(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240214BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240214BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240214BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20240214BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240214BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240214BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240214BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04664
H01M8/0438
H01M8/04 J
H01M8/12 101
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2019200113
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 道忠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】辻川 昌弘
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-17161(JP,A)
【文献】特開2011-175816(JP,A)
【文献】特開2005-276797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて、需要家に供給する電力を発生する燃料電池と、
前記燃料電池の動作を制御するとともに、前記需要家にて要求される要求電力量を算出する算出部と、
第1判定期間における、要求電力量の平均値である平均要求電力量を算出する要求電力演算部と、
前記燃料電池の運転の可否を判定する運転判定部と、を備える制御部と、
を備え、
前記制御部は、所定の条件を第1期間継続して満たした場合に前記燃料電池の運転を停止可能な運転停止制御と、
前記平均要求電力量と、あらかじめ設定された判定値とを比較して、前記燃料電池の運転の可否を判定する第1判定制御とが実行可能であり、
前記運転判定部は、前記第1判定制御を、前記運転停止制御と関連付けて実行する燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記運転停止制御に基づいて前記燃料電池の運転が停止している場合に、前記第1判定制御を実行する請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
原燃料の供給ラインに設置され、前記原燃料の供給元から供給され
る原燃料ガスの流量から認識されるガス流通状態が所定の第1期間中に所定のリセット状態とならなかったことをガス供給異常として検知する供給異常検知機能を有するガスメータを備えており、前記所定の条件は、前記ガスメータを介して前記燃料電池に供給される前記原燃料ガスに基づいて設定される、請求項1または請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1判定期間が、前記所定の第1期間の範囲内で設定されている、請求項1~3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記要求電力演算部は、前記第1判定期間における前記平均要求電力量を算出するにあたり、前記要求電力量が第1の所定値以上である所定の第2判定期間を用いて算出する、請求項1~4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1の所定値が、前記第2判定期間における、最低要求電力量に基づいて設定される、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記最低要求電力量は、前記第2判定期間において、前記要求電力量が、第2の所定値未満である第2期間における平均値に基づいて設定される請求項6記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記要求電力演算部は、前記要求電力量が前記第1の所定値以上、前記第1の所定値よりも高く設定された第3の所定値未満である期間を用いて、前記平均要求電力量を算出する、請求項5~7のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記運転判定部は、前記平均要求電力量と、あらかじめ設定された判定値とを比較し、前記平均要求電力量が前記判定値以上の場合は、前記燃料電池の運転を継続もしくは再開し、前記平均要求電力量が前記判定値未満の場合は、前記燃料電池の運転を停止もしくは停止を継続する請求項1~8のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記運転判定部は、
