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  • 特許-アスファルト合材の供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】アスファルト合材の供給方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/08 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
E01C19/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020144583
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039513
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中山 知巳
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 秀人
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3143857(JP,U)
【文献】特開平8-13414(JP,A)
【文献】特開平10-183519(JP,A)
【文献】特開2014-114613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0013271(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1240540(KR,B1)
【文献】特開平7-90807(JP,A)
【文献】中国実用新案第208533319(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装現場、舗装現場近傍のアスファルト合材供給用の中継地点であるサテライトサイト、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つには誘導加熱装置を備え、アスファルトプラントにて製造した直後のアスファルト合材を導電体からなる密閉式の貯蔵容器に収容し、該貯蔵容器を搬送車両にて前記舗装現場またはサテライトサイトまで搬送し、前記誘導加熱装置にて前記貯蔵容器を誘導加熱することで貯蔵容器内のアスファルト合材を所定温度に再加熱してから前記舗装現場に供給することを特徴とするアスファルト合材の供給方法。
【請求項2】
前記貯蔵容器にアスファルト合材を収容後、更に不活性ガスを充填することを特徴とする請求項1記載のアスファルト合材の供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトプラントで製造されるアスファルト合材を舗装現場に供給する供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト合材製造工場に設置されるアスファルトプラントでは、各種粒径の骨材を、例えば約160℃程度もの高温に加熱した上で、フィラー(石粉)や溶融アスファルト等と所定量ずつミキサーで撹拌・混合してアスファルト合材を製造している。製造直後の高温で適度に軟化状態にあるアスファルト合材は、大気下では時間の経過と共に徐々に温度低下、酸化劣化が進んでいき、それらの進行度合いによっては粘性が高まって舗装現場でのワーカビリティー(施工性)が低下したり、硬化して道路舗装材として使用できなくなる可能性がある。
【0003】
特に、製造したアスファルト合材を搬送車両の荷台に積み込んで舗装現場まで出荷する際には、アスファルト合材が大気と接しやすいことなどから温度低下、酸化劣化は一段と進みやすく、現状、荷台に積み込んだアスファルト合材の上から養生シートで覆うなどの保温対策を図ってはいるものの、通常は出荷から約1時間半以内に届けられる範囲の舗装現場にしか供給できず、これを超えるような遠隔地への供給は難しいものがある。
【0004】
これに対し、断熱壁より構成され、かつヒータを具備した箱体状の貯蔵容器に、製造直後のアスファルト合材を収容して舗装現場まで搬送するようにしたものがある(特許文献1参照)。前記貯蔵容器によれば、保温性及び気密性を高められることから、従来より遠隔地の舗装現場へも製造直後の良好な性状を維持したまま搬送・供給できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3143857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、比較的規模の大きいアスファルト合材製造工場などの場合、自ずとアスファルト合材の出荷量も多くなるため前記貯蔵容器を多数用意する必要が生じるが、その全てにヒータ設備を具備するとなればメンテナンス面での負担が増える上、コストアップを招き、場合によっては採用が難しくなることも予想される。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、比較的シンプルで低廉な構成ながらも遠隔地の舗装現場へも供給可能なアスファルト合材の供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、各貯蔵容器にヒータ設備を具備するのではなく、舗装現場や舗装現場近傍のサテライトサイト(アスファルト合材製造工場から各舗装現場にアスファルト合材を効率よく供給するために設置される中継地点)等に、アスファルト合材を収容した貯蔵容器ごと加熱処理が可能な適宜の加熱手段を別途用意するようにすればメンテナンスが容易になる上、コスト抑制にも繋がるのではないかと考えた。上記方法によれば、例え搬送中に貯蔵容器内のアスファルト合材の温度が下がってワーカビリティーの低下を来したとしても、前記加熱手段にて適宜再加熱すればワーカビリティーを回復できると考えられる。
