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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20240214BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20240214BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240214BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61F13/511 110
A61F13/511 300
A61F13/511 400
A61F13/512 200
A61F13/53 300
A61F13/535 200
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018032312
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019146691
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-02-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 伸匡
(72)【発明者】
【氏名】前田 智恵子
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】藤井 眞吾
【審判官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-143542(JP,A)
【文献】特開2006-175689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0079857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/511 - 13/535
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性トップシートと、液不透過性バックシートと、前記液透過性トップシート及び前記液不透過性バックシートの間に配置されるとともに吸収性繊維及び高吸収性ポリマーを有する吸収性コアを含む吸収体と、を備える吸収性物品であって、
35gf/cm の荷重下における、吸収前の前記吸収性物品の厚みが、2.8mm以上3.9mm以下であり、
前記高吸収性ポリマーの密度が、略均一で、0.075g/ml以上0.122g/ml以下の範囲であり、
前記高吸収性ポリマーの坪量は、300g/m 以上370g/m 以下であり、
前記トップシートは、身体側に設けられる上層シートと、前記上層シートよりも衣類側に設けられる下層シートとを部分的に接合し、前記上層シートと前記下層シートとの非接合部において前記上層シートにより多数の凸部が形成され、前記凸部において前記上層シートと前記下層シートとの間が中空空間となるように形成され、
前記凸部の形状は、その断面形状が半円形状であり、
前記凸部の高さは、1.0mm以上2.0mm以下であり、
前記凸部の1つあたりの底面積は、12mm以上25mm以下であり、
前記吸収体には、長手方向に沿って延在するとともに、厚み方向に貫通するスリットが設けられ、
前記トップシートは、前記スリットの形状に追従しておらず、同一平面上に設けられ
前記吸収体は、前記吸収性コアを包む親水性を有するキャリアシートをさらに備え、
前記トップシート及び前記キャリアシートの間には、前記スリットを覆う液拡散性シートが設けられる
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記上層シートと前記下層シートとの接合部には、厚み方向に少なくとも前記上層シート及び前記下層シートのいずれか一方を貫通する貫通孔が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートを構成する前記上層シート及び前記下層シートは、坪量が18g/m以上のエアスルー不織布である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿取りパッド、パンツタイプおむつ及びテープ止めタイプおむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、トップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。これらの吸収性物品には、体液の吸収性の向上、着用者の装着感の向上、漏れ防止等を図るために、様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、吸収体における体液の吸収速度が速く、吸収体からトップシートへの液戻りが少ない吸収性物品を提供するために、トップシートは、2枚の不織布シートを部分的に接合し、非接合部分において身体側の不織布シートにより多数の凸部が形成され、凸部において身体側の不織布シートと衣類側の不織布シートとの間が中空空間となるように形成され、吸収体において、身体側の高吸収性ポリマーの平均粒径が衣類側の高吸収性ポリマーの平均粒径よりも大きく、かつ、衣類側のパルプ繊維の重量が身体側のパルプ繊維の重量よりも大きい吸収性物品が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、吸収可能量及び吸収速度ともに優れる使い捨ておむつを提供するために、吸収体には、左右一対のスリットが設けられ、トップシートは、スリットに追従するように設けられ、吸収体において、身体側の吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマーの重量比率が、衣類側の吸収体におけるパルプ繊維に対する高吸収性ポリマーの重量比率よりも高い吸収性物品が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008―132056号公報