前記第1判定制御を実行した日付を検知する日付検知制御と、
検知された前記日付に基づいて、前記燃料電池の運転の可否を判定する第2判定制御を備えている請求項1~4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記運転判定部は、検知された前記日付が第3期間に含まれ、かつ前記第1判定制御にて運転が不可と判定された場合に、燃料電池の運転を継続もしくは実行する請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記運転判定部は、前記第3期間を、前記燃料電池の設置場所に関する情報に基づいて設定する請求項11に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原燃料ガスを水蒸気改質して生成される燃料ガスと空気とを用いて発電を行なう燃料電池が知られている。燃料電池は、需要家における電力消費量が少ない場合、ランニングコスト等の観点から、燃料電池を運転するよりも燃料電池の運転を停止した方が、メリットとなることがある。
【0003】
例えば特許文献1は、所定期間にわたって計測された負荷計測値の平均演算値から導出される代替値と判定しきい値とに基づいて、燃料電池の運転継続または運転停止を判定することによって、メリットの低下を抑制する燃料電池システムを開示している。
【0004】
また、各家庭等に設けられるガスメータ(マイコンメータ)は内管漏洩検知機能を有しており、燃料の流通が一定期間以上継続すると、内管漏洩と認識して燃料の流通を遮断する。それゆえ、この燃料の流通遮断を回避すべく、所定の条件で燃料電池の運転を停止することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-174750号公報
【文献】特開2011-175816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のメリットの低下抑制運転と、内管漏洩回避運転とを実行した場合に、燃料電池が度々停止するおそれがあり、結果として効率の良い運転ができないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の燃料電池システムは、
燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて、需要家に供給する電力を発生する燃料電池と、
前記燃料電池の動作を制御するとともに、前記需要家にて要求される要求電力量を算出する算出部と、
第1判定期間における、要求電力量の平均値である平均要求電力量を算出する要求電力演算部と、
前記燃料電池の運転の可否を判定する運転判定部と、を備える制御部と、
を備え、
前記制御部は、所定の条件を第1期間継続して満たした場合に前記燃料電池の運転を停止可能な運転停止制御と、
前記平均要求電力量と、あらかじめ設定された判定値とを比較して、前記燃料電池の運転の可否を判定する第1判定制御とが実行可能であり、
前記運転判定部は、前記第1判定制御を、前記運転停止制御と関連付けて実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の燃料電池システムによれば、運転効率の向上した燃料電池システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る燃料電池システムの概略的構成を示す図である。
【
図2】実施形態にかかる運転制御を説明するフローチャートである。
【
図3】
図2に示す運転制御を詳述するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本開示の実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。
図1は、実施形態に係る燃料電池システムの概略的構成を示す図である。
【0011】
実施形態の燃料電池システム100は、燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行なう燃料電池11を備える。燃料電池11は、複数の燃料電池セルを含むセルスタック構造を有していてもよい。燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルであってもよい。なお、以下の説明においては、固体酸化物形燃料電池セルを用いて説明するが、例えば固体高分子形燃料電池セルを用いる場合には、適宜構成を変更すればよい。
【0012】
燃料電池システム100は、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する改質器12を有する。改質器12は、天然ガス、LPガス等の原燃料ガスを改質し、燃料ガスを生成する。
【0013】
