IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チョーチアン ヘンイー ペトロケミカル カンパニー,リミテッドの特許一覧

特許7436134染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラム
<>
  • 特許-染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラム 図1
  • 特許-染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラム 図2
  • 特許-染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラム 図3
  • 特許-染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラム 図4
  • 特許-染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラム 図5
  • 特許-染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01N21/65
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023199544
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】202311034920.0
(32)【優先日】2023-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523443995
【氏名又は名称】チョーチアン ヘンイー ペトロケミカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ペン,シャンタオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ミンジー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ダンダン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】テン,ジェン
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112649391(CN,A)
【文献】特開平09-068466(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115015120(CN,A)
【文献】国際公開第2019/087987(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0293462(US,A1)
【文献】Guo Yuqiu,Multi-component quantitative analysis method for dyeing with reactive dyes,紡織学報,2023年07月,Vol.44 No.7,pp.141-150,DOI: 10.13475/j.fzxb.20221100501
【文献】Xin Zhou,A deep learning method for predicting lead content in oilseed rape leaves using fluorescence hyperspectral imaging,Food Chemistry,2023年05月,Vol.409,pp.135251-1~135251-8
【文献】Ting Liu,NIRS feature extraction based on deep auto-encoder neural network,Infrared Physics & Technology,2017年,Vol.87,pp.124-128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01J 3/00-3/52
D06P 1/00-7/00
G06N 3/00-3/126
G06N 20/00-20/20
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモーダルオートエンコーダと特徴融合層を含む、第1予測モデルをトレーニングして染色効果予測モデルを得るための染色効果予測モデルのトレーニング方法であって、
ウェーブレット基底関数を利用して、サンプル巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解することと、
予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数に基づき、前記複数のサブ信号データから少なくとも一部のサブ信号データを選択して、第2ラマンデータを得ることであって、前記複数のサブ信号データは複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する、ことと、
前記第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、サンプル画像特徴を決定することと、
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第2ラマンデータに基づき、サンプルスペクトル特徴を決定することと、
前記第1予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、前記サンプル画像特徴と前記サンプルスペクトル特徴とに基づいてサンプル巻糸パッケージ特徴を決定することと、
前記第1予測モデルを利用して、前記サンプル巻糸パッケージ特徴に基づき、染色効果の等級を表すための第2染色ラベルを予測して得ることと、
前記サンプル巻糸パッケージの実際の染色ラベルと前記第2染色ラベルとに基づき、損失関数を得ることと、
前記損失関数に基づき、前記第1予測モデルのパラメータを更新して、トレーニングされた染色効果予測モデルを得ることと、を含む、
染色効果予測モデルのトレーニング方法。
【請求項2】
前記第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、サンプル画像特徴を決定することは、
前記サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、結晶構造の構造パラメータを決定することであって、前記構造パラメータは結晶化度及び/または配向度を含む、ことと、
第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、ミクロ画像データと前記構造パラメータとに基づき、サンプル画像特徴を決定することと、を含む、
請求項に記載の染色効果予測モデルのトレーニング方法。
【請求項3】
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第2ラマンデータに基づき、サンプルスペクトル特徴を決定することは、
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第2ラマンデータに含まれるラマンピーク強度情報、ピーク位置情報、ピーク面積情報またはピーク形状情報のうちの少なくとも一つに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することを含む、
請求項に記載の染色効果予測モデルのトレーニング方法。
【請求項4】
前記第1予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、前記サンプル画像特徴と前記サンプルスペクトル特徴とに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することは、
前記サンプル画像特徴を、前記第1予測モデルに含まれる特徴融合層の第1分岐に入力することと、
前記サンプルスペクトル特徴を、前記特徴融合層の第2分岐に入力することと、
前記特徴融合層のアテンションモジュールを利用して、前記第1分岐に対応する第1重みと前記第2分岐に対応する第2重みとを決定することと、
前記サンプル画像特徴、前記第1重み、前記サンプルスペクトル特徴及び前記第2重みに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することと、を含む、
請求項に記載の染色効果予測モデルのトレーニング方法。
【請求項5】
請求項1に記載の染色効果予測モデルのトレーニング方法により得られた染色効果予測モデルを用いる染色効果予測方法であって、
ウェーブレット基底関数を利用して、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解することと、
予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数に基づき、複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する、前記複数のサブ信号データから少なくとも一部の目標サブ信号データを選択して、第1ラマンデータを得ることと、
前記染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、目標画像特徴を決定することと、
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第1ラマンデータに基づき、目標スペクトル特徴を決定することと、
前記染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、前記目標画像特徴と前記目標スペクトル特徴とに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することと、
