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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
F24F5/00 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019116703
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001716
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】小野 永吉
(72)【発明者】
【氏名】平岡 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】大和田 淳
(72)【発明者】
【氏名】小川 健次
(72)【発明者】
【氏名】下 泰蔵
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134302(JP,A)
【文献】特開平09-229436(JP,A)
【文献】特開平06-066463(JP,A)
【文献】特開2009-103453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を搬送する複数のループと、
前記複数のループの少なくともいずれかに設けられており、前記ループにおいて搬送される前記熱媒体に対して加熱及び冷却の少なくともいずれかを行う温度制御部と、
前記複数のループの少なくともいずれか2つのループの間に設けられており、前記2つのループの前記熱媒体の間で熱交換を行う複数の熱交換器と、
を備え、
前記複数のループは、空調機が接続された複数の空調機ループと、前記複数の空調機ループのそれぞれに接続された熱源ループと、を含んでおり、
前記複数の空調機ループは、前記熱源ループを介して互いに熱融通を行い、
前記複数の熱交換器は、第1の熱交換器及び第2の熱交換器を含んでおり、
前記複数の空調機ループは、前記第1の熱交換器を介して前記熱源ループに接続された第1の空調機ループ、及び前記第2の熱交換器を介して前記熱源ループに接続された第2の空調機ループを含んでおり、
前記熱源ループ、前記第1の空調機ループ及び前記第2の空調機ループのそれぞれが前記温度制御部を有し、
前記第1の空調機ループの前記温度制御部、及び前記第2の空調機ループの前記温度制御部のそれぞれによって前記熱媒体の温度が制御され、
前記第1の空調機ループ及び前記第2の空調機ループのそれぞれは、空調機と、外調機と、前記空調機及び前記外調機のそれぞれに接続された前記温度制御部とを備え、
前記第1の空調機ループ及び前記第2の空調機ループのそれぞれの前記温度制御部は、前記空調機及び前記外調機のそれぞれに接続された水熱源ヒートポンプを含み、
前記第1の空調機ループ及び前記第2の空調機ループのそれぞれは、前記空調機及び前記温度制御部が設けられた第1の流路と、前記温度制御部及び前記外調機が設けられた第2の流路とを含み、前記温度制御部は、前記第1の流路、及び前記第2の流路のいずれかの温度制御を行う、
空調システム。
【請求項2】
熱媒体を搬送する複数のループと、
前記複数のループの少なくともいずれかに設けられており、前記ループにおいて搬送される前記熱媒体に対して加熱及び冷却の少なくともいずれかを行う温度制御部と、
を備え、
前記複数のループは、空調機が接続された複数の空調機ループと、前記複数の空調機ループのそれぞれに接続された熱源ループと、を含んでおり
前記熱源ループ、及び前記複数の空調機ループのそれぞれが前記温度制御部を有し、
前記複数の空調機ループのそれぞれの前記温度制御部によって前記熱媒体の温度が制御され、
前記熱源ループの前記熱媒体の熱を複数の前記空調機ループのそれぞれに搬送する搬送ループを更に備え、
前記熱源ループと前記搬送ループとの間には第1の熱交換部が設けられ、前記搬送ループと各前記空調機ループとの間には第2の熱交換部が設けられており、
前記搬送ループは、前記第1の熱交換部から前記第2の熱交換部に向かって熱媒体が搬送される第1の管、及び前記第2の熱交換部から前記第1の熱交換部に向かって熱媒体が搬送される第2の管によって構成され、
前記空調機ループは、第1ループ、及び前記第1ループに並列に配置された第2ループを含んでおり、
前記第1ループ及び前記第2ループの間に前記温度制御部が配置されている、
空調システム。
【請求項3】
前記温度制御部は、水熱源ヒートポンプを含む、
請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第2の空調機ループ、前記第1の空調機ループ及び前記熱源ループがこの順で建物の鉛直上方から鉛直下方に向かって並んでおり、
前記第2の空調機ループは前記建物の高層部に設けられており、前記第1の空調機ループは前記建物の低層部に設けられている、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項5】
前記熱源ループは、コージェネレーションシステムを有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の内部に設けられる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内部の空調システムとしては、VAV(Variable Air Volume:変風量)空調システム及び4管式中央熱源システムが従来から広く用いられている。VAV空調システムは、複数の制御ゾーンのそれぞれの室温を制御する風量調節機構(VAV)、ファン、冷温水コイル、加湿器若しくはフィルタ等からなる空調機、及び、空気搬送用のダクト等から構成される。空調機の内部の冷温水コイルには、4管式中央熱源システムから冷水又は温水が供給され、室内から返送される空気(還気)、若しくは室内へ導入する外気を冷却又は加熱し、ファンを用いて室内へ送風する。4管式中央熱源システムは、冷水及び温水を製造する(冷却及び加熱を行う)熱源機器、水搬送用のポンプ、並びに配管から構成される。配管としては冷水及び温水のそれぞれを通す往管及び還管がそれぞれ必要であり、4本の配管が必要となるため、4管式と呼ばれる。建物の室内側からの空調要求として、1日の中でも冷房及び暖房が切り替わることがある。よって、柔軟且つ容易に冷暖房の要求に対応するため、4管式を採用することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、4管式を採用する場合、特に超高層建物や大規模建物において、配管の口径が太くなったり、系統分けが複雑になったりすることがあり、配管の配置スペース及びコストの点で改善の余地がある。特に近年、高断熱又は高気密化されたビル等では、冬期であっても室内側から冷水需要が求められることがある。また、導入される外気が低温且つ低湿であるときに、加熱及び加湿を行って温水需要が求められることもある。これらの要求に柔軟に対応する場合、熱回収等を行って熱製造を効率的に行うことが望ましい。しかしながら、冷水需要及び温水需要は時間と共に変化しバランスしないことがあるため、効率的に熱回収を行えないといった問題が生じることがある。
