(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】低ヘキサン抽出物を有するエチレン系ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 10/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
C08F10/02
(21)【出願番号】P 2017565050
(86)(22)【出願日】2016-06-23
(86)【国際出願番号】 US2016038900
(87)【国際公開番号】W WO2016210055
(87)【国際公開日】2016-12-29
【審査請求日】2019-06-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2015-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ヒンリクス
(72)【発明者】
【氏名】コーネリス・エフ・ジェイ・デン・ドールダー
(72)【発明者】
【氏名】ニ・ティー・ワイ・ダン
(72)【発明者】
【氏名】オットー・ジェイ・バービー
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】海老原 えい子
【審判官】藤井 勲
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 10/00-10/14,110/00-110/14,210/00-210/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状反応器システムにおけるフリーラジカル高圧重合プロセスから形成されるエチレンホモポリマーを生成するためのプロセスであって、
前記プロセスが、第1の管状反応ゾーン1及び最終管状反応ゾーンiを含み、iが(≧)3以上である、反応構成で、かつ高圧重合条件下で、エチレン及び少なくとも1つのフリーラジカルを含む反応混合物を重合させることを含み、「前記重合の入口圧力」が、[1800バール+(100バール×反応ゾーン数)]以上であり、前記第1の反応ゾーン1が、≧320℃のピーク温度を有し、前記最終反応ゾーンiが、≦290℃のピーク温度を有し、
前記ホモポリマーが、以下の特性:
(A)0.9190~0.9250g/
ccの密度、
(B)前記ポリマーの総重量に基づき、2.6重量%以下であるヘキサン抽出物レベル、
(C)以下の方程式:
G’≧D+E[log(I
2)](式中、D=150Pa、及びE=-60Pa/[log(dg/分)])を満たすG’(G”=500Pa、170℃における)(
前記G’は貯蔵弾性率であり、前記G’ ’ は損失弾性率である)、ならびに
(D)1.0~20dg/分のメルトインデックス(I
2)を含み、
前記I
2はASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定される、プロセス。
【請求項2】
前記ホモポリマーが、
以下:
(1)前記エチレン
ホモポリマーの総重量に基づき、(A+(B*密度(g/cc))+(C*log(MI)dg/分))(式中、A=250.5重量%、B=-270重量%/(g/cc)、C=0.25重量%/[log(dg/分)]、MIはASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定されるメルトインデックス)、または
(2)前記ポリマーの総重量に基づき、2.0重量%、のうちの低い方よりも大きい、
ヘキサン抽出物レベルを有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ポリマーが、1000個の総炭素当たり0.15のビニル基以下のビニル含有量を有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
iが、≧4である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
Z1の移動活性を有する第1のCTA(連鎖移動剤)系が、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系が、管状反応ゾーンiに供給され、Z1/Zi比が、0.7以上であり、ここで、
【数9】
であり、j≧1であり、n
comp,iは、反応器ゾーンi内のCTAの総数であり、
Csは連鎖移動活性定数であり、
【数10】
は、「i番目の反応器ゾーンに注入されるj番目のCTAのモル量」であり、
【数11】
は、「i番目の反応器ゾーンに注入されるエチレンのモル量」である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
Z1の移動活性を有する第1のCTA系が、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系が、管状反応ゾーンiに供給され、前記Z1/Zi比が、1.3以下であり、
【数12】
であり、j≧1であり、n
comp,iは、反応器ゾーンi内のCTAの総数であり、
Csは連鎖移動活性定数であり、
【数13】
は、「i番目の反応器ゾーンに注入されるj番目のCTAのモル量」であり、
【数14】
は、「i番目の反応器ゾーンに注入されるエチレンのモル量」である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
Z1の移動活性を有する第1のCTA系が、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系が、管状反応ゾーンiに供給され、前記Z1/Zi比が、(0.8-0.2*log(Cs))以下であり、式中、Csが、0.0001~10の範囲内であり、ここで、
【数15】
であり、j≧1であり、n
comp,iは、反応器ゾーンi内のCTAの総数であり、
Csは連鎖移動活性定数(であり、
【数16】
は、「i番目の反応器ゾーンに注入されるj番目のCTAのモル量」であり、
【数17】
は、「i番目の反応器ゾーンに注入されるエチレンのモル量」である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、参照により本明細書に組み込まれる、2015年6月25日出願の米国仮出願第62/184,344号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
紙、板、アルミニウムなどの上の押し出し被覆のための樹脂は、広い分子量分布及び低抽出物を有して設計される。押し出し被覆用途において、ポリマーは、典型的には280℃超及び350℃未満の高温条件で加工される。非常に高い分子量分画を有する広い分子量分布(MWD)の樹脂が、被覆中の良好な加工可能性(ネックイン及びドローダウンのバランス)のために使用される。望ましくない味及び臭気を低減するために、かつ樹脂の加工中、特に高い被覆温度中の煙形成を低減するためには、低抽出物であることが必要とされる。典型的には、広いMWDを有するLDPE(低密度ポリエチレン)樹脂は、オートクレーブ反応器、またはオートクレーブ及び管反応器の組み合わせを使用して作製される。広いMWD樹脂は、長鎖分岐を促進することによって、かつ分子がより短い(低分子量)またはより長い(高分子量)成長経路を経験する固有の滞留時間分布を通じて、作製され得る。LDPE押し出し被覆のための広いMWDオートクレーブ樹脂は、2つの生成物密度領域、すなわち、0.915~0.919g/cc及び0.919~0.924g/ccに顕著に集中する。本発明は、0.919~0.924g/ccのより高い密度領域のために設計された、改善された広いMWD管状反応器生成物を記載する。オートクレーブ及び管状反応器システムは、滞留時間分布が異なり、これは、管状反応器でより均一であり、オートクレーブ反応器ゾーンでは分散している。
【0003】
均一な滞留時間は、より狭いMWDをもたらし、非常に広いMWDは、例えば、WO2013/078018に記載される極端に区別された重合条件の適用、及び/または例えば、US7,820,776に記載される分岐剤/架橋剤の適用によって、管状反応器においてのみ達成され得る。極端なプロセス条件及び/または高価な分岐剤/架橋剤の使用は、押し出し被覆用途に好適な高溶融強度の管状低密度ポリエチレンをもたらすことができるが、抽出物の上昇を伴う。ポリマー中の望ましくないゲルは、分岐剤または架橋剤の使用に起因し得る。冷却能力の差により、変換レベルは、典型的には、20%未満(オートクレーブ)から30%超(管状)に及ぶ。この変換レベルの大きな差は、投資費用及び作業費、ならびにポリマー出力及びポリマー単位当たりの(エチレンを圧縮するための)電力消費に大きな影響を与える。米国公開第2008/0242809号は、エチレンコポリマーを調製するためのプロセスを開示し、重合は、290℃~350℃のピーク温度で管状反応器において行われる。コモノマーは、より高い官能性の(メタ)アクリレートである。他のポリマー及びプロセスは、EP2681250A1、WO2007/110127、WO2014/003837、WO2013/078018、WO2013/078224、WO2013/178241、WO2013/178242、WO2013/149698、WO2013/132011、及びWO2013/083285に開示されている。広いMWD、高いG’値を有する≧0.919g/ccの密度で、かつ高いエチレン変換レベルでの管状反応器内の低減された抽出物レベルで作製されるポリエチレンの必要性がある。さらに、そのようなエチレンホモポリマーは、改質剤または分岐剤と関連する追加の費用を必要とすることなく、作製の費用効率が高くあるべきである。これらの必要性が、以下の発明によって満たされた。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、管状反応器システムにおけるフリーラジカル高圧重合プロセスから形成されるエチレンホモポリマーを提供し、該ホモポリマーは、以下の特性:
