(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】被除去成分の吸着・除去機能と透析機能を併せ持つ一体化された血液浄化器
(51)【国際特許分類】
A61M 1/18 20060101AFI20240214BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61M1/18 510
A61M1/36 165
(21)【出願番号】P 2018241745
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-12-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】森田 直喜
(72)【発明者】
【氏名】田島 洋
(72)【発明者】
【氏名】小泉 智徳
(72)【発明者】
【氏名】船渡 彰
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101890190(CN,A)
【文献】国際公開第2017/170971(WO,A1)
【文献】特開2017-086563(JP,A)
【文献】特開2006-288414(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104117104(CN,A)
【文献】特開昭52-015195(JP,A)
【文献】実開昭54-045195(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中の被除去成分を吸着・除去するための吸着体を収容する吸着体収容領域と、血液透析のための中空糸膜を収容する中空糸膜収容領域とが、一体化した1つの筒状容器内に、直列に配置されており、該吸着体収容領域の一端は、該吸着体が接するフィルターにより画され、該中空糸膜収容領域の一端は、該中空糸膜の束を支持する接着剤切断面により画され、両者の隙間が
1mm以下であり、かつ、該吸着体収容領域の径方向断面と、該中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の径方向断面とがいずれも、略円形であり、該吸着体収容領域の直径が、該中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径とほぼ等しいか、又は該中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径よりも3mm以内で大きく、さらに該隙間の空間が、該筒状容器の中心軸を含む長さ方向断面において傾斜しており、かつ、該一体化した1つの筒状容器は、吸着体収容容器本体、中空糸膜収容容器本体、2つのヘッダーから構成され、これらはいずれも同種の熱可塑性樹脂から成り、これらの部材の3つの接合箇所の少なくとも1つは、気密又は液密状態で該熱可塑性樹脂の溶融により溶着されて
おり、かつ、
該2つのヘッダーの内の1のヘッダーは、該吸着体収容容器本体に向かって突出する中心軸を含む長さ方向断面において略矩形状のヘッダー突出部を有し、かつ、該吸着体収容容器本体は、該ヘッダー突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部を有し、そして該ヘッダーと該吸着体収容容器本体とが、フィルター付きリングを保持しつつ、少なくとも、該ヘッダー突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において溶着されており、かつ、
該吸着体収容容器本体は、該中空糸膜収容容器本体に向かって突出する中心軸断面において略矩形状の吸着体収容容器本体突出部を有し、かつ、該中空糸膜収容容器本体は、該吸着体収容容器本体突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部を有し、そして該吸着体収容容器本体と該中空糸膜収容容器本体とが、該フィルター付きリング、及び該中空糸膜の束を支持する接着剤切断面を保持しつつ、少なくとも、該吸着体収容容器本体突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において溶着されており、かつ、
該吸着体収容容器本体と該中空糸膜収容容器本体との間に保持されたフィルター付きリングは、フィルターが、中心軸を含む長さ方向断面において略矩形状、又は内側面に中心軸に対して傾斜した一辺をもつ台形状の熱可塑性樹脂製環状フィルター支持リングに、該リングの該中空糸膜収容容器本体側面で、該熱可塑性樹脂の溶融により溶着されたものであることを特徴とする血液浄化器。
【請求項2】
前記吸着体は、リン、ホウ素、フッ素、ヒ素、及びサイトカインからなる群から選ばれる少なくとも1つの被除去成分を除去するための、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含む、平均粒形50~2500μmの少なくとも1種のビーズである、請求項1に記載の血液浄化器。
【請求項3】
前記中空糸膜は、総膜面積0.8~2.5m
2のポリスルホン系高分子中空糸膜である、請求項1又は2に記載の血液浄化器。
【請求項4】