【0004】
本発明は、熱製造及び熱回収を効率的に行うことができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る空調システムは、熱媒体を搬送する複数のループと、複数のループの少なくともいずれかに設けられており、ループにおいて搬送される熱媒体に対して加熱及び冷却の少なくともいずれかを行う温度制御部と、複数のループの少なくともいずれか2つのループの間に設けられており、2つのループの熱媒体の間で熱交換を行う熱交換器と、を備え、複数のループは、空調機が接続された複数の空調機ループと、複数の空調機ループのそれぞれに接続された熱源ループと、を含んでおり、複数の空調機ループは、熱源ループを介して互いに熱融通を行い、複数の熱交換器は、第1の熱交換器及び第2の熱交換器を含んでおり、複数の空調機ループは、第1の熱交換器を介して熱源ループに接続された第1の空調機ループ、及び第2の熱交換器を介して熱源ループに接続された第2の空調機ループを含んでおり、熱源ループ、第1の空調機ループ及び第2の空調機ループのそれぞれが温度制御部を有し、第1の空調機ループの温度制御部、及び第2の空調機ループの温度制御部のそれぞれによって熱媒体の温度が制御され、第1の空調機ループ及び第2の空調機ループのそれぞれは、空調機と、外調機と、空調機及び外調機のそれぞれに接続された温度制御部とを備え、第1の空調機ループ及び第2の空調機ループのそれぞれの温度制御部は、空調機及び外調機のそれぞれに接続された水熱源ヒートポンプを含み、第1の空調機ループ及び第2の空調機ループのそれぞれは、空調機及び温度制御部が設けられた第1の流路と、温度制御部及び外調機が設けられた第2の流路とを含み、温度制御部は、第1の流路、及び第2の流路のいずれかの温度制御を行う
【0006】
この空調システムでは、熱媒体を搬送する複数のループが設けられており、複数のループの少なくともいずれかは、熱媒体に対して加熱及び冷却の少なくともいずれかを行う温度制御部を備える。従って、当該ループの熱媒体の温度制御を温度制御部によって実現させることができる。また、複数のループのうちの少なくとも2つのループの間には、当該2つのループの熱媒体の間で熱交換を行う熱交換器が設けられる。従って、熱交換器によって、当該2つのループのうちの一方と他方とのそれぞれにおいて熱媒体の温度が調整され、必要に応じて熱交換器で熱融通を行うだけで各ループに所望の温度の熱媒体を効率よく供給することができる。従って、1つの熱交換器で複数のループのそれぞれに所望の温度の熱媒体を供給することができるので、熱製造及び熱回収を効率的に行うことができる。
【0007】
また、空調システムは複数の空調機ループのそれぞれに接続された熱源ループを有し、複数の空調機ループは熱源ループを介して互いに熱融通を行う。よって、複数の空調機ループの間で互いに熱融通を行うことが可能となるので、各空調機ループにおいて熱製造を効率的に行うことができる。
【0008】
本発明に係る空調システムは、熱媒体を搬送する複数のループと、複数のループの少なくともいずれかに設けられており、ループにおいて搬送される熱媒体に対して加熱及び冷却の少なくともいずれかを行う温度制御部と、を備え、複数のループは、空調機が接続された複数の空調機ループと、複数の空調機ループのそれぞれに接続された熱源ループと、を含んでおり、複数の空調機ループは、熱源ループを介して互いに熱融通を行い、熱源ループ、及び複数の空調機ループのそれぞれが温度制御部を有し、複数の空調機ループのそれぞれの温度制御部によって熱媒体の温度が制御され、熱源ループの熱媒体の熱を複数の空調機ループのそれぞれに搬送する搬送ループを更に備え、熱源ループと搬送ループとの間には第1の熱交換部が設けられ、搬送ループと各空調機ループとの間には第2の熱交換部が設けられており、搬送ループは、第1の熱交換部から第2の熱交換部に向かって熱媒体が搬送される第1の管、及び第2の熱交換部から第1の熱交換部に向かって熱媒体が搬送される第2の管によって構成され、空調機ループは、第1ループ、及び第1ループに並列に配置された第2ループを含んでおり、第1ループ及び第2ループの間に温度制御部が配置されている。この場合、各空調機ループと熱源ループとの間に搬送ループが更に設けられている。搬送ループは、熱媒体が第1の熱交換部から第2の熱交換部に向かう第1の管と、熱媒体が第2の熱交換部から第1の熱交換部に戻る第2の管とによって構成される。従って、熱源ループと各空調機ループとを接続する搬送ループが2管で構成されるので、空調システムの構成を簡易にすることができる。すなわち、4管式の空調システムと比較して、配管が占めるスペースを削減できると共に、配管のコストの低減に寄与する。
【0009】
また、温度制御部は、水熱源ヒートポンプを含んでもよい。この場合、水熱源ヒートポンプによって熱回収を行うことで効率的に熱製造を行うことができる。
【0010】
また、第1ループと第2ループの間に温度制御部を配置して温度制御部が熱回収運転を行うことにより、熱製造の効率化を図りつつ、第1ループ及び第2ループのそれぞれが温度制御部からの熱を受けることにより、第1ループ及び第2ループの安定した運用が可能となる。
【0011】