(A)0.9190~0.9250g/cc未満の密度、
(B)ポリマーの総重量に基づき、2.6重量%以下であるヘキサン抽出物レベル、
(C)以下の方程式:
G’≧D+E[log(I2)](式中、D=150Pa、及びE=-60Pa/[log(dg/分)])を満たすG’(G”=500Pa、170℃における)、ならびに
(D)1.0~20dg/分のメルトインデックス(I2)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明実施例1~5に関するフローチャートである。
【
図2】本発明実施例6~13及び比較例13に関するフローチャートである。
【
図3】比較例6、10、及び11に関するフローチャートである。
【
図4】比較例7及び12に関するフローチャートである。
【
図5】比較例3~5、8、及び9に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
エチレンホモポリマーは、広いMWD、高いG’値を有し、かつ高いエチレン変換レベルでの管状反応器内の低減された抽出物レベルで、≧0.9190g/ccの密度を有し、かつ改質剤または分岐剤と関連する追加の費用を必要とすることなく、作製の費用効率が高いことが発見されている。これらの本発明のエチレンホモポリマーは、上に記載される。本発明のホモポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0007】
一実施形態において、エチレン系ホモポリマーは、1.0~18dg/分、または1.5~15dg/分、または2~12dg/分のメルトインデックス(I2)を有する。一実施形態において、エチレン系ポリマーは、≧0.9190グラム毎立方センチメートル(g/ccまたはg/cm3)の密度を有する。一実施形態において、エチレン系ポリマーは、≦0.9245、または≦0.9240、または≦0.9235、または≦0.9230g/ccの密度を有する。一実施形態において、エチレン系ポリマーは、0.9190~0.9240g/cc、または0.9195~0.9235、または0.9200~0.9230g/ccの密度を有する。
【0008】
一実施形態において、エチレンホモポリマーは、以下:
(1)エチレン系ポリマーの総重量に基づき、(A+(B*密度(g/cc))+(C*log(MI)dg/分))(式中、A=250.5重量%、B=-270重量%/(g/cc)、C=0.25重量%/[log(dg/分)])、または
(2)ポリマーの総重量に基づき、2.0重量%、のうちの低い方よりも大きい、ヘキサン抽出物レベルを有する。
【0009】
一実施形態において、エチレンホモポリマーは、1000個の総炭素当たり0.15のビニル基以下のビニル含有量を有する。
【0010】
本発明はまた、本明細書に記載される本発明のエチレンホモポリマーを含む組成物も提供する。一実施形態において、組成物は、本発明のエチレン系ポリマーとは、1つ以上の特性、例えば、密度、メルトインデックス(I2)、重量平均分子量(Mw(conv))、数平均分子量(Mn(conv))、及び/またはMw(conv)/Mn(conv)が異なる別のエチレン系ポリマーをさらに含む。
【0011】
本発明の組成物は、安定剤(例えば、抗酸化剤)、可塑剤、静電気防止剤、顔料、染料、核形成剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、加工助剤、煙抑制剤、粘度調整剤、及びブロッキング防止剤などの1つ以上の添加剤を含んでもよい。ポリマー組成物は、例えば、組成物の重量に基づき、10重量%未満の組み合わされた重量の1つ以上の添加剤を含んでもよい。
【0012】
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む、物品を提供する。一実施形態において、物品は、フィルムまたは被覆、例えば、押し出し被覆である。一実施形態において、物品は、フィルムである。別の実施形態において、物品は、被覆である。一実施形態において、物品は、ケーブルまたはワイヤ用の被覆である。一実施形態において、物品は、被覆シートであり、さらなる実施形態において、シートは、金属、紙、もしくは別のポリマー基材、またはこれらの組み合わせから選択される。さらなる実施形態において、被覆シートは、ワイヤまたはケーブル構成で使用される。別の実施形態において、被覆シートは、包装用途で使用される。別の実施形態において、被覆シートは、食品包装用途で使用され、さらに、被覆シートは、クックイン食品包装用途で使用される。本発明のエチレン系ポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。本発明の組成物は、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。本発明の物品は、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0013】
本発明は、前述の請求項のうちのいずれか1項に記載のエチレンホモポリマーを生成するためのプロセスを提供し、プロセスは、第1の管状反応ゾーン1及び最終管状反応ゾーンiを含み、iが(≧)3以上である、反応構成で、かつ高圧重合条件(≧1000バール(100MPa))下で、エチレン及び少なくとも1つのフリーラジカルを含む反応混合物を重合させることを含み、「重合の入口圧力」は、[1800バール+(100バール×反応ゾーン数)]以上である。さらなる実施形態において、x≧3、または≧4、または≧5、または≧6である。
【0014】
一実施形態において、第1の管状反応ゾーン1は、≧320℃または≧330℃のピーク温度を有し、最終管状反応ゾーンiは、≦290℃、または≧300℃、または≧310℃のピーク温度を有する。
【0015】
一実施形態において、反応器構成は、少なくとも4つの反応ゾーン(iは≧4)を含み、さらに、これらのゾーンは、1つの管状反応器内に位置することができるか、または2つ以上の管状反応器に広がることができる。典型的には、各管状反応器は、複数の反応ゾーンを含む。
【0016】
一実施形態において、重合は、少なくとも1つの管状反応器において行われる。一実施形態において、重合は、複数のまたは少なくとも2つの反応ゾーンを有する1つの反応器において行われる。一実施形態において、重合は、少なくとも4つの反応ゾーン、反応ゾーン1及び反応ゾーンi(i≧3)を含む反応器構成において行われ、反応ゾーンiは、反応ゾーン1から下流にある。一実施形態において、iは、3~5または3~4である。一実施形態において、i=3である。一実施形態において、反応ゾーンの総数=iである。さらなる実施形態において、iは、3~20、さらに3~10、及びさらに3~6である。さらなる実施形態において、iは、3~20、さらに3~10、及びさらに3~6である。
【0017】
典型的には、管状反応器は、反応器として1つ以上の反応ゾーンを有するジャケット管である。好適であるが限定的ではない反応器の長さは、100~3600メートル(m)または1000~2800mであってもよい。
【0018】
多くの場合、CTA系は、分子量を制御するために使用される。CTA系は、1つ以上のCTAを含む。CTAは、典型的には、以下の基のうちの少なくとも1つを含む:アルカン、アルデヒド、ケトン、アルコール、エーテル、エステル、メルカプタン、またはホスフィン、さらに、アルカン、ケトン、アルデヒド、アルコール、またはエーテル。CTAとしては、イソブタン、n-ブタン、メチルエチルケトン、アセトン、エチルアセテート、プロピオンアルデヒド、ISOPAR-C、-E、及び-H(ExxonMobil Chemical Co.)、及びイソプロパノール、さらにプロピオンアルデヒド、ブタン、及びイソブタンが挙げられるが、これらに限定されない。CTAは、好ましくは、プロピレンまたは別のアルケンではない。一実施形態において、使用されるCTAの量は、総反応混合物の重量に基づき0.01~10重量パーセントである。一実施形態において、適用されたCTA系の全Cs値は、130℃及び1360の気圧で、Mortimerらによって測定された通り、≦0.020(例えば、プロピレン、アセトン)、または≦0.010(すなわち、シクロヘキサン)、または≦0.008(例えば、イソブタン、エタノール)、または≦0.006(例えば、n-ブタン、エチルアセテート)である。
【0019】
一実施形態において、Z1の移動活性を有する第1のCTA系は、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系は、管状反応ゾーンiに供給され、Z1/Zi比は、≧0.7または≧0.8である。
【0020】
一実施形態において、Z1の移動活性を有する第1のCTA系は、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系は、管状反応ゾーンiに供給され、Z1/Zi比は、≦1.3または≦1.2である。
【0021】
一実施形態において、Z1の移動活性を有する第1のCTA系は、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系は、管状反応ゾーンiに供給され、Z1/Zi比は、(0.8-0.2*log(Cs))以下であり、式中、Csは、0.0001~10、または0.0010~8.0、または0.0050~6.0、または0.010~1.00、または0.010~0.500の範囲内である。
【0022】