前記2つのヘッダーの内の他のヘッダーは、前記中空糸膜収容容器本体に向かって突出する中心軸断面において略矩形状のヘッダー突出部を有し、かつ、該中空糸膜収容容器本体は、該ヘッダー突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部を有し、そして該ヘッダーと該中空糸膜収容容器本体とが、前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面を保持しつつ、少なくとも、該ヘッダー突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において溶着されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の血液浄化器。
【請求項5】
超音波ホーンを押し当てる超音波溶着により、気密又は液密状態で、前記同種の熱可塑性樹脂の溶融により溶着する工程を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の血液浄化器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被除去成分の吸着・除去機能と透析機能を併せ持つ一体化された血液浄化器に関する。より詳しくは、本発明は、リン及びサイトカインの吸着・除去機能と透析機能を併せ持ち、かつ、血液の流れ斑及び滞留による血液凝固が抑制され、かつ、セッティングが容易な1つのモジュールに一体化された血液浄化器に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析は、腎臓不全患者の腎臓機能を代行する血液浄化法として普及している。血液透析は、一般に、中空糸状の半透膜(透析膜)を介して血液と透析液を接触せしめ、両液中の溶質の濃度差(拡散)により血液中の不要成分である、例えば、尿素、クレアチニン、カリウム、リン等を透析液側に排出・除去することを原理とするものである。しかしながら、血液透析で除去することができる物質は、一般的には、透析膜を通過することができる分子量2000以下の小分子に限られる。現在、さまざまな血液透析器が開発され臨床利用されている。
また、血液透析では、透析膜内外の圧力差によって水分を移動させる(限外濾過)することもできる。血液濾過は、血液を濾過性能の高い濾過膜を通して濾過・排出し、不足した水分、電解質を補う方法であり、最大分子量40000程度の物質まで除去できるとされている。血液透析と同様に、血液濾過や血液透析濾過も臨床利用されている。
【0003】
以下の特許文献1には、血液透析治療を行っている腎不全患者の血液中に、本来は腎臓で代謝されるべき小分子量タンパク質(分子量11800程度のβ2-ミクログロブリン)が蓄積しているという問題があり、血液濾過、血液透析濾過でかなり高い効率でかかる小分子量タンパク質を除去することが可能になりつつあるものの、膜の大孔径化に伴い透析液側からの菌由来のエンドトキシ等の毒性物質による汚染や、活性炭等の吸着体では、かかる小分子量タンパク質の吸着・除去能力が不十分であるところ、セルロースと水からなるコロイド質固相を持つヒドロゲル球状体を該ヒドロゲル流出防止具とともに収容した血液浄化器を、中空糸膜を収容した血液透析器と併用すること(血液を、該血液浄化器に通した後に血液透析器に通すこと)が提案されている。
図3に、記載されたヒドロゲル粒子を収容した血液浄化器の概略説明図を示す。
【0004】
以下の特許文献2には、中空糸膜を用いる血液透析、血液濾過、血液透析濾過にはない、特定の病因物質の吸着・除去能力を発現するために設計された対外循環による血液吸着による吸着式血液浄化において、吸着体である活性炭、陰イオン交換樹脂、ビーズ状支持体、繊維状担体等の異物への接触により凝固系が活性化した血液が、血液透析、血液濾過、血液透析濾過に用いる中空糸膜表面に接触すると、血小板やフィブリン、血漿タンパク質などの血液凝固因子が付着し、膜孔の目詰まりが起こり、血液透析性能等が低下し、本来の治療効果が得られず、体外循環治療の中断にもつながるおそれがあるため、これを回避するために、血液吸着の前に、血液透析等を行うこと(血液を、中空糸膜を用いる血液透析器に通した後に吸着式血液浄化器に通すこと)が提案されている。特許文献2には、吸着式血液浄化モジュールとして、β2-ミクログロブリン吸着カラム、エンドトキシン吸着カラム、サイトカイン吸着カラム等が非制限的に挙げられている。
【0005】
以下の特許文献3には、除去対象とする物質が互いに異なる複数の材料が各々収容された複数の各血液浄化器を直列に接続して使用する場合に、従来、
図1に示すように、各血液浄化器を固定した後に専用の血液回路(チューブ)で接続する等のセッティングを行っていたところ、かかるセッティングは煩雑であり時間がかかるため、これを回避するために、
図2に示すように、各血液浄化器同士を、ルアーロック接続機構を介して直結することが提案されている。特許文献3では、血液を、中空糸膜を用いる血液透析器(第1の血液浄化器)に通した後に第2の血液浄化器に通すことが提案されている。また、第2の血液浄化器に収容される浄化機能体として、中空糸膜、織物、不織布、ビーズ等の形態のセルロース、PMMA、ポリスルホン、活性炭等が非制限的に挙げられている。しかしながら、各血液浄化器内での径方向断面積に比べて、かかるルアーロック接続機構における通路の断面積が小さい、すなわち、血液が通過する通路が狭くなるため、血液の流れ斑や滞留により血液凝固系が活性化するおそれがあることに加え、モジュールとして一体化されていないため、各容器の製作コストやセッティングにおける連結作業に時間がかかるという問題がある。
【0006】