【文献】特開2017-140251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された吸収性物品では、吸収体が、身体側の吸収体及び衣類側の吸収体の両方からなるので、このような吸収体の製造が複雑であるという課題がある。また、上記のような吸収性物品のいずれも、着用時の風合いが良好で、体液吸収直後の身体側表面のドライ感を全て満たすには至っていない。
【0007】
そこで、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、吸収体の製造が容易であるとともに、着用時の風合いが良好で、体液吸収直後の身体側表面のドライ感に優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、吸収性繊維と高吸収性ポリマーを有する吸収体を備える吸収性物品であって、高吸収性ポリマーの密度が、略均一で、所定の範囲であり、トップシートを2枚のシートで構成するとともに、吸収体に長手方向に沿って延在し厚み方向に貫通するスリットを設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性トップシートと、液不透過性バックシートと、前記液透過性トップシート及び前記液不透過性バックシートの間に配置されるとともに吸収性繊維及び高吸収性ポリマーを有する吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記高吸収性ポリマーの密度が、略均一で、0.07g/ml以上0.13g/ml以下の範囲であり、前記トップシートは、身体側に設けられる上層シートと、前記上層シートよりも衣類側に設けられる下層シートとを部分的に接合し、前記上層シートと前記下層シートとの非接合部において前記上層シートにより多数の凸部が形成され、前記凸部において前記上層シートと前記下層シートとの間が中空空間となるように形成され、前記吸収体には、長手方向に沿って延在するとともに、厚み方向に貫通するスリットが設けられることを特徴とするものである。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記上層シートと前記下層シートとの接合部には、厚み方向に少なくとも前記上層シート及び前記下層シートのいずれか一方を貫通する貫通孔が設けられることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記トップシートは、前記スリットの形状に追従しておらず、同一平面上に設けられることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(3)に記載の吸収性物品であって、前記トップシート及び前記吸収体の間には、前記スリットを覆う液拡散性シートが設けられることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記トップシートを構成する前記上層シート及び前記下層シートは、坪量が18g/m以上のエアスルー不織布であることを特徴とするものである。
【0014】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、35gf/cmの荷重下における、吸収前の吸収性物品の厚みが、2.5mm以上4.5mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸収体の製造が容易であるとともに、着用時の風合いが良好で、体液吸収直後の身体側表面のドライ感に優れた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の吸収性物品の概略平面図である。
図2図1のI-I線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<吸収性物品>
本発明の実施形態に係る吸収性物品1としては、図1に示すように、テープ止めタイプおむつが例示されるが、本発明の吸収性物品1はこれに限定されるものではなく、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿取りパッド、パンツタイプおむつ、又はその他の吸収性物品であってもよい。吸収性物品1は、身体側表面に配置された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向し、衣類側表面に配置された液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置された吸収体20と、を備え、これにより、吸収体20は、トップシート10とバックシート30との間に挟まれた構造となっている。本明細書の説明において、吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。くわえて、吸収性物品1の厚み方向とは、長手方向及び幅方向に対して直交する方向であり、図中、符号Zで示す方向である。さらに、本明細書において、吸収性物品1の身体側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の肌に当接する表面を指し、衣類側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の衣類に接触する表面を指す。
