(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/16 20060101AFI20240214BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240214BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01Q9/16
H05K3/46 N
H05K3/46 G
H01Q1/40
(21)【出願番号】P 2019207085
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110881
【氏名又は名称】首藤 宏平
(72)【発明者】
【氏名】森 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】平野 聡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕之
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宗之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 康宏
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/095535(WO,A1)
【文献】特開2009-004896(JP,A)
【文献】特開2004-201278(JP,A)
【文献】特開2011-010017(JP,A)
【文献】特開2005-176366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/16
H05K 3/46
H01Q 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板に形成された第1平面電極と、
前記誘電体基板に形成され、前記誘電体基板の厚さ方向である第1の方向に前記第1平面電極と対向して配置される第2平面電極と、
前記誘電体基板に形成され、前記第1平面電極と前記第2平面電極との間を電気的に接続する1又は複数のビア導体と、
前記誘電体基板に形成され、前記第1の方向から見た平面視で前記第1平面電極及び前記第2平面電極と重ならない領域に配置されるグランド導体と、
を備え
、
前記第1平面電極と、前記第2平面電極と、前記1又は複数のビア導体とによりアンテナ素子が構成され、前記アンテナ素子の一端が給電線路を介して給電点と電気的に接続され
、
前記アンテナ素子は、前記誘電体基板に形成されて前記第1平面電極及び前記第2平面電極の間に配置される1又は複数の第3平面電極を更に含み、
前記1又は複数の第3平面電極のそれぞれは、前記1又は複数のビア導体を介して前記第1平面電極及び前記第2平面電極と電気的に接続され、
前記グランド導体は、少なくとも前記第1平面電極、前記第2平面電極、前記1又は複数の第3平面電極のそれぞれと同一の導体層に配置される、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記グランド導体は、前記第1平面電極、前記第2平面電極、前記1又は複数の第3平面電極、前記1又は複数のビア導体と対称的に配置される複数の平面電極及び1又は複数のビア導体からなる構成部分を有することを特徴とする請求項
1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記1又は複数のビア導体は、前記第1平面電極及び前記第2平面電極の長手方向に沿って所定の間隔で並んで配置される複数のビア導体であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナ素子は、水平偏波用素子及び垂直偏波用素子の一方又は両方として機能することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1平面電極及び前記第2平面電極が前記水平偏波用素子として機能することを特徴とする請求項
4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記1又は複数のビア導体が前記垂直偏波用素子として機能することを特徴とする請求項