【0009】
ただし、アスファルト合材は比較的断熱性が高く(ロックウール等の断熱材と略同等程度)、一度冷えたアスファルト合材を再加熱するにあたり、単純に貯蔵容器外部より加熱しても貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材まで効率よく短時間で昇温することは難しいと予想された。
【0010】
そこで、本発明者らは更に検討を重ねたところ、逆の発想で、アスファルト合材自体が断熱材代わりとなり得るのではないかと考えた。即ち、貯蔵容器内に収容したアスファルト合材のうち、貯蔵容器内壁面付近の合材は大気への熱放散によって比較的急速に温度低下を来すものの、それ自体があたかも断熱層となり、貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材は比較的長時間に亘って高温のまま維持されるのではないかと考えた。
【0011】
そして、本発明者らは上記推測の下、例えば、直径2.0mの円筒形状の貯蔵容器内に製造直後の160℃のアスファルト合材を収容したと仮定した上で、該貯蔵容器内壁面から容器中心部(軸心部)側への水平距離毎(0m、0.1m、0.2m、0.3m、0.5m、1.0m地点毎)のアスファルト合材温度の経時変化についてシミュレーションを行ったところ、図1のグラフに示すように、当初の予想通り、貯蔵容器内壁面に接する位置(0m地点)のアスファルト合材は僅か1時間程度で160℃から外気温度である約15℃程度まで急速に温度低下するものの、容器内壁面から容器中心部側に向かって0.2m地点のアスファルト合材では、1時間後で10℃程度、3時間後で25℃程度、5時間後で40℃程度、10時間後でも65℃程度しか温度低下しないとの結果を得た。
【0012】
また同様に、0.3m地点にあっては、1時間後で2℃程度、3時間後で10℃程度、5時間後で20℃程度、10時間後でも40℃程度しか温度低下せず、更に0.5m地点にあっては、1時間後で1℃程度、3時間後で2℃程度、5時間後で3℃程度、10時間後でも10℃程度しか温度低下しないとの結果を得た。
【0013】
上記シミュレーション結果より、貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材は比較的長時間に亘って温度低下しにくく、出荷から数時間程度であれば基本的に再加熱は不要であり、熱放散によって温度低下しやすい貯蔵容器内壁面付近のアスファルト合材さえ再加熱できれば十分実用に足りるとの結論に至った。そして、貯蔵容器内壁面付近(例えば、貯蔵容器内壁面から約0.2~0.3m程度内部側まで)のアスファルト合材を数十℃程度昇温させるだけであれば、例えば、貯蔵容器を金属等の導電体で形成した上で、該貯蔵容器自体を直接加熱可能とする誘導加熱装置を再加熱手段として用意すれば、比較的シンプルな構成ながら効率よく再加熱できるとの考えに至り、本発明を成すに至った。
【0014】
即ち、本発明に係る請求項1記載のアスファルト合材の供給方法では、舗装現場、舗装現場近傍のアスファルト合材供給用の中継地点であるサテライトサイト、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つには誘導加熱装置を備え、アスファルトプラントにて製造した直後のアスファルト合材を導電体からなる密閉式の貯蔵容器に収容し、該貯蔵容器を搬送車両にて前記舗装現場またはサテライトサイトまで搬送し、前記誘導加熱装置にて前記貯蔵容器を誘導加熱することで貯蔵容器内のアスファルト合材を所定温度に再加熱してから前記舗装現場に供給することを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルト合材の供給方法では、前記貯蔵容器にアスファルト合材を収容後、更に不活性ガスを充填することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1記載のアスファルト合材の供給方法によれば、舗装現場、舗装現場近傍のサテライトサイト、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つには誘導加熱装置を備え、アスファルトプラントにて製造直後のアスファルト合材を導電体からなる密閉式の貯蔵容器に収容し、該貯蔵容器を搬送車両にて前記舗装現場またはサテライトサイトまで搬送し、前記誘導加熱装置にて前記貯蔵容器を誘導加熱することで貯蔵容器内のアスファルト合材を所定温度に再加熱してから前記舗装現場に供給するので、比較的シンプルで低廉な構成ながらも遠隔地の舗装現場へも好適にアスファルト合材を供給できる。
