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  • 特許-吸収性物品の個包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】吸収性物品の個包装体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240214BHJP
   A61F 13/551 20060101ALI20240214BHJP
   A61F 13/62 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61F13/15 210
A61F13/15 220
A61F13/551 200
A61F13/551 100
A61F13/62 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020015141
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021122295
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 智恵子
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-013521(JP,A)
【文献】特開2014-076216(JP,A)
【文献】特表2017-521142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
A61F 13/551
A61F 13/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品と、前記吸収性物品を包む包装シートと、前記包装シートの開封側端部を接合する接合部と、を備える吸収性物品の個包装体であって、
前記包装シートは、不織布と、前記不織布の少なくとも一方の面に積層された木材パルプ層と、を有するパルプ含有複合型不織布を含み、
前記接合部は、フックテープであり、
前記パルプ含有複合型不織布は、不透明度が75%以上であり、
前記パルプ含有複合型不織布は、前記不織布が坪量7g/m 以上30g/m 以下のスパンボンド不織布であり、前記木材パルプ層の坪量が30g/m 以上70g/m 以下であり、かつ前記スパンボンド不織布と前記木材パルプ層との重量構成比が40/60重量%以上10/90重量%以下である吸収性物品の個包装体。
【請求項2】
前記パルプ含有複合型不織布は、前記木材パルプ層が前記個包装体の外表面になるように配置される、請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項3】
前記パルプ含有複合型不織布の坪量が、30g/m以上80g/m以下である、請求項1又は2に記載の吸収性物品の個包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の個包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティーライナー、紙オムツ等の吸収性物品を、1つずつ包装シートで包み、包装シートの端部をタブテープで封着することにより個包装化した、吸収性物品の個包装体が知られている。吸収性物品の個包装化により、吸収性物品を1つずつ、簡易に且つ衛生的に持ち運ぶことができる。
【0003】
持ち運ぶ際には、内容物が外から見えない隠蔽性が求められる。包装シートがフィルムで構成される場合、包装シートの坪量が低いと内容物である吸収性物品が透けて外部から見えてしまう。従来の個包装体は、未使用時の吸収性物品の包装を目的とするものであるが、使用済みの吸収性物品を廃棄する際に、包装シートで包むという使われ方もする。しかしながら、使用時に一度はがしたタブテープでは再封性がよくない。
【0004】
特許文献1には、バックシートが外側を向くように折り畳んだナプキン本体と、ナプキン本体を包む包装シートと、を備え、バックシートの外表面に絵柄を設け、かつ該絵柄を包装シートを透して外方から認識できるように、包装シートを所定の透明度に設定した個包装体が開示されている。特許文献2には、バックシートが外側を向くように折り畳んだナプキン本体と、ナプキン本体を包む包装シートと、を備え、バックシートの外表面に絵柄を設け、かつ包装シートにはヘイズ値60程度で白色半透明の不織布等を用いた個包装体が開示されている。
【0005】
