固体又は液体有機UV(B)フィルターである、少なくとも2つのUVフィルターを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも1つの固体有機UV(A)フィルターと少なくとも1つの液体有機UV(B)フィルターとの組合せを含むことを特徴とする、請求項に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
前記化粧品組成物が、スキンケア組成物であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項12】
前記組成物が、スルフェートを含まない化粧品組成物であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項13】
前記組成物が、カチオン乳化剤を含まないことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項14】
モノマー
(i)ドデセニルコハク酸無水物
(ii)ジイソプロパノールアミン
(iii)ビスジメチルアミノプロピルアミン
超分岐コポリマーであって、

【化2】

の末端基を有し、
かつ、1200~4000g/molの分子量Mnを有する超分岐コポリマーの、
接触表面への材料移動の減少のための、少なくとも1つの液体有機UVフィルター及び/又は少なくとも1つの固体有機UVフィルターを含む化粧品組成物中での使用。
【請求項15】
前記接触表面がガラス表面であることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記接触表面が、携帯電話、コンピュータデバイス又はタブレットのディスプレーであることを特徴とする、請求項14又は15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、化粧品分野、特にサンケアの分野に関する。
【0002】
[発明の背景]
化粧品分野において、化粧品組成物、すなわち配合物の詳細は、手触り、感触及び視覚の態様に非常に影響されやすい。
【0003】
大きな課題は、そのような組成物の材料は、表面、特に皮膚に適用される場合、他の表面が前記組成物と接触する時に、別の表面に移動する可能性があることである。そのような移動は、2つの点で否定的である:第1に、材料の移動は、皮膚のトリートメント、保湿又は保護などの作用部位から除去されるため、望ましくない。第2に、接触表面が前記材料によって汚染される。特に布(例えば服)にしみがつくおそれがある。さらにまた、装飾表面又は機能表面が汚染されるおそれがあり、これは、それぞれ機能性に関して、それらの視覚的又は美的性能に関して否定的である。特に携帯電話、スクリーン又はタッチスクリーンのディスプレーは、そのような材料移動から悪影響を受けるおそれがある。
【0004】
[発明の概要]
したがって、表面が接触する時の表面から表面への化粧品組成物のそのような移動を減少させることが非常に望ましい。
【0005】
驚くべきことに、請求項1の化粧品組成物がこの課題を解決することができることが見出された。
【0006】
特定の超分岐コポリマーと、有機UVフィルターとの組合せが、接触する表面へのそのような組成物の材料移動を有意に減少させることが見出された。
【0007】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の対象である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【0008】
[発明の詳細説明]
第1の態様において、本発明は、
モノマー
(i)ドデセニルコハク酸無水物
(ii)ジイソプロパノールアミン
(iii)式
【化1】

の末端基を有するビスジメチルアミノプロピルアミン
の、1200~4000g/molの分子量Mnを有する超分岐コポリマーと、
少なくとも1つの液体有機UVフィルター及び/又は少なくとも1つの固体有機UVフィルターと
を含む化粧品組成物に関する。
【0009】
「分子量Mn」という用語は、数平均分子量を表す。
【0010】
本明細書中の「UVフィルター」という用語は、紫外線光(=UV光)、すなわち280~400nmの波長の電磁放射を吸収する物質を表す。UV(A)フィルターは、UV(A)光、すなわち、315~400nmの波長の電磁放射を吸収するUVフィルターである。
【0011】
UV(B)フィルターは、UV(V)光、すなわち、280~315nmの波長の電磁放射を吸収するUVフィルターである。
【0012】
液体有機UVフィルターは、周囲温度、すなわち、25℃において液体である。
【0013】
固体有機UVフィルターは、周囲温度、すなわち、25℃において固体である。