【0018】
本発明の吸収性物品1において、35gf/cmの荷重下における、吸収前の吸収性物品1の厚みが、2.5mm以上4.5mm以下であることが好ましく、2.6mm以上4.0mm以下であることがより好ましく、2.8mm以上3.9mm以下であることが更に好ましい。吸収前の吸収性物品1の厚みをこのように設定することにより、吸収性物品1の薄型化及び柔らかさの両立を実現することができる。
【0019】
[トップシート]
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を通過させるものであり、図2に示すように、吸収体20を挟んで、バックシート30に対向して同一平面上に配置される。また、トップシート10は、上層シート11及び下層シート12の2枚のシートが積層されて形成された立体シートからなる。
【0020】
詳細には、トップシート10は、身体側に設けられる上層シート11と、上層シート11よりも衣類側に設けられる下層シート12とを接着や溶着で部分的に接合し、上層シート11と下層シート12との非接合部13において身体側に隆起する上層シート11により多数の凸部が形成されている。そして、この凸部において、上層シート11と下層シート12との間が中空空間となっているので、トップシート10全体の通気性に優れる。さらに、個々の凸部は、上層シート11と下層シート12とが接合される網状の接合部14によって、囲まれている。
【0021】
トップシート10は、その内部が中空空間となっている非接合部13の凸部において、体液がトップシート10から吸収体20へ透過しにくく、接合部14において、トップシート10から吸収体20への体液の透過が行われる。このため、トップシート10は、ドライ感がよく、通気性に優れる一方、体液の透過速度が遅く、液残りが生じ、肌が体液に触れる時間が長くなることが問題であった。
【0022】
そして、このような問題を軽減し、体液の透過速度を向上させるために、接合部14に、吸収性物品1の厚み方向に上層シート11及び下層シート12を貫通する多数の貫通孔(図示しない)を設けることが好ましい。この場合、上層シート11と下層シート12とを接着剤で部分的に接合すると、体液の透過速度を向上させるための貫通孔が、接着剤によって、塞がれるおそれがある。このため、上層シート11と下層シート12とを溶着で部分的に接合することがより好ましい。
【0023】
なお、本実施形態では、貫通孔は、接合部14において、吸収性物品1の厚み方向に上層シート11及び下層シート12を貫通するように形成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、吸収性物品1の厚み方向に上層シート11及び下層シート12のいずれか一方を貫通するように形成されてもよい。
【0024】
さらに、非接合部13における凸部は、その形状に特に制限はなく、例えば、直方体状、四角錐形状、又は半球形状等が挙げられるが、着用者の肌と凸部との間の接触面積をできるだけ小さくする観点から、その断面形状が半円形状であることが好ましい。また、凸部の高さは、0.5mm以上2.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。なお、凸部の1つあたりの底面積は、10mm以上30mm以下であることが好ましく、12mm以上25mm以下であることがより好ましい。
【0025】
このように、トップシート10に多数の凸部が形成されることにより、着用者の肌とトップシート10との間の接触面積が小さくなるので、吸収性物品1の着用時におけるべたつきを低減し、肌触りを向上させることができ、体液吸収直後の吸収性物品1の身体側表面のドライ感に優れる。
【0026】
上層シート11及び下層シート12としては、同一の種類のシートを用いてもよいし、異なる種類のシートを用いてよい。
【0027】
上層シート11及び下層シート12は、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する、エアスルー不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム又はこれらを積層した複合シートから形成される。なお、上層シート11及び下層シート12は、ドライタッチ性を付与するために、径が上記貫通孔よりも小さい多数の透孔が形成されていてもよい。
【0028】
また、上記のような性質を有するエアスルー不織布としては、サーマルボンド法等の公知の加工法によって得られたものを用いることができ、その坪量が、着用時の良好な風合いを得る観点から、18g/m以上25g/m以下であることが好ましい。トップシート10を構成する上層シート11及び下層シート12には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。
【0029】
[バックシート]
本発明に用いるバックシート30としては、尿漏れを効果的に防止する観点から、体液を通過させない液不透過性のものである。また、バックシート30の坪量は、加工性及び強度の観点から、15g/m以上60g/m以下であることが好ましい。
【0030】
バックシート30は、液不透過性であり、かつ、遮水性を有するシート材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。このような特性を有するバックシート30の材料としては、例えば、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを挙げることができる。
