(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エアーブリーザー
(51)【国際特許分類】
F16H 57/027 20120101AFI20240214BHJP
【FI】
F16H57/027
(21)【出願番号】P 2019095326
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】598093576
【氏名又は名称】駒田 充治
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】駒田 充治
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-168054(JP,A)
【文献】特開2012-036941(JP,A)
【文献】国際公開第2011/058571(WO,A1)
【文献】実開昭59-153773(JP,U)
【文献】特開2007-127139(JP,A)
【文献】実開昭59-113573(JP,U)
【文献】特表2001-514955(JP,A)
【文献】特開平05-253996(JP,A)
【文献】特開2014-039449(JP,A)
【文献】実開昭57-155369(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧装置の作動油を溜めているタンク内圧を利用するバルブからなるエアーブリーザーであって、前記バルブを吸入側と排気側に各々設け、少なくとも吸入側バルブにはエアフィルターを介在し通過した浄化空気をタンクに吸入するとともに、排気側バルブにはろ過材を介在して油分を除去して排気するように
し、前記バルブは、油圧装置の作動油を溜めているタンク内の変化する内圧を利用して浮き球が上下し開閉する球体バルブであり、当該球体バルブの少なくとも一部を内部が視認可能な材質により形成し、浮き球の動きが見えるようにしたことを特徴とするエアーブリーザー。
【請求項2】
油圧装置の作動油を溜めているタンク内圧を利用するバルブからなるエアーブリーザーであって、前記バルブを吸入側と排気側に各々設け、少なくとも吸入側バルブにはエアフィルターを介在し通過した浄化空気をタンクに吸入するとともに、排気側バルブにはろ過材を介在して油分を除去して排気するように
し、前記バルブは、油圧装置の作動油を溜めているタンク内の変化する内圧を利用して浮き球が上下し開閉する球体バルブであり、当該バルブの入り口部には、吸入空気の旋回板を取付けることにより浮き球が回転するようにしたことを特徴とするエアーブリーザー。
【請求項3】
前記油圧装置は動力を伝える変速機とされ、当該変速機の熱、稼動状況で変化する内圧を利用して浮き球が上下し開閉する球体バルブを吸入側と排気側に各々設けたことを特徴とする
請求項1または2に記載のエアーブリーザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧装置、変速機の使用時に用いられる貯蔵タンクの変化する内圧を調整するエアーブリーザーに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、自動化された生産ラインは多様な機械が連携し、高精度、高速化、精密なセンサーで稼動状況を感知し、計量管理、精密な制御を図っているが、無人運転を行うには、作動油、潤滑油の品質管理が求められている。
生産ラインを支える液化した材料を使用する貯蔵タンクでの自動化が進み、精密な制御で液体噴射、流体分配を行わせるためには、バルブ、ポンプなどでの計量を正しく行わせるほかに、埃、異物の混入を防ぐ貯蔵タンクであることが求められている。特に、高温、土埃の中で稼働する農業機械、建設機械では、温度変化が激しく、タンク内圧が上下する変速機に周辺に舞っている土埃の吸込みを防ぐエアーブリーザーが求められている。
【0003】
変速機は転がり軸受けを設けたものが主流だが、省スペース、低コスト、シンプルな構造が求められ、メタル軸受け、樹脂軸受け、樹脂スラスト受けが使用される時、柔らかいメタルを潤滑、冷却する潤滑油の高度な品質を維持する必要がある。
【0004】
ところが、従来の油圧装置、変速機の作動油を貯蔵する貯蔵タンクは、稼働状況や環境で油温が高くなり、油気を含んだ排気と塵埃を含む吸気が同じ通風路を通過する為エアーブリーザーが目詰まりを起こしてしまうという問題があった。エアーブリーザーで使用しているろ過材の目は粗く、周辺に舞っている埃、切削粉、研磨粉塵、異物を吸い込んでしまうのである。例えば、
図6に示すように、油タンク1の作動油2を吸い上げるポンプ3があり、そのポンプ3の油を使う油圧装置4が設けられている。通常、油タンク1の上面にはエアーブリーザー5が設けられ、油タンク1の内圧を調整している。油タンク1の一部に通気口6を設け、この通気口6の途中に、ろ過材7を介在したものである。これではろ過材7が外気とともに埃、切削粉、研磨粉塵、異物を吸い込んでしまい、ろ過材7の目詰まりが生じてしまう。また、ろ過材7は油面に直接晒されているので揮発油分が蒸発し油膜が発生しやすい。さらに、引用文献に開示されているように、安全弁に似たバルブ機構を設けたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭63-175372号