一般に、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、血漿分離などの体外循環式の血液浄化処理、腹水などの体腔液処理、血液製剤のウィルス除去・処理などに使用される血液浄化器等の使い捨てモジュールのハウジング(容器)としては、例えば、
図4に示すように、筒状容器(ケーシング)本体の両端にOリングを介してヘッダー(血液導出入部材)を、螺合、接着剤、超音波溶着などの手段により取り付け(締め付け)密閉性を確保するものが用いられているが、使い捨てビーズ充填モジュールの容器として、かかるOリングの使用は比較的高価であり、また、容器本体にヘッダーを取り付け、密閉するという容器の組立プロセスにおいて変形しやすいOリングの取り付けは、手間がかかるだけでなく、密閉性を確保するための締め付け圧力の管理なども必要になる。さらに、中空糸膜に代えてビーズを充填する場合には、充填されたビーズがヘッダーの血液導出入口から漏れ出すことを防止するためのフィルターを容器内部に保持する必要があるため、組立プロセスにさらに手間がかかるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-266948号公報
【文献】特開2006-305306号公報
【文献】特開2016-112089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、リン及びサイトカイン等の被除去成分の吸着・除去機能と透析機能を併せ持ち、かつ、血液の流れ斑及び滞留による血液凝固が抑制され、かつ、セッティングが容易な1つのモジュールに一体化された血液浄化器を提供すること、好ましくは、比較的高価なOリングを用いないため製作コストが低く、かつ、締め付け等の管理が不要であり、容器内部に保持されるフィルターを破損せず、十分な密閉性を有し、組み立てに手間がかからず自動化することができ、さらに使用時のセッティングが容易な1つのモジュールに一体化された血液浄化器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、血液中の被除去成分を吸着・除去するための吸着体収容領域と、血液透析のための中空糸膜収容領域とを、一体化した1つの筒状容器内に、径方向断面積の実質的な変化を伴わずに小さい隙間をもって、直列に配置することで、好ましくは、該筒状容器の部材同士を気密又は液密状態で熱可塑性樹脂の溶融により溶着することにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]血液中の被除去成分を吸着・除去するための吸着体収容領域と、血液透析のための中空糸膜収容領域とが、一体化した1つの筒状容器内に、径方向断面積の実質的な変化を伴わずに10mm以下の隙間をもって、直列に配置されていることを特徴とする血液浄化器。
[2]前記吸着体は、リン、ホウ素、フッ素、ヒ素、及びサイトカインからなる群から選ばれる少なくとも1つの被除去成分を除去するための、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含む、平均粒形50~2500μmの少なくとも1種のビーズである、前記[1]に記載の血液浄化器。
[3]前記中空糸膜は、総膜面積0.8~2.5m2のポリスルホン系高分子中空糸膜である、前記[1]又は[2]に記載の血液浄化器。
[4]前記吸着体収容領域の一端は、該吸着体が接するフィルターにより画され、前記中空糸膜収容領域の一端は、該中空糸膜の束を支持する接着剤切断面により画され、両者の隙間が3mm以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の血液浄化器。
[5]前記隙間が2mm以下である、前記[4]に記載の血液浄化器。
[6]前記隙間が1mm以下である、前記[5]に記載の血液浄化器。
[7]前記吸着体収容領域の径方向断面と、前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の径方向断面とがいずれも、略円形である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の血液浄化器。
[8]前記吸着体収容領域の直径が、前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径とほぼ等しいか、又は前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径よりも3mm以内で大きい、前記[7]に記載の血液浄化器。
[9]前記吸着体収容領域の径方向断面と、前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の径方向断面とがいずれも、略円形であり、該吸着体収容領域の直径が、前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径よりも3mm以内で大きく、かつ、前記隙間が2mm超えであり、さらに該隙間の空間が、前記円筒状容器中心軸を含む長さ方向断面において傾斜している、前記[4]に記載の血液浄化器。
[10]前記一体化した1つの略円筒状容器は、吸着体収容容器本体、中空糸膜収容容器本体、2つのヘッダーから構成され、これらはいずれも同種の熱可塑性樹脂から成り、これらの部材の3つの接合箇所の少なくとも1つは、気密又は液密状態で該熱可塑性樹脂の溶融により溶着されている、前記[1]~[9]のいずれか項に記載の血液浄化器。
