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特許7436163プーリブロックのロープ掛け数を算定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】プーリブロックのロープ掛け数を算定する方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/16 20060101AFI20240214BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B66C13/16 Z
B66C23/88 Z
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019149029
(22)【出願日】2019-08-15
(65)【公開番号】P2020050523
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】10 2018 123 301.9
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴィントバッハー
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン ヴェーアシュテット
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ヨアヒム ヴェンガー
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107745(JP,A)
【文献】特開昭62-205993(JP,A)
【文献】特開平10-007379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0199800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;
19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部ブロックおよび底部ブロックを備えたプーリブロックのロープ掛け数を算定する方法であって、前記プーリブロックの少なくとも1本のロープラインのロープ経路長が時間窓の間、覆われており、前記ロープ経路長を検出して、前記時間窓内に覆われた別のロープラインの少なくとも1つのロープ経路長と比較するとともに/あるいは前記時間窓内で変化させた前記頂部ブロックと前記底部ブロックとの高さの差と比較して前記プーリブロックの前記ロープ掛け数を算定し、
前記少なくとも1本のロープラインの前記ロープ経路長を、前記ロープラインを形成する前記プーリブロックのローププーリによって測定するとともに/あるいは前記ロープライン上を転動する少なくとも1つの追加の測定ローラによって検出する、方法。
【請求項2】
前記ロープ経路長を前記ローププーリまたは前記測定ローラのインクレメンタル回転測定によって生じさせる、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記プーリブロックの第1のロープラインのロープ経路長を前記プーリブロックの巻き上げウインチによって測定し、前記測定されたロープ経路長は、前記時間窓内で巻き取られまたは巻き出された巻き上げロープに対応し、測定を好ましくは、巻き上げロープウインチに対するインクレメンタル回転測定によって実施する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記頂部ブロックと前記底部ブロックとの前記高さの差の変化を前記プーリブロックの最後のラインに対するロープ経路長測定によって生じさせる、請求項1~のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記頂部ブロックと前記底部ブロックとの前記高さの差の前記変化を機械的長さセンサおよび/または光学レーザ利用および/またはランタイム利用測定法によって生じさせる、請求項1~のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つのロープ経路長測定を可能な限り遠くに間隔を置いて設けられたプーリブロックのロープラインに対して、理想的には、前記プーリブロックの最初の移動ロープラインおよび最後の移動ロープラインに対して実施する、請求項1~のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のロープラインの前記ロープ経路長を前記巻き上げロープウインチに巻き取られまたは該巻き上げロープウインチから巻き出された前記