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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用スロープシステム
(51)【国際特許分類】
   A61G 3/06 20060101AFI20240214BHJP
   B60P 1/43 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61G3/06 711
B60P1/43 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020021819
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021126957
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀旭
(72)【発明者】
【氏名】廣田 功一
(72)【発明者】
【氏名】石黒 大樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】錦邉 健
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0183697(US,A1)
【文献】特開2018-178556(JP,A)
【文献】特開2002-306537(JP,A)
【文献】特開2019-116112(JP,A)
【文献】特開2019-127145(JP,A)
【文献】特開2019-043402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 - 7/14
A61G 3/06
B60P 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して利用者が移動可能なスロープが展開及び格納可能とされるスロープ展開格納機構と、
車両外部の状況を撮影する撮影装置と、
利用者及び前記利用者の所持物を含む検出対象が近づくと検出する近接センサと、
前記車両が所定の場所に停車した際に、前記撮影装置により前記車両外部に利用者が存在することが確認され、かつ前記近接センサにより当該近接センサに対して前記検出対象が近づいたことが検出されると、前記スロープ展開格納機構により前記スロープを展開させる制御装置と、
備え、
また、前記制御装置は、前記撮影装置により前記近接センサに対して利用者が前記検出対象を向けていることが確認されると、前記スロープ展開格納機構により前記スロープを展開させるように設定されている車両用スロープシステム。
【請求項2】
前記スロープを展開させる展開指示信号を送信する遠隔装置を備え、
前記制御装置は、前記展開指示信号を受信すると、前記近接センサによる検出結果に拘わらず前記スロープ展開格納機構により前記スロープを展開させるように設定されている請求項1に記載の車両用スロープシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スロープシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両に搭載されたカメラで、歩道の有無を確認すると共に、バス停等、利用者が乗降する道路又は歩道と車両の床部との高低差及び距離を確認し、スロープの繰り出し角度を調整して、当該スロープを車両外側に向かって繰り出させる電動車両のスロープ装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-116112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術における電動車両は、自動運転車両として適用可能とされるが、自動運転車両の場合、車両には人が居ない場合も想定される。このため、当該電動車両が自動運転車両として適用される場合、車両の外部に居る利用者によってスロープを展開させる操作スイッチの操作ができるようにする必要があり、車両には当該操作スイッチが設けられることが考えられる。
【0005】
しかしながら、当該スイッチは、車椅子に着座した利用者の場合、手が届かない可能性が生じるため、車椅子に着座した利用者が当該車両に乗車するには、介助者が必要となってしまい、この点について更なる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、車椅子に着座した利用者でもスロープを展開させることが可能な車両用スロープシステムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両用スロープシステムは、車両に対して利用者が移動可能なスロープが展開及び格納可能とされるスロープ展開格納機構と、車両の外部の状況を撮影する撮影装置と、利用者及び前記利用者の所持物を含む検出対象が近づくと検出する近接センサと、前記車両が所定の場所に停車した際に、前記撮影装置により前記車両外部に利用者が存在することが確認され、かつ前記近接センサにより当該近接センサに対して前記検出対象が近づいたことが検出されると、前記スロープ展開格納機構により前記スロープを展開させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記撮影装置により前記近接センサに対して利用者が前記検出対象を向けていることが確認されると、前記スロープ展開格納機構により前記スロープを展開させるように設定されている。