【0017】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルト合材の供給方法によれば、前記貯蔵容器にアスファルト合材を収容後、更に不活性ガスを充填するので、アスファルト合材の酸化劣化を効果的に抑制でき、遠隔地の舗装現場までより好適にアスファルト合材を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】アスファルト合材を貯蔵容器内に収容した際のアスファルト合材温度の経時変化についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
図2】本発明に係るアスファルト合材の供給方法で使用する貯蔵容器の斜視図である。
図3】本発明に係るアスファルト合材の供給方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るアスファルト合材の供給方法にあっては、アスファルト合材製造工場に設置されるアスファルトプラントにて製造した直後の高温(例えば、160℃程度)で適度に軟化状態にあるアスファルト合材の一部を、例えば金属等の導電体からなる密閉式の貯蔵容器に収容する一方、舗装現場、舗装現場近傍のサテライトサイト、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つには、前記貯蔵容器内に収容したアスファルト合材の再加熱手段として誘導加熱装置を備えておく。
【0020】
前記貯蔵容器を導電体で形成した上で、前記再加熱手段として誘導加熱装置を採用することによって前記貯蔵容器自体を直接加熱でき、貯蔵容器内壁面付近のアスファルト合材であれば比較的短時間にて効率よく昇温することが可能となる。
【0021】
また、好ましくは、前記貯蔵容器にアスファルト合材を収容後、更に窒素や二酸化炭素等の不活性ガスを充填するとよい。これにより、搬送中のアスファルト合材の酸化劣化を効果的に抑制可能となる。
【0022】
そして、遠隔地の舗装現場にて舗装工事を行う際には、製造直後の高温のアスファルト合材を収容した前記貯蔵容器を搬送車両に積載し、前記舗装現場またはその近傍のサテライトサイトまで搬送する。そして、前記貯蔵容器を、前記舗装現場、サテライトサイト、搬送車両のうち、少なくとも何れか一つに備えた誘導加熱装置にて誘導加熱し、搬送途中に温度低下を来した貯蔵容器内のアスファルト合材を所定温度(舗装工事に適した適正温度であって、例えば160℃程度)に再加熱した上で舗装現場に供給する。
【0023】
このとき、アスファルト合材の特性である高い断熱性により、貯蔵容器を誘導加熱しても貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材までは効率よく昇温することは困難なものの、貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材は貯蔵容器内壁面付近のアスファルト合材が断熱層となることで搬送中も比較的高温に維持される結果、貯蔵容器内壁面付近(例えば、貯蔵容器内壁面から約0.2~0.3m程度内部側まで)のアスファルト合材のみを数十℃程度加熱・昇温できれば足りるため、効率よく短時間にて所定温度まで昇温できる。そして、舗装現場では、舗装工事に適した適正温度に調整されたアスファルト合材を敷き均した上で、転圧機等にて転圧して舗装処理する。
【0024】
このように、前記貯蔵容器を導電体で形成した上で、該貯蔵容器自体を直接加熱可能とする誘導加熱装置を、舗装現場、該舗装現場近傍のサテライトサイト、アスファルト合材の搬送車両のうち、少なくとも何れか一つに備えるようにしたので、各貯蔵容器毎にヒータ設備を具備せずともアスファルト合材を舗装工事に適した適正温度に調整でき、比較的シンプルかつ低廉な構成ながらも遠隔地の舗装現場へも好適にアスファルト合材を供給することが可能となる。そして、例えば比較的規模が大きく出荷量の多いアスファルト合材製造工場等においても採用のしやすいものとなる。
【0025】
なお、比較的温度低下のしにくい貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材にあっても、搬送距離や搬送時間が長くなるにつれて幾分かずつ温度低下することは避けられないが、前記のように、誘導加熱装置にて貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材まで効率よく加熱・昇温することは難しい。その場合、例えば、舗装工事に適した適正温度(例えば、160℃程度)に対し、アスファルト合材の性状に影響を及ぼさない範囲で、搬送距離や搬送時間、外気温度等に応じて予想される温度低下分を見越してその分だけ予め高温にて(例えば、10~20℃程度高温にて)アスファルト合材を製造しておき、その状態で貯蔵容器に収容するようにしておけば、より好適に遠隔地の舗装現場へもアスファルト合材を供給可能となる。
【実施例