【0031】
なお、図示しないが、バックシート30の衣類側表面には、着用時に下着等に吸収性物品1を固着するための粘着剤層が設けられていてもよい。また、吸収性物品1が粘着剤層を有する場合、粘着剤層を保護するための剥離シートを有していてもよく、この剥離シートは、吸収性物品1の包装シートと部分的に接合されていてもよい。
【0032】
[吸収体]
吸収体20は、基材としての吸収性繊維及び高吸収性ポリマーを含有する吸収性コア21と、吸収性コア21を包むキャリアシート22と、を備える。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。このようなフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができるが、強度の観点から針葉樹パルプ繊維を用いることが好ましい。吸収性コア21の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m以上800g/m以下の坪量とすることが好ましく、100g/m以上500g/m以下の坪量とすることがより好ましい。
【0033】
吸収性コア21に用いる高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。なお、高吸収性ポリマーとしては、破砕タイプとパールタイプ(逆相懸濁重合により得られるもの)のいずれも使用することができる。
【0034】
吸収性コア21の高吸収性ポリマーの密度は、略均一で、0.07g/ml以上0.13g/ml以下であることが好ましく、0.075g/ml以上0.125g/ml以下であることがより好ましい。これにより、体液吸収直後の液戻り量を抑えるとともに、着用時の良好な風合いを実現することができる。なお、高吸収性ポリマーの密度が0.07g/ml未満の場合には、体液吸収直後の液戻り量が多くなり、逆に、0.13g/mlを超える場合には、高吸収性ポリマーにより着用時の良好な風合いが損なわれる。
【0035】
また、吸収性コア21の高吸収性ポリマーの坪量は、290g/m以上380g/m以下であることが好ましく、300g/m以上370g/m以下であることがより好ましい。
【0036】
吸収性コア21において、吸収性繊維及び高吸収性ポリマーの形態は、吸収性繊維中に高吸収性ポリマー粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、高吸収性ポリマー粒子の漏洩防止や吸収性コア21の形状の安定化の目的から、図2に示すように、吸収性コア21をキャリアシート22で包むことが好ましい。キャリアシート22の基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシート22を複数備える場合は、キャリアシート22の基材は同一のものであっても異なるものであってもよく、キャリアシート22で吸収性コア21を包む際の包み方は特に限定されるものではない。なお、キャリアシート22の坪量は、16g/m以上であることが好ましい。
【0037】
なお、吸収性コア21の坪量は、250g/m以上400g/m以下であることが好ましい。吸収性コア21の坪量をこのような範囲にすることにより、吸収性に優れ、体液の漏れを効果的に防止することができる。
【0038】
[スリット]
吸収体20の略中央部には、吸収性物品1の長手方向に沿って延在するとともに、吸収性物品1の厚み方向に吸収性コア21を貫通するスリット23が設けられている。本実施形態では、スリット23は、吸収性物品1の幅方向に所定の間隔を空けて2本並設されるが、これに限定されるものではなく、例えば、1本又は3本以上設けられてもよい。なお、スリット23の形成方法は、特に限定されるものではない。
【0039】
このように、吸収体20に、吸収性物品1の長手方向に沿って延在するとともに吸収性物品1の厚み方向に貫通するスリット23を設けることにより、スリット23が設けられていない領域に比べ、体液の吸収速度を向上させることができる。
【0040】
また、図2に示すように、トップシート10が、スリット23の形状に追従しておらず、同一平面上に設けられるため、スリット23の領域内の液戻りを効果的に抑制することができる。
【0041】
なお、体液の吸収速度の向上及び液戻りの抑制の両立の観点から、スリット23の幅方向における寸法は、5mm以上10mm以下であることが好ましく、6mm以上8mm以下であることがより好ましい。
【0042】
[液拡散性シート]
吸収体20への体液の拡散を促進するために、トップシート10及び吸収体20の間に液拡散性シート40を設けることが好ましい。この液拡散性シート40としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の不織布や、スパンボンド/メルトブローン、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布を挙げることができるが、特にエアスルー不織布であることが好ましい。また、液拡散性シート40は、少なくとも、スリット23の領域を覆うため、体液吸収直後のスリット23の領域の液戻りを効果的に抑制することができる。
【0043】
液拡散性シート40の坪量は、18g/m以上50g/m以下であることが好ましい。なお、液拡散性シート40の形状は、スリット23の領域を覆うものであれば、特に制限はなく、尿等の体液がくまなく吸収体20に拡散するように、吸収体20の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0044】
[立体ギャザー]
