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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】レーダーデータを処理する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20240214BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20240214BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240214BHJP
   G01S 13/68 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01S7/02 218
G01S13/58 210
G01S13/931
G01S13/68
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019077029
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020038187
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0104758
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】崔 成▲ど▼
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0084810(US,A1)
【文献】特開2005-121420(JP,A)
【文献】特開平04-115184(JP,A)
【文献】特開平11-133146(JP,A)
【文献】特開2016-099305(JP,A)
【文献】特開平11-271430(JP,A)
【文献】特開平04-155286(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103207380(CN,A)
【文献】特開2003-207559(JP,A)
【文献】特開昭59-120973(JP,A)
【文献】特開昭63-241482(JP,A)
【文献】特開2006-242844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーデータを処理する方法において、
レーダーデータから生成されたドップラーマップに基づいて、関心角度領域を予測するステップと、
前記予測された関心角度領域に基づいて、前記レーダーデータの識別に用いられるステアリング情報を調整するステップであって、前記関心角度領域におけるステアリングベクトルは、前記関心角度領域ではない領域におけるステアリングベクトルよりも、高い密度で配置されるように、前記ステアリング情報を調整するステップと、
前記調整されたステアリング情報に基づいて、前記レーダーデータに対応する到達方向情報を決定するステップと、
を含み、前記ドップラーマップは、ドップラー値とターゲット地点までの距離とをマッピングしたものであり、
前記関心角度領域は、前記ドップラーマップに示されたターゲット地点から反射したレーダー信号の受信方向と、前記レーダー信号を処理する装置の進行方向とがなす角度に基づいて決定される、レーダーデータを処理する方法。
【請求項2】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記予測された関心角度領域内で受信されるレーダーデータが示すものと算出された位相情報を指示するステアリングベクトルを前記ステアリング情報に追加するステップを含み、前記位相情報は、前記ターゲット地点から反射したレーダー信号の位相と基準位相との間の位相差を示す、請求項1に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項3】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記予測された関心角度領域から離れた領域に対応するステアリングベクトルのうち少なくとも一部を前記ステアリング情報から除去するステップを含む、請求項1に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項4】
前記レーダーデータを処理する装置は、前記レーダーデータを検出するために用いられるレーダーセンサを含む、請求項1-3のうち何れか一項に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項5】
前記関心角度領域を予測するステップは、レーダーデータを処理する装置の速度及び前記ドップラーマップに示されたターゲット地点のドップラー速度に基づいて、前記レーダーデータを処理する装置から前記ターゲット地点に向かうステアリング角を決定するステップを含み、
前記レーダーデータを処理する装置は、前記レーダーデータを検出するために用いられるレーダーセンサを含む、請求項1-3のうち何れか一項に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項6】
前記ステアリング角を決定するステップは、前記レーダーデータを処理する装置の速度及び前記ドップラー速度に基づいて算出されたステアリング角に応答して、前記ステアリング角のうちのあるステアリング角を排除するステップを含む、請求項5に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項7】
前記あるステアリング角を排除するステップは、
前記レーダーセンサの視野角に基づいて前記視野角内に属するステアリング角を選択するステップと、
前記視野角から外れるステアリング角を排除するステップと、
を含む、請求項6に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項8】
前記レーダーデータを処理する装置の進行方向に対して側面に向かうように前記レーダーデータを処理する装置に装着されたレーダーセンサを介して、前記ターゲット地点から反射したレーダー信号を受信するステップをさらに含む、請求項7に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項9】
前記あるステアリング角を排除するステップは、前記ターゲット地点から反射したレーダー信号から測定された前記位相情報に基づいて、前記ステアリング角のうちのあるステアリング角を排除するステップを含む、請求項5が請求項2に従属する場合の請求項6に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項10】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記ステアリング情報で前記関心角度領域内に1つ以上のステアリングベクトルを追加するステップを含む、請求項1に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項11】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記関心角度領域に対して指定された角解像度により算出された1つ以上のステアリングベクトルを前記ステアリング情報に追加するステップを含む、請求項1に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項12】
前記関心角度領域を予測するステップは、前記ドップラーマップに示されたターゲット地点までの距離及びレーダーデータを処理する装置の進行方向と前記ターゲット地点から反射した信号の受信方向との間に形成される角度に基づいて、前記関心角度領域を決定するステップを含み、
前記レーダーデータを処理する装置は、前記レーダーデータを検出したレーダーセンサを含む、請求項1-3のうち何れか一項に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項13】
前記関心角度領域を予測するステップは、前記関心角度領域の位置、大きさ、及び個数のうち少なくとも1つを動的に調整するステップを含む、請求項1-3のうち何れか一項に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項14】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記レーダーデータを検出するために用いられるレーダーセンサの受信チャネル個数に対応する次元のステアリングベクトルを生成するステップを含む、請求項1-3のうち何れか一項に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項15】
前記到達方向情報を決定するステップは、前記ステアリング情報に含まれたステアリングベクトルのうち、検出されたレーダーデータにマッチングされるステアリングベクトルを検索するステップと、
前記検索されたステアリングベクトルにマッピングされたステアリング角を前記レーダーデータに対応する到達方向情報に決定するステップと、
を含む、請求項1-14のうち何れか一項に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項16】
前記到達方向情報に基づいて、前記レーダーデータを検出するために用いられるレーダーセンサに対するレーダースキャンイメージを生成するステップをさらに含む、請求項1-15のうち何れか一項に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項17】