ロープ経路長によって測定し、前記頂部ブロックと前記底部ブロックとの前記高さの差の前記検出された変化によって除算し、その結果、場合によっては四捨五入された商は、前記ロープ掛け数に一致する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のロープラインの前記ロープ経路長を前記巻き上げロープウインチに巻き取られまたは該巻き上げロープウインチから巻き出された前記ロープ経路長によって測定し、前記プーリブロックの引き続くロープラインの前記測定されたロープ経路長に対して比較し、好ましくは、前記ロープ掛け数は、両方のロープ経路長からの計算された比を既知の基準値に合致させることによって算定される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法をクレーンのクレーン制御ユニットによって実施して前記クレーンのフックブロックまたは別のプーリブロックのところの前記ロープ掛け数を算定する、請求項1~のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~のうちいずれか一に記載の方法を実施するための装置、特にクレーンであって、特に、時間窓の間、少なくとも2つのロープ経路長を検出する測定手段と、測定値に基づいて前記ロープ掛け数を計算する少なくとも1つの評価ユニットから成る、装置。
【請求項11】
プーリブロックに対するロープ経路長測定のために少なくとも2つのセンサと通信するのに適したクレーン制御ユニットにおいて、前記クレーン制御ユニットは、請求項1~のうちいずれか一に記載の方法を実施するようプログラムされている、クレーン制御ユニット。
【請求項12】
プログラムアプリケーションであって、請求項1~のうちいずれか一に記載の方法を実施するための制御ユニット用のデータキャリヤ上に記憶されたプログラムアプリケーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂部ブロックおよび底部ブロックを備えたプーリブロックのロープ掛け数を算定する方法ならびにプーリブロックを備えた対応の装置またはクレーンおよびかかる方法を実施するための制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
高い持ち上げ性能を備えた大型クレーンは、巻き上げ手段としてフックブロックを用いており、かかるフックブロックにより、繰り返し掛けられる巻き上げロープがクレーンブームのところでローラヘッドに連結される。したがって、トロリーヘッドにしっかりと取り付けられたローラおよびフックブロックのルーズまたは可動ローラは、プーリブロックを形成し、フックブロックは、底部ブロックとも言われ、トロリーヘッドは、頂部ブロックとも呼ばれる。
【0003】
形成されるロープ掛け数または形成されるロープラインの数は、クレーンを装備する際に定められ、そして用途に応じて可変的に固定されるのが良い。制御の面で、そしてクレーンを最適にモニタするため、実際の掛け数を例えばクレーン制御ユニット内に保管されている装備情報と合致させるために実際の掛け数を自動的に検出することができまたはクレーンの適正な装備およびプーリブロックの機能をチェックすることができるようにすることが望ましい。
【0004】
かかる要件に起因して、掛け数を自動的に検出するシステムが独国特許出願公開第102014018063(A1)号明細書に既に開示されており、このシステムは、クレーンに取り付けられたカメラによって、クレーンのプーリブロックを検出し、次に画像認識によって掛け数を算定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102014018063(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光学的または画像利用検出方法では、これらが環境的な影響を受けやすいことは、常に不都合である。ほこりおよび悪天候条件、特に雪、氷および霧は、検出誤差をもたらす。公知の方法はまた、画像処理プロセスを含むカメラシステムの取り付けを必要とし、それにより比較的高い追加のコストが生じる場合がある。
【0007】
したがって、上述の欠点を解決することができる別の解決策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴記載部分を有する本発明によって達成される。この方法の有利な実施形態は、従属形式の請求項の内容である。
【0009】