【0014】
「調製」又は「配合」という用語は、本明細書中、「組成物」という用語の等価物として使用される。
【0015】
「材料移動」という用語は、本明細書中、化粧品組成物が表面に適用され、そしてその後、前記表面が異なる対象の表面と接触し、そして再び離される時の化粧品組成物又はそのいくつかの成分の物質移動を意味する。この接触によって、いくつかの材料は、第1の表面から異なる対象の表面へと移動される。移動される材料の量は、第2の対象の重量増加を測定することによって決定することが可能である。
【0016】
超分岐コポリマーは、好ましくは、以下の連続ステップによって調製される:
a1)モノマー(i)及びモノマー(ii)及びモノマー(iii)を重合させて、次式
【化2】

の末端ジメチルアミノ基を有するポリエステルアミドを得ること
a2)2-クロロアセテート、特に2-クロロ酢酸ナトリウムによるステップa1)のポリエステルアミドのジメチルアミノ基の四級化。
【0017】
次式
【化3】

の末端ジメチルアミノ基を有するそれぞれのポリエステルアミドを得るための重合ステップa1)に関する詳細は、例えば、欧州特許第2794729B1号明細書に開示される。
【0018】
好ましくは、重合ステップa1)において、撹拌しながらモノマー(ii)及び(iii)の混合物にモノマー(iii)を添加し、続いて加熱が行われる。
【0019】
四級化ステップa2)の詳細についても、欧州特許第2794729B1号明細書に開示される。したがって、欧州特許第2794729B1号明細書の全ての内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0020】
ノマー
(i)ドデセニルコハク酸無水物
(ii)ジイソプロパノールアミン
(iii)ビスジメチルアミノプロピルアミン
超分岐コポリマーであって
【化4】

の末端基を有し、
かつ、1200~4000g/molの分子量Mnを有する超分岐コポリマーの、化粧品組成物中の量は、典型的に、化粧品組成物の全重量に基づき、0.1~3重量%である。
【0021】
モノマー(i)対モノマー(ii)のモル比が、5:1~0.5:1、特に4:1~1:1、好ましくは3:1~3:2であることが好ましい。
【0022】
モノマー(i)対モノマー(iii)のモル比が、5:1~0.5:1、特に3:1~1:1、好ましくは2.5:1~1.1:1であることがさらに好ましい。
【0023】
超分岐コポリマーは、好ましくは1400~3000g/mol、好ましくは2100~2300g/molの数平均分子量Mを有する。
【0024】
好ましくは、超分岐ポリマーは、CAS番号1323977-82-7によっても識別されるポリクオタニウム-110である。
【0025】
化粧品組成物は、少なくとも1つの液体有機UVフィルター及び/又は少なくとも1つの固体有機UVフィルターをさらに含む。
【0026】
適切な液体有機UVフィルターは、UVB及び/又はUVA範囲の光を吸収し、周囲温度(すなわち25℃)において液体である。そのような液体UVフィルターは当業者に周知であり、特に、シンナメート、例えばオクチルメトキシシンナメート(PARSOL(登録商標)MCX)及びイソアミルメトキシシンナメート(Neo Heliopan(登録商標)E 1000)、サリチレート、例えばホモサレート(3,3,5 トリメチルシクロヘキシル2-ヒドロキシベンゾエート、PARSOL(登録商標)HMS)及びエチルヘキシルサリチレート(別名エチルヘキシルサリチレート、2-エチルヘキシル2-ヒドロキシベンゾエート、PARSOL(登録商標)EHS)、アクリレート、例えばオクトクリレン(2エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、PARSOL(登録商標)340)及びエチル2-シアノ-3,3ジフェニルアクリレート、ベンザルマロン酸のエステル、例えば特にジアルキルベンザルマロネート、例えばジ(2-エチルヘキシル)4-メトキシベンザルマロネート及びポリシリコーン15(PARSOL(登録商標)SLX)、ナフタレートのジアルキルエステル、例えばジエトキシヘキシル2,6-ナフタレート(Corapan(登録商標)TQ)、シリンギリデンマロネート、例えばジエチルヘキシルシリンギリデンマロネート(Oxynex(登録商標)ST液体)並びにベンゾトリアゾリルドデシルp-クレゾール(Tinoguard(登録商標)TL)並びにベンゾフェノン-3及びドロメトリゾールトリシロキサンが挙げられる。
【0027】
ポリシリコーンベースの有機UVフィルター(ポリシリコーン15など)は材料移動の減少があまり顕著ではないことが観察された。したがって、化粧品組成物がポリシリコーンベースの有機UVフィルターを含まないことが好ましい。