前記レーダーデータを検出するために用いられるレーダーセンサそれぞれに対して生成されたレーダースキャンイメージに基づいて、レーダーデータを処理する装置の周辺マップを生成するステップをさらに含む、請求項16に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項18】
前記関心角度領域を予測するステップは、レーダーセンサに対して、該当レーダーセンサによって放射された信号及び反射された信号間の周波数差に基づいて前記ドップラーマップを生成するステップを含む、請求項1-3のうち何れか一項に記載のレーダーデータを処理する方法。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法を装置のコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項20】
レーダーデータを処理する装置において、
レーダーデータを検出するレーダーセンサと、
前記レーダーデータから生成されたドップラーマップに基づいて関心角度領域を予測し、前記予測された関心角度領域に基づいて前記レーダーデータの識別に用いられるステアリング情報を調整し、前記調整されたステアリング情報に基づいて前記レーダーデータに対応する到達方向情報を決定するプロセッサと、
を含み、前記プロセッサは、前記ステアリング情報を調整する場合に、前記関心角度領域におけるステアリングベクトルは、前記関心角度領域ではない領域におけるステアリングベクトルよりも、高い密度で配置されるように、前記ステアリング情報を調整し、
前記ドップラーマップは、ドップラー値とターゲット地点までの距離とをマッピングしたものであり、
前記関心角度領域は、前記ドップラーマップに示されたターゲット地点から反射したレーダー信号の受信方向と、前記レーダー信号を処理する装置の進行方向とがなす角度に基づいて決定される、レーダーデータを処理する装置。
【請求項21】
レーダーデータを処理する装置によって実行される方法において、
対象地点から反射されたレーダーデータが受信される方向及び前記レーダーデータを処理する装置の進行方向間に形状される角度に基づいて関心角度領域を決定するステップと、
ステアリング情報から前記レーダーデータのレーダーベクトルにマッチングされる対象ステアリングベクトルを識別し、前記識別された対象ステアリングベクトルに対応するステアリング角を到達方向情報に決定するステップと、
前記到達方向情報に基づいて、前記装置の周辺に存在する対象の位置を示す周辺マップを生成するステップと、
を含み、前記ステアリング情報は、前記関心角度領域におけるステアリングベクトルは、前記関心角度領域ではない領域におけるステアリングベクトルよりも、高い密度で配置されるように調整されている、レーダーデータを処理する装置によって実行される方法。
【請求項22】
前記周辺マップを生成するステップは、前記対象地点に関する情報を座標に変換し、前記座標に基づいて前記周辺マップをアップデートするステップを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下、レーダーデータを処理する技術が提供される。
【背景技術】
【0002】
ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)は、車両の内部又は外部に搭載されるセンサを用いて運転者の安全及び便宜を増進し、危険な状況を回避しようとする目的をもって運転をサポートする補助システムである。
【0003】
ADASで用いられるセンサは、カメラ、赤外線センサ、超音波センサ、ライダー(LiDAR)及びレーダー(Radar)を含む。このうちのレーダーは、光学基盤センサに比べて天気のような周辺環境の影響を受けることなく、車両周辺のオブジェクトを安定的に測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態に係る課題は、先行オブジェクトが存在すると予想される関心角度領域を集中的に検出することにより、レーダーデータを処理する装置及び方法を提供することである。
【0005】
一実施形態に係る課題は、関心角度領域から所望する解像度のレーダーデータを取得することにより、レーダーデータを処理する装置及び方法を提供することである。
【0006】
一実施形態に係る課題は、高解像度の到達方向情報を取得して高解像度の周辺マップを生成することにより、レーダーデータを処理する装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する方法は、レーダーデータから生成されたドップラーマップに基づいて、関心角度領域を予測するステップと、前記予測された関心角度領域に基づいて、前記レーダーデータの識別に用いられるステアリング情報を調整するステップと、前記調整されたステアリング情報に基づいて、前記レーダーデータに対応する到達方向情報を決定するステップとを含む。
【0008】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記予測された関心角度領域内で受信されるレーダーデータが示すものと算出された位相情報を指示するステアリングベクトルを前記ステアリング情報に追加するステップを含み得る。
【0009】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記予測された関心角度領域から離れた領域に対応するステアリングベクトルのうち少なくとも一部を前記ステアリング情報から除去するステップを含み得る。
【0010】
前記関心角度領域を予測するステップは、レーダーデータを処理する装置の進行方向及び前記ドップラーマップに示されたターゲット地点から反射したレーダーデータの受信方向がなしている角度に基づいて前記関心角度領域を決定するステップを含み、前記レーダーデータを処理する装置は、前記レーダーデータを検出するために用いられる前記レーダーセンサを含み得る。
【0011】
前記関心角度領域を予測するステップは、レーダーデータを処理する装置の速度及び前記ドップラーマップに示されたターゲット地点のドップラー速度に基づいて、前記レーダーデータを処理する装置から前記ターゲット地点に向かうステアリング角を決定するステップを含み、前記レーダーデータを処理する装置は、前記レーダーデータを検出するために用いられる前記レーダーセンサを含み得る。
【0012】
前記ステアリング角を決定するステップは、前記レーダーデータを処理する装置の速度及び前記ドップラー速度に基づいて算出されたステアリング角に応答して、前記ステアリング角のうち一つのステアリング角を排除するステップを含み得る。
【0013】
前記あるステアリング角を排除するステップは、前記レーダーセンサの視野角に基づいて前記視野角内に属するステアリング角を選択するステップと、前記視野角から外れるステアリング角を排除するステップとを含み得る。
【0014】
レーダーデータを処理する方法は、前記レーダーデータを処理する装置の進行方向に対して側面に向かうように前記レーダーデータを処理する装置に装着されたレーダーセンサを介して、前記ターゲット地点から反射したレーダー信号を受信するステップをさらに含み得る。
【0015】
前記あるステアリング角を排除するステップは、前記ターゲット地点から反射したレーダー信号から測定された位相情報に基づいて、前記ステアリング角のうち一つのステアリング角を排除するステップを含み得る。
【0016】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記ステアリング情報で前記関心角度領域内に1つ以上のステアリングベクトルを追加するステップを含み得る。
【0017】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記関心角度領域に対して指定された角解像度により算出された1つ以上のステアリングベクトルを前記ステアリング情報に追加するステップを含み得る。
【0018】
前記関心角度領域を予測するステップは、前記ドップラーマップに示されたターゲット地点までの距離及びレーダーデータを処理する装置の進行方向と前記ターゲット地点から反射した信号の受信方向との間に形成される角度に基づいて、前記関心角度領域を決定するステップを含み、前記レーダーデータを処理する装置は、前記レーダーデータを検出したレーダーセンサを含み得る。
【0019】
前記関心角度領域を予測するステップは、前記関心角度領域の位置、大きさ、及び個数のうち少なくとも1つを動的に調整するステップを含み得る。
【0020】
前記ステアリング情報を調整するステップは、前記レーダーデータを検出するために用いられる前記レーダーセンサの受信チャネル個数に対応する次元のステアリングベクトルを生成するステップを含み得る。
【0021】
前記到達方向情報を決定するステップは、前記ステアリング情報に含まれたステアリングベクトルのうち、前記検出されたレーダーデータにマッチングされるステアリングベクトルを検索するステップと、前記検索されたステアリングベクトルにマッピングされたステアリング角を前記レーダーデータに対応する到達方向情報に決定するステップとを含み得る。
【0022】
レーダーデータを処理する方法は、前記到達方向情報に基づいて、前記レーダーデータを検出するために用いられる前記レーダーセンサに対するレーダースキャンイメージを生成するステップをさらに含み得る。
【0023】
レーダーデータを処理する方法は、前記レーダーデータを検出するために用いられるレーダーセンサそれぞれに対して生成されたレーダースキャンイメージに基づいて、レーダーデータを処理する装置の周辺マップを生成するステップをさらに含み得る。
【0024】
前記関心角度領域を予測するステップは、前記レーダーセンサに対して、該当レーダーセンサによって放射された信号及び反射された信号間の周波数差に基づいて前記ドップラーマップを生成するステップを含み得る。
