(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】チューニング自由度改善型ブッシュおよび懸架システム
(51)【国際特許分類】
F16F 1/387 20060101AFI20240214BHJP
B60G 7/02 20060101ALI20240214BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F16F1/387
B60G7/02
F16F15/08 K
(21)【出願番号】P 2019215304
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0087821
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジェ フン
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071664(JP,A)
【文献】特表2013-531581(JP,A)
【文献】特開2003-106359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/387
B60G 7/02
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内パイプを囲み、エンジニアリングプラスチックからなり、長さ方向の中間区間に中央突出部を形成した第2内パイプと、
内部の一側に第3突出部および内部の他側に第4突出部が前記中央突出部を外れた位置に形成された外パイプと、
前記外パイプと前記第2内パイプとの間に位置するラバー部とが含まれ
、
前記第2内パイプは、前記第3突出部の位置に第1突出部および前記第4突出部の位置に第2突出部を形成することを特徴とするブッシュ。
【請求項2】
前記第1突出部、前記第2突出部および前記中央突出部は、車両前後方向に構成されることを特徴とする請求項
1に記載のブッシュ。
【請求項3】
前記第2内パイプは、プラスチックとゴムまたはウレタンを用いた弾性体の複合物であることを特徴とする請求項1に記載のブッシュ。
【請求項4】
前記第2内パイプの前記中央突出部が有する中央突出部の傾斜と、前記中央突出部の傾斜に対向する前記第3突出部および前記第4突出部の傾斜とは、同一方向であることを特徴とする請求項1に記載のブッシュ。
【請求項5】
前記中央突出部は、前記第2内パイプの
長手方向に沿う幅を突出末端の幅より大きく形成することを特徴とする請求項1に記載のブッシュ。
【請求項6】
前記ラバー部は、前記第1突出部と前記第3突出部との間に第1ボイドと、前記第2突出部と前記第4突出部との間に第2ボイドとを含むことを特徴とする請求項
1に記載のブッシュ。
【請求項7】
前記第1ボイドと前記第2ボイドは、
車両前後方向に構成されることを特徴とする請求項
6に記載のブッシュ。
【請求項8】
前記車両上下方向の上部/下部
の第2内パイプとラバー部との間に切開部が形成されることを特徴とする請求項
7に記載のブッシュ。
【請求項9】
前記第3突出部および前記第4突出部は、車両前後方向に構成されることを特徴とする請求項1に記載のブッシュ。
【請求項10】
前記外パイプは、中央陥没部が前記第2内パイプの前記中央突出部に位置し、前記中央陥没部が有する
第3突出部側の傾斜面の傾斜と
前記第4突出部に位置した前記第2内パイプの第2突出部の前記中央陥没部側の傾斜面の傾斜とは同一方向であり、
前記中央陥没部が有する第4突出部側の傾斜面の傾斜と前記第3突出部に位置した前記第2内パイプの第1突出部の前記中央陥没部側の傾斜面の傾斜とは、同一方向であり、前記中央陥没部は、前記外パイプの
長手方向に沿う幅を突出末端の幅より大きく形成することを特徴とする請求項1に記載のブッシュ。
【請求項11】
前記第2内パイプは、第1内パイプと結合構造を形成し、前記結合構造は、前記第1内パイプの載置溝と、前記第2内パイプの載置突起とからなることを特徴とする請求項1に記載のブッシュ。
【請求項12】
前記第2内パイプは、前記第1内パイプと密着構造を形成し、前記密着構造は、前記第1内パイプの外径にセレーション加工された接触突起からなることを特徴とする請求項1に記載のブッシュ。
【請求項13】
前記第2内パイプは、第1内パイプを囲みながら一体化され、前記第1内パイプは、アルミニウム材質から構成されることを特徴とする請求項1に記載のブッシュ。
【請求項14】
長さ方向の中間区間に中央突出部、前記中央突出部の両側に第1突出部および第2突出部を備える第2内パイプを形成するエンジニアリングプラスチックのプラスチック弾性係数と
前記第2内パイプと外パイプとの間に位置するラバー部を形成するゴムのラバー弾性係数とが組み合わされたブッシュ弾性係数を有し、前記プラスチック弾性係数による剛性チューニングと前記ラバー弾性係数による弾性チューニングとでチューニング自由度を有するブッシュと、
前記ブッシュを介在させて形成された車体締結部の反対側で車輪と締結されるトレーリングアームとが含まれることを特徴とする懸架システム。
【請求項15】
前記トレーリングアームは、トーションビームの左右両端部位に結合されてCTBA(Coupled Torsion Beam Axle)から構成されることを特徴とする請求項
14に記載の懸架システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューニング自由度改善型ブッシュおよび懸架システムに係り、より詳しくは、弾性と剛性とを組み合わせたチューニング可能なブッシュを適用したチューニング自由度改善型ブッシュおよび懸架システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ブッシュは、連結部品の相対的移動のためにゴムが適用された弾性体を含む。