また、第2の空調機ループ、第1の空調機ループ及び熱源ループがこの順で建物の鉛直上方から鉛直下方に向かって並んでおり、第2の空調機ループは建物の高層部に設けられており、第1の空調機ループは建物の低層部に設けられていてもよい。熱源ループは、コージェネレーションシステムを有してもよい。この場合、複数の空調機ループのそれぞれが接続された熱源ループがコージェネレーションシステムを有することにより、建物の内部の省エネルギー化に寄与する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る空調システムによれば、熱製造及び熱回収を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る空調システムの構成を示す図である。
図2】第2実施形態に係る空調システムの構成を示す図である。
図3図2の空調システムの空調機ループの例を示す図である。
図4図2の空調システムの熱媒体の温度制御の例を説明する図である。
図5図2の空調システムの熱媒体の温度制御の例を説明する図である。
図6図2の空調システムの熱媒体の温度制御の例を説明する図である。
図7図3の空調機ループの熱媒体の温度制御の例を説明する図である。
図8図3の空調機ループの熱媒体の温度制御の例を説明する図である。
図9図3の空調機ループの熱媒体の温度制御の例を説明する図である。
図10】変形例に係る空調システムの構成を示す図である。
図11】変形例に係る空調システムの構成を示す図である。
図12】変形例に係る空調システムの構成を示す図である。
図13】変形例に係る空調システムの構成を示す図である。
図14】変形例に係る空調システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る空調システムの実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0015】
本明細書において「熱媒体」とは、加熱又は冷却が行われて装置に所望の温度の熱を供給するための液体又は気体等の流体を示している。「ループ」とは、熱媒体が移動する管路を示しており、例えば、往復配管により形成される管路を示している。「温度制御部」は、ループにおける熱媒体の温度を制御する部位を示しており、例えば、熱媒体の温度を一定範囲内に維持する。「熱媒体の温度を一定範囲内に維持」するとは、予め定めた上限温度及び下限温度の間となるよう熱媒体の温度を制御することを示している。「熱融通」とは、ループ内で製造又は発生した熱を他のループに供給することを示しており、複数のループの間で熱のやりとりを行うことを含んでいる。「熱回収」とは、本来捨てられる廃熱を、冷温水製造のために利用することを示している。例えば、空気熱源ヒートポンプを用いる場合には冷水を製造する一方で大気に廃熱を放出しているが、水熱源ヒートポンプを用いる場合には冷水を製造する一方で廃熱を回収して温水製造を同時に行うことによって熱回収が実現される。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る空調システム1の構成を示す図である。図1に示されるように、空調システム1は、建物Sの内部に設けられている。空調システム1は、例えば、地下の機械室に位置する熱源ループ10と、熱交換器41を介して熱源ループ10に接続された第1の空調機ループ20と、熱交換器42を介して熱源ループ10に接続された第2の空調機ループ30とを備える。第2の空調機ループ30、第1の空調機ループ20及び熱源ループ10は、例えば、この順で建物Sの鉛直上方から鉛直下方に向かって並んでいる。
【0017】
例えば、第1の空調機ループ20の負荷特性と、第2の空調機ループ30の負荷特性とは互いに異なっている。一例として、第1の空調機ループ20が設けられた建物Sの部位はオフィスとして機能し、第2の空調機ループ30が設けられた建物Sの部位はホテルとして機能する。建物Sは、例えば、高層ビルであり、建物Sの高さは100m以上且つ900m以下(一例として約400m)である。第2の空調機ループ30は建物Sの高層部(例えば200m以上の高さの部位)に設けられており、第1の空調機ループ20は建物Sの低層部(例えば200m以下の高さの部位)に設けられている。
【0018】
熱源ループ10は、例えば、温度制御部11を備えており、温度制御部11は冷熱源12及び温熱源13を有する。冷熱源12及び温熱源13は、例えば、並列に配置されている。熱源ループ10では、熱媒体の温度が一定範囲より低くなったときには温熱源13が機能して熱媒体を加熱し、熱媒体の温度が一定範囲より高くなったときには冷熱源12が機能して熱媒体を冷却する。一例として、熱源ループ10の熱媒体が15℃未満になったときには温熱源13が熱媒体を15℃に加熱し、熱源ループ10の熱媒体が15℃より高い温度になったときには冷熱源12が熱媒体を15℃に冷却する。
【0019】
熱源ループ10によって加熱又は冷却された熱媒体の熱は、第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30のそれぞれに搬送される。第1の空調機ループ20は熱交換器41を介して熱源ループ10に接続されており、例えば、熱交換器41は温度が高い箇所から温度が低い箇所に熱を移動する普通の熱交換器である。第1の空調機ループ20は、空調機21aと、外調機21bと、空調機21a及び外調機21bのそれぞれに接続された温度制御部22とを備える。温度制御部22は、例えば、空調機21a及び外調機21bのそれぞれに接続された水熱源ヒートポンプを含む。
【0020】
熱源ループ10を流通する熱媒体は、熱交換器41において、第1の空調機ループ20を流通する熱媒体と熱交換を行う。第1の空調機ループ20の熱媒体は、例えば、空調機21a及び温度制御部22を流通する。また、第1の空調機ループ20は、空調機21a及び温度制御部22が設けられた第1の流路23と、温度制御部22及び外調機21bが設けられた第2の流路24とを含む。温度制御部22は、第1の流路23、及び第2の流路24のいずれかの温度制御を行う。
【0021】
空調機21a及び外調機21bのそれぞれは、加熱要求及び冷却要求を行う。温度制御部22は、空調機21a及び外調機21bのそれぞれの加熱要求及び冷却要求に伴って第1の流路23を流通する熱媒体の温度、及び第2の流路24を流通する熱媒体の温度、のいずれかを制御する。
【0022】
例えば、空調機21aが冷房として機能し、外調機21bが暖房として機能する場合、空調機21aによって第1の流路23を通る熱媒体が加熱され、外調機21bによって第2の流路24を通る熱媒体が冷却される。温度制御部22は、空調機21aによって加熱された第1の流路23の熱媒体と、外調機21bによって冷却された第2の流路24の熱媒体との間で熱を移動させる。