【0025】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、レーダーデータを検出するレーダーセンサと、前記レーダーデータから生成されたドップラーマップに基づいて関心角度領域を予測し、前記予測された関心角度領域に基づいて前記レーダーデータの識別に用いられるステアリング情報を調整し、前記調整されたステアリング情報に基づいて前記レーダーデータに対応する到達方向情報を決定するプロセッサとを含む。
【0026】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置によって実行される方法は、対象地点から反射されたレーダーデータが受信される方向及び前記レーダーデータを処理する装置の進行方向間に形状される角度に基づいて関心角度領域を決定するステップと、ステアリング情報から前記レーダーデータのレーダーベクトルにマッチングされる対象ステアリングベクトルを識別し、前記識別された対象ステアリングベクトルに対応するステアリング角を到達方向情報に決定するステップと、前記到達方向情報に基づいて周辺マップを生成するステップとを含む。
【0027】
前記周辺マップを生成するステップは、前記対象地点に関する情報を座標に変換し、前記座標に基づいて前記周辺マップをアップデートするステップを含み得る。
【発明の効果】
【0028】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、先行オブジェクトが存在すると予想される関心角度領域を集中的に検出することで、少ない演算負荷で該当の関心角度領域に対して高解像度の到達方向情報を取得することができる。
【0029】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、関心角度領域から所望する解像度のレーダーデータを相対的に少ない演算量で取得することができる。
【0030】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、関心角度領域に対しては高解像度を有する周辺マップを、相対的に低い演算複雑度及び少ない演算時間で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態に係るレーダーデータを処理する方法を通した周辺環境認識を説明する図である。
図2】一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置の構成を説明するブロック図である。
図3】一実施形態に係るレーダーセンサの構成を説明するブロック図である。
図4】一実施形態に係るレーダーデータを処理する方法を説明するフローチャートである。
図5】一実施形態に係る到達方向(Direction of Arrival:DoA)情報を処理する方法を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に係る到達方向情報の処理において解像度を説明する図である。
図7】一実施形態に係るレーダーデータを処理する過程を示す図である。
図8】一実施形態に係るレーダーデータを処理する過程を示す図である。
図9A】一実施形態に係るドップラーマップ及びそれに対応するステアリング情報の動的な調整を説明する図である。
図9B】一実施形態に係るドップラーマップ及びそれに対応するステアリング情報の動的な調整を説明する図である。
図9C】一実施形態に係るドップラーマップ及びそれに対応するステアリング情報の動的な調整を説明する図である。
図10A】一実施形態により関心角度領域を決定する動作の例示を説明する図である。
図10B】一実施形態により関心角度領域を決定する動作の例示を説明する図である。
図10C】一実施形態により関心角度領域を決定する動作の例示を説明する図である。
図11】一実施形態により関心角度領域に追加される候補ステアリングベクトルの解像度を決定する動作の例示を説明する図である。
図12】一実施形態により決定されたステアリング情報の例示を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
下記で説明する実施形態は様々な変更が加えられることができる。特許出願の範囲がこのような実施形態によって制限も限定もされることはない。各図面に提示された同じ参照符号は同じ部材を示す。
【0033】
本明細書で開示されている特定の構造的又は機能的な説明は単に実施形態を説明するための目的として例示されたものであり、実施形態は様々な異なる形態で実施され、本明細書に説明された実施形態に限定されることはない。
【0034】
本明細書で用いた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0035】
異なる定義がされない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0036】
また、添付図面を参照して説明することにおいて、図面符号に関係なく同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。実施形態の説明において関連する公知技術に対する具体的な説明が実施形態の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0037】
図1は、レーダーデータを処理する方法を通した周辺環境認識を説明する図である。
【0038】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置110は、センサを介して前方に存在するオブジェクトを検出する。例えば、オブジェクトを検出するセンサは、イメージセンサ及びレーダーセンサなどであってもよく、これにより、前方のオブジェクト180までの距離も検出することができる。
【0039】
図1において、センサがレーダーである場合について説明する。レーダーデータを処理する装置110は、レーダーセンサ111で受信されたレーダー信号を分析して前方のオブジェクト180までの距離を検出する。レーダーセンサ111は、レーダーデータを処理する装置110の内部又は外部に位置する。レーダーデータを処理する装置110は、レーダーセンサ111から受信されたレーダー信号だけではなく、他のセンサ(例えば、イメージセンサなど)で収集されたデータを共に考慮して、前方のオブジェクト180までの距離を検出し得る。
【0040】
レーダーデータを処理する装置110は、車両に搭載され得る。車両は、レーダーデータを処理する装置110によって検出されたオブジェクトまでの距離に基づいて、ACC(Adaptive Cruise Control)動作、AEB(Autonomous Emergency Braking)動作、及びBSD(Blind Spot Detection)動作などを行う。
【0041】
さらに、レーダーデータを処理する装置110は、距離検出の他にも周辺マップ130を生成し得る。周辺マップ130は、レーダーデータを処理する装置110の周辺に存在する標的の位置を示すマップとして、周辺の標的は、車両及び人のように動的オブジェクトであってもよく、ガードレール及び信号機のように静的オブジェクト(背景)であってもよい。
【0042】
周辺マップ130を生成するための方法として、単一スキャンイメージ方法が挙げられる。レーダーデータを処理する装置110がセンサから単一スキャンイメージ120を取得し、取得された単一スキャンイメージ120から周辺マップ130を生成することが単一スキャンイメージ方法である。単一スキャンイメージ120は、単一レーダーセンサ111によって検出されたレーダー信号から生成されたイメージとして、比較的低い解像度を示す。単一スキャンイメージ120は、レーダースキャンイメージとして、任意のレーダーセンサ111によって任意の高角(elevation angle)から受信されたレーダー信号が指示する距離を示す。例えば、図1に示された単一スキャンイメージにおいて横軸は、レーダーセンサ111のステアリング角、縦軸は、レーダーセンサ111から標的までの距離を示す。ただし、単一スキャンイメージの形態を図1に示されたものに限定することなく、設計に応じて他のフォーマット(format)に表現されてもよい。
【0043】
本明細書でステアリング角は、レーダーデータを処理する装置からターゲット地点に向かう方向に対応する角度を示す。例えば、ステアリング角は、レーダーデータを処理する装置(例えば、車両)を基準として、データデータを処理する装置の進行方向及びターゲット地点の間の角度である。
【0044】
レーダーデータを処理する装置110は、多重レーダーマップによって標的の形状に対する正確な情報を取得できる。多重レーダーマップは、複数のレーダースキャンイメージの結合から生成し得る。例えば、レーダーデータを処理する装置110は、レーダーセンサ111の移動により取得されるレーダースキャンイメージを時空間的に結合することで周辺マップ130を生成し得る。
【0045】
レーダーデータは、レーダーセンサ111によって検出される生のデータ(raw data)を含んでもよい。
【0046】
周辺マップ130を生成するためには到達方向情報を活用する。到達方向情報は、ターゲット地点から反射したレーダー信号が受信された方向を指示する情報を意味する。このような到達方向情報は、レーダースキャンデータ及び周辺マップを生成するために用いられる。レーダーデータを処理する装置110で高解像度の到達方向情報を取得するためには、より多くの角度及び/又はより多くの距離に対するレーダー信号を受信して位相を処理しなければならない。レーダーセンサ111において、より多くの信号を受信して位相を処理する場合、演算量が多くなって演算時間が増加する。以下は、相対的に低い演算負荷で高解像度の到達方向情報を取得する方法について説明する。
【0047】
