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特許7436228インクジェットプリント鋼板用インク組成物、それを用いたインクジェットプリント鋼板、及びインクジェットプリント鋼板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】インクジェットプリント鋼板用インク組成物、それを用いたインクジェットプリント鋼板、及びインクジェットプリント鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240214BHJP
【FI】
C09D11/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020020293
(22)【出願日】2020-02-10
(62)【分割の表示】P 2018506922の分割
【原出願日】2016-08-12
(65)【公開番号】P2020090682
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-03-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】10-2015-0115002
(32)【優先日】2015-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジン-テ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジョン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ハ-ナ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ヨン-ギュン
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】安積 高靖
【審判官】塩見 篤史
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-507610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11/30
B41M5/00
B41J2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の何れか片面または両面にインクジェットプリント鋼板用インク組成物が印刷されたインクジェット印刷層を含み、
前記インクジェット印刷層上に透明塗装層または透明フィルム層を含み、
前記インクジェットプリント鋼板用インク組成物は、
組成物の総重量に対して、環状脂肪族エポキシアクリレートオリゴマー、脂肪族ポリグリシジルエポキシアクリレートオリゴマー、及びグリシジルアミン型エポキシアクリレートオリゴマーからなる群から選択される1つ以上の線状エポキシアクリレートオリゴマー11~50重量%と、
前記エポキシアクリレートオリゴマーと反応できる反応性アクリレート系モノマー19~75重量%と、
紫外線硬化型開始剤0.1~15重量%と、
染料及び顔料からなる群から選択される1種以上0.5~10重量%と、
酸化防止剤、消泡剤、及び分散剤からなる群から選択される1種以上0.1~10重量%と、
を含み、ただし前記インクジェットプリント鋼板用インク組成物は5重量%を超える無機粒子は含まず、
前記反応性アクリレート系モノマーは、ベンゼン環を含まないハイパーブランチ型(hyperbranch type)モノマーであり、
前記反応性アクリレート系モノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)である、
インクジェットプリント鋼板。
【請求項2】
前記紫外線硬化型開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxycyclohexyl Phenyl Ketone)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(1-(4-Isopropylphenyl)-2-hydroxy-2-methylpropane-1-one)、1,1-ジメトキシデオキシベンゾイン(1,1-dimethoxy deoxybenzoin)、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン(3,3’-dimethyl-4-methoxybenzophenone)、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(1-(4-dodecyl phenyl)-2-hydroxy-2-methyl propan-1-one)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(2-methyl-1-[4-(methylthio)phenyl]-2-morpholino propan-1-one)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド((2,4,6-Trimethylbenzoyl)diphenylphosphine Oxide)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(ethyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenylphosphinate)、ビス(アシル)ホスフィンオキシド(bis(acyl)phosphine oxide)、メチルベンゾイルホルメート(methyl benzoylformate)、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド(4-benzoyl-4’-methyldiphenylsulfide)、ベンジルジメチルケタル(benzyl dimethyl ketal)、フルオレノン(fluorenone)、フルオレン(fluorene)、ベンズアルデヒド(benzaldehyde)、ベンゾフェノン(benzophenone)、アントラキノン(anthraquinone)、及びキサントン(xantone)からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載のインクジェットプリント鋼板。
【請求項3】
前記インクジェットプリント鋼板用インク組成物の粘度が、25℃で1~50cpsである、請求項1に記載のインクジェットプリント鋼板。