吸収性物品1の身体側表面には、立体ギャザーが設けられていてもよい。この立体ギャザーは、トップシート10とともに体液の閉じ込め空間を形成し、体液の漏れを防止できるようになっている。立体ギャザーは、立体ギャザーシートと、立体ギャザーシートの自由端部に沿って配された伸縮性弾性部材と、を備えていることが好ましい。伸縮性弾性部材としては、天然ゴム、合成ゴム、及びポリウレタン等からなる、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0045】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、上層シート11と下層シート12とを部分的に接合することにより、立体シートからなるトップシート10を構成し、必要に応じて、液拡散性シート40及び立体ギャザーをあらかじめトップシート10に配置した上で、あらかじめ所定のスリット23が設けられた吸収体20を、トップシート10とバックシート30との間に挟持し、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで、製造することができる。
【0046】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0047】
<実施例1から3、比較例1から3>
下記のトップシート及び吸収体を用いた吸収性物品を実施例1から3とし、液戻り量、吸収速度及び身体側表面のドライ感、着用時の風合いについて評価し、その結果を下記の表1にまとめた。
【0048】
また、比較例1から3の吸収性物品を、実施例1から3の吸収性物品の作製方法と基本的には同様の作製方法で作製し、異なる構成に係る部分等や、液戻り量、吸収速度及び身体側表面のドライ感、着用時の風合いの結果を表1にまとめた。
【0049】
<トップシートの作製>
上層シートと下層シートとを溶着で部分的に接合することにより、上層シートと下層シートとの非接合部において上層シートと下層シートとの間に中空空間が形成されるように、立体シートからなるトップシートを作製した。
【0050】
<吸収体の作製>
高吸収性ポリマーと吸収性繊維であるフラッフパルプとを混合した後、得られた吸収性コアの略中央部に厚み方向に吸収体を貫通するスリット(長手方向の寸法×幅方向の寸法:120mm×7mm)を幅方向に11mmの間隔を空けて2本形成し、スリットが形成された吸収性コアをキャリアシートで包み、吸収体を作製した。
【0051】
<吸収性物品の作製>
このように作製した吸収体を作製したトップシートとバックシートとの間に挟持し、トップシートとバックシートの全周に亘ってホットメルト接着剤を用いて固定し、テープ止めタイプおむつを作製した。また、上層シート及び下層シートとしては、坪量が20g/mであるエアスルー不織布を用い、キャリアシートとしては、坪量が16g/mであるパルプティシュを用い、バックシートとしては、厚みが18μmである通気性液不透過性フィルムを用いる。なお、吸収性物品の作製において、トップシートを、スリットの形状に追従させずに、同一平面上に設けている。
【0052】
(液戻り量)
吸収性物品の長手方向、かつ幅方向中央部に水を300ml注入し、60秒間経過後に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製No.2ろ紙、直径55mm)を注入部の中心に置き、ろ紙の上に圧力が1gf/cmとなるように、錘を載せた。錘を載せてから30秒間経過後に、ろ紙の重量を測り、試験前後のろ紙の重量差(g)を液戻り量とした。表1に記載した液戻り量は、10検体のサンプルについて試験した結果の平均値である。液戻り量が少ないほど、吸収性能に優れることを示す。
【0053】
(吸収速度)
中央に内径30mmの穴が開いており、質量2kgとした測定治具を、吸収性物品の中心部の上に置き、35gf/cmの荷重下において上部の穴から0.9%生理食塩水を40ml注入し、生理食塩水が吸収性物品に接触した時点を開始点とし、測定治具の中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれる時点を終了点として時間を計測した。数値が小さいほど吸収性能に優れることを示す。
【0054】
(身体側表面のドライ感)
20名のパネラーにより、身体側表面のドライ感について、「ドライ感に優れる」又は「ドライ感に優れない」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。なお、○を合格とし、×を不合格とした。
○:「ドライ感に優れる」が10人以上のとき
×:「ドライ感に優れない」がいないか、1人以上10人未満のとき
【0055】
(着用時の風合い)
20名のパネラーにより、着用時の風合いについて、「風合いがよい」又は「風合いが悪い」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。なお、○を合格とし、×を不合格とした。
○:「風合いがよい」が10人以上のとき
×:「風合いが悪い」がいないか、1人以上10人未満のとき
【0056】
【表1】
【0057】
表1から、本発明の実施例1から3に係る吸収性物品によれば、比較例1から3に係る吸収性物品に比べ、吸収速度が速く、着用時の風合いが良好で、体液吸収直後の身体側表面のドライ感に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0058】
1 吸収性物品
10 トップシート
11 上層シート
12 下層シート
13 非接合部
14 接合部
20 吸収体
21 吸収性コア
22 キャリアシート
23 スリット
30 バックシート
40 液拡散性シート
図1
図2