【0028】
特に有利な液体有機UVフィルターは、オクチルメトキシシンナメート、ホモサレート、エチルヘキシルサリチレート、オクトクリレン、ジエチルヘキシル2,6-ナフタレート、ジエチルヘキシルシリンギリデンマロネート、ベンゾトリアゾリルドデシルp-クレゾール、ベンゾ-フェノン-3、ドロメトリゾールトリシロキサン並びにその混合物である。
【0029】
好ましい実施形態において、液体UVフィルターは、エチルヘキシルメトキシシンナメート、オクトクリレン、ホモサレート、エチルヘキシルサリチレート、ベンゾフェノン-3及びドロメトリゾールトリシロキサンからなる群から選択される液体UV(B)フィルターである。
【0030】
適切な固体有機UVフィルターは、UVB及び/又はUVA範囲の光を吸収し、周囲温度(すなわち25℃)において固体である。特に適切な固体UVフィルターは、ビス-エチル-ヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、テトラメチルメチレンビスベンゾトリアゾリルブチルフェノール、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、4-メチルベンジリデンカンファー及び1,4-ジ(ベンゾキサゾル-2‘-イル)ベンゼンからなる群のものである。
【0031】
好ましい固体有機UV(A)フィルターは、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートからなる群から選択されるUV(A)フィルターである。
【0032】
好ましい固体有機UV(B)フィルターは、エチルヘキシルトリアゾン(=Uvinul T150)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(=Uvasorb HEB)及び4-メチルベンジリデンカンファー(=Parsol 5000)からなる群から選択されるUV(B)フィルターである。
【0033】
有機UVフィルター(s)の総量は、標的とされるUV保護に強く依存する。
【0034】
固体有機UVフィルター、特に固体有機UV(A)フィルターの量が、0.1~約6重量%の範囲、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~4重量%の範囲で選択されることが好ましい。
【0035】
固体有機UVフィルター、特に固体有機UV(B)フィルターの量が、0.1~約6重量%の範囲、好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~4重量%の範囲で選択されることがさらに好ましい。
【0036】
液体有機UVフィルター、特に液体有機UV(B)フィルターの量が、0.1~約10重量%の範囲、好ましくは0.5~8重量%、最も好ましくは1~6重量%の範囲で選択されることがなおさらに好ましい。
【0037】
一実施形態において、化粧品組成物は、少なくとも1つが固体又は液体有機UV(A)フィルターであり、そして少なくとも1つが固体又は液体有機UV(B)フィルターである、少なくとも2つのUVフィルターを含む。
【0038】
前記実施形態において、組成物が、少なくとも1つが固体又は液体有機UV(A)フィルターであり、そして少なくとも1つが固体又は液体有機UV(B)フィルターである、少なくとも2つの有機UVフィルターを含むことが好ましい。
【0039】
少なくとも1つの固体有機UV(A)フィルターと少なくとも1つの液体有機UV(B)フィルターとの組合せが好ましい。
【0040】
前記実施形態において、
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートからなる群から選択される少なくとも1つの固体有機UV(A)フィルター、
及び
エチルヘキシルメトキシシンナメート、オクトクリレン、ホモサレート、エチルヘキシルサリチラート及びベンゾフェノン-3、ドロメトリゾールトリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1つの液体有機UV(B)フィルター
の組合せが特に好ましい。
【0041】
有機UVフィルターの総量は前記組成物の標的UV保護に強く依存し、典型的に、前記組成物の全重量に基づき、1~50重量%、好ましくは5~40重量%の範囲である。
【0042】
SPF15を有するサンクリーム(sun creme)は、例えば、好ましくは、前記組成物の全重量に基づき、総量4~20重量%、より好ましくは7~15重量%の有機UVフィルターを含む。
【0043】
SPF30を有するサンクリームは、例えば、好ましくは、前記組成物の全重量に基づき、総量10~40重量%、より好ましくは15~25重量%の有機UVフィルターを含む。