[11]前記1のヘッダーは、前記吸着体収容容器本体に向かって突出する中心軸を含む長さ方向断面において略矩形状のヘッダー突出部を有し、かつ、該粒吸着体収容容器本体は、該ヘッダー突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部を有し、そして少なくとも、該ヘッダー突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において、該ヘッダーと該吸着体収容容器本体とが、フィルター付きリングを保持しつつ、溶着されている、前記[10]に記載の血液浄化器。
[12]前記吸着体収容容器本体は、前記中空糸膜収容容器本体に向かって突出する中心軸断面において略矩形状の吸着体収容容器本体突出部を有し、かつ、該中空糸膜収容容器本体は、該吸着体収容容器本体突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部を有し、そして少なくとも、該粒吸着体収容容器本体突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において、該吸着体収容容器本体と該中空糸膜収容容器本体とが、フィルター付きリング、及び前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面を保持しつつ、溶着されている、前記[10]又は[11]に記載の血液浄化器。
[13]前記他のヘッダーは、前記中空糸膜収容容器本体に向かって突出する中心軸断面において略矩形状のヘッダー突出部を有し、かつ、該中空糸膜収容容器本体は、該ヘッダー突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部を有し、そして少なくとも、該ヘッダー突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において、該ヘッダーと該中空糸膜収容容器本体とが、前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面を保持しつつ、溶着されている、前記[10]~[12]のいずれかに記載の血液浄化器。
[14]超音波ホーンを押し当てる超音波溶着により、気密又は液密状態で、前記同種の熱可塑性樹脂の溶融により溶着する工程を含む、前記[10]~[13]のいずれかに記載の血液浄化器の製造方法。
[15]前記フィルター付きリングは、フィルターが、中心軸を含む長さ方向断面において略矩形状、又は内側面に中心軸に対して傾斜した一辺をもつ台形状の熱可塑性樹脂製環状フィルター支持リングに、該リングの前記中空糸膜収容容器本体側面で、該熱可塑性樹脂の溶融により溶着されたものである、前記[12]に記載の血液浄化器。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る血液浄化器は、リン及びサイトカイン等の被除去成分の吸着・除去機能と透析機能を併せ持ち、かつ、血液の流れ斑及び滞留による血液凝固が抑制され、かつ、セッティングが容易な1つのモジュールに一体化された血液浄化器、好ましくは、比較的高価なOリングを用いないため製作コストが低く、かつ、締め付け等の管理が不要であり、容器内部に保持されるフィルターを破損せず、十分な密閉性を有し、組み立てに手間がかからず自動化することができ、さらに、使用時のセッティングが容易な1つのモジュールに一体化された血液浄化器である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】除去対象とする物質が互いに異なる複数の材料が各々収容された複数の各血液浄化器を直列に接続して使用する場合における、各血液浄化器を固定した後に専用の血液回路(チューブ)で接続する従来のセッティングの状態を説明する概略説明図である。
【
図2】各血液浄化器同士を、ルアーロック接続機構を介して直結する特許文献3に記載された態様を説明する概略説明図である。
【
図3】特許文献1に記載されたヒドロゲル粒子を収容した血液浄化器の概略説明図である。
【
図4】中空糸膜を収容する血液透析器の一例の概略説明図である。
【
図5】中空糸膜の束を支持する接着剤切断面を形成し、中空糸膜の内側と、外側を隔離して中空糸膜を血液透析器内に収容する方法を説明する概略説明図である。尚、破線で囲まれる領域は、本明細書中に定義する「中空糸膜収容領域」に相当する。
【
図6】本実施形態のモジュールとして一体化された血液浄化器の好ましい態様の概略説明図である。
【
図8】ヘッダーと吸着体収容容器本体との間の溶着状態の一例を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態の血液浄化器は、血液中の被除去成分を吸着・除去するための吸着体収容領域と、血液透析のための中空糸膜収容領域とが、一体化した1つの筒状容器内に、径方向断面積の実質的な変化を伴わずに10mm以下の隙間をもって、直列に配置されていることを特徴とする血液浄化器である。本実施形態の血液浄化器は、該吸着体収容領域の一端は、該吸着体が接するフィルターにより画され、前記中空糸膜収容領域の一端は、該中空糸膜の束を支持する接着剤切断面により画され、両者の隙間が好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、最も好ましくは1mm以下(ほぼゼロ)であり、また、該吸着体収容領域の径方向断面と、前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の径方向断面とがいずれも、略円形であることが好ましい。
【0015】
図6は、本実施形態の一体化された血液浄化器の好ましい態様の概略説明図である。