一実施形態において、Z1/Zi比(i≧3であり、iは、最終反応ゾーンである)は、≦1.3、または≦1.2、または≦1.1である。一実施形態において、Z1/Zi比(i≧3であり、iは、最終反応ゾーンである)は、≧0.1、または≧0.2、または≧0.3である。一実施形態において、Z1/Ziは、≦(0.8-0.2*log(Cs))であり、式中、Csは、0.0001~10の範囲内である。一実施形態において、Z1/Ziは、≦(0.75-0.2*log(Cs))であり、式中、Csは、0.0001~10の範囲内である。一実施形態において、Z1/Ziは、≦(0.7-0.2*log(Cs))であり、式中、Csは、0.0001~10の範囲内である。一実施形態において、プロセスは、エチレンが反応器通過毎に部分的にのみ変換または消費されるため、エチレン効率を改善するための高圧及び低圧再利用ループを含む。典型的には、反応器通過毎の変換レベルは、20%~40%である。一実施形態において、重合は、マルチゾーン反応器、ならびにエチレン対CTA比及びしたがってポリマー特性を制御するためにエチレンを供給する交互の位置を開示する、WO2013/059042に記載される管状反応器において行われてもよい。エチレンは、所望のエチレン対CTA比を達成するために、複数の位置で同時に添加されてもよい。同様に、WO2013/078018に記載されるポリマー特性を制御するために、CTA添加点の追加は、慎重に選択され得る。CTAは、所望のCTA対エチレン比を達成するために、複数の位置で同時に添加されてもよい。一実施形態において、連鎖移動剤は、第1の、または第2の、または第1及び第2の反応ゾーンに添加される。
【0023】
一実施形態において、第1の反応ゾーンに供給されるエチレンは、重合に供給される全エチレンの少なくとも10重量%である。一実施形態において、第1の反応ゾーンに供給されるエチレンは、重合に供給される全エチレンの10~100、または20~80、または25~75、または30~70、または40~60重量%である。
【0024】
本明細書で使用される場合、フリーラジカル開始剤は、化学及び/または放射手段によって生成されるフリーラジカルを指す。例示的なフリーラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、例えば、環状ペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、及びペルオキシケータルが挙げられる。好ましい開始剤は、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルオキシアセテート、及びt-ブチルペルオキシ-2-ヘキサノエート、またはこれらの混合物である。一実施形態において、これらの有機ペルオキシド開始剤は、重合可能モノマーの重量に基づき0.001~0.2重量%の量で使用される。一実施形態において、開始剤は、少なくとも1つの反応ゾーンに添加され、開始剤は、1秒で>255℃、または>260℃の半減期温度を有する。さらなる実施形態において、そのような開始剤は、320℃~350℃のピーク重合温度で使用される。一実施形態において、開始剤は、両方ともAkzo Nobelから入手可能なTRIGONOX(商標)301(3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン)及びTRIGONOX(商標)311(3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン)、ならびにUnited InitiatorsからのHMCH-4-AL(3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトルオキソナン)などの、環状構造で組み込まれる少なくとも1つのペルオキシド基を含む。また、WO02/14379及びWO01/68723を参照されたい。
【0025】
一実施形態において、本明細書に記載される重合プロセスに対して、各反応ゾーンの最大またはピーク温度は、150℃~360℃、または170℃~350℃、または200℃~340℃である。一実施形態において、第1の反応ゾーン内のピーク温度は、各後続または連続の反応ゾーン内のピーク温度よりも高い。一実施形態において、第1の反応ゾーン内のピーク温度は、≧300℃、または≧310℃、または≧320℃である。一実施形態において、第1の反応ゾーン内のピーク温度は、各連続の反応ゾーンのピーク温度よりも少なくとも10℃、または20℃、または30℃高い。一実施形態において、第1の反応ゾーンの温度は、≧320℃、または≧330℃、または≧340℃である。一実施形態において、最終反応ゾーンの温度は、≦290℃、または≦280℃、または≦270℃である。一実施形態において、第1の反応ゾーンと最終反応ゾーンとの間の重合温度の差は、≧30℃、または≧40℃、または≧50℃である。一実施形態において、反応構成の長さにわたる2つの連続的な反応ゾーン間の重合温度の差、例えば、第1の反応ゾーンと第2の反応ゾーン、または第2の反応ゾーンと第3の反応ゾーンとの間の差などは、≧10℃、または≧20℃、または≧30℃である。一実施形態において、反応構成の長さにわたる各連続的な反応ゾーンの間の重合温度の差、例えば、第1の反応ゾーンと第2の反応ゾーン、及び第2の反応ゾーンと第3の反応ゾーンとの間の差などは、≧10℃、または≧20℃、または≧30℃である。一実施形態において、最終またはn番目の反応ゾーン(例えば、290℃)に対する第1の反応ゾーンの重合温度(例えば、320℃)の比は、≧1.1、または≧1.2、または≧1.3である。一実施形態において、最終反応ゾーンのピーク温度は、各前の反応ゾーンのピーク温度未満である。
【0026】
一実施形態において、反応器の第1の入口において測定される重合圧力は、1000バール~3600バール、または1200バール~3500バール、または1500~3400バール、または2000~3200バールである。
【0027】
本発明の物品は、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0028】
定義
反対に、文脈から黙示的に、または当該技術分野において慣習的に規定されない限り、全ての部及びパーセントは、重量に基づき、全ての試験方法は、本願の出願日の時点で最新のものである。本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、材料の混合物を含み、それは、組成物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物を含む。使用される場合、「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーの混合物を指す。ブレンドは、混和性であってもよく、またはなくてもよい(分子レベルで分相していない)。ブレンドは、分相していてもよく、またはしていなくてもよい。
【0029】
「ポリマー」という用語は、同じ種類または異なる種類にかかわらず、モノマーを重合させることによって調製される化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、以下で定義されるホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指す)、及び「インターポリマー」という用語を包含する。微量の不純物は、ポリマーに組み込まれてもよく、かつ/またはポリマー内にあってもよい。微量の不純物は、連鎖移動活性を示す開始剤残基、及び例えば、潤滑油、溶媒などの他の成分を含むことができる。「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。インターポリマーという総称は、コポリマー(2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指す)、及び3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0030】
「エチレン系ポリマー」という用語は、ポリマーの重量に基づき過半量の重合エチレン、及び任意に少なくとも1つのコモノマーを含む、ポリマーを指す。「エチレン系インターポリマー」という用語は、インターポリマーの重量に基づき過半量の重合エチレン、及び少なくとも1つのコモノマーを含む、インターポリマーを指す。「エチレン系コポリマー」という用語は、インターポリマーの重量に基づき過半量の重合エチレン、及び唯一のモノマーの種類としてコモノマーを含む、ポリマーを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「フリーラジカル高圧重合プロセス」という用語は、少なくとも1000バール(100MPa)の高圧で、かつ少なくとも1つのフリーラジカルの存在下で実施される重合プロセスを指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「反応器システム」という用語は、ポリマーを重合させ、かつ単離するために使用される、デバイスを指す。そのようなデバイスとしては、1つ以上の反応器、1つ以上の供給流、反応器予熱器(複数可)、モノマー反応器冷却デバイス(複数可)、二次圧縮機(複数可)(もしくはハイパー圧縮機(複数可))、一次圧縮機(複数可)、及び/またはブースタ圧縮機(複数可)が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「管状反応器システム」という用語は、反応器システムの反応器(複数可)として1つ以上の管状反応器(複数可)のみを備え、かつオートクレーブ反応器を除外する、反応器システムを指す。2つ以上の管状反応器が使用されるとき、それらは、好ましくは、連続構成で使用される。