燃料電池システム100は、収納容器10内に収容された燃料電池11および改質器12を含むモジュール1を備える。また、燃料電池システム100は、モジュール1の排熱と熱媒との熱交換を行う第1熱交換器2および熱媒を貯留する蓄熱タンク3とを備える。モジュール1から排出される排ガス(排熱)は、第1熱交換器2において、第1熱交換器2内を流れる熱媒と熱交換する。この際、排ガスに含まれる水分が結露して、凝縮水が生じる。生じた凝縮水は、凝縮水流路Cを経由して、改質器12に供給され、改質水として改質器12における水蒸気改質反応に用いられる。凝縮水流路Cには、凝縮水を貯留する改質水タンクが設けられていてもよい。水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路Eを介して、外部に排気される。
【0014】
燃料電池システム100は、第一循環経路HCを備えている。第一循環経路HCは、蓄熱タンク3と第1熱交換器2との間で熱媒が循環する経路である。第一循環経路HCは、蓄熱タンク3と第1熱交換器2とを繋ぎ、熱媒が流過する配管を有している。第一循環経路HCには、熱媒を循環させる循環ポンプや、熱媒を冷却する放熱器が設けられていてもよい。
【0015】
燃料電池システム100は、第二循環経路および第二循環経路に設けられる第二熱交換器を備えていてもよい。第二循環経路は、蓄熱タンク3に接続されており、第一循環経路HCには接続されていなくてもよい。例えば、第二循環経路は、熱媒が循環する経路であり、熱媒が流過する配管を有し、外部から供給された水道水等の水を第二熱交換器で加温し、加温された水を外部に送給するように構成されていてもよい。燃料電池システム100は、外部への温水供給を行わない、いわゆるモノジェネレーションシステムであってもよい。
【0016】
燃料電池システム100は、蓄熱タンク3に熱媒を供給するための給水流路Wをさらに備えている。給水流路Wは、外部からの熱媒を供給する給水元と蓄熱タンク3とを繋ぐ配管を含んでいる。燃料電池システム100の起動時には、給水流路Wを介して、熱媒を給水元から蓄熱タンク3に供給する。給水元は、例えば、上水道であり、給水元から供給される熱媒は、水道水である。
【0017】
燃料電池システム100は、燃料電池11に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給装置14、改質器に原燃料ガスを供給する原燃料ガス供給装置15等を含む、燃料電池11の発電運転を補助するための補機を備える。原燃料ガス供給装置15を構成する供給ライン16には、ガスメータ17が設置されている。
【0018】
燃料電池システム100は、燃料電池11の発電運転を補助するための補機として、パワーコンディショナ20、制御部30、リモコン40等をさらに備える。
【0019】
パワーコンディショナ20は、燃料電池11により発電された直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ21を有する。インバータ21の出力は、需要家に設置されている分電盤50が備えるブレーカ51に接続されている。ブレーカ51には、電流センサ(図示せず)が取り付けられている。
【0020】
制御部30は、少なくとも1つのプロセッサおよび記憶装置等を含み、以下に詳細に述べるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供する。
【0021】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0022】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成された、ファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0023】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0024】
制御部30は、記憶装置および表示装置(ともに図示省略)と、燃料電池システム100を構成する各種構成部品および各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池システム100の全体を制御および管理する。制御部30は、それに付属する記憶装置に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池システム100の各部に係る、種々の機能を実現する。
【0025】
制御部30から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御部30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御部30が行う、実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。なお、実施形態において、制御部30は特に、燃料電池に繋がる外部装置の指示、指令や、先に述べた各種センサの指示や計測値に基づいて、各種補機を制御する。図では、制御部30と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。
【0026】