特許文献1、2には、これらの個包装体によれば、バックシートに絵柄を設けることで、使用済の吸収性物品が吸収した経血のシミを隠蔽することができると共に、個包装体を開封する前後において、吸収性物品の外観を隠蔽することができると記載されている。しかしながら、トップシート外表面の絵柄は、個包装体を開封する前の内容物(吸収性物品)の隠蔽という点では一定の効果はあるものの、内容物が透けて見えることは避けられず、使用後に包装シートで包んで廃棄する際も同様であり、内容物の隠蔽性という観点から十分満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-185858号公報
【文献】特開2003-199786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸収性物品の個包装体には、持ち運ぶ際に内容物が外部から見えない隠蔽性が求められる。特に、持ち運び性を重視して、包装シートとして厚みが薄く及び/又は坪量が低い不織布やフィルム等を使用すると、内容物である吸収性物品が透けて外部から見え易い。また、使用済の吸収性物品を個包装体の包装シートに包んで廃棄する場合には、一度剥がしたタブテープでは再封性がよくないことから、別に封着するためのテープ等が必要になりがちであり、特に外出先では不便である。
【0008】
本発明の目的は、高い隠蔽性と良好な再封性とを有する、吸収性物品の個包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の複合型不織布を用いることにより、目的に叶う吸収性物品の個包装体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(4)の吸収性物品の個包装体を提供する。
【0010】
(1)吸収性物品と、前記吸収性物品を包む包装シートと、前記包装シートの開封側端部を接合する接合部と、を備える吸収性物品の個包装体であって、前記包装シートは、不織布と、前記不織布の少なくとも一方の面に積層された木材パルプ層と、を有するパルプ含有複合型不織布を含み、前記接合部は、フックテープであり、前記パルプ含有複合型不織布は不透明度が75%以上である、吸収性物品の個包装体。
(2)前記パルプ含有複合型不織布は、前記木材パルプ層が前記個包装体の外表面になるように配置される、上記(1)の吸収性物品の個包装体。
(3)前記パルプ含有複合型不織布の坪量が、30g/m以上80g/m以下である、上記(1)又は(2)の吸収性物品の個包装体。
(4)前記パルプ含有複合型不織布は、前記不織布が坪量7g/m以上30g/m以下のスパンボンド不織布であり、前記木材パルプ層の坪量が30g/m以上70g/m以下であり、かつ前記スパンボンド不織布と前記木材パルプ層との重量構成比が40/60重量%以上10/90重量%以下である、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品の個包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い隠蔽性と良好な再封性と有する、吸収性物品の個包装体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る吸収性物品の個包装体の折り畳み前の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1におけるX-X折り畳み線及びY-Y折り畳み線で折り畳んだ、本発明の第一実施形態に係る吸収性物品の個包装体の構成を示す模式断面図である。
図3】第一実施形態に係る吸収性物品の個包装体の製品化の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、第一実施形態に係る吸収性物品の個包装体1について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第一実施形態に係る吸収性物品の個包装体1の折り畳み前の模式平面図である。図2は、第一実施形態に係る吸収性物品の個包装体1の幅方向の模式断面図である。図3は、第一実施形態に係る吸収性物品の個包装体1を製品化したときの外観を示す斜視図である。
【0014】