【文献】実開昭62-158251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に着目し、タンクの内外気圧差で開閉するとともに、汚れのない空気の出入りを行うようにしたエアーブリーザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、圧力調整をなすバルブを吸入・排気と別々に設け、少なくとも吸入側にはエアーフィルターを設けたものである。より具体的には、油圧装置の作動油を溜めているタンク内圧を利用するバルブからなるエアーブリーザーであって、前記バルブを吸入側と排気側に各々設け、少なくとも吸入側バルブにはフィルターを介在し通過した浄化空気をタンクに吸入するにようにして、埃、切削粉、研磨粉塵、異物を予め除去するようにした。
【0008】
更には、油圧装置の作動油を溜めているタンク内の油量が油圧機器の使用状況、環境温度で増減し変化するタンク内の内圧を調整するエアーブリーザーであって、タンクの上部に排気側と吸気側の各々にタンク内の内圧で開閉する独立した球体バルブを設け、タンクの内圧が規定値より高くなると排気側の浮き球が浮き上り、高くなった内圧を逃がして規定値に調整し、タンクの内圧が規定値より下がった時は吸気側の浮き球が浮き上りフィルターで周辺の埃、切削粉、研磨粉塵、異物が除去された綺麗な空気が吸入される。
【0009】
また、動力装置の変速機に取り付けられるタンクの内圧を調整するエアーブリーザーであって、排気側と吸気側の各々に変速機タンクの内圧で開閉する独立した球体バルブを透明な材質で作り、浮き球の動きの目視確認と点検が容易にでき、周辺の土埃、切削粉、研磨粉塵、異物が除去されたきれいな空気が吸入される。
【0010】
更に、原材料を溜めている貯蔵タンク内の内圧を調整するエアーブリーザーであって、排気側と吸気側の各々に貯蔵タンク内の内圧で開閉する独立した球体バルブに整流板を設け、通過する風で浮き球に回転を与え偏摩耗を抑え、エアーブリーザーで周辺の埃、異物が除去された綺麗な空気が吸入されるようにした。
【発明の効果】
【0011】
今日の生産ラインは多種、多様な機械が連携し無人化され各種センサーが監視や計量管理を行い、機械の故障、誤動作の原因である埃、異物を除去する管理が容易なエアーブリーザーとすることが出来る。特に、バルブを内圧で開閉する球体バルブとすることで、構造はシンプルなものとなり、更に透明な構造の球体バルブは浮き球の作動状況を目視点検、確認が出来るものとなっている。また、旋回板を設けることにより、浮き球を摩耗などから防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアーブリーザーを示し、吸気側、排気側に球体バルブを設けた要部断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態を示すエアーブリーザーの要部断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係るエアーブリーザーであり、変速機に適用した要部断面図である。
【
図4】本発明に適用される球体バルブの縦断面図である。
【
図6】従来の油圧装置のエアーブリーザーを示した、部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るエアーブリーザーに実施形態を、図面を参照して、詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は一実施例に過ぎず、各種変形例を含むものとする。
【0014】
本実施形態の第一実施形態に係るエアーブリーザーを
図1に示す。油タンク10の作動油12を吸い上げる油圧ポンプ14があり、その油圧ポンプ14の油を使う油圧装置16が設けられている設備である。油タンク10の上面には吸入側エアーブリーザー18と排気側エアーブリーザー20が設けられ、油タンク10の内圧を調整している。
【0015】
油タンク10の上面に直立して接続開口している長尺管部22Lと、先端を折り曲げて下向きに開口される短尺管部22Sからなり、全体を逆J字形状とした吸入管22が取り付けられている。そして、上記短尺管部22Sの管端部に吸入側エアーブリーザー18が取り付けられている。また、場所を変えて油タンク10には、その上面に接続開口されている直管からなる排気管24が取り付けられており、その管端には排気側エアーブリーザー20を設けている。
【0016】
吸入側エアーブリーザー18と排気側エアーブリーザー20とは同じ構造からなり、ともに内径より絞り開口された開口部26を有し、吸入側は外気に、排気側は油タンク10にそれぞれ向き合って開口され、絞り部分に弁座28を設けている。そして、弁座28に接離して開閉する弁体としての浮き球30を筒状のケース32の内部に収容している。すなわち球体バルブ構造としたものである。これにより、吸入側では油タンク10の内圧が下がったときに浮き球30に負圧が作用し、その負圧により開弁して外気を導入することが出来る。また排気側では油タンク10の内圧が上がったときに浮き球30に高圧が作用し、その高圧により浮き球30が浮き上がって内部の圧力を大気圧まで下げることができる。バルブの開閉は浮き球30の重量に依存し、差圧が小さい場合に作用する浮き球30は軽量に構成し、差圧が大きい場合に作用する浮き球30はそれより重いもので足る。