4に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体基板を用いて構成したアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波信号を用いた無線通信においては、できるだけ広い周波数帯域の電磁波を送受信し得る広帯域のアンテナ装置が要望されている。周波数帯域を拡大するための手法としては、例えば、三角形の平面形状を有する金属電極を用いたボウタイアンテナが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。このようなボウタイアンテナは、三角形の頂点から給電することで複数の電流経路が形成されるので、全体的に合成された周波数帯域を広くすることができる。例えば、特許文献1の
図1に示される板状金属10に対して給電点5から給電した場合、板状金属10の三角形の頂点から末端の多数の位置に至るまでに複数の経路に分岐して電流が流れ、長さの異なる各径路で互いに共振周波数が異なるため、板状金属10を含むアンテナ装置全体が広帯域化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-050209号公報
【文献】特開2012-109652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、アンテナ装置の小型軽量化の観点から、誘電体基板を用いてアンテナ装置を構成し、誘電体基板に形成した導体パターンからなるアンテナ素子に給電するアンテナ構造が提案されている。このような誘電体基板を用いたアンテナ装置を広帯域化するために前述のボウタイアンテナの構造を実現する場合、アンテナ素子として所定の導体層に三角形の平面電極のパターンを構成することが想定されるが、周波数帯域を十分に広げるには平面電極に割り当てる面積を拡大する必要がある。そのため、アンテナ素子を配置する誘電体基板の平面サイズが大きくなり、アンテナ装置全体の小型化が困難になるという課題があった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、誘電体基板に平面電極及びビア導体を用いてアンテナ素子を構成し、小型化を保ちつつ広帯域化を実現可能なアンテナ装置を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のアンテナ装置は、誘電体基板(10)と、前記誘電体基板に形成された第1平面電極(20)と、前記誘電体基板に形成され、前記誘電体基板の厚さ方向である第1の方向(Z)に前記第1平面電極と対向して配置される第2平面電極(22)と、前記誘電体基板に形成され、前記第1平面電極と前記第2平面電極との間を電気的に接続する1又は複数のビア導体(30)と、前記誘電体基板に形成され、前記第1の方向から見た平面視で前記第1平面電極及び前記第2平面電極と重ならない領域に配置されるグランド導体(12)とを備え、前記第1平面電極と、前記第2平面電極と、前記1又は複数のビア導体とによりアンテナ素子(11)が構成され、前記アンテナ素子の一端が給電線路(23、32)を介して給電点(24)と電気的に接続されることを特徴としている。
【0007】
本発明のアンテナ装置によれば、誘電体基板にアンテナ素子とグランド導体を形成し、第1平面電極及び第2平面電極と1又は複数のビア導体とによりアンテナ素子を構成したので、給電点から給電線路を介してアンテナ素子の一端に給電したとき、平面電極の長さ方向とビア導体の高さ方向とを含む範囲内で多様な経路に分岐して電流が流れるので、長さの異なる各径路で共振周波数特性が合成されて周波数帯域を広げることができる。この場合、平面電極の面積を拡大する必要がないため誘電体基板を小型に構成することができる。
【0008】
本発明のアンテナ素子は、誘電体基板に形成されて第1平面電極及び第2平面電極の間に配置される1又は複数の第3平面電極を更に含めて構成し、1又は複数の第3平面電極のそれぞれを、1又は複数のビア導体を介して第1平面電極及び第2平面電極と電気的に接続してもよい。これにより、平面電極の個数を増やすことで更に電流の経路が増加するので、周波数帯域を一層広げることが可能となる。
【0009】
本発明のグランド導体は、少なくとも第1平面電極、第2平面電極、1又は複数の第3平面電極のそれぞれと同一の導体層に配置することができる。ここで、「同一の導体層」とは、誘電体基板における同一の積層位置に形成される導体層であって、信号やグランドなどの異なる導体パターンを含む。この場合、グランド導体は、第1平面電極、第2平面電極、1又は複数の第3平面電極、1又は複数のビア導体と対称的に配置される複数の平面電極及び1又は複数のビア導体からなる構成部分を有する構造としてもよい。グランド導体の面積を十分に確保することで、アンテナ装置のグランドを強化してアンテナ特性を向上させることができるとともに、グランド導体をアンテナ素子と対称的に配置することで、アンテナ利得向上の効果が期待できる。