本明細書では次のように定義する。吸収性物品10の着用とは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、吸収性物品10を身体に装着した状態をいう。長手方向とは吸収性物品10を着用したときに着用者の前後にわたる方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する方向であり、厚み方向とは長手方向及び幅方向を含む平面に対して略垂直な方向である。吸収性物品10を着用したときに、着用者の肌に当接するか又は該肌を臨む表面を肌側面、着用者の衣類に接触するか又は該衣類を臨む表面を非肌側面とする。また、体液とは、尿、血液や軟便中の水分などの体内から体外に排出された液体をいう。また、図1~3は、本実施形態に係る吸収性物品の個包装体1の各構成部材の寸法や形状を規定するものではない。
【0015】
本実施形態に係る吸収性物品の個包装体1(以下単に「個包装体1」ともいう)は、吸収性物品10と、吸収性物品10を包装する包装シート11としてのパルプ含有複合型不織布と、包装シート11の表面11xとその開封側端部23とを接合する接合部12としてのフックテープとを備える。本実施形態では、吸収性物品10は、バックシート17の非肌側面が包装シート11に対面し、外側を向くように配置されるが、これに限定されず、トップシート16の肌側面が外側を向くように配置されてもよい。
【0016】
本実施形態の個包装体1では、包装シート11の表面11xと、その開封側端部23と、を接合部12(フックテープ)により接合し、個包装体1としている。一方、従来の個包装体では、開封性を良好にする観点から、例えば、ドットを複数配列したドット状の接合部を設けている。しかしながら、ドット状の接合部では、該接合部をなす面領域に対して必然的に強圧着を行っており、接合性の観点から圧着の程度を高め過ぎ、却って開封性が低下する場合がある。すなわち、従来の個包装体では、高い接合性と開封時の良好な剥離性(開封性)との両立が十分とは言えず、更にドット状の接合部を一度開封すると、再封は困難である。また、吸収性物品を覆う包装シートに対して、包装シートの開封側端部の全面を連続的にシールすると、接合性は顕著に向上する。しかしながら、この場合には、包装シート同士を接着させた面積が大きくなることから、接合性が向上する分だけ、開封性が低下し、更に再封性を得ることはできない。すなわち、従来の個包装体は、接合性と開封性との両立をなし得ていないだけでなく、再封性については何ら考慮されていない。
【0017】
これに対し、本実施形態では、包装シート11として不透明度75%以上のパルプ含有複合型不織布(以下単に「パルプ含有複合型不織布」ともいう)を用いることにより、吸収性物品10の隠蔽性や保護性が高まる。パルプ含有複合型不織布は前述のような高い不透明度を有するにもかかわらず、柔軟性に富み、あらゆる包装形態に対応できることから、包装シート11として好適に利用できる。また、パルプ含有複合型不織布が体液吸収性を有することから、使用済の吸収性物品10を再度パルプ含有複合型不織布に包んで廃棄する場合に、使用済の吸収性物品10から体液が万が一漏出することがあっても、それを吸収及び保持でき、個人のプライバシーの秘匿性が向上する。さらに、パルプ含有複合型不織布は、フックテープによる接合及び開封を経ても、再封に耐え得る強度を有している。したがって、包装シート11としてパルプ含有複合型不織布を用いることにより、隠蔽性、保護性、再封性、個人のプライバシーの秘匿性等に優れた、吸収性物品10の個包装体1を得ることができる。
【0018】
本実施形態において、個包装体1のシール部分(包装シート11の表面11xとその開封側端部23と)の接合性とは、個包装体1の開封動作以外の外力、例えば個包装体1をカバンやバック等に入れて携帯するときに加わる擦れ、撚れ等の外力に対する剥がれ難さを言う。また、本実施形態において、個包装体1のシール部分(接合部12)の開封性とは、吸収性物品10を使用するときに、使用者が手で個包装体1の折り畳みを解きながら包装シート11のシール部分(接合部12)の開口側端部23を剥がす開封動作のしやすさを言う。
以下、本実施形態の個包装体1の各構成部材について、更に詳しく説明する。
【0019】
(吸収性物品)
吸収性物品10は、吸収性物品10の幅方向に延びる、1つ以上の折り畳み線、例えば折り畳み線X-X、及び折り畳み線Y-Y等に沿って幅方向に折り折り畳んだ状態で、個包装体1内に封入されている。幅方向に延びる折り畳み線の位置は特に限定されず、吸収性物品10の長手方向のいずれの位置にも適宜設定できる。また、幅方向に延びる折り畳み線に限定されず、長手方向に延びる1又は2以上の折り畳み線を設け、長手方向に折り畳んでもよい。
【0020】