図示しない記憶装置は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよい。記憶装置は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体等の任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。また、記憶装置は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0027】
なお、燃料電池システム100の制御部30および記憶装置は、燃料電池システム100の外部に有する構成として実現することもできる。さらに、本開示に係る制御部30における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0028】
リモコン40は、需要家宅に設けられており、表示装置および操作パネルを有する。需要家は、リモコン40を操作することにより、燃料電池11の運転に係る種々の指示を制御部30に送信することができる。また、需要家は、リモコン40を操作することにより、燃料電池システム100の日時設定を変更することができる。
【0029】
以下、燃料電池システム100において、制御部30が実行する運転停止制御、第1判定制御について説明する。
【0030】
制御部30は、算出部31、要求電力演算部32および運転判定部33を有し、需要家における消費電力量(以降、要求電力量)に基づいて、燃料電池11の運転の可否を判定する。
【0031】
要求電力量は、電力会社からの電力購入量Qと燃料電池11の発電量Rとの和である。算出部31は、例えば、分電盤50のブレーカ51に取り付けられている電流センサの計測値に基づいて、電力会社からの電力購入量Qを算出することができる。また、算出部31は、例えば、パワーコンディショナ20に搭載されているインバータ21の出力に基づいて、燃料電池11の発電量Rを算出することができる。なお、需要家に燃料電池11以外の発電装置が備わっている場合は、該発電装置の発電量を考慮してもよい。
【0032】
制御部30は、あらかじめ設定された第1判定期間H1における要求電力量の平均値である平均要求電力量に基づいて燃料電池11の運転の可否を判定してもよい。第1判定期間H1は、日数で表される期間としてもよく、例えば、後述するように、供給異常検知機能を有するガスメータが、原燃料ガスの供給元から供給され供給ラインを流通する原燃料ガス流量から認識されるガス流通状態が、ガス供給異常として検知する判定期間である第1期間T1としてもよい。さらに、第1期間T1がリセットされた場合には、そのリセットを反映させてもよい。また、制御部30は、第1期間T1に基づいて運転停止制御Xを実行する。なお、本制御の開始時に現在の日時情報を取得し、日時情報と第1期間T1とを組み合わせて運転停止制御Xを実行してもよい。
【0033】
運転停止制御Xにおいては、所定の条件を第1期間T1継続して満たした場合に、燃料電池11の運転が停止される。ここで所定の条件とは、ガスメータ17を介して燃料電池11に供給される燃料ガスに基づいて設定され、例えば、ガスメータ17によって原燃料ガスが検知されることであってもよい。
【0034】
ガスメータ17(マイコンメータ)は、内管漏洩検知機能を有している。これは、燃料(ガス)の流通が一定期間継続すると、内管漏洩と認識して、ガスの流通を遮断する機能である。この場合、燃料電池装置に多大なる影響を及ぼすほか、各家庭のガスもすべて停止してしまうため、各家庭においても影響が大きい。
【0035】
そこで、マイコンメータが内管漏洩検知を行う判定日より前に、一度燃料電池の運転を停止し、マイコンメータの内管漏洩検知を回避することがよい。すなわち、第1期間T1は、マイコンメータの内管漏洩検知を行う判定サイクルよりも短い期間で設定される。具体的には、例えば、第1期間T1はガスメータの機能に合わせて、例えば20~31日の期間で適宜設定できる。それにより、所定の条件を第1期間T1継続して満たした場合に、燃料電池11の運転を停止する運転停止制御Xを実行することで、マイコンメータの内管漏洩検知によるガスの遮断を回避することができる。
【0036】
算出部31は、予め設定された算出周期U1毎に第1要求電力量P1を算出する。算出周期U1は、適宜設定することができるが、例えば、0.1~60秒間である。また、要求電力演算部32は、算出周期U1毎に算出された第1要求電力量P1を、予め設定された積算周期U2にわたり積算して、第2要求電力量P2を算出する。積算周期U2は、算出周期U1よりも長く、かつ第1判定期間H1よりも短い期間に設定される。積算周期U2は、適宜設定することができるが、例えば、24時間であってもよく、12時間であってもよく、8時間であってもよい。
【0037】
要求電力演算部32は、第1判定期間H1において、第2要求電力量P2を算出した積算周期U2を積算して第1積算算出期間UAを算出する。第1判定期間H1にわたって第2要求電力量P2が積算された場合、第1積算算出期間UAは第1判定期間H1と同じ日数となる。
【0038】