本明細書で使用される場合、「反応器構成」という用語は、ポリマーを重合させるために使用される、1つ以上の反応器、及び任意に、1つ以上の反応器予熱器を指す。反応器は、ジャケット付きであってもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、「入口圧力」、または「反応器入口圧力」、または「重合の入口圧力」、または「管状反応器システムの入口圧力」という用語、または同様の用語は、第1の反応ゾーンの入口における圧力レベルを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「反応ゾーン」という用語は、フリーラジカル、またはフリーラジカルに解離し、かつ/もしくはそれを生成する成分の添加によって、重合反応が開始または再開される、反応器ゾーンを指す。典型的には、反応媒体は、反応器周囲のジャケットを通って流動する伝熱媒体によって加熱及び/または冷却される。反応ゾーンは、典型的には、補給及び/もしくは再利用エチレン、及び/あるいはフリーラジカル、またはフリーラジカルに解離し、かつ/もしくはそれを生成する成分の添加で始まる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「第1の反応ゾーン」という用語は、ラジカル、及び/またはフリーラジカルに解離し、かつ/もしくはそれを生成する成分の添加によって、重合が開始される、第1の反応器ゾーンを指す。第1の反応ゾーンは、ラジカル、及び/またはラジカルに解離し、かつ/もしくはそれを生成する成分、ならびに任意に、補給、再利用エチレン、CTA(複数可)、溶媒(複数可)、及び/またはコモノマー(複数可)の新しい供給物がある点で終端する。本明細書で使用される場合、「後続の反応ゾーン」または「連続の反応ゾーン」という用語は、前の反応器ゾーンからのエチレン及びポリマーを受容し、ラジカル、またはフリーラジカルに解離し、かつ/もしくはそれを生成する成分が後続(または連続)の反応器ゾーンの入口において添加される、反応器ゾーンを指す。後続の反応ゾーンは、補給及び/もしくは再利用エチレン、ラジカル、ならびに/またはフリーラジカルに解離し、かつ/もしくはそれを生成する成分の新しい供給物がある点で終端するが、n番目の反応ゾーンは、反応器システムの圧力制御デバイスの位置で終端する。後続(または連続)の反応ゾーンの数は、(n-1)であり、式中、nは、反応ゾーンの総数である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ピーク温度」という用語、または「反応ゾーン内のピーク温度」という句、または同様の句は、反応ゾーン内で測定される最高温度を指す。オートクレーブ反応ゾーン内(典型的には、最大ゾーン温度として記述される)、及び管状反応ゾーン内(典型的には、ピーク温度として記述される)。
【0037】
ブースタ圧縮機(ブースタ)は、以下:a)LPS(低圧分離器)からの低圧リサイクル、及びb)任意に、再利用圧縮機パッキン漏れを各々、一次圧縮機の入り口側において必要とされる圧力レベルまで圧縮するデバイスである。ブースタは、単一または複数の圧縮機フレームからなることができ、潜在的に、一次圧縮機フレーム(複数可)と組み合わされ得る。一次圧縮機(一次)は、以下:a)入ってくるエチレン、及び/またはb)ブースタからの低圧リサイクル、及び/またはc)再利用圧縮機パッキン漏れを各々、ハイパー圧縮機の入り口側に供給するために必要とされる圧力レベルまで圧縮するデバイスである。一次は、単一または複数の圧縮機フレームからなることができ、潜在的に、ブースタ圧縮機フレーム(複数可)と組み合わされ得る。ハイパー圧縮機(ハイパー)または二次圧縮機は、以下:a)HPR(高圧リサイクル)からのエチレン系成分、及び/またはb)一次からのエチレン系成分を各々、その入口圧力において反応器に供給するために必要とされる圧力レベルまで圧縮するデバイスである。この圧縮は、1つまたは複数の圧縮段階で行われ得る。ハイパーは、プランジャ往復動式圧縮機を含み、単一または複数の圧縮機フレーム(複数可)からなることができる。これらのデバイスに対して、各圧縮は、中間冷却と組み合わされ得る。
【0038】
エチレン系供給成分に関連して本明細書で使用される場合、「補給」という用語(すなわち、「補給エチレンまたは補給エチレン供給物」、「補給CTAまたは補給CTA供給物」)は、外部源(複数可)から提供され、再利用源(複数可)から内部で提供されない、反応物質を指す。例えば、一実施形態において、補給エチレンは、重合によって消費された、かつ/または例えば、プロセスからのエチレンパージを通じて失われたエチレン、及びポリマー中の残渣エチレンを補うために必要とされる「補給エチレン」として使用される。
【0039】
反応物質に関連して本明細書で使用される場合、「再利用」という用語(すなわち、「再利用エチレンまたは再利用エチレン供給物」、「再利用CTAまたは再利用CTA供給物」)は、高圧分離器(複数可)及び/または低圧分離器(複数可)内でポリマーから分離され、反応器へと戻される/圧縮される、未反応の反応物質を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「供給物」、「供給フロー」、または「供給流」という用語は、入口において反応ゾーンに添加される補給及び/または再利用成分(例えば、エチレン、開始剤、CTA、及び/または溶媒)を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「連鎖移動定数」及び「連鎖移動係数(Cs値)」という用語は、「連鎖移動速度」と「エチレン伝播速度」との間の比を指す。実験セクションに提供されるMortimerの参考文献を参照されたい。「連鎖移動活性」、「移動活性」という用語、または同様の用語は、その連鎖移動定数(Cs)を乗じた各適用されたCTA成分のモル濃度の合計を指す。連鎖移動定数(Cs)は、参照圧力(1360atm)及び参照温度(130℃)での反応速度の比Ks/Kpである。
【0042】
「備えること」、「含むこと」、「有すること」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を、それが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、除外するよう意図していない。いかなる疑いも回避するために、「備えること」という用語の使用によって特許請求される全ての組成物は、反対の記述がない限り、ポリマーかまたはそうでないかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対称的に、「から本質的になること」という用語は、実施可能性にとって必須ではないものを除いて、任意の他の成分、ステップ、または手順を、任意の連続的な列挙の範囲から除外する。「からなること」という用語は、具体的に記述または列挙されない任意の成分、ステップ、または手順を除外する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「レオロジー改質剤」または「レオロジー調節剤」という用語は、ポリマーに組み込まれたときに、ポリマーのレオロジーを変化させること、例えば、G’を増加させることが可能である成分を指す。「分岐剤」という用語は、ポリマー中でH分岐またはT分岐を形成することが可能な成分を指し、それにより、ポリマーのレオロジーは改質され、例えば、G’が増加される。
【0044】
試験方法
密度-密度測定のための試料は、ASTM D1928に従って調製される。試料は、190℃及び30,000psiで3分間、次いで、(21℃)及び207MPaで1分間プレスされる。測定は、ASTM D792、方法Bを使用して試料プレスの1時間以内に行われる。メルトインデックス-メルトインデックスまたはI2を、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定し、10分当たりに溶出されるグラムで報告した。
【0045】
ヘキサン抽出物のための標準的な方法-ポリマーペレット(重合ペレット化プロセスから、さらなる改質なし。1プレス当たり約2.2グラム)は、3.0~4.0ミルの厚さでCarver Pressにおいてプレスされる。ペレットは、40,000lbfで3分間、190℃においてプレスされる。操作者の手からの残留油によるフィルムの汚染を防止するために、非残留物手袋(PIP*CleanTeam*CottonLisle Inspection Gloves、部品番号:97-501)が着用される。フィルムは、「1インチ×1インチ」の正方形に切り分けられ、重さが量られる(2.5±0.05g)。フィルムは、加熱した水槽内で、49.5±0.5℃において、約1000mLのヘキサンを含有するヘキサン容器内で、2時間抽出される。使用されるヘキサンは、異性体「ヘキサン」混合物(例えば、Hexanes(Optima)、Fisher Chemical、HPLC用の高純度移動相及び/またはGC適用のための抽出溶媒)である。2時間後、フィルムは取り出され、クリーンなヘキサンで洗浄され、完全な真空(ISOTEMP Vacuum Oven、Model281A、約30インチHg)で、真空オーブン(80±5℃)内で2時間乾燥させられる。次いで、フィルムは、デシケータ内に配置され、最低1時間、室温まで冷却される。次いで、フィルムの重さは、再び量られ、ヘキサン中の抽出による質量損失の量が計算される。この方法は、21 CRF 177.1520(d)(3)(ii)FDAプロトコルに基づき、FDAプロトコルから1つの逸脱である、n-ヘキサンの代わりにヘキサンを使用することを伴う。
【0046】