【0010】
本発明において、1又は複数のビア導体として、第1平面電極及び第2平面電極の長手方向に沿って所定の間隔で並んで配置される複数のビア導体を用いてもよい。この場合、アンテナ装置の使用波長λ0に対し、複数のビア導体の全ての所定の間隔をλ0/4以下に設定すれば、複数のビア導体の全体が1つの導体壁として機能する。ただし、複数のビア導体のうち少なくとも2つのビア導体の所定の間隔をλ0/4以下に設定してもよい。
【0011】
本発明のアンテナ素子は、水平偏波用素子及び垂直偏波用素子の一方又は両方として機能させることができる。この場合において、主に第1平面電極及び第2平面電極が水平偏波用素子として機能し、主に1又は複数のビア導体が垂直偏波用素子として機能する。なお、アンテナ素子の寸法パラメータ(各平面電極の長さ又は各ビア導体の高さ)に依存して、アンテナ素子が水平偏波用素子と垂直偏波用素子のいずれとして主に動作するかが定まる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、誘電体基板を用いて、第1及び第2平面電極と1又は複数のビア導体とを含むアンテナ素子を構成したので、アンテナ素子に給電したとき誘電体基板の厚さ方向を含む範囲内で多様な電流経路が形成されることから広い周波数帯域を確保できるとともに、従来のボウタイアンテナとは異なり誘電体基板の平面方向を広げる必要がないためアンテナ装置を小型化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態のアンテナ装置をX方向から見た断面図(
図3(B)のA-A断面)である。
【
図2】
図1のアンテナ装置をY方向に沿って
図1の左側から見た断面図(
図3(B)のB-B断面)である。
【
図3】
図1のアンテナ装置に含まれる導体層40a、40b、40cに関し、それぞれZ方向の上方から見た平面図である。
【
図4】
図1のアンテナ装置に含まれる導体層40d、40e、40fに関し、それぞれZ方向の上方から見た平面図である。
【
図5】本実施形態のアンテナ装置のうち、アンテナ素子11の部分を拡大して示す斜視図である。
【
図6】アンテナ素子11を構成する平面電極20~22の個数を増やした場合の変形例である。
【
図7】アンテナ素子11を構成する平面電極20~22のサイズを変更した場合の変形例である。
【
図8】アンテナ素子11を主に垂直偏波用素子として動作させるように変更した場合の変形例である。
【
図9】本実施形態のアンテナ装置の作製方法の概要を説明する第1の図である。
【
図10】本実施形態のアンテナ装置の作製方法の概要を説明する第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に述べる実施形態は本発明の技術思想を適用した形態の一例であって、本発明が本実施形態の内容により限定されることはない。
【0015】
図1~
図5を用いて、本発明を適用した一実施例に係るアンテナ装置の構造について説明する。
図1~
図5では、説明の便宜のため、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向(本発明の第1の方向)をそれぞれ矢印にて示している。
図1は、本実施形態のアンテナ装置をX方向から見た断面図(
図3(B)のA-A断面)であり、
図2は、
図1のアンテナ装置をY方向に沿って
図1の左側から見た断面図(
図3(B)のB-B断面)であり、
図3及び
図4は、
図1のアンテナ装置に含まれる6層の導体層に関し、それぞれZ方向の上方から見た平面図である。
【0016】
本実施形態のアンテナ装置は、セラミック等の誘電体材料からなる多層構造の誘電体基板10を用いて構成される。誘電体基板10には、3層の平面電極20、21、22及び複数のビア導体30からなるアンテナ素子11と、多層構造のグランド導体12が設けられている。誘電体基板10には6層の導体層40a、40b、40c、40d、40e、40fが形成され、それぞれの導体層40a~40fの多様な導体パターンを用いて、平面電極20~22やグランド導体12が形成されている。また、それぞれの導体層40a~40fの間にてZ方向に延伸する複数のビア導体には、前述の複数のビア導体30に加えて、グランド導体12の一部である複数のビア導体31、34や、給電用のビア導体32などが形成されている。
【0017】
誘電体基板10は、Y方向に沿う長辺と、X方向に沿う短辺と、Z方向に沿う所定の厚さを有する矩形の板状部材であり、所定の誘電率を有する誘電体層と、導電材料からなる前述の導体層40a~40fとを交互に積層してなる。
図3及び