【請求項4】
前記鋼板が冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、カラー塗装鋼板、ステンレス鋼板、マグネシウム鋼板、アルミニウム鋼板、亜鉛鋼板、及びチタン鋼板からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載のインクジェットプリント鋼板。
【請求項5】
前記透明塗装層は、紫外線硬化型のクリア塗装層、分子量3,000~25,000のポリエステル系樹脂層、フッ素系を含む樹脂塗膜層、及び自己洗浄性を有する不飽和ポリエステル系樹脂層からなる群から選択される何れか1つ以上である、請求項1に記載のインクジェットプリント鋼板。
【請求項6】
前記透明フィルム層は、ポリエステルフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びエチルビニルアセテートからなる群から選択される何れか1つ以上である、請求項1に記載のインクジェットプリント鋼板。
【請求項7】
前記透明フィルム層の厚さが10~150μmである、請求項1に記載のインクジェットプリント鋼板。
【請求項8】
前記鋼板とインクジェット印刷層との間に、めっき層、前処理層、プライマー層、カラー塗装層からなる群から選択される1つ以上の層がさらに含まれる、請求項1に記載のインクジェットプリント鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリント鋼板用インク組成物、それを用いて印刷されたイン
クジェットプリント鋼板、及びインクジェットプリント鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図柄が入っている従来のプリント鋼板は、シルクスクリーンプリント鋼板及びロールプ
リント鋼板に大別される。しかし、上記のようなプリント鋼板は、高い解像度の製品を生
産することが困難であり、同じ図柄を繰り返し生産することしかできないという欠点とと
もに、様々な色の製品を生産することが困難であるという問題がある。特に、色の多様化
を図るためには、色毎に、それぞれのシルクスクリーン枠またはそれぞれのエッチングさ
れたロールが必要である。そして、それぞれの色を正確な位置に印刷し難いため、高い不
良率を甘受しなければならない。
【0003】
一方、インクジェットプリントを鉄鋼用プリント鋼板の印刷手段として用いる場合、既
存のインクジェットインクでは、吸水性のない鉄板上での印刷性と密着性の確保が難しい
ため、製品の生産が不可能である。
【0004】
また、高硬度と同時に加工性を確保し難い。特に、速い生産速度及び鉄板に高解像度の
パターンを得るという点から、紫外線硬化型のインクが用いられている。しかし、従来の
鋼板コーティング用紫外線硬化溶液の場合、粘度が高くてインクジェットの噴射が困難で
あるため、適用性に劣るという問題がある。
【0005】
さらに、溶液のインク分散性のために有機溶剤を用いる場合、粘度の調節は可能である
ものの、環境に配慮した生産は期待できず、生産工程の点において困難がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、インク噴射性及び印刷作業性に優れるとともに、高解像度、高硬度
、及び塗膜密着性を有するインクジェットプリント鋼板を製造することができ、有機溶剤
を添加しなくても低粘度を維持するインクジェットプリント鋼板用インク組成物、それを
用いたプリント鋼板、及びインクジェットプリント鋼板の製造方法を提供することを目的
とする。
【0007】
本発明の他の側面は、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板
、カラー塗装鋼板、ステンレス鋼板、マグネシウム鋼板、アルミニウム鋼板、亜鉛鋼板、
チタン鋼板などの鋼板における塗膜密着性と高硬度の欠点を最小化するための塗膜形成用
紫外線硬化性樹脂組成物として、インク噴射性及び印刷作業性に優れるとともに、高硬度
及び金属素材との密着性を有し、溶剤を用いなくても印刷性を提供することができるイン
クジェットプリント鋼板用インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、組成物の総重量に対して、線状(linear type)ア
クリレート系オリゴマー11~50重量%と、反応性アクリレート系モノマー19~75
重量%と、紫外線硬化型開始剤0.1~15重量%と、染料及び顔料からなる群から選択
される1種以上0.5~10重量%と、酸化防止剤、消泡剤、及び分散剤からなる群から
選択される1種以上0.1~10重量%と、を含む、インクジェットプリント鋼板用イン
ク組成物を提供する。
【0009】
上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物は、組成物の総重量に対して、無機粒
子が付着した線状アクリレート系モノマー0.1~15重量%をさらに含むことが好まし
い。
【0010】
上記線状アクリレートオリゴマーは、線状エポキシアクリレートオリゴマー及び線状ウ
レタンアクリレートオリゴマーのうち何れか1つ以上であることが好ましい。
【0011】
上記線状エポキシアクリレートオリゴマーは、環状脂肪族エポキシアクリレートオリゴ
マー、脂肪族ポリグリシジルエポキシアクリレートオリゴマー、及びグリシジルアミン型
エポキシアクリレートオリゴマーからなる群から選択される1つ以上であることが好まし
い。
【0012】
上記線状ウレタンアクリレートオリゴマーは、脂肪族ウレタンアクリレートであること
が好ましい。
【0013】
上記反応性アクリレート系モノマーは、ベンゼン環を含む分岐型(branch ty
pe)モノマーまたはベンゼン環を含まないハイパーブランチ型(hyperbranc
h type)モノマーであることが好ましい。
【0014】
上記反応性アクリレート系モノマーは、フェノキシエチル(メタ)アクリレート(ph
enoxyethyl methacrylate)、ビスフェノールAジグリシジルエ
ーテルジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレート(tri
methylolpropane triacrylate)からなる群から選択される
1つ以上であることが好ましい。
【0015】
上記無機粒子は、シリカ、二酸化チタン、及びアルミニウムオキシドからなる群から選
択される1つ以上であることが好ましい。
【0016】
上記無機粒子は、直径2~500nmの球状の無機粒子であることが好ましい。
【0017】