レオロジー的G’-試料は、圧縮成形プラークから調製される。アルミ箔の小片が背板上に配置され、テンプレートまたは成形型が背板の上に配置される。約12グラムの樹脂が成形型内に配置され、アルミ箔の第2の小片が、樹脂及び成形型上に配置される。次いで、第2の背板がアルミ箔の上に配置される。集合体全体が、以下の条件で動作する圧縮成形プレス機内に入れられる。150℃及び10バールで3分間、続いて150℃及び150バールで1分間、続いて150バールで「1.5分」の室温への急冷。圧縮成形プラークから25mmディスクが打ち抜かれる。ディスクの厚さは、約2.0mmである。N2環境中、170℃、及び10%の歪みで、G’を決定するためのレオロジー測定が行われる。打ち抜かれたディスクは、170℃で少なくとも30分間予熱されたARES-1(Rheometrics SC)レオメータオーブン内に位置する2枚の「25mm」平行板の間に配置され、「25mm」平行板の間隙は、1.65mmまでゆっくりと縮小される。試料は、これらの条件で正確に5分間そのままにされる。次いで、オーブンが開けられ、過剰な試料は、板の縁部周囲で慎重にトリミングされ、オーブンが閉じられる。100から0.1rad/sへと(0.1rad/sで500Paより低いG”値を得ることが可能な場合)、または100から0.01rad/sへと減少する周波数掃引に従って、小振幅の振動剪断を介して、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)が測定される。各周波数掃引に対して、1周波数ディケード当たり1点(対数的に離隔している)が使用される。データは、両対数スケールでプロットされる(G’(Y軸)対G”(X軸))。Y軸スケールは、10~1000Paの範囲を対象とし、一方でX軸スケールは、100~1000Paの範囲を対象とする。Orchestratorソフトウェアが使用されて、G”が200~800Paである領域内のデータを選択する(または少なくとも4データ点を使用して)。データは、適合方程式Y=C1+C2ln(x)を使用して対数多項式モデルに適合される。Orchestratorソフトウェアを使用して、500Paに等しいG”におけるG’は、補間によって決定される。G”=500PaにおけるG’が報告される。
【0047】
実験
Z1、Z2、及びZiに対する計算:「反応器ゾーンi内のCTA j([CTA]ji)の反応器ゾーンモル濃度」は、「反応器ゾーン1~iに注入されるエチレンの総モル量」で除算される「反応器ゾーン1~iに注入されるそのCTAの総モル量」として定義される。この関係は、以下の方程式(Eqn)Aに示される。
【0048】
【0049】
方程式Aにおいて、j≧1であり、
【0050】
【0051】
は、「i番目の反応器ゾーンに注入されるj番目のCTAのモル量」であり、
【0052】
【0053】
は、「i番目の反応器ゾーンに注入されるエチレンのモル量」である。「反応器ゾーンi内のCTA(系)の移動活性」は、その連鎖移動定数(Cs)を乗じた「反応器ゾーン内の各CTAの反応器ゾーンモル濃度の合計」として定義される。連鎖移動活性定数(Cs)は、参照圧力(1360atm)及び参照温度(130℃)での反応速度の比Ks/Kpである。この関係は、以下の方程式Bに示され、式中、ncompiは、反応器ゾーンi内のCTAの総数である、
【0054】
【0055】
したがって、Z1/Ziの比は、方程式Cに示される:
【0056】
【0057】
いくつかの連鎖移動定数(Cs)は、以下の表1に示される。(Cs)値をMortimerによって得た。
【0058】
【0059】
表1中、参照2、3、及び4において130℃及び1360atmでMortimerによって測定されるCs値、ならびにZ1/Zi比に対する計算された境界値。Cs値は、記述されたCTAのみを含有するCTA系に関する。参照番号2。G.Mortimer;Journal of Polymer Science:PartA-1;Chain transfer in ethylene polymerization;vol4,p881-900(1966)。参照番号3。G.Mortimer;Journal of Polymer Science:PartA-1;Chain transfer in ethylene poly-merization.PartIV.Additional study at 1360 atm and 130℃;vol8,p1513-1523(1970)。参照番号4。G.Mortimer;Journal of Polymer Science:PartA-1;Chain transfer in ethylene poly-merization.PartVII.Very reactive and depletable transfer agents;vol10,p163-168(1972)。P.Ehrlich,G.A.Mortimer,Fundamentals of the free radical polymerization of ethylene,Adv.Polymer Sci.,Vol7,386-448(1970);G.Mortimer,Journal of Polymer Science:PartA-1,Chain transfer in ethylene polymerization.PartV.The effect of temperature;vol8,p1535-1542(1970);G.Mortimer,Journal of Polymer Science:PartA-1,Chain transfer in ethylene polymerization PartV.The effect of pressure,vol8,p1543-1548(1970)も参照されたい。
【0060】
1つのCTAのみが全反応器システム内で使用されるとき、方程式B及びCは、方程式D及びEのそれぞれに簡約される。
【0061】
【0062】
【0063】
複数のCTA系に対して、平均化されたCs値は、以下の方程式で計算され得る。
【0064】
【0065】
例示的な計算プロピレン濃度=3400mol-ppm;プロピレンのCs値=0.0122;PA濃度=1650mol-ppm;PAのCs値=0.33;Cs(平均化)=[(3400mol-ppm*0.0122*0.0122)+(1650mol-ppm*0.33*0.33)]/(3400mol-ppm*0.0122+1650mol-ppm*0.33)=0.31。
【0066】
重合シミュレーション
適用された反応スキーム及び速度論を用いた重合シミュレーションモデルは、Gotoらによって記載される。以下の参考文献を参照されたい。他の反応器及び生成物モデル化フレームワークは、Aspen Technology,Inc.(Burlington,Massachusetts,USA)のAspen Plus、及びDr.Wulkow Computing in Technology GmbH(CiT)(Rastede,Germany)のPREDICIから入手可能である。これらのモデルフレームワークによって予測されるプロセス及び生成物応答は、反応器パラメータならびに適用された反応スキーム及び速度論パラメータによって決定される。
【0067】
適用された反応スキーム及び速度論パラメータは、以下に記載される。各十分に撹拌されたオートクレーブ反応ゾーンに対して、1つの計算セルが使用され得る。各管状反応ゾーンに対して、十分な計算セルが使用されて、管状反応ゾーンに沿った圧力、温度、及び濃度プロファイルを正確に表し、表5~8で報告されるシミュレーションされた生成物及びプロセス結果が、より多くのセルの追加によって変化しないようにする。重合シミュレーションを、以下に記載されるGoto LDPEシミュレーションモデルを用いて実現した。S.Goto et al;Journal of Applied Polymer Science:Applied Polymer Symposium,36,21-40,1981(Title:Computer model for commercial high pressure polyethylene reactor based on elementary reaction rates obtained experimentally)。Gotoらによって使用される速度論データを、以下に記載されるように、様々な温度、圧力、及びポリマー濃度で実施される高圧フリーラジカルポリエチレン重合実験から得た:K.Yamamoto,M.Sugimoto;Rate constant for long chain-chain branch formation in free-radical polymerization of ethylene;J.Macromol.Science-Chem.,A13(8),pp.1067-1080(1979)。以下の素反応ステップは、Gotoらによって記載される:i)エチレン伝播、ii)ラジカル終結、iii)バックバイティングまたは短鎖分岐(SCB)形成、iv)ポリマーへの移動または長鎖分岐(LCB)形成、v)ビニル形成をもたらす二次ラジカルのベータ脱離、及びvi)ビニリデン形成をもたらす三次ラジカルのベータ脱離。主反応に対する速度論データに関して、表2を参照されたく、koは、前指数因子または頻度因子であり、Eaは、温度依存性を反映する活性化エネルギーであり、ΔVは、圧力依存性を反映する活性化体積である。全ての速度論定数は、圧力及び温度条件の関数として高圧ポリエチレン中の(C13NMR技術によって分析され得る)メチル分岐のレベルをより良好に反映するように最適化されたバックバイティングに対するko、Ea、及びΔV値を除いて、Gotoらからのものである。
【0068】
【0069】
選択されたCTAに対する速度論データは、表3に示される。速度論定数を、Mortimerによって決定されるCs値(ks/kp)の速度論定数、及びGotoらによって示されるエチレン伝播速度論(表2を参照されたい)を用いて計算した。