図6に示すように、本実施形態の血液浄化器(100)は、吸着体収容容器本体(10)、中空糸膜収容容器本体(2)、及び2つのヘッダー(6、6’)から構成される「一体化した1つの略円筒状容器」内に、以下に説明する2つのフィルター(
40、
40’)間に収容された吸着体(30)と、両端を接着剤で支持された中空糸膜の束を収容した構造を有する。
図6は、吸着体収容容器本体(10)、中空糸膜収容容器本体(2)、及び2つのヘッダー(6、6’)の間の3つの接合箇所が熱可塑性樹脂の溶融により気密・液密状態で溶着されている態様を示しているが、かかる接合の態様としては、従来一般的に使用されているOリングを用いたのであっても構わない。但し、以下に説明する隙間(g)を厳密にコントロールするためには弾性変形するOリングを用いない接合が好ましい。
本明細書中、用語「吸着体収容領域」とは、筒状の吸着体収容容器本体(10)の内壁と、2つのフィルター(
40、
40’)により画される空間に収容された吸着体が存在する領域をいい、用語「吸着体収容領域の直径」とは、吸着体収容容器本体(10)の径方向断面が略円形である場合に、その直径(φ1)をいう。
図6の中心軸を含む長さ方向断面図では、「吸着体収容領域」は、φ1と、2つのフィルター(
40、
40’)の距離(L1)で示される領域である。
【0016】
用語「中空糸膜収容領域」とは、
図5に示すように、中空糸膜の束の両端が接着剤により支持され、該両端を径方向断面で切断することにより、中空糸膜の内部(中空部)が開放され、容器本体内に、血液が流れる中空糸内部空間と、血液の流れと対向して透析液が流れる中空糸外側空間とが隔離されて固定されるとき、
図6に示すように、中空糸膜収容容器本体(2)内に、中空糸膜の束を支持する接着剤の径方向切断面内の該束(50)の断面と、接着剤支持切断面間の距離(L2)により画される領域(すなわち、
図5に示すような中空糸膜の束が存在する領域)をいい、用語「中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径」とは、該接着剤の径方向切断面内の該束の断面(50)が略円形である場合に、その直径(φ2)をいう。
図6の中心軸を含む長さ方向断面図では、「中空糸膜収容領域」は、φ2とL2で示される領域である。
【0017】
用語「隙間」とは、
図6に示すように、該吸着体が接するフィルターにより画される吸着体収容領域の一端と、該中空糸膜の束を支持する接着剤切断面により画される中空糸膜収容領域の一端との間の距離(g)をいう。
【0018】
図6は、φ1が、φ2よりも大きく、gが、フィルターリング(41’)の厚みである態様を示している。
φ1とφ2とほぼ等しくするためには、例えば、中空糸膜の束を支持する接着剤の径方向切断面内の該束の断面に相当するような内径を有する吸着体収容容器本体を作製すればよい。
隙間(g)をコントロールするためには、フィルターリングの厚みを調整したり、以下に説明するように、フィルター付きリングのフィルター面の方向を変えたりすればよい。
隙間(g)は、10mm以下であれば、血液の滞留時間が過度に長くなることがないため、血液凝固の発生を抑制することができる。血液の滞留時間の観点からは、隙間は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下(ほぼゼロ)が最も好ましい。
用語「径方向断面積の実質的な変化を伴わずに」とは、吸収体収容領域内、及び中空糸膜収容領域内の両者で、血液の過度な流れ斑(流速分布の変化、流れが不均一になること)が生じるような径方向断面積の変化がないことをいう。例えば、吸着体収容領域の直径(φ1)が、前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径(φ2)よりも3mmを超えて大きいと、隙間(g)に依存するが、吸収体収容領域内、及び中空糸膜収容領域内のいずれか1方又は両者で流れ斑が生じるおそれがある。したがって、φ1とφ2の差は、3mm以内が好ましく、ほぼ同じであることが最も好ましい。再吸収体収容領域外、及び中空糸膜収容領域外である隙間(g)が大きくなると、かかる隙間(g)の領域では、流れ斑は生じるものの、吸収体収容領域内、及び中空糸膜収容領域内での流れ斑は生じにくくなる。
吸収体収容領域内、及び中空糸膜収容領域内のいずれか1方又は両者で過度な流れ斑が生じると、吸着体や中空糸膜の所望の性能が発揮できず、また、隙間領域内で血液の滞留時間が過度に長くなると、血液凝固が生じるおそれがある。
【0019】
図6は、血液を、吸着体を通過させた後に、中空糸膜で透析する態様を示しているが、本実施形態の血液浄化器に血液を供給す方向を、かかる態様と反対にしても構わない。しかしながら、特許文献2の教示に鑑み、血液を中空糸膜に通過させた後に、吸着体に通過させることが好ましい。尚、血液の流れ方向を変える場合、透析液の流れ方向も変えることが望ましい。
【0020】
[フィルター]
「吸着体が接するフィルター」は、フィルター(40)が、中心軸を含む長さ方向断面において略矩形状の熱可塑性樹脂製環状フィルター支持リング(41)に該熱可塑性樹脂の溶融により溶着された、
図7に示すようなフィルター付きリングであることができる。
図6には、フィルター付きリングのフィルター側を、吸着体収容容器本体の内側に向けて配置した態様が示されており、この場合、吸着体収容領域の一端は、該吸着体が接するフィルターにより画されため、中心軸を含む長さ方向断面における略矩形状リングの厚みに相当する隙間gが存在することになる。フィルター付きリングのフィルター側を、吸着体収容容器本体の外側に向けて配置した場合には、該フィルターが、中空糸膜の束を支持する接着剤切断面に接するため、隙間gは1mm以下(すなわち、ほぼゼロ)となる。