図2は、一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置の構成を説明するブロック図である。
【0048】
レーダーデータを処理する装置200は、レーダーセンサ210及びプロセッサ220を含む。
【0049】
レーダーセンサ210は、レーダーデータを検出する。例えば、レーダーセンサ210は、レーダー信号を外部に放射され、放射されたレーダー信号がターゲット地点から反射した信号を受信する。レーダーセンサ210は、例えば、複数の受信チャネル(Rx channel)に対応するアンテナを含み、各受信チャネルを介して受信された信号は、受信方向により互いに異なる位相を有する。レーダーセンサ210は、図3を参照して詳細に説明する。
【0050】
プロセッサ220は、該当レーダーセンサ210によって受信された、ターゲット地点から反射して受信された信号に基づいてドップラーマップを生成する。ドップラーマップは、任意のレーダーセンサ210によって検出されたターゲット地点のドップラー情報を示すマップである。ドップラーマップで、横軸はドップラー値、縦軸はターゲット地点までの距離を示す。ドップラー値は、ドップラー速度としてレーダーセンサ210を基準にしてターゲット地点の相対速度(ターゲット地点の速度及びレーダーセンサ210の速度の差)を示す。
【0051】
下記の図9Bでは、ドップラーマップの例示を説明する。例えば、プロセッサ220は、レーダーセンサ210によって放射された信号及び反射した信号間の周波数差に基づいてドップラーマップを生成する。ただし、ドップラーマップの形態はこれに限定することなく、設計に応じて変更されてもよい。
【0052】
プロセッサ220は、レーダーデータから生成されたドップラーマップに基づいて、関心角度(Angle Of Interest:AOI)領域を予測する。関心角度領域は、事物又は背景が存在すると予想されるオブジェクトの角度に対応する領域であり、例えば、関心角度領域は任意の角度範囲に示す。例えば、オブジェクトがレーダーデータを処理する装置200の進行方向を基準として右側30度の方向に存在すると予想される場合、関心角度領域は、28度から32度の角度範囲に設定される。ただし、関心角度領域はこれに限定することなく、設計に応じて変更されてもよい。
【0053】
プロセッサ220は、予測された関心角度領域に基づいてレーダーデータの識別に用いられるステアリング情報を調整する。ステアリング情報の調整は、例えば、本来のステアリング情報に新しいステアリングベクトルを追加したり、既存のステアリングベクトルを除去するなどの方法で行う。すなわち、プロセッサ220は、関心角度領域に密集したステアリングベクトルを含むようにステアリング情報を調整して関心角度領域をフォーカシングするよう、ステアリング情報をアップデートする。
【0054】
本明細書においてステアリング情報は、レーダーデータの識別に用いられる情報であって、例えば、ステアリングベクトルの集合であってもよい。ステアリング情報に含まれたステアリングベクトルは、候補ステアリングベクトルと呼ぶことができる。ステアリングベクトルは、任意のレーダーデータが特定の角度で受信されると仮定するとき、該当レーダーデータが有するものと算出された位相情報を含む。検出されたレーダーデータの位相情報を含むベクトルをレーダーベクトル(radar vector)とは、ステアリング情報に含まれた候補ステアリングベクトルのうち、レーダーベクトルにマッチングされると判断されたステアリングベクトルは、対象ステアリングベクトルと呼ぶことができる。
【0055】
レーダーデータの位相情報は、レーダーセンサ210が複数の受信チャネルを含んでいる場合、各受信チャネルを介して受信された信号が有する位相及び基準位相間の位相差を示す。基準位相は任意の位相であってもよく、複数の受信チャネルのいずれか1つの受信チャネルの位相に設定されてもよい。例えば、プロセッサ220は、レーダーデータからレーダーセンサ210の受信チャネル数に対応する次元のレーダーベクトルを生成する。例えば、4つの受信チャネルが含まれたレーダーセンサの場合、プロセッサ220は、各受信チャネルに対応する位相値を含む4次元のレーダーベクトルを生成し得る。各受信チャネルに対応する位相値は、上述した位相差を示す数値である。
【0056】
レーダーセンサ210が1つの送信Txチャネル及び4つの受信Rxチャネルで構成される場合を例にして説明すれば、次の通りである。TXチャネルを介して放射されたレーダー信号がターゲット地点から反射した後、4つのRXチャネルを介して受信されたレーダー信号は、各チャネルごとに互いに異なる角度で受信される。レーダーセンサ210は、レーダーデータから4つのRXチャネルごとの位相値を含むレーダーベクトルを生成する。プロセッサ220は、複数の候補ステアリングベクトルからレーダーベクトルの位相情報と最も類似の位相値を有する対象ステアリングベクトルを識別し、識別された対象ステアリングベクトルが示す受信方向を、到達方向情報に決定する。
【0057】
プロセッサ220は、上述したようにステアリング情報に基づいて検出されたターゲット地点がレーダーデータを処理する装置200を基準として、いずれかの方向にあるかを決定する。
【0058】
図3は、レーダーセンサの構成を説明するブロック図である。
【0059】
レーダーセンサ310は、アンテナ313を介して信号を放射し、アンテナ313を介して信号を受信する。レーダーセンサ310は、例えば、mmWave Radarであってもよく、放射された電気波がオブジェクトに衝突し、反射して戻ってくるまでの時間(Time of Flight)と信号波形の変化を分析してオブジェクトまでの距離を測定する。例えば、レーダーセンサ310は、FMCWレーダー(Frequency Modulated Continuous-Wave Radio Detection And Ranging)として具現されてもよい。
【0060】
レーダーセンサ310のチャープ送信器(Chirp Transmitter)311は、時間に応じて周波数が変わる周波数変調信号(FM signal、Frequency Modulated signal)302を生成する。例えば、チャープ送信器311は、チャープ信号301を周波数変調することによって、周波数変調信号302を生成する。チャープ信号301は、時間に応じて振幅が線形的に増加したり減少する信号を示す。チャープ送信器311は、チャープ信号301の振幅に対応する周波数を有する周波数変調信号302を生成する。例えば、図3に示すように、周波数変調信号302は、チャープ信号301の振幅が増加する区間では徐々に周波数が増加する波形を示し、チャープ信号301の振幅が減少する区間では徐々に周波数が減少する波形を示す。チャープ送信器311は、周波数変調信号302をデュプレクサ312に伝達する。
【0061】
レーダーセンサ310のデュプレクサ312は、アンテナ313を通した信号の送信経路及び受信経路を決定する。例えば、レーダーセンサ310が周波数変調信号302を放射する間にデュプレクサ312は、チャープ送信器311からアンテナ313までの信号経路を形成し、形成された信号経路を介して周波数変調信号302をアンテナ313に伝達した後外部へ放射する。
【0062】
レーダーセンサ310がオブジェクトから反射された信号を受信する間に、デュプレクサ312は、アンテナ313から周波数分析器316までの信号経路を形成する。アンテナ313は、放射された信号が障害物に到達した後に反射され、戻ってきた反射信号を受信し、レーダーセンサ310は、信号経路を介して反射信号をアンテナ313から周波数分析器316に伝達する。
【0063】
周波数ミキサ314は、受信された信号から周波数変調(FM)以前の線形信号(例えば、オリジナルチャープ信号)を復調する。増幅器315は、復調された線形信号の振幅を増幅する。
【0064】
周波数分析器316は、オブジェクトから反射して返ってくる信号308と放射されたチャープ信号301とを比較する。周波数分析器316は、放射されたチャープ信号301及び反射した信号308間の周波数差を検出する。放射されたチャープ信号301及び反射した信号308間の周波数差は、図3に示されたグラフ309で、放射されたチャープ信号301の振幅が時間軸に沿って線形的に増加する区間の間に一定の差を示し、レーダーセンサ310及びオブジェクトの間の距離に比例する。したがって、レーダーセンサ310及びオブジェクトの間の距離は、放射されたチャープ信号301及び反射した信号308間の周波数差から導き出される。周波数分析器316は、分析された情報をレーダーデータを処理する装置のプロセッサに伝達する。
【0065】
例えば、周波数分析器316は、下記の数式(1)によりレーダーセンサ310及びオブジェクト間の距離を算出する。
【0066】
【数1】
上述した数式(1)において、Rはレーダーセンサ310及びオブジェクト間の距離を示す。cは光速を示す。Tは、放射されたチャープ信号301の上昇区間の時間の長さを示す。fは上昇区間内任意の時点で放射されたチャープ信号301及び反射した信号308間の周波数差であり、ビット周波数と呼ぶ。Bは変調帯域幅を示す。参考として、ビット周波数fは下記のような数式(2)によって導き出される。
【0067】
【数2】
【0068】
上述した数式(2)において、fはビット周波数を示し、tは放射されたチャープ信号301の放射時点及び反射した信号308の受信時点間の時間差(例えば、遅延時間)を示す。
【0069】
一実施形態によれば、複数のレーダーセンサが車両の様々な部位に設けられ、複数のレーダーセンサによって検出された情報に基づいてレーダーデータを処理する装置が車両の全方位に対するターゲット地点までの距離、方向、及び相対速度を算出する。レーダーデータを処理する装置は車両に搭載され得る。車両は、レーダーセンサによって収集された情報に基づいて取得された情報を用いて、走行に助かる様々な機能(例えば、ACC(Adaptive Cruise Control)、BSD(Blind Spot Detection)、及びLCA(lane change assistance)など)を提供する。