本発明は、一般に、任意の種類のプーリブロックの掛け数を自動的に検出することができるようにするための新規な方法を提案する。クレーン技術におけるこの方法の使用は、この場合、ロープ掛け数をクレーンのフックブロックについて検出できるので特に好ましい。しかしながら、本発明の具体的な用途に限定されず、ただし、以下においては分かりやすくするために、詳細な説明は、クレーンへの利用に関してのみ提供されている。
【0010】
本発明によれば、プーリブロックの少なくとも1本のロープラインの覆われた状態のロープ経路長を、プーリブロックを作動させる定められた時間窓中に検出する。それと同時に、別のロープラインのロープ経路長および/または頂部ブロックと底部ブロックとの高さの差の変化をこの時間窓中に検出する。高さの差は、通常、垂直方向における頂部ブロックと底部ブロックとの間の距離に対応している。ロープ経路長は、通常、観察された時間窓内におけるプーリブロックから巻き出されたロープ長さまたはウインチから巻き出されまたはウインチに巻き取られたロープ長さであると理解される。プーリブロックのロープを動かすのがどの方向か、すなわち可動端部を引き下げまたは下げたままにしておくことは、本発明には役立たない。
【0011】
次に、第1のロープラインの検出されたロープ経路長を別のロープラインの検出されたロープ経路長および/または高さの差の検出された変化と比較する。プーリブロックの物理的法則を考慮に入れて、特に、個々のロープラインの覆われた状態のロープ経路長に関して、今やロープ掛け数を少なくとも2つの測定値の比較により正確に計算することができる。
【0012】
例えば、ルーズまたは可動ローラおよび固定ローラを備えた単純なプーリブロックでは、可動ローラに取り付けられた重りは、長さの半分だけ持ち上げられ、それにより、ロープをプーリブロックの可動端部のところで引く。第2のロープラインのロープ経路長は、第1のロープラインのロープ経路長の半分であるに過ぎない。一般的に言って、このように覆われたロープ経路長は、引き続くラインの方向において可動ロープ端部によって形成される第1のラインから減少する。この物理的関係についての知識を得た上で、評価ユニットまたは制御ユニットが今や、検出された測定値に基づいて、ロープ掛け数またはロープライン数を正確に計算することができる。高さの差の変化は、通常、最後のロープラインのロープ経路長に対応している。
【0013】
本発明によって提供される方法は、外部の天候の影響に対して極めて堅牢である。さらに、多数のプーリブロックにおいて、ロープ経路長測定のための適当な測定システムが既に存在し、特に、公知であってしかも既に通常設置されているロープ経路長測定システムをクレーン技術の分野においてロープ経路長を測定するために採用可能である。これは、既存のプーリブロックシステムのレトロフィットを単純化するとともにこの方法を実現するためのコストを低減させる。
【0014】
本発明の有利な観点によれば、少なくとも1本のロープラインのロープ経路長を、かかるロープラインを形成するプーリブロックのローププーリによって測定することができる。有利には、ローププーリの有効回転数をここで検出し、そして最終的には、時間窓中の全ロープ経路長を増分法によって算定する。変形例として、当然のことながら、追加の測定ローラもまた、プーリブロック中に組み込むことができ、かかる追加の測定ローラによって、ロープを偏向させず、この測定ローラは、単にロープ上を転動する。この場合もまた、ロープ経路長測定は、測定ローラのインクレメンタル回転測定法によって可能である。
【0015】
ロープラインに対するロープ経路長測定が好ましくは固定ローププーリについて、すなわち、頂部ブロックのローププーリについてまたは装置構造体/クレーン構造体にしっかりと配置されたローププーリについて実施されるということが基本的に当てはまる。これは、必要なエネルギーおよび信号伝送が単純化されるという利点を有する。
【0016】
プーリブロックの第1のロープラインのロープ経路長をクレーン内のプーリブロックの第1のローラ、例えばクレーンブームのところに位置するネックローラによって算定することができ、または別法として、好ましい実施形態によれば、巻き上げロープウインチのところで直接測定することができる。特に、クレーン技術の場合のように、一般に適当なセンサシステム、既存のかつ実績のあるシステムを装備した巻き上げロープウインチをこの場合に用いることができる。この場合、巻き上げロープウインチから巻き出されまたは巻き上げロープウインチに巻き上げられた巻き上げロープの長さは、プーリブロックの第1のロープラインのロープ経路長に対応している。巻き上げロープウインチはまた、好ましくは、インクレメンタル回転測定法を利用する。
【0017】