図4においては、Z方向の上方から順に、導体層40a、40b、40c、40d、40e、40fの平面構造が示されている。このうち、導体層40a、40fは、誘電体基板10のうちZ方向に対向する1対の表面に露出しており、導体層40b、40c、40d、40eは、誘電体基板10の内層を構成する。また、最下層の導体層40fには、アンテナ素子11と電気的に接続される給電端子24(本発明の給電点)が設けられている。
【0018】
アンテナ素子11は、導体層40bの平面電極20(本発明の第1平面電極)と、導体層40cの平面電極21(本発明の第3平面電極)と、導体層40dの平面電極22(本発明の第2平面電極)と、それぞれの平面電極20~22の間を接続する4つのビア導体30とにより構成される立体的構造を有する。3つの平面電極20、21、22は、いずれもY方向を長手方向とする矩形形状を有する。4つのビア導体30は、3つの平面電極20~22の矩形の範囲内で、Y方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。この所定の間隔は、アンテナ装置の使用波長λ0に対し、λ0/4以下に設定することが望ましい。
【0019】
図3(B)に示すように、上部の平面電極20の一端20aは給電用の導体パターン23に接続されている。この導体パターン23は、給電用のビア導体32の上端に接続され、更に
図4(C)に示すように、給電用のビア導体32の下端が、導体層40fの給電端子24に接続されている。すなわち、給電端子24から、ビア導体32及び導体パターン23を経由して、平面電極20の一端20aに給電される。よって、ビア導体32及び導体パターン23は、給電端子24とアンテナ素子11との間の給電線路を構成する。給電端子24は、グランド導体12に囲まれる領域内で、所定の長さだけX方向に延伸した形状を有する。
【0020】
ここで、
図5は、本実施形態のアンテナ装置のうち、アンテナ素子11の部分を拡大して示す斜視図である。
図5に示すように、3つの平面電極20~22は、互いに同一の形状及びサイズに形成され、Z方向から見た平面視で、互いに重なる領域に配置されている。1対の平面電極20、21はZ方向に距離H1で対向するとともに、同様に1対の平面電極21、22はZ方向に距離H2で対向している。なお、
図5の例では、H1=H2に設定されている。一方、4つのビア導体30は、Z方向から見た平面視で、互いに同一の径で、かつY方向に沿って前述の所定の間隔で並んで配置されている。なお、平面電極20、21の間を接続する上部のビア導体30と、平面電極21、22の間の接続する下部のビア導体30とは、互いに別々に作製されるが、ここではZ方向から見た平面視で同じ位置である限り1本のビア導体30とみなして説明する。
【0021】
図5において、平面電極20の一端20aに接続される給電用の導体パターン23はX方向に延伸する。そして、給電端子24から、ビア導体32及び導体パターン23を介して給電された所定の周波数の入力信号は、3つの平面電極20~22及び4つのビア導体30からなるアンテナ素子11を励振し、外部に電磁波が放射される。本実施形態では、各々の平面電極20~22のY方向の長さL(
図1)を使用周波数に共振し得る適切な値に設定することで、アンテナ素子11を主に水平偏波用素子として動作させることを想定する。この場合、
図5に示すように、それぞれの平面電極20、21、22の側面20b、21b、22bからX方向に向かって水平偏波の電磁波が放射される。このような放射方向により、アンテナ装置を携帯端末等の内部に載置する際の薄型化が容易となる。
【0022】
ここで、
図5の構造を有するアンテナ素子11において、入力信号が給電されたときに電流が流れる経路に着目する。まず、上部の平面電極20に関しては、一端20aからY方向に沿って経路長が最大で長さLとなる。一方、平面電極21、22の経路長は、ビア導体30の長さを考慮する必要がある。よって、直下の平面電極21に関しては、一端20aからY方向及びZ方向を含む経路長が最大でL+H1となり、下部の平面電極22に関しては、一端20aからY方向及びZ方向を含む経路長が最大でL+H1+H2となる。このように、アンテナ素子11は、入力信号に対して多様な異なる経路長が存在することになり、アンテナ特性の広帯域化に適した構造を有する。なお、
図5の構造は一例であり、本発明に係るアンテナ素子11を構成するに際して多様な構造を適用可能であるが、詳細については後述する。
【0023】
グランド導体12は、
図3及び