【0070】
複数のレーダーセンサそれぞれは、チャープ信号を周波数変調して外部に放射し、ターゲット地点から反射された信号を受信する。レーダーデータを処理する装置のプロセッサは、放射されたチャープ信号及び受信された信号間の周波数差から複数のレーダーセンサそれぞれからターゲット地点までの距離を決定し得る。
【0071】
図4は、一実施形態に係るレーダーデータを処理する方法を説明するフローチャートである。
【0072】
まず、ステップS410において、レーダーデータを処理する装置は、検出されたレーダーデータからドップラーマップを生成し、生成されたドップラーマップに基づいて関心角度領域を予測する。関心角度領域の予測の具体的な内容については下記の図9Cを参照して説明する。
【0073】
そして、ステップS420において、レーダーデータを処理する装置は、予測された関心角度領域に基づいて、レーダーデータの識別に用いられるステアリング情報を調整する。ステアリング情報の調整の具体的な内容については下記の図11及び図12を参照して説明する。
【0074】
次に、ステップS430において、レーダーデータを処理する装置は、調整されたステアリング情報に基づいて到達方向情報を決定する。
【0075】
ステアリング情報は、予め設定されて格納された複数の候補ステアリングベクトルの集合であってもよく、各候補ステアリングベクトルごとに固有な値と1:1にマッピングされてもよい。例えば、予め格納された複数の候補ステアリングベクトルは位相情報を有し、それぞれの候補ステアリングベクトルごとにマッピングされる固有な値がステアリング角である場合、レーダーデータを処理する装置は、予め格納された複数の候補ステアリングベクトルのうち、受信されたレーダーデータのレーダーベクトルに対応する対象ステアリングベクトルを決定する。レーダーデータを処理する装置は、決定された対象ステアリングベクトルにマッピングされたステアリング角を出力する。
【0076】
対象ステアリングベクトルを決定する具体的な動作は、例えば、予め格納された複数の候補ステアリングベクトルのうち、レーダーベクトルと最も少ない差を示すステアリングベクトル(例えば、レーダーベクトルとのユークリッド距離が最も小さいステアリングベクトル)を対象ステアリングベクトルとして決定する動作を含む。又は、対象ステアリングベクトルを決定する動作は、レーダーベクトルを構成する様々なパラメータのうち、特定パラメータと最も類似のパラメータを有する候補ステアリングベクトルを対象ステアリングベクトルとして決定する動作を含んでもよい。その他に、対象ステアリングベクトルを決定する動作は、様々な方法により具現される。
【0077】
レーダーデータを処理する装置は、決定された対象ステアリングベクトルにマッピングされたステアリング角をレーダーデータに対応する到達方向情報で決定し得る。
【0078】
ステアリング情報に含まれる候補ステアリングベクトルの個数が増加するほど、各候補ステアリングベクトルが指示するステアリング角が細分化されるため、レーダーデータを処理する装置は、到達方向情報を高い角解像度の値に決定し得る。
【0079】
図5は、一実施形態に係る到達方向(Direction of Arrival:DoA)情報を処理する方法を示すフローチャートである。
【0080】
一実施形態によれば、レーダーデータを処理する装置は、レーダーデータに対してMUSIC(Multiple Signal Classification)アルゴリズムを適用することで到達方向情報を処理する。
【0081】
まず、ステップS510において、レーダーデータを処理する装置は、サンプル共分散行列(sample covariance matrix)を算出する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、レーダーセンサの個別受信チャネルによって受信されたレーダー信号をサンプリングした結果からサンプル共分散行列を算出し得る。
【0082】
そして、ステップS520において、レーダーデータを処理する装置は、固有分解(eigen decomposition)を行う。例えば、レーダーデータを処理する装置は、上述したサンプル共分散行列を固有分解することによって、固有値及び固有ベクトルを算出する。
【0083】
次に、ステップS530において、レーダーデータを処理する装置は、ノイズ共分散行列を算出する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、サンプル共分散行列を信号成分及びノイズ成分に分離する。
【0084】
そして、ステップS540において、レーダーデータを処理する装置は、空間スペクトルを算出する。レーダーデータを処理する装置は、ノイズ共分散行列を用いて空間スペクトルを構成し、ピークを探索することによって到達方向情報を取得する。
【0085】
一実施形態によれば、周辺マップの解像度と上述した到達方向情報の取得のためのアルゴリズム処理時間は互いに比例し、高解像度であるほど到達方向情報を算出するために求められる多くの時間は空間スペクトル算出ステップS540が占めている。
【0086】
ただし、上述したMUSICアルゴリズムは単なる例示であって、設計に応じて他の方式がレーダーデータに適用されてもよい。例えば、CDBF(Conventional Digital Beamforming)、Bartlett、及びMVDR(Minimum Variance Distortionless Response)などの方式が挙げられる。
【0087】
図6は、一実施形態に係る到達方向情報の処理において解像度を説明する図である。
【0088】
図6は、任意のオブジェクト610に対してそれぞれ他の解像度を有するステアリング情報に基づいて検出された結果を示す。図6に示すグリッドパターン(grid pattern)の個別スペースは、ステアリング情報に含まれた候補ステアリングベクトルに対応する。ステアリング情報がより多くの候補ステアリングベクトルを含むほど、レーダーデータを処理する装置は、受信されたレーダー信号がどのような方向から受信されたかをより精密に識別できるため、高い解像度の検出結果を取得できる。
【0089】
例えば、図6に示す左側は、高い解像度を有するステアリング情報に基づいて検出されたターゲット地点621を示す。図6中央に示す図は、中間解像度を有するステアリング情報に基づいて検出されたターゲット地点622を示す。図6に示す右側は、低い解像度を有するステアリング情報に基づいて検出されたターゲット地点623を示す。ステアリング情報の解像度が高ければ、密度が高く(dense)、多くの候補ステアリングベクトルを含むことから正確なイメージが取得できるが、演算複雑度が増加する。ステアリング情報の解像度が低ければ、密度が低く(sparse)、少ない候補ステアリングベクトルを含むことから不正確なイメージが取得されるが、演算複雑度は減少する。
【0090】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、重要な領域に対しては高い解像度でオブジェクト610を検出しつつ、演算複雑度が減少した方法を行ってもよい。下記の図7図12では、オブジェクト610が存在すると予想される関心角度領域についてのみ候補ステアリングベクトルがフォーカスされたステアリング情報を用いることで、レーダーデータを処理する装置が増加した解像度を有するイメージを低い演算複雑度で取得する動作について説明する。
【0091】
図7及び図8は、一実施形態に係るレーダーデータを処理する過程を示す図である。
【0092】
まず、図7に示すように、ステップS710において、レーダーデータを処理する装置は、ターゲット地点までの距離を検出する動作を行う。例えば、レーダーデータを処理する装置はレーダー信号を処理し、該当レーダー信号を反射させたターゲット地点までの距離を識別する。
【0093】
そして、ステップS720において、レーダーデータを処理する装置は、DOAフォーカシング動作を行う。レーダーデータを処理する装置は、予測された関心角度領域にフォーカシングすることにより、局地的にレーダーセンサの解像度を増加させ得る。レーダーデータを処理する装置は、ステアリング情報に関心角度領域に対応する候補ステアリングベクトルを追加する。例えば、ステップS820において、レーダーデータを処理する装置はドップラーマップを生成する。レーダーデータを処理する装置は、放射された信号及び反射された信号間の周波数差に基づいてドップラーマップを生成する。レーダーデータを処理する装置は、レーダーデータから、ターゲット地点のドップラー速度及び距離を決定することでドップラーマップを生成する。次に、ステップS830において、レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域を予測する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、レーダーセンサを含むレーダーデータを処理する装置の進行方向及びドップラーマップに示されたターゲット地点から反射したレーダーデータの受信方向がなしている角度に基づいて関心角度領域を決定する。
【0094】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、毎時間フレームごとに最適な関心角度領域に対応する候補ステアリングベクトルをステアリング情報に追加することで、以下で到達方向情報を効率よく取得できる。
【0095】