本実施形態の吸収性物品10は、折り畳み線X-X及び折り畳み線Y-Yに沿って、トップシート16の肌側面を内側にして、長手方向の一端、他端21、22及びそれぞれの幅方向に延びる周辺領域を、それぞれ、逆コの字状及びコの字状に折り畳み、一端21とその周辺領域と、他端22とその周辺領域とが厚み方向に所定幅で重なり合うように、折り畳まれている。なお、一端21とその周辺領域と、他端22とその周辺領域との間には、包装シート11の一端が介在していてもよく、又は介在していなくてもよい。なお、吸収性物品10の折り畳みは前述のように特に限定されず、1又は2以上の任意の折り畳み線を設定して折り畳めばよい。本実施形態では、吸収性物品10をその長手方向に逆コの字状及びコの字状に内三つ折りしているが、これに限定されず、各折り畳み部分が厚み方向に接触するように折り畳んでもよい。
【0021】
吸収性物品10としては、例えば、液透過性のトップシート16と、透過性のバックシート17と、これらの間に配置された体液吸収体(不図示)と、を含む吸収性物品、前記吸収性物品にさらに外装体を備える吸収性物品等が挙げられる。これらの吸収性物品は、例えば、立体ギャザー、レッグギャザー(不図示)等を備えていてもよい。
【0022】
トップシート16としては液透過性の基材を使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、サーマルボンド不織布とスパンボンド不織布との積層体等の不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上を積層した複層シート等が挙げられる。トップシート16には、エンボス加工、穿孔加工等の方法、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の、改質剤の添加等を実施することができる。
【0023】
バックシート17としては液不透過性の基材を使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の不織布、ポリエステルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等の樹脂フィルム等が挙げられる。バックシート17には、液不透過性を向上させるための公知の方法を施すことができる。また、バックシート17を多孔質化して透湿性を付与してもよい。
【0024】
バックシート17の非肌側面17aの一部又は全体に、隠蔽層(不図示)を設けてもよい。隠蔽層としては、特に限定されず、例えば、幾何学模様、文字柄、絵柄、花柄、動物柄、草木柄、アニメ柄、絵画、これらの2種以上の組み合わせ等の模様層、1種又は2種以上の色からなる着色層等が挙げられる。隠蔽層は、例えば、印刷等により形成される。これにより、吸収性物品10の隠蔽性がさらに向上する。
【0025】
体液吸収体としては、例えば、一般に生理用ナプキン、紙オムツ、尿パッド等の吸収性物品に常用されるものを特に制限なく使用でき、例えば、フラッフパルプ、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer;以下「SAP」ともいう。)、親水性シートといった材料から形成される。フラッフパルプとして、例えば、木材パルプ及び合成繊維、ポリマー繊維等の非木材パルプを綿状に解繊したものがある。また、高吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、親水性シートとしては、ティシュ、吸収紙、親水性不織布が挙げられる。また、トウからなる繊維集合体に高吸収性ポリマーを固着及び/又は担持させた体液吸収体を使用してもよい。体液吸収体を2層以上に構成してもよく、体液吸収体を親水性シートで包んでもよい。
【0026】
吸収性物品10の具体例としては、ベビー用、中人用、成人用、ペット用を問わず、現在市販されている吸収性物品をいずれも使用できるが、例えば、生理用ナプキン、パンティーライナー、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ、腹巻型紙おむつ、尿取りパッド等が挙げられる。
【0027】
(包装シート)
本実施形態の個包装体1において、包装シート11としては、図1に示すように、その幅方向及び長手方向の各寸法が、それぞれ、吸収性物品10の幅方向及び長手方向の各寸法よりも所定寸法長いものが用いられる。長手方向の所定寸法は、折り畳んだ状態の吸収性物品10を十分に隠蔽するように覆い、かつ接合部12を設定可能な寸法を適宜選択することが好ましい。幅方向の所定寸法は、吸収性物品10の幅方向の隠蔽性を高めるように、吸収性物品10を覆い得る寸法を適宜選択することが好ましい。
【0028】