図4に示すように、6層の導体層40a~40fの全体にわたって配置され、各導体層40a~40fのグランド部分が複数のビア導体31、34を介して電気的に接続された多層構造を有する。このうち、誘電体基板10の一方の表面の導体層40aには、グランド導体12のみが配置されている。また、導体層40aのグランド導体12には5つのビア導体34が接続され、下方の導体層40b~40fのそれぞれの対応する箇所が各ビア導体34を介して電気的に接続される。6層の導体層40a~40fのグランド導体12の領域はZ方向に概ね対向して配置されるが、アンテナ素子11の配置に応じて、導体層40b、40cのグランド導体12の中央内側の部分を切り欠いた形状を有する。
【0024】
ここで、導体層40b、40c、40dに着目すると、この部分のグランド導体12は、アンテナ素子11と対称的に配置されている。具体的には、グランド導体12は、3層の平面電極20、21、22及び4個のビア導体30をそれぞれY方向に沿って
図3及び
図4の右側に移動させた3層の平面形状の導体パターン及び4個のビア導体31からなる構成部分を有する。このうち、導体層40dのグランド導体12は、X方向に延伸する導体パターンを介して、平面電極22に対称的な構成部分と接続されている。このようにグランド導体12をアンテナ素子11と対称的に配置することにより、アンテナ装置の利得をある程度増加させる効果がある。
【0025】
誘電体基板10に形成された全体のグランド導体12は、アンテナ装置の反射器として機能する。すなわち、アンテナ素子11の鏡像が全体のグランド導体12に形成されるため、アンテナ特性の向上のためグランド全体の面積を十分に確保する必要がある。ただし、Z方向から見た平面視で、グランド導体12がアンテナ素子11と重ならないように配置することが望ましい。また、導体層40b、40c、40dにおける平面電極20、21、22とグランド導体12との間のX方向の距離をある程度確保することが望ましい。なお、アンテナ装置に必要なアンテナ特性を得られる限り、
図3及び
図4の構造には限定されず、グランド導体12の配置、形状、面積を多様に変更することが可能である。
【0026】
アンテナ素子11の寸法条件は多様であるが、Z方向の寸法条件の具体例として、
図1において、誘電体基板10の最下部の導体層40fの位置を基準に、導体層40eまでが0.15mm、導体層40dまでが0.3mm、導体層40cまでが0.8mm、導体層40bまでが1.3mm、最上部の導体層40aまでが1.5mmを挙げることができる。この寸法条件では、アンテナ素子11の部分のZ方向の高さが1.0mm程度になる。仮に、従来の構造(例えば、特許文献1の
図1)のように平面内にアンテナ素子11を構成する場合、少なくともX方向に1mm以上の幅を要するが、本実施形態ではアンテナ素子11がZ方向に拡がるため、X方向の幅は小さくて済む。よって、本実施形態のアンテナ素子11の構造を採用すれば、誘電体基板10の平面サイズを縮小でき、アンテナ装置の小型化に適している。
【0027】
本実施形態において、アンテナ素子11の構造は、上記の説明には限定されることなく、多様な変更が可能である。以下、
図6~
図8を参照して、アンテナ素子11の変形例について説明する。
図6は、アンテナ素子11を構成する平面電極20~22の個数を増やした場合の変形例を示している。すなわち、
図6においては、上方から順に、平面電極20(本発明の第1平面電極)、平面電極21、22(ともに本発明の第3平面電極)、平面電極25(本発明の第2平面電極)が配置されており、4つのビア導体30のそれぞれの下端が平面電極25に接続されている。このように、アンテナ素子11の平面電極の個数は必要に応じて増やすことができる。
【0028】
なお、
図6の変形例では4つのビア導体30が設けられているが、平面電極の個数に加えて、ビア導体30の個数を増やしてもよい。例えば、平面電極20~23、25の長さL(
図1)を拡張する場合には、Y方向に沿って5つ以上のビア導体30を並べる配置としてもよい。アンテナ素子11を構成するには、少なくとも2つの平面電極(第1平面電極と第2平面電極)と、1又は複数のビア導体30を設ければよく、アンテナ装置の構造やアンテナ特性に応じて適切に選択可能である。なお、本発明のアンテナ素子11の最小限の構成は2つの平面電極及び1つのビア導体となる。ただし、アンテナ素子11の電流経路を多くして広帯域化を図るには、平面電極の個数及びビア導体の個数をある程度増加させることが望ましい。
【0029】
次に
図7は、アンテナ素子11を構成する平面電極20~22のサイズを変更した場合の変形例を示している。すなわち、
図7の変形例においては、平面電極20、21については
図5と同じサイズであるが、下部の平面電極22は