次に、ステップS730において、レーダーデータを処理する装置は、DOA情報推定の動作を行う。例えば、レーダーデータを処理する装置は、調整されたステアリング情報に基づいて、各ターゲット地点のレーダーデータを識別する。レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域にフォーカスされた候補ステアリングベクトルを含むステアリング情報から、レーダーデータにマッチングする対象ステアリングベクトルを識別する。レーダーデータを処理する装置は、識別された対象ステアリングベクトルに対応するステアリング角を、該当レーダーデータに対する到達方向情報に決定する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、MUSICアルゴリズム、MVDRアルゴリズム、及びESPIRT(Estimation of Signal Parameter via Rotational invariance Techniques)などを用いて到達方向情報を推定する。レーダーデータを処理する装置は、検出されたレーダーデータのレーダーベクトルがマッチングする対象ステアリングベクトルをステアリング情報から識別し、識別された対象ステアリングベクトルに対応するステアリング角を到達方向情報に決定する。
【0096】
そして、ステップS740において、レーダーデータを処理する装置は、マップ生成の動作を行う。一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、レーダーデータに対して決定された到達方向情報に基づいて周辺マップを生成する。例えば、ステップS860において、レーダーデータを処理する装置は、ターゲット地点に対して取得された情報(例えば、ターゲット地点までの距離、及び該当ターゲット地点に対する到達方向情報など)を座標に変換する。レーダーデータを処理する装置は、CFAR(Constant false alarm rate)検出方式及びMax-Opなどを使用する。次に、ステップS870において、レーダーデータを処理する装置は、変換された座標に基づいて周辺マップをアップデートする。例えば、レーダーデータを処理する装置は、到達方向情報に基づいてレーダーセンサに対するレーダースキャンイメージを生成する。レーダーデータを処理する装置は、複数のレーダーセンサのそれぞれに対して生成されたレーダースキャンイメージに基づいて、レーダーデータを処理する装置の周辺マップを生成する。
【0097】
また、図7には図示していないが、図8に示すように、レーダーデータを処理する装置は、追加的にステップS850において、ターゲット地点を選別する。レーダーデータを処理する装置は、ステップS730で到達方向情報が推定されたターゲット地点のうちマップ生成に適用されるターゲット地点を選別する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、レーダーセンサの視野角内のターゲット地点を選別する。レーダーデータを処理する装置は、視野角から外れるターゲット地点をステップS740のマップ生成から排除する。異なる例として、レーダーデータを処理する装置は、任意の2つのターゲット地点が相互に対して閾値類似度以上の類似する到達方向情報を有する場合、2つのターゲット地点のうちの1つのみを選別し、残りの1つを排除する。2つのターゲット地点の到達方向情報が同一であるか、極めて類似すれば、2つのターゲット地点は実質的に同じ地点であるためである。同じターゲット地点を用いたマップ生成は、レーダーを処理する装置の演算負荷のみを増加させる一方、解像度を向上させない。
【0098】
下記の図9A図9Cでは、上述したステップS830に記載の関心角度領域の決定について説明する。
【0099】
図9A図9Cは、一実施形態に係るドップラーマップ及びそれに対応するステアリング情報の動的な調整を説明する図である。
【0100】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置910は、該当装置910の進行方向及びレーダーデータの受信方向がなしている角度に基づいて、関心角度領域を決定する。受信されたレーダーデータは、ドップラーマップ930に示されたターゲット地点から反射した信号に対応するデータであり得る。
【0101】
ドップラーマップ930は、任意のレーダーセンサ911によって検出されたターゲット地点のドップラー情報を示すマップであって、車両などの走行方向による各ターゲット地点の相対的位置及びドップラー値を示す。ドップラーマップ930で、横軸はドップラー値、縦軸はターゲット地点までの距離を示す。ドップラー値は、例えば、ドップラー速度としてレーダーセンサ911を基準とするターゲット地点との相対速度を示す。
【0102】
例えば、図9Aにおいて、レーダーデータを処理する装置910の周辺に標的A921、標的B922、及び標的C923に存在する状況を示す。標的A921は、レーダーデータを処理する装置910の進行方向を基準としてθに存在し、標的B922は、レーダーデータを処理する装置910の進行方向を基準としてθに存在し、標的C923は、レーダーデータを処理する装置910の進行方向を基準としてθに存在する。
【0103】
図9Bは、図9Aに示す状況に対してレーダーセンサ911により収集されたレーダーデータに基づいて生成されたドップラーマップ930を示す。
【0104】
このように演算された結果をドップラーマップ930にマッピングすれば、標的A921は任意のドップラー速度vを有し、任意の距離rに対応する地点931に存在する。標的B922はドップラー速度vを有し、任意の距離rに対応する地点932に存在する。標的C923はドップラー速度vを有し、任意の距離rに対応する地点933に存在する。
【0105】
レーダーデータを処理する装置910は、ドップラーマップ930からターゲット地点に対するステアリング角を決定する。ドップラーマップ932から検出されたターゲット地点に対するステアリング角は関心ステアリング角のように示す。一実施形態によれば、レーダーデータを処理する装置910の進行速度、個別標的のドップラー速度、及び関心ステアリング角は下記の数式(3)のような関係を示す。
【0106】
=v・cosθ (3)
【0107】
上述した数式(3)で、vはターゲットのドップラー速度、θは関心ステアリング角、vはレーダーデータを処理する装置910(例えば、車両)の進行方向に対する速度を示す。したがって、レーダーデータを処理する装置910は、該当装置910の速度及びドップラーマップ930に示されたターゲット地点のドップラー速度に基づいて、レーダーデータを処理する装置910からターゲット地点に向かう関心ステアリング角θを決定する。
【0108】
例えば、関心ステアリング角θは、下記の数式(4)によって算出される。
【0109】
θ=±|cos-1(v/v)| (4)
【0110】
上述した数式(4)により、レーダーデータを処理する装置910は、ターゲットのドップラー速度v及びレーダーデータを処理する装置910自分の進行速度vに基づいてターゲットに対する関心ステアリング角θを算出する。
【0111】
レーダーデータを処理する装置910は、ドップラーマップ930に示されたターゲット地点までの距離及びレーダーデータを処理する装置910の進行方向とターゲット地点から反射した信号の受信方向との間に形成される角度に基づいて、下記の図9Cの関心角度領域を決定することができる。
【0112】
図9Cは、ステアリング情報に含まれた候補ステアリングベクトルのステアリング角及び距離による配置940を示す。例えば、図9Cは、図9Bで生成されたドップラーマップ930に基づいて予測された関心角度領域941,942,943の例示を示している。ドップラーマップ930から算出されたθは大きさのみが導き出されるだけであって、符号(例えば、+又は-)については制限されてないため、レーダーデータを処理する装置は、図9Cに示すように距離軸を基準にして対称的にするよう、関心角度領域941,942,943を設定する。
【0113】
図9Cに示されたグリッドの2つの直線が交差する地点は、該当地点の角度に候補ステアリングベクトルが配置されたことを示す。レーダーデータを処理する装置910は、ステアリング情報でターゲット地点に対して上述した数式(4)により算出された関心ステアリング角及び距離を中心に関心角度領域941,942,943を決定する。
【0114】
図9Aにおいて、標的A921は、レーダーデータを処理する装置910の進行方向の中心に位置するため、標的A921のドップラー速度vはレーダーデータを処理する装置910の進行速度vと同一である。したがって、標的A921に対する関心ステアリング角θは0である。レーダーデータを処理する装置910は、図9Cに示すようにθを中心に標的A921に対応する第1関心角度領域941を形成する。レーダーデータを処理する装置910は、第1関心角度領域941内に属するステアリング角がマッピングされた、候補ステアリングベクトルをステアリング情報に追加する。
【0115】
標的B922及び標的C923は、レーダーデータを処理する装置910の進行方向からずれた位置にあるため、標的B922及び標的C923のドップラー速度vは、レーダーデータを処理する装置910の進行速度vと異なる値を示す。したがって、レーダーデータを処理する装置910は、標的B922及び標的C923に対して車両の進行方向を中心に正の関心ステアリング角θ、θ及び負の関心ステアリング角θ、θを取得する。図9Cにおいて、レーダーデータを処理する装置910は、2つの関心ステアリング角それぞれに対応する関心角度領域を決定する。したがって、標的B922に対する第2関心角度領域942は、正の関心ステアリング角θ及び負の関心ステアリング角のθ両方に対して決定される。標的C923についても、レーダーデータを処理する装置910は、第3関心角度領域943を正の関心ステアリング角θ及び負の関心ステアリング角θの両方に対して決定する。
【0116】