前記染色効果予測モデルを利用して、前記測定対象巻糸パッケージ特徴に基づき、染色効果の等級を表すための第1染色ラベルを予測して得ることと、を含む、
染色効果予測方法。
【請求項6】
染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、目標画像特徴を決定することは、
前記測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、結晶構造の構造パラメータを決定することであって、前記構造パラメータは結晶化度及び/または配向度を含む、ことと、
染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、ミクロ画像データと前記構造パラメータとに基づき、目標画像特徴を決定することと、を含む、
請求項に記載の染色効果予測方法。
【請求項7】
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第1ラマンデータに基づき、目標スペクトル特徴を決定することは、
染色効果予測モデルのマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第1ラマンデータに含まれるラマンピーク強度情報、ピーク位置情報、ピーク面積情報またはピーク形状情報のうちの少なくとも一つに基づき、目標スペクトル特徴を決定することを含む、
請求項に記載の染色効果予測方法。
【請求項8】
前記染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、前記目標画像特徴と前記目標スペクトル特徴とに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することは、
前記目標画像特徴を、前記染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層の第1分岐に入力することと、
前記目標スペクトル特徴を、前記特徴融合層の第2分岐に入力することと、
前記特徴融合層のアテンションモジュールを利用して、前記第1分岐に対応する第1重みと前記第2分岐に対応する第2重みとを決定することと、
前記目標画像特徴、前記第1重み、前記目標スペクトル特徴及び前記第2重みに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することと、を含む、
請求項に記載の染色効果予測方法。
【請求項9】
請求項1に記載の染色効果予測モデルのトレーニング方法により得られた染色効果予測モデルを用いる染色効果予測装置であって、
ウェーブレット基底関数を利用して、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを分解して複数のサブ信号データを得るための第1変換モジュールと、
予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数に基づき、複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する、前記複数のサブ信号データから少なくとも一部の目標サブ信号データを選択して、第1ラマンデータを得ることと、
前記染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、目標画像特徴を決定することと、
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第1ラマンデータに基づき、目標スペクトル特徴を決定することと、
前記染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、前記目標画像特徴と前記目標スペクトル特徴とに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することと、
に用いられる第1決定モジュールと、
前記染色効果予測モデルを利用して、前記測定対象巻糸パッケージ特徴に基づき、染色効果の等級を表すための第1染色ラベルを予測して得るための第1予測モジュールと、を備える、
染色効果予測装置。
【請求項10】
マルチモーダルオートエンコーダと特徴融合層を含む、第1予測モデルをトレーニングして染色効果予測モデルを得るための染色効果予測モデルのトレーニング装置であって、
ウェーブレット基底関数を利用して、サンプル巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解するための第2変換モジュールと、
予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数に基づき、前記複数のサブ信号データから少なくとも一部のサブ信号データを選択して、第2ラマンデータを得ることであって、前記複数のサブ信号データは複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する、ことと、
前記第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、サンプル画像特徴を決定することと、
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第2ラマンデータに基づき、サンプルスペクトル特徴を決定することと、
前記第1予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、前記サンプル画像特徴と前記サンプルスペクトル特徴とに基づいてサンプル巻糸パッケージ特徴を決定することと、
に用いられる第2決定モジュールと、
前記第1予測モデルを利用して、前記サンプル巻糸パッケージ特徴に基づき、染色効果の等級を表すための第2染色ラベルを予測して得るための第2予測モジュールと、
前記サンプル巻糸パッケージの実際の染色ラベルと前記第2染色ラベルとに基づき、損失関数を得るための損失決定モジュールと、
前記損失関数に基づき、前記第1予測モデルのパラメータを更新して、トレーニングされた染色効果予測モデルを得るための更新モジュールと、を備える、
染色効果予測モデルのトレーニング装置。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと通信接続されるメモリと、を備え、
前記メモリには、前記少なくとも1つのプロセッサで実行可能な命令が記憶され、前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法を実行させる、電子デバイス。
【請求項12】
コンピュータに請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法を実行させるコンピュータ命令を記憶した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
コンピュータにおいて、プロセッサにより実行されると、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法を実現するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータの分野に関し、特に、人工知能技術、ニューラルネットワークモデル技術、及びモデルトレーニング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化学繊維の生産において、複数台の生産装置のプロセスパラメータが完全に一致することを保証することは困難であり、同一の装置が異なるロット生産時に、プロセスパラメータにも差異が存在する可能性があるため、化学繊維パッケージが後続の染色時に、着色効果がそれに伴って変化する可能性があり、正確に予測することが困難である。現在、異なるロットの巻糸パッケージの染色効果を決定するために、各ロットの巻糸パッケージの一部をサンプルとして抽出して靴下に織った後に染色したうえ、人工的に染色効果を識別して複数の等級に分ける方法が採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体及びをプログラム提供し、従来技術における1つまたは複数の技術的問題を解決または緩和する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1態様では、本開示は染色効果予測方法を提供し、当該方法は、
ウェーブレット基底関数を利用して、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解することと、
前記複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部の目標サブ信号データに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することと、
染色効果予測モデルを利用して、前記測定対象巻糸パッケージ特徴に基づき、染色効果の等級を表すための第1染色ラベルを予測して得ることと、を含む。
【0005】
第2態様では、本開示は染色効果予測モデルのトレーニング方法を提供し、当該方法は、
ウェーブレット基底関数を利用して、サンプル巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解することと、
前記複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部のサブ信号データに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することと、
第1予測モデルを利用して、前記サンプル巻糸パッケージ特徴に基づき、第2染色ラベルを予測して得ることと、
前記サンプル巻糸パッケージの実際の染色ラベルと前記第2染色ラベルとに基づき、損失関数を得ることと、