【0044】
SPF50を有するサンクリームは、例えば、好ましくは、前記組成物の全重量に基づき、総量15~50重量%、より好ましくは20~40重量%の有機UVフィルターを含む。
【0045】
化粧品組成物は、典型的に、化粧品組成物中での使用に関して適切である他の成分を含む。
【0046】
化粧品組成物は、さらに好ましくは、少なくとも1つの油を含む。
【0047】
本説明中の「油」という用語は、好ましくは23℃において液体又は粘稠性を有する、非水溶性、有機、天然、又は合成の化粧品的に適切な油を表す。これに関連して、「非水溶物」は、20℃において2重量%以下の油の水溶性を指す。
【0048】
油が、5~55mN/m、好ましくは55~24mN/mの範囲又は18~5mN/mの範囲のいずれか、より好ましくは50~30mN/mの範囲又は15~5mN/mの範囲のいずれかの極性指数を有する油であることが好ましい。
【0049】
「極性指数」という用語は、当業者に既知のパラメーターである。油の極性は、水に対する油の極性指数(界面張力)として定義される。界面張力、すなわち、極性指数は、特に、ASTM法D971-99a(2004)と同様にmN/mで界面張力を測定する、輪環張力計(例えば、Kruess K 10)を使用して測定することができる。
【0050】
油は、特にアルカン、トリグリセリド、エステル油又はグリコールエステルの化学群の油である。
【0051】
好ましくは、油は、アジピン酸ジブチル、ヒマシ油、キンセンカ油、小麦麦芽油、酒石酸ジ-C12~13アルキル、プロピレングリコールモノイソステアレート及びココグリセリドからなる群から選択され、特に酒石酸ジ-C12~13アルキル、アジピン酸ジブチル及びココグリセリドからなる群から選択される。
【0052】
50~30mN/mの極性指数を有する好ましい油は、イソパラフィン(C12~C14)、シクロパラフィン、ポリデセン、スクアラン、水素化ポリイソブテン、イソヘキサデカン、パラフィン油パーリキダム(perliquidum)、ポリジメチルシロキサン、イソエイコサン、エトキシジグリコールオレエート、デシルオリベート、ジオクチルシクロヘキサン、パラフィン油サブリキダム(subliquidum)、パラフィナムリキダム(paraffinum liquidum)、イソセチルパルミテート、シクロペンタシロキサン、ジカプリリルカーボネート、オクチルイソステアレート、トリメチルヘキシルイソノナノエート、2-エチルヘキシルイソノナノエート、ジカプリリルエーテル、ジヘキシルカーボネート及びオクチルココエートからなる群から選択され、特にジ-カプリリルカーボネート、パラフィナムリキダム(paraffinum liquidum)及びスクアランからなる群から選択される油である。
【0053】
18~5mN/mの範囲の極性指数を有する好ましい油は、酒石酸ジ-C12~13アルキル、アジピン酸ジブチル又はココグリセリドであり、酒石酸ジ-C12~13アルキル又はアジピン酸ジブチルがより好ましい。
【0054】
油、特に55~24mN/mの範囲、又は18~5mN/mの範囲のいずれかの極性指数を有する油の総量は、化粧品組成物の全重量に基づき、好ましくは2~20重量%、特に3~15重量%の範囲である。
【0055】
化粧品組成物は、さらに好ましくは、少なくとも1つの乳化剤、好ましくはアニオン乳化剤を含む。好ましくは、アニオン乳化剤は、セチルリン酸カリウム、スルホコハク酸セテアリル二ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、クエン酸ステアリン酸グリセリル及びココイルイセチオン酸ナトリウムからなる群から選択されるアニオン乳化剤である。
【0056】
セチルリン酸カリウムは、DSM Nutritional Products Ltd KaiseraugstのAmphisol(登録商標)Kとして商業的に入手可能である。
【0057】
乳化剤の量は、化粧品組成物の全重量に基づき、好ましくは0.1~6.0重量%、より好ましくは0.25~5.0重量%、特に0.5~4.0重量%の範囲である。
【0058】
組成物は、好ましくはスルフェートを含まない。
【0059】
したがって、化粧品組成物は、好ましくは特に、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアミドエーテルスルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルフェート及びモノグリセリドスルフェート並びにその混合物からなる群のスルフェートを含まない。
【0060】