参考として、レーダーデータを処理する装置910によりドップラーマップ930に示されるターゲット地点は静的な背景と仮定する。ターゲット地点が実際に静的な背景である場合、検出されたターゲット地点は、レーダーマップアップデートなどに使用され得る。ターゲット地点が静的な背景ではなく、動的なオブジェクトである場合、レーダーデータを処理する装置910の移動により関心角度領域から外されるため、該当の動的なオブジェクトは自然にレーダーマップアップデートから排除される。したがって、図9Bにおいて、個別標的のドップラー速度は、レーダーデータを処理する装置910が停止中である標的にアクセスする相対速度と見なす。
【0117】
図10A図10Cは、一実施形態により関心角度領域を決定する動作の例示を説明する図である。
【0118】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置1010は、レーダーデータを処理する装置1010の速度及びドップラー速度に基づいて算出された関心ステアリング角が複数である場合に応答して、複数の関心ステアリング角のうちの一部の関心ステアリング角を排除する。例えば、レーダーデータを処理する装置1010は、レーダーセンサ1011の視野角に基づいて視野角から外れる関心ステアリング角を排除し、視野角内に属する関心ステアリング角を選択する。レーダーデータを処理する装置1010は、選択された関心ステアリング角に基づいて関心角度領域を決定する。
【0119】
図10Aは、車両の長さ軸に対して斜めにレーダーセンサが配置された例示を示す。
【0120】
図10Aに示す例において、レーダーセンサ1011は、レーダーデータを処理する装置1010の進行方向を基準にして、一側(例えば、左側)に傾いて装着されて側面に向かっている。レーダーデータを処理する装置1010は、このようなレーダーセンサ1011を介してターゲット地点から反射したレーダー信号を受信する。
【0121】
図10Bに示すように、レーダーデータを処理する装置1010は、図9Bを参照して説明したように、ドップラーマップ1030を生成し、生成されたドップラーマップ1030は標的B1022に対応する地点1031を含む。レーダーデータを処理する装置1010は、標的B1022のドップラー速度及び車両の進行速度に基づいて関心ステアリング角θを決定する。上述した数式(4)によれば、標的B1022に対する関心ステアリング角θは正の値及び負の値に示されるが、図10Aに示すように配置されたレーダーセンサ1011は、正の関心ステアリング角の値(例えば、図10Aに示す車両の右側)を観測することができない。したがって、レーダーデータを処理する装置1010は、負の値を標的B1022に対する関心ステアリング角θに決定する。
【0122】
図10Cは、ステアリング情報に含まれた候補ステアリングベクトルのステアリング角及び距離による配置1040を示す。例えば、図10Cは、上述した関心ステアリング角θに基づいて決定された関心角度領域を示す。図9Cに示すように、図10Cの例として、候補関心角度領域1041及び1042が決定され、レーダーデータを処理する装置1010はレーダーが左側に装着されているため、右側の関心角度領域1042を排除する。
【0123】
レーダーデータを処理する装置1010は、ステアリング情報で標的B1022に対して決定された単一関心領域1041に候補ステアリングベクトルを追加する。レーダーデータを処理する装置1010は、正の値を有する関心ステアリング角に対応する残りの関心領域1042については候補ステアリングベクトルの追加を排除する。
【0124】
他の一実施形態によれば、レーダーデータを処理する装置1010は、ターゲット地点から反射したレーダー信号から測定された位相情報に基づいて、複数の関心ステアリング角のうち一部の関心ステアリング角を排除してもよい。例えば、レーダーデータを処理する装置1010は、ターゲット地点に対するレーダーデータを簡素化された位相比較に基づいて、レーダーデータを処理する装置1010の進行方向を基準としてターゲット地点が右側又は左側に存在するか否かを決定する。レーダーデータを処理する装置1010は、ターゲット地点が存在する側(side)に基づいて、複数の関心ステアリング角のうち一部の関心ステアリング角を選択する。レーダーデータを処理する装置1010は、選択された一部の関心ステアリング角に基づいて関心角度領域を決定し得る。
【0125】
図11は、一実施形態により関心角度領域に追加される候補ステアリングベクトルの解像度を決定する動作の例示を説明する図である。
【0126】
図11は、上述した図9Aに示す標的Cを基準にして説明する。すなわち、図11は、関心ステアリング角が30度である場合、ステアリング解像度の設定データ1101及びそれにより生成されたステアリング情報1102の例示を示す。
【0127】
例えば、ステアリング解像度設定データ1101の横軸は角度、縦軸は角解像度を示す。ステアリング解像度設定データ1101は、個別ターゲット地点に対応するステアリング角による角解像度を指示する。また、角解像度は、関心角度領域内で任意の候補ステアリングベクトル1180が他の候補ステアリングベクトル1180と離隔する角度差(angular difference)として、角差が小さいほどステアリング情報1102の密度が高いことに対応する。
【0128】
一実施形態によれば、レーダーデータを処理する装置は、ステアリング情報1102で関心角度領域内に予め定められた個数の候補ステアリングベクトル1180を追加する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域に対して指定された角解像度により算出された個数の候補ステアリングベクトル1180をステアリング情報1102に追加する。
【0129】
ステアリング情報1102は、任意の距離に対する候補ステアリングベクトル1180の集合を示す。例えば、ステアリング情報1102は、ステアリング解像度設定データ1101によって指示される角解像度による角差だけ離隔した候補ステアリングベクトル1180を含む。参考として、図11において、ステアリング情報1102は、説明の便宜のために1次元として示されているが、これに限定されることはない。ステアリング情報1102は、距離別ステアリング角別に、異なる密度で配置された候補ステアリングベクトル1180を含んでもよい。
【0130】
レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域内で関心角度1170からの角度差に基づいて追加される候補ステアリングベクトル1180の個数及び候補ステアリングベクトル1180間の角度間隔を決定する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域の中心に近接する領域に候補ステアリングベクトル1180をさらに多く追加する。レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域の中心から遠い領域に候補ステアリングベクトル1180をより少なく追加する。したがって、ステアリング情報1102は、関心角度1170周辺には高い密度に配置された候補ステアリングベクトル1180を含み、関心角度1170から遠い領域では、低い密度に配置された候補ステアリングベクトル1180を含む。
【0131】
標的Cの場合に関心角度が30度であるため、解像度指示線1130のような形態を有するステアリング解像度設定データ1101に表現される。すなわち、レーダーデータを処理する装置は、関心角度の近所に対して角度間隔を小さく設定し、関心角度と遠ざかるほど角度間隔を大きく設定する。
【0132】
図11に示すように、カーブ形態の解像度の指示線として説明したが、解像度支持線の形態はこれに限定されることはない。図11において、解像度指示線1130は、関心角度1170を基準として左右対称であり、関心角度1170の付近で値が最小値(例えば、0)に収斂する下方に凹んだ形態の曲線で示されているが、これに限定されることはない。解像度指示線1130は、関心角度1170を基準として左右対称であり、関心角度1170の付近で値が最小値(例えば、0)に収斂する下方にふっくらした形態の曲線であってもよい。また、解像度指示線1130は、関心角度1170の付近で値が最小値(例えば、0)に収斂されながら関心角度1170を基準として互いに対称的にする2つの直線であってもよい。さらに、図11では、解像度指示線1130が関心角度1170を中心に対称として示されているが、これに限定されることはない。
【0133】
図11に示された解像度指示線1130は、ステアリング情報1102に含まれた候補ステアリングベクトルの角度間隔を設定するために使用され得る。解像度指示線1130は、関心角度1170の近所で減少した角度間隔を指示し、関心角度1170から遠方では増加した角度間隔を指示する。
【0134】
このようにレーダーデータを処理する装置は、解像度指示線1130に基づいて関心角度領域内で候補ステアリングベクトル1180間の角度間隔を決定することができる。
【0135】
ステアリング解像度設定データ1101は、任意のレーダーセンサで検出された複数の標的に対する解像度指示線を含んでもよく、レーダーデータを処理する装置は、複数の解像度指示線を重複して該当レーダーセンサに対してステアリング角ごとの候補ステアリングベクトル1180の密度を決定し得る。例えば、複数の解像度指示線のそれぞれが任意のターゲット地点に対する角度間隔を個別的に指示する場合、レーダーデータを処理する装置は、角度間隔の平均を該当のターゲット地点に対する角解像度として決定する。
【0136】