上記線状アクリレート系モノマーは、イソボルニルアクリレート(isobonyl
acrylate)、イソボルニルメタクリレート(isobonyl methacr
ylate)、テトラヒドロフリルアクリレート(tetrahydrofuryl a
crylate)、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropylen
eglycol diacrylate)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(
1,6-hexane diol diacrylate)、及びペンタエリスリトール
トリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)からな
る群から選択される1つ以上であることが好ましい。
【0018】
上記紫外線硬化型開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトンフェノン(2
,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone)、1-ヒドロ
キシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxycyclohexyl Phe
nyl Ketone)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メ
チルプロパン-1-オン(1-(4-Isopropylphenyl)-2-hydr
oxy-2-methylpropane-1-one)、1,1-ジメトキシデオキシ
ベンゾイン(1,1-dimethoxy deoxybenzoin)、3,3’-ジ
メチル-4-メトキシベンゾフェノン(3,3’-dimethyl-4-methox
ybenzophenone)、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-
メチルプロパン-1-オン(1-(4-dodecyl phenyl)-2-hydr
oxy-2-methyl propan-1-one)、2-メチル-1-[4-(メ
チルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(2-methyl-1-[
4-(methylthio)phenyl]-2-morpholino propa
n-1-one)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシ
ド((2,4,6-Trimethylbenzoyl)diphenylphosph
ine Oxide)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィ
ネート(ethyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenylp
hosphinate)、ビス(アシル)ホスフィンオキシド(bis(acyl)ph
osphine oxide)、メチルベンゾイルホルメート(methyl benz
oylformate)、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド(4-b
enzoyl-4’-methyldiphenylsulfide)、ベンジルジメチ
ルケタル(benzyl dimethyl ketal)、フルオレノン(fluor
enone)、フルオレン(fluorene)、ベンズアルデヒド(benzalde
hyde)、ベンゾフェノン(benzophenone)、アントラキノン(anth
raquinone)、及びキサントン(xantone)からなる群から選択される1
つ以上であることが好ましい。
【0019】
上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物の粘度は、25℃で1~50cpsで
あることが好ましい。
【0020】
本発明の他の実施形態は、鋼板の何れか片面または両面に上記インクジェットプリント
鋼板用インク組成物が印刷されたインクジェット印刷層を含む、インクジェットプリント
鋼板を提供する。
【0021】
上記鋼板は、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、カラー
塗装鋼板、ステンレス鋼板、マグネシウム鋼板、アルミニウム鋼板、亜鉛鋼板、及びチタ
ン鋼板からなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。
【0022】
上記インクジェット印刷層上に透明塗装層または透明フィルム層を含むことが好ましい
【0023】
上記透明塗装層は、紫外線硬化型のクリア塗装層、分子量3,000~25,000の
ポリエステル系樹脂層、フッ素系を含む樹脂塗膜層、及び自己洗浄性を有する不飽和ポリ
エステル系樹脂層からなる群から選択される何れか1つ以上であることが好ましい。
【0024】
上記透明フィルム層は、ポリエステルフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、及
びエチルビニルアセテートからなる群から選択される何れか1つ以上であることが好まし
い。
【0025】
上記透明フィルム層の厚さは10~150μmであることが好ましい。
【0026】
上記インクジェットプリント鋼板は、上記鋼板とインクジェット印刷層との間に、めっ
き層、前処理層、プライマー層、カラー塗装層からなる群から選択される1つ以上の層が
さらに含まれることが好ましい。
【0027】
本発明のさらに他の実施形態は、上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物をイ
ンクジェットヘッドに供給する段階と、インクジェット印刷を用いて上記インクジェット
プリント鋼板用インク組成物を鋼板の何れか片面または両面に噴射して印刷する段階と、
を含む、インクジェットプリント鋼板の製造方法を提供する。
【0028】
上記鋼板に印刷されたインク組成物をUV硬化させる硬化段階をさらに含むことが好ま
しい。
【0029】
上記鋼板は、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、カラー
塗装鋼板、ステンレス鋼板、マグネシウム鋼板、アルミニウム鋼板、亜鉛鋼板、及びチタ
ン鋼板からなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明のインクジェットプリント鋼板用インク組成物は、接着性、高硬度性などを向上