【0023】
例えば、温度制御部22は、空調機21aによって加熱された第1の流路23の熱媒体を冷却し、又は、外調機21bによって冷却された第2の流路24の熱媒体を加熱する。このように、温度制御部22は、第1の流路23及び第2の流路24のいずれかを温度制御する。一例として、第2の流路24の熱媒体が温度制御部22によって温度制御され、第1の流路23の熱媒体は熱交換器41によって温度制御されてもよい。
【0024】
一例として、熱源ループ10から熱交換器41に流入する熱媒体の温度が15℃であって、温度制御部22から熱交換器41に流入する熱媒体の温度が18℃であるときに、熱交換器41の熱交換により、熱源ループ10の熱媒体が加熱されて17℃になると共に、第1の空調機ループ20の熱媒体が冷却されて16℃になる。16℃とされた第1の空調機ループ20の熱媒体は空調機21aによって20℃に加熱される。第2の流路24では、一例として、40℃以上且つ45℃以下の熱媒体が流通しており、温度制御部22によって40℃の熱媒体が45℃に加熱され、外調機21bによって45℃の熱媒体が40℃に冷却される。
【0025】
第2の空調機ループ30は、例えば、熱交換器42を介して熱源ループ10に接続されている。熱交換器42は、温度が高い箇所から温度が低い箇所に熱を移動する普通の熱交換器である。第2の空調機ループ30は、空調機31aと、外調機31bと、空調機31a及び外調機31bのそれぞれに接続された温度制御部32とを備える。温度制御部32は、例えば、空調機31a及び外調機31bのそれぞれに接続された水熱源ヒートポンプを含む。
【0026】
第2の空調機ループ30は、空調機31a及び温度制御部32が設けられた第1の流路33と、温度制御部32及び外調機31bが設けられた第2の流路34とを含む。なお、空調機31a、外調機31b、温度制御部32、第1の流路33及び第2の流路34のそれぞれの構成は、例えば、前述した空調機21a、外調機21b、温度制御部22、第1の流路23及び第2の流路24の構成と同様である。
【0027】
例えば、熱源ループ10から熱交換器42に流入する熱媒体の温度が15℃であって、温度制御部32から熱交換器42に流入する熱媒体の温度が12℃であるときに、熱交換器42の熱交換により、熱源ループ10の熱媒体が冷却されて13℃になると共に、第2の空調機ループ30の熱媒体が加熱されて14℃になる。14℃とされた第2の空調機ループ30の熱媒体は空調機31aによって16℃に加熱される。例えば、温度制御部32は、空調機31aからの熱媒体を12℃に冷却し、外調機31bからの熱媒体を45℃に加熱して、第2の流路34の熱媒体の温度を一定範囲内に維持する。第1の流路33の熱媒体の温度は、熱交換器42によって一定範囲内に維持される。一例として、熱交換器42は第1の流路33の熱媒体の温度を12℃以上且つ17℃以下に維持し、温度制御部32は第2の流路34の熱媒体の温度を40℃以上且つ45℃以下に維持する。
【0028】
上記の例の場合、熱源ループ10では、第2の空調機ループ30が接続された熱交換器42から13℃の熱媒体が供給され、第1の空調機ループ20が接続された熱交換器41からは17℃の熱媒体が供給される。第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30のそれぞれでは、温度制御部22及び温度制御部32のそれぞれによって熱媒体の温度が制御される。
【0029】
熱源ループ10の熱媒体の温度は、例えば、10℃~15℃に維持されていてもよく、熱媒体の温度が15℃以上となったときに冷熱源12が稼働し、熱媒体の温度が10℃以下となったときに温熱源13が稼働してもよい。しかしながら、前述したように、第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30のそれぞれにおいて熱媒体の温度制御が行われる場合、熱交換器41からの熱媒体と熱交換器42からの熱媒体とが混合される。上記の例では、13℃の熱媒体と17℃の熱媒体とが混合されて15℃となる。この場合、熱源ループ10の温度制御部11(冷熱源12及び温熱源13)が稼働しなくても第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30のそれぞれにおいて所望の温度の冷暖房を実現させることができる。すなわち、熱源ループ10の温度制御部11の稼働量を低減させることができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る空調システム1から得られる作用効果について説明する。空調システム1では、熱媒体を搬送する熱源ループ10及び第1の空調機ループ20が設けられており、熱源ループ10及び第1の空調機ループ20のそれぞれは熱媒体の温度を制御する温度制御部11,22を備える。従って、熱源ループ10及び第1の空調機ループ20のそれぞれの熱媒体の温度制御を温度制御部11,22によって実現させることができる。
【0031】
また、熱源ループ10及び第1の空調機ループ20の間には、熱源ループ10及び第1の空調機ループ20の熱媒体の間で熱交換を行う熱交換器41が設けられる。従って、熱交換器41によって、熱源ループ10と第1の空調機ループ20とのそれぞれにおいて熱媒体の温度が調整され、必要に応じて熱交換器41で熱融通を行うだけで熱源ループ10及び第1の空調機ループ20のそれぞれに所望の温度の熱媒体を効率よく供給することができる。従って、1つの熱交換器41で熱源ループ10及び第1の空調機ループ20のそれぞれに所望の温度の熱媒体を供給することができるので、熱製造及び熱回収を効率的に行うことができる。
【0032】
また、空調システム1において、複数のループは、第1の空調機ループ20と、第2の空調機ループ30と、第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30のそれぞれに接続された熱源ループ10と、を含んでおり、第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30は、熱源ループ10を介して互いに熱融通を行う。
【0033】