また、レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域内で最小間隔の閾値を決定する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、解像度指示線1130にもかかわらず、関心角度領域内で関心角度1170の付近では候補ステアリングベクトル1180間の角度間隔を最小間隔の閾値以上に制限する。最小間隔の閾値は、候補ステアリングベクトル1180間の最小角度の間隔を示す閾値である。例えば、最小間隔の閾値が0.7に設定される場合、レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域内で最小0.7度以上の間隔で候補ステアリングベクトル1180をステアリング情報1102に追加する。したがって、レーダーデータを処理する装置は、要求される解像度よりも精密な解像度でレーダーデータを識別することによる不要な演算を防止することができる。
【0137】
レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域から離れた領域では最大間隔の閾値を決定する。例えば、レーダーデータを処理する装置は、解像度指示線1130にもかかわらず、関心角度1170(例えば、ターゲットCに対して30度)から遠い領域(例えば、60度、80度、-60度、-80度など)に対しては候補ステアリングベクトル1180間の角度間隔を最大間隔の閾値以下に制限する。最大間隔の閾値は、候補ステアリングベクトル1180間の最大角度の間隔を示す閾値である。例えば、最大間隔の閾値が2.8に設定される場合、レーダーデータを処理する装置は、レーダーセンサの全体の検出範囲に対して2.8度以下の間隔で候補ステアリングベクトル1180をステアリング情報1102に含ませる。したがって、レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域の他の領域に対しても最小限の精密度に対応する解像度でレーダーデータを識別することで、ユーザの安全を確保することができる。
【0138】
図12は、一実施形態により決定されたステアリング情報の例示を説明する図である。
【0139】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、関心角度領域の位置、大きさ、及び個数のうち少なくとも1つを動的に調整する。関心角度領域の位置は、ステアリング情報で候補ステアリング角及び距離に定義される。関心角度領域の大きさは関心角度を中心に円形に決定されるが、これに限定されることはない。関心角度領域は、ターゲット地点に対応する距離に対して関心角度の周辺角度に対応する。関心角度領域の個数は、ドップラーマップから検出されるターゲット地点の個数に対応する。
【0140】
例えば、レーダーデータを処理する装置は、デフォルトステアリング情報1210から適応ステアリング情報1230を生成する。レーダーデータを処理する装置は、設定データ1220に基づいてデフォルトステアリング情報1210に含まれた候補ステアリングベクトルの分布を変更することで適応ステアリング情報1230を生成する。レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域に追加される候補ステアリングベクトルの個数などを調整する。設定データ1220の横軸はレーダーセンサの視野角を分割した個数を示し、縦軸はステアリング角を示す。設定データ1220は単なる例示であって、これに限定されることはない。
【0141】
図12に示された適応ステアリング情報1230に示される地点は、候補ステアリングベクトルに対応する。例えば、任意のステアリング角及び任意の距離上に表示された地点は、該当角度及び該当距離で受信されるものと算出されたレーダー信号の位相情報を含む候補ステアリングベクトルを示す。図12に示された地点は、候補ステアリングベクトルを示す。適応ステアリング情報1230の関心角度領域1231内で、候補ステアリングベクトルの密度が高く示される。
【0142】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、関心角度領域に対して候補ステアリングベクトルを追加する。また、レーダーデータを処理する装置は、予測された関心角度領域から離れた領域に対応する候補ステアリングベクトルのうち少なくとも一部をステアリング情報から除去してもよい。したがって、レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域にもっとフォーカシングしてもよい。レーダーデータを処理する装置は、関心角度領域に密集した候補ステアリングベクトル及びその他の領域に希薄な候補ステアリングベクトルを含む適応ステアリング情報1230を介して、動的にレーダーイメージの解像度を調整することができる。
【0143】
一実施形態に係るレーダーデータを処理する装置は、動的にステアリング情報に含まれる候補ステアリングベクトルを調整することで、ターゲットがあると予想される関心角度領域に対するレーダー解像度を増加させることができる。
【0144】
以上述した装置は、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、又はハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素の組み合せで具現される。例えば、本実施形態で説明した装置及び構成要素は、例えば、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor)、マイクロコンピュータ、FPA(field programmable array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサー、又は命令(instruction)を実行して応答する異なる装置のように、1つ以上の汎用コンピュータ又は特殊目的コンピュータを用いて具現される。処理装置は、オペレーティングシステム(OS)及びオペレーティングシステム上で実行される1つ以上のソフトウェアアプリケーションを実行する。また、処理装置は、ソフトウェアの実行に応答してデータをアクセス、格納、操作、処理、及び生成する。理解の便宜のために、処理装置は1つが使用されるものとして説明する場合もあるが、当技術分野で通常の知識を有する者は、処理装置が複数の処理要素(processing element)及び/又は複数類型の処理要素を含むことが把握する。例えば、処理装置は、複数のプロセッサ又は1つのプロセッサ及び1つのコントローラを含む。また、並列プロセッサ(parallel processor)のような、他の処理構成も可能である。
【0145】
ソフトウェアはコンピュータプログラム、コード、命令、又はそのうちの一つ以上の組合せを含み、希望の通りに動作するよう処理装置を構成したり、独立的又は結合的に処理装置を命令することができる。ソフトウェア及び/又はデータは、処理装置によって解釈されたり処理装置に命令又はデータを提供するために、いずれかの類型の機械、構成要素、物理的装置、仮想装置、コンピュータ格納媒体又は装置、又は送信される信号波に永久的又は一時的に具体化することができる。ソフトウェアはネットワークに連結されたコンピュータシステム上に分散され、分散した方法で格納されたり実行され得る。ソフトウェア及びデータは一つ以上のコンピュータで読出し可能な記録媒体に格納され得る。
【0146】
本実施形態による方法は、様々なコンピュータ手段を介して実施されるプログラム命令の形態で具現され、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録される。記録媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独又は組み合せて含む。記録媒体及びプログラム命令は、本発明の目的のために特別に設計して構成されたものでもよく、コンピュータソフトウェア分野の技術を有する当業者にとって公知のものであり使用可能なものであってもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク及び磁気テープのような磁気媒体、CD-ROM、DYIJDのような光記録媒体、フロプティカルディスクのような磁気-光媒体、及びROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を保存して実行するように特別に構成されたハードウェア装置を含む。プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを用いてコンピュータによって実行される高級言語コードを含む。ハードウェア装置は、本発明に示す動作を実行するために1つ以上のソフトウェアモジュールとして作動するように構成してもよく、その逆も同様である。
【0147】
上述したように実施形態をたとえ限定された図面によって説明したが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の説明に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順で実行されるし、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合又は組み合わせられてもよいし、他の構成要素又は均等物によって置き換え又は置換されたとしても適切な結果を達成することができる。
【0148】
したがって、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されて定められるものではなく、特許請求の範囲及び特許請求の範囲と均等なものなどによって定められるものである。
【符号の説明】
【0149】
200:レーダーデータを処理する装置
210:レーダーセンサ
220:プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12