例えば、頂部ブロックと底部ブロックとの間の高さの差の変化をプーリブロックの最後のロープラインのロープ経路長測定によって生じさせることができ、と言うのは、この場合に及んだロープ経路長は、一般に、実際に、頂部ブロックと底部ブロックとの間の距離の変化、すなわち2つのブロック相互間の高さの差の変化に対応するからである。別法として、高さの差の変化は、機械的長さセンサによっても検出できる。想定可能であることは、別の測定法、例えば光学レーザ利用またはランタイム利用測定法であり、これら測定法は、頂部ブロックと底部ブロックとの間の距離を適当な仕方で算定することができる。単なる例示として、ここでは、レーダーまたはライダーセンサシステム、時間領域反射率測定法、ソナー技術またはGPSセンサの使用を参照されたい。
【0018】
少なくとも2つのロープ経路長測定を可能な限り遠くに互いに間隔を置いて配置されたプーリブロックのロープラインについて実施することが特に好ましく、理想的には、ロープ経路長測定を最初のロープラインおよび最後のロープラインについて実施する。これは次のように当てはまり、すなわち、考慮中のロープライン相互間の選択された距離が長ければ長いほど、得られる経路長の差がそれだけいっそう長くなり、それにより誤差の影響のしやすさを軽減することができる。
【0019】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の方法における第1のロープラインのロープ経路長を巻き上げロープウインチから巻き出されまたはこれに巻き上げられたロープ経路長によって求める。次に、この値を頂部ブロックと底部ブロックとの間の高さの差の検出された変化で除算する。すると、結果的に得られた商は、プーリブロックの掛け数に一致する。測定の不正確さに起因して、整数の結果をこの場合には得ることができない。かかる場合、これを丸めまたは四捨五入しなければならない。
【0020】
別法として、同様に想定可能なこととして、第1のロープラインのロープ経路長を巻き上げロープウインチから巻き出されまたはこれに巻き上げられたロープ経路長によって求め、そしてプーリブロックの引き続く高い位置のロープラインの算定されたロープ経路長に対して配置する。この場合、評価ユニットが検討対象のロープラインの数を知っていることが必要不可欠である。さらに、行われることとして、対応の評価ユニットでは、適当な基準値を記憶し、これを測定比と合致させることによって、対照的には掛け数をこの合致によって求めることができる。例えば、第1のロープ経路長と次の各ロープラインのロープ経路長との対応の比を互いに異なる実施形態としてのプーリブロック、すなわち、異なる数の掛け数のプーリブロックについて制御ユニット内に前もって保つ。次に、計算された比を前もって保たれた基準値と数値的に比較する。各基準値に関し、掛け数を同様に保管する。一致した場合、掛け数を基準値から直接導き出すことができる。
【0021】
既に上述したように、有利な実施形態による本発明の方法をクレーンの制御ユニットによって実施することができ、その目的は、クレーンのフックブロックの掛け数を求めることにある。
【0022】
本発明の方法とは別に、本発明はまた、本発明の方法を実施するよう構成されるとともにかかる実施に適した装置、有利な実施形態によれば、クレーンに関する。かかる装置は、少なくとも2つの経路長長、すなわち、少なくとも1つのロープ経路長の長さおよび少なくとも別の1つのロープ経路長を検出しまたは頂部ブロックと底部ブロックの間の高さの差の変化を検出するのに適した測定手段を有する。さらに、かかる装置は、少なくとも1つの評価ユニットを有し、かかる少なくとも1つの評価ユニットは、提供された測定値に基づいて、掛け数を最終的に求めるために計算を実施する。
【0023】
加うるに、本発明は、クレーンの適当な測定センサと通信するとともに受け取った測定値に基づいて、使用されるプーリブロックの掛け数を求めるために対応の計算を実施するのに適したクレーン制御ユニットに関する。
【0024】
最後に、本発明はまた、制御ユニットとして、特に本発明のクレーン制御ユニットのためにプログラムアプリケーションが記憶されたデータキャリヤに関する。
【0025】
上述の個々の装置の利点および特性は、極めて明らかなこととして、本発明の方法に対するこれらの参照に起因して、本発明の方法の利点および特性に一致しており、したがって、くり返しの説明を省く。
【0026】
以下において、例示の実施形態を参照して本発明の別の利点および別の特性について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】トロリーヘッドとフックブロックとの間の経路長測定を行う本発明の方法の第1の例示の実施形態を示す図である。
図2】ローププーリを介する経路長測定による本方法の第2の例示の実施形態を示す図である。