前記損失関数に基づき、前記第1予測モデルのパラメータを更新して、トレーニングされた染色効果予測モデルを得ることと、を含む。
【0006】
第3態様では、本開示は染色効果予測装置を提供し、当該装置は、
ウェーブレット基底関数を利用して、結晶構造のポリエステル繊維製品である、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを分解して複数のサブ信号データを得るための第1変換モジュールと、
前記複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部の目標サブ信号データに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定するための第1決定モジュールと、
染色効果予測モデルを利用して、前記測定対象巻糸パッケージ特徴に基づき、染色効果の等級を表すための第1染色ラベルを予測して得るための第1予測モジュールと、を備える。
【0007】
第4態様では、本開示は染色効果予測モデルのトレーニング装置を提供し、当該装置は、
ウェーブレット基底関数を利用して、結晶構造のポリエステル繊維製品である、サンプル巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解するための第2変換モジュールと、
前記複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部のサブ信号データに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定するための第2決定モジュールと、
第1予測モデルを利用して、前記サンプル巻糸パッケージ特徴に基づき、第2染色ラベルを予測して得るための第2予測モジュールと、
前記サンプル巻糸パッケージの実際の染色ラベルと前記第2染色ラベルとに基づき、損失関数を得るための損失決定モジュールと、
前記損失関数に基づき、前記第1予測モデルのパラメータを更新して、トレーニングされた染色効果予測モデルを得るための更新モジュールと、を備える。
【0008】
第5態様では、本開示は電子デバイスを提供し、該デバイスは、
少なくとも1つのプロセッサと、
該少なくとも1つのプロセッサと通信接続されるメモリと、を備え、
該メモリには、該少なくとも1つのプロセッサで実行可能な命令が記憶され、該命令は、該少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、本開示の実施例におけるいずれか1つの方法を実行させる。
【0009】
第6態様では、本開示の実施例におけるいずれか1つの方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ命令を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0010】
本開示により提供される技術方案の有益な効果は少なくとも以下を含む。
すなわち、染色を行うことなく各ロットの巻糸パッケージの染色等級を検出することができ、検出精度及び検出効率を向上させる。
【0011】
ここに記載された内容は、本開示の実施例のキーポイントまたは重要な特徴を記述することを意図せず、また、本開示の範囲を制限することにも用いられないことを理解すべきである。本開示の他の特徴については、下記の明細書を通して理解を促す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面において、別段説明がない限り、複数の図面を通して同一の番号は同一または類似の部品または要素を表す。これらの添付図面は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。これらの図面は、本開示により提供されるいくつかの実施形態のみを示し、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
図1】本開示の一実施例による染色効果予測方法のフローチャートである。
図2】本開示の一実施例による染色効果予測モデルのトレーニング方法のフローチャートである。
図3】本開示の一実施例による染色効果予測モデルの構成を示す概略図である。
図4】本開示の一実施例による染色効果予測装置の構成を示す概略図である。
図5】本開示の一実施例による染色効果予測モデルのトレーニング装置の構成を示す概略図である。
図6】本開示の実施例による電子デバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本開示についてさらに詳細に説明する。添付の図面において、同一の参照番号は、機能的に同一または類似の要素を表す。また、添付の図面において、実施形態の様々な態様が示されているが、別段説明がない限り、これらの添付の図面は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【0014】
さらに、本開示をよりよく説明するために、以下の具体的な実施形態にて多くの具体的な詳細を記載されている。当業者は、本開示が特定の詳細がなくても同様に実施され得ることを理解すべきである。いくつかの実施例では、本開示の主旨を不明瞭とならないように、当業者によく知られている方法、手段、構成要素、及び回路などは詳細に説明されていない。
【0015】
背景技術に記載の人工により染色等級を判定する検出方法は、化学繊維パッケージに対してサンプリング製織・染色を行う必要があるため、時間を要し、効率が低く、染色異常製品の検出漏れ等の問題が存在するほかに、人工による色判別結果の精度は検査者の経験に影響され、精度が低く、同時に、人工による色判別結果は検査者の主観に影響され、客観性が低いという問題がある。
【0016】
上記の問題及び他の潜在的問題のうちの1つまたは複数を少なくとも部分的に解決するために、本開示の実施形態は染色効果予測方法を提供し、本開示の実施形態による技術方案を利用して、染色を行うことなく各ロットの巻糸パッケージの染色等級を客観的に予測することができ、検出精度及び検出効率を向上させることができる。
【0017】
図1は本開示の一実施例により提供される染色効果予測方法である。図1に示すように、該方法は少なくとも以下のステップを含む。
【0018】
S101において、ウェーブレット基底関数を利用して、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解する。
【0019】
本開示の実施例において、ラマン分光計を用いて測定対象巻糸パッケージ上の1つまたは複数の測定点を検出することにより、各測定点のラマンスペクトルデータを得ることができる。測定点は、測定対象巻糸パッケージの円形側面上にて選択され得る。例えば、測定対象巻糸パッケージが生産ラインにて移動する間に、測定対象巻糸パッケージの上向き側の円形側面にて3~6個の測定点を選択する。あるいは、持ち上げ装置によって測定対象巻糸パッケージを持ち上げて、上下二つの円形側面にてそれぞれ2~5つの測定点を選択することで、測定結果の精度を向上させてもよい。測定点の数は限定されず、実際の状況に応じて調整することができる。
【0020】
測定対象巻糸パッケージは結晶構造のポリエステル繊維製品であってもよく、非晶質構造のポリエステル繊維製品であってもよい。ポリエステル繊維製品は、紡糸及び後処理によって得られたポリエステルフィラメントであってもよい。結晶構造とは、高分子が繊維において秩序に配列した状態をいう。結晶構造では、高分子鎖は互いに密に配置され、秩序的な格子構造を形成する。結晶構造の繊維は、一般に、高い結晶化度を有し、X線回折等の実験において鋭い回折ピークが現れることが示される。分子の秩序的な配列により、結晶構造の繊維は一般に比較的安定であり、比較的高い強度及び硬度も有する。非晶質構造とは、高分子が繊維において無秩序な状態を呈し、規則的な格子構造を形成していないことを指す。非晶質構造において、高分子鎖は比較的緩く、明確な周期的配列を有さない。非晶質構造の繊維は、一般に、比較的低い結晶化度を有する。通常、格子構造は染色時に着色しないため、結晶化度、結晶分布、結晶の配向度はいずれも染色効果と一定の相関がある。
【0021】
ウェーブレット変換は信号処理技術であり、信号を異なる周波数範囲のサブ信号に分解することができ、それにより信号の局所特徴を取得する。染色効果予測では、ウェーブレット変換を利用することで、ラマンスペクトルデータにおける周波数領域特徴を効率的に捕捉することができる。
【0022】
一例において、ウェーブレット変換のプロセスは以下を含む。収集されたラマンスペクトルデータに対して、ピーク補正、ベースライン補正、スペクトル平滑化及びノイズ低減等の操作を含む前処理を行うことで、ウェーブレット変換結果へのノイズの影響を低減させる。前処理されたラマンスペクトルデータにウェーブレット変換を適用する。適切なウェーブレット基底関数を選択して、スペクトルデータを異なるスケール及び周波数範囲のサブ信号に分解する。以下のウェーブレット基底関数のいずれかを利用することができる。
【0023】
ハール(Haar)ウェーブレット:最も簡単なウェーブレット基底関数であり、離散ウェーブレット変換に用いられ、等化された周波数領域及び時間領域局所化を有する簡単な方形波関数である。
【0024】
モレ(Morlet)ウェーブレット:連続ウェーブレット変換に用いられ、複素数ウェーブレット基底関数であり、時間-周波数領域で信号を分析することに用いられる。
【0025】
ドベシー(Daubechies)ウェーブレット:一般的に離散ウェーブレット変換に用いられ、直交ウェーブレット基底関数族であり、異なるDaubechiesウェーブレット基底関数は異なるスケール及び周波数特徴を有する。
【0026】
近似対称のシムレット(Symlet)ウェーブレット:Daubechiesウェーブレットの対称バージョンであり、離散ウェーブレット変換にもよく用いられる。
【0027】