図5と比べてY方向の長さが概ね半分程度になっている。よって、下部の平面電極22に接続されるのは2本のビア導体30のみとなり、他の2本のビア導体30はZ方向の高さが短縮される。このような構造を有するアンテナ素子11についても、
図4とは経路長の配分が異なるものの、多様な経路が存在することによるアンテナ特性の広帯域化の効果は得ることができる。
図7の構造を広く捉えれば、アンテナ素子11を構成する平面電極の個数に関わらず、部分的にZ方向に重なる配置である限り、任意の平面電極のみY方向の長さを変更する(短く又は長くする)場合であってもアンテナ特性の広帯域化が可能である。
【0030】
次に
図8は、アンテナ素子11を主に垂直偏波用素子として動作させるように変更した場合の変形例を示している。すなわち、
図8の変形例においては、
図5の導体パターン23を上部の平面電極20と分離し、平面電極20の上部に配置される導体パターン26を設け、導体パターン26の一端26aからビア導体30aを介して平面電極20と接続した構造を有する。これにより、導体パターン26の一端26aからZ方向に延伸するビア導体30a、30の高さを増加させて使用周波数に共振し得る適切な値に設定することで、アンテナ素子11を垂直偏波用素子として動作させることができる。なお、平面電極20、21、22、25の長さLは、
図5と比べて若干短縮されている。
【0031】
本実施形態において、アンテナ素子11は、上述したように水平偏波用素子及び垂直偏波用素子のいずれか一方として動作させるだけではなく、寸法パラメータを適切に設定することで、水平偏波用素子及び垂直偏波用素子の両方として動作させることができる。例えば、
図5において、アンテナ素子11の平面電極20、21、22の長さL及び4つのビア導体30の高さH1+H2をともに使用周波数に共振し得る値に設定すれば、主に平面電極20、21、22が水平偏波用素子として機能し、主にビア導体30が垂直偏波用素子として機能する。よって、アンテナ装置の用途に応じて、アンテナ素子11を水平偏波用素子と垂直偏波用素子の一方又は両方として機能させるように所望の寸法パラメータを決定することが望ましい。
【0032】
次に、本実施形態のアンテナ装置の作製方法の概要について、
図9及び
図10を参照しつつ説明する。まず、誘電体基板10を構成する複数の誘電体層として、例えば、ドクターブレード法により形成した低温焼成用の複数のセラミックグリーンシート50を用意する。そして、
図9(A)に示すように、それぞれのセラミックグリーンシート50の所定位置に打ち抜き加工を施して、複数のビアホール51を開口する。なお、各セラミックグリーンシート50における各ビアホール51の位置及び個数は、
図1及び
図2の複数のビア導体30、31、32、34の配置に対応して設定される。
【0033】
次に、
図9(B)に示すように、それぞれのセラミックグリーンシート50に開口された複数のビアホール51のそれぞれに、Cuを含む導電性ペーストをスクリーン印刷により充填することにより、複数のビア導体30、31等を形成する。続いて、
図10(A)に示すように、それぞれのセラミックグリーンシート50の表面又は裏面に、Cuを含む導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布することにより、導体層40a~40fのそれぞれの導体パターンを形成する。このとき形成される導体パターンと前述のビア導体30、31等とにより、アンテナ装置におけるアンテナ素子11とグランド導体13とを含む基本構造が画定される。
【0034】
そして、
図10(B)に示すように、複数のセラミックグリーンシート50を順に積層した上で、加熱加圧することにより積層体を形成する。その後、得られた積層体を脱脂、焼成することにより、本実施形態で説明したように誘電体基板10に構成されたアンテナ装置が完成する。
【0035】
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。すなわち、本実施形態の
図1~
図5に示した構造例は1例であって、本発明の作用効果を得られる限り、他の構造や材料を用いた多様なアンテナ装置に対して広く本発明を適用することができる。さらに、その他の点についても上記実施形態により本発明の内容が限定されるものではなく、本発明の作用効果を得られる限り、上記実施形態に開示した内容には限定されることなく適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…誘電体基板
11…アンテナ素子
12…グランド導体
20、21、22、25…平面電極
23…導体パターン
24…給電端子
30、31、32、34…ビア導体
40a、40b、40c、40d、40e、40f…導体層