要求電力演算部32は、第1判定期間H1において要求電力量が所定の条件を満たしている第2要求電力量P2の算出期間である第2積算算出期間UBを算出し、第2積算算出期間UBの第2要求電力量P2の総和である要求電力量積算値PIを算出する。所定の条件は、要求電力量が第1の所定値以上であることを含む。所定の条件が、要求電力量が第1の所定値以上である期間を、第2判定期間H2とすることができる。また、要求電力量積算値PIを第2積算算出期間第UBで除算することにより平均要求電力量PAVGを算出する。運転判定部33は、平均要求電力量PAVGと予め設定された判定値PCとを比較して、燃料電池11の運転の可否を判定する第1判定制御を実行する。これによって、需要家の電力消費量の内、一時的に電力消費量が低い場合を除いて判定することができるため、需要家の実際の電力消費量を精度良く判定することができる。
【0039】
また、第1の所定値は、たとえば第1判定期間H1における最低要求電力量PLOWに基づいて設定されてもよい。最低要求電力量PLOWは、たとえば第1判定期間H1において、要求電力量が第2の所定値未満である第2期間T2(言い換えれば、第2判定期間H2以外の期間)における平均値に基づいて設定される。また、所定の条件は、第1の所定値よりも高く設定された第3の所定値未満であることを含んでいてもよい。これによって、需要家の電力消費量の内、一時的に電力消費量が高い、もしくは低い場合を除いて判定することができるため、需要家の実際の電力消費量を精度良く判定することができる。
【0040】
なお、第1の所定値は、最低要求電力量PLOWに所定値を加算または乗算して算出してもよい。また、予め設定されている第2の所定値および第3の所定値は、需要家がリモコン40を操作することで任意の値に変更できてもよく、需要家の要求電力量の推移から演算される値であってもよい。
【0041】
ここで、制御部30は、平均要求電力量PAVGと、あらかじめ設定された判定値とを比較して、燃料電池11の運転の可否を判定する第1判定制御Y1と、所定の条件を第1期間T1継続して満たした場合に、燃料電池11の運転を停止可能な運転停止制御Xとを関連付けて実行する。
【0042】
例えば、第1判定制御Y1を月末に実行すると仮定した場合に、その直前の期日に、運転停止制御Xが実行され、実行後に運転を再開したのちに、再度第1判定制御Y1により運転が停止するといったように、運転の停止と再開が繰り返され、効率よい運転ができないおそれがある。
【0043】
それゆえ、実施形態においては、燃料電池11の運転の可否を判定する第1判定制御Y1を運転停止制御Xと関連付けて実行することによって、運転効率の向上した燃料電池システムを提供できる。
【0044】
具体的には、制御部30は、所定の条件を第1期間T1継続して満たした場合に、燃料電池11の運転を停止する運転停止制御Xを実行する。続いて、燃料電池11の運転が停止している期間に、平均要求電力量PAVGと、あらかじめ設定された判定値とを比較して、燃料電池11の運転の可否を判定する第1判定制御Y1を実行する。
【0045】
運転判定部33は、平均要求電力量PAVGが予め設定された判定値PC未満である場合に、燃料電池11の運転を停止する。運転判定部33は、平均要求電力量PAVGが判定値PC以上である場合に、燃料電池11の運転を再開する。このようにすることで、燃料電池11の運転が、停止と再開を繰り返すことがなく、効率の良い運転が可能となる。
【0046】
運転判定部33は、第1判定制御Y1を行なった後の期日を検知する日付検知制御と、検知された期日に基づいて、燃料電池の運転の可否を判定する第2判定制御とを備えている。運転判定部33は、第1判定制御にて運転が不可(つまり、停止)と判断された場合でも算出された期日が第3期間T3に含まれていれば燃料電池11の運転を再開もしくは継続する。これによって、需要家における要求電力量が多くなると想定される第3期間T3において、燃料電池11の運転を停止させることによる需要家のメリット低下を抑制することができる。第3期間T3は、例えば夏季や冬季である。
【0047】
また、運転判定部33は、第3期間を、県、ガス会社などの設置に関する情報に基づいて設定してもよい。これによって、燃料電池システム100が設置される場所や地域に応じて、需要家における要求電力量が多くなると想定される期間を適宜設定できるため需要家のメリット低下を抑制することができる。
【0048】
燃料電池システム100に判定値PCは予め設定されているが、需要家はリモコン40を操作して、判定値PCを任意の値に変更することができる。判定値PCは、系統電源の電力料金、燃料電池11の運転の原料費となるガス料金、水道料金等に基づき、燃料電池11での単位電力当たりの料金と、系統電源の単位電力当たりの電力料金とを比較して設定される。なお、系統電源の単位電力当たりの電力料金は、各種優遇措置を受けている場合には、それを考慮して設定してもよい。
【0049】
また、需要家は、リモコン40を操作して、運転判定部33が第1判定制御Y1を実行しないように設定することができる。第1判定制御Y1を実行しない設定とは、平均要求電力量PAVGと判定値PCとの比較を行わないこと、平均要求電力量PAVGの算出を行わないことを含む。
【0050】
制御部30は、第1判定制御Y1を実行した後の第4期間T4が経過した後に、第1判定制御Y1の結果に基づいて、燃料電池11の運転または停止を実行してもよい。これにより、制御部30は、第1判定制御Y1を実行した後の第4期間T4内に、需要家による燃料電池11の運転を継続するまたは停止する旨の指示を受け付けることが可能になる。ひいては、需要家の利便性を向上させることができる。なお、実施形態において、第4期間T4は、運転停止制御Xが実行されて、燃料電池11が停止している期間とすることがよい。