S102において、複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部の目標サブ信号データに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0028】
ウェーブレット変換によって得られた複数のサブ信号データに対してスクリーニングを行うことで、代表的な目標サブ信号データを得る。目標サブ信号データに対して特徴抽出を行い、測定対象巻糸パッケージ特徴を得る。特徴抽出は、統計的特徴(例えば、平均値、分散、尖度など)、周波数領域特徴(例えば、エネルギー分布、スペクトル形態など)、またはその他の関連特徴を用いることが考えられる。
【0029】
S103において、染色効果予測モデルを利用して、測定対象巻糸パッケージ特徴に基づき、第1染色ラベルを予測して得る。ここで、第1染色ラベルは染色効果の等級を表す。
【0030】
染色効果予測モデルは予めトレーニングして得られた深層学習モデルであってもよく、深層学習モデルは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)またはリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いてもよい。モデルは、ラベル付けられたサンプルラマンスペクトルデータを用いてトレーニングを行う。深層学習モデルは、サンプルデータのハイレベル特徴表現を自動的に学習し、染色等級予測に適した特徴学習器を形成する。
【0031】
本開示の実施例の方案によれば、ラマンスペクトルデータを用いて生産シナリオにおけるオンライン検出を実現することができ、巻糸パッケージの染色効果をリアルタイムに検出することにより、検出結果に基づいて生産装置及び生産工程のパラメータに対してタイムリーにフィードバック・調整を行い、染色効果予測モデルによって結晶構造及び非晶質構造のポリマー繊維の特徴情報を学習することにより、モデルに二種類のポリエステル繊維の染色効果を予測することができ、ラマンスペクトルデータのウェーブレット変換に基づく特徴抽出方法は、異なるスケール及び周波数範囲の信号変化を捕捉することができ、それによって、より豊富で正確な特徴情報を効率的に抽出することができる。
【0032】
1つの可能な実装形態では、ステップS102において、複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部の目標サブ信号データに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することは、さらに以下のステップを含む。
【0033】
S1021において、予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数に基づき、複数のサブ信号データから少なくとも一部の目標サブ信号データを選択して、第1ラマンデータを得る。ここで、複数のサブ信号データは複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する。
【0034】
S1022において、第1ラマンデータに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0035】
本開示の実施例では、複数のサブ信号データに対してスクリーニングを行うことで、より代表的な目標サブ信号データを得ることができ、また、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータに対して複数種のウェーブレット基底関数を用いて複数回のウェーブレット変換を行うことで、複数組のサブ信号データを得ることができる。次に複数組のサブ信号データに対してスクリーニングを行うことで、より代表的な目標サブ信号データを得るとともに、対応する変換スケールまたは変換周波数を、予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数とする。結晶構造及び非晶質構造のポリマー繊維に対して、異なるウェーブレット基底関数を用いることができる。
【0036】
複数のサブ信号データに対してスクリーニングを行うことは以下のステップを含むことができる。
a、関心のあるスケール範囲を選択する。スペクトルデータの特性に基づき、関心のあるウェーブレットスケール範囲を選択する。異なるスケールのウェーブレット変換は異なる周波数範囲の特徴を強調するため、研究ニーズに応じて適切なスケール範囲を選択する。
b、目標周波数帯域を抽出する。ウェーブレット係数の画像において、選択されたスケール範囲に基づき、目標周波数帯域のサブ信号を抽出する。ウェーブレット係数の画像に閾値を設定することにより、低振幅のウェーブレット係数を0に設定し、高振幅のサブ信号を保留することができる。
c、逆ウェーブレット変換する。抽出された目標サブ信号に対して逆ウェーブレット変換を行い、それを元のスペクトルデータ表現に変換する。
d、可視化及び比較する。逆変換後の目標サブ信号データを可視化し、それが元のスペクトルデータとの類似性及び差異性を比較する。スクリーニングされたサブ信号データの代表性を直感的に評価するために、目標サブ信号データと元のスペクトルデータ間の比較図を描くことができる。
e、代表的サブ信号を選択する。比較結果に基づき、代表性の高い目標サブ信号を選択して最終的な結果とする。より代表的なサブ信号は、元のスペクトルデータの主要な特徴及び情報を保持するとともに、より多くのノイズ及び無関係な情報を除去することが可能であるべきである。
【0037】
上記のスクリーニングプロセスは異なる合成繊維製品の具体的な生産シナリオに応じて調整及び最適化することができる。より良好なスクリーニング効果を達成するために、異なるウェーブレットスケール範囲または閾値設定が試みられる。同時に、スペクトルデータの特徴に関する事前知識が利用可能であれば、スクリーニングプロセスに加えてもよく、サブ信号の代表性をさらに向上させる。スクリーニングプロセスにより、ウェーブレット変換で得られた複数のサブ信号からより代表的で情報が豊富な目標サブ信号データを選出することができる。
【0038】
一例において、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータに対して第1ウェーブレット基底関数を用いてウェーブレット変換を行い、第1サブ信号データA、第1サブ信号データB、第1サブ信号データCを得る。測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータに対して第2ウェーブレット基底関数を用いてウェーブレット変換を行い、第2サブ信号データA、第2サブ信号データB、第2サブ信号データCを得る。上記複数のサブ信号データは複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する。次に複数のサブ信号データに対してスクリーニングを行い、目標サブ信号データ(例えば、第2サブ信号データA、第1サブ信号データB)を得る。
【0039】
本開示の実施例の方案によれば、異なるスケール及び周波数範囲の信号変化を捕捉することができ、それによって、より豊富で正確な特徴情報が抽出され、染色効果予測がより正確で信頼性のある結果を得るのに役立つ。
【0040】
1つの可能な実装形態では、ステップS1022における、第1ラマンデータに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することは、さらに以下を含む。
【0041】
S110において、測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データと第1ラマンデータとに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0042】
本開示の実施例において、第1ラマンデータにより測定対象巻糸パッケージの一部の構造特徴を読み取ることができ、測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データを導入することにより、染色効果に影響を与える可能性があるより多くの特徴情報をさらに取得することができる。マルチモーダルデータはラマンスペクトルデータと画像データ間の相補的な情報を十分に利用することができ、染色等級予測の正確性及びロバスト性を向上させることができる。
【0043】
1つの可能な実装形態では、ステップS110における、測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データと第1ラマンデータとに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することは、さらに以下を含む。
【0044】
S1101において、染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、測定対象の巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、目標画像特徴を決定する。
【0045】
S1102において、マルチモーダルオートエンコーダを利用して、第1ラマンデータに基づき、目標スペクトル特徴を決定する。
【0046】
S1103において、染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、目標画像特徴と目標スペクトル特徴とに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0047】