フィルター付きリングを構成するフィルター(40)は、ポリエステル系樹脂のメッシュであり、該リング(41)を構成するポリプロピレン系樹脂の溶融により埋め込まれて溶着され、フィルター面、及び反対側のリング面の両者に略平坦面が形成されたものであることができる。より低い溶融温度のポリプロピレン系樹脂にポリエステル系樹脂のメッシュが埋め込まれて溶着されていることにより、リング(41)からのフィルター(40)の脱落や、剥がれを防止することができる。
【0021】
[吸着体]
本実施形態の血液浄化器は、リンとサイトカインの両者を吸着・除去することができるものであることが好ましい。リンを吸着・除去することができる1の吸着体と、サイトカインを吸着・除去することができる他の吸着体とを、吸着体収容領域内で均一に分布するように配置してもよく、また、リンとサイトカインの両者を吸着・除去することができる1種の吸着体を配置してもよい。
吸着体の材質、形態等に特に制限はないが、吸着体は、リン、ホウ素、フッ素、ヒ素、及びサイトカインからなる群から選ばれる少なくとも1つの被除去成分を除去するための、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含む、平均粒形50~2500μmの少なくとも1種のビーズであることができる。
腎不全ではリンが腎臓から排泄されなくなり、血液中にたまると「高リン血症」になり、また、腎不全ではビタミンDが不足し、腸でのカルシウムの吸収が悪くなり、血液中のカルシウムの濃度が低下する。そうすると、リンを下げ、カルシウム濃度を上げる作用をもつ副甲状腺ホルモン(PTH)というホルモンが分泌され、腎性(二次性)副甲状腺機能亢進症が発症する。PTHは骨を壊して、骨からカルシウムを血液中に放出してカルシウム濃度を増加させる働きがあるため、骨や関節が壊され、骨がもろくなって骨折しやすくなる。また、血液中のリン濃度が高まると、血液にリンが溶けにくくなり、カルシウムと結合して血管の壁や心臓の弁などにくっついて、これらを石のように硬くしてしまう石灰化が生じ動脈硬化が進んだり、心臓弁膜症を起こすことがある。高リン血症や二次性副甲状腺機能亢進症の予防には、リンを制限する食事療法や、高リン血症、ビタミンD不足、PTH増加を防ぐ薬物療法などがなされているが、血液中のリンを吸着・除去するために、血液透析器と同時にリン吸着体の使用が必要とされる場合がある。体外循環において使用されるリン吸着体としては、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、及びネオジムからなる群から選ばれる希土類元素の炭酸塩又は第4族酸化物の粉粒体等が挙げられる。
血液が透析膜と接触すると、補体(食細胞による病原菌の食作用の促進や、病原菌の細胞膜に孔を空けるなど、病原菌排除等の役割を演じる)の分子構造が変化し、活性化し、活性化された補体は、単球やマクロファージを活性化し、次いで、活性化された単球やマクロファージは、サイトカインを産生することが知られている。透析患者におけるサイトカインの増加は、動脈硬化病変の進展、栄養障害、慢性炎症に大きく影響し、患者の生命予後に悪影響を及ぼす。そこで、サイトカインを減らすために、透析液の徹底的な清浄化や生体適合性の高い透析器の使用等がなされているが、産生されたサイトカインを吸着・除去するために、血液透析器と同時にサイトカイン吸着体の使用が必要とされる場合がある。
吸着体は、ポリビニルピロリドン(PVP)等の親水化剤で処理したものであってもよい。
【0022】
[中空糸膜]
中空糸膜の材質、形態、孔径も特に制限はないが、中空糸膜は、長手方向に貫通した空隙(以下、中空部ともいう)を内部に少なくとも1つ有する。好ましい態様において、中空糸膜の径断面はリング形状を有する。
中空糸膜束を接着剤によって固定する方法としては、
図5に示すように、通常、中空糸膜収容容器本体に収容された状態の中空糸膜の束の端部を、流動状態にある接着剤に接触させ、その後、接着剤を(例えば、硬化、溶媒除去等によって)固化させ、更に中空糸膜の束の端部の余剰部分を切断除去する方法が用いられる。余剰部分を切断する際は、発塵を極力抑えるべく、押し切りすることが望ましい。例えば、かんな型切断機又はギロチン型切断機で切断することが望ましい。接着剤の典型的な接触方法は、中空糸膜の束の端部の接着剤への浸漬(ポッティングともいう。)である。接着剤は、中空糸膜間に浸入する一方で中空部には浸入しないことが望まれる。中空部に接着剤が浸入すると、中空糸膜の束の余剰部分を除去した後にも、中空部が接着剤で目詰まりしたままとなって、性能が低下する。他方、中空糸膜間、及び中空糸束と中空糸膜収容容器本体との隙間への接着剤の浸入が不十分であると、モジュールの耐久性低下、リーク等の原因となる。
中空糸膜も、特に制限はないが、総膜面積0.8~2.5m
2のポリスルホン系高分子中空糸膜であることができる。
中空糸膜は、ポリビニルピロリドン(PVP)等の親水化剤で処理したものであってもよい。
【0023】
[接着剤]
接着剤は、典型的には樹脂で構成されている。樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