させることで、種々の鋼板などの金属素材に適用可能であり、上記インクジェットプリン
ト鋼板用インク樹脂組成物を用いて、従来のシルクスクリーンプリント鋼板やロールプリ
ント鋼板に比べて工程を短縮させることができるとともに、高解像度の製品が実現可能で
あって、従来のインクジェットインク組成物では適用が困難であった鉄鋼の表面に適用可
能である。
【0031】
また、加熱乾燥する水性/油性タイプの樹脂組成物に代えて、紫外線によって硬化され
る組成物を用いることで、溶剤を用いることなく、環境に配慮しながら生産性を向上させ
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のインクジェットプリント鋼板の一実施形態を示す模式図である。
図2】本発明のインクジェットプリント鋼板の他の実施形態を示す模式図である。
図3】本発明のインクジェットプリント鋼板の他の実施形態を示す模式図である。
図4】本発明のインクジェットプリント鋼板の他の実施形態を示す模式図である。
図5】本発明のインクジェットプリント鋼板の他の実施形態を示す模式図である。
図6】線状モノマーを含む従来技術(左側)及びハイパーブランチ型(hyperbranch type)モノマーを含む本発明の一実施形態(右側)を示す模式図である。
図7】一般の無機粒子の分散形態を示す模式図(左側)、及び無機粒子が付着したモノマーの分散形態を示す模式図(右側)である。
図8】従来技術のオリゴマー、モノマー、及び無機粒子の構成を示す模式図(左側)、及び本発明のオリゴマー、モノマー、及び無機粒子が付着したモノマーの構成を示す模式図(右側)である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は
様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定
されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明
をより完全に説明するために提供されるものである。
【0034】
本発明の一実施形態は、組成物の総重量に対して、線状(linear type)ア
クリレート系オリゴマー11~50重量%と、反応性アクリレート系モノマー19~75
重量%と、紫外線硬化型開始剤0.1~15重量%と、染料及び顔料からなる群から選択
される1種以上0.5~10重量%と、酸化防止剤、消泡剤、及び分散剤からなる群から
選択される1種以上0.1~10重量%と、を含む、インクジェットプリント鋼板用イン
ク組成物を提供する。
【0035】
上記線状(linear type)アクリレート系オリゴマーは、線状エポキシアク
リレートオリゴマー及び線状ウレタンアクリレートオリゴマーのうち何れか1つ以上であ
ることが好ましく、この際、上記線状アクリレート系オリゴマーは、2官能性以上の官能
基を有することが好ましい。エポキシアクリレート系オリゴマーとしては、通常、ビスフ
ェノールA系及びビスフェノールF系のように、樹脂構造にベンゼン環を有する化合物を
主に用いるが、上記線状アクリレート系オリゴマーとしては、主鎖にベンゼン環を含まな
い環状脂肪族エポキシアクリレート(Cyclo aliphatic epoxy a
crylate)、脂肪族ポリグリシジルエポキシアクリレート(aliphatic
polyglycidyl type epoxy acrylate)、及びグリシジ
ルアミン型エポキシアクリレート(glycidyl amine type epox
y acrylate)からなる群から選択される1つ以上の化合物を用いることが好ま
しく、上記オリゴマーは、鉄板との塗膜密着性と硬度の向上において有利である。
【0036】
また、上記ウレタンアクリレートオリゴマーは脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー
(aliphatic urethane acrylate oligomer)であ
って、構造内にイソシアネート系とウレタン結合を含むことで、塗膜の耐候性と柔軟性を
確保することが好ましい。
【0037】
この際、上記線状(linear type)アクリレート系オリゴマーは、インクジ
ェットプリント鋼板用インク組成物の総重量に対して11~50重量%で含まれることが
好ましく、20~50重量%で含まれることがより好ましい。この際、上記含量が11重
量%未満である場合には、塗膜の柔軟性が低下し、ブリトル(brittle)となって
塗膜として用いることが困難であり、上記含量が50重量%を超える場合には、粘度が高
すぎてインクを噴射しにくいため、インクジェットプリント鋼板用インクとして用いるこ
とが困難である。
【0038】
上記反応性アクリレート系モノマーは、主鎖にベンゼン環を含む分岐型(branch
type)モノマー、またはベンゼン環を含まない星状、すなわち、ハイパーブランチ
型(hyperbranch type)モノマーであることが好ましい。従来の線状モ
ノマーは、粘度を制御することが容易ではなく、低粘度の安定した物性を確保することが
困難であるのに対し、本発明の上記分岐型モノマーまたはハイパーブランチ型(hype
rbranch type)モノマーは、インク溶液の流れ性を向上させ、粘度を制御す
ることが容易であるため、溶剤を用いなくても安定したインクの噴射を可能とする。
【0039】
また、分岐型モノマーは、主鎖にベンゼン環を含むことで、同一の分子量を有する線状
モノマーに比べて熱的に安定しており、耐薬品性と接着強性を良好にする。
【0040】
上記反応性アクリレート系モノマーは、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビス
フェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパ
ントリアクリレートからなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。
【0041】
この際、上記反応性アクリレート系モノマーは、インクジェットプリント鋼板用インク
組成物の総重量に対して19~75重量%で含まれることが好ましく、より好ましくは1
9~71重量%、最も好ましくは19~66重量%であってもよい。上記含量が19重量
%未満である場合には、組成物の全体的な粘度が高いためインクが噴射されにくくなり、
上記含量が75重量%を超える場合には、塗膜の屈曲加工性が低下し得る。
【0042】
一方、上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物は、無機粒子が付着した線状ア