本開示の実施例では、図3に示すように、特徴抽出時にオートエンコーダ(Autoencoder)を特徴抽出器として利用する。オートエンコーダは、入力データからコンパクトな表現を学習し、元のデータを再構成することができる教師なし学習方法である。マルチモーダルデータに対応するために、それぞれラマンスペクトルデータとミクロ画像データとに対して特徴抽出を行うためのマルチモーダルオートエンコーダ(Multi-modal Autoencoder)を構築することができる。オートエンコーダを利用することによって、モデルは、特徴抽出方法を手動で設計する必要なく、異なるデータに適用可能な有用な特徴表現を自動的に学習することができる。
【0048】
オートエンコーダのネットワーク構造は、複数の符号化層及び復号化層から構成され得る。スペクトルデータと画像データの空間的特徴及びコンテキスト情報をより良好に捕捉するために、畳み込みエンコーダと逆畳み込みデコーダなどの異なる符号化と復号化モジュールを利用する。さらに、符号化層間にクロスモーダル結合を加えることで、モデルがスペクトルデータと画像データの間で情報交換を行うことができ、それによって特徴学習能力をさらに高めることができる。
【0049】
特徴融合層は、2つの特徴抽出ネットワークからの特徴を融合する。これは、簡単な結合操作またはより複雑な融合層によって達成され得る。融合層は、スペクトルデータと画像データとの特徴を結合するための全結合層、加重融合、または他の融合戦略であってもよい。
【0050】
本開示の実施例の方案によれば、マルチモーダルデータ融合により、異なるデータソースの情報を総合的に利用することができ、それによって染色効果予測タスクに係る特徴がより全面的に説明され、且つ複数種のデータソースの相補性が十分に利用されるため、より正確でロバストな染色効果予測結果を提供することができる。
【0051】
1つの可能な実装形態では、ステップS1101における、染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、目標画像特徴を決定することは、さらに以下を含む。
【0052】
測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、結晶構造の構造パラメータを決定する。ここで、構造パラメータは、結晶化度及び/または配向度を含む。
【0053】
染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、ミクロ画像データと構造パラメータとに基づき、目標画像特徴を決定する。
【0054】
本開示の実施例では、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡などの高解像度顕微鏡を利用して、測定対象巻糸パッケージの測定点を撮像することができる。顕微鏡は、繊維の微細構造を観察するために高解像度画像を提供することができる。ミクロ画像データは、結晶の分布状況と配向性を直感的に観測することができ、結晶が占める面積の計算(結晶領域の画素数と総画素数との比)により、結晶化度を決定する。ポリエステル繊維において、ポリエステル分子は、結晶構造及び非晶質構造の両方を同時に存在することができる。より高い結晶化度は、繊維中により多くのポリマー分子が秩序に配置された結晶領域が形成されていることを示す。また、画像を複数の領域に分割し、領域毎に結晶化度を算出してもよい。異なる領域の結晶化度分布を分析することにより、結晶化度の周波数分布図またはヒストグラムを得ることができ、それによって結晶分布情報を得ることができる。
【0055】
配向度は、繊維内のポリマー鎖の方向の秩序度合を指す。ポリマー鎖の配列方向に対して統計を行うことにより、配向度を得る。ポリエステル繊維について、配向度の高低は繊維の延伸性能、機械的性能、熱性能、透明性等に関連し、繊維の着色効果に一定の影響を及ぼす。
【0056】
なお、結晶化度及び配向度は、紡糸、延伸及び固化などの工程に影響される。紡糸中、繊維の配向度は、紡糸速度、紡糸張力、紡糸温度などの要因によって影響され得る。延伸工程及び固化工程中の温度及び速度もまた、繊維内のポリマー鎖の秩序な配列に影響を及ぼし得る。
【0057】
本開示の実施例の方案によれば、ミクロ画像データから結晶化度や配向度情報を抽出して得ることができ、それによって、スペクトルデータと合わせて利用し、予測結果の正確性を向上させる。
【0058】
1つの可能な実装形態では、ステップS1102における、マルチモーダルオートエンコーダを利用して、第1ラマンデータに基づき、目標スペクトル特徴を決定することは、さらに以下を含む。
【0059】
染色効果予測モデルのマルチモーダルオートエンコーダを利用して、第1ラマンデータに含まれるラマンピーク強度情報、ピーク位置情報、ピーク面積情報、またはピーク形状情報のうちの少なくとも1つに基づき、目標スペクトル特徴を決定する。
【0060】
本開示の実施例では、ラマンスペクトルは、繊維材料中の結晶化度を分析することに用いられることができる。結晶領域及び非結晶領域の分子振動モードは、異なるラマン散乱信号を生成する。サンプルのラマンスペクトルを測定し、特定のラマンピーク強度またはピーク面積を解析することにより、結晶領域の割合または結晶化指数などの結晶化度の指標を算出することができる。
【0061】
ラマンスペクトルはまた、繊維材料中の配向度を解析することに用いられることができる。繊維分子鎖の配向の度合いは、そのラマンスペクトル特徴に影響を及ぼし得る。サンプルのラマンスペクトルを測定し、特定のラマンピーク強度、ピーク位置、ピーク形状等の情報を解析することにより、繊維分子鎖の配向度情報を得ることができる。
【0062】
本開示の実施例の方案によれば、ラマンスペクトルデータから結晶化度、配向度情報を抽出して得ることができ、それによって、ミクロ画像データと合わせて利用して、予測結果の正確性を向上させる。
【0063】
1つの可能な実装形態では、ステップS1103における、染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、目標画像特徴と目標スペクトル特徴とに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することは、さらに以下を含む。
目標画像特徴を、染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層の第1分岐に入力する。
目標スペクトル特徴を、特徴融合層の第2分岐に入力する。
特徴融合層のアテンションモジュールを利用して、第1分岐に対応する第1重みと第2分岐に対応する第2重みとを決定する。
目標画像特徴、第1重み、目標スペクトル特徴及び第2重みに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0064】
本開示の実施例において、図3に示すように、特徴融合層においてアテンションメカニズム(Attention Mechanism)を用いてクロスモーダル特徴融合を実現する。アテンションメカニズムは、各モダリティの特徴重要度を自動的に学習し、重要度に応じて異なるモダリティの特徴に対して重み付け融合を行うことができる。アテンションメカニズムを導入することにより、モデルは異なるスペクトルデータの特徴をより柔軟に組み合わせることができ、特徴融合の効果を向上させる。
【0065】
特徴融合層は、複数の分岐から構成されてもよく、各分岐は異なるモダリティの特徴を処理するために用いられる。一例において、第1分岐は画像データを処理するために用いられ、第2分岐はスペクトルデータを処理するために用いられる。各分岐において、アテンションモジュールによって、特徴に対して重要性評価と重み付けを行う。次に、重み付けられた特徴に対して融合を行い、最終的なマルチモーダル特徴表現を形成する。特徴融合層の設計は実際の問題及びデータセットの特徴に基づいて柔軟に調整することができ、より良好な融合効果を得る。
【0066】
染色効果予測モデルにおける後続のネットワーク構造は、特徴融合層に出力された融合特徴を受信し、該ネットワークは全結合ニューラルネットワーク(DNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)または予測タスクに適用されうる他のネットワーク構造であってもよい。予測モデルの出力は、染色等級に対応する染色ラベルである。
【0067】
以上のように、本開示の実施例の方案によれば、特徴抽出ネットワーク及び特徴融合層により、マルチモーダルデータ融合染色効果予測モデルはラマンスペクトルデータと画像データとの情報をより効率的且つ正確に利用することができ、それによって、より強い予測能力を得る。
【0068】
図2は本開示の一実施例により提供される染色効果予測モデルのトレーニング方法のフローチャートである。図2に示すように、該方法は少なくとも以下を含む。
【0069】
S201において、ウェーブレット基底関数を利用して、サンプル巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解する。
【0070】
S202において、複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部のサブ信号データに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0071】
S203において、第1予測モデルを利用して、サンプル巻糸パッケージ特徴に基づき、第2染色ラベルを予測して得る。
【0072】
S204において、サンプル巻糸パッケージの実際の染色ラベルと第2染色ラベルとに基づき、損失関数を得る。
【0073】
S205において、損失関数に基づき、第1予測モデルのパラメータを更新して、トレーニングされた染色効果予測モデルを得る。
【0074】
本開示の実施例では、第1予測モデルは、初期予測モデルであってもよく、または初期予測モデルが何回かトレーニング・更新された(すなわち、S201~S205を何回か実行)後の予測モデルであってもよい。
【0075】