【0070】
【0071】
短鎖分岐予測
SCBに関して、バックバイティング機構は主に、エチル及びブチル分岐を生成し、一方でメチル分岐は、生成物密度を低下させるためにプロピレンがCTAとして使用されるときに、共重合によって形成される。メチル分岐は、エチル/ブチル分岐ほど生成物密度及び抽出性に影響を及ぼさず、計算目的で、生成物密度に対するメチル分岐の影響は、エチル/ブチル分岐の影響の75%であり、SCB頻度=SCBバックバイティングによる+0.75*SCBプロピレンによる。
【0072】
ヘキサン抽出物レベルのモデル化のためのパラメータ:
非極性溶媒中のポリマー分子の抽出性は、ポリマー密度(または換言すれば、ポリマー融点もしくはSCB頻度による)及び分子量の影響を受ける。より高いSCBレベル及びより低い分子量は、抽出を促進する。管状反応器内で、最終反応ゾーンにおいてピーク温度で形成されたポリマーは、それが典型的には、より低い重合の程度(DP、LCBを除外する全ての連鎖停止ステップの合計で除算される伝播速度)及びより高いLCBの程度によって、低鎖長と組み合わせた最高レベルのSCBを有するため、最終抽出物レベルの大きな一因となり、かつそれを決定する。LCB機構によって形成された小分子のさらなる成長の確率は、分子のサイズ及び少量の残りの重合によって最小である。
【0073】
鎖セグメント長は、以下の式:鎖セグメント長(炭素の数)=(1000-3*SCB頻度)/(1000/DP+LCB頻度)を用いて計算され、SCB頻度、DP、及びLCB頻度値をもたらす条件で形成されるポリマーの平均鎖セグメント長を反映する。最終反応ゾーン内の最大SCB頻度及び最大LCB頻度を使用して、最小ポリマー鎖セグメント長に対する平均値が計算され得る。表8に列挙される最小鎖セグメント長は、直鎖状骨格の炭素原子の数を示す。平均SCBの長さを、エチル及びブチル分岐の平均である3個の炭素原子であると推定した。CTAとしてのプロピレン由来のメチル分岐を、同様の方法で0.75補正因子の適用後に処理した。以下は、本発明実施例2からの値に基づく最小鎖セグメント長に対する代表的な計算である:最小DP=494.6エチレン単位または989.2個の炭素原子、最大SCB頻度=1000個の炭素原子(1000C)当たり36.86、最大LCB頻度=1000C当たり10.46、最小鎖セグメント長=(1000-3*36.86)/(1000/989.2+10.46)=77.5個の炭素原子。
【0074】
研究1-比較の実際の重合実施例
各フロースキーム、
図3~5(CE3’~12’)中、反応器において、各反応ゾーンの入口で注入及び/または活性化されたフリーラジカル開始系を用いて重合が開始される。各反応ゾーン内の最大温度は、各反応ゾーンの開始時の開始系の濃度及び/または供給量を調節することによって、設定点で制御される。反応を終了し、複数の冷却ステップを適用した後、反応混合物は、(10)内で減圧及び/または冷却され、高圧分離器(HPS)内で分離される。HPSは、反応混合物を、少量のワックス及び/または混入ポリマーを含有するエチレン豊富流(15)、ならびにLPSへのさらなる分離のために送られるポリマー豊富流(11)に分離する。エチレン流(15)は冷却され、液体及び/または固体は、流れ(17)中で除去される。流れ(16)は、不純物及び/または不活性成分を除去するためのパージ流である。LPS内で分離されたポリマーは、(12)でさらに処理される。LPS内で除去されたエチレン(13)は、ブースタに供給され、圧縮中、溶媒、潤滑油、及びその他などの凝縮物は回収され、流れ(14)を通じて除去される。ブースタの出口は、補給エチレン流(1)と組み合わされ、一次圧縮機によってさらに圧縮される。各反応ゾーンにおいて、反応器のジャケットを通じてこの水を循環させることによって、反応媒体を冷却及び/または加熱するために、加圧水を使用した。反応器出口内の非変換エチレン及び他のガス状成分を高圧リサイクル及び低圧リサイクルを通じて再利用し、ブースタ、一次、及びハイパー(二次)圧縮機システムを通じて圧縮し、かつ分布させた。
【0075】
比較例3’、4’、5’、8’、及び9’のために使用されるフローチャートの説明
図5は、比較例3’、4’、5’、8’、及び9’を生成するために使用される、管状反応器を有する重合プロセスのフロースキームを示す。流れ(1)、エチレン補給は、一次圧縮機A及びBによってブースタの出口と共に圧縮され、流れ(2)及び(3)をもたらす。流れ(3)は、高圧リサイクル流(19)からライン(5)を通じて、反応器の正面(9)に供給するハイパー圧縮機部まで、追加のエチレンと共に供給される。流れ(2)は、高圧リサイクル流(17)と組み合わされ、流れ(18)をもたらす。副流(8)を供給するハイパー圧縮機部は、ライン(18)及び(4)を通じてエチレン供給物を受容する。ライン(8)によって供給されたエチレンは、ライン(20)及び(21)を通じて反応器の側面に分布される。CTAは、ライン(6)及びライン(7)を通じて供給される。反応を終了し、複数の冷却ステップを適用した後、反応混合物は、(10)内で減圧及び/または冷却され、上記で考察されるように分離される。
【0076】
比較例6’、10’、及び11’のために使用されるフローチャートの説明-
図3は、比較例6’、10’、及び11’を生成するために使用される、管状反応器を有する高圧重合プロセスのフロースキームを示す。流れ(1)、エチレン補給は、2つの平行な一次圧縮機A+Bによってブースタの出口と共に圧縮され、両方は、同様の容量を有し、フロー(2)及びフロー(3)をもたらす。ガス状CTA(例えば、プロピレンまたはイソブタン)は、(22)を通じて一次圧縮機Aの供給物に添加され得る。液体CTAは、流れ(6)及び/または流れ(7)を介して添加され得る。流れ(2)は、高圧リサイクル流(18)と組み合わされ、フロー(4)及びフロー(19)にわたって分布される。反応器の正面(9)に供給するハイパー圧縮機部は、ライン(18)からライン(19)及びライン(5)を通じて、エチレン供給物を受容する。副流(8)を供給するハイパー圧縮機部は、ライン(4)を通じてエチレン供給物を受容する。ライン(8)によって供給されたエチレンは、ライン(20)及び(21)を通じて反応器の側面に分布される。ライン(4)は、ライン(3)からエチレン供給物を、かつライン(18)から追加のエチレンを受容する。ハイパーは、高圧管状反応器(反応器)に供給するのに十分なレベルまでエチレン供給流を加圧する。反応を終了し、複数の冷却ステップを適用した後、反応混合物は、(10)内で減圧及び/または冷却され、上記で考察されるように分離される。
【0077】
比較例7’及び12’のために使用されるフローチャートの説明
図4は、比較例7’及び12’を生成するために使用される、管状反応器を有する高圧重合のフロースキームを示す。流れ(1)、エチレン補給は、一次圧縮機システムによってブースタの出口と共に圧縮され、フロー(3)をもたらす。流れ(3)は、高圧リサイクル流(19)と組み合わされ、ライン(5)を通じて、反応器の正面(9)に供給するハイパー圧縮機部まで供給される。副流(8)を供給するハイパー圧縮機部は、ライン(4)を通じてエチレン供給物を受容する。ライン(8)によって供給されたエチレンは、ライン(20)及び(21)を通じて反応器の側面に分布される。ライン(4)は、ライン(18)からエチレン供給物を受容する。CTAは、ライン(6)及び/もしくは(7)、またはライン(22)を通じて供給される。ハイパーは、高圧管状反応器(反応器)に供給するのに十分なレベルまでエチレン供給流を加圧する。反応を終了し、複数の冷却ステップを適用した後、反応混合物は、(10)内で減圧及び/または冷却され、上記で考察されるように分離される。
【0078】
比較例3’~12’-全ての比較例の重合における反応ゾーンを、異なって言及されない場合、表4に記載されるペルオキシド系で開始した。各反応ゾーンへのペルオキシド系の量を、ピーク制御温度に達するように調節した。
【0079】
【0080】
実際の重合のために、3つの反応ゾーンを有する管状反応器において各重合を実施した。各反応ゾーンにおいて、反応器のジャケットを通じてこの水を循環させることによって、反応媒体を冷却及び/または加熱するために、加圧水を使用した。有機ペルオキシド(表4を参照されたい)を各反応ゾーンに供給した。各反応ゾーンにおいて、反応器のジャケットを通じてこの水を循環させることによって、反応媒体を冷却及び/または加熱するために、加圧水を使用した。各反応ゾーンは、1つの入口及び1つの出口を有した。各入口流は、前の反応ゾーンからの出口流及び/または添加エチレン豊富供給流からなった。反応ゾーン1内で第1のピーク温度に到達した後、加圧水を用いて反応媒体を冷却した。第1の反応ゾーンの出口において、冷たいエチレン豊富供給流(20)を注入することによって、反応媒体をさらに冷却し、反応ゾーンへと有機ペルオキシド系を供給することによって、反応を再び開始した。このプロセスを第2の反応ゾーンの終わりにおいて繰り返して、第3の反応ゾーン内のさらなる重合を可能にした。反応器出口内の非変換エチレン及び他のガス状成分を高圧リサイクル及び低圧リサイクルを通じて再利用し、ブースタ、一次、及びハイパー(二次)圧縮機システムを通じて圧縮し、かつ分布させた。単軸スクリュ押出機を使用して、ポリマーを押し出し、ペレット化した(1グラム当たり約30ペレット)。
【0081】
比較例3’、4’、5’、8’、及び9’-