クリレート系モノマーをさらに含むことが好ましい。この際、上記無機粒子は、シリカ、
二酸化チタン、及びアルミニウムオキシドからなる群から選択される1つ以上であること
が好ましく、カルボキシル基及びヒドロキシル基を含むモノマーに化学的に付着されてい
ることが好ましい。
【0043】
上記線状アクリレート系モノマーは、例えば、イソボルニルアクリレート(isobo
nyl acrylate、IBOA)、イソボルニルメタクリレート(isobony
l methacrylate)、テトラヒドロフリルアクリレート(tetrahyd
rofuryl acrylate、THFA)、トリプロピレングリコールジアクリレ
ート(tripropyleneglycol diacrylate、TPGDA)、
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-hexane diol diac
rylate、HDDA)、及びペンタエリスリトールトリアクリレート(pentae
rythritol triacrylate)からなる群から選択される1つ以上であ
ることが好ましい。
【0044】
通常、無機粒子をモノマーに反応させて付着させる方法は、韓国特許出願公開第201
5-0006714号に記載の、高分子樹脂にシリカ粉末を付着させる方法が公知されて
おり、例えば、無機粒子100重量部に対して、カルボキシル基及びヒドロキシル基を含
むモノマー100重量部及び溶媒500重量部を、50℃の窒素雰囲気で6時間以上有機
反応させたものを用いてもよく、商用化されているシリカ付着紫外線反応性アクリレート
モノマーを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
一方、上記線状アクリレート系モノマーに付着した無機粒子の形態は、球状または片状
など、その形態が特に限定されるものではなく、インクジェット溶液として噴射されるた
めには、球状の無機粒子であることが好ましい。すなわち、片状の無機粒子は、インクジ
ェットヘッドから噴射されながらヘッドノズルを損傷させたり、ノズルが詰まる恐れがあ
るため、球状の無機粒子を用いることがより好ましい。この際、上記無機粒子の直径は2
~500nmであることが好ましく、50~300nmであることがより好ましい。この
際、上記無機粒子の直径が2nm未満である場合には、粒子のサイズが小さくて無機粒子
の効果が低下し、上記無機粒子の直径が500nmを超える場合には、インクの噴射時に
ノズルの詰まりが発生し得る。
【0046】
この際、上記無機粒子が付着した線状アクリレート系モノマーは、インクジェットプリ
ント鋼板用インク組成物の総重量に対して、0.1~15重量%で含まれることが好まし
く、3~10重量%であることがより好ましい。この際、上記含量が0.1重量%未満で
ある場合には、塗膜の硬度及び耐食性の向上効果が低下するという問題があり、上記含量
が15重量%を超える場合には、溶液の粘度が上昇し得て、塗膜がブリトル(britt
le)となる恐れがある。
【0047】
上記紫外線硬化型開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトンフェノン(2
,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone)、1-ヒドロ
キシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxycyclohexyl Phe
nyl Ketone)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メ
チルプロパン-1-オン(1-(4-Isopropylphenyl)-2-hydr
oxy-2-methylpropane-1-one)、1,1-ジメトキシデオキシ
ベンゾイン(1,1-dimethoxy deoxybenzoin)、3,3’-ジ
メチル-4-メトキシベンゾフェノン(3,3’-dimethyl-4-methox
ybenzophenone)、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-
メチルプロパン-1-オン(1-(4-dodecyl phenyl)-2-hydr
oxy-2-methyl propan-1-one)、2-メチル-1-[4-(メ
チルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(2-methyl-1-[
4-(methylthio) phenyl]-2-morpholino prop
an-1-one)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキ
シド((2,4,6-Trimethylbenzoyl)diphenylphosp
hine Oxide)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフ
ィネート(ethyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenyl
phosphinate)、ビス(アシル)ホスフィンオキシド(bis(acyl)p
hosphine oxide)、メチルベンゾイルホルメート(methyl ben
zoylformate)、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド(4-
benzoyl-4’-methyldiphenylsulfide)、ベンジルジメ
チルケタル(benzyl dimethyl ketal)、フルオレノン(fluo
renone)、フルオレン(fluorene)、ベンズアルデヒド(benzald
ehyde)、ベンゾフェノン(benzophenone)、アントラキノン(ant
hraquinone)、及びキサントン(xantone)からなる群から選択される
1つ以上であることが好ましい。
【0048】
また、上記紫外線硬化型開始剤は、例えば、市中で代表的に用いられているIrgac
ure184、Irgacure500、Irgacure651、Irgacure9
07、Irgacure369、Irgacure784、Darocure1173、
Darocure1116、Darocure2959、Lucirin TPO、Es
cacure KIP150、Escacure KIP100F、Escacure
EDB、Escacure KT37などが使用可能である。