【0017】
また、吸入側エアーブリーザー18の外気導入部と、排気側エアーブリーザー20にタンク内圧導入部とには、導入ガスが入り込む際に旋回流となるように旋回板34が設けられている。
図4~5に示すように、旋回板34は管路内壁に設けた突状片であり、それを浮き球30方向に向けて管軸方向と斜交するように斜めに形成したものである。したがって、吸入気体は開口部26の片隅側から導入され、浮き球30の浮揚時に回転を付与することが出来る。
【0018】
また、吸入側エアーブリーザー18の外気導入口にはエアーフィルター36が設けられ、このエアーフィルター36によって、外気導入の際、外気に混じって埃、切削粉、研磨粉塵、異物などを遮蔽し、浄化された空気のみが油タンク10に導入されるようにしている。更に、排気側エアーブリーザー20の排気端部にはろ過材38が取り付けられている。これは油分を浄化するもので、気化された油分が除去される。
【0019】
このように構成されたエアーブリーザー18、20では外気の取入れと、外気への吐出しとは別個独立したものであるため、外気の取入れに際してエアーフィルター36により埃、切削粉、研磨粉塵、異物などが混入せず、また外気への吐出しに際してろ過材38により油分を除去して清浄ガスを排出できる。すなわち、エアーブリーザー18、20は、油圧タンク10の排気側と吸気側に各々の球体バルブを設け、油圧タンク10の内圧が規定値より高くなると排気側の浮き球30が浮き上がって内圧を逃がし、規定値に下がると浮き球30が下がって球体バルブを閉じる。また、油タンク10の内圧が規定値より下がると、吸気側の浮き球30が浮き上がり吸入側のエアーフィルター36で周辺の埃、切削粉、研磨粉塵、異物が除去された綺麗な空気が吸入される。このように吸入側と排気側に別々にエアーフィルター36とろ過材38を設けてあるので、切削粉などと油が混じることなく、分別による効果は大きい。
【0020】
次に、
図2には第二実施形態を示す。これは排気側エアーブリーザー20の油タンク10からの排気取入口を吸入側エアーブリーザー18の長尺管部22Lの分岐管40としたものである。このようにすることによって、省スペースに構成することが出来る。
【0021】
図3に示すエアーブリーザーは第三実施形態に係るものである。図示の例は、動力装置の変速機42の内圧を調整するエアーブリーザーとして構成したものである。変速機42は、油タンク10の上に置かれた油圧駆動モーター44により駆動され、駆動されるウォーム軸46とウォーム48を介して出力軸50に取り付けたウォームホイール52に減速して回転伝達する。変速機42は高速回転、連続負荷稼動で泡立ち、温度上昇と過酷な状態で使用され、故障と誤動作の原因となる埃と異物の混入を防ぎ、変速機42を埃、異物から守るエアーブリーザーとして構成している。軸受け54、56は柔らかい樹脂製の軸受けであり、軸受け55は油面より高いため転がり軸受けとされる。
【0022】
図1、
図2、
図3に示す作動油12を溜めている油タンク10の内圧を調整するエアーブリーザーについて、排気側と吸気側の球体バルブの特に外部ケース32を透明もしくは半透明な材質で作り、浮き球30の動きが目視確認出来るようにしてもよい。このようにすると、エアーブリーザー18,20の作動状態を外部から確認することができ、メンテナンス作業の効率化を図ることが出来る。なお、内部の浮き球30を視認可能であれば外部ケース32を全部透明にする必要はなく、ガラスまたは樹脂材で作った窓を設けることもできる。
【0023】
図1、
図2、
図3に示す球体バルブの開口部26に、
図4,5に示される浮き球30に向かって旋回流を発生させる旋回板34を取付け、通過する気体が浮き球30に回転を与えて浮き球30の偏摩耗を防ぐようにしたエアーブリーザー18,20構成としてもよい。このようにすることによって、浮き球30の寿命を延ばすことができる。
【0024】
なお、浮き球30はピンポン玉のような軽量な材質で十分である。浮き球30の重量によって、油タンク10の内圧を調整できる。
また、前記した球体バルブのケース32を前後の管部材に着脱可能にすることによって、装着性を増し、交換作業も容易になる。これは外部のケース32をはめ込み構造とすることで簡単に行える。
球体バルブ構造に変えて、浮き球を使用しない開閉バルブ構造としてもよい。
【符号の説明】
【0025】
10……油タンク、
12……作動油、
14……油圧ポンプ、
16……油圧装置、
18……吸入側エアーブリーザー、
20……排気側エアーブリーザー、
22……吸入管、
22L……長尺管部、
22S……短尺管部、
24……排気管、
26……開口部、
28……弁座、
30……浮き球、
32……ケース、
34……旋回板、
36……エアーフィルター、
38……ろ過材、
40……分岐管、
42……変速機、
44……油圧駆動モーター、
46……ウォーム軸、
48……ウォーム、
50……出力軸、
52……ウォームホイール、
54……樹脂軸受け、
55……転がり軸受け
56……樹脂軸受け。