従って、空調システム1は第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30のそれぞれに接続された熱源ループ10を有し、第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30は熱源ループ10を介して互いに熱融通を行う。よって、第1の空調機ループ20及び第2の空調機ループ30の間で互いに熱融通を行うことが可能となるので、各空調機ループ20,30において熱製造を効率的に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態において、温度制御部22,32は、水熱源ヒートポンプを含んでいる。従って、水熱源ヒートポンプによって熱回収を行うことで効率的に熱製造を行うことができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る空調システム51について図2及び図3を参照しながら説明する。なお、以降の説明では、重複を避けるため、前述した実施形態と同様の内容については説明を適宜省略する。空調システム51は、高層ビルである建物Sの内部に設けられており、例えば、地下の機械室に配置された熱源ループ60と、複数の空調機ループ70と、熱源ループ60及び各空調機ループ70の間に介在する複数の搬送ループ80とを備える。なお、図2では、各空調機ループ70の図示を簡略化している。
【0036】
熱源ループ60は、例えば、地下の機械室に配置されており、複数の空調機ループ70及び複数の搬送ループ80は建物Sの内部の機械室に配置されている。複数の空調機ループ70、及び複数の搬送ループ80、のそれぞれは例えば鉛直方向に沿って並んでいる。各搬送ループ80には複数(例えば2つ)の空調機ループ70が接続されている。一例として、搬送ループ80は、鉛直下方に位置する第1の搬送ループ81、及び第1の搬送ループ81の鉛直上方に位置する第2の搬送ループ82を含んでいる。
【0037】
空調機ループ70は、例えば、第1の空調機ループ71、第2の空調機ループ72、第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74を含んでいる。第1の空調機ループ71、第2の空調機ループ72、第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74は、この順で鉛直下方から鉛直上方に向かって並んでいる。一例として、第1の空調機ループ71は地面から地上100mまでの低層部、第2の空調機ループ72は地上100mから地上200mまでの中低層部、第3の空調機ループ73は地上200mから地上300mまでの中高層部、第4の空調機ループ74は地上300mから地上400mまでの高層部、に設けられている。
【0038】
第1の空調機ループ71及び第2の空調機ループ72は、第1の搬送ループ81に接続されている。第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74は、第2の搬送ループ82に接続されている。第1の空調機ループ71、第2の空調機ループ72、第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74のそれぞれの負荷特性は、例えば、互いに異なっている。
【0039】
熱源ループ60は、例えば、温度制御部61を備えており、温度制御部61はコージェネレーションシステム65を含んでいてもよい。温度制御部61は、例えば、冷熱源62及び温熱源63を備える。冷熱源62及び温熱源63の構成は、例えば、前述した冷熱源12及び温熱源13の構成と同様である。冷熱源62及び温熱源63とコージェネレーションシステム65とは熱交換器64を介して接続されている。なお、熱源ループ60は、ヒートポンプ、冷凍機(例えばターボ冷凍機)、又は、コージェネレーションシステム65による発電と同時に発生する廃温水から冷温水を発生させる排熱投入型吸収式冷凍機を備えていてもよい。
【0040】
熱源ループ60と第1の搬送ループ81とは熱交換部91(第1の熱交換部)を介して互いに接続されている。第1の搬送ループ81は、熱交換部91の他、第1の空調機ループ71及び第2の空調機ループ72のそれぞれが接続する熱交換部75(第2の熱交換部)、並びに、第2の搬送ループ82が接続する熱交換部94のそれぞれに熱媒体を搬送する。第1の搬送ループ81を通る熱媒体は、例えば、熱交換部91から第1の管83を通って熱交換部75,94のそれぞれに搬送され、熱交換部75,94のそれぞれにおいて熱交換された後、第2の管84を通って熱交換部91に戻される。このように、第1の搬送ループ81は、第1の管83及び第2の管84を備える2管式である。
【0041】
第1の搬送ループ81と第2の搬送ループ82とは、熱交換部94を介して互いに接続されている。第2の搬送ループ82は、熱交換部94、並びに、第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74のそれぞれが接続する熱交換部75、のそれぞれに熱媒体を搬送する。第2の搬送ループ82を通る熱媒体は、熱交換部94から第1の管85を通って各熱交換部75に搬送され、各熱交換部75において熱交換された後、第2の管86を通って熱交換部94に戻される。第2の搬送ループ82も、第1の管85及び第2の管86を備える2管式である。
【0042】
第1の空調機ループ71及び第2の空調機ループ72は、各熱交換部75を介して第1の搬送ループ81に接続されている。第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74は、各熱交換部75を介して第2の搬送ループ82に接続されている。第1の空調機ループ71、第2の空調機ループ72、第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74の構成は、例えば、互いに同一である。従って、以下では、第1の空調機ループ71、第2の空調機ループ72、第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74のそれぞれをまとめて空調機ループ70として説明する。
【0043】