【0049】
また、上記紫外線硬化型開始剤は、インクジェットプリント鋼板用インク組成物の総重
量に対して0.1~15重量%で含まれることが好ましく、5~10重量%で含まれるこ
とがより好ましい。この際、上記含量が0.1重量%未満である場合には、光硬化の進行
が微小であることがあり、上記含量が15重量%を超える場合には、光硬化による塗膜密
着力の減少をもたらしたり、未硬化の残存分による塗膜物性の阻害を引き起こす恐れがあ
る。
【0050】
一方、上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物は、様々な色の着色のために、
染料及び顔料からなる群から選択される1つ以上を含むことが好ましく、無機系顔料を含
むことがより好ましい。この際、色は、ブラック、ホワイト、レッド、ブルー、イエロー
などの様々な色の染料または顔料が、ユーザーの選択によって用いられることができる。
【0051】
この際、上記染料及び顔料からなる群から選択される1つ以上の含量は、インクジェッ
トプリント鋼板用インク組成物の総重量に対して0.5~10重量%であることが好まし
く、3~5重量%であることがより好ましい。この際、上記含量が0.5重量%未満であ
る場合には、色の隠蔽効果に劣るため、製品の品質が低下することがあり、上記含量が1
0重量%を超える場合には、過量添加された染料または顔料がインク溶液の凝集現象を誘
発することがある。
【0052】
一方、上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物は、その他の添加剤として、酸
化防止剤、消泡剤、及び分散剤からなる群から選択される1つ以上を含んでもよい。上記
のその他の添加剤の含量は、上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物に要求され
る物性が変化しない範囲で使用可能である。好ましくは、上記その他の添加剤の含量は、
インクジェットプリント鋼板用インク組成物の総重量に対して0.1~10重量%である
ことが好ましく、3~6重量%であることがより好ましいが、これに限定されるものでは
ない。
【0053】
上記酸化防止剤としては、例えば、Irganox 1010、Irganox 10
35、Irganox 1076、Irganox 1222(CIBA SPECIA
LTY CHEMICALS INC、日本)などが使用できるが、これに限定されるも
のではない。
【0054】
また、上記消泡剤としては、例えば、TEGO Airex 920、TEGO Ai
rex 932、BYK 088、BYK 1790などが使用できるが、これに限定さ
れるものではない。
【0055】
また、上記分散剤としては、DISPERBYKTM(BYK CHEMIE GMB
H社製)、TEGOTMとDISPERSTM(EVNIK社製)、DISPEXTM
びEFKETM(CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)などの、通
常の添加剤メーカーの商品から選択されることができるが、これに限定されるものではな
い。
【0056】
一方、上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物の粘度は、25℃の条件下で、
1~50cps(centi-poises)であることが好ましく、3~30cpsで
あることがより好ましい。上記粘度が1cps未満である場合には、粘度が薄くて印刷噴
射性が改善されることができるが、印刷塗膜の物性に劣り、50cpsを超える場合には
、インクジェットヘッドから噴射される際に噴射されにくいという問題があって、インク
組成物の適切な粘度の確保が要求される。
【0057】
さらに、本発明の他の実施形態は、鋼板の何れか片面または両面に、上記インクジェッ
トプリント鋼板用インク組成物が印刷されたインクジェット印刷層を含む、インクジェッ
トプリント鋼板を提供する。
【0058】
この際、上記鋼板は、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板
、カラー塗装鋼板、ステンレス鋼板、マグネシウム鋼板、アルミニウム鋼板、亜鉛鋼板、
及びチタン鋼板からなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。
【0059】
さらに、上記インクジェットプリント鋼板は、インクジェット印刷層のみで仕上げても
よいが、または上記インクジェット印刷層上に、透明塗装層または透明フィルム層をさら
に含んでもよい。
【0060】
この際、上記透明塗装層は、紫外線硬化型のクリア(clear)塗装層、分子量3,
000~25,000のポリエステル系樹脂層、フッ素系を含む樹脂塗膜層、及び自己洗
浄性を有する不飽和ポリエステル系樹脂層からなる群から選択される何れか1つ以上であ
ることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0061】
また、上記透明フィルム層は、ポリエステルフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレ
ン、及びエチルビニルアセテートからなる群から選択される何れか1つ以上であることが
好ましく、この際、その厚さは10~150μmであることが好ましいが、これに限定さ
れるものではない。
【0062】
上記インクジェットプリント鋼板は、上記鋼板とインクジェット印刷層との間に、めっ
き層、前処理層、プライマー層、カラー塗装層からなる群から選択される1つ以上の層が
さらに含まれることが好ましい。
【0063】
例えば、図1から図5は、本発明のインクジェットプリント鋼板用インク組成物を用い
て製造されたインクジェットプリント鋼板の例を示したものである。図1は、カラー塗装
鋼板層に印刷層を導入したものであり、通常の工程条件を用いたインクジェットプリント
鋼板であって、金属素材と、めっき層と、前処理と、プライマー層と、カラー塗装層と、
本発明のインクジェットプリント鋼板用インク組成物を含むインクジェットカラー印刷層
と、を含む構造と、透明塗装層または透明フィルム層をさらに含む構造を示したものであ
る。
【0064】
また、図2及び図3は、上記図1に示したインクジェットプリント鋼板において、プラ
イマー層とカラー塗膜層を省略した形態であって、経済的な点で有利な構造である。図2
は、金属素材と、めっき層と、前処理と、インクジェットカラー印刷層と、さらに透明塗
装層または透明フィルム層と、を含む構造である。そして、図3は、金属素材と、めっき