【0026】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0027】
図2中の1は、アスファルト合材搬送用の貯蔵容器の一例を示したものであって、例えば、金属等の導電体で形成した略立方体形状の容器本体2を有し、該容器本体2の上下端部には投入口3及び排出口4を備えていると共に、該投入口3及び排出口4にはそれぞれ投入ゲート5及び排出ゲート6を開閉自在に備えている。また、前記容器本体2の上端縁部には、クレーン等の揚重機にて貯蔵容器1を吊り上げて搬送車両等に積み上げ、或いは積み降ろしたりする際に使用する吊り金具7を備えていると共に、前記投入ゲート5には、例えば、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを容器本体2内に充填するためのガス充填口8を備えている。
【0028】
前記貯蔵容器1の形状としては、平面視で長方形の直方体形状を採用することもできるが、本実施例のように立方体形状とすることにより、温度低下を抑えられる貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材量を確保しやすいものとなって好ましい。また、円筒形状とすれば、貯蔵容器側面部の表面積を減らせる結果、収容したアスファルト合材の熱放散を軽減できてより好ましい。
【0029】
前記貯蔵容器1の容量としては、少なくとも搬送車両に積載可能な範囲で適宜選定すればよいが、例えばアスファルトプラントのミキサにて混合・製造される1~数バッチ分程度のアスファルト合材を収容可能な容量とするとよい。また、前記貯蔵容器1の外周部に別途ロックウール等の断熱材を周設して保温性を高めるようにしてもよいが、誘導加熱時の加熱効率を高めるためには、後述する誘導加熱装置に備えられる磁力線発生用のコイルと貯蔵容器外壁面とを、非接触とした上で極力近接させた方が有利となるため、加熱効率を優先する場合には敢えて断熱材を周設しない構成とするとよい。
【0030】
図3は本発明に係るアスファルト合材の供給方法の概略説明図であって、図中の9は道路舗装材であるアスファルト合材を製造・出荷するアスファルト合材製造工場であって、その敷地内には各種粒径の骨材を所定温度、例えば約160℃程度の高温に加熱した上で、フィラーや溶融アスファルト等と共に所定量ずつ撹拌・混合してアスファルト合材を製造するアスファルトプラント10を設置している。また、図中の11a、11bは前記アスファルト合材製造工場1から遠隔地に位置する舗装現場である。
【0031】
図中の12は前記舗装現場11bの近傍に位置するサテライトサイトであって、前記アスファルト合材製造工場9から遠隔地に位置する複数の舗装現場に対してアスファルト合材を効率よく供給するために設置される中継地点である。該サテライトサイト12の敷地内には、アスファルト合材製造工場9から出荷・搬送されてくる、アスファルト合材を収容した貯蔵容器1を一時的に貯蔵可能とする貯蔵スペース13、該貯蔵スペース13に貯蔵した貯蔵容器1内のアスファルト合材を、後述する誘導加熱装置にて所定温度に順次再加熱した上で保温貯蔵する合材サイロ14を備えている。
【0032】
図中の15は前記アスファルトプラント10にて製造したアスファルト合材を直接、或いはアスファルト合材を収容した前記貯蔵容器1を積載し、前記各舗装現場11a、11bに搬送・供給するダンプトラック等の搬送車両であると共に、図中の16は前記搬送車両15にて各舗装現場11a、11bに供給したアスファルト合材を転圧して舗装処理するロードローラ等の転圧機である。
【0033】
また、前記舗装現場11a、舗装現場11b近傍のサテライトサイト12、アスファルト合材の搬送車両15のうち、少なくとも何れか一つには、前記貯蔵容器1内に収容したアスファルト合材の再加熱手段として誘導加熱装置17を備えている。
【0034】
前記誘導加熱装置17は、磁力線発生用のコイル18と、発電機19とを主体に構成され、アスファルト合材を収容した前記貯蔵容器1の前後、左右、上下の各外壁面を前記コイル18に非接触で近接させた上で、前記発電機19より前記コイル18に高周波電流を流すとその周囲に磁力線Fが発生し、導電体からなる前記貯蔵容器1には渦電流が流れる結果、貯蔵容器1自体が直接加熱され(発熱し)、その内部に収容したアスファルト合材を、特に貯蔵容器1(容器本体2)内壁面付近のアスファルト合材を比較的効率よく短時間にて加熱・昇温できる。なお、前記コイル18に電流を供給する前記発電機19に代えて、搬送車両15から電流を供給する構成としてもよい。
【0035】
続いて、前記アスファルト合材製造工場9のアスファルトプラント10にて製造したアスファルト合材を遠隔地の舗装現場11a、11bに搬送・供給する場合について説明する。先ず、アスファルト合材製造工場9から舗装現場11aに直接アスファルト合材を搬送・供給する場合には、図中(A)に示すように、製造直後の高温(例えば、160℃程度)で軟化状態にあるアスファルト合材を、投入ゲート5を開放した状態の前記貯蔵容器1に収容後、投入ゲート5を閉鎖して密閉し、不活性ガス充填口8より不活性ガスを貯蔵容器1(容器本体2)内に充填する。次いで、前記貯蔵容器1を搬送車両15の荷台に積載して舗装現場11aまで搬送・供給する。