【0008】
請求項1に記載する本発明の車両用スロープシステムでは、スロープ展開格納機構と、撮影装置と、近接センサと、制御装置と、を有している。当該スロープ展開格納機構は、車両に対して利用者が移動可能なスロープを展開及び格納可能としている。また、当該撮影装置は、車両外部の状況を撮影し、近接センサは、当該近接センサに対して利用者及び当該利用者の所持物を含む検出対象が近づくと検出するようになっている。
【0009】
そして、撮影装置により撮影された車両外部の状況から利用者が存在することが確認され、かつ近接センサにより当該近接センサに対して、検出対象が手をかざす等して利用者が近づいたことが検出されると、制御装置によって、スロープ展開格納機構によりスロープは展開される。
【0010】
つまり、本発明では、車椅子に着座した利用者が近接センサに近づくことでスロープを展開させることが可能となるため、車椅子に着座した利用者は、必ずしも介助者は必要ではなく、介助者が居なくても自分でスロープを展開させることが可能となる。
【0011】
なお、本発明における「所定の場所」とは、バス停又は予め利用者から指定された乗降場所を指す。また、本発明における「検出対象」には、人以外に杖や傘等の物も含まれる。
【0012】
請求項2に記載する本発明の車両用スロープシステムは、請求項1に記載する本発明の車両用スロープシステムにおいて、前記制御装置は、前記撮影装置により前記近接センサに対して利用者が前記検出対象を向けていることが確認されると、前記スロープ展開格納機構により前記スロープを展開させるように設定されている。
【0013】
一方、制御装置は、撮影装置による車両外部の状況から、近接センサに対して利用者が手を伸ばす等して検出対象を向けていることが確認されると、制御装置によって、スロープ展開格納機構によりスロープは展開される。
【0014】
つまり、本発明では、車椅子に着座した利用者が近接センサに近づかなくても、近接センサに対して手を伸ばす等して検出対象を向けていることが撮影装置により確認されると、スロープは展開する。これにより、本発明では、車椅子に着座した利用者が近接センサに近づけない状況であっても、スロープを展開させることが可能となる。
【0015】
請求項に記載する本発明の車両用スロープシステムは、請求項1に記載する本発明の車両用スロープシステムにおいて、前記スロープを展開させる展開指示信号を送信する遠隔装置を備え、前記制御装置は、前記展開指示信号を受信すると、前記近接センサによる検出結果に拘わらず前記スロープ展開格納機構により前記スロープを展開させるように設定されている。
【0016】
請求項に記載する本発明の車両用スロープシステムでは、スロープを展開させる展開指示信号を送信する遠隔装置を備えている。当該展開指示信号を受信すると、近接センサによる検出結果に拘わらず、制御装置は、スロープ展開格納機構によりスロープを展開させる。
【0017】
つまり、本発明では、遠隔装置により展開指示信号を送信しておけば、雨等で傘を差す等、手が塞がっている場合に、近接センサに手を伸ばす等のジェスチャをしなくてもスロープを展開させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1に記載する本発明の車両用スロープシステムは、車椅子に着座した利用者でもスロープを展開させることができる、という優れた効果を有する。
【0019】
請求項2に記載する本発明の車両用スロープシステムは、近接センサに近づけない状況であっても、車椅子に着座した利用者によってスロープを展開させることができる、という優れた効果を有する。
【0020】
請求項に記載する本発明の車両用スロープシステムは、遠隔装置を介してスロープを展開させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態に係る車両用スロープシステムを備えた車両において、スロープが格納された状態を示す車両左斜め前方側から見た斜視図である。
図2】本実施の形態に係る車両用スロープシステムを備えた車両において、スロープが展開された状態を示す車両左斜め前方側から見た斜視図である。
図3】本実施の形態に係る車両用スロープシステムを備えた車両において、スロープが展開された状態を示す車両後方側から見た背面図である。
図4】本実施の形態に係る車両用スロープシステムの構成を示すブロック図である。
図5】本実施の形態に係る車両用スロープシステムを備えた車両において、スロープを展開させるまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