図2a図2および図3の例示の実施形態による掛け数の算定のための基準表を示す図である。
図3】ロープラインに対する直接的な経路長測定を行う本方法の第3の例示の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の方法の基礎をなす技術的思想は、プーリブロックの互いに異なるロープラインの同期して進んだロープ経路長を相互に比較することによってプーリブロックのロープラインの数を算定することから成る。別法として、ロープラインのロープ経路長を頂部ブロックと底部ブロックとの間の経路長、すなわち頂部ブロックと底部ブロックとの間の垂直距離の変化と比較しても良い。
【0029】
具体的には、荷重持ち上げ手段としてフックブロックを有するクレーンの実施例を用いて本発明の技術的思想を説明する。クレーンブームのトロリーヘッド上からフックブロックまでそしてこれから戻る巻き上げロープの道筋に起因して、プーリブロックが図1に概略的に示されている。具体的には、一方において、プーリブロックは、トロリーヘッド10の別のローププーリ10b,10cと一緒にクレーンブームに取り付けられたネックローラ10aによって、他方において、フックブロック20の「ルーズ」または可動ローププーリ20a,20b,20cによって形成される。巻き上げロープ50は、トロリーヘッド10の方向においてブームに沿ってクレーンの図示していない巻き上げロープウインチから延びており、この巻き上げロープの向きは、ここからネックローラ10aを経てフックブロック20に向けられる。ローラヘッド10とフックブロック20との間の多数の掛けは、巻き上げロープ50が最終的に、固定状態のロープ箇所51のところに位置するブームに締結されるまで別のローププーリ10b,10c,20a,20b,20cによって実現され、要するに、全部で6個のローププーリまたは6回の掛け数を備えたプーリブロックが形成される。
【0030】
クレーン制御ユニットは、今や、本発明の方法を用いることによって巻き上げロープ50のロープ掛け数を自動的に検出することができる。ロープラインに対する必要な経路長測定は、好ましくは、ある特定の時間間隔内で巻き上げロープ50について直接実施され、かかるある特定の時間間隔中、フックブロック20を定められた仕方で下ろしまたは持ち上げる。少なくとも必要なことは、プーリブロックの2つの互いに異なる箇所のところの値である。クレーン制御ユニットは、同様に、測定された経路長長および求められた時間から平均速度を算定することができ、そして、同一の時間間隔内における進行距離の比によって、十分な精度でプーリブロック中の掛け数を算定することができる。
【0031】
この場合、図1の例示の実施形態は、第1のロープラインのロープ経路長測定を提供し、このロープ経路長測定は、巻き上げロープウインチの適当な測定装置によって実施される。巻き上げロープウインチのインクレメンタルジャイロメータ(incremental gyrometer)によって、巻き出しロープ経路長を求めることができ、この巻き出しロープ経路長は、プーリブロックの第1のラインのロープ経路長に対応している。
【0032】
さらに、本システムは、経路長測定装置60を含み、この経路長測定装置は、フックブロック20と頂部ブロック10またはクレーンブームのトロリーヘッド10との間の高さの差の変化を検出する。この経路長測定装置の具体的な構成は、原理的には、恣意的であるが、フックブロック20とトロリーヘッド10との間に設けられる機械的長さセンサが有利であることが分かる。変形例として、高さの差はまた、光学的レーザ利用またはランタイム測定利用測定方法によって実施されても良い。一例として、この場合、例示として、ここでは、適当なレーダーセンサシステム、ライダーセンサシステムまたは時間領域反射率測定法用のセンサを参照されたい。ソナーセンサとGPSセンサは共に同様に、垂直方向における距離測定に適している。
【0033】
本方法の実施のため、今や、フックブロック20を制御ユニットによって下降させる。この目的のため、例えば全長6mのロープ長さを時間間隔xで巻き上げロープウインチから巻き出す。このロープ長を巻き上げロープウインチのところで直接測定する。
【0034】
プーリブロックの第1のラインは、巻き出された6mのロープを完全に受け入れ、したがって、第1のラインの対応の比を6/6と称する。全体で6mの巻き出しロープ長をプーリブロックの全部で6本のロープラインにわたって分配すると、フックブロック20とトロリーヘッド10との間の高さの差の定められた変化が最終的に得られ、これは、一般に、巻き上げロープウインチから出された6mの全ロープ長の1/nに一致し、この場合、nは、掛け数を表わしている。
【0035】