【0036】
そして、前記舗装現場11aまたは搬送車両15に備えておいた誘導加熱装置17に前記貯蔵容器1をかけて、貯蔵容器1自体を誘導加熱し、搬送途中に温度低下を来した貯蔵容器1内のアスファルト合材を所定温度(舗装工事に適した適正温度であって、例えば160℃程度)に再加熱した上で舗装現場11aに供給する。前記舗装現場11aでは、前記貯蔵容器1下端部の排出ゲート6を開放し、排出されるアスファルト合材を所定の層厚に敷き均した上で、転圧機16にて転圧して舗装処理を行う。
【0037】
なお、アスファルト合材の特性である高い断熱性により、貯蔵容器1を誘導加熱しても貯蔵容器1(容器本体2)中心部付近のアスファルト合材までは効率よく昇温することは困難なものの、貯蔵容器1中心部付近のアスファルト合材は貯蔵容器1内壁面付近のアスファルト合材が断熱層となることで搬送時も比較的高温に維持される結果、貯蔵容器1内壁面付近(例えば、貯蔵容器内壁面から約0.2~0.3m程度内部側まで)のアスファルト合材のみを数十℃程度加熱・昇温できれば足りるため、効率よく短時間にて所定温度まで昇温できる。
【0038】
一方、アスファルト合材製造工場9からサテライトサイト12を中継した上で、舗装現場11bにアスファルト合材を搬送・供給する場合には、図中(B)に示すように、製造直後の高温で軟化状態にあるアスファルト合材を収容した前記貯蔵容器1を、搬送車両15の荷台に積載して舗装現場11b近傍のサテライトサイト12まで搬送する。該サテライトサイト12では、搬送された前記貯蔵容器1をサテライトサイト12に備えておいた誘導加熱装置17にかけて、前記同様に、貯蔵容器1自体を誘導加熱し、搬送途中に温度低下を来した貯蔵容器1内のアスファルト合材を所定温度に再加熱した上で合材サイロ14に順次投入して保温貯蔵する。そして、前記合材サイロ14より所定温度に維持されたアスファルト合材を搬送車両15の荷台に直接払い出して積載し、必要に応じて養生シートで覆うなどの保温対策を図りながら近傍の舗装現場11bまで搬送・供給する。そして、前記舗装現場11bでは前記同様に、供給されたアスファルト合材を敷き均した上で転圧機16にて転圧して舗装処理を行う。
【0039】
このように、前記貯蔵容器1を導電体で形成した上で、該貯蔵容器1自体を直接加熱可能とする誘導加熱装置17を、舗装現場11a、11b、舗装現場近傍のサテライトサイト12、アスファルト合材の搬送車両15のうち、少なくとも何れか一つに備えるようにしたので、比較的シンプルかつ低廉な構成ながらも遠隔地の舗装現場11a、11bへも好適にアスファルト合材を供給することが可能となる。
【0040】
また、アスファルト合材を密閉式の貯蔵容器1に収容した状態で舗装現場11a、11bやその近傍のサテライトサイト12まで搬送するようにしているため、搬送中の臭気や粉塵の飛散を抑えられ、周辺環境への負荷を軽減できる。また、搬送車両15の荷台にアスファルト合材を直接積み込む場合と比較して汚損や材料こぼれ等の不具合も軽減できて好ましい。
【0041】
また、密閉式の貯蔵容器1内に収容したアスファルト合材は(不活性ガスを充填した状態であれば尚更)、比較的短時間であれば温度低下や酸化劣化を抑制できるため、例えば、舗装現場11aやサテライトサイト12、或いはアスファルト合材製造工場9内に一時的に保管することも可能となる。これにより、従来、アスファルト合材製造工場9でのアスファルト合材の製造・出荷待ちや、舗装現場11a、11bでの舗装工事待ち等のために生じていた搬送車両15の待機時間を削減でき、より効率的なアスファルト合材の搬送・供給が可能となる。
【0042】
なお、本実施例では、比較的遠隔地の舗装現場へアスファルト合材を搬送・供給する場合を例示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、アスファルト合材製造工場9より近傍の舗装現場へアスファルト合材を供給する場合においても、前記同様に、貯蔵容器1内にアスファルト合材を収容して搬送・供給するようにしてもよい。その場合でも、温度低下や酸化劣化の軽減が期待できるものとなり好ましい。
【0043】
また、前記貯蔵容器1に、貯蔵容器1(容器本体2)内壁面から容器中心部側への距離毎(例えば、0.1m間隔毎)のアスファルト合材温度をそれぞれ検出可能なように複数の温度センサを具備しておけば、前記誘導加熱装置17にて再加熱する際に、貯蔵容器1内に収容したアスファルト合材を所定温度(舗装工事に適した適正温度)に過不足なく加熱することが可能となってより好ましいものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、アスファルトプラントで製造されるアスファルト合材を舗装現場に供給する場合に広く利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1…貯蔵容器 2…容器本体(貯蔵容器)
9…アスファルト合材製造工場 10…アスファルトプラント
11a、11b…舗装現場 12…サテライトサイト
14…合材サイロ 15…搬送車両
16…転圧機 17…誘導加熱装置
図1
図2
図3