図6】本実施の形態に係る車両用スロープシステムを備えた車両において、スロープを格納させるまでの処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る車両用スロープシステムについて図面を用いて説明する。なお、各図に適宜示される矢印UPは車両上下方向の上方側を示し、矢印FRはシート前後方向の前方側を示しており、矢印RHはシート幅方向の右側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、シート前後方向の前後、車両上下方向の上下、進行方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0023】
<車両用スロープシステムの構成>
まず、本実施の形態に係る車両用スロープシステムの構成について説明する。
【0024】
図1図2には、本実施形態に係る車両用スロープシステム10(図4参照)を備えた車両12の斜視図が示されている。図1図2に示す車両12は、自動運転で走行する電動車両であり、遠隔操作による走行も可能となっている。
【0025】
図1図2に示されるように、この車両12の左側部12Aには、車両前後方向の中央部において、車両12の上部14側から下端部16に亘って形成された矩形状の開口部18が形成されている。この開口部18は、車両前後方向に沿ってスライドする一対のドア20、21によって開閉可能とされている。
【0026】
ここで、図1は、ドア20、21が閉止され後述するスロープ26が格納された状態の車両12が示されており、図2は、ドア20、21が開放されスロープ26が展開された状態の車両12が示されている。
【0027】
図2に示されるように、ドア20、21が開放された状態で、ドア20は、開口部18の車両前後方向の前方側において車両12の左側部12Aの車両幅方向の外側に配置され、ドア21は、開口部18の車両前後方向の後方側において車両12の左側部12Aの車両幅方向の外側に配置される。
【0028】
また、車両12の床部22の床面22Aはフルフラットとされており、床部22の下方側には、車両前後方向の中央部においてスロープ装置(スロープ展開格納機構)24が設けられている。スロープ装置24は、例えば、矩形板状のスロープ26と、格納部28と、駆動モータ30と、を含んで構成されている。
【0029】
当該格納部28は、床部22の裏面側に固定されており、当該格納部28内にはスロープ26が格納可能とされる。スロープ26は、開口部18の幅寸法よりも若干短く形成されており、格納部28の奥部に配設された駆動モータ30の駆動によって車両幅方向に沿って移動可能とされている。
【0030】
図1に示されるように、当該スロープ26が格納部28内に格納された状態で駆動モータ30が駆動すると、図2図3に示されるように、スロープ26は車両幅方向の外側へ向かって移動し車両外側に展開される。
【0031】
ここで、図示はしないが、スロープ26の展開方向の後端部には、車両前後方向に沿った線を軸線とする軸部が設けられている。図2に示されるように、スロープ26が格納部28から繰り出されると、当該軸部を中心にスロープ26の先端26Aが下方側へ向かって回動可能とされる。
【0032】
つまり、車両12の床部22の床面22Aと歩道29(図3参照)又は地面27との間に高低差がある場合、スロープ26は展開された状態で歩道29又は地面27側へ向かうにつれて下方側へ向かって傾斜することとなる。
【0033】
なお、図3は、車両後方側から見た車両12の背面図であり、スロープ26によって車両12の床部22と歩道29とが架け渡された状態を示している。図3に示されるように、当該スロープ26によって車両12の床部22と歩道29とが架け渡されることによって、車両12をバリアフリー化することができる。
【0034】
そして、図2図3に示されるように、当該スロープ26が展開された状態で、駆動モータ30が駆動すると、スロープ26は車両12側へ向かって移動し、図1に示されるように、格納部28内に格納される。
【0035】
なお、スロープ26は一枚で構成されてもよいし、複数枚で構成されてもよい。スロープ26が複数枚で構成された場合、複数枚のスロープ26を車両上下に重ねることができる。このため、平面視で見たときに、格納部28のスペースを小さくすることができる。
【0036】
ここで、図4には、本実施の形態に係る車両用スロープシステム10の構成を示すブロック図が示されている。
【0037】
図4に示されるように、本実施形態では、車両12には、制御装置32が備わっている。また、車両12には、カメラ34及び近接センサ36が設けられており、これらの装置は、図示しない入出力インタフェースを介してそれぞれ制御装置32に接続されている。
【0038】
カメラ34は、車両12の外部(以下、「車両外部」という)の状況を撮影している。ここで、カメラ34は、例えば、図1に示されるように、車両12の左側部12Aに形成された開口部18の上方側に設けられている。