一例において、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を初期予測モデルとして利用することができ、該ネットワークは、入力されたスペクトルデータに対して特徴抽出を実行するための3組の畳み込み層及びプーリング層を含んでもよい。畳み込み層は、データの局所特徴を捕捉することができ、プーリング層は、重要な特徴を保持するとともに、データの次元及び計算量を低減するために用いられる。全局特徴をさらに抽出及び学習するために、畳み込み層の後に全結合層が追加される。最後に、出力された符号化された特徴表現は、後続の特徴融合及び予測タスクに用いられる。
【0076】
モデルトレーニング時に、ラベル付けられたサンプルデータを利用する必要があり、既知の染色等級のサンプルに基づき、サンプル毎に対応する実際の染色ラベルをラベル付けて、モデルの目標変数となる。ラベル付けられたサンプルデータを利用してモデルトレーニングを行い、モデルのハイパーパラメータを調整して最適な性能を得る。
【0077】
第2染色ラベルは、染色効果の等級を表すために用いられ、第2染色ラベルに対応する染色効果の等級は、実際の染色ラベルよりも細かく分割する基準を採用し得る。関連技術において、人の肉眼で色を判定する場合には5つの等級にしか分けることができず、5つの等級の間、各半分の等級に1つの段階(5級9段階)が分けられる。肉眼の識別能力に限界があるため、実際のラベルはより細かい等級にさらに分けることは困難である。したがって、損失関数を計算する際に、細粒度の分類に適したFocal Lossなどの損失関数を利用することができ、細粒度の等級に対する識別能力を高めることができる。同時に、ラマンスペクトルデータと画像データとのマルチモーダルデータ融合を通して、マルチモーダルデータ融合は、細粒度の等級に対するモデルの理解及び区別能力を向上させることができる。それによって第2染色ラベルはより多くの染色効果の等級、例えば15つの等級に対応することができ、それによって染色効果予測モデルの予測精度を向上させる。
【0078】
モデルトレーニング段階では、予測精度及び一般化能力を測定するために、確立されたモデルを交差検証等の方法を用いて評価することができる。モデルの性能は、精度、正確さ、リコール率、F1スコアなどの評価指標を利用して評価することができる。
【0079】
ウェーブレット基底関数を利用してウェーブレット変換を行う方法及び例は、上記染色効果予測方法の実施例における対応するステップの関連説明を参照することができ、ここでは繰り返し述べない。
【0080】
1つの可能な実装形態では、ステップS202において、複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部のサブ信号データに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することは、さらに以下を含む。
予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数に基づき、複数のサブ信号データから少なくとも一部のサブ信号データを選択して、第2ラマンデータを得る。ここで、複数のサブ信号データは複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する。
第2ラマンデータに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0081】
なお、染色予測を行う時、予測モデルは結晶構造及び非晶質構造の特徴の違いにより、以下のように多少の変更を行う必要があり得る。
【0082】
特徴抽出方法の選択について、結晶構造及び非晶質構造の繊維は異なる分子配列方式及び特性を有するため、予測モデルは異なる構造タイプに応じて適切な特徴抽出方法を選択する必要があり得る。例えば、結晶構造の繊維に対しては、分子の周期的な配列をより強調する特徴抽出方法を選択することができ、非晶質構造の繊維に対しては、分子の無秩序性をより強調する特徴抽出方法を選択することができる。
【0083】
データの前処理について、異なる構造の繊維に対して、異なるデータの前処理のステップを行う必要があり得る。例えば、結晶構造の繊維に対しては、結晶化度計算を行う必要があり得るが、非晶質構造の繊維に対しては、無秩序性の情報をどのように扱うかについて考慮すべきであるかもしれない。
【0084】
モデル構造の調整について、予測モデルの構造は、異なる構造の繊維に応じて調整する必要があり得る。例えば、結晶構造及び非晶質構造の繊維に対してそれぞれ異なるサブモデルを設計し、その後これらを統合するか、またはアテンションメカニズムを用いて、異なる構造に対するモデルのアテンション度合を動的に調整することができる。
【0085】
データの強化について、モデルのロバスト性及び汎化能力を向上させるために、トレーニング段階でデータを強化することができ、モデルを異なる構造の繊維によりよく適応させることができる。例えば、データに対して回転、反転、縮小拡大等の変換を行うことができ、それによって、モデルが異なる構造下の特徴をよりよく学習できるようにすることができる。
【0086】
1つの可能な実装形態では、ステップS2021において、第2ラマンデータに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することは、以下を含む。
サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データと第2ラマンデータとに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0087】
1つの可能な実装形態では、ステップS210において、サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データと第2ラマンデータとに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することは、さらに以下を含む。
S2101において、第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用し、サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、サンプル画像特徴を決定する。
S2102において、マルチモーダルオートエンコーダを利用し、第2ラマンデータに基づき、サンプルスペクトル特徴を決定する。
S2103において、第1予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、サンプル画像特徴とサンプルスペクトル特徴とに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0088】
1つの可能な実装形態では、ステップS2101において、第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、サンプル画像特徴を決定することは、さらに以下を含む。
サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、結晶構造の構造パラメータを決定する。ここで、構造パラメータは、結晶化度及び/または配向度を含む。
第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、ミクロ画像データと構造パラメータとに基づき、サンプル画像特徴を決定する。
【0089】
本開示の実施例では、サンプル巻糸パッケージが結晶構造のポリマー繊維である場合に、ミクロ画像データにおける結晶化度、結晶の分布状況、配向度等に基づいて特徴情報とすることができる。一方で、サンプル糸巻糸パッケージが非晶質構造のポリマー繊維である場合に、ミクロ画像データにおける非晶質領域の占める割合、非晶質領域の分布状況、結晶の乱雑さ程度に基づいて特徴情報とすることができる。
【0090】
1つの可能な実装形態では、ステップS2102における、マルチモーダルオートエンコーダを利用して、第2ラマンデータに基づき、サンプルスペクトル特徴を決定することは、さらに以下を含む。
マルチモーダルオートエンコーダを利用して、第2ラマンデータに含まれるラマンピーク強度情報、ピーク位置情報、ピーク面積情報またはピーク形状情報のうちの少なくとも一つに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0091】
1つの可能な実装形態では、ステップS2103における、第1予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、サンプル画像特徴とサンプルスペクトル特徴とに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することは、さらに以下を含む。
サンプル画像特徴を、第1予測モデルに含まれる特徴融合層の第1分岐に入力する。
サンプルスペクトル特徴を、特徴融合層の第2分岐に入力する。
特徴融合層のアテンションモジュールを利用して、第1分岐に対応する第1重みと第2分岐に対応する第2重みとを決定する。
サンプル画像特徴、第1重み、サンプルスペクトル特徴及び第2重みに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定する。
【0092】
なお、染色効果予測モデルはトレーニング段階において、マルチモーダルデータを用いてモデルを事前トレーニングし、且つ特徴抽出ネットワークにおける第2ラマンデータとミクロ画像データとに対する重み値、及び複数のサブ信号データの重み値を保存する。次に、推論段階において、ラマンスペクトルデータを特徴抽出ネットワークに入力するだけで、特徴表現を得、次にこれらの特徴を染色効果予測に用いる。このように、マルチモーダルデータを利用して特徴抽出ネットワークに対して事前トレーニングを行うことができ、豊富な特徴表現を抽出することで、モデルはミクロ画像データの補助で、ラマンスペクトルデータにおける有用な情報をよりよく学習し、それによって、推論段階でより良好な予測結果を得ることができる。このように、モデルトレーニング段階では、少ないミクロ画像データのみを利用することができ、推論予測段階では、ミクロ画像データを利用せず、スペクトルデータのみを利用することで、それによって、オンライン検出を実現し、利用コストを大幅に低減させ、工業応用能力を向上させる。