本明細書中で使用される「含まない」、例えば、「スルフェートを含まない」という用語は、それぞれの物質が、組成物の重量に対して、0.5重量%未満、特に0.1重量%未満、より特に0.05重量%未満でのみ存在することを意味するために使用される。好ましくは、「含まない」とは、それぞれの物質が組成物中に完全に存在しないことを意味する。
【0061】
「スルフェートを含まない」という用語は、本明細書中、組成物が、次式
【化5】

の末端アニオン基を有するいずれのアニオンテンシドも含まないことを意味するために使用される。
【0062】
化粧品組成物は、好ましくはカチオン乳化剤を含まない。そのようなカチオン乳化剤の典型的な例は、イソステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラルコニウムクロリド、ステアラミドエチルジエチルアミン、ベヘントリモニウムメトスルフェート、ベヘノイルPG-トリモニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、ベヘナミドプロピルジメチルアミンべへネート、ブラシカアミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジメチルアミンステアレート、コカミドプロピルPG-ジモニウムクロリド、ジステアロイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、ジステアロイルエチルジモニウムクロリド、シアバターアミドプロピルトリモニウムクロリド、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ブラシシルイソロイシンエシレート、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリレートコポリマー、リノールアミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、ジメチルラウラミンイソステアレート、イソステアラミドプロピルラウリルアセトジモニウムクロリド、特にベヘントリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド及びパルミタミド-プロピルトリモニウムクロリドである。
【0063】
化粧品組成物は、スキンケア産業で一般に使用される化粧品キャリア、賦形剤及び希釈剤、並びに添加剤及び活性成分をさらに含んでもよい。本発明の化粧品組成物中での使用のために適切なものは、本明細書に制限されることなく、例えば、オンラインINFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)によってアクセス可能な、Personal Care Product Council (http://www.personalcarecouncil.org/)によるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbookに記載される。
【0064】
化粧品組成物のそのような可能な成分は、特に保存剤、酸化防止剤、脂肪物質/油、増粘剤、軟化剤、光スクリーニング剤、モイスチャライザー、芳香剤、共界面活性剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、カチオン性、ノニオン性若しくは両性ポリマー又はその混合物、酸性化若しくは塩基性化剤、粘度変性剤、並びに植物性物質、果実抽出物、糖誘導体及び/又はアミノ酸などの天然毛髪栄養分、或い化粧品組成物中に通常配合される他の任意の成分など、性能及び/又は消費者許容性を強化するものである。補助剤及び添加剤の必要量は、本明細書に制限されることなく、所望の製品に基づき、当業者によって容易に選択されることが可能であり、実施例において例示される。
【0065】
有利な実施形態において、本発明による組成物は、化粧品組成物の全重量に基づき、50%~99%、好ましくは60%~98%、より好ましくは70%~98%、例えば特に80%~95%のキャリアを含む。
【0066】
化粧品組成物は、好ましくは水を含む。特定の有利な実施形態において、さらにキャリアは、少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも55重量%の水、例えば特に55~90重量%の水からなる。
【0067】
本発明の全ての実施形態において特に適切な増粘剤は、キサンタンガム、ゲランガム及び/又はカルボキシメチルセルロースである。本発明の全ての実施形態において、最も好ましくは、増粘剤はキサンタンガム又はゲランガムである。
【0068】
そのような増粘剤は、好ましくは、化粧品組成物の全重量に基づき、0.1~1重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%の範囲の選択された量(全量)で使用される。