【0039】
なお、カメラ34は、単眼カメラでもよいが、ステレオカメラの方が好ましい。ステレオカメラの場合、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有し、ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれるからである。
【0040】
また、近接センサ36は、例えば、人体とセンサ電極間に生じる静電容量の変化を認識することで機能する静電容量式のものが用いられており、近接センサ36に手をかざす等利用者が近づいたことによって検出可能とされている。なお、近接センサ36は、人以外に杖や傘等を近づけることによっても検出可能となっている。
【0041】
ところで、制御装置32は、図示はしないが、受信部を備えており、当該受信部は、図3に示されるように、車両12を呼び出す利用者Pが所持するスマートフォン等の携帯装置(遠隔装置)54からの信号を受信することが可能になっている。
【0042】
例えば、利用者Pが車両12を呼び出すときに、当該携帯装置54が用いられる。この携帯装置54に必要事項を入力すると、この入力情報の信号が基地局(図示省略)やネットワーク(図示省略)等を介して制御装置32の受信部に受信されるようになっている。このため、携帯装置54で「バリアフリー希望」である旨を入力すると、制御装置32では、この利用者Pは、車両12の乗降時においてスロープ26が必要であると判断される。
【0043】
また、車両12には、図示はしないが、展開格納ボタンが設けられている。この展開格納ボタンは、スロープ26を展開又は格納させるためのボタンである。当該展開格納ボタンは、図1に示されるように、スロープ26が格納された状態で押圧されると、制御装置32へ信号が送信され、当該制御装置32によって、駆動モータ30が駆動されスロープ26が展開される。
【0044】
一方、当該展開格納ボタンは、図2に示されるように、スロープ26が展開された状態で押圧されると、制御装置32へ信号が送信され、当該制御装置32によって、駆動モータ30が駆動されスロープ26が格納される。
【0045】
さらに、車両12には、車両重量検出装置が設けられている。当該車両重量検出装置は、図示しない入出力インタフェースを介して制御装置32に接続されている。車両重量検出装置は、車両重量を検出する装置であり、車両12の床部22に接続され、当該車両12の床部22に掛かる重量を検出することにより車両重量が分かるようになっている。これにより、乗客の乗降状況が分かることとなる。
【0046】
<車両用スロープシステムの作用及び効果>
次に、本実施の形態に係る車両用スロープシステムの作用及び効果について説明する。
【0047】
本実施形態に係る車両用スロープシステム10について、図1図2を参照し、図5図6で示すフローチャートにおいて説明する。なお、図5には、車両12に設けられたスロープ26を展開させるまでの処理の流れを説明するフローチャートが示されており、図6には、展開されたスロープ26を車両12の格納部28に格納させるまでの処理の流れを説明するフローチャートが示されている。
【0048】
(スロープの展開)
まず、スロープ26の展開時について説明する。
【0049】
図1図5に示されるように、ステップ102において、制御装置32は、車両12が指定場所に到着すると、ステップ104へ移行する。ステップ104では、制御装置32は、カメラ34によって撮影された車両外部の状況から利用者を確認した後、ステップ106へ移行する。
【0050】
ステップ106において、制御装置32は、近接センサ36に手がかざされたか否かの判断を行う。ステップ106において、制御装置32が、近接センサ36に手がかざされたと判断した場合、ステップ108へ移行する。
【0051】
ステップ108において、制御装置32は、スロープ26を移動させる駆動モータ30を駆動させる。これにより、ステップ110において、図2に示されるように、スロープ26はスロープ展開エリア46において展開を開始する。
【0052】
次に、ステップ112では、制御装置32は、駆動モータ30の回転角度が所定値に達したか否かの判断を行う。つまり、ステップ112では、スロープ26が確実に展開されたか否かが確認されることとなる。ステップ112では、制御装置32は、駆動モータ30の回転角度が所定値に達するまで繰り返しこの処理を行う。なお、駆動モータ30の回転角度とは、駆動モータ30の回転開始から積算された回転角度のことである。
【0053】
なお、ステップ112では、駆動モータ30の回転角度が所定値に達したか否かの判断を行っているが、これに限るものではない。例えば、ステップ112において、駆動モータ30の電流値又は回転数が閾値を越えたか否かを判断するようにしてもよい。この場合、駆動モータ30の電流値又は回転数が閾値を越えると、スロープ26の先端26Aが歩道29(図3参照)又は地面27に触れたことが分かるように設定される。なお、駆動モータ30の回転数とは、単位時間当たりの回転数のことである。