本実施形態の包装シート11は、図1及び図2に示すように、吸収性物品10のバックシート17の非肌側面17aと接するように積層された状態で、トップシート16の肌側面を内側にして折り畳み線X-X、Y-Yで内三つ折りされ、吸収性物品10の長手方向において、吸収性物品10の長手方向他端22よりも延び、接合部12となる領域が残余(又は延在)するように構成されている。
【0029】
本実施形態の包装シート11は、不透明度が75%以上であるパルプ含有複合型不織布を含む。このような不透明度を有するパルプ含有複合型不織布を包装シート11として用いることにより、個包装体1における吸収性物品10の隠蔽性が顕著に向上する。不透明度が75%未満であると、個包装体1に内包された吸収性物品10の隠蔽性が低下する傾向がある。不透明度は、JIS P 8148:2018(ISO2470-1:2016)に基づいて測定される値である。
【0030】
パルプ含有複合型不織布は、不織布と、不織布の少なくとも一方の表面に積層した木材パルプ層と、を含む。好ましい実施形態のパルプ含有複合型不織布は、不織布と、不織布の少なくとも一方の表面に一体化した木材パルプ層と、を含む。ここで、「一体化」とは、少なくとも吸収性物品1の使用前後に不織布と木材パルプ層とが部分的でも剥離してその機能が大きく低減することがない状態にあることを意味する。不織布の坪量は好ましくは7g/m以上30g/m以下であり、木材パルプ層の坪量は好ましくは30g/m以上70g/m以下であり、パルプ含有複合型不織布の坪量は、不透明度や強度、体液吸収性等の観点から、好ましくは30g/m以上80g/m以下である。不織布及び木材パルプ層の各坪量を前記範囲とすることにより、パルプ含有複合型不織布の坪量を前記範囲に調整することが容易になる。パルプ含有複合型不織布の坪量を前記範囲とすることにより、75%以上の不透明度を得やすくなる。
【0031】
パルプ含有複合型不織布の中でも、水流交絡による一体化物が好ましい。該一体化物は、例えば、不織布の表面に、バインダーを用いることなく、木材パルプ繊維をウォータージェットで交絡し、一体化して木材パルプ層を設けたパルプ含有複合型不織布である。このようなパルプ含有複合型不織布では、不織布の一方の表面において不織布を構成する繊維と木材パルプ繊維とが絡み合って木材パルプ層が一体化されると共に、木材パルプ繊維の一部が不織布を厚み方向に突き抜けて他方の面に露出した状態になっており、不織布と木材パルプ層とが極めて強固に結合している。
【0032】
ここで、不織布としては特に限定されず、各種不織布を使用できるが、スパンボンド不織布が好ましい。スパンボンド不織布としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等で作製された不織布を特に限定なく使用できるが、その材質としては、例えば、ナイロン(商標名)、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を好ましく使用できる。スパンボンド不織布は、複数の合成樹脂繊維を含んでいてもよい。これらの中でも、強度、柔らかさ、吸収性等の観点から、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布が好ましい。また、木材パルプ層を構成する木材パルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。木材パルプ繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
不織布と木材パルプ層との重量割合(不織布/木材パルプ層)は、40/60重量%以上10/90重量%以下であることが好ましい。木材パルプ層の含有量が60質量%未満であると、体液吸収性の面で安定したパルプ含有複合型不織布が形成されない傾向があり、90質量%を超えるとパルプ含有複合型不織布が硬くなり、包装シート11としての使用が困難になる傾向がある。
【0034】
本実施形態の個包装体1において、パルプ含有複合型不織布は、その木材パルプ層が個包装体1の外表面になるように配置されることが好ましい。この構成では、個包装体1の内部において、スパンボンド不織布同士が対面する。後述するように、個包装体1の幅方向両端部25a、25b(図3)を封着する場合には、スパンボンド不織布同士の対面により封着効率が高まり、不良品率が低下するという利点が得られる。また、木材パルプ層は体液吸収性が良好であることから、使用後の吸収性物品10から万が一体液が漏れ出たとしても、木材パルプ層が体液のさらなる漏出を防止することができる。