【0069】
組成物がポリビニルピロリドン(PVP)を含まないこと、特にアルキル化ポリビニルピロリジオン、例えばN-ビニル-ピロリドン及びヘキサデカン又はエイコサセンのコポリマー、例えば、Antaron V-216又はAntaron V-220として入手可能であるものを含まないことが好ましい。
【0070】
本発明による化粧品組成物は、一般に、3~10の範囲のpH、好ましくは4~8の範囲のpH及び最も好ましくは4~7.5の範囲のpHを有する。pHは、当該技術分野における標準方法に従って、適切な酸、例えばクエン酸、又は塩基、例えばNaOHによって所望の通りに容易に調整可能である。
【0071】
化粧品組成物は、好ましくは、スルフェートを含まない、及び/又はパラベン及び/又はシリコン油及び/又はシリコーン界面活性剤及び/又はメチルイソチアゾリジンを含まない、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)を含まない、特にアルキル化ポリビニルピロリジオンを含まない。
【0072】
化粧品組成物は、好ましくは局所用組成物である。
【0073】
「局所用」という用語は、本明細書で使用される場合、特に、皮膚、頭皮、まつげ、眉、爪、粘膜及び毛髪、好ましくは皮膚におけるケラチン物質への外部適用を意味するものとして理解される。
【0074】
局所用組成物は局所適用に関して意図されたものであるため、それらが生理的に許容できる媒体、すなわち、皮膚、粘膜及びケラチン繊維などのケラチン物質と適合性を有する媒体を含むことは十分理解される。特に、生理的に許容できる媒体は、化粧品的に許容できるキャリアである。
【0075】
「化粧品的に許容できるキャリア」という用語は、特にサンケア製品などの化粧品組成物中で従来から使用されている全てのキャリア及び/又は賦形剤及び/又は希釈剤を指す。
【0076】
好ましくは、化粧品組成物は、スキンケア調製品、装飾調製品又は機能調製品である。
【0077】
スキンケア調製品の例は、特に、光保護調製品、老化防止調製品、光線老化のトリートメントのための調製品、ボディオイル、ボディローション、ボディゲル、トリートメントクリーム、皮膚保護軟膏、スキンパウダー、保湿ゲル、保湿スプレー、フェイス及び/又はボディモイスチャライザー、日焼け用調製品(すなわち、ヒトの皮膚の人工的/サンレスタンニング及び/又は褐色化のための組成物)、例えば、セルフタンニングクリーム、並びに皮膚美白用調製品である。
【0078】
機能調製品の例は、活性成分を含有する化粧品又は製薬組成物、例えば、それに限定されないが、ホルモン調製品、ビタミン調製品、野菜抽出物調製品及び/又は老化防止調製品である。
【0079】
化粧品組成物は、好ましくはスキンケア組成物である。
【0080】
最も好ましい実施形態において、化粧品組成物は、サンケア組成物である。サンケア組成物は、光保護調製品(サンケア製品)、例えば、SPF(サンプロテクションファクター)を有するサンプロテクションミルク、サンプロテクションローション、サンプロテクションクリーム、サンプロテクションオイル、サンブロック又はデイケアクリームである。サンプロテクションクリーム、サンプロテクションローション、サンプロテクションミルク及びサンプロテクション調製品が特に興味深い。
【0081】
本発明による化粧品組成物は、溶媒又は脂肪物質中の懸濁液又は分散体の形態、或いは、エマルジョン又はミクロエマルジョン(特に、オイル-イン-ウォーター(O/W-)ウォーター-イン-オイル(W/O-)型、シリコーン-イン-ウォーター(Si/W-)又はウォーター-イン-シリコーン(W/Si-)型、PIT-エマルジョン、多層エマルジョン(例えばオイル-イン-ウォーター-イン-オイル(O/W/O-)又はウォーター-イン-オイル-イン-ウォーター(W/O/W-)型)、ピッカーリングエマルジョン、ヒドロゲル、アルコールゲル、リポゲル、単層若しくは多相溶液又は多孔状分散体の形態又は他の通常の形態であり得、マスクとして、又はスプレーとして、ペンで適用可能である。
【0082】
本発明の全ての実施形態における好ましい化粧品組成物は、油性相及び水性相を含有するエマルジョン、例えば、特にO/W、W/O、Si/W、W/Si、O/W/O、W/O/W多層又はピッカーリングエマルジョンである。
【0083】
そのようなエマルジョン中に存在する油性相の総量は、化粧品組成物の全重量に基づき、好ましくは、少なくとも10重量%、例えば10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%の範囲、最も好ましくは15~40重量%の範囲である。
【0084】