特に、車両は、R&H(Riding and Handling)およびNVH(Noise、Vibration、Harshness)とともに操舵(Steering)と耐久(Durability)などを必要とすることにより、ゴム特性を活用したチューニング(tuning)可能なブッシュに対する必要性が非常に大きい。
一例として、前記ブッシュは、クロスメンバー(またはサブフレーム)やステップバー(またはスタビライザバー)やサスペンションアーム(またはロアアーム、アッパアーム)の例のように、相対的移動が可能でなければならない車両の懸架システムに適用され、さらに、ブッシュ自体のチューニング自由度を活用することにより、R&H/NVH(Noise、Vibration、Harshness)および操舵(Steering)と耐久(Durability)に特徴付けられる車両の全体性能を向上させる。
【0003】
しかし、前記ブッシュは、一種のゴム特性を利用した弾性チューニング方式であり、前記弾性チューニング方式は、チューニング自由度に劣るゴム特性に依存して車両のR&H/NVH/操舵/耐久に対する目標性能を合わせなければならないことから、開発完了まで目標性能の100%達成が非常に難しいという現実的な限界を有している。
特に、前記ブッシュが左右輪非独立式懸架システムに特徴付けられるCTBA(Coupled Torsion Beam Axle)(例、後輪CTBA)に適用されると、前記ブッシュには、トーイン(Toe In)誘導(すなわち、トーアウト(Toe Out)の最小化)による安定性確保のために、車両旋回時に発生する横力に対するティルティング(例、マウンティング部位に対する約24゜のティルティング)が付与される。
【0004】
さらに、前記ブッシュのティルティングの付与は、CTBAで初期(-)横加速度に対する応答遅延をもたらす一因として提供されるが、この理由は、車体のヨー(YAW)挙動による後輪サスペンションのオーバーステア傾向で相対剛体運動(RELATIVE RIGID MOTION)が発生することによる。ここで、「(-)横加速度」の「(-)」は、車両の左旋回による加速度センサの検出符号、「(+)」は、車両の右旋回による加速度センサの検出符号の例である。
このように、前記ブッシュは、懸架システムそれぞれの特性に合わせたチューニングの自由度を必要としているが、チューニングの自由度を低下させるゴム特性によって限界に直面している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の点に鑑みてなされた本発明は、ブッシュの剛性と形状をゴム特性と組み合わせることにより、弾性チューニングに限られていたチューニング自由度を剛性チューニングに高め、特に、弾性/剛性チューニングを利用したチューニング自由度の向上によって軸方向の剛性および回転方向の剛性増大と前後方向および上下方向の剛性低下を容易にすることにより、車両が懸架システムで要求するR&H/NVH/操舵/耐久の目標性能のための開発ロードの短縮とともに、最適化も満足可能なチューニング自由度改善型ブッシュおよび懸架システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1内パイプを囲み、エンジニアリングプラスチックからなり、長さの中間区間に中央突出部を形成した第2内パイプと、内部の一側に第3突出部および内部の他側に第4突出部が前記中央突出部を外れた位置に形成された外パイプと、前記外パイプと前記第2内パイプとの間に位置するラバー部とが含まれ、
前記第2内パイプは、前記第3突出部の位置に第1突出部および前記第4突出部の位置に第2突出部を形成することを特徴とする。
【0009】
前記第1突出部、前記第2突出部および前記中央突出部は、車両前後方向に構成されることを特徴とする。
【0010】
前記第2内パイプは、プラスチックとゴムまたはウレタンを用いた弾性体の複合物であることを特徴とする。
【0011】
前記第2内パイプの前記中央突出部が有する中央突出部の傾斜と、前記中央突出部の傾斜に対向する前記第3突出部および前記第4突出部の傾斜とは、同一方向であり、前記中央突出部は、前記第2内パイプのパイプ接触部の長手方向に沿う幅を突出末端の幅より大きく形成することを特徴とする。
【0012】
前記第2内パイプと前記外パイプとの間に備えられた前記ラバー部は、前記第1突出部と前記第3突出部との間に第1ボイドと、前記第2突出部と前記第4突出部との間に第2ボイドとを含むことを特徴とする。
【0013】
前記第1ボイドと前記第2ボイドは、車両前後方向に構成され、前記車両上下方向の上部/下部の第2内パイプとラバー部との間に切開部が形成されることを特徴とする。
【0014】
前記外パイプの前記第3突出部および前記第4突出部は、車両前後方向に構成されることを特徴とする。
【0015】
前記外パイプは、中央陥没部が前記第2内パイプの前記中央突出部に位置し、前記中央陥没部が有する第3突出部側の傾斜面の傾斜と、前記第4突出部に位置した前記第2内パイプの第2突出部の前記中央陥没部側の傾斜面の傾斜とは同一方向であり、前記中央陥没部が有する第4突出部側の傾斜面の傾斜と前記第3突出部に位置した前記第2内パイプの第1突出部の前記中央陥没部側の傾斜面の傾斜とは、同一方向であり、前記中央陥没部は、前記外パイプの長手方向に沿う幅を突出末端の幅より大きく形成することを特徴とする。
【0016】
前記第2内パイプは、第1内パイプと結合構造および密着構造を形成し、前記結合構造は、前記第1内パイプの載置溝と、前記第2内パイプの載置突起とからなり、前記密着構造は、前記第1内パイプの外径にセレーション加工された接触突起からなることを特徴とする。
【0017】
前記第2内パイプは、第1内パイプを囲みながら一体化され、前記第1内パイプは、アルミニウム材質から構成されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、長さ方向の中間区間に中央突出部、前記中央突出部の両側に第1突出部および第2突出部を備える第2内パイプを形成するエンジニアリングプラスチックのプラスチック弾性係数と前記第2内パイプと外パイプとの間に位置するラバー部を形成するゴムのラバー弾性係数とが組み合わされたブッシュ弾性係数を有し、前記プラスチック弾性係数による剛性チューニングと前記ラバー弾性係数による弾性チューニングとでチューニング自由度を有するブッシュと、前記ブッシュを介在させて形成された車体締結部の反対側で車輪と締結されるトレーリングアームとが含まれることを特徴とする。
【0019】
前記トレーリングアームは、トーションビームの左右両端部位に結合されてCTBAから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の懸架システムに適用されたブッシュは、チューニング自由度を高めることにより、下記の作用および効果を有する。
第一、ブッシュに対するチューニング自由度を、ゴムの弾性チューニングに加えて金属の剛性チューニングに大きく高めることにより、車両が懸架システムを介して要求するR&H/NVH/操舵/耐久の目標性能が満足可能であり、特に、初期(-)横加速度に対する応答遅延を解消しなければならないCTBAに適した多重剛性および形状最適化のブッシュの開発が可能である。
第二、R&H/NVH/操舵/耐久の目標性能満足のために必要なブッシュの開発ロード(Load)の短縮が可能である。
第三、多様な剛性付与が可能なエンジニアリングプラスチックを用いることにより、ブッシュの剛性チューニングの調節が容易である。
第四、既存のブッシュの内/外パイプをなす鉄あるいはアルミニウムにエンジニアリングプラスチックを一体射出する工法を適用することにより製造が容易である。
第五、セレーションまたはナーリングや陰刻/陽刻溝を用いることにより、エンジニアリングプラスチックの結合力および離脱力の調節が容易である。
第六、内鉄または外鉄と一体射出されるエンジニアリングプラスチックに凸/凹形状のエンボシング形成を容易にすることにより、ブッシュの圧縮に必要な剪断力およびブッシュの回転に必要な圧縮力の発生が容易である。
第七、R&H/NVH/操舵/耐久の目標性能の満足で種々の車種に対する適合性を有しながらも、エンジニアリングプラスチックの利点によるブッシュのコスト低減および重量低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るチューニング自由度改善型ブッシュの構成図である。
【
図2】本発明に係るチューニング自由度改善型ブッシュが適用された懸架システムが受ける力学関係図である。
【
図3】本発明に係るチューニング自由度改善型ブッシュを構成する内側ユニットの斜視図である。
【
図4】本発明に係るチューニング自由度改善型ブッシュのブッシュ多重剛性構造を例示した内/外側ユニットの断面図である。
【
図5】本発明に係る内/外側ユニットのブッシュ多重剛性構造によりブッシュ圧縮時のラバー剪断力およびブッシュ回転時のラバー圧縮力がそれぞれ発生する例である。
【
図6】本発明に係る内側ユニットのブッシュ回転防止構造の例である。
【
図7】本発明に係るブッシュ回転防止構造の作動状態である。
【
図8】本発明に係る内側ユニットのブッシュ接着強化構造の例である。
【
図9】本発明に係るチューニング自由度改善型ブッシュを適用した懸架システムが車両に適用された例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
本発明のブッシュを構成する第1内パイプ、第2内パイプ、外パイプおよびラバー部は、次の特徴を有する。
第2内パイプは、ウェーブ形成区間を備え、ラバー部は、マス重畳区間を備え、マス重畳区間がウェーブ形成区間を囲む。ウェーブ形成区間は、第2内パイプの中間区間をなすウェーブボディで形成され、ウェーブボディは、第1突出部と第2突出部との間に位置して、第1突出部および第2突出部のサイズより大きく形成された中央突出部からなることにより、互いに対する大きさの差がウェーブ模様を形成する。
中央突出部と第1突出部および第2突出部のそれぞれには、平らな密着面が形成される。
第2内パイプには、一方の端部位を形成する前方エンドボディと、他方の端部位を形成する後方エンドボディとが備えられ、前方エンドボディと後方エンドボディのそれぞれは、第1内パイプを囲む円形区間からなる。
【0023】
第2内パイプと第1内パイプには、第2内パイプの載置突起を第1内パイプの載置溝に結合してなるブッシュ回転防止構造と、第1内パイプの外周面に形成された接触突起からなるブッシュ接着強化構造とが備えられる。
マス重畳区間は、ラバー部の中間区間をなす変形ボディで形成され、変形ボディは、前方連結マスと後方連結マスとの間に位置して、第2内パイプに垂直なラバーの高さ対比狭い幅のラバーの厚さで第2内パイプから加えられる圧縮力と回転力に対する変形を誘導するメインマスからなる。
ラバー部には、一方の端部位を形成する前方エンドマスと、他方の端部位を形成する後方エンドマスとが備えられ、外パイプには、一方の端部位を形成するエンド突出フランジが前方エンドマスに対する係止固定力を形成し、他方の端部位を形成するエンド折曲フランジが後方エンドマスに対する接着固定力を形成する。
ラバー部と外パイプのそれぞれは、互いに対する密着力が強化されるように、ラバーマスの内径構造を形成する。ラバーマスの内径構造は、ラバー部の中間区間の形状をなすマス重畳区間に対して、外パイプの内径を同一の形状とする。
【0024】
図1に示す通り、ブッシュ1は、内側ユニット(Inside Unit)10と、外側ユニット(Outside Unit)40とからなる。
一例として、内側ユニット10は、相対部品と締結されるように、アルミニウムからなる所定長さの中空パイプタイプの第1内パイプ20と、第1内パイプ20を囲んで一体化されるように、射出成形(Injection Molding)または押出+射出成形(Extrusion Molding+Injection Molding)された第2内パイプ30とから構成される。
特に、第2内パイプ30は、エンジニアリングプラスチックからなり、エンジニアリングプラスチックは、PA(Polyamide)+GF(Glass Fiber)のPA66+GFからなるプラスチック原材料と約1~50%(重量パーセント)のゴム(rubber)で製造するか、またはプラスチックとゴムやウレタンの弾性体で製造することにより、エンジニアリングプラスチック固有の剛性をチューニングするとともに、第1内パイプ20に対する第2内パイプ30の接着剛性を調節する。
一例として、外側ユニット40は、ブッシュ1の外観を形成するように、プラスチックからなる所定長さの中空パイプタイプの外パイプ50と、外パイプ50と第2内パイプ30とが形成する空間を満たして互いに一体化されるように、射出成形(Injection Molding)されるラバー部60とから構成される。特に、外パイプ50は、プラスチックからなり、ラバー部60は、加硫ゴムからなる。
【0025】
これより、ブッシュ1は、エンジニアリングプラスチックの物性とゴムの物性とが組み合わされたブッシュ弾性係数を形成する。
ブッシュ弾性係数:Kt=(K1×K2)/(K2+K1)
ここで、「Kt」は、ブッシュ1のブッシュ弾性係数、「K1」は、ラバー部60のラバー弾性係数、「K2」は、第2内パイプ30のプラスチック弾性係数である。
そのため、ブッシュ1は、ラバー弾性係数K1を弾性チューニングとしながら、同時にプラスチック弾性係数K2を剛性チューニングとしたチューニング自由度改善型ブッシュに特徴付けられる。
また、ブッシュ1は、車両上下方向(すなわち、路面に対する上下方向)に第2内パイプ30とラバー部60との間にブッシュ本体の上下部それぞれに切開部1-1を形成し、第2内パイプ30の左右両部位で外周面に中央突出部32の左右両区間に第1、第2突出部33-1、33-2を備え、外パイプ50の左右両部位で内周面に中央陥没部55の左右両区間に第3、第4突出部53-1、53-2を備え、ラバー部60の左右両部位で側面に第1、第2ボイド部66-1、66-2を穿孔する。
【0026】
切開部1-1は、外パイプ50の回転発生を誘導して、ブッシュ1を介して車両のトーアウト(Toe Out)が効果的に縮小するように作用する。
第2内パイプ30の第1突出部33-1と外パイプ50の第3突出部53-1は、車両前後方向に位置した中央突出部32の左右両区間にブッシュ1の左側端部位で車両前後方向に位置し、第2内パイプ30の第2突出部33-2と外パイプ50の第4突出部53-2は、ブッシュ1の右側端部位で車両前後方向に位置する。この場合、左右側方向および車両前後方向は、
図3のXYZ座標系で第2内パイプ30の長さ方向を表示したX軸方向で定義される。
そのため、第1、第2突出部33-1、31-2および第3、第4突出部53-1、53-2は、ポットホールやスピードバンプなどを通る車両でブッシュ1に発生しうる強い前後力を防ぐストッピング効果(Stopping Effect)によって第1、第2内パイプ20、30に対する構造破損を防止するように作用する。
【0027】
ラバー部60の第1ボイド部66-1は、ブッシュ1の左側端部位で車両前後方向に位置し、ラバー部60の第2ボイド部66-2は、ブッシュ1の右側端部位に位置することにより、ブッシュ1の圧縮時、ラバー部60にゴム耐久の利点をもたせる剪断発生誘導でメインマス62のゴム耐久性の増大作用をしながらも、ブッシュ1の回転時、ゴム圧縮発生誘導による車両のトーアウト(Toe Out)制御で車両のハンドリングを改善するように作用する。
そのため、第1、第2ボイド部66-1、66-2は、ブッシュ1の力伝達経路がブッシュ1の全体に形成されることを排除して、第1、第2内パイプ20、30と外パイプ50との間でまともに形成されるように作用することにより、第2内パイプ30と外パイプ50に対してラバー部60のメインマス62が傾斜面と垂直方向に近く圧縮されるように誘導して、ブッシュ1の最適性能の実現を可能にする。
一方、
図2は、ブッシュ1が適用された懸架システム100を例示する。この場合、ブッシュ1は、第1内パイプ20と外パイプ50が形成する空間を第2内パイプ30とラバー部60とで満たして、ラバー部60のラバー弾性係数K1と第2内パイプ30のプラスチック弾性係数K2とでブッシュ弾性係数Ktが形成されることにより、
図1のチューニング自由度改善型ブッシュ1と同一である。
【0028】
懸架システム100は、V断面またはU断面または閉断面構造のトーションビーム110の左右両エンド部位と左右の車輪130にそれぞれ結合されたトレーリングアーム120とから構成されたCTBA(Coupled Torsion Beam Axle)であって、左右輪非独立式後輪懸架システムに特徴付けられる。
図示のように、旋回による横力によって、車輪130は、ブッシュ1と車輪130との締結部を結ぶトレーリングアーム120のアーム長さMLによってトーアウト傾向を示すトーアウト発生回転力とともに、左右のブッシュ1に形成された回転モーメント中心MRの回転モーメントによってトレーリングアーム120の動きと連携されたブッシュ挙動方向にトーイン誘導モーメントを発生させる。
このようなモーメント力学関係において、ブッシュ1は、弾性チューニングと剛性チューニングとを組み合わせたブッシュ弾性係数Ktを有することにより、軸方向の剛性および回転方向の剛性増大と前後方向および上下方向の剛性低下をブッシュ特性として発現する。すると、ブッシュ特性は、懸架システム100のトーイン誘導モーメント傾向を強化させることにより、トーイン(Tow In)で車輪130を安定させながら、同時にR&H/NVH/操舵/耐久に対する性能も向上させる。
特に、ブッシュ1のトーイン安定性強化およびR&H/NVH/操舵/耐久に対する懸架システム100の性能の満足は、第2内パイプ30の形状を基本構造として、ブッシュ形状の最適化構造とブッシュチューニングの最適化構造で実現される。
【0029】
図3~
図8は、ブッシュ1の特性を具体的に実現するための例を示す。
図3~
図5は、ブッシュ1は、中央突出部32を含んで第1内パイプ20と一体化された第2内パイプ30と、内部の一側に第3突出部53-1および内部の他側に第4突出部53-2を含む外パイプ50とから構成され、特に、第2内パイプ30の形状とこれを連携した外パイプ50とラバー部60とから実現されるブッシュ多重剛性構造を例示する。
図3~
図5に示す通り、第1内パイプ20は、アルミニウム材質から構成されて、載置溝27の突起結合構造および接触突起29のセレーション構造を含む。第2内パイプ30は、車両前後方向に中央突出部32を形成し、中央突出部32の両側面の一側に第1突出部33-1および他側に第2突出部33-2を車両前後方向に構成し、載置突起37の溝結合構造を含む。外パイプ50は、車両前後方向に中央陥没部55を形成し、中央陥没部55の内部の一側に第3突出部53-1および内部の他側に第4突出部53-2を車両前後方向に構成する。ラバー部60は、第1突出部33-1および第3突出部53-1の間に第1ボイド部66-1と、第2突出部33-2および第4突出部53-2の間に第2ボイド部66-2とを車両前後方向に構成する。
【0030】
特に、第2内パイプ30は、プラスチックと弾性体(ゴム/ウレタン)の複合物であり、中央突出部32の傾斜構造が有する傾斜面が、外パイプ50の第3突出部53-1および第4突出部53-2の傾斜構造が有する傾斜面と同一方向であり、中央突出部32のパイプ接触部の幅L
aは、突出末端の幅L
bより大きく形成する。
また、外パイプ50は、中央陥没部55の傾斜構造が有する傾斜面は、第2内パイプ30の第1突出部33-1および第2突出部33-2の傾斜構造が有する傾斜面と同一方向であり、第3突出部53-1および第4突出部53-2のパイプ接触部の幅L
aは、突出末端の幅L
aより大きく形成する。
そして、ラバー部60は、切開部1-1を車両上下方向の上部/下部に構成する。
図3に示す通り、第2内パイプ30は、第1内パイプ20の軸ホール22が形成された中空ボディ21を囲んで第1内パイプ20と一体化された第2内パイプ30のウェーブボディ(Wave Body)31と、前後方エンドボディ35-1、35-2とからなる。そのため、第2内パイプ30の形状とレイアウトは、ウェーブボディ31と前後方エンドボディ35-1、35-2とにより具体化される。
【0031】
具体的には、第2内パイプ30の形状を考慮すれば、ウェーブボディ31は、中央突出部32と第1、第2突出部33-1、33-2および狭小連結ボディ34とに区分されて、前後方の軸方向(XYZ座標のX(すなわち、車両前後方向))にウェーブ模様を形成するのに対し、前後方エンドボディ35-1、35-2は、第1、第2突出部33-1、33-2においてのっぺりした模様を形成する。
特に、中央突出部32と第1、第2突出部33-1、33-2、狭小連結ボディ34および前後方エンドボディ35-1、35-2は、第1内パイプ20に対して射出成形または押出+射出成形されて、中空ボディ21の外径を囲むように形成される。
一例として、中央突出部32は、第2内パイプ30の中間区間を形成し、第1突出部33-1と前方エンドボディ35-1は、中央突出部32の前方部位でつながって第2内パイプ30の前方区間を形成し、第2突出部33-2と後方エンドボディ35-2は、中央突出部32の後方部位でつながって第2内パイプ30の後方区間を形成する。
特に、中央突出部32の幅の大きさは、第1突出部33-1と第2突出部33-2の幅の大きさより大きく形成され、第1突出部33-1と第2突出部33-2の幅の大きさは、同一に形成され、中央突出部32と第1突出部33-1および第2突出部33-2と後方エンドボディ35-2のそれぞれは、狭小連結ボディ34につながる。
【0032】
そのため、中央突出部32と狭小連結ボディ34につながった第1突出部33-1および中央突出部32と狭小連結ボディ34につながった第2突出部33-2は、第2内パイプ30の軸方向(XYZ座標系のX)にウェーブ形状の断面(
図4参照)を形成する。この場合、ウェーブ形状は、中央突出部32の頂点を最大高さとして、狭小連結ボディ34につながった第1突出部33-1と第2突出部33-2の頂点を最小高さとする。
前方エンドボディ35-1は、第1突出部33-1でつながって第1内パイプ20と一体化されるように中空ボディ21の前方端区間を囲み、後方エンドボディ35-2は、第2突出部33-2でつながって第1内パイプ20と一体化されるように中空ボディ21の後方端区間を囲む。この場合、前方エンドボディ35-1と後方エンドボディ35-2のそれぞれは、第1内パイプ20の中空ボディ21を囲む円形区間に形成される。
特に、中央突出部32と第1突出部33-1および第2突出部33-2は、車両前後方向に構成され、中央突出部32の傾斜構造が有する傾斜面が、外パイプ50の第3突出部53-1および第4突出部53-2の傾斜構造が有する傾斜面と同一方向であり、中央突出部32のパイプ接触部の幅L
aは、突出末端の幅L
bより大きく形成する。
【0033】
さらに、前方エンドボディ35-1には、自体剛性およびラバー部60との接着力強化のためにリブ35aが形成され、リブ35aは、前方エンドボディ35-1で互いに対向する位置を有する2つのリブで一対を形成する。
具体的には、第2内パイプ30のレイアウトを考慮すれば、第2内パイプ30の全体長さであるプラスチックマス長さLtotalを1とする時、ウェーブボディ31のウェーブ長さLbodyは約0.7~0.8に設定されることにより、第2内パイプ30がラバー部60に囲まれるマス重畳区間を最大限に広く形成する。
特に、ウェーブボディ31のウェーブ長さLbodyは、中央突出部32のパイプ接触部の幅Laと、第1突出部33-1の突出末端の幅Lbおよび第2突出部33-2の突出末端の幅Lbとに区分され、ウェーブ長さLbodyを100%とする時、パイプ接触部の幅Laは、突出末端の幅Lb対比約60~70%で形成される。この理由は、中央突出部32がブッシュ1の弾性変形を主導するように、第1、第2突出部33-1、33-2対比より大きいサイズ(Size)からなることに起因する。
そのため、マス重畳区間は、ウェーブ長さLbodyをラバー部60と連携することにより、突出末端の幅Lbより大きいパイプ接触部の幅Laを有する中央突出部32が外力(すなわち、旋回による横力)に対して軸方向(XYZ座標系のX)および回転方向(XYZ座標系のY(すなわち、車両の左右幅方向))の剛性を増大するように作用する。
【0034】
これとともに、ウェーブボディ31の中央突出部32と第1、第2突出部33-1、33-2のそれぞれには密着面32a、33aが形成され、密着面32a、33aは、ウェーブボディ31に平らな上下部位を形成させることにより、第2内パイプ30の幅方向(XYZ座標系のZ(すなわち、車両上下方向))に対するウェーブボディ31の幅長さh(Width Length)を縮小する。この場合、中央突出部32の密着面32aが有する幅高さhと、第1、第2突出部33-1、33-2の密着面33aが有する幅高さhとは、同一に形成される。これとともに、密着面32a、33aは、ウェーブボディ31とラバー部60との接着力を強化させる付加的な機能も提供する。
このように、ウェーブボディ31は、半径長さ(Radius Length)(XYZ座標系のY)が密着面32a、33aによる幅長さhより大きく形成されることにより、第2内パイプ30は、軸方向(XYZ座標系のX)および回転方向(XYZ座標系のY)に対する剛性を増大することができる。これに対し、前記ウェーブボディ31は、密着面32a、33aによる幅長さhが半径長さ(Radius Length)より小さく形成されることにより、第2内パイプ30は、前後方向(XYZ座標系のX)および上下方向(XYZ座標系のZ)に対する剛性を弱めることができる。
図4のブッシュ多重剛性構造に示す通り、ブッシュ多重剛性構造は、第2内パイプ30と外パイプ50およびラバー部60との連携からなる。
【0035】
ブッシュの断面構造において、第1内パイプ20と外パイプ50との空間は、ラバー弾性係数K1(
図1参照)を形成する第2内パイプ30とラバー部60とで満たされる。この場合、第2内パイプ30は、第1内パイプ20と一体化され、ラバー部60は、外パイプ50と一体化され、第2内パイプ30とラバー部60とは互いを囲んで一体化される。
具体的には、外パイプ50は、中空パイプ形状からなるボディハウジング51と、ボディハウジング51の前方方向(XYZ座標のX)に形成されたエンド突出フランジ52-1と、ボディハウジング51の後方方向(XYZ座標のX)に形成されたエンド折曲フランジ52-2と、エンド突出フランジ52-1とつながった第3突出部53-1と、エンド折曲フランジ52-2とつながった第4突出部53-2と、ボディハウジング51の中間区間でエンド突出フランジ52-1とエンド折曲フランジ52-2を左右に形成した中央陥没部55とからなる。
ボディハウジング51の内径は、ラバー部60の変形ボディ61の形状と同一形状にラバーマスの内径構造を形成することにより、ラバー部60に対する密着結合力を強化させる。すなわち、ボディハウジング51のラバーマスの内径構造は、ラバー部60のメインマス62と密着する中間区間の直径がラバー部60の前後方エンドマス65-1、65-2のそれぞれと密着する前後方区間の直径と対比して大きく形成される。
【0036】
エンド突出フランジ52-1は、ボディハウジング51の直径を狭くするように縮小することにより、ラバー部60の前方エンドマス65-1に対する係止固定力を形成する。エンド折曲フランジ52-2は、ボディハウジング51の他方の末端部位でボディハウジング51の直径を広くするように同心円をなすことにより、ラバー部60の後方エンドマス65-2に対する接着固定力を形成する。
したがって、外パイプ50は、ボディハウジング51のラバーマスの内径構造でラバー部60と密着結合力を強化し、エンド突出フランジ52-1の折曲構造でラバー部60と係止固定力を強化し、エンド折曲フランジ52-2の突出構造でラバー部60と接着固定力を強化する。
第3、第4突出部53-1、53-2および中央陥没部55は、車両前後方向に構成する。特に、中央陥没部55は、突出末端の幅Lbより大きいパイプ接触部の幅Laを有し、中央陥没部55の傾斜構造が有する傾斜面は、第2内パイプ30の第1突出部33-1および第2突出部33-2の傾斜構造が有する傾斜面と同一方向に形成される。
そのため、外パイプ50の中央陥没部55と第3、第4突出部53-1、53-2は、第2内パイプ30の中央突出部32と第1、第2突出部33-1、33-2を囲んで一体化されることにより、ポットホールやスピードバンプなどを通る車両でブッシュ1に発生しうる強い前後力を防ぐストッピング効果(Stopping Effect)によって第1、第2内パイプ20、30に対する構造破損を防止するように作用する。
【0037】
また、外パイプ50は、ラバー部60と結合力を高めるために、ボディハウジング51に適用されていた切開溝やスリットの既存の構造を形成しないことにより、アウターパイプの形状に対する最適化を容易にできる。
具体的には、ラバー部60は、変形ボディ61と、前後方エンドマス65-1、65-2と、第1、第2ボイド部66-1、66-2とからなる。
変形ボディ61は、メインマス62の一方に前方連結マス63-1を形成しながら、他方に後方連結マス63-2を形成することにより、第2内パイプ30のウェーブボディ31に対してマス重畳区間を、外パイプ50のボディハウジング51に対してラバーマスの内径構造をともに形成する。この場合、前後方連結マス63-1、63-2のそれぞれは、メインマス62対比狭小区間を形成するようにメインマス62でつながる。
特に、メインマス62は、ラバー高さHとラバー厚さWによる形状調節によってラバー部60の応力反応度を高める。この場合、ラバー高さHは、第2内パイプ30の狭小連結ボディ34と突き合わされた突出部位を垂直高さの基準面に適用し、ラバー厚さWは、第2内パイプ30の中央突出部32と突き合わされた側面部位を側面厚さの基準面に適用する。また、応力反応度は、外力に対して剪断力と圧縮力が異なる大きさに発生することを意味する。
【0038】
このために、メインマス62は、ラバー高さHを1とする時、ラバー厚さWは0.6~0.8に設定される。
前後方エンドマス65-1、65-2は、第2内パイプ30の前後方エンドボディ35-1、35-2と一体化される。特に、前方エンドマス65-1は、外パイプ50のエンド折曲フランジ52-1と係止固定力を形成し、後方エンドマス65-2は、外パイプ50のエンド突出フランジ52-2と接着固定力を形成する。
第1、第2ボイド部66-1、66-2は、前後方エンドマス65-1、65-2のそれぞれから変形ボディ61につながった所定長さの空き空間に形成されることにより、ブッシュ1の力伝達経路がブッシュ1の全体に形成されることを排除しながら、ラバー部60の応力反応度をより高める。特に、第1、第2ボイド部66-1、66-2の切開長さAは、変形ボディ61の前後方連結マス63-1、63-2のそれぞれからメインマス62に近接する長さからなる。
そのため、第1、第2ボイド部66-1、66-2は、第1、第2内パイプ20、30と外パイプ50との間でまともにブッシュ1の力伝達経路を形成することにより、第2内パイプ30と外パイプ50に対してラバー部60のメインマス62が傾斜面と垂直方向に近く圧縮されるように誘導して、ブッシュ1の最適性能の実現を可能にする。さらに、第1、第2ボイド部66-1、66-2は、ブッシュ1の圧縮時、ラバー部60にゴム耐久の利点をもたせる剪断発生誘導でメインマス62のゴム耐久性の増大作用をしながらも、ブッシュ1の回転時、ゴム圧縮発生誘導による車両のトーアウト(Toe Out)制御で車両のハンドリングを改善するように作用する。
【0039】
図5に示す通り、ブッシュ1の応力反応度が剪断力の発生と圧縮力の発生で例示される。この場合、剪断力の発生と圧縮力の発生は、旋回による横力の力学関係(
図2参照)によるブッシュ1の挙動を前提とする。
図5の左側のブッシュ圧縮状態(XYZ座標のZ)に示す通り、圧縮は、第2内パイプ30からラバー部60を押し出そうとする傾向で進行する。すると、第2内パイプ30は、ウェーブボディ31の中央突出部32で発生する圧縮力をラバー部60に伝達し、ラバー部60は、変形ボディ61のメインマス62で圧縮力による剪断力を発生させる。
具体的には、メインマス62は、ラバー高さHとラバー厚さWとの差によって相対的に薄い部位のラバー厚さWに中央突出部32の圧縮力を集中させることにより、中央突出部32の圧縮方向(例、半径方向)に対抗する(または押し出される)剪断力の発生を誘導する。これより、ブッシュ1は、ラバー部60の剪断力による圧縮力の緩和でゴム耐久性が増大できる。
これに対し、
図5の右側のブッシュ回転状態(XYZ座標のY)に示す通り、外パイプ50は、懸架システム100(
図2参照)に固定され、第1内パイプ20は、車体ボディに固定されることにより、回転は、懸架システム100に固定された外パイプ50で起こる。
これより、ブッシュの回転状態は、第2内パイプ30からラバー部60を圧縮させようとする傾向で進行する。すると、第2内パイプ30は、ウェーブボディ31の中央突出部32で発生する回転力をラバー部60に伝達し、ラバー部60は、変形ボディ61のメインマス62で回転力による圧縮力を発生させる。
【0040】
具体的には、メインマス62は、ラバー高さHとラバー厚さWとの差によって相対的に薄い部位のラバー厚さWにメインウェーブの回転力を集中させることにより、メインウェーブの回転方向(例、時計方向)に対抗する(または押し出される)圧縮力の発生を誘導する。これより、ブッシュ1は、ラバー部60の圧縮力による回転力の緩和で懸架システム100(
図2参照)はトーアウトの縮小によるトーインの増大傾向を有することができる。
一方、
図6~
図8は、ブッシュ1で第1内パイプ20と第2内パイプ30との連携によるブッシュ結合の最適化構造に対するブッシュ回転防止構造10-1が結合構造からなり、ブッシュ接着強化構造10-2が密着構造として適用されることを例示する。
図6に示す通り、ブッシュ回転防止構造10-1は、第1内パイプ20の中空ボディ21と第2内パイプ30の前方エンドボディ35-1に適用される。一例として、中空ボディ21に載置溝27を形成し、前方エンドボディ35-1に載置突起37を形成し、載置溝27と載置突起37とを互いに結合することにより、ブッシュ回転防止構造10-1に適用する。
特に、載置溝27は、中空ボディ21の外径に略「V」字溝形状を射出して形成し、載置突起37は、前方エンドボディ35-1の内径に「V」字突起形状を射出して形成する。また、載置溝27と載置突起37とは、結合力強化のために、所定の離隔角Kを有し、複数からなるが、4つからなることが好ましい。
【0041】
図7に示す通り、ブッシュ回転防止構造10-1は、締結された状態部品(例、トレーリングアーム120(
図2参照)による第1内パイプ20のパイプ回転力Rを抑制する。これより、パイプ回転力Rで発生する、第2内パイプ30に対する第1内パイプ20の回転傾向は、載置溝27に結合された載置突起37を介在させて第2内パイプ30に抑制されるしかない。
図8に示す通り、ブッシュ接着強化構造10-2は、第1内パイプ20の中空ボディ21に適用される。一例として、中空ボディ21は、外周面に接触突起29を形成し、接触突起29が中空ボディ21に射出成形される第2内パイプ30と第1内パイプ20との結合力を増大させる。
特に、接触突起29の形状は、セレーション(Serration)またはナーリング(Knurling)からなるが、陰刻/陽刻溝からなってもよい。また、接触突起29の形成区間は、第1内パイプ20の全体長さであるプラスチックマス長さL
totalを1とする時、左右両方のエンド長さb-1、b-2を除いた状態で、約0.7~0.8の接触突起の長さBに設定されることにより、第1内パイプ20が第2内パイプ30に囲まれる結合増大区間を最大限に広く形成する。
これより、第1内パイプ20と第2内パイプ30とは、結合増大区間で第1内パイプ20に対する第2内パイプ30の結合力を強く維持しながらも、離脱力を容易に調節することができる。
【0042】
一方、
図9は、車両100-1の懸架システム100を例示する。図示のように、懸架システム100は、ブッシュ1を適用した車両100-1の後輪懸架システムである。
ブッシュ1は、第1内パイプ20と第2内パイプ30とを内側ユニット10とし、外パイプ50とラバー部60とを外側ユニット40とし、第2内パイプ30のプラスチック弾性係数K2とラバー部60のラバー弾性係数K1とをブッシュ弾性係数Ktとすることにより、
図1~
図8により記述されたチューニング自由度改善型ブッシュ1と同一である。
懸架システム100は、V断面またはU断面または閉断面構造のトーションビーム110の左右両エンド部位と左右の車輪130にそれぞれ結合されたトレーリングアーム120と、トレーリングアーム120に適用されたブッシュ1とから構成されることにより、CTBA(Coupled Torsion Beam Axle)として左右輪非独立式後輪懸架システムに特徴付けられる。
そのため、懸架システム100は、
図2の懸架システム100と同一であるので、旋回による横力においてブッシュ1の作用でトーイン傾向を通して車輪130の安定性強化とともにR&H/NVH/操舵/耐久に対する性能の満足で車両100-1を安定化させる。上述のように、本実施例による懸架システム100に適用されたチューニング自由度改善型ブッシュ1は、第2内パイプ30のプラスチック弾性係数とラバー部60のラバー弾性係数とが組み合わされたブッシュ弾性係数を有し、プラスチック弾性係数による剛性チューニングとラバー弾性係数による弾性チューニングとが組み合わされてチューニング自由度を高めることにより、軸方向の剛性および回転方向の剛性増大と前後方向および上下方向の剛性低下が容易でありながらも、R&H/NVH/操舵/耐久の目標性能最適化のための開発ロードが短縮される。
【符号の説明】
【0043】
1:ブッシュ
1-1:切開部
10:内側ユニット(Inside Unit)
10-1:ブッシュ回転防止構造
10-2:ブッシュ接着強化構造
20:第1内パイプ
21:中空ボディ
22:軸ホール
27:載置溝
29:接触突起
30:第2内パイプ
31:ウェーブボディ(Wave Body)
32:中央突出部
32a、33a:密着面
33-1、33-2:第1、第2突出部
34:狭小連結ボディ
35-1、35-2:前後方エンドボディ
35a:リブ
37:載置突起
40:外側ユニット(Outside Unit)
50:外パイプ
51:ボディハウジング
52-1:エンド突出フランジ
52-2:エンド折曲フランジ
53-1、53-2:第3、第4突出部
55:中央陥没部
60:ラバー部
61:変形ボディ
62:メインマス
63-1、63-2:前後方連結マス
65-1、65-2:前後方エンドマス
66-1、66-2:第1、第2ボイド部
100:懸架システム
100-1:車両
110:トーションビーム
120:トレーリングアーム
130:車輪