【0054】
そして、ステップ112において、制御装置32は、駆動モータ30の回転角度が所定値に達したと判断すると、ステップ114へ移行する。ステップ114では、制御装置32は、駆動モータ30の駆動を停止させ、ステップ116へ移行する。そして、ステップ116では、スロープ26は、スロープ展開エリア46での展開が終了し、当該スロープ26の使用が可能となる。
【0055】
次に、制御装置32は、ステップ118へ移行する。ステップ118では、制御装置32は、ドア20を開放させる。これにより、車両12に乗車している利用者が当該スロープ26を介して車両12から降車可能とされると共に、車両外部の利用者が当該スロープ26を介して乗車可能とされる。
【0056】
このように、スロープ26を用いることで、図3に示されるように、車椅子56に着座している利用者や障害のある利用者にとって、段部がない分、楽に乗降することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、カメラ34により撮影された車両外部の状況から利用者が存在することが確認され、かつ近接センサ36により当該近接センサ36に対して利用者が手をかざす等、利用者が近づいたことが検出されると、制御装置32によって、スロープ26は展開される。
【0058】
このように、車椅子に着座した利用者が手をかざす等、近接センサ36に近づくことでスロープを展開させることが可能となることで、車椅子に着座した利用者が車両12に設けられた展開格納ボタンを押圧しなくてもスロープ26の展開が可能となる。言い換えると、車椅子に着座した利用者は、必ずしも介助者が必要ではなく、介助者が居なくても自分でスロープ26を展開させることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、制御装置32によって、自動でスロープ26が展開されるため、車両12の自動バリアフリー化に資することができる。これにより、車椅子56の利用者や障害のある利用者のスムーズな乗降を実現することができる。
【0060】
また、本実施形態では、自動でスロープ26が展開されるため、車両12の運転手が乗車している場合、運転手による手動でのスロープ26の設置が不要となる。このため、本実施形態では、スロープ26の設置に伴う時間と労力を削減することができる。
【0061】
したがって、本実施形態では、介助者の負担を軽減することができるだけでなく、車椅子56の利用者や障害のある利用者において、介助者が居なくても車両12の乗降が可能になる。その結果、本実施形態は、運転手が居ない自動運転車両でも適用可能となる。
【0062】
一方、本実施形態では、ステップ106において、制御装置32が、近接センサ36に手はかざされていない判断した場合、ステップ120へ移行する。ステップ120では、制御装置32は、近接センサ36に対して利用者が手を伸ばす等、手を向けているか否かの判断を行う。
【0063】
ステップ120において、制御装置32が、カメラ34による車両外部の状況から近接センサ36に対して利用者が手を向けていることが判断した場合、ステップ108へ移行する。
【0064】
すなわち、ステップ108において、制御装置32は、スロープ26を移動させる駆動モータ30を駆動させ、ステップ110において、スロープ26がスロープ展開エリア46での展開を開始することとなる。
【0065】
本実施形態では、車椅子に着座した利用者が近接センサ36に近づかなくても近接センサ36に対して手を伸ばす等、手を向けていることがカメラ34により確認されると、スロープ26は展開する。これにより、本実施形態では、車椅子に着座した利用者が近接センサ36に近づけない状況であっても、スロープ26を展開させることが可能となる。
【0066】
一方、ステップ120において、制御装置32が、カメラ34による車両外部の状況から近接センサ36に対して利用者が手を向けていないと判断した場合、ステップ122へ移行する。
【0067】
ステップ122では、携帯装置54によるスロープ26の展開の指示があるか否かが判断される。ステップ122において、制御装置32が、携帯装置54によるスロープ26の展開の指示はあると判断した場合、ステップ108へ移行する。
【0068】
ステップ108では、前述したように、制御装置32は、スロープ26を移動させる駆動モータ30を駆動させ、ステップ110において、スロープ26がスロープ展開エリア46での展開を開始することとなる。
【0069】
本実施形態では、スロープ26を展開させる展開指示信号を送信する携帯装置54を備えており、制御装置32は、当該展開指示信号を受信すると、近接センサ36による検出結果に拘わらずスロープ26を展開させる。
【0070】
つまり、本実施形態では、携帯装置54により展開指示信号を送信しておけば、雨等で傘を差す等、手が塞がっている場合に、近接センサ36に手を伸ばす等のジェスチャをしなくてもスロープ26を展開させることが可能となる。