【0093】
図4は本開示の一実施例により提供される染色効果予測装置である。図4に示すように、該装置は以下を備える。
第1変換モジュール401は、ウェーブレット基底関数を利用して、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解することに用いられる。
第1決定モジュール402は、複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部の目標サブ信号データに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することに用いられる。
第1予測モジュール403は、染色効果予測モデルを利用して、測定対象巻糸パッケージ特徴に基づき、第1染色ラベルを予測して得ることに用いられる。ここで、第1染色ラベルは染色効果の等級を表すために用いられる。
【0094】
1つの可能な実装形態では、第1決定モジュール402は以下を備える。
選択サブモジュールは、予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数に基づき、前記複数のサブ信号データから少なくとも一部の目標サブ信号データを選択して、第1ラマンデータを得ることに用いられる。ここで、前記複数のサブ信号データは複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する。
特徴決定サブモジュールは、前記第1ラマンデータに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することに用いられる。
1つの可能な実装形態では、特徴決定サブモジュールは、前記測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データと前記第1ラマンデータとに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することに用いられる。
【0095】
1つの可能な実装形態では、特徴決定サブモジュールは、
染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、目標画像特徴を決定することと、
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第1ラマンデータに基づき、目標スペクトル特徴を決定することと、
前記染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、前記目標画像特徴と前記目標スペクトル特徴とに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することと、に用いられる。
【0096】
1つの可能な実装形態では、特徴決定サブモジュールは、
前記測定対象巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、結晶構造の構造パラメータを決定することであって、前記構造パラメータは結晶化度及び/または配向度を含む、ことと、
染色効果予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、ミクロ画像データと前記構造パラメータとに基づき、目標画像特徴を決定することと、に用いられる。
【0097】
1つの可能な実装形態では、特徴決定サブモジュールは、
染色効果予測モデルのマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第1ラマンデータに含まれるラマンピーク強度情報、ピーク位置情報、ピーク面積情報またはピーク形状情報のうちの少なくとも一つに基づき、目標スペクトル特徴を決定することに用いられる。
【0098】
1つの可能な実装形態では、特徴決定サブモジュールは、
前記目標画像特徴を、前記染色効果予測モデルに含まれる特徴融合層の第1分岐に入力することと、
前記目標スペクトル特徴を、前記特徴融合層の第2分岐に入力することと、
前記特徴融合層のアテンションモジュールを利用して、前記第1分岐に対応する第1重みと前記第2分岐に対応する第2重みとを決定することと、
前記目標画像特徴、前記第1重み、前記目標スペクトル特徴及び前記第2重みに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することと、に用いられる。
【0099】
本開示の実施例における装置の各モジュール、サブモジュールの具体的な機能及び例示的な説明は、上記方法の実施例における対応するステップの関連説明を参照することができ、ここでは繰り返し述べない。
【0100】
図5は本開示の一実施例により提供される染色効果予測モデルのトレーニング装置である。図5に示すように、該装置は以下を備える。
第2変換モジュール501は、ウェーブレット基底関数を利用して、サンプル巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解することに用いられる。
第2決定モジュール502は、複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部のサブ信号データに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することに用いられる。
第2予測モジュール503は、第1予測モデルを利用して、サンプル巻糸パッケージ特徴に基づき、第2染色ラベルを予測して得ることに用いられる。
損失決定モジュール504は、サンプル巻糸パッケージの実際の染色ラベルと第2染色ラベルとに基づき、損失関数を得ることに用いられる。
更新モジュール505は、損失関数に基づき、第1予測モデルのパラメータを更新して、トレーニングされた染色効果予測モデルを得ることに用いられる。
【0101】
1つの可能な実装形態では、第2決定モジュール502は以下を備える。
第2選択サブモジュールは、予め設定されたスケールまたは予め設定された周波数に基づき、前記複数のサブ信号データから少なくとも一部のサブ信号データを選択して、第2ラマンデータを得ることに用いられる。ここで、前記複数のサブ信号データは複数の異なるスケールのウェーブレット係数または複数の異なる周波数のスペクトル成分に対応する。
第2特徴決定サブモジュールは、前記第2ラマンデータに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することに用いられる。
【0102】
1つの可能な実装形態では、第2特徴決定サブモジュールは、
前記サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データと前記第2ラマンデータとに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することに用いられる。
【0103】
1つの可能な実装形態では、第2特徴決定サブモジュールは、
第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、サンプル画像特徴を決定することと、
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第2ラマンデータに基づき、サンプルスペクトル特徴を決定することと、
前記第1予測モデルに含まれる特徴融合層を利用して、前記サンプル画像特徴と前記サンプルスペクトル特徴とに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することと、に用いられる。
【0104】
1つの可能な実装形態では、第2特徴決定サブモジュールは、
前記サンプル巻糸パッケージのミクロ画像データに基づき、結晶構造の構造パラメータを決定することであって、前記構造パラメータは結晶化度及び/または配向度を含む、ことと、
第1予測モデルに含まれるマルチモーダルオートエンコーダを利用して、ミクロ画像データと前記構造パラメータとに基づき、サンプル画像特徴を決定することと、に用いられる。
【0105】
1つの可能な実装形態では、第2特徴決定サブモジュールは、
前記マルチモーダルオートエンコーダを利用して、前記第2ラマンデータに含まれるラマンピーク強度情報、ピーク位置情報、ピーク面積情報またはピーク形状情報のうちの少なくとも一つに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することに用いられる。
【0106】
1つの可能な実装形態では、第2特徴決定サブモジュールは、
前記サンプル画像特徴を、前記第1予測モデルに含まれる特徴融合層の第1分岐に入力することと、
前記サンプルスペクトル特徴を、前記特徴融合層の第2分岐に入力することと、
前記特徴融合層のアテンションモジュールを利用して、前記第1分岐に対応する第1重みと前記第2分岐に対応する第2重みとを決定することと、
前記サンプル画像特徴、前記第1重み、前記サンプルスペクトル特徴及び前記第2重みに基づき、サンプル巻糸パッケージ特徴を決定することと、に用いられる。
【0107】
本開示の実施例における装置の各モジュール、サブモジュールの具体的な機能及び例示的な説明は、上記方法の実施例における対応するステップの関連説明を参照することができ、ここでは繰り返し述べない。
【0108】