典型的な態様において、接着剤は流動状態で中空糸膜と接触させる。流動状態の接着剤の例としては、未硬化のウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
[吸着体収容容器本体、中空糸膜収容容器本体、及びヘッダーの材質]
吸着体収容容器本体(10)、中空糸膜収容容器本体(20)、及び2つのヘッダー(6、6’)は、同種の熱可塑性樹脂を、例えば、射出成形して製造されたものであることができる。尚、フィルター付きリングのリング(41)も同一素材であることができる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、例えば、結晶性樹脂として、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、プロピレン単体の重合体、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとエチレンと他のα―オレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂が挙げられる。また、非晶性樹脂として、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン‐ブタジエン共重合体(SBS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)等の樹脂が挙げられ、これらは単体で用いられてもよく、混合物であってもよい。本実施形態の血液浄化器を構成する吸着体収容容器本体(10)、中空糸膜収容容器本体(20)、及び2つのヘッダー(6、6’)の材質としては、剛性、耐熱性、コスト、生体適合性、成形容易性、超音波溶着性等の観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、中でもプロピレンとエチレンのランダム共重合体が好ましく、エチレン含量が1~8質量%に調整されたプロピレンとエチレンのランダム共重合体がより好ましい。
【0025】
[吸着体収容容器本体、中空糸膜収容容器本体、及びヘッダーの一体化]
モジュールとして一体化される1つの略円筒状容器を構成する吸着体収容容器本体、中空糸膜収容容器本体、及び2つのヘッダーの素材を、同種の熱可塑性樹脂とすることにより、これらの部材の3つの接合箇所の少なくとも1つを、気密又は液密状態で該熱可塑性樹脂の溶融により溶着することができる。
図6に示すように、ヘッダー(6)は、吸着体収容容器本体(10)に向かって突出する中心軸を含む長さ方向断面において略矩形状のヘッダー突出部(鍔部61の一部)を有し、かつ、該粒吸着体収容容器本体(10)は、該ヘッダー突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部(鍔部11の一部)を有し、そして少なくとも、該ヘッダー突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において、該ヘッダーと該吸着体収容容器本体とが、フィルター付きリング(40、41)を保持しつつ、溶着されることができる(
図8参照)。
【0026】
前記吸着体収容容器本体(10)も、前記中空糸膜収容容器本体(20)に向かって突出する中心軸断面において略矩形状の吸着体収容容器本体突出部(鍔部12の一部)を有し、かつ、該中空糸膜収容容器本体(20)は、該吸着体収容容器本体突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部(鍔部21の一部)を有し、そして少なくとも、該粒吸着体収容容器本体突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において、該吸着体収容容器本体と該中空糸膜収容容器本体とが、フィルター付きリング(40’、41’’)、及び前記中空糸膜の束を支持する接着剤(51)切断面を保持しつつ、溶着されることができる。
【0027】
他のヘッダー(6’)も、前記中空糸膜収容容器本体(20)に向かって突出する中心軸断面において略矩形状のヘッダー突出部(鍔部63の一部)を有し、かつ、該中空糸膜収容容器本体は、該ヘッダー突出部を受容し、これと嵌合する陥凹部(鍔部23の一部)を有し、そして少なくとも、該ヘッダー突出部の内周面の周方向全体及び外周面の周方向全体において、該ヘッダーと該中空糸膜収容容器本体とが、前記中空糸膜の束を支持する接着剤(51’)切断面を保持しつつ、溶着されていることができる。
【0028】
溶着は、例えば、ヘッダー(6)と吸着体収容容器本体(10)を溶着する場合には、ヘッダー(6)の鍔部(61)に超音波ホーンを押し当てる超音波溶着により行いことができる。
図8に示すように、ヘッダー突出部の先端にある中心軸Pに対して垂直な環状の平坦面を隔てて分離された異なる2つの面(
図8中、内周面(A)と外周面(B))において、周方向全体に溶着されていることで、モジュールの使用時における圧力に耐えうる気密・液密状態を確保することができる。また、フィルター(40)の外周縁に接合されたリング(41)は、吸収体収容容器本体(10)の内側突出部(AとCの間)の内側に、該内側突出部を隔てて、上記溶着面(A)から離れて配置されるために、C部で溶融することがないように、超音波溶着のエネルギーをコントロールすれば、フィルター(40)とリング(41)との間の接合部が溶融し、フィルター(40)がリング(41)から脱落し(剥がれてしまう)という問題が生じない。
かかる作用効果は、前記した吸着体収容容器本体(10)と中空糸膜収容容器本体(20)との間の接合、及び他のヘッダー(6’)と中空糸膜収容容器本体(20)との間の接合においても同様である。