層と、インクジェットカラー印刷層と、さらに透明塗装層または透明フィルム層と、を示
している。
【0065】
また、図4及び図5は、めっき層を省略したインクジェットプリント鋼板であって、ス
テンレス素材やマグネシウム素材のように、素材の質感を表現する必要がある製品に適し
た形態である。図4は、金属素材と、前処理と、インクジェットカラー印刷層と、さらに
透明塗装層または透明フィルム層と、を含み、図5は、金属素材と、インクジェットカラ
ー印刷層と、さらに透明塗装層または透明フィルム層と、を含む。
【0066】
すなわち、本発明のインクジェットプリント鋼板は、図1~5に示したように様々な形
態の構造として提供されることができ、これに限定されるものではない。
【0067】
さらに、本発明のさらに他の実施形態は、上記インクジェットプリント鋼板用インク組
成物をインクジェットヘッドに供給する段階と、インクジェット印刷を用いて、上記イン
クジェットプリント鋼板用インク組成物を鋼板の何れか片面または両面に噴射して印刷す
る段階と、を含む、インクジェットプリント鋼板の製造方法を提供する。
【0068】
この際、上記鋼板に印刷されたインク組成物をUV硬化させる硬化段階をさらに含むこ
とが好ましい。この際、UV硬化の条件は、光源として、メタルハライド電球、水銀電球
、電極のない場合にはH電球(H bulb)、D電球(D bulb)、V電球(V
bulb)などが使用できるが、これに限定されるものではない。一方、紫外線の光量は
、100~3000mJ/cmの範囲で、組成物の組成などによって選択的に調節され
ることが好ましい。
【0069】
一方、上記鋼板は、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、
カラー塗装鋼板、ステンレス鋼板、マグネシウム鋼板、アルミニウム鋼板、亜鉛鋼板、及
びチタン鋼板からなる群から選択される1つ以上であることが好ましいが、これに限定さ
れるものではない。
【実施例
【0070】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。しかし、下記の実施例は本発明を具
体的に説明するためのものであって、これらの実施例によって本発明の範囲が限定される
ものではない。
【0071】
<実施例1~8及び比較例1~5>
下記表1に示したように、比較例1は、線状オリゴマーである2官能エポキシアクリレ
ート(サートマー、韓国)76重量%、ハイパーブランチ型(hyperbranch
type)トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(SK-CYTEC、韓国
)10重量%、着色剤である顔料3重量%、光開始剤(IRGACURE 184、CI
BA、スイス)7重量%、酸化防止剤(Irganox 1035、CIBA、スイス)
3重量%、その他の添加剤である消泡剤(TEGO Airex 920)及び分散剤(
BYKJET 9150)をそれぞれ0.5重量%混合することで、インクジェットプリ
ント鋼板用インク組成物を製造した。上記線状オリゴマーは、ウレタンアクリレート系化
合物で代替可能である。
【0072】
次に、横20cm、縦20cmのサイズの冷延鋼板に、インクジェットプリントを用い
て上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物を印刷厚さ0.5~20μmで塗布し
た。
【0073】
次に、紫外線照射機を用いて、上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物が塗布
された金属板を100~3000mJ/cmの光量で紫外線照射し、印刷層を乾燥させ
た。
【0074】
下記表1の組成で、実施例1~10及び比較例2~3を上記比較例1と同様に製造した
【0075】
【表1】
【0076】
<比較例4~7>
下記表2に示したように、線状オリゴマーである2官能エポキシアクリレート(サート
マー、韓国)76重量%、ベンゼン環を含まない線状モノマー10重量%、この際、上記
線状モノマーは、単官能アクリル酸エステルモノマーであるイソボルニルアクリレート(
SK-CYTEC、韓国)5重量%及び多官能アクリル酸エステルモノマーであるトリプ
ロピレングリコールジアクリレート(ミウォン・コマーシャル(Miwon Comme
rcial Co.,Ltd.)、韓国)5重量%を含み、着色剤である顔料3重量%、
光開始剤(IRGACURE 184、CIBA、スイス)7重量%、酸化防止剤(Ir
ganox 1035、CIBA、スイス)3重量%、その他の添加剤である消泡剤(T
EGO Airex 920)及び分散剤(BYKJET 9150)をそれぞれ0.5
重量%混合することで、インクジェットプリント鋼板用インク組成物を製造した。
【0077】
次に、上記比較例1と同様の方法及び条件で、印刷塗膜試験片を製造した。
その他の比較例5~7は比較例4と同様の方法で実施するが、それぞれのインクジェッ
トプリント鋼板用インク組成物の成分及び含量は表2のとおりである。特に、線状モノマ
ーの含量は、単官能性モノマーと多官能性モノマーを50:50の割合で含む。
【0078】
【表2】
【0079】
<実施例11~18及び比較例8>
下記表3に示したように、比較例8は、線状オリゴマーであるエポキシアクリレート(
サートマー、韓国)35重量%、ハイパーブランチ型(hyperbranch typ
e)トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(SK-CYTEC、韓国)31
重量%、シリカが付着した線状モノマー20重量%、着色剤である顔料3重量%、光開始
剤(IRGACURE 184、CIBA、スイス)7重量%、酸化防止剤(Irgan
ox 1035、CIBA、スイス)3重量%、その他の添加剤である消泡剤(TEGO
Airex 920)及び分散剤(BYKJET 9150)をそれぞれ0.5重量%
混合することで、インクジェットプリント鋼板用インク組成物を製造した。
【0080】
次に、横20cm、縦20cmのサイズの冷延鋼板に、インクジェットプリントを用い
て上記インクジェットプリント鋼板用インク組成物を印刷厚さ0.5~20μmで塗布し
た。
【0081】
次に、上記比較例1と同様の方法及び条件で、印刷塗膜試験片を製造した。
【0082】
その他の実施例11~実施例18は比較例8と同様の方法で実施するが、それぞれのイ
ンクジェットプリント鋼板用インク組成物の成分及び含量は、下記表3のとおりである。
【0083】
【表3】
【0084】
<比較例9~11>