図5に示されるフロースキームに従って、3つの反応ゾーンを有する管状反応器において重合を実施した。入口圧力は、2100バールであり、管状反応器システム全体にわたる圧力低下は、約260バールであった。有機ペルオキシド(表4)を各反応ゾーンに供給した。TRIGONOX(商標)301を反応ゾーン1及び2内に添加した。アセトンを連鎖移動剤(CTA)として使用し、それは、各反応ゾーン入口に存在し、低圧及び高圧リサイクルフロー(13及び15)から、ならびに抽出されたCTA補給流6及び7から生じる。補給エチレンは、流れ1を通じて供給される。約230~250℃の溶融温度で、単軸スクリュ押出機システムを使用して、ポリマーを押し出し、ペレット化した(1グラム当たり約30ペレット)。3つの反応ゾーンへのエチレン豊富供給流の重量比は、1.00:0.76:0.24であった。内部プロセス速度は、第1、第2、及び第3の反応ゾーンのそれぞれに対して、約12.5、9、及び11m/秒であった。追加の情報は、表5及び6で見ることができる。比較例5’-プロピレンをCTAとして使用した。プロピレンを、流れ5及び6を介してではなく、一次Aの吸込口に添加した。比較例9’-TRIGONOX(商標)301を使用せず、プロピオンアルデヒドがCTAであった。表5~8も参照されたい。
【0082】
比較例6’、10’、及び11’-
図3に示されるフロースキームに従って、3つの反応ゾーンを有する管状反応器において重合を実施した。入口圧力は、2155バールであり、管状反応器システム全体にわたる圧力低下は、約275バールであった。有機ペルオキシド(表4を参照されたい)を各反応ゾーンに供給した。プロピレンを連鎖移動剤(CTA)として使用し、それは、各反応ゾーン入口に存在し、低圧及び高圧リサイクルフロー(13及び15)から、ならびに抽出されたCTA補給流22から生じる。補給エチレンは、流れ1を通じて供給される。約230~250℃の溶融温度で、単軸スクリュ押出機を使用して、ポリマーを押し出し、ペレット化した(1グラム当たり約30ペレット)。3つの反応ゾーンへのエチレン豊富供給流の重量比は、1.00:0.80:0.20であった。内部プロセス速度は、第1、第2、及び第3の反応ゾーンのそれぞれに対して、約12.5、9、及び11m/秒であった。比較例10-プロピオンアルデヒドがCTAであり、流れ7を介して添加した。比較例11’-イソブタンがCTAであり、流れ22を介して添加した。
【0083】
比較例7’及び12’-3つの反応ゾーンを有する管状反応器において重合を実施した。
図4を参照されたい。この構成は、正面エチレン系供給物中のCTA濃度対連続のエチレン系供給流中のCTA濃度の最低比をもたらす。各反応ゾーンにおいて、表4に記載される有機ペルオキシドで重合を開始した。3つの反応ゾーンへのエチレン豊富供給流の重量比は、1.00:0.60:0.40であった。プロピオンアルデヒド(PA)をCTAとして使用し、それは、各反応器入口に存在し、低圧及び高圧リサイクルフロー(13及び15)から、ならびに抽出されたCTA補給流22から生じる。補給エチレンは、流れ1を通じて供給される。表5及び6も参照されたい。比較例12’-プロピオンアルデヒド(CTA)を流れ6及び7を介して添加し、TRIGONOX(商標)301を反応ゾーン1及び2内で使用した。表5~8を参照されたい。
【0084】
実際の重合結果の要約-比較例3’~12’は、以下を示す。CTAとしてプロピレンを使用することと比較して、反応器の入口における、かつ/または第1の反応ゾーン内のCTA活性が低減した、CTAとしてのイソブタンの結果は、後続の反応ゾーン内のCTA活性よりも、反応器の入口における、かつ/または第1の反応ゾーン内のCTA活性を低減する重要性を示す。イソ-ブタンをプロピレンに置き換えることは、より低い密度、より高い抽出物レベル、及びレオロジー改質剤のより高い消費速度によって示されるレオロジー改質剤のあまり有効ではない使用をもたらした。CTAとしてPA(プロピオンアルデヒド)を使用し、その濃度及び後続の反応ゾーンへの活性を増加させることは、レオロジー改質剤の有効な使用(高いG’値及び/または概して、改質剤の低い消費)、ならびに高いG’値を有する生成物をもたらした。異なる密度、メルトインデックス、G’、及びヘキサン抽出物で比較例を行った。これらの比較例を使用して、G’、密度、及びヘキサン抽出物のための相関を得た。高いG’及び0.9190~0.9240g/ccのポリマー密度で作製される実施例は、0.9190g/cc未満の密度での同様の実施例よりも低いヘキサン抽出物レベルを示す。本発明実施例は、さらにより低いヘキサン抽出物レベルを有する。
【0085】
G’、密度、及びヘキサン抽出物を予測するための相関の導出
プロセスシミュレーションからの主要な出力に基づき、かつ測定されたポリマー特性に基づき、本明細書に定義される種類のポリマーに対して効果的な経験的モデルが得られる。市販のソフトウェアJMP(登録商標)PROバージョン11.1.1を使用して、線形回帰を有するモデルが得られる。密度は、以下の方程式でモデル化される。密度[g/cc]=0.9541-(0.001152*SCB頻度[1/1000C])-(0.000502*LCB頻度[1/1000C])+(0.002547*log MI[dg/分])方程式G。方程式Gによって計算される密度は、対応するポリマー試料中の実際の測定された密度を表す。試料CE3’~CE12’に基づき、このモデルは、0.979の相関係数R2を有する。予測された密度は、測定された密度が利用可能である試料を含む全ての試料に関して、表7に示される。G’(G’’=500Pa、170Cにおける)は、以下の方程式でモデル化される。G’(G’’=500Pa、170Cにおける)([Pa]=10^(2.0113-(0.2616*log MI[dg/分])+(0.07186*LCB頻度[1/1000C])-(0.1995*Z1/Zi)-(0.0176*log Cs)))方程式H。方程式Hによって計算されるG’値は、対応するポリマー試料中の実際の測定されたG’値を表す。試料CE3’~CE12’に基づき、このモデル(log G’形態で)は、0.986の相関係数R2を有する。予測されたG’(G’’=500Pa、170Cにおける)は、測定されたG’が利用可能である試料を含む全ての試料に関して、表7に示される。
【0086】
ヘキサン抽出物は、以下の方程式でモデル化される。ヘキサン抽出物[重量%]=-1.65+(0.1989*最終反応ゾーン内の最大SCB頻度[1/1000C])-(0.0486*最終反応ゾーン内の最小鎖セグメント長)(方程式I)。方程式Iによって計算されるヘキサン抽出物レベルは、対応するポリマー試料中の実際の測定されたヘキサンレベルを表す。試料CE3’~CE12’に基づき、このモデルは、0.862の相関係数R2を有する。予測されたヘキサン抽出物-測定されたヘキサン抽出物が利用可能である試料を含む全ての試料に関して、表8を参照されたい。モデルは、最終プロセスゾーン内のシミュレーション結果に基づく。各反応器ゾーンiに対する見掛けヘキサン抽出物は、同じ出力を有する同じ方程式を適用することによって提供されるが、ここでは、その同じ反応器ゾーンi内で選択される。見掛けヘキサン抽出物(ゾーンk)=-1.65+(0.1989*反応ゾーンk内の最大SCBレベル)-(0.0486*反応ゾーンk内の最小鎖セグメント長)(方程式J)。
【0087】
研究2:シミュレーションされた比較例及び本発明のシミュレーション実施例-比較例1及び2のために使用されるフローチャートの説明-比較例1及び2のためのフローチャートは、EP2681250-B1に記載される。
【0088】
本発明実施例1~5のために使用されるフローチャートの説明-
図1は、本発明実施例1~5を生成するために使用される、管状反応器を有する高圧重合プロセスのフロースキームを示す。流れ(1)、エチレン補給は、一次圧縮機システムによってブースタの出口と共に圧縮され、フロー(2)及び(3)をもたらす。流れ(2)及び(3)は、高圧リサイクル流(18)と組み合わされ、ライン(19)及び(5)を通じて、反応器の正面(9)に供給するハイパー圧縮機部まで供給される。副流(8)を供給するハイパー圧縮機部は、ライン(4)を通じてエチレン供給物を受容する。ライン(8)によって供給されたエチレンは、ライン(20)を通じて反応器の側面に分布される。ライン(4)は、ライン(18)からエチレン供給物を受容する。ハイパーは、高圧管状反応器(反応器)に供給するのに十分なレベルまでエチレン供給流を加圧する。流れ(6)及び/または流れ(7)は、CTA供給物を示す。反応を終了し、複数の冷却ステップを適用した後、反応混合物は、(10)内で減圧及び/または冷却され、上記で考察されるように分離される。
【0089】
本発明実施例6~13及び比較例13のために使用されるフローチャートの説明-
図2は、本発明実施例6~13及び比較例13を生成するために使用される、管状反応器を有する高圧重合プロセスのフロースキームを示す。流れ(1)、エチレン補給は、一次圧縮機システムによってブースタの出口と共に圧縮され、フロー(2)をもたらす。流れ(2)は、高圧リサイクル流(18)からライン(5)及びライン(19)を通じて、反応器の副流(20)及び流れ(9)にそれぞれ供給するハイパー圧縮機部まで、追加のエチレンと共に供給される。副流(21)を供給するハイパー圧縮機部は、高圧リサイクル流(18)からライン(4)を通じてエチレン供給物を受容する。補給CTA系は、ライン(7a)及びライン(7b)を通じて供給され得る。ライン(7a)及び(7b)にわたる補給CTAの分布は、反応器ゾーン内のCTA濃度に影響を及ぼす。反応を終了し、複数の冷却ステップを適用した後、反応混合物は、(10)内で減圧及び/または冷却され、上記で考察されるように分離される。
【0090】
シミュレーションされた比較例1、2、及び13ならびにシミュレーションされた本発明実施例1~13で使用される一般的な重合条件-全ての比較例及び本発明実施例の重合において、CTA濃度を、表5に記載されるメルトインデックス(I2)を有する生成物を得るように調節した。生成物メルトインデックスの変動は、CTA濃度を低下または増加させることによって可能である。