図3に示されるように、空調機ループ70は、前述した熱交換部75と、空気熱源ヒートポンプ76と、水熱源ヒートポンプ77と、熱媒体流通調整部78と、空調機群79とを備える。空気熱源ヒートポンプ76及び水熱源ヒートポンプ77は、空調機ループ70の熱媒体の温度を制御する温度制御部として機能する。例えば、水熱源ヒートポンプ77は熱媒体の加熱及び冷却のいずれかを行い、空気熱源ヒートポンプ76は熱媒体の加熱及び冷却を補助する機能を有する。具体例として、空気熱源ヒートポンプ76は、熱源ループ60及び水熱源ヒートポンプ77による温度制御の不足分を補助する。
【0044】
熱媒体流通調整部78は、複数のポンプ78bとバルブ78cとを含んでいる。例えば、熱媒体流通調整部78は複数設けられている。空調機群79は、例えば、複数の熱媒体流通調整部78の一方に接続された空調機79bと、複数の熱媒体流通調整部78の他方に接続された外調機79cとを含んでいる。
【0045】
空調機ループ70は、熱交換部75を通る第1ループ70Aと、熱交換部75を通らない第2ループ70Bとを含む。第1ループ70Aでは、空気熱源ヒートポンプ76及び水熱源ヒートポンプ77を含む第1ヘッダH1、複数の熱媒体流通調整部78のうちの一方の熱媒体流通調整部78、空調機群79、及び熱交換部75を熱媒体が流通する。熱媒体の流通経路において、熱交換部75と、空気熱源ヒートポンプ76及び水熱源ヒートポンプ77とは、直列に配置されており、熱交換部75は、空気熱源ヒートポンプ76及び水熱源ヒートポンプ77よりも上流側に設けられる。
【0046】
第2ループ70Bでは、空気熱源ヒートポンプ76及び水熱源ヒートポンプ77を含むと共に第1ヘッダH1に並行に配置された第2ヘッダH2、複数の熱媒体流通調整部78のうちの他方の熱媒体流通調整部78及び空調機群79を熱媒体が流通する。第1ヘッダH1及び第2ヘッダH2のそれぞれにおいて、空気熱源ヒートポンプ76及び水熱源ヒートポンプ77のそれぞれは、第1ループ70A及び第2ループ70Bの間に介在している。すなわち、空気熱源ヒートポンプ76及び水熱源ヒートポンプ77は、第1ループ70A及び第2ループ70Bの両方に接続されている。
【0047】
以上のように構成された熱源ループ60、空調機ループ70及び搬送ループ80を備えた空調システム51における熱媒体の移動及び温度制御の例について説明する。まず、夏期(例えば5月~10月)における空調機ループ70の冷房要求のときには、例えば図4に示されるように、熱源ループ60において5℃の熱媒体を流通し、熱交換部91の熱交換によって第1の搬送ループ81の第1の管83に6℃の熱媒体を流通させる。そして、熱交換部94の熱交換によって第2の搬送ループ82の第1の管85に7℃の熱媒体を流通させる。このように、第1の搬送ループ81で6℃の熱媒体を流通させると共に、第2の搬送ループ82で7℃の熱媒体を流通させると、例えば、各熱交換部75の熱交換によって各空調機ループ70に8℃の熱媒体を流通させる。
【0048】
冬期(例えば11月~4月)における空調機ループ70の冷房要求が暖房要求よりも大きい場合、すなわち、熱交換部75が冷房要求を行うときには、例えば図5に示されるように、熱源ループ60において15℃の熱媒体を流通し、熱交換部91の熱交換によって第1の搬送ループ81の第1の管83に16℃の熱媒体を流通させる。そして、熱交換部94の熱交換によって第2の搬送ループ82の第1の管85に17℃の熱媒体を流通させる。そして、各熱交換部75の熱交換によって各空調機ループ70に15~17.5℃の熱媒体を流通させる。
【0049】
冬期(例えば11月~4月)における空調機ループ70の暖房要求が冷房要求よりも大きい場合、すなわち、熱交換部75が暖房要求を行うときには、例えば図6に示されるように、熱源ループ60において18℃の熱媒体を流通し、熱交換部91の熱交換によって第1の搬送ループ81の第1の管83に17℃の熱媒体を流通させる。また、熱交換部94の熱交換によって第2の搬送ループ82の第1の管85に16℃の熱媒体を流通させる。更に、各熱交換部75の熱交換によって各空調機ループ70に15~17.5℃の熱媒体を流通させる。
【0050】
夏期における冷房要求時の空調機ループ70の熱媒体の温度は、例えば図7に示されるように、空調機ループ70の熱交換部75に6℃の熱媒体が供給され、これに伴い、熱交換部75から空気熱源ヒートポンプ76に8℃の熱媒体が供給される。この8℃の熱媒体は、熱媒体流通調整部78を通って空調機群79に達し、例えば空調機79bによって使用されて13℃に加熱される。13℃に加熱された熱媒体は熱交換部75に戻される。なお、水熱源ヒートポンプ77は、例えば、冷房要求時には動作しない。
【0051】
また、熱交換部75が冷房要求を行うとき、例えば図8に示されるように、熱交換部75に16℃~17℃の熱媒体が供給される。そして、空気熱源ヒートポンプ76及び水熱源ヒートポンプ77のそれぞれに17.5℃の熱媒体が供給され、水熱源ヒートポンプ77から12.5℃の熱媒体が供給される。熱媒体流通調整部78を介して、空調機79bに15℃の熱媒体が供給されると共に、外調機79cに45℃の熱媒体が供給される。空調機79bによって冷房目的で熱媒体が使用されると空調機79bによって熱媒体が加熱され、例えば加熱されて20℃となった熱媒体が熱交換部75に戻される。また、外調機79cによって暖房目的で熱媒体が使用されると外調機79cによって熱媒体が冷却されて、例えば、冷却されて40℃となった熱媒体が水熱源ヒートポンプ77に戻される。
【0052】
また、図8とは別の例として、熱交換部75が暖房要求を行うとき、例えば図9に示されるように、熱交換部75に16℃~17℃の熱媒体が供給され、これに伴い、水熱源ヒートポンプ77に10℃の熱媒体が供給されると共に水熱源ヒートポンプ77から5℃の熱媒体が放出される。そして、熱媒体流通調整部78を介して、空調機79bに5℃の熱媒体が供給されると共に、外調機79cに45℃の熱媒体が供給される。空調機79bによって冷房目的で熱媒体が使用されると空調機79bによって熱媒体が加熱され、例えば10℃の熱媒体が空調機79bから熱交換部75に戻される。また、外調機79cによって暖房目的で熱媒体が使用されると外調機79cによって熱媒体が冷却され、例えば、40℃の熱媒体が外調機79cから水熱源ヒートポンプ77に戻される。
【0053】