下記表4に示したように、比較例は、線状オリゴマーである2官能エポキシアクリレート(サートマー、韓国)35重量%、ハイパーブランチ型(hyperbranch type)トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(SK-CYTEC、韓国)31重量%、シリカ20重量%、着色剤である顔料3重量%、光開始剤(IRGACURE 184、CIBA、スイス)7重量%、酸化防止剤(Irganox 1035、CIBA、スイス)3重量%、その他の添加剤である消泡剤(TEGO Airex 920)及び分散剤(BYKJET 9150)をそれぞれ0.5重量%混合することで、インクジェットプリント鋼板用インク組成物を製造した。
【0085】
次に、上記比較例1と同様の方法及び条件で、印刷塗膜試験片を製造した。
【0086】
その他の比較例10及び11は比較例9と同様の方法で実施するが、それぞれのインク
ジェットプリント鋼板用インク組成物の成分及び含量は、下記表4のとおりである。
【0087】
【表4】
【0088】
<実験例>
上記実施例1~18及び比較例1~11のインクジェットプリント鋼板用インク組成物
を、鋼板の表面にインクジェットプリントを用いて噴射した後、形成された塗膜の耐食性
、鉛筆硬度、加工性、塗膜密着性、及びインク噴射性を下記の方法により測定し、その結
果を下記表5~8に示した。
【0089】
(1)耐食性の評価
耐食性は、塗装された試験片に35℃、95%の湿度下で5%の食塩水を240時間連
続噴霧し、初期の発錆有無を基準として良好、普通、及び不良と判定した。
良好:240時間以上、ブリスター(blister)が5%未満
普通:240時間以上、ブリスター(blister)が5%以上50%未満
不良:240時間以上、ブリスター(blister)が50%以上
測定不可:インク噴射性の不良によって試験片の製作が不可能、。
【0090】
(2)鉛筆硬度の評価
鉛筆硬度は、JIS K-5400の鉛筆硬度法に準じて、鉛筆硬度試験機を用いて、
硬化された塗膜に各種(2B、B、HB、F、H、2H、3H)の鉛筆を用いて45度の
角度で線を引き、引っ掻き傷が生じる程度を目視で評価した。
【0091】
(3)加工性の評価
T-ベンドテスター(T-Bend tester)を用いて、3tでベンディング(
bending)した後、目視観察して塗膜の剥離有無及びクラックの発生有無を判定し
た。
良好:3t屈曲加工した後、塗膜のクラック(Crack)及び剥離がない
普通:3t屈曲加工した後、塗膜のクラック(Crack)はあるが、剥離はない
不良:3t屈曲加工した後、塗膜のクラック(Crack)及び剥離が発生
測定不可:インク噴射性の不良によって、試験片の製作が不可能。
【0092】
(4)塗膜密着性の評価
塗膜密着力は、ISO 2409の塗料の接着力試験法に準じて、試験片の上側で間隔
が1mmとなるように横及び縦に1本の線を引き、その上にセロハン接着テープを付着さ
せた。それを剥がした後、塗膜上において100片の分離されたコーティング面のうち、
残っている片の個数で接着力を評価した。
【0093】
(5)インク噴射性の評価
インク噴射性は、インクジェットプリント鋼板用インク組成物をインクジェットヘッド
に装入し、被着体の表面に噴射して噴射程度を判断する特性であって、ノズルが詰まるこ
となく、印刷しようとする正確な位置に正確なサイズに噴射される程度を目視で判断した

良好:ノズルの詰まり及びインク噴射性の問題がない
不良:ノズルが詰まるか、またはインクが噴射されない
【0094】
【表5】
【0095】
上記表5に示されたように、比較例1は、線状オリゴマーの含量が多くて粘度が過度に
高くなるため、インクの噴射が困難であって試験片の製作が不可能であり、物性を測定す
ることができなかった。
【0096】
反応性モノマーの含量が増加するほど、インク噴射性が良好になり、鉛筆硬度も増加す
る。しかし、比較例2及び3のように、ベンゼン環状モノマーまたはハイパーブランチ型
モノマーの含量が75重量%を超える場合には、インク噴射性は良好であるものの、加工
性が低下することが分かる。そして、塗膜密着力が弱くなることを確認することができる
【0097】
全体的に、耐食性は、オリゴマーとモノマーの架橋度が高いため良好な結果を示した。
特に、オリゴマーの含量が5重量%以下である場合、加工性が低下し、塗膜密着力の評価
で50%以上が剥離される現象を確認した。
【0098】
【表6】
【0099】
上記表6に示されたように、本発明のハイパーブランチ型(hyperbranch
type)構造のモノマーまたはベンゼン環を有する分岐型モノマーではなく、線状(l
inear type)モノマーを使用した比較例4~7に対する評価の結果から、線状
モノマーを用いる場合、粘度の上昇によってインクジェットインク噴射性が不良であるた
め、使用が困難であることを確認することができ、過量のモノマーを含む場合、インク噴
射性は良好であるが、全体的な物性が良くないことを確認することができる。このような
ことから、通常の紫外線硬化インクジェットインク溶液の場合、溶剤を希釈して粘度を制
御することが求められることが分かる。
【0100】
【表7】
【0101】
上記表7は、無機粒子が付着したモノマーを含む場合として、比較例8と実施例11~
18の印刷塗膜の物性を示したものである。
【0102】
無機粒子が付着したモノマーの含量が増加するほど、印刷塗膜の鉛筆硬度はFから5H
まで上昇する。しかし、比較例8のように、上記無機粒子が付着したモノマーの含量が1
5重量%を超える場合、塗膜がブリトル(Brittle)となって加工性を確保するこ
とが困難である点がある。しかし、加工が不要な製品郡に適用する場合、有用な印刷溶液
として使用可能である。したがって、上記無機粒子が付着したモノマーの含量は0.1~
15重量%であることが好ましいことが分かる。
【0103】
その他の物性である耐食性、塗膜密着性、インク噴射性などは何れも良好な結果が得ら
れた。
【0104】
【表8】
【0105】
上記表8は、無機粒子が付着したモノマーに代えて、無機粒子(球状シリカ)を単独で
添加して比較した結果である。その結果、上記無機粒子を5重量%を超えて添加する場合
、インク噴射性を確保することが困難であって試験片の製作が不可能であったため、物性
を測定することができなかった(測定不可)。また、比較例11は、加工性の評価で微細
クラック(Crack)が発生する傾向を示し、図7及び図8に示したように、シリカ粒
子が不均一に分布されていることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8