それ故、高さの差の変化が長さセンサによって検出されると、第1のロープラインの測定値または巻き出されたロープ長と比較するのが良く、そしてこの比から、プーリブロックの掛け数Sを最終的な分析において求めることができる。それ故、6mのロープ長が巻き上げウインチから巻き出されると、フックブロック20は、図1に示されているプーリブロックの形態において、同一の時間間隔内で全部で1mだけ下方に動かなければならない。フックブロック20を持ち上げる際、この原理は、これに対応して適合された形態で用いられるべきである。
【0036】
それ故、一般的に次のことが言え、すなわち、掛け数Sを次のように算定することができる。
【0037】
整数計算結果が特定誤差などに起因して実際には得られない場合、同じことをこれに対応して丸めまたは四捨五入する必要がある。
【0038】
同一の原理はまた、プーリブロックの互いに異なるロープラインについてのロープ経路長測定で実施できる。図2に示されているような6回の掛け数の場合、第1のラインは、時間間隔x中、ある特定のロープ経路長を進む。フックブロック20を昇降させることによって、第1のラインのこのロープ経路長をロープ掛けに存在するライン2~6にわたって分配する。次に、少なくとも1本の別のラインの時間間隔あたりの経路長を測定するのが良く、そして第1のラインの時間間隔あたりの経路長に対して配置するのが良い。次に、制御ユニットによって求められたこの比を、例えば図2aに示されているように求められた比を基準表に対して比較することによって具体的なロープ掛け数に関連させるのが良い。図2aの表では、特定のケーブルプーリのロープ経路長相互間のそれぞれの比を互いに異なるプーリブロック配列、すなわち異なる数の掛け数について第1のロープラインのロープ経路長全体と比較する。
【0039】
図2に示されているプーリブロックは、フックブロック20の高さの差を検出するための経路長測定装置60が設けられていないが、これに代えて、プーリブロックの5番目のローププーリ、すなわちトロリーヘッド10の最後のローププーリ10cの5番目のロープラインのロープ経路長を測定する点においてのみ構成が図1の配置とは異なっている。時間間隔x中のこのロープ経路長をローラ10cに設置されたインクレメンタルジャイロメータによって検出するのが良く、そして巻き上げロープウインチから下ろされたロープ長と比較するのが良い。例えばフックブロック20を制御ユニットによって定められたロープ長だけ下げたとき、すなわち、全体で6mの定められたロープ長が時間間隔xで巻き上げロープウインチから巻き出されたとき、これは、巻き上げロープウインチ内でのインクレメンタル回転測定によって検出される。
【0040】
今や、6mのこの測定値をこの場合約2mであるローラ10cの測定値に対して置く。一般に、ローラ5(ローププーリ10c)に対する経路長測定の際、基準値S′について次式が得られる。
【0041】
この計算基準値S′を図2aの表項目と合致させることによって、かくして、掛け数“S”が6であることが即座に検出できる。
【0042】
別法として、8回の掛け数を有するプーリブロックに関する一例を定めることができ、この場合、7番目のローププーリ、すなわちトロリーヘッド10の最後のローププーリ上のロープ経路長を一例として測定する。この場合、基準値S′を次のようにして計算する。
【0043】
図2aの表の第7列目(7番目のローププーリ)との比較により、8回の掛け数を有するプーリブロック構成についての一致が示される。
【0044】
原理的には、検討対象のロープライン相互間の距離をできるだけ大きく選択することが好都合であり、したがって、ロープ経路長の差は、可能な限り大きい。また、トロリーヘッドのローププーリのところのロープ経路長検出を実施することが好都合であり、と言うのは、この場合、電源とローププーリからの信号伝送の両方が単純化されるからである。
【0045】
図3は、今や、本発明の方法の最後の例示の実施形態を示している。この場合、今や、後ろ方のロープラインのうちの1本のロープ経路長は、トロリーヘッド10のローププーリ10a,10b,10cによっては達成されず、これとは異なり、同じことは、検討対象のロープライン上で転動する別個の測定ローラ70によって測定される。測定ローラ70は、ロープ上にのって回転測定(インクレメンタル経路長測定)を提供する少なくとも1つのローラを有する。次に、掛け数の算定を図2に示されているように説明した実施形態と類似して実施する。
【符号の説明】
【0046】
10 トロリーヘッド
10a ネックローラ
10b,10c ローププーリ
20 フックブロック
20a~20c 可動プーリ(動滑車)
50 巻き上げロープ
60 経路長測定装置
70 測定ローラ
図1
図2
図2a
図3