そのようなエマルジョン中に存在する水性相の量は、化粧品組成物の全重量に基づき、好ましくは、少なくとも20重量%、例えば40~90重量%の範囲、好ましくは50~85重量%の範囲、最も好ましくは60~85重量%の範囲である。
【0085】
より好ましくは、本発明による化粧品組成物は、そのような組成物が表面へのそれぞれの組成物の移動の有意に顕著な減少を示すため、それぞれO/W-、Si/W-乳化剤の存在下、水性相中に分散された油性相を含むオイル-イン-ウォーター(O/W)エマルジョンの形態である。そのようなO/Wエマルジョンの調製は、当業者に周知である。
【0086】
本発明によるO/Wエマルジョンの形態の組成物は、例えば、O/Wエマルジョンのために全ての配合物の形態で、例えば、セラム、ミルク又はクリームの形態で提供されることが可能であり、それらは通常の方法によって調製される。本発明の対象である組成物は、好ましくは局所用適用に関して意図されたものであり、そして特に、例えば、UV放射線の悪影響からヒトの皮膚を保護するため(抗シワ形成、老化防止、保湿、抗サンプロテクションなど)に意図される、皮膚病学的又は化粧品組成物を構成することができる。
【0087】
化粧品組成物中に、少なくとも1つの液体有機UVフィルター及び/又は少なくとも1
つの固体有機UVフィルターと一緒に、モノマー
(i)ドデセニルコハク酸無水物
(ii)ジイソプロパノールアミン
(iii)ビスジメチルアミノプロピルアミン
超分岐コポリマーであって、

【化6】

の末端基を有し、
かつ、1200~4000g/molの分子量Mnを有する特定の超分岐コポリマーが使用される場合、化粧品組成物は、接触表面への材料移動の強い減少を有することが見出された。
【0088】
したがって、本発明のさらなる態様は、モノマー
(i)ドデセニルコハク酸無水物
(ii)ジイソプロパノールアミン
(iii)ビスジメチルアミノプロピルアミン
超分岐コポリマーであって、

【化7】

の末端基を有し、
かつ、1200~4000g/molの分子量Mnを有する超分岐コポリマーの
接触表面への材料移動の減少のための、少なくとも1つの液体有機UVフィルター及び/又は少なくとも1つの固体有機UVフィルターを含む化粧品組成物中での使用である。
【0089】
材料移動の量は、接触の前後の対象(第2の対象)の重量の測定によって決定される。接触の後の任意の重量増加は、第1から第2の対象への材料移動による。材料移動の減少は、本発明による組成物を、上記の超分岐コポリマー、それぞれのUVフィルターを含有しないそれぞれの(本発明によるものではない)組成物と比較することによって決定される。減少は、2つの測定の材料移動の%で表される。
【0090】
30%より多い、45%より多い、特に55%より多い減少を得ることができることが見出された。
【0091】
化粧品組成物は、第1の表面に適用される。前記表面は、好ましくは皮膚、特にヒトの皮膚である。皮膚から別の表面への材料移動をシミュレーションするために、皮膚の代わりに多孔性スポンジを使用することが良好なアプローチであることが見出された。
【0092】
接触する対象(第2の対象)の表面は、好ましくはガラス表面又はプラスチック又は布表面である。
【0093】
表面が布である場合、化粧品組成物は布にしみを生じるおそれがあるため、布、特に服への化粧品組成物の不必要な移動を避けることは有利である。
【0094】
特に、接触する表面(すなわち第2の対象の表面)は、ガラス表面である。
【0095】
最も好ましくは、接触する表面(すなわち第2の対象の表面)は、光学ガラス、例えば、拡大鏡又はサングラス、或いは携帯電話のスマートフォンディスプレー、コンピュータデバイス又はタブレットのスクリーンのディスプレーのために使用されるものである。
【0096】
化粧品組成物の材料移動を減少することによって、特に、ガラス表面が指と接触した時の機器の光学ガラス又は視覚用ガラスなどのガラス上に残された跡、特に指跡の問題を減らすことができるか、又は回避することさえもできる。特に、これによって、表面上に残された前記材料によって前記ガラスを通して透過される光線に対する任意の望ましくない影響を非常に減少することができるか、又は回避することさえもできる。
【0097】
さらにまた、美的表面、例えば鏡、或いは高度に光沢があるか、又は高度にマットな表面、例えば、車若しくは家具若しくは芸術の一部のトップコート上に残された跡を強力に減少させることができる。そのような表面は、それらが化粧品組成物が適用された皮膚と接触する場合、特にそれらが以前に化粧品組成物と接触していた指によって接触される場合、多量のクリーニングメンテナンスを必要とするため、これは非常に有利である。
【0098】