【0091】
シミュレーションされた比較例及びにシミュレーションされた本発明実施例の重合で使用される反応器及び供給物構成-表5は、シミュレーションされた比較例及び本発明実施例の重合のために使用された、反応器構成(すなわち、寸法、レイアウト、適用されたエチレン供給物分布)を示す。供給物分布は、各反応ゾーンに供給される全エチレン供給流の割合を示す。「50/50/0/0」という表記は、全エチレン供給物の50%が第1の反応ゾーンに供給され、全エチレン供給物の50%が、第2の反応ゾーンに供給され、一方で、第3及び第4の反応ゾーンには供給流が供給されないことを意味する。第2、第3、及び第4の反応ゾーン内に受容されるエチレンは、前の反応ゾーンからの持ち越しである。同様に、「50/38/12」という表記は、全エチレン供給物の50%が第1の反応ゾーンに供給され、全エチレン供給物の38%が第2の反応ゾーンに供給され、全エチレン供給物の12%が第3の反応ゾーンに供給されることを意味する。さらに、表5は、全ての反応ゾーンの圧力レベル及び開始温度、副エチレン供給流が適用されたときのエチレン供給物温度、ならびに各反応ゾーン(Rx)内の最大またはピーク温度に関する情報を示す。エチレン供給物温度は、任意に、クーラで低下及び/または制御され得る。冷却媒体の温度は、典型的には、0~220℃の範囲内であり、一方で、予熱設備に対する温度は、典型的には、100~250℃の範囲内である。冷却/加熱は、並流または逆流フローによって高圧管の周囲のジャケットを通じて適用される。シミュレーションにおいて、冷却/予熱を逆流で、かつ1反応器ゾーン当たり1つの冷却セクションを用いて適用した。
【0092】
比較例1及び2-比較例1及び2に対する重合シミュレーションは、EP2681250-B1の比較例A及び発明実施例2に基づく。CTAとして、プロピオンアルデヒドを使用した。反応器入口圧力は、2800バールであった。比較例Aは、4つの反応ゾーンを有する管状反応器内で作製され、開始剤を除く全ての反応物質は、正面に供給され、均一なCTA分布をもたらし、高密度、及び低いヘキサン抽出物、及び低いG’値を有する生成物をもたらす。本発明実施例2は、はるかに高いG’値をもたらす0のZ1/Zi比で作製される。0のZ1/Zi比は、比較例Aの第1の反応を2つに分割することによって達成される。第1部は、CTAを含有しない補給エチレンのみを受容している。第2部は、再利用CTA及びCTA補給流も含有する高圧及び低圧リサイクルからエチレンを受容している。これは、高密度、高いG’値、及び低い抽出物を有するポリマーを生成することが可能である5反応ゾーン構成をもたらす(表7及び8を参照されたい)。本発明実施例1は、表5及び6に記載されるプロセス条件で、かつ
図1に従って作製される。プロピオンアルデヒドがCTAとして使用される。開始剤系は、反応ゾーン1(TBPiv/TBPO/DTBP/TRIGONOX(商標)301)、反応ゾーン2(TBPO/DTBP)、及び反応ゾーン3(DTBP)であった。表7及び8を参照されたい。本発明実施例2~5は、表5及び6に記載される条件で、かつ
図1に従って作製される。プロピオンアルデヒドがCTAとして使用される。開始剤系は、反応ゾーン1(TBPO/DTBP/TRIGONOX(商標)301)、反応ゾーン2(TBPO/DTBP/TRIGONOX(商標)301)、反応ゾーン3(DTBP)、及び反応ゾーン4(DTBP)であった。主な差は、MIとエチレン副流温度であり、それは、異なる予測された生成物特性をもたらす。表7及び8を参照されたい。本発明実施例6~10、12、及び13ならびに比較例13は、表5及び6に記載される条件で、かつ
図2に従って作製される。プロピオンアルデヒドがCTAとして使用される。開始剤系は、反応ゾーン1(TBPO/DTBP)、反応ゾーン2(TBPO/DTBP)、反応ゾーン3(TBPO/DTBP)、反応ゾーン4(DTBP)、反応ゾーン5(DTBP)であった。主な差は、MIとエチレン副流温度であり、それは、異なる予測された生成物特性をもたらす。表7及び8を参照されたい。本発明実施例11は、表5及び6に記載されるプロセス条件で、かつ
図2に従って作製される。プロピオンアルデヒドがCTAとして使用される。開始剤系は、反応ゾーン1(TBPO/DTBP/TRIGONOX(商標)301)、反応ゾーン2(TBPO/DTBP/TRIGONOX(商標)301)、反応ゾーン3(TBPO/DTBP)、反応ゾーン4(DTBP)、反応ゾーン5(DTBP)であった。より高いピーク温度を適用することによって、より高いG’値が本発明実施例9及び10と比較して達成され得る。予測された生成物特性は、表7及び8に示される。
【0093】
研究2のシミュレーションされた重合の要約-比較例1は、高い密度及び低いヘキサン抽出物を示すが、非常に低いG’値も示す。比較例2は、良好なG’値及びヘキサン抽出物レベルを有するが、密度は高すぎる。低いヘキサン抽出物レベルは、最終反応ゾーン(複数可)内で低いピーク温度を適用することによって達成される。所望の密度は、CTA系、ピーク温度、及び反応器圧力の正しい組み合わせを適用することによって達成される。比較例3~12は、実際の重合であり、上記の密度、G’、及びヘキサン抽出物に対する相関を導出するために使用される。比較例13は、関連密度で高いG’値を有するが、高いピーク温度のため、ヘキサン抽出物レベルは高すぎる。表9は、管状生成物をまとめて、かついくつかのオートクレーブ押し出し生成物を列挙する。オートクレーブ樹脂は、より低い最大重合温度のため、低いヘキサン抽出物を有する。これらの樹脂は、<2.6重量%のヘキサン抽出物レベル要件及び高い溶融強度を必要とする食品接触及びクックイン用途に非常に好適である。オートクレーブ反応器において、典型的には、エチレン変換速度は、<20%であり、管状反応器内のエチレン変換速度(典型的には、>25%)よりも有意に低い。高いG’値を有し、かつより低い密度で生成される、市販の管状生成物は、3.4~4.1重量%の範囲の抽出物レベルを示す。標準的な管状生成物は、より高い密度、及び低いヘキサン抽出物レベルで作製され得るが、低いG’値を伴う。驚くべきことに、本発明実施例1~13において、低いヘキサン抽出物レベル及び高いG’値を有する管状生成物が、レオロジー改質分岐剤なしで、0.9190~0.9250g/ccの密度範囲で作製され得ることがわかった。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【表9】
本願は以下の発明に関するものである。
(1) 管状反応器システムにおけるフリーラジカル高圧重合プロセスから形成されるエチレンホモポリマーであって、前記ホモポリマーが、以下の特性:
(A)0.9190~0.9250g/cc未満の密度、
(B)前記ポリマーの総重量に基づき、2.6重量%以下であるヘキサン抽出物レベル、
(C)以下の方程式:
G’≧D+E[log(I
2
)](式中、D=150Pa、及びE=-60Pa/[log(dg/分)])を満たすG’(G”=500Pa、170℃における)、ならびに
(D)1.0~20dg/分のメルトインデックス(I
2
)を含む、エチレンホモポリマー。
(2) ヘキサン抽出物レベルが、以下:
(1)前記エチレン系ポリマーの総重量に基づき、(A+(B*密度(g/cc))+(C*log(MI)dg/分))(式中、A=250.5重量%、B=-270重量%/(g/cc)、C=0.25重量%/[log(dg/分)])、または
(2)前記ポリマーの総重量に基づき、2.0重量%、のうちの低い方よりも大きい、上記(1)に記載のエチレンホモポリマー。
(3) 前記ポリマーが、1000個の総炭素当たり0.15のビニル基以下のビニル含有量を有する、上記(1)または(2)に記載のエチレンホモポリマー。
(4) 上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のエチレンホモポリマーを生成するためのプロセスであって、前記プロセスが、第1の管状反応ゾーン1及び最終管状反応ゾーンiを含み、iが(≧)3以上である、反応構成で、かつ高圧重合条件下で、エチレン及び少なくとも1つのフリーラジカルを含む反応混合物を重合させることを含み、「前記重合の入口圧力」が、[1800バール+(100バール×反応ゾーン数)]以上である、プロセス。
(5) 前記第1の反応ゾーン1が、≧320℃のピーク温度を有し、前記最終反応ゾーンiが、≦290℃のピーク温度を有する、上記(4)に記載のプロセス。
(6) iが、≧4である、上記(4)または上記(5)に記載のプロセス。
(7) Z1の移動活性を有する第1のCTA系が、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系が、管状反応ゾーンiに供給され、Z1/Zi比が、0.7以上である、上記(4)~(6)のいずれか1項に記載のプロセス。
(8) Z1の移動活性を有する第1のCTA系が、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系が、管状反応ゾーンiに供給され、前記Z1/Zi比が、1.3以下である、上記(4)~(7)のいずれか1項に記載のプロセス。
(9) Z1の移動活性を有する第1のCTA系が、管状反応ゾーン1に供給され、Ziの移動活性を有する第2のCTA系が、管状反応ゾーンiに供給され、前記Z1/Zi比が、(0.8-0.2*log(Cs))以下であり、式中、Csが、0.0001~10の範囲内である、上記(4)~(8)のいずれか1項に記載のプロセス。
(10) 上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のホモポリマーを含む組成物。