【0051】
制御部30は、第1判定制御Y1の結果が、燃料電池11の運転を停止する判定結果である場合に、リモコン40に判定結果の表示を行ってもよい。燃料電池11の運転を第1判定制御Y1の結果に基づいて停止する前に、第1判定制御Y1の判定結果を需要家に報知することにより、需要家の利便性を向上させることができる。なお、燃料電池11の運転を行う場合にも、判定結果の表示を行ってもよい。
【0052】
また、制御部30は、需要家によるリモコン40での指示が受け付けられた場合には、第1判定制御Y1の判定結果に拘わらず、需要家による指示を優先して実行してもよい。これにより、需要家の利便性を向上させることができる。
【0053】
第1判定制御Y1の結果により燃料電池11の運転停止を実行している場合に、制御部30は、リモコン40での需要家による燃料電池11の運転開始指示が受け付けられた場合に、需要家による指示を優先して、燃料電池11の運転を開始してもよい。これにより、需要家の利便性を向上させることができる。
【0054】
以下、フローチャートを用いて、制御部30が実行する燃料電池11の制御について説明する。フローチャートでは、「ステップ」を「S」と略称するとともに、チャート内においては、判断制御における「正」を[Yes]で、「否を[No]で表している。
【0055】
図2は、実施形態における全体像を示すフローチャートであり、
図3は、
図2におけるS2を実行するまでのステップを示すものである。以後、
図2と
図3とを併用して説明する。
【0056】
制御部30は、まず、運転停止制御Xを実行する。運転停止制御Xにおいては、供給異常検知機能を有するガスメータ17が、原燃料ガスの供給元から供給され供給ライン16を流通する原燃料ガス流量から認識されるガス流通状態が、第1期間T1中に所定のリセット状態とならなかったことをガス供給異常として検知する。
【0057】
運転停止制御Xは、ガスメータ17を介して燃料電池11に供給される原燃料ガスに基づいて設定される所定の条件を第1期間T1にわたって継続して満たした場合に、燃料電池11の運転を停止する。ここで、所定の条件は、例えば、ガスメータ17によって原燃料ガスが検知されることであってもよい。また、第1判定期間H1は、第1期間T1の範囲内で設定されていてもよい。
【0058】
〔S1〕において、燃料電池11の運転が運転停止制御Xによって停止中かどうかを判定する。燃料電池11が停止中である場合、〔S2〕の判定に進み、燃料電池11の運転中である場合、フローチャートを終了する。続いて〔S1〕から〔S2〕に進むにあたっては
図3を用いて説明する。
【0059】
〔S11〕において、要求電力演算部32は、第1積算算出期間UAの内、第2要求電力量P2が第2の所定値未満である第2期間T2を算出し、〔S12〕において、第2期間T2の第2要求電力量P2の平均値を算出する。次に、〔S13〕において、第2期間T2の第2要求電力量P2の平均値に基づいて最低要求電力量PLOWを算出し、〔S14〕において、最低要求電力量PLOWに基づいて第1の所定値を算出する。
【0060】
〔S15〕において、第1積算算出期間UAの内、第1の所定値以上、かつ第3の所定値未満である第2積算算出期間UBを算出する。次に、〔S16〕において、第2積算算出期間UBにおける第2要求電力量P2の積算値である、要求電力量積算値P
Iを算出し、〔S17〕において、要求電力量積算値P
Iを第2積算算出期間UBで除算して平均要求電力量P
AVGを算出する。この値をもって、
図2の〔S2〕に進む。
【0061】
〔S2〕において、平均要求電力量PAVGと予め設定された判定値PCとを比較して、燃料電池11の運転の可否を判定する。平均要求電力量PAVGが判定値PC未満である場合、〔S3〕で燃料電池再起動判定を停止継続として、〔S4〕の判定に進む。
【0062】
〔S4〕において、需要家による燃料電池11の発電指示があるかどうかを判定する。需要家による燃料電池11の発電指示がある場合、〔S5〕で燃料電池再起動判定を運転再開として、〔S6〕の判定に進む。需要家による燃料電池11の発電指示がない場合、フローチャートを終了する。なお、需要家は、リモコン40に表示された第1判定制御Y1の結果を見て、燃料電池11が稼働中かどうかを認識し、リモコン40によって発電を指示することができる。
【0063】
また、〔S2〕において、平均要求電力量PAVGが判定値PC以上である場合、〔S5〕で燃料電池再起動判定を運転再開として、〔S6〕の判定に進む。
【0064】
〔S6〕において、所定のリセット条件を満足しているかどうかを判定する。リセット条件は、例えば、ガス不使用期間が12時間以上である等の条件とすることができる。リセット条件を満足している場合、〔S7〕で燃料電池の運転を再開し、フローチャートを終了する。リセット条件を満足していない場合、待機する。
【符号の説明】
【0065】
11 燃料電池
30 制御部
31 算出部
32 要求電力演算部
33 運転判定部
100 燃料電池システム