ディスプレーユニット、例えば携帯電話のディスプレー、スクリーン、又はモニター、ラップトップ、携帯電話若しくはタブレットのタッチスクリーンの表面上に残された跡を強力に減少させることができる。この結果、読みやすさを改善することができる。タッチスクリーンの機能性は表面態様に依存するため、本発明は、前記ガラス表面をクリーニングすることを過度に必要とせずに一定のタッチスクリーン機能性を向上させることを助ける。
【0099】
材料移動の減少は、それらが皮膚と接触する場合の前記表面のクリーニングに関連する労力及び費用を非常に減少する。
【0100】
[実施例]
以下の実験によって本発明をさらに例示する。これらの実施例は実例となり、いずれかの様式に本発明の範囲を制限するように意図されない。
【0101】
[超分岐コポリマー(HBC1)の調製]
欧州特許第2794729B1号明細書の実施例3に従って、237.59gのN,N-ビス(N’N’-ジメチルアミノプロピル)アミン及び112.6gのジイソプロパノールアミン及び426.89gのドデセニルコハク酸無水物を使用して、モノマードデセニルコハク酸無水物及びジイソプロパノールアミン及びビスジメチルアミノプロピルアミンの超分岐コポリマーHBC1を調製した。加熱及び減圧後、0.3meq/g未満の残留カルボン酸含有量(滴定分析)、AV=9.8mg KOH/g及び2.99meq/gのアミン含有量(滴定分析)、並びに分子量Mn=2240が得られた。H-NMR分析によってクロロ酢酸塩の完全な変換が示されるまで、この生成物を水中でクロロ酢酸ナトリウムと反応させ、80℃で撹拌し、次式
【化8】

の末端基を有し、2.3kDaの分子量Mnを有する超分岐コポリマーHBC1を得た。
【0102】
超分岐コポリマーHBC1は、以下の実験において45%水溶液として使用された。
【0103】
[材料移動]
材料移動は、以下に概説されるスポンジ試験によって決定した。
-スポンジクロス(Weita AGからのWeitawip Claire:セルロース/綿繊維混合物、200g/m、厚さ5mm)を76mm×26mmに切断する。
-スポンジ試料の風袋を測定する。
-それぞれの試料(=化粧品組成物)350mgを適用して、76mm×26mmのスポンジ表面上に均一に分布させる。
-試料が適用されたスポンジの重量を測定する。
-顕微鏡スライド(ガラスプレート76mm×26mm×1mm)の風袋を測定する。
-特定の圧力を試料に適用するために500gのバランス重量(高さ:6.3cm、接触領域の直径:3.7cm)がその上に10秒間配置されたスポンジ上に顕微鏡スライド(ガラスプレート)を配置する。
-慎重に顕微鏡スライドを垂直に取り除く。
-取り除かれた顕微鏡スライドの重量を測定し、したがって、ガラスプレートに移動した試料の量を測定する。
-それぞれの試料の平均値を得るために、それぞれの組成物に対して10回試験を繰り返す。
【0104】
[化粧品組成物の調製]
表1による油相の成分(重量部)を組み合わせて、85℃まで加熱した。表1による水相の成分(重量部)を組み合わせ、そしてキサンタンガムが完全に溶解するまで撹拌し、次いで80℃まで加熱した。2つの相を組み合わせて、10’000rpmで1分間、均質化させた。穏やかな撹拌下、エマルジョンを35℃まで冷却する。実施例において超分岐コポリマーが使用される場合、この時点でそれぞれの超分岐ポリマー(重量部)を撹拌下のエマルジョンに添加する。エマルジョンが室温に到達するまで、撹拌を続けた。それぞれの組成物が70グラムの全重量を有するように、使用される組成物の成分の量(100重量%まで合計する)が選択される。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
表1の結果は、特定の超分岐コポリマーを有する試料では、前記コポリマーを有さないそれぞれの参照例(「Ref.」)よりも高い材料移動の有意な減少があることを明らかに示す。さらに、表1の結果は、有機固体又は液体UVフィルターの影響を明らかに示す。UVフィルターが使用されない場合と比較して、固体又は液体UVフィルターと特定の超分岐コポリマーとの組合せが使用される場合、材料移動の減少が非常により顕著であることが示される(Ref.5及びRef.6対1~4)。さらにまた、有機UVフィルター(1、2、3、4)は無機UVフィルター(Ref.5、Ref.6)よりも材料移動において有意に高い減少を示すことを見ることができる。
【0108】
さらにまた、ポリシリコーンベースのUVフィルター(2)は、非ポリシリコーンベースの有機UVフィルター(1、3、4)よりも顕著ではない材料移動の減少を有することを観察することができる。
【0109】
上記の実験の本発明による組成物による材料移動の減少のプラスの結果及び影響は、上記の組成物が指の先端に適用され、そしてそのような指でSamsung S9ディスプレーのタッチスクリーンに接触し、そしてスクリーン上の跡の量を視覚的に評価した時にも見出すことができる。