以上、例えば図2及び図3に示されるように、空調システム51では、熱媒体を搬送する熱源ループ60及び空調機ループ70が設けられており、熱源ループ60及び空調機ループ70のそれぞれは熱媒体に対して加熱及び冷却のいずれかを行う温度制御部(例えば、温度制御部61、空気熱源ヒートポンプ76、水熱源ヒートポンプ77)を備える。よって、熱源ループ60及び空調機ループ70の間において熱媒体はそれぞれ加熱又は冷却されるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
また、空調システム51では、熱源ループ60の熱媒体の熱を第1の空調機ループ71、第2の空調機ループ72、第3の空調機ループ73及び第4の空調機ループ74のそれぞれに搬送する搬送ループ80(第1の搬送ループ81及び第2の搬送ループ82)を備える。熱源ループ60と第1の搬送ループ81との間には熱交換部91が設けられ、第1の搬送ループ81と第1の空調機ループ71及び第2の空調機ループ72のそれぞれとの間には熱交換部75が設けられている。第1の搬送ループ81は、熱交換部91から熱交換部75に向かう第1の管83と、熱交換部75から熱交換部91に戻る第2の管84とによって構成される。従って、熱源ループ60と第1の空調機ループ71及び第2の空調機ループ72のそれぞれとを接続する第1の搬送ループ81が2管で構成されるので、空調システム51の構成を更に簡易にすることができる。更に、4管式の空調システムと比較して、配管が占めるスペースを削減できると共に、配管のコストの低減に寄与する。第2の搬送ループ82についても同様である。
【0055】
例えば、空調機ループ73,74及び搬送ループ82は建物Sの高層部に設けられており、空調機ループ71,72及び搬送ループ81は建物Sの低層部に設けられており、上下に並ぶ搬送ループ82及び搬送ループ81は熱交換部94を介して接続されている。従って、高層ビルである建物Sを上下に区切って、区切られた建物Sのそれぞれの領域に搬送ループ81,82が設けられることにより、熱媒体の搬送の単位を建物Sの上下で区切ることができるので、配管及び機器にかかる水圧を低減させることができると共に、下層の熱媒体の熱を高層の熱媒体に搬送することができる。例えば、地下の熱源ループ60に配置されたコージェネレーションシステム65の熱を建物Sの高層部に搬送することができる。
【0056】
ところで、熱源ループ60における温水製造は、コージェネレーションシステム65からの廃温水供給を用いることが省エネルギーの観点から合理的であるが、廃温水供給量は発電要求等に応じて変動するので、熱源ループ60から空調機ループ70が必要とする熱量を常に供給できるとは限らない。従って、熱交換部75が暖房要求を行うときに、熱源ループ60が当該暖房要求を満たせない場合がある。この場合、空気熱源ヒートポンプ76が補助的に空調機ループ70の熱媒体を加熱することによって、水熱源ヒートポンプ77の加熱量が減少し、熱源ループ60に要求される暖房熱量を低減することができ、安定した運用が可能となる。すなわち、例えばコージェネレーションシステム65からの廃温水供給量を監視しながら空気熱源ヒートポンプ76の加熱量を制御することにより、より省エネ且つ安定した運用を行うことができる。
【0057】
以上、本発明に係る空調システムの各実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した各実施形態に限られず、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能であり、例えば、空調システムの各部の構成及び配置態様は適宜変更可能である。以下では、空調システムの空調機ループの種々の変形例について説明する。なお、変形例に係る空調システムの少なくとも一部は、前述した空調システムの少なくとも一部と同様の構成を備えるため、前述した空調システムの構成と重複する構成については同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0058】
例えば、図10に示されるように、変形例に係る空調機ループ110は、熱交換部75と、温度制御部として機能する水熱源ヒートポンプ77と、2つの熱媒体流通調整部78と、空調機群79とを備える。空調機ループ110は、空気熱源ヒートポンプ76を有しない点が図3の空調機ループ70とは異なっている。熱媒体の流通経路において、熱交換部75と水熱源ヒートポンプ77とは直列に配置されており、熱交換部75は水熱源ヒートポンプ77よりも上流側に設けられる。この空調機ループ110は、1つの熱交換部75を備え、更に空気熱源ヒートポンプ76を有しないため、機器コスト及び配管コストの低減に寄与する。また、熱交換部75の数が1つであることにより、空調機ループ110への熱媒体の供給流量を低減させることができるので、少ない供給流量で熱製造を効率良く行うことができる。
【0059】
図11に示されるように、変形例に係る空調機ループ120は、熱交換部115と、温度制御部として機能する水熱源ヒートポンプ117と、2つの熱媒体流通調整部78と、空調機群79とを備える。熱媒体の流通経路において、熱交換部115と水熱源ヒートポンプ117とは直列に配置されており、熱交換部115は水熱源ヒートポンプ77よりも下流側に設けられる。
【0060】
空調機ループ120は、熱交換部115を通る第1ループ120Aと、熱交換部115を通らない第2ループ120Bとを含む。第1ループ120Aでは、水熱源ヒートポンプ117を含む第1ヘッダH11、熱交換部115、一方の熱媒体流通調整部78及び空調機群79を熱媒体が流通する。第2ループ120Bでは、水熱源ヒートポンプ117を含むと共に第1ヘッダH11に並列に配置された第2ヘッダH12他方の熱媒体流通調整部78及び空調機群79を熱媒体が流通する。水熱源ヒートポンプ117は、第1ループ120A及び第2ループ120Bの間に介在している。換言すれば、水熱源ヒートポンプ117は、第1ループ120A及び第2ループ120Bの両方に接続されている。
【0061】
この空調機ループ120では、熱交換部115の数が1つであるため、機器コスト及び配管コストの低減に寄与すると共に、空調機ループ120への熱媒体の供給流量を低減させることができる。更に、空調機ループ120では、熱媒体の流路において熱交換部115が水熱源ヒートポンプ117の下流側に設けられるため、空調機ループ120へ供給される熱媒体の温度を低くすることができる。従って、低温の未利用エネルギー(例えば、低温排熱、井水熱又は河川水熱等)を利用しやすくなるという効果も得られる。