図6は本開示の一実施例による電子デバイスの構造ブロック図である。図6に示すように、該電子デバイスはメモリ610とプロセッサ620とを含み、メモリ610にはプロセッサ620で実行可能なコンピュータプログラムが記憶される。メモリ610及びプロセッサ620の数は、1つまたは複数であり得る。メモリ610は、1つまたは複数のコンピュータプログラムを記憶することができ、該1つまたは複数のコンピュータプログラムは、該電子デバイスによって実行されると、該電子デバイスに上記の方法の実施例により提供される方法を実行させる。該電子デバイスはさらに以下を含むことができる。通信インターフェース630は、外部デバイスと通信し、データのインタラクション・伝送を行うことに用いられる。
【0109】
メモリ610、プロセッサ620、及び通信インターフェース630が独立して実装される場合、メモリ610、プロセッサ620、及び通信インターフェース630は、バスを介して互いに接続され、相互間の通信を行うことができる。該バスは、ISA(Industry Standard Architecture)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、またはEISA(Extended Industry Standard Architecture)バスなどであり得る。該バスは、アドレスバス、データバス、制御バスなどに分類することができる。説明を容易にするために、図6に一本の太線のみで示すが、一本のバス又は一種類のバスのみを示すものではない。
【0110】
任意選択で、具体的な実装形態では、メモリ610、プロセッサ620、及び通信インターフェース630が1つのチップ上に集積される場合、メモリ610、プロセッサ620、及び通信インターフェース630は、内部インターフェースを介して相互間の通信を行うことができる。
【0111】
上記プロセッサは中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)であってもよく、さらに他の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processing、DSP)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)又は他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタロジックデバイス、ディスクリートハードウェアコンポーネント等であってもよいことを理解されたい。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサまたは任意の従来のプロセッサなどであり得る。なお、プロセッサは、Advanced RISC Machines(ARM)アーキテクチャをサポートするプロセッサであり得る。
【0112】
さらに、選択的に、上記メモリは読み出し専用メモリ及びランダムアクセスメモリを含んでもよく、さらに不揮発性ランダムアクセスメモリを含んでもよい。該メモリは、揮発性メモリまたは不揮発性メモリのいずれかであり得るか、あるいは揮発性メモリと不揮発性メモリの両方を含み得る。ここで、不揮発性メモリは、ROM(Read-Only Memory)、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、EEPROM(Electrically EPROM)、またはフラッシュメモリを含むことができる。揮発性メモリは、外部キャッシュとして機能するランダムアクセスメモリ(RAM)を含むことができる。限定ではなく例として、多くの形態のRAMが利用可能である。例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(Static RAM、SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(Dynamic Random Access Memory、DRAM)、シンクロナスDRAM(Synchronous DRAM、SDRAM)、ダブルデータレートSDRAM(Double Data Date SDRAM、DDR SDRAM)、エンハンストSDRAM(Enhanced SDRAM、ESDRAM)、シンクリンクDRAM(Synchlink DRAM、SLDRAM)及びダイレクトRAMBUS RAM(Direct RAMBUS RAM、DR RAM)である。
【0113】
上述の実施例では、全体的または部分的に、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組合せで実装され得る。ソフトウェアで実装される場合に、全体または一部はコンピュータプログラム製品の形態で実装され得る。コンピュータプログラム製品は、1つまたは複数のコンピュータ命令を含む。コンピュータ命令がロードされ、コンピュータ上で実行されると、本開示の実施例によるプロセスまたは機能が全体的または部分的に生成される。前記コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、コンピュータネットワーク、または他のプログラム可能な装置であってもよい。前記コンピュータ命令は、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、または1つのコンピュータ可読記憶媒体から別のコンピュータ可読記憶媒体に送信されてもよく、例えば、前記コンピュータ命令は、有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、デジタル加入者線(DSL))または無線(例えば、赤外線、Bluetooth(登録商標)、マイクロ波等)を介して、1つのウェブサイトサイト、コンピュータ、サーバ、またはデータセンタから別のウェブサイトサイト、コンピュータ、サーバ、またはデータセンタに送信されてもよい。前記コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体、または1つもしくは複数の利用可能な媒体と統合されたサーバ、データセンタなどを含むデータ記憶デバイスであり得る。前記使用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、磁気テープ)、光媒体(例えば、デジタル多用途ディスク(DVD))、または半導体媒体(例えば、ソリッドステートディスク(SSD))などであり得る。なお、本開示で言及されるコンピュータ可読記憶媒体は、不揮発性記憶媒体、言い換えれば、非一時的記憶媒体であり得る。
【0114】
当業者は上記実施例を実現する全部又は一部のステップがハードウェアによって実装されてもよく、プログラムによって関連するハードウェアに命令して実装されてもよく、前記プログラムはコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、上記記憶媒体は読み出し専用メモリ、磁気ディスク又は光ディスク等であってもよいことを理解することができる。
【0115】
本開示の実施例の説明において、参照用語"一つの実施例"、"いくつかの実施例"、"例"、"具体的な例"、又は"いくつかの例"等の説明は該実施例又は例に関連して説明された具体的な特徴、構造、材料又は特徴が本開示の少なくとも一つの実施例又は例に含まれることを意味する。且つ、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特徴はいずれか一つ又は複数の実施例又は例において適切な方式で組み合わせることができる。さらに、当業者は、本明細書に記載された異なる実施形態または例及び異なる実施形態または例の特徴を、互いに矛盾しない範囲で組み合わせてもよい。
【0116】
本開示の実施例の説明において、「/」は、別段の説明がない限り、またはという意味を表し、例えば、A/Bは、AまたはBのいずれかを表し得る。本明細書における「及び/又は」は関連オブジェクトの関連関係を説明することに過ぎず、三種類の関係が存在してもよいことを示し、例えば、A及び/又はBは、以下を示すことができる。Aが単独で存在し、A及びBが同時に存在し、Bが単独で存在するという三種類の状況である。
【0117】
本開示の実施例の説明では、「第1」及び「第2」という用語は、説明の目的のみのために使用され、相対的な重要性を示すまたは暗示するものと解釈されるべきではなく、示される技術的特徴の数を暗示するものと解釈されるべきではない。したがって、「第1」及び「第2」として定義される特徴は、明示的または暗黙的に、そのような特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。本開示の実施例の説明において、「複数」とは、別段の説明がない限り、2つ以上を意味する。
【0118】
以上は本開示の例示的な実施例に過ぎず、本開示を限定するものではなく、本開示の精神及び原則の範囲内で、行われた任意の修正、同等置換、改良等は、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。
【要約】
【課題】本開示は染色効果予測方法、染色効果予測モデルのトレーニング方法、装置、電子デバイス、記憶媒体、及びプログラムを提供する。
【解決手段】本開示はコンピュータの分野に関し、特に、人工知能技術、ニューラルネットワークモデル技術、及びモデルトレーニング技術に関する。該方法は、ウェーブレット基底関数を利用して、測定対象巻糸パッケージのラマンスペクトルデータを複数のサブ信号データに分解することと、前記複数のサブ信号データのうちの少なくとも一部の目標サブ信号データに基づき、測定対象巻糸パッケージ特徴を決定することと、染色効果予測モデルを利用して、前記測定対象巻糸パッケージ特徴に基づき、染色効果の等級を表すための第1染色ラベルを予測して得ることと、を含む。本開示の方案によれば、染色を行うことなく各ロットの巻糸パッケージの染色等級を検出することができ、検出精度及び検出効率を向上させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6