【0035】
前述したように、パルプ含有複合型不織布は、高い不透明度を有している。そこで、市販品の包装シートの不透明度と、パルプ含有複合型不織布の不透明度とを比較すると、下記表1のようになる。市販品の包装シートが布製である場合は、その不透明度は、JIS L 1912に基づいて測定される。なお、パルプ含有複合型不織布としては、該複合型不織布全体の坪量が55g/m、木材パルプ層の坪量が43g/m、及びスパンボンド不織布の坪量が12g/mであり、木材パルプ層79重量%とスパンボンド不織布21重量%とからなるものを用いた。表1から、パルプ含有複合型不織布が、従来の個包装体で用いられる包装シート(フィルムやスパンボンド不織布)に比べて、非常に高い不透明度を有することがわかる。
【0036】
【表1】
【0037】
(接合部)
接合部12は、包装シート11の表面11xとその開封側端部23とを接合するものであり、より詳しくは、個包装体1における、吸収性物品10の長手方向他端(開封側端部)22の厚み方向上側に位置しかつ他端22よりも長手方向に延在する包装シート11の長手方向他端23及び幅方向に延びるその周辺領域の厚み方向下面に設けられ、1又は2以上のフックテープから構成される。フックテープとしては特に限定されず、種々の市販品と同様のものを使用できる。前述したように、フックテープ及び包装シート11としてのパルプ含有複合型不織布の使用により、接合性及び開封性の両立と共に、良好な再封性が担保される。すなわち、開封後でもフックテープによる接合が有効に機能するので、使用済の吸収性物品10を包装シート11で巻いてフックテープで接合することにより、中身を隠蔽したまま廃棄することが可能になる。
【0038】
本実施形態では、吸収性物品10を包装シート11で丸めるようにして個包装体1を形成しているが、フックテープ及びパルプ含有複合型不織布を利用すれば、包装方式は特に限定されず、様々な包装方式を適宜利用できる。
【0039】
<個包装体の製造方法>
個包装体1は、例えば、吸収性物品10と、吸収性物品10よりも長手方向及び幅方向の両方に大きい包装シート11とを、吸収性物品10のバックシート17の非肌側面17aと包装シート11の表面とが接触するように積層する第一工程と、第一工程で得られた積層体において、包装シート11の長手方向他端(開封側端部)23及び幅方向に延びる周辺領域を接合部12とし、幅方向に1又は複数のフックテープを設置する第二工程と、フックテープ設置後の該積層体を、吸収性物品1のトップシート16の肌側面が内側になるように内三つ折りし、長手方向一端側の包装シート11の表面11xと、接合部12のフックテープとを接合する第三工程と、を含む製造方法により作製することができる。
【0040】
本実施形態では、フックテープ設置後の該積層体を内三つ折りすることにより、吸収性物品10も3つ折りにされているが、これに限定されず、吸収性物品10は、2以上の任意の折り数とすることができる。
【0041】
こうして得られる個包装体1は、そのまま製品とすることができるが、例えば、図3に示すような密封個包装体1Aとすることもできる。図3に示す密封個包装体1Aは、図1に示す積層体を内三つ折りして得られた個包装体1の、幅方向両端部25a、25bを封着したものである。本実施形態では、幅方向両端部25a、25bの全体を封着しているが、これに限定されず、例えば、間欠的に封着部分と未封着部分とが交互に存在するように構成してもよい。封着方法としては特に限定されず、例えば、ホットメルト系接着剤を用いた封着、熱融着や超音波融着、かしめによる封着等が挙げられる。
【0042】
幅方向両端部25a、25bを封着した場合、開封時に幅方向両端部25a、25bの封着が剥離されるが、包装シート11として所定の強度と柔軟性とを有するパルプ含有複合型不織布を用い、接合部12には再利用可能なフックテープが残されることから、再封性を低下させることはない。また、前述のようなパルプ含有複合型不織布及びフックテープを用いることから、包装形態は本実施形態に限定されず、従来から知られている種々の包装形態をいずれも利用できる。
【0043】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 吸収性物品の個包装体
10 吸収性物品
11 包装シート
12 接合部
16 トップシート
17 バックシート
21 吸収性物品の長手方向一端
22 吸収性物品の長手方向他端
23 包装シートの長手方向他端(開封側端部)
25a、25b 個包装体の幅方向両側端部
図1
図2
図3