【0071】
一方、ステップ122において、制御装置32が、携帯装置54によるスロープ26の展開の指示はないと判断した場合、ステップ118へ移行する。すなわち、ステップ118において、制御装置32は、ドア20を開放させることとなる。
【0072】
すなわち、本実施形態では、制御装置32は、ステップ116においてスロープ26の展開を終了した後に、ステップ118においてドア20を開放させる。比較例として、例えば、ドア20が開放された後にスロープ26が展開されるとなると、スロープ26の展開が終了していないにも拘わらず、利用者が過ってスロープ26を使用してしまう可能性も考えられる。
【0073】
これに対して、本実施形態では、前述のように、スロープ26の展開が終了した後に、ドア20が開放されるため、このような問題は生じない。つまり、本実施形態では、利用者の安全性を確保することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、図示はしないが、スロープ26を展開又は格納させるための展開格納ボタンが設けられている。図1に示されるように、スロープ26が格納された状態で、展開格納ボタンが押圧されると、制御装置32へ信号が送信され、当該制御装置32によって、駆動モータ30が駆動されスロープ26が展開されるようになっている。つまり、本実施形態では、スロープ26の展開の動作を手動でも行うこともできる。
【0075】
(スロープの格納)
次に、スロープ26の格納時について説明する。
【0076】
図2図6に示されるように、ステップ200において、制御装置32は、車両重量検出装置38によって車両12に対して車両重量の変化がないか否かの判断を行う。
【0077】
つまり、ステップ200では、車両重量の変化がないことで車両12に対して利用者の乗降がないことが確認されることとなる。このため、ステップ200では、制御装置32は、車両重量の変化がなくなるまで繰り返しこの処理を行う。
【0078】
なお、ステップ200では、車両12に対して車両重量の変化がないか否かの判断を行っているが、利用者の乗降がないことが確認できればよいため、これに限るものではない。
【0079】
そして、ステップ200において、制御装置32は、車両重量の変化がないと判断すると、ステップ202へ移行する。ステップ202では、制御装置32は、所定の時間が経過したか否かの判断を行う。
【0080】
つまり、ステップ202では、車両重量の変化がなくなってから所定の時間が経過したことが確認されることとなる。このため、ステップ202では、制御装置32は、車両重量の変化がなくなってから所定の時間が経過するまで繰り返しこの処理を行う。
【0081】
そして、ステップ202において、制御装置32は、車両重量の変化がなくなってから所定の時間が経過したと判断すると、ステップ204へ移行する。ステップ204では、ドア20が閉止される。
【0082】
次に、制御装置32は、ステップ206へ移行し、ステップ206において、スロープ26を移動させる駆動モータ30を駆動させる。そして、制御装置32は、ステップ208へ移行し、ステップ208において、スロープ26は格納部28に格納される。次に、制御装置32は、ステップ210へ移行し、ステップ210において、駆動モータ30の駆動を停止させる。
【0083】
ここで、本実施形態では、制御装置32は、ドア20が閉止された後にスロープ26を格納させる。比較例として、例えば、スロープ26が格納部28に格納された後にドア20が閉止される場合、ドア20が開放された状態でスロープ26が格納された場合が考えられる。この場合、ドア20は開放されているため、スロープ26が格納されているにも拘わらず、車両12に乗車している利用者が過ってスロープ26を使用しようとする可能性がある。
【0084】
これに対して、本実施形態では、前述のように、ドア20が閉止された後にスロープ26を格納するようにしているため、このような問題は生じない。したがって、本実施形態では、利用者の安全性を確保することができる。
【0085】
また、本実施形態では、前述のように、スロープ26を展開及び格納させるための展開格納ボタンが車両12に設けられている。図2に示されるように、スロープ26が展開された状態で、この展開格納ボタンが押圧されると、制御装置32へ信号が送信され、当該制御装置32によって、駆動モータ30が駆動されスロープ26が格納されるようになっている。つまり、本実施形態では、スロープ26の格納の動作を手動でも行うこともできる。
【0086】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0087】
10 車両用スロープシステム
12 車両
24 スロープ装置(スロープ展開格納機構)
26 スロープ
32 制御装置
34 カメラ(撮影装置)
36 近接センサ
54 携帯装置(遠隔装置)
P 利用者(検出対象)
図1
図2
図3
図4
図5
図6