【0029】
超音波ホーンが発振する超音波振動については、周波数、圧力、振幅、時間が重要である。例えば、周波数15kHz、20kHz、30kHz、40kHz、50kHz、70kHz、振幅20~125μm、圧力50N~3000N、時間0.1~1秒であるが、溶着するに足りるものであれば特に制限はないが、状況に応じて比較的低い周波数(例えば、一般的に周波数20kHz程度の超音波が利用される場合における15kHz程度の低周波数)の超音波振動としてもよく、この場合、超音波ホーンからより離れた位置にまで超音波振動が届きやすくなる。溶着をより強固にしたい場合、振幅、圧力、時間の一部又は全てを大きくすることができるが、超音波振動が強すぎてヘッダー、吸収体収容容器本体、中空糸膜収容容器本体、が損傷するおそれがある場合には、より高い周波数を採用してもよい。
【0030】
[モジュールの製造]
上記のようにして、吸収体と中空糸膜を収容した一体化されたモジュールに、封入液を注入し、次いで、これを包装した後、例えば、ガンマ線で滅菌処理する工程を経ることで、一体化された血液浄化モジュールを製造することができる。封入液としては、特に制限はないが、生理食塩水であることができる。
モジュールの製造は、ヘッダー、吸着体収容容器本体、中空糸膜収容容器本体の超音波溶着を含めて、自動化された製造装置を用いて実施することができる。
尚、生体適合性材料での容器の内面等のコーティング、滅菌処理等の手段に特に制限はない。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に制限されず、特許請求の範囲に記載された技術思想の範疇における各種の変更例又は修正例は、本発明の技術的範囲に属するものである。
[シミュレーション結果]
以下、一体化された血液浄化器モジュールを作製し、隙間、直径差が、血液の流れ斑、滞留時間に及ぼす影響についてのシミュレーション結果を説明する。
[モジュールのサイズ、特性等]
L2:286mm、φ2:35.6mm、内径:185μm、外径:275μm、中空糸本数:9670本、総膜面積:1.5m2の中空糸膜束を用意した。
L1:55mm、φ1:35.6mm、42.8mm、平均粒子径:605μm、充填率:0.64の吸着体を想定し、かつ、現物を用意した。
隙間(g)を0~10mmに変化させ、直径差を0~7mmで変化させ、血液を想定した(密度:1.05g/cm3、粘度:3.8mPa・s)を、吸着体側から流量100~300mL/minで流した場合に、吸着体収容領域、隙間領域、中空糸膜収容領域における流れ斑(流速分布)、圧力分布、滞留時間分布がどうなるかについてシミュレーション実験を実施した。
直径差がない場合、吸着体収容領域内と中空糸膜収容領域内の両者において、隙間の有無に拘わらず。流れ斑(流速分布)は生じないことが分かった。
直径差がある場合、吸着体収容領域内と中空糸膜収容領域内の両者において、隙間がないとき、流れ斑(流速分布)が生じるが、隙間が大きくなるにつれて、隙間の角部での滞留時間が長くなることが分かった。但し、直径差がある場合であっても、隙間の角部が存在しないように、内壁を傾斜させるようにすれば、滞留時間が長くなることを回避することができることが分かった。
かかるシミュレーション結果から、血液中の被除去成分を吸着・除去するための吸着体収容領域と、血液透析のための中空糸膜収容領域とを、一体化した1つの筒状容器内に、径方向断面積の実質的な変化を伴わずに10mm以下の隙間をもって直列に配置し、好ましくは、吸着体収容領域の直径を、中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径とほぼ等しいか、又は前記中空糸膜の束を支持する接着剤切断面内の該束の直径よりも3mmを超えないようにすることで、吸着体収容領域内と中空糸膜収容領域内の両者において、過度な流れ斑(流速分布)と血液滞留を生じない血液浄化器を製造することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る血液浄化器は、リン及びサイトカイン等の被除去成分の吸着・除去機能と透析機能を併せ持ち、かつ、血液の流れ斑及び滞留による血液凝固が抑制され、かつ、セッティングが容易な1つのモジュールに一体化された血液浄化器、好ましくは、比較的高価なOリングを用いないため製作コストが低く、かつ、締め付け等の管理が不要であり、容器内部に保持されるフィルターを破損せず、十分な密閉性を有し、組み立てに手間がかからず自動化することができ、さらに、使用時のセッティングが容易な血液浄化器である。それゆえ、血液透析、血液濾過、血液透析濾過などの体外循環式の血液浄化処理において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
100 血液浄化器
6 ヘッダー
6’ ヘッダー
60 血液供給(排出)口
61 鍔部
62 血液排出(供給)口
63 鍔部
1 吸着体収容領域
10 吸着体収容容器本体
11 鍔部
12 鍔部
φ1 直径(内径)
L1 長さ
2 中空糸膜収容領域
20 中空糸膜収容容器本体
21 鍔部
23 鍔部
22 透析液供給(排出)口
22’ 透析液排出(供給)口
φ2 直径(外径)
L2 長さ
g 隙間
30 吸着体(ビーズ)
40 フィルター
40’ フィルター
41 フィルターのリング
41’ フィルターのリング
50 中空糸膜の束
51 支持接着剤
51’ 支持接着剤