【0062】
図12に示されるように、変形例に係る空調機ループ130は、熱交換部135と、温度制御部として機能する水熱源ヒートポンプ137と、2つの熱媒体流通調整部78と、空調機群79とを備える。熱媒体の流通経路において、熱交換部135と水熱源ヒートポンプ77とは並列に配置されており、例えば、熱交換部135及び水熱源ヒートポンプ137は一対の第1ヘッダH21の間に配置されている。
【0063】
空調機ループ130は、熱交換部135を通る第1ループ130Aと、熱交換部135を通らない第2ループ130Bとを含む。第1ループ130Aでは、熱交換部135及び水熱源ヒートポンプ137を含む第1ヘッダH21、一方の熱媒体流通調整部78及び空調機群79を熱媒体が流通する。第2ループ130Bでは、水熱源ヒートポンプ137を含むと共に第1ヘッダH21に並列に配置された第2ヘッダH22、他方の熱媒体流通調整部78及び空調機群79を熱媒体が流通する。水熱源ヒートポンプ137は、第1ループ130A及び第2ループ130Bの間に介在している。
【0064】
空調機ループ130では、前述した空調機ループ120と同様、空調機ループ130へ供給される熱媒体の温度を低くすることができる。更に、空調機ループ130では、熱交換部135及び水熱源ヒートポンプ137が第1ヘッダH21の中に配置されることにより、熱媒体流通調整部78のポンプ78bの揚程を小さくすることができるので、搬送動力を抑えることができる。
【0065】
図13に示されるように、変形例に係る空調機ループ140は、熱交換部75と、温度制御部として機能する水熱源ヒートポンプ147と、2つの熱媒体流通調整部78と、空調機群79とを備える。熱媒体の流通経路において、熱交換部75と水熱源ヒートポンプ147とは互いに独立して配置されており、水熱源ヒートポンプ147は一対のヘッダHの間に設けられる。
【0066】
空調機ループ140は、熱交換部75を通る第1ループ140Aと、熱交換部75を通らない第2ループ140Bとを含む。例えば、第1ループ140Aが冷水系統であり、第2ループ140Bが温水系統である。第1ループ140Aでは、熱交換部75、一方の熱媒体流通調整部78、及び空調機群79を熱媒体が流通する。第2ループ140Bでは、水熱源ヒートポンプ147を含むヘッダH、他方の熱媒体流通調整部78、及び空調機群79を熱媒体が流通する。なお、空調機ループ140では、熱交換部75だけでなく、水熱源ヒートポンプ147も前述した搬送ループ80に接続されている。空調機ループ140では、冷水系統と温水系統とを分離しているため、空調機ループ140の運用及び制御を簡易にすることができる。
【0067】
図14は、変形例に係る空調システム151を示している。図14に示されるように、空調システム151は、それぞれ熱媒体を環流させる2つのループ152と、2つのループ152間で熱交換を行う熱交換器153とを備え、各ループ152が温度制御部154及び複数の空調機155を備える。温度制御部154は、例えば、冷熱源又は温熱源を含んでおり、空調機155は水熱源ヒートポンプを含んでいてもよい。この空調システム151の場合、2つのループ152が相互に熱交換を行うので、簡易な構成を維持しつつ、各ループ152を通る熱媒体の温度を一定範囲内に維持することができる。
【0068】
なお、前述の第1実施形態では、冷熱源12及び温熱源13を含む温度制御部11を備える熱源ループ10について説明した。しかしながら、温度制御部の種類、構成、数及び配置態様は、冷熱源及び温熱源を含むものに限られず適宜変更可能である。また、前述の実施形態では、図3に示されるように、空調機ループ70が温度制御部として空気熱源ヒートポンプ76と水熱源ヒートポンプ77とを備える例について説明した。しかしながら、例えば、第1ループ70A及び第2ループ70Bの間に温度制御部として空気熱源ヒートポンプ76のみが配置されていてもよく、この空気熱源ヒートポンプ76が熱源ループ60と連携して熱媒体の温度制御を行ってもよい。
【0069】
更に、前述の実施形態では、空調機21aと、外調機21bと、空調機21a及び外調機21bのそれぞれと接続する温度制御部22とを備える第1の空調機ループ20について説明した。しかしながら、空調機が設けられる空調機ループの構成についても適宜変更可能である。また、熱源ループ及び搬送ループの構成についても適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、高層ビルである建物Sに設けられる空調システム1について説明した。しかしながら、本発明に係る空調システムは、高層ビル以外の建物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…空調システム、10…熱源ループ、11…温度制御部、12…冷熱源、13…温熱源、20…第1の空調機ループ、21a…空調機、21b…外調機、22…温度制御部、23…第1の流路、24…第2の流路、30…第2の空調機ループ、31a…空調機、31b…外調機、32…温度制御部、33…第1の流路、34…第2の流路、41、42…熱交換器、51…空調システム、60…熱源ループ、61…温度制御部、62…冷熱源、63…温熱源、64…熱交換器、65…コージェネレーションシステム、70,110,120,130,140…空調機ループ、70A,120A,130A,140A…第1ループ、70B,120B,130B,140B…第2ループ、71…第1の空調機ループ、72…第2の空調機ループ、73…第3の空調機ループ、74…第4の空調機ループ、75…熱交換部(第2の熱交換部)、76…空気熱源ヒートポンプ、77…水熱源ヒートポンプ、78…熱媒体流通調整部、78b…ポンプ、78c…バルブ、79…空調機群、79b…空調機、79c…外調機、80…搬送ループ、81…第1の搬送ループ、82…第2の搬送ループ、83,85…第1の管、84,86…第2の管、91…熱交換部(第1の熱交換部)、94…熱交換部、151…空調システム、152…ループ、153…熱交換器、154…温度制御部、155…空調機、H…ヘッダ、H1,H11,H21…第1ヘッダ、H12,H22…第2ヘッダ、S…建物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14