(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240214BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2019233199
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】松元 智志
(72)【発明者】
【氏名】田辺 義清
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033705(JP,A)
【文献】特開2015-153214(JP,A)
【文献】特開2017-019080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械を制御する制御装置であって、
所定タイミングで繰り返し実行される、前記産業機械の各構成部品の劣化を診断する診断機能を有し、前記各構成部品の所定以上の劣化についてアラーム信号を出力する劣化診断部と、
前記アラーム信号に基づいて、前記産業機械に停止指令を出力するとともに、前記産業機械がアラーム停止状態であることを報知するアラーム制御部と、
前記アラーム停止状態を解除するための解除操作を受け付ける解除操作受付部と、
を備え、
前記劣化診断部は、前記診断機能により発生した前記アラーム停止状態を、前記解除操作に基づいて解除し、前記診断機能が次に実行されるまでの間、前記産業機械を稼動させ
、さらに、前記診断機能の実行を無効化する無効期間を設定する無効化期間設定部を備え、前記解除操作後に、設定された前記無効期間の間、前記診断機能を無効化する制御装置。
【請求項2】
前記劣化診断部は、前記産業機械への電源投入のタイミングで繰り返し前記診断機能を実行する請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記劣化診断部は、
前記各構成部品の動作状態を数値情報として取得する数値情報取得部と、
前記各構成部品の数値情報に対して劣化を示すしきい値を取得するしきい値取得部と、
前記数値情報及び前記しきい値に基づいて、前記各構成部品の劣化を判断する判断部と、
を備える請求項
1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
産業機械の自動診断機能を有する制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
所定タイミングで繰り返し実行される、前記産業機械の各構成部品の劣化を診断する診断機能を有し、前記各構成部品の所定以上の劣化についてアラーム信号を出力する劣化診断部、
前記アラーム信号に基づいて、前記産業機械に停止指令を出力するとともに、アラーム停止状態であることを報知するアラーム制御部、
前記アラーム停止状態を解除する解除操作に基づいて、解除を実行する解除実行部、
として機能させ、
前記劣化診断部は、前記診断機能により発生した前記アラーム停止状態を、前記解除操作に基づいて解除し、前記診断機能が次に実行されるまでの間、前記産業機械を稼動させ
、さらに、前記診断機能の実行を無効化する無効期間を設定する無効化期間設定部を備え、前記解除操作後に、設定された前記無効期間の間、前記診断機能を無効化するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の産業機械を配置した生産ラインが知られている。例えば、複数の搬送機械を配置した、製品の組み立てラインが知られている。産業機械には、各種センサが設けられており、産業機械の各構成部品の動作状況を取得することが可能になっている。産業機械を制御する制御装置は、取得した動作状態を監視することで、産業機械の状態を診断することができる。
【0003】
ところで、産業機械の各構成部品には、劣化による能力低下が発生することがある。制御装置が各構成部品の能力低下を検出した場合、制御装置は、警告(ワーニング)を出力することで、外部に通知する。このように、装置の動作状態を監視して、警告を発することができる装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置では、サーボアンプの劣化等を診断することで、故障が起こりえる状況であるか否か判断される。故障が起こりえる状況と判断された場合、警告を発することで、作業者に対して注意を促すことができる。また、故障ではないので、サーボアンプの稼動については許容される。これにより、製造ラインの停止を回避することができる。
【0006】
一方、特許文献1のように、警告を発するだけでは、作業者に気づかれずに放置される可能性がある。警告状態のまま放置され、運転が継続された場合、劣化した構成部品が故障することで、製造ラインの稼動が停止することが考えられる。そこで、産業機械の稼動を継続可能としつつ、作業者に劣化した部品の交換が必要であることをより明確に示すことができれば好適である。産業機械の使命は稼動率を向上することにあり、稼動期間中の停止は産業機械の稼動率を低下させるため好ましくない。一方で、産業機械が稼動していない休止期間には、定期的な保守・交換作業が行われるため、劣化部品の交換はこのタイミングで行われることが好都合となる。通常定期交換可能な劣化部品は劣化状態にあっても直ぐには故障するわけではなく、一定期間稼動することは可能なので、劣化検出後一定期間動作させ、産業機械が稼動していない休止期間に劣化部品を交換させることが最も稼動率を低下させない方法となる。そのため、産業機械の稼動率を低下させずに、劣化部品が劣化状態にあることを作業者に確実に認識させる仕組みが重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示は、産業機械を制御する制御装置であって、所定タイミングで繰り返し実行される、前記産業機械の各構成部品の劣化を診断する診断機能を有し、前記各構成部品の所定以上の劣化についてアラーム信号を出力する劣化診断部と、前記アラーム信号に基づいて、前記産業機械に停止指令を出力するとともに、前記産業機械がアラーム停止状態であることを報知するアラーム制御部と、前記アラーム停止状態を解除するための解除操作を受け付ける解除操作受付部と、を備え、前記劣化診断部は、前記診断機能により発生した前記アラーム停止状態を前記解除操作に基づいて解除し、前記診断機能が次に実行されるまでの間、前記産業機械を稼動させる制御装置に関する。
【0008】
(2)また、本開示は、産業機械の自動診断機能を有する制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、所定タイミングで繰り返し実行される、前記産業機械の各構成部品の劣化を診断する診断機能を有し、前記各構成部品の所定以上の劣化についてアラーム信号を出力する劣化診断部、前記アラーム信号に基づいて、前記産業機械に停止指令を出力するとともに、アラーム停止状態であることを報知するアラーム制御部、前記アラーム停止状態を解除する解除操作に基づいて、解除を実行する解除実行部、として機能させ、前記劣化診断部は、前記診断機能により発生した前記アラーム停止状態を、前記解除操作に基づいて解除し、前記診断機能が次に実行されるまでの間、前記産業機械を稼動させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、産業機械の稼動を継続可能としつつ、作業者に劣化した部品の交換が必要であることをより明確に示すことができる制御装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る制御装置を含む生産ラインを示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る制御装置の数値情報としきい値との関係を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る制御装置の数値情報としきい値との関係を示す模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る制御装置の数値情報としきい値との関係を示す模式図である。
【
図7】本開示の第2実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の各実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて、
図1から
図9を参照して説明する。
まず、制御装置1による制御の概要について説明する。
制御装置1は、例えば、
図1に示すように、生産ライン200に配置される複数の産業機械100のそれぞれに接続される。制御装置1は、接続される産業機械100の動作を制御する。制御装置1は、産業機械100の各構成部品101の動作を制御することで、生産ライン200を稼動することができる。
【0012】
さらに、制御装置1は、接続される産業機械100の自動診断機能も有する。制御装置1は、具体的には、産業機械100の各構成部品101の劣化を診断することで、産業機械100の作業者に所定以上の劣化(交換時期の到来)を通知することが可能である。制御装置1は、例えば、構成部品101の状態を検知するセンサ102からの出力信号を用いて、構成部品101の劣化を診断する。また、制御装置1は、例えば、産業機械100の作業者に所定以上の劣化を画面表示等で通知することが可能である。なお、構成部品101として、寿命部品、消耗部品、劣化部品等が診断対象となる。寿命部品は、例えば、冷却ファンである。消耗部品は、例えば、バッテリである。劣化部品は、例えば、絶縁部品である。産業機械100は、電源投入後の暖機運転時や、始業前点検時に劣化を診断する。なお、自動診断では、稼動に問題ない状態であっても劣化状態と診断することで、故障状態となる前に交換を促すことができる。そのため、構成部品101は、劣化状態と診断された後でも、産業機械100を一定期間稼動させることができる。
【0013】
以下の各実施形態では、制御装置1は、所定以上の劣化を検知した際に、産業機械100をアラーム停止(トリップ)状態にすることができる。また、制御装置1は、所定の操作に応じてアラーム停止状態を解除することにより、産業機械100の稼動の継続を可能にするものである。また、以下の各実施形態では、制御装置1は、産業機械100の電源投入のタイミングで構成部品101の劣化を診断し、産業機械100をアラーム停止状態にする。なお、以下の各実施形態において、「アラーム信号」とは、各構成部品101の所定以上(所定のしきい値を超える)の劣化を検出したことを示す信号である。また、「アラーム停止状態」とは、構成部品101に所定のしきい値を超えた劣化が検出された場合に、産業機械100が停止されている状態をいう。また、以下の各実施形態において、「解除操作」とは、各構成部品101の劣化と診断された場合、「アラーム停止状態」を解除するための操作をいう。
【0014】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて、
図1から
図6を参照して説明する。
本実施形態に係る制御装置1は、しきい値格納部11と、劣化診断部12と、起動検知部13と、アラーム制御部14と、表示部15と、解除操作受付部16と、を備える。
【0015】
しきい値格納部11は、例えば、ハードディスク等の不揮発性の二次記憶媒体である。しきい値格納部11は、産業機械100の各構成部品101の数値化された動作状態について、劣化と判断する数値のしきい値を格納する。
【0016】
劣化診断部12は、例えば、CPUが動作することにより実現される。劣化診断部12は、所定タイミングで繰り返し実行される、産業機械100の各構成部品101の劣化を診断する診断機能を有する。また、劣化診断部12は、各構成部品101の所定の以上の劣化についてアラーム信号を出力する。本実施形態において、劣化診断部12は、産業機械100への電源投入のタイミングの度に繰り返し、各構成部品101の劣化を診断する。劣化診断部12は、数値情報取得部122と、しきい値取得部121と、判断部123と、を備える。
【0017】
数値情報取得部122は、各構成部品101の動作状態を数値情報として取得する。数値情報取得部122は、例えば、産業機械100の各構成部品101の状態を計測するセンサ102に接続される。数値情報取得部122は、センサ102から出力される各構成部品101の動作状態を数値情報として取得する。
【0018】
しきい値取得部121は、しきい値格納部11に接続される。しきい値取得部121は、しきい値格納部11に格納されている各構成部品101のしきい値を取得する。しきい値取得部121は、例えば、取得された各構成部品101の数値情報に対して劣化を示すしきい値を取得する。
【0019】
判断部123は、数値情報及びしきい値に基づいて、各構成部品101の劣化を判断する。判断部123は、例えば、数値情報及びしきい値を比較する。判断部123は、比較の結果、しきい値に対して、劣化状態であると判断する側への数値情報の低下又は超過を判断することで、各構成部品101の劣化を判断する。例えば、構成部品101であるファン(図示せず)の回転数がしきい値よりも低下した場合、判断部123は、ファンを劣化状態にあると判断する。また、例えば、構成部品101であるバッテリ(図示せず)の電圧がしきい値よりも低下した場合、判断部123は、バッテリを劣化状態にあると判断する。さらには、例えば、構成部品101である絶縁部品(図示せず)の絶縁性能がしきい値よりも低下した場合、判断部123は、絶縁部品を劣化状態にあると判断する。
【0020】
また、判断部123は、後述する解除操作受付部16によって受け付けた解除操作に基づいて、産業機械100のアラーム停止状態を解除する。判断部123は、例えば、受け付けた解除操作と予め定められた解除コードとの一致を識別することで、産業機械100をアラーム停止状態から運転可能な状態に切り替える。ここで、判断部123は、診断した結果を一旦内部メモリ(図示せず)に保存する。判断部123は、内部メモリに保存された診断結果を反映したアラーム信号を出力する。判断部123は、解除操作に基づいて内部メモリに保存されたアラーム状態を非アラーム状態に書き換えることで、アラーム信号の出力を停止する。これにより、判断部123は、産業機械100をアラーム停止状態から、運転可能な状態に切り替えることが可能となる。判断部123は、例えば、劣化状態にある構成部品101の情報を含むアラーム信号を出力する。本実施形態において、判断部123は、アラーム停止状態の解除の後、次の診断機能が実行されるまでの間、産業機械100を稼動可能にすることができる。
【0021】
起動検知部13は、例えば、CPUが動作することにより実現される。起動検知部13は、産業機械100の起動を検知する。起動検知部13は、例えば、産業機械100への電源の投入を検知する。起動検知部13は、構成部品101(例えば、電源ボタン(図示せず))の動作を検知することにより、産業機械100への電源の投入を検知する。また、起動検知部13は、産業機械100の電源の投入の検知を検知信号として、判断部123に出力する。起動検知部13は、産業機械100を制御するCPUの初期化プログラムで実現され、電源投入直後の産業機械100の初期化中に診断機能を実行してもよい。
【0022】
アラーム制御部14は、例えば、CPUが動作することにより実現される。アラーム制御部14は、アラーム信号に基づいて、産業機械100に停止指令を出力する。また、アラーム制御部14は、産業機械100がアラーム停止状態であることを報知する。具体的には、アラーム制御部14は、診断された各構成部品101の所定以上の劣化についてアラーム信号を出力するとともに、産業機械100をアラーム停止状態にする。アラーム制御部14は、例えば、各構成部品101に対してアラーム停止制御をすることで、産業機械100を停止させる。
【0023】
表示部15は、例えば、ディスプレイ等の表示装置である。表示部15は、アラーム制御部14から出力される信号に基づいて、アラームを表示する。表示部15は、例えば、劣化状態にある構成部品101の情報をアラーム表示する。
【0024】
解除操作受付部16は、例えば、CPUが動作することで実現される。解除操作受付部16は、例えば、キーボード、マウス等の入力部(図示せず)への解除操作の入力を受け付ける。解除操作受付部16は、アラーム停止状態を解除するための解除操作を受け付ける。
【0025】
次に、制御装置1の動作について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、産業機械100の電源が投入される(ステップS1)。次いで、劣化診断部12による産業機械100の診断が実行される(ステップS2)。
【0026】
次いで、産業機械100の劣化が判断される(ステップS3)。数値情報取得部122は、産業機械100の各構成部品101の動作状態を示す数値情報を取得する。また、しきい値取得部121は、各構成部品101に予め定められたしきい値をしきい値格納部11から読み出す。判断部123は、数値情報及びしきい値に基づいて、各構成部品101の劣化を判断する。構成部品101が劣化状態にあると判断された場合(ステップS3:YES)、処理は、ステップS4に進む。一方、構成部品101が劣化状態にないと判断された場合(ステップS3:NO)、処理は、ステップS7に進む。
【0027】
ステップS4において、アラーム制御部14は、産業機械100に停止指令を出力する。これにより、アラーム制御部14は、産業機械100をアラーム停止(トリップ)させる。また、アラーム制御部14は、表示部15に、劣化状態にある構成部品101を示す信号を出力する。表示部15は、信号に基づいて、表示を実行する。
【0028】
次いで、劣化診断部12(判断部123)は、アラーム停止状態を解除する予め定められた解除操作の受け付けの有無を判断する(ステップS5)。劣化診断部12は、例えば、解除操作受付部16によって受け付けられた解除操作について、予め定められた解除コードと合致するか否かを判断する。これにより、劣化診断部12は、予め定められた解除操作の受け付けの有無を判断する。予め定められた解除操作が受け付けられた場合(ステップS5:YES)、処理は、ステップS6に進む。一方、予め定められた解除操作が受け付けられていない場合(ステップS5:NO)、処理は、ステップS5を繰り返す。
【0029】
ステップS6において、アラーム制御部14は、産業機械100のアラーム停止状態を解除する。アラーム制御部14は、例えば、産業機械100の動作を通常状態に戻すことで、産業機械100のアラーム停止状態を解除する。また、アラーム制御部14は、例えば、表示部15に、アラーム停止状態の解除を示す表示を表示させる。
【0030】
次いで、産業機械100の運転が実行される(ステップS7)。制御装置1は、例えば、予め設定されている稼動プログラム等に基づいて、産業機械100を動作させる。
【0031】
次いで、電源の遮断が判断される(ステップS8)。アラーム制御部14は、例えば、産業機械100の電源の遮断の有無を判断する。電源が遮断された場合、本フローによる処理は、終了する。一方、電源が遮断されない場合、処理は、ステップS7に戻る。
【0032】
次に、プログラムについて説明する。
制御装置1に含まれる各構成は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0033】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、表示プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0034】
次に、本実施形態に係る制御装置1における診断と、アラーム停止のタイミングについて説明する。制御装置1がファン、バッテリ、及び絶縁部品のそれぞれについて診断する場合について説明する。
【0035】
(ファン回転数)
図4に示すように、産業機械100の電源投入時に、劣化診断部12は、しきい値と、運転中の産業機械100のファンの回転数とを比較する。劣化診断部12は、比較の結果、しきい値を超える回転数の低下を検出すると、検出内容を表示部15に出力する。
【0036】
アラーム制御部14は、産業機械100をアラーム停止状態にする。アラーム制御部14は、解除操作の受け付けに基づいて、産業機械100を運転可能な状態に復帰させる。ファンの異常を確実に認識させ、後日、例えば産業機械100のメンテナンスが可能な時期にファンが交換されることで、産業機械100は、稼動率を低下させずに正常な稼動状態が維持される。
【0037】
(バッテリ電圧)
図5に示すように、産業機械100の電源投入時に、劣化診断部12は、しきい値と、運転中の産業機械100のバッテリ電圧とを比較する。劣化診断部12は、比較の結果、しきい値を超えるバッテリ電圧の低下を検出すると、検出内容を表示部15に出力する。
【0038】
アラーム制御部14は、産業機械100をアラーム停止状態にする。アラーム制御部14は、解除操作の受け付けに基づいて、産業機械100を運転可能な状態に復帰させる。バッテリの消耗を確実に認識させ、後日、例えば産業機械100のメンテナンスが可能な時期にバッテリが交換されることで、産業機械100は、稼動率を低下させずに正常な稼動状態が維持される。
【0039】
(絶縁部品)
図6に示すように、産業機械100の電源投入時に、劣化診断部12は、しきい値と、運転中の産業機械100の絶縁部品の絶縁性能とを比較する。劣化診断部12は、比較の結果、しきい値を超える絶縁性能の低下を検出すると、検出結果を表示部15に出力する。
【0040】
アラーム制御部14は、産業機械100をアラーム停止状態にする。アラーム制御部14は、解除操作の受け付けに基づいて、産業機械100を運転可能な状態に復帰させる。絶縁部品の異常を確実に認識させ、後日、例えば産業機械100のメンテナンスが可能な時期に絶縁部品の異常の調査及び交換されることで、産業機械100は、稼動率を低下させずに正常な稼動状態が維持される。ここでの絶縁部品とは、絶縁機能を具備した、例えば産業機械100を稼動させるサーボモータ、サーボモータに電力を供給する動力ケーブル、サーボモータの電力を生成するサーボアンプ等の機能部品を含む。
【0041】
以上、第1実施形態に係る制御装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(1) 産業機械100を制御する制御装置1であって、所定タイミングで繰り返し実行される、産業機械100の各構成部品101の劣化を診断する診断機能を有し、各構成部品101の所定以上の劣化についてアラーム信号を出力する劣化診断部12と、アラーム信号に基づいて、産業機械100に停止指令を出力するとともに、産業機械100がアラーム停止状態であることを報知するアラーム制御部14と、アラーム停止状態を解除するための解除操作を受け付ける解除操作受付部16と、を備え、劣化診断部12は、診断機能より発生したアラーム停止状態を、解除操作に基づいて解除し、診断機能が次に実行されるまでの間、産業機械100を稼動可能にする。所定タイミングにおいて所定以上の劣化が存在する場合に、産業機械100をアラーム停止状態にするので、作業者に構成部品101の劣化があることをより明確に示すことができる。一方、アラーム停止状態について、予め定められた解除操作を用いて解除できるので、産業機械100のアラーム停止状態による生産ライン200の稼動停止を回避することができる。したがって、産業機械100の稼動を継続可能としつつ、作業者に劣化した部品の交換が必要であることをより明確に示すことができる。
【0042】
(2)劣化診断部12は、各構成部品101の動作状態を数値情報として取得する数値情報取得部122と、各構成部品101の数値情報に対して劣化を示すしきい値を取得するしきい値取得部121と、数値情報及びしきい値に基づいて、各構成部品101の劣化を判断する判断部123と、を備える。これにより、産業機械100の劣化を容易に判断することができる。
【0043】
(3)劣化診断部12は、産業機械100への電源投入のタイミングで診断機能を実行する。これにより、産業機械100を運転する前の準備段階、例えば産業機械100の暖機運転中や始業前点検中に、劣化状態を確認することができる。したがって、作業員に対して劣化状態をより認知しやすいタイミングで診断機能を実行することができる。各構成部品101の劣化状態を確実に作業員に認識させることが目的であり、産業機械100を運転状態にするためには解除操作が必要なため、この操作を実施することで、作業員が各構成部品101の劣化状態を認識することが可能となる。産業機械100の電源投入のタイミングで診断機能を実施する理由は、作業員が確実に産業機械100のアラーム状態を認識し、アラーム解除操作が可能な状況にあり、かつ産業機械100の暖機運転中、もしくは始業前点検といった作業者が時間的に余裕のある状況で行われることで作業者の負担が軽減され、かつ産業機械100の稼動率の低下を回避することができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて、
図7から
図9を参照して説明する。第2実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第2実施形態に係る制御装置1及びプログラムは、劣化診断部12による産業機械100の診断の実行を設定された期間無効にすることができる点で、第1実施形態と異なる。これに伴い、第2実施形態に係る制御装置1及びプログラムは、
図7に示すように、劣化診断部12が無効化期間設定部124をさらに備える点で、第1実施形態と異なる。
【0045】
無効化期間設定部124は、例えば、CPUが動作することで実現される。無効化期間設定部124は、診断機能の実行を無効化する無効期間を設定する。すなわち、無効化期間設定部124は、劣化診断部12による診断機能の実行を無効化する無効期間を設定する。無効化期間設定部124は、外部からの無効期間の入力に基づいて、診断機能を無効化する無効期間を設定する。産業機械100が週末にメンテナンス(構成部品101の交換が実施される)される場合、無効化期間設定部124は、例えば、前もって不揮発性メモリ等に無効期間を「稼動日」として設定する。無効化期間設定部124は、無効期間が設定された状態で解除操作が行われた場合、それ以降の診断機能を「稼動日」には実施しないようにする。「休日」に構成部品101交換後に電源が投入されることで、再度診断機能が実施され、無効期間が終了する。以後の電源投入時には、劣化診断部12による診断機能が実施されるようになる。
【0046】
次に、本実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて、
図8及び
図9のフローチャートを参照して説明する。
まず、産業機械100の電源が投入される(ステップS11)。次いで、劣化診断部12は、無効化期間設定部124に設定されている無効期間に基づいて、診断の有無を判断する(ステップS12)。すなわち、劣化診断部12は、設定されている無効期間内か否かを判断する。診断が実行される場合(ステップS12:NO)、処理は、ステップS13に進む。一方、診断が実行されない場合(ステップS12:YES)、処理は、ステップS18に進む。
【0047】
ステップS13において、劣化診断部12は、産業機械100の診断を実行する。次いで、劣化診断部12は、構成部品101の劣化を判断する(ステップS14)。劣化状態にあると診断された場合(ステップS14:YES)、処理は、ステップS15に進む。一方、劣化状態にないと判断された場合(ステップS14:NO)、処理は、ステップS18に進む。
【0048】
ステップS15において、アラーム制御部14は、産業機械100をアラーム停止(トリップ)状態にする。また、アラーム制御部14は、表示部15に、劣化状態にある構成部品101を示す信号を出力する。表示部15は、出力された信号に基づいて、表示を実行する。
【0049】
次いで、ステップS16において、劣化診断部12は、アラーム停止状態を解除する予め定められた解除操作の受け付けの有無を判断する。劣化診断部12は、例えば、解除操作受付部16によって受け付けられた解除操作について、予め定められた解除コードと合致するか否かを判断する。これにより、劣化診断部12は、予め定められた解除操作の受け付けの有無を判断する。予め定められた解除操作が受け付けられた場合(ステップS16:YES)、処理は、ステップS17に進む。一方、予め定められた解除操作が受け付けられていない場合(ステップS16:NO)、処理は、ステップS16を繰り返す。
【0050】
ステップS17において、劣化診断部12は、産業機械100のアラーム停止を解除する。すなわち、劣化診断部12は、産業機械100を運転可能な状態に変更する。
【0051】
次いで、無効化期間設定部124による無効化期間の設定処理が実行される(ステップS18)。無効化期間設定処理については後述する。
【0052】
次いで、産業機械100の運転が実行される(ステップS19)。次いで、産業機械100の電源の遮断が判断される(ステップS20)。産業機械100の電源が遮断される場合(ステップS20:YES)、本フローによる処理は、終了する。一方、産業機械100の電源が遮断されない場合(ステップS20:NO)、処理は、ステップS19に戻り、産業機械100の動作が継続される。
【0053】
次に、無効化期間の設定処理について、
図9を参照して説明する。
ステップS21において、無効化期間設定部124が無効期間の入力を受け付けているか否かを判断する。無効期間が入力されている場合(ステップS21:YES)、無効化期間設定部124は、入力された期間を無効期間に設定する(ステップS22)。一方、無効期間が入力されていない場合(ステップS21:NO)、無効化期間設定部124は、無効期間を設定しない(ステップS23)。その後、処理は、ステップS19に進む。
【0054】
以上、第2実施形態に係る制御装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(4)劣化診断部12は、診断機能の実行を無効化する無効期間を設定する無効化期間設定部124をさらに備え、アラーム制御部14は、解除操作後に、設定された無効期間の間、診断機能を無効化する。これにより、交換ができない期間等、産業機械100をアラーム停止状態にすることを避けたい場合、産業機械100のアラーム停止状態を回避することができる。したがって、より利便性を向上することができる。
【0055】
以上、本開示の制御装置及びプログラムの好ましい各実施形態につき説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態において、第1実施形態及び第2実施形態に係る制御装置1及びプログラムは、適宜組み合わされて実施されてもよい。第1実施形態及び第2実施形態に係る制御装置1及びプログラムは、例えば、全て組み合わされて構成されてもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、アラーム制御部14が電源投入時に産業機械100をアラーム停止状態にするとしたが、これに制限されない。例えば、アラーム制御部14は、産業機械100の電源遮断のタイミングで、産業機械100をアラーム停止状態にしてもよい。電源投入時に産業機械100がアラーム停止状態になっていることで、作業員に構成部品101の劣化を知らせることができる。
【0058】
また、上記実施形態において、アラーム信号の出力先の一例として表示部15を示したが、これに限定されない。出力部として、表示部15及び音声再生部(図示せず)等を含んでもよい。
また、作業員が産業機械から離れている場合において、アラーム信号の出力先として、無線機能を有した携帯端末や携帯電話等からのアラーム情報の通知を受け、同端末の操作により解除操作を行うことも含んでもよい。
【0059】
また、上記第2実施形態において、無効化期間設定部124が、産業機械100のアラーム停止状態解除後に無効期間を設定するとしたが、前もって不揮発性メモリに設定を記憶しておき、無効化期間が設定されている場合は、その期間中は診断機能を実施しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 制御装置
12 劣化診断部
14 アラーム制御部
16 解除操作受付部
100 産業機械
101 構成部品
121 しきい値取得部
122 数値情報取得部
123 判断部
124 無効化期間設定部