(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】駆動ユニット、電気パワーコンバータ、車両、および電気パワーコンバータの駆動方法
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20240214BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240214BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240214BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/28 Q
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2018238591
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-11-24
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518334554
【氏名又は名称】ヴァレオ ジーメンス エーアオトモーティヴェ ゲルマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Valeo Siemens eAutomotive Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ フープナー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ブーヒャー
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-024388(JP,A)
【文献】特開2016-208080(JP,A)
【文献】TI Designs, IGBT Gate Driver Reference Design for Parallel IGBTs With Short-Circuit Protection and External BJT Buffer,TIDUC70A,Texas Instruments,2017年01月,Pages 1-32,[online],[令和4年11月8日検索],インターネット,<URL:http://www.ti.com/lit/ug/tiduc70a/tiduc70a.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 3/28
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御のスイッチング素子(13)の駆動ユニット(11)であって、
前記スイッチング素子(13)の制御端子(20)に接続する第1出力端子(29)と、
前記スイッチング素子(13)の他端子(21)に接続する第2出力端子(30)と、
ハイ側端子(35)とロー側端子(36)を有し、前記スイッチング素子(13)のスイッチングを示す制御信号(23)に基づいて、これらの端子(35,36)の一方を前記駆動ユニット(11)の前記第1出力端子(29)に接続するように制御可能な出力段部(31)と、
前記出力段部(31)に供給し、入力電圧(41)を前記ハイ側端子(35)と前記駆動ユニット(11)の前記第2出力端子(30)との間の正の第1電圧(45)と、前記駆動ユニット(11)の前記第2出力端子(30)と前記ロー側端子(36)との間の正の第2電圧(46)とに変換するように構成されたDC変換部(32)とを備え、
前記DC変換部(32)は、前記第1電圧(45)の値が閾値を超えているときに前記第2電圧(46)の値が前記入力電圧(41)の上昇とともに前記第1電圧(45)より上昇するように、前記第1電圧(45)と前記第2電圧(46)を供給するように構成され、
前記出力段部(31)は、前記駆動ユニット(11)の前記第1出力端子(29)とロー側端子(36)との間に接続され、前記ロー側端子(36)を流れる電流が第2電圧(46)の増加に対応して増加するのを抑制するように構成されているアクティブ副部(55)を備えている、駆動ユニット(11)。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動ユニットであって、前記閾値は前記第1電圧(45)が前記DC変換部(32)によって制限される値である、駆動ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の駆動ユニットであって、前記DC変換部(32)は、前記駆動ユニット(11)の前記第2出力端子(30)に接続されたセンタータップ(74a)を有するプッシュプル副部(67)を備えている、駆動ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動ユニットであって、前記DC変換部(32)は、前記入力電圧(41)の正電位と前記プッシュプル副部(67)の制御端子(74)との間に接続され、前記閾値を規定するように構成された基準値副部(68)を備えている、駆動ユニット。
【請求項5】
請求項1
乃至4のいずれかに記載の駆動ユニットであって、前記出力段部(31)は、前記駆動ユニット(11)の前記第1出力端子(29)に接続されたセンタータップ(58)、および/または前記制御信号(23)を受信するための制御端子(59)を有するプッシュプル副部(52)を備えている、駆動ユニット。
【請求項6】
請求項1に記載の駆動ユニットであって、
前記アクティブ副部(55)は、基準値素子(60)と増幅回路(61)とを備え、
前記増幅回路(61)は、前記第2電圧(46)が前記基準値素子(60)により提供された基準電圧を超えると前記電流を抑制するように構成されている、駆動ユニット。
【請求項7】
請求項1
乃至6のいずれかに記載の駆動ユニットであって、
前記駆動ユニット(11)は、互いにガルバニック分離された一次側(25)と二次側(26)とに分割され、
前記駆動ユニット(11)の前記DC変換部(32)および/または前記出力段部(31)および/または前記出力端子(29、30)は、前記二次側(26)の一部であり、
前記駆動ユニット(11)は、前記一次側(25)の一部として、前記駆動ユニット(11)に供給電圧を供給するための第1入力端子(27)および/または前記制御信号(23)を受信するための第2入力端子(28)および/または前記スイッチング素子(13)のスイッチングOFF速度を示す制御情報(24)を受信するための第3入力端子(100)を備える、駆動ユニット。
【請求項8】
請求項1
乃至7のいずれかに記載の駆動ユニットであって、前記駆動ユニット(11)は、入力電圧(79)を前記入力電圧(41)として前記DC変換部(32)に供給される出力電圧(86)に変換するように構成された第2のDC変換部(33)を備えている、駆動ユニット。
【請求項9】
請求項7または8に記載の駆動ユニットであって、一方における前記第1入力端子(27)と、他方における前記駆動ユニット(11)の前記DC変換部(32)、前記出力段部(31)、および前記出力端子(29、30)とが前記第2のDC変換部(33)によりガルバニック分離されている、駆動ユニット。
【請求項10】
請求項8または9に記載の駆動ユニットであって、前記第2のDC変換部(33)は、
LLCコンバータを含む共鳴コンバータを備えている、駆動ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の駆動ユニットであって、
前記駆動ユニット(11)は、前記共鳴コンバータの共鳴周波数を含む範囲内のスイッチング周波数で前記共鳴コンバータのスイッチング副部(80)を制御するか、または前記スイッチング素子(13)のスイッチングOFF速度を示す前記制御情報(24)に基づいて前記共鳴コンバータの共鳴周波数より低いスイッチング周波数で前記共鳴コンバータのスイッチング副部(80)を制御するように構成されている、駆動ユニット。
【請求項12】
請求項1に記載された駆動ユニットであって、
入力電圧(79)を、前記DC変換部(32)にその前記入力電圧(41)として供給される出力電圧(86)に変換するように構成され
、共鳴コンバータを備える第2のDC変換部(33)と、
前記駆動ユニット(11)に供給電圧を供給するための第1入力端子(27)と、
前記制御信号(23)を受信するための第2入力端子(28)と、
前記スイッチング素子(13)のスイッチングOFF速度を示す制御情報(24)を受信するための第3入力端子(100)と
、を
さらに備え、
前記駆動ユニット(11)は、互いにガルバニック分離された一次側(25)と二次側(26)とに分割され、前記駆動ユニット(11)の前記DC変換部(32)、前記出力段部(31)および前記出力端子(29、30)は
、前記二次側(26)の一部であり、
前記第1入力端子(27)、前記第2入力端子(28)および前記第3入力端子(100)は
、前記一次側(25)の一部であり、
前記制御情報(24)に基づいて、前記共鳴コンバータの共鳴周波数を含む範囲内のスイッチング周波数で前記共鳴コンバータのスイッチング副部(80)を制御するか、または前記共鳴コンバータの共鳴周波数より低いスイッチング周波数で前記共鳴コンバータのスイッチング副部(80)を制御するように構成されている、駆動ユニット(11)。
【請求項13】
インバータ、DC/DCコンバータ、またはAC/DCコンバータ
を含む電気パワーコンバータ(1)
を備える、請求項1乃至12のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載の電気パワーコンバータ(1)
を備えた車両(101)であって、
前記電気パワーコンバータ(1)は、前記車両の電気装置(5)に供給するように構成され、および/または前記一つの電気パワーコンバータ(1)は、前記車両(101)の結線系のおけるDC/DCコンバータであり、および/または前記一つの電気パワーコンバータ(1)は、前記車両(101)の高電圧バッテリ(3)のための車載充電器として構成されたAC/DCコンバータである、車両。
【請求項15】
電圧制御のスイッチング素子(13)と駆動ユニット(11)を備えた電気パワーコンバータ(1)の駆動方法であって、
駆動ユニット(11)は、
前記スイッチング素子(13)の制御端子(20)に接続する第1出力端子(29)と、
前記スイッチング素子(13)の他端子(21)に接続する第2出力端子(30)と、
ハイ側端子(35)とロー側端子(36)を有し、前記スイッチング素子(13)のスイッチングを示す制御信号(23)に基づいて、これらの端子(35,36)の一方を前記駆動ユニット(11)の前記第1出力端子(29)に接続するように制御される出力段部(31)と、
前記出力段部(31)に供給し、入力電圧(41)を前記ハイ側端子(35)と前記駆動ユニット(11)の前記第2出力端子(30)との間の正の第1電圧(45)と、前記駆動ユニット(11)の前記第2出力端子(30)と前記ロー側端子(36)との間の正の第2電圧(46)とに変換するDC変換部(32)であって、前記第1電圧(45)の値が閾値を超えているときに前記第2電圧(46)の値を前記入力電圧(41)の上昇とともに前記第1電圧(45)より上昇するように、前記第1電圧(45)と前記第2電圧(46)を供給するDC変換部(32)とを備え、
前記出力段部(31)は、前記駆動ユニット(11)の前記第1出力端子(29)とロー側端子(36)との間に接続され、前記ロー側端子(36)を流れる電流が第2電圧(46)の増加に対応して増加するのを抑制するように構成されているアクティブ副部(55)を備えている、電気パワーコンバータ(1)の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御のスイッチング素子の駆動ユニットであって、スイッチング素子の制御端子に接続する第1出力端子と、スイッチング素子の他端子に接続する第2出力端子と、ハイ側端子とロー側端子を有してスイッチング素子のスイッチングを示す制御信号に基づいて、これらの端子の一方を第1出力端子に接続するように制御可能な出力段部と、出力段部に供給し、入力電圧をハイ側端子と駆動ユニットの第2出力端子との間の正の第1電圧と駆動ユニットの第2出力端子とロー側端子との間の正の第2電圧とに変換するように構成されたDC変換部とを備えた、電圧制御のスイッチング素子の駆動ユニットに関する。また、本発明は、電気パワーコンバータ、車両、および電気パワーコンバータの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動ユニットは、典型的には電気パワーコンバータの制御ユニットから受信する制御信号に基づいて、電気パワーコンバータの電圧制御のスイッチング素子に制御端子における充放電のために適切なパワーを供給するものとして広く知られている。駆動ユニットは、スイッチング素子の制御端子に接続する第1出力端子と、エミッタやソース端子などスイッチング素子の他端子に接続する第2出力端子とを備えている。制御信号状態に基づいて、出力段部がそのハイ側端子を第1出力端子に接続してスイッチング素子をONにし、そのロー側端子を第1出力端子に接続してスイッチング素子をOFFにする。DC変換部が、ハイ側端子と第2出力端子の間に正の第1電圧を印加し、第2出力端子とロー側端子の間に正の第2電圧を印加する。これにより、第1出力端子と第2出力端子の間において、スイッチング素子がONになると正電圧がかかり、スイッチング素子がOFFになると負電圧がかかる。
【0003】
スイッチング素子によりオーム誘導をOFFにするとき、大きな過渡電圧(du/dt)および過渡電流(di/dt)が発生してスイッチング素子を傷める虞がある。特に、整流セルの寄生により、過渡電圧がスイッチング素子の最大定格電圧を超えることがあり得る。過渡電圧のオーバーシュートは、スイッチング素子のスイッチング速度の影響を受ける。ここで、スイッチングOFF速度を遅くすると、スイッチングロスが大きくなる代わりに過渡電圧が低くなる。逆に、スイッチング速度を速くすると、過渡電圧は高くなるがスイッチングロスは小さくなる。そこで、特にスイッチング素子の実温度、車両の高電圧バッテリにより供給される電圧などの切り替えられる電圧、およびオーム誘導の実電流などによって決まる最適なスイッチングOFF速度でスイッチング素子を駆動することが望まれている。
【0004】
スイッチング素子をOFFにするときに第1出力端子からロー側端子への電流が流れる、制御可能に並列接続された二つの抵抗を有する出力段部を使用することが既に提案されている。ここでは、スイッチングOFF速度が遅いときは一方の抵抗を電流が流れ、スイッチングOFF速度が速いときは両方の抵抗を電流が流れるようになっている。制御ユニットからスイッチングOFF速度を示す追加的な制御情報が受信されると、二つの抵抗が並列に接続されるように制御される。
【0005】
しかし、このようなマルチ抵抗の構成では、スイッチングOFF速度について不正確で段階的な調整しかできない。さらに、特に複数のスイッチングOFF速度を相応する数の抵抗によって実現する場合には、大きな取付スペースと追加的な部品が必要になる。さらに、出力段部に対して制御情報が送信される必要があり、追加的な結線が必要になる。特に、制御ユニットが出力段部からガルバニック分離されている場合には、制御情報は、光カプラなどの絶縁素子による絶縁バリアを超えて送信される必要がある。
【発明の概要】
【0006】
そこで、本発明の一つの目的は、特に、正確なスイッチングOFF速度の変更が可能で、取付スペースが少なく、結線や絶縁の装備が少ないように、改善された駆動ユニットを提供することである。
【0007】
上記目的は、第1電圧の値が閾値を超えているときに第2電圧の値が入力電圧の上昇とともに第1電圧より上昇するように、DC変換部が第1電圧と第2電圧を供給するように構成することで達成できる。
【0008】
本発明は、第2出力端子とロー側端子の間に供給される第2電圧を変化させることでスイッチング素子のスイッチングOFF速度を変化させるという考え方に基づいている。第2電圧が増加すると、駆動ユニットの第1出力端子と第2出力端子の間の負電圧の絶対値も増加する。スイッチング素子をOFFにすると、第2電圧が高くなりスイッチング素子の制御端子の容量の放電電流も大きくなる。結果として、スイッチングOFF速度も速くなり、di/dtも速くなる。第1電圧が駆動ユニットの好ましい動作条件としての閾値を超えると、第2電圧の変化とそれに伴うスイッチングOFF速度の変化は、DC変換部の入力電圧の変化に対応して特定される。
【0009】
有利には、スイッチングOFF速度を、駆動ユニットの第1出力端子と出力段部のロー側端子の間の抵抗変化とは独立に、すなわちその代わりまたは追加的に変化させることができる。その場合、スイッチングOFF速度は、DC変換部の入力電圧の変化と同じように精度よく変化させることができる。さらに、スイッチングOFF速度を示す制御情報の出力段部への送信を省略することができる。したがって、結線が簡易化される。
【0010】
典型的には、スイッチング素子は半導体スイッチング素子である。電圧制御のスイッチング素子は、絶縁ゲート電界効果トランジスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワートランジスタを備えている。スイッチング素子は、さらにトランジスタに並列に接続されたダイオードを備えている。トランジスタが絶縁ゲート電界効果トランジスタである場合、ダイオードはトランジスタのボディダイオードで構成されていてもよい。出力段部は、駆動ユニットの第1出力端子に接続された出力端子を備えていてもよい。出力段部は、ハイ側端子と出力段部の出力端子の間に接続されて第1電圧とともにスイッチングON速度を規定する抵抗を備えていてもよい。
【0011】
DC変換部は、ハイ側端子に接続された第1出力端子、および/またはロー側端子に接続された第2出力端子、および/または第2出力端子に接続された第3出力端子を備えていてもよい。典型的には、第1電圧は出力段部の第1出力端子と出力段部の第3出力端子の間にかかり、および/または第2電圧は出力段部の第3出力端子と出力段部の第2出力端子の間にかかる。出力段部は、入力電圧が第1出力端子と第2出力端子の間にかかるように構成されていてもよい。好ましくは、DC変換部は、10Vから30Vの間の値の第1電圧、および/または0Vから20Vの間の値の第2電圧を供給するように構成されている。DC変換部は、第1出力端子と第3出力端子の間に接続されたバッファコンデンサ、および/または第2出力端子と第3出力端子の間に接続されたバッファコンデンサを備えていてもよい。
【0012】
一般的に、閾値を超えると入力電圧の増加とともに生じる第1電圧の増加をわずかにするようにDC変換部を構成することができる。ここで、閾値は、DC変換部により第1電圧が制約される値であることが好ましい。これは、通常はスイッチング素子をONにするときに過電圧は生じず、第1電圧を変化させてスイッチングON速度を変化させる必要がないためである。さらに、スイッチング素子がONの状態においては、伝導損失を安定させるために制御電圧は一定であることが望ましい。したがって、第1電圧は、閾値を超えて、特に実質的に一定であってよい。DC変換部は、閾値より小さい値の入力電圧を、第2電圧を特に実質的にゼロとして第1電圧に変換するように構成してもよい。追加的または代わりに、DC変換部は、閾値より大きい値の入力電圧を、閾値に相当する値の第1電圧、および/または入力電圧と第1電圧の差としての第2電圧に変換するように構成してもよい。
【0013】
好ましくは、DC変換部は、駆動ユニットの第2出力端子に接続されたセンタータップを有するプッシュプル副部を備えている。それにより、センタータップとスイッチング素子の他端子が、確実に同一電位になる。典型的には、プッシュプル副部は、npnトランジスタとpnpトランジスタ、またはnチャンネルトランジスタとpチャンネルトランジスタなど、特に異なるタイプのトランジスタとして、入力電圧の両電位の間に直列に接続された二つのトランジスタを備えている。
【0014】
さらに、DC変換部は、入力電圧の正電位とプッシュプル副部の制御端子との間に接続され、閾値を規定するように構成された基準値副部を備えていてもよい。基準値副部は、正電位と、好ましくはプッシュプル副部のトランジスタの制御端子の共通ノードである制御端子との間に接続されたツェナーダイオードを備えていてもよい。ツェナーダイオードは、抵抗と直列に接続されてもよい。抵抗は、入力電圧の負電位と制御端子とに接続されてもよい。そして、閾値は、ツェナーダイオードのツェナー電圧により容易に規定されてもよい。
【0015】
好ましくは、出力段部は、駆動ユニットの第1出力端子に接続されたセンタータップ、および/または制御信号を受信するための制御端子を有するプッシュプル副部を備えていてもよい。ここでは、制御信号がスイッチング素子のスイッチングONを示すときは、出力段部のプッシュプル副部によりハイ側端子が駆動ユニットの第1出力端子に接続され、制御信号がスイッチング素子のスイッチングOFFを示すときは、出力段部のプッシュプル副部によりロー側端子が駆動ユニットの第1出力端子に接続される。典型的には、プッシュプル副部は、npnトランジスタとpnpトランジスタ、またはnチャンネルトランジスタとpチャンネルトランジスタなど、特に異なるタイプのトランジスタとして、直列に接続された二つのトランジスタを備えている。
【0016】
一般的に、出力段部は、ロー側端子と、駆動ユニットの第1出力端子または出力段部の出力端子との間に接続された抵抗を備えている。追加的または代わりに、出力段部は、駆動ユニットの第1出力端子とロー側端子との間に接続され、ロー側端子に流れる電流が第2電圧の増加に対応して増加するのを抑制するように構成されたアクティブ副部を備えていてもよい。これにより、出力段部の出力端子とロー側端子との間に抵抗のみ配置した場合に比べて、スイッチングOFF速度が上昇する。ここで、アクティブ副部により抑制された電流は入力電圧の変化に依存し、その電流の変化のため、スイッチングOFF速度を示す制御情報の出力段部への送信は回避される。
【0017】
アクティブ副部は、基準値素子と増幅回路とを備え、増幅回路は、第2電圧が基準値素子により提供された基準電圧を超えると電流を抑制するように構成されてもよい。典型的には、基準値素子は、駆動ユニットの第2出力端子とロー側端子との間に接続されている。基準値素子は、直列に接続されたツェナーダイオードと抵抗を備え、それらの間のセンタータップが増幅回路の入力に接続されてもよい。増幅回路は、トランジスタまたはオペアンプを備えていてもよい。なお、増幅回路は、スイッチング動作範囲またはアクティブ動作範囲で動作してもよい。増幅回路がスイッチング動作範囲で動作する場合には、増幅回路の抵抗が出力段部の出力端子とロー側端子との間に接続された抵抗に並列に接続されてもよい。
【0018】
安全上の理由から、駆動ユニットは、互いにガルバニック分離された一次側と二次側とに分割され、駆動ユニットのDC変換部および/または出力段部および/または出力端子は二次側の一部であり、駆動ユニットに供給電圧を供給するための駆動ユニットの第1入力端子および/または制御信号を受信するための駆動ユニットの第2入力端子および/またはスイッチング素子のスイッチングOFF速度を示す制御情報を受信するための駆動ユニットの第3端子は一次側の一部であることが好ましい。駆動ユニットの第2入力端子は、特に光カプラ、誘導絶縁素子、または容量絶縁素子などの絶縁素子によってガルバニック分離され、一次側と二次側の間のインターフェースを形成してもよい。
【0019】
有利には、駆動ユニットは、入力電圧を入力電圧として第1DC変換部に供給される出力電圧に変換するように構成された第2DC変換部を備えている。第2DC変換部は、第1DC変換部の入力として、スイッチングOFF速度に対応した所望の値の第1DC変換部の入力電圧を供給するように使用されてもよい。典型的には、第2DC変換部の入力電圧は、駆動ユニットの第1入力端子から供給される。第2DC変換部を省略する場合には、第1DC変換部の入力電圧は、駆動ユニットの第1入力端子から供給される。
【0020】
さらに、一方における第1入力端子と、他方における駆動ユニットの第1DC変換部、出力段部、および出力端子とが第2DC変換部によりガルバニック分離されていてもよい。
【0021】
好ましくは、第2DC変換部は、共鳴コンバータ、特にLLCコンバータを備えている。第2DC変換部は、一方における駆動ユニットの第1入力端子と、他方における第1DC変換部と出力段部と出力端子とをガルバニック分離する変圧副部を備えてもよい。特に、変圧副部の一次側において、共鳴コンバータはスイッチング部および/または共鳴回路副部を備えている。変圧副部の二次側において、共鳴コンバータは、変圧副部により変圧された電圧を整流するように構成された整流副部と、好ましくは、整流された電圧を平滑化する平滑コンデンサ副部とを備えてもよい。
【0022】
第1の選択肢として、駆動ユニットは、共鳴コンバータの共鳴周波数を含む範囲内のスイッチング周波数で共鳴コンバータのスイッチング副部を制御するように構成されていてもよい。これにより、実質的に第2DC変換部の負荷には依存せずに入力電圧を供給できる。典型的には、この範囲は共鳴周波数の0.9倍から1.1倍の範囲である。
【0023】
第2の選択肢として、駆動ユニットは、スイッチング素子のスイッチングOFF速度を示す制御情報に基づいて共鳴コンバータの共鳴周波数より低いスイッチング周波数で共鳴コンバータのスイッチング副部を制御するように構成されていてもよい。これにより、電圧変換比とスイッチングOFF速度は、共鳴コンバータの負荷に依存する領域内でスイッチング周波数に対応して変化する。ここで、スイッチング周波数は、第2DC変換部の所望の出力電圧に基づいて決定されてもよい。
【0024】
上記の両選択肢に関して、スイッチング副部は、ハーフブリッジ内またはフルブリッジ内に配置された複数のスイッチを備えてもよい。
【0025】
さらに、本発明は、本発明による駆動装置を備えた電気パワーコンバータに関する。好ましくは、電気パワーコンバータはインバータである。または、電気パワーコンバータは、特にブーストコンバータ、降圧型コンバータ、ブースト降圧型複合コンバータ、フライバックコンバータ、位相シフトフルブリッジ、容量ハーフブリッジ、または他のハードスイッチハーフブリッジを備えたDC/DCコンバータであってよい。さらに、電気パワーコンバータは、特別に制御されたAC/DCコンバータであってよい。
【0026】
電気パワーコンバータは、制御信号および/または制御情報を提供する制御ユニットを備えてもよい。好ましくは、制御ユニットは、スイッチング周波数を決定し、制御情報として駆動ユニットに提供するように構成されている。
【0027】
さらに、本発明は、本発明による電気パワーコンバータを少なくとも一つ備えた車両に関する。ここでは、一つの電気パワーコンバータは、車両の電気装置に供給するように構成され、および/または一つの電気パワーコンバータは、車両の結線系のおけるDC/DCコンバータであり、および/または一つの電気パワーコンバータは、車両の高電圧バッテリのための車載充電器として構成されたAC/DCコンバータである。
【0028】
最後に、本発明は、電圧制御のスイッチング素子と駆動ユニットを備えた電気パワーコンバータの駆動方法に関する。ここで、駆動ユニットは、スイッチング素子の制御端子に接続する第1出力端子と、スイッチング素子の他端子に接続する第2出力端子と、ハイ側端子とロー側端子を有し、スイッチング素子のスイッチングを示す制御信号に基づいて、これらの端子の一方を駆動ユニットの第1出力端子に接続するように制御される出力段部と、出力段部に供給し、入力電圧をハイ側端子と駆動ユニットの第2出力端子との間の正の第1電圧と、駆動ユニットの第2出力端子とロー側端子との間の正の第2電圧とに変換するDC変換部であって、第1電圧の値が閾値を超えているときに第2電圧の値が入力電圧の上昇とともに第1電圧より上昇するように第1電圧と第2電圧を供給するDC変換部とを備えている。
【0029】
本発明の駆動ユニットについてのすべての記述は、本発明の電気パワーコンバータ、本発明の車両、および本発明の方法にも同様に適用され、本発明の駆動ユニットについての上記効果も同様に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】電気パワーコンバータの一実施形態のブロック図である。
【
図2】
図1に示す電気パワーコンバータの駆動ユニットのブロック図である。
【
図3A】時間に対するスイッチング素子のスイッチングパスにおける電圧のグラフである。
【
図3B】時間に対するスイッチング素子のスイッチングパスにおける電圧のグラフである。
【
図4】
図2に示す駆動ユニットの出力段部の概要図である。
【
図5】
図2に示す駆動ユニットの第1DC変換部の概要図である。
【
図6】
図2に示す駆動ユニットの第2DC変換部の概要図である。
【
図7】正規化スイッチング周波数における、
図6に示す第2DC変換部の出力電圧変換比のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の詳細および効果について説明する。
【0032】
図1は、インバータとして例示する、第1実施形態の電気パワーコンバータ1のブロック図である。電気パワーコンバータ1のDCリンクコンデンサ2aを備えたDCリンク2が、例えば定格500Vの高電圧バッテリである第1DC電圧源3に接続されている。電気コンバータ1のAC出力4が電気装置5に接続されて、電気装置5のステータ巻線6に多相AC電流が供給される。
【0033】
また、電気パワーコンバータ1は、DCリンク2とAC出力4の間に接続されているパワーユニット7と、低電圧入力8と、DC変換ユニット9と、制御ユニット10と、駆動ユニット11とを備えている。
【0034】
ここでは、電気パワーコンバータ1はインバータであるので、パワーユニット7は、互いに並列に接続され、DCリンク2の平滑コンデンサ(不図示)に並列に接続された複数のハーフブリッジ12を備えている。AC出力4の各相に対して一つのハーフブリッジ12が対応している。各ハーフブリッジ12は、DCリンク2の高電位14に接続された電圧制御スイッチング素子13と、DCリンク2の低電位16に接続された電圧制御スイッチング素子15を備えている。スイッチング素子13、15は直列に接続されており、センタータップ17がAC出力4の一つの相に接続されている。
【0035】
各スイッチング素子13、15は、互いに並列に接続された、絶縁ゲートバイポーラトランジスタであるパワートランジスタ18とダイオード19を備えている。または、パワートランジスタ18は絶縁ゲート電界効果トランジスタであり、ダイオード19は絶縁ゲート電界効果トランジスタのボディダイオードで構成されていてもよい。各スイッチング素子13、15は、パワートランジスタ18のゲート端子で構成された制御端子20とスイッチング素子13、15で実現されているスイッチングパスに接続された他端子21を備えている。パワートランジスタ18によるスイッチング素子13、15の実現に関して、それぞれの他端子21はエミッタ端子またはソース端子により構成されている。
【0036】
低電圧入力8は、例えば定格12Vの定電圧バッテリである第2DC電圧源22に接続されている。低電圧入力8を介して制御ユニット10の動作電圧が供給される。なお、それらの間の結線は簡略化のため、
図1において図示を省略している。さらに、低電圧入力8は、駆動ユニット11に電圧を供給するように構成された、例えば降圧型コンバータやブーストコンバータなどのDC変換ユニット9に接続されている。
【0037】
制御ユニット10は、各スイッチング素子13、15を切り替えるための制御信号23を出力するように構成されている。制御信号23は、パルス幅変調スイッチングパターンを表している。このパターンにより、多相AC電流がAC出力4に出力されるように各ハーフブリッジ12の各スイッチング素子13、15がON/OFFされる。
【0038】
さらに、制御ユニット10は、スイッチング素子13、15に好ましいスイッチングOFF速度を示す制御情報24を提供するように構成されている。ここでは、制御ユニット10は、スイッチング素子13、15の実温度、DCリンク2の実電圧、AC出力4の実負荷電流、およびスイッチング素子13、15を冷却するクーラントの実温度に基づいて、スイッチングOFF速度を決定する。スイッチング素子13、15をOFFにする際に、特に整流時の寄生インダクタンスにより生じる過渡電圧(du/dt)と過渡電流(di/dt)がスイッチング素子13、15の最大定格値を超えないように、スイッチングOFF速度が決定される。このような制約のもと、スイッチングOFF速度は、スイッチング損失をできるだけ抑制するように設定される。
【0039】
さらに、電気パワーコンバータ1は、図中において一点鎖線で示されているように、互いにガルバニック分離された一次側25と二次側26とに分割されている。一次側25は電気パワーコンバータ1の低電圧側として位置付けられ、低電圧入力8と、DC変換ユニット9と、制御ユニット10とを備えている。二次側26は電気パワーコンバータ1の高電圧側として位置付けられ、DCリンク2と、AC出力4と、パワーユニット7とを備えている。駆動ユニット11は一次側25と二次側26の間のインターフェースである。
【0040】
図2は、各ハーフブリッジ12のスイッチング素子13、15の一方に接続された駆動ユニット11のブロック図である。以下において、スイッチング素子13に接続された駆動ユニット11について詳細に説明する。すべての記載は、スイッチング素子13、15の他方に接続された駆動ユニット11についても同様に該当する。
【0041】
駆動ユニット11は、DC変換ユニット9から供給電圧が供給される第1入力端子27と、制御ユニット10から制御信号を受信する第2入力端子28を備えている。さらに、駆動ユニット11は、直列抵抗20aを介してスイッチング素子13の制御端子20に接続される第1出力端子29を備えている。さらに、駆動ユニット11は、スイッチング素子13の他端子21に接続される第2出力端子30を備えている。さらに、駆動ユニット11は、出力段部31と、第1DC変換部32と、第2DC変換部33と、絶縁素子34とを備えている。
【0042】
出力段部31は、ハイ側端子35と、ロー側端子36と、制御信号23を受信する第3入力端子37と、第4入力端子38と、駆動ユニット11の第1出力端子29に接続された出力端子39とを備えている。出力段部31は、制御信号23に基づいて、ハイ側端子35とロー側端子36のいずれかを駆動ユニット11の第1出力端子29に接続された出力端子39に接続するように制御可能である。ここで、制御信号23がスイッチング素子13のスイッチングONを示すときは、ハイ側端子35が出力端子39に接続され、制御信号23がスイッチング素子13のスイッチングOFFを示すときは、ロー側端子36が出力端子39に接続される。
【0043】
第1DC変換部32は、入力電圧41がかかる入力端子40と、ハイ側端子35に接続された第1出力端子42と、ロー側端子36に接続された第2出力端子43と、駆動ユニット11の第2出力端子30に接続された第3出力端子44とを備えている。第1DC変換部32は、出力段部31に供給するように構成されている。ここで、第1DC変換部32は、入力電圧41をハイ側端子35と第2出力端子30の間の正の第1電圧45に変換する。第1電圧45は、第1出力端子42と第3出力端子44の間に印加される。さらに、第1DC変換部32は、入力電圧41を駆動ユニット11の第2出力端子30とロー側端子36の間の正の第2電圧46に変換する。第2電圧46は、第3出力端子44と第2出力端子43の間に印加される。
【0044】
制御信号23がスイッチング素子13のスイッチングONを示すときは、正の第1電圧45がスイッチング素子13をONにするために使用される。制御信号23がスイッチング素子13のスイッチングOFFを示すときは、反転した第2電圧46、すなわち負電圧がスイッチング素子13をOFFするために使用される。
【0045】
第1DC変換部32は、第1電圧45の値が第1電圧45が制限されている閾値を超えているときに、第2電圧46の値が入力電圧41の上昇とともに上昇するように、第1電圧45と第2電圧46を供給するように構成されている。ここで、駆動ユニット11の通常動作モードにおいては、入力電圧41の値は閾値以上である。そして、入力電圧41が閾値に等しいとき、第1電圧45は実質的に入力電圧41に相当し、第2電圧46は実質的にゼロである。入力電圧41が上昇すると、第1電圧45は実質的に一定値に維持され、第2電圧46は上昇する。これにより、スイッチング素子13をOFFにするための電圧はさらに大きい負電圧となる。このように、閾値を超えて入力電圧41を変化させることで、大きい負電圧が制御端子20の容量、すなわちパワートランジスタ18のゲート容量を小さい負の電圧の場合よりも速く放電して、スイッチング素子13のスイッチングOFF速度を変化させる。
【0046】
図3Aおよび
図3Bは、時間tに対するスイッチング素子13のスイッチングパスにおける電圧48a、48b、48c、48dを示すグラフである。
図3Aは、スイッチング素子13が絶縁ゲートバイポーラトランジスタの場合を示し、電圧48a、48b、48c、48dはコレクタエミッタ電圧(Vce)となる。それに対して、
図3Bは、スイッチング素子13が絶縁ゲート電界効果トランジスタの場合を示し、電圧48a、48b、48c、48dはドレンソース電圧(Vds)となる。ここで、例示的な構成として、電圧48aは第2電圧46が0V、電圧48bは第2電圧46が5V、電圧48cは第2電圧46が10V、電圧48dは第2電圧46が15Vの場合をそれぞれ示している。
【0047】
第1出力端子29と第2出力端子30の間の電圧49の減少に対応した、第2電圧46の上昇に伴って、電圧48a、48b、48c、48dはオーバーシュートが高くなるものの立ち上がりが早くなる。このように、入力電圧41を閾値電圧を超えるように変化させることで、大きい負電圧が制御端子20の容量、すなわちパワートランジスタ18のゲート容量を小さい負電圧の場合よりも速く放電して、スイッチング素子13のスイッチングOFF速度を変化させる。ただし、電圧48a、48b、48c、48dの最大値は最大定格ブロッキング電圧51に制限される。
【0048】
図4は、出力段部31の概要図である。出力段部31は、プッシュプル副部52と、二つの抵抗53、54と、アクティブ副部55とを備えている。
【0049】
プッシュプル副部52は、二つの異なるタイプのトランジスタで構成された、制御可能なハイ側スイッチ56と制御可能なロー側スイッチ57とを備えている。ここで、ハイ側スイッチ56はnpnトランジスタで実現され、ロー側スイッチ57はpチャンネルトランジスタで実現される。スイッチ56、57の間のセンタータップ58は、出力段部31の出力端子39に接続されている。抵抗53は、ハイ側端子35とプッシュプル副部52のハイ側スイッチ56の間に接続され、抵抗54は、ロー側端子36とロー側スイッチ57の間に接続されている。プッシュプル副部52は、直列抵抗59aを介して各スイッチ56、57の制御端子に接続された制御端子59を備えている。
【0050】
第3入力端子37を介してプッシュプル副部52の制御端子59において、スイッチング素子13のスイッチングONを示す制御信号23を受信すると、ハイ側スイッチ56が閉、ロー側スイッチ57が開となる。そして、抵抗53、第1出力端子29、および第2出力端子30の間において第1電圧45がかかり、正電圧によりスイッチング素子13の制御端子20の容量が充電される。制御端子59においてスイッチング素子13のスイッチングOFFを示す制御信号23を受信すると、ハイ側スイッチ56が開、ロー側スイッチ57が閉となる。そして、第2出力端子30、第1出力端子29、および抵抗54の間において第2電圧46がかかり、負電圧によりスイッチング素子13の制御端子20の容量が放電される。
【0051】
アクティブ副部55は、第2電圧46の増加によりスイッチングOFF速度を増加するように選択的に使用される。アクティブ副部55は、出力端子39とロー側端子36の間において抵抗54と並列に接続され、第2電圧46の増加に対応する電流の増加を抑制するように構成されている。アクティブ副部55は、基準値素子60と増幅回路61とを備えている。増幅回路61は、第2電圧46が基準値素子60により提供される基準電圧を超えているときに、抵抗54を流れる電流に加えて流れる電流を抑制するように構成されている。ここで、増幅回路61は、抵抗54と並列の増幅回路61の一部である抵抗66aを切り替える。
【0052】
基準値要素60は、駆動ユニット11の第2出力端子30に接続された第4入力端子38とロー側端子36の間に接続されている。基準値要素60は、直列に接続されたツェナーダイオード62と抵抗63とを備え、それらの間のセンタータップ64が増幅回路61の入力65に接続されている。増幅回路61は、トランジスタ回路66または作動増幅回路により実現されてもよい。
【0053】
ツェナーダイオード62のツェナー電圧が基準電圧を規定し、基準電圧はスイッチング素子13の制御端子20と他端子21の間の最大定格負電圧の絶対値より小さく選択される。抵抗54を流れる放電電流が所望のスイッチングOFF速度をもたらさないときは、アクティブ副部55によりスイッチングOFF速度を増加することができる。ここで、最大定格負電圧において、抵抗54を流れる電流と増幅回路61を流れる電流の和として所望の電流が得られるように、基準電圧が選択される。
【0054】
図5は、第1DC変換部32の概要図である。第1DC変換部32は、プッシュプル副部67と、基準値副部68と、二つのバッファコンデンサ69、70とを備えている。
【0055】
プッシュプル副部67は、ハイ側トランジスタ71と、ロー側トランジスタ72と、プッシュプル副部67の制御端子74とそれぞれのトランジスタ71、72の制御端子との間に接続された直列抵抗73とを備えている。トランジスタ71、72は入力電圧41の両電位の間に配置される。トランジスタ71、72の間のセンタータップ74aは第3出力端子44に接続され、第3出力端子44を介して駆動ユニット11の第2出力端子30および出力段部31の第4入力端子38とに接続されている。
【0056】
基準値副部68は、直列に接続されたツェナーダイオード75と抵抗76とを備え、それらの間のセンタータップ77が、プッシュプル副部67の制御端子74の接続されている。ツェナーダイオード75により閾値が規定されている。
【0057】
閾値を超えて入力電圧41が変化すると、抵抗76における電圧降下が増加するのに対してツェナーダイオード75における電圧降下は実質的に一定となる。そして、第1電圧45に対応するトランジスタ71における電圧降下が実質的に一定であるのに対して、可変の第2電圧46を供給するロー側トランジスタ72における電圧降下は増加する。第1出力端子42と第3出力端子44の間に接続されたバッファコンデンサ69は、第1電圧45を緩衝する。第3出力端子44と第2出力端子43の間に接続されたバッファコンデンサ70は、第2電圧46を緩衝する。
【0058】
要するに、第1DC変換部32は、スイッチング素子13の他端子21のために、第3出力端子44における基準電位を規定する。また、第1DC変換部32は、第1電圧45が基準値副部68により規定された閾値を超えている通常動作において、スイッチング素子13をONにする実質的に一定な第1電圧45とスイッチング素子13をOFFにする可変の第2電圧46を供給する。ここで、第1電圧45と第2電圧46の和は入力電圧41に等しくなる。このように、入力電圧41を変化させることで、対応してスイッチング素子13のスイッチングOFF速度が変化するようになる。
【0059】
図6は、共鳴コンバータ(ここではLLCコンバータ)によって実現される第2DC変換部33の概要図である。
【0060】
第2DC変換部33は、変換ユニット9により供給される供給電圧が第1入力端子27を介して第2変換部33の入力電圧79として供給される入力端子78を備えている。さらに、第2DC変換部33は、スイッチング副部80と、共鳴回路副部81と、変圧副部82と、整流副部83と、平滑副部84と、第1DC変換部32の入力電圧41である出力電圧86がかかる出力端子85とを備えている。
【0061】
スイッチング副部80は、並列に接続されたトランジスタ89とダイオード90をそれそれぞれが備えた、ハイ側スイッチ87とロー側スイッチ88とを備えている。ここでも、トランジスタ89は絶縁ゲートバイポーラトランジスタでも絶縁ゲート電界効果トランジスタでもよい。後者の場合、ダイオード90はトランジスタ89のボディダイオードで構成される。スイッチング副部80によれば、入力電圧79は共鳴コンバータによる更なる変換のためのAC電圧に切り替えられる。
【0062】
共鳴回路副部81は、ロー側スイッチ88と変圧副部82に並列に接続されて、共鳴コンバータための共鳴周波数を規定する。共鳴回路副部81は、直列に接続されたコンデンサ91およびコイル92と、変圧副部82と並列な励磁インダクタンス93とを備えている。共鳴周波数がコンデンサ91と変圧副部82のインダクタンスとによって規定され、コイル92と励磁インダクタンス93は省略されてもよい。あるいは、共鳴回路副部81は、複数の共鳴周波数を規定するように高次であってもよい。
【0063】
変圧副部82は、一方における第1入力端子27と、他方における出力端子29、30、出力段部31、および第1DC変換部32とをガルバニック分離する。このように、一次側25と二次側26は、駆動ユニット11、第2DC変換部33、および変圧副部82の両側としても考えられる。ガルバニック分離は制御信号23に基づいて絶縁要素34(
図2参照)により達成される。
【0064】
変圧副部82は、変圧副部82の一次側25の電圧を変圧副部82の二次側26の電圧に変圧する。二次側26の電圧は、四つのダイオードで構成されるフルブリッジである整流副部83によりDC出力電圧86に整流され、コンデンサ95を備えた平滑副部84により平滑化される。なお、フルブリッジは例示であり、整流副部83は、代わりにセンタータップ形態、電圧ダブラー形態、または他の広く知られた形態を備えてもよい。
【0065】
図7は、正規化スイッチング周波数(f
s/f
s0)における出力電圧変換比(V
out/V
in)96a、96b、96c、96d、96eのグラフである。ここで、出力電圧変換比は、入力電圧79に対する出力電圧86の比を意味し、正規化スイッチング周波数は、コンデンサ91とコイル92で構成された直列共鳴回路の共鳴周波数に対するスイッチング副部80のスイッチング周波数の比を意味する。出力電圧変換比96a、96b、96c、96d、96eは、有意のインピーダンスZに対する共鳴コンバータのオーム抵抗負荷の比である、異なる正規化負荷Q
Lに対応する。
【0066】
【0067】
ここで、Lはコイル92のインダクタンスを意味し、Cはコンデンサ91の容量を意味する。比96aはQL=0.1、比96bはQL=1、比96cはQL=5、比96dはQL=10、比96eはQLが無限大に近づく場合に対応する。
【0068】
図7から理解できるように、スイッチング副部80の切り替えをf
s/f
s0=1近傍の範囲内で制御すると、出力電圧変換比96a、96b、96c、96d、96eは実質的に負荷には依存しない。参照符号97は、負荷に依存しない動作点周りの動作領域を示している。駆動ユニット11は、スイッチング副部80が、例えば0.95から1.05の範囲の正規化スイッチング周波数、好ましくは共鳴周波数と実質的に等しいスイッチング周波数で動作するように制御するように構成されている。
【0069】
ここで、入力電圧79は、第1DC変換部32の入力電圧41である電位フリー電圧としての出力電圧86からガルバニック分離されている。スイッチング素子13のスイッチングOFF速度は、電気パワーコンバータ1のDC変換ユニット9により供給される入力電圧79により制御される。したがって、電気パワーコンバータ1の制御ユニット10により決定され、DC変換ユニット9に提供された制御情報24に基づいて、スイッチングOFF速度が変化する。制御情報24に基づいて、DC変換ユニット9は、第2DC変換部33の入力電圧79である供給電圧を変化させる。
【0070】
第1実施形態に対応する他の実施形態によれば、電気パワーコンバータ1は一次側25と二次側26とに分割されていない。ここでは、第2DC変換部33が省略され、第1DC変換部32の入力電圧41は駆動ユニット11の第1入力端子27において直接供給される。
【0071】
第1実施形態に対応する電気パワーコンバータ1の他の実施形態によれば、
図1、2、6中に点線で示されているように、制御情報24はDC変換ユニット9に提供される代わりに第2DC変換部33に提供される。
【0072】
制御情報24により、スイッチング副部80のスイッチング周波数は、
図7の参照符号98で示されている負荷に依存する動作領域内で共鳴周波数より低い範囲で変化する。この動作領域から分かるように、f
s/f
s0=0.4およびf
s/f
s0=0.6により規定される正規化スイッチング周波数の範囲内において、出力電圧変換比はスイッチング周波数に強く依存している。本実施形態によれば、一定の入力電圧79が第2DC変換部33に供給され、スイッチング周波数の変化により出力電圧86が変化する。これに対応してスイッチング素子13のスイッチングOFF速度が変化する。動作範囲98内において、出力電圧比は第2DC変換部33の負荷に依存している。そこで、制御ユニット10は、追加的に第2DC変換部33の負荷に基づいて制御情報24を決定するように構成されている。
【0073】
制御情報24を受信するために、第2DC変換部33は、スイッチング副部80に接続された他の入力端子99(
図6参照)を備え、駆動ユニット11は、第2DC変換部33に接続された他の入力端子100(
図2参照)を備えている。なお、制御情報24は駆動ユニット11の一次側25で受信され、二次側26には転送されない。しがたって、制御情報24の転送に関する絶縁素子は必要とされない。
【0074】
上述の実施形態のいずれかに対応する電気パワーコンバータ1の他の実施形態によれば、DC変換ユニット9が省略され、ロー側端子8に供給された電圧が駆動ユニット11に直接供給される。
【0075】
上述の実施形態のいずれかに対応する他の実施形態によれば、電気パワーコンバータ1はDC/DCコンバータであり、例えば、ブーストコンバータ、降圧型コンバータ、ブースト降圧型複合コンバータ、フライバックコンバータ、位相シフトフルブリッジ、容量ハーフブリッジ、または他のハードスイッチハーフブリッジを備えている。ここで、DC/DCコンバータの一つ以上のスイッチング素子が駆動ユニット11に接続され、制御ユニット10は、DCリンク2に供給されたDC電圧が追加のインダクタンス要素によりDC電圧に変換されるように、スイッチング素子を制御するように構成されている。
【0076】
他の実施形態によれば、電気パワーコンバータ1はバッテリ充電器のようなAC/DCコンバータである。ここで、AC/DCコンバータの一つ以上のスイッチング素子が駆動ユニット11に接続され、制御ユニット10は、AC電圧がDC電圧に整流されるようにスイッチング素子を制御するように構成されている。
【0077】
図8は、車両駆動用の電気装置5と、高電圧バッテリ3と、低電圧バッテリ22と、電気パワーコンバータ1とを備えた車両101の一実施形態のブロック図である。ここで、電気パワーコンバータ1は、高電圧バッテリ3により供給されたDC電圧を電気装置5に供給するAC電流に変換するように構成されている。さらに、車両101は、車両101における結線系(不図示)のためのDC/DCコンバータである電気パワーコンバータ1を備えている。さらに、車両101は、送電系により供給されたAC電圧により高電圧バッテリ3を充電するための車載充電器としてのAC/DCコンバータである